説明

セパレータ構造

【課題】鉄筋コンクリート構造体に埋め殺しされるセパレータ構造において、外壁面からの熱伝導を内壁面に遮断できるセパレータ構造を提供すること。
【解決手段】一端に一方の型枠固定部10を設けた軸棒2と、他端に他方の型枠固定部11を設けたアンカーブラケット3とが、アンカーブラケット3の接合部で相互に接合されて成るセパレータ構造において、
前記接合部に、軸棒2とアンカーブラケット3とを熱伝導的に隔絶して接合する断熱部12が配設される。
また、前記断熱部12が、横向き凸状の金属製のナット6と、ナット6が埋め込まれる合成樹脂製で漏斗状のケース5と、ケース5に埋め込まれたナット6を封入する合成樹脂製のキャップ7とから成り、ナット6はネジ孔6aのみ開口して全体が合成樹脂に包蔵される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設時の型枠支持に使用され、打設されたコンクリート層内に残置されて型枠解体後の鉄筋コンクリート構造体の躯体の内外壁面に、それぞれ内装材、外断熱体を接合できるセパレータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造体の構築に使用する両型枠を支持固定するとともに、型枠解体後に鉄筋コンクリート構造体の躯体の外壁面へ取り付ける断熱材等の外断熱体の取着を、その自由度を広範に、かつ、工期を短縮できるセパレータ構造は、特開2007−23536号公報(特許文献1)に提案されているが、鉄筋コンクリート構造体に埋め殺しされる軸棒とアンカーブラケットとの接合が直接螺合によるものであるため、外部の熱がアンカーブラケットを通して軸棒に伝導され、内装面に結露などの悪影響を及ぼすおそれがある。
【特許文献1】特開2007−23536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、鉄筋コンクリート構造体に埋め殺しされるセパレータ構造において、型枠保持に多数個使用され埋め殺しされたセパレータ構造の熱伝導によるコンクリート躯体の断熱効果の低下を防止するとともに、外壁面からの熱伝導を内壁面に遮断できるセパレータ構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に記載したセパレータ構造は、一端に一方の型枠固定部を設けた軸棒と、他端に他方の型枠固定部を設けたアンカーブラケットとが、該アンカーブラケットの接合部で相互に接合されて成るセパレータ構造において、
前記接合部に、軸棒とアンカーブラケットとを熱伝導的に隔絶して接合する断熱部が配設されて成る。
本発明の請求項2に記載したセパレータ構造は、請求項1に記載したセパレータ構造において、
前記断熱部が、横向き凸状の金属製のナットと、該ナットが埋め込まれる合成樹脂製で漏斗状のケースと、該ケースに埋め込まれたナットを封入する合成樹脂製のキャップとから成り、該ナットをネジ孔のみ開口して合成樹脂に包蔵して成る。
【発明の効果】
【0005】
本発明のセパレータ構造では、軸棒とアンカーブラケットとが断熱部で断熱状に接合され、外部の熱変動がアンカーブラケットから軸棒に伝導されることがないから、室内での結露の発生が解消される上、室温の変動が抑えられて冷暖房の効率が良くなり、コンクリート躯体の断熱効果も低下させない効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明における断熱部は、金属製のナットを合成樹脂製のケースとキャップで包蔵することにより、アンカーブラケットと軸棒とを断熱状に接合するものから、金属製のナットに代えて、ナット自体をエンプラ(エンジニアリングプラスチック)やスーパーエンプラ(スーパーエンジニアリングプラスチック)などの合成樹脂による成形品の使用も考えられる。また、軸棒とアンカーブラケットに負荷される張力は、軸棒に螺合されるナットの外郭に馴染む直角状の段差部で抗されるものから、テーパ状の段差部で抗されるなどである。
【実施例】
【0007】
本発明のセパレータ構造Aを実施例により説明すると、その構成は図1に示すように、左端部のナット1と、ナット1を左端部で螺着する長尺ネジ部2aと、右端部の短尺ネジ部2bと、長尺ネジ部2aと短尺ネジ部2bの間で軸部の外面に凹設した回り止め用の二面幅部2cとを有する軸棒2と、横向き截頭円錐体で大径側を前記短尺ネジ部2bに向けたアンカーブラケット3と、アンカーブラケット3を貫通する中空部4に収納される合成樹脂製の横向き漏斗状で小径側を軸棒2の方向へ向けたケース5と、ケース5に収蔵される横向き凸状の金属製のナット6と、ナット6をケース5に封入するキャップ7と、前記中空部4に螺着され右端にフランジ8aを周設した押さえ軸8と、押さえ軸8に内設される取付金具9とから成る。アンカーブラケット3の中空部4には右端から螺設される雌ネジ部4aと、雌ネジ部4aの左方で雌ネジの内径より僅かに小径の収納室4bと、収納室4bの直径より小径で直角状の段差部4cを形成して左端へ開口される窓部4dとが形成され、押さえ軸8の左方には前記雌ネジ部4aに螺着される雄ネジ8bが形成され、右端のフランジ8aには右端から所要深さで所要径の横向きの凹部8cが内設され、凹部8cの中心から左端へ雌ネジ8dが貫設され、取付金具9は長手方向の中間に押さえ軸8のフランジ8aの凹部8cに嵌着する小フランジ9aと、小フランジ9aより左方で雌ネジ8dに螺合する大ネジ軸9bと、小フランジ9aより右方に突設する止めネジ軸9c(大ネジ軸9bより小径)とから成り、小フランジ9aには回転用の長円形状の抜き穴9dが対向して貫設される。
図2に示すように、一方の型枠固定部10は、軸棒2の長尺ネジ部2aと長尺ネジ部2aに螺合するナット1で形成され、他方の型枠固定部11は押さえ軸8のフランジ8aと、フランジ8aの凹部8cに小フランジ9aを嵌着しつつ雌ネジ8dにその大ネジ軸9bが螺着される取付金具9の止めネジ軸9cとから成り、断熱部12はケース5と、ケース5に収蔵されその左端にネジ孔6aを開口するナット6と、横向き凸状で突出部7aをネジ孔6aに嵌着し盤体部7bをケース5の内周に嵌着するキャップ7とから成るものである。
【0008】
このようにして成るセパレータ構造Aは図2に示すように、軸棒2の左方の長尺ネジ部2aにナット1が螺着されて一方の型枠固定部10が形成される。軸棒2の右方の短尺ネジ部2bはアンカーブラケット3に収められる断熱部12のナット6に螺着される。この断熱部12はアンカーブラケット3の雌ネジ部4aに螺着された押さえ軸8の雄ネジ8bの軸端で位置決め固定され、押さえ軸8の雌ネジ8dには小フランジ9aの抜き穴9dによって回転締結される大ネジ軸9bが螺着され、遂には押さえ軸8のフランジ8aの凹部8cに小フランジ9aが嵌着され、振れ止め状に取付金具9が接合され、押さえ軸8のフランジ8aと取付金具9の止めネジ軸9cによって他方の型枠固定部12が形成される。
【0009】
したがって、本発明のセパレータ構造Aは、図3に示すように、一方の型枠固定部10のナット1に位置決めされた左方の型枠13の所要の各所に長尺ネジ部2aが挿通され、他方の型枠固定部11のフランジ8aに位置決めされた右方の型枠14の所要の各所に止めネジ軸9cが挿通され、それぞれの型枠13、14の外方から長尺ネジ部2aと止めネジ軸9cに螺着される軸状ナット15によって各型枠13、14が位置決めされるとともに、各型枠13、14の外面に沿わせて配設した縦パイプや横パイプなどの押さえ金16をフォームタイ(登録商標)17で押さえ、軸状ナット15のネジ軸15aに螺合したナット18で締め付け固定される。
このようにして両型枠13、14がセパレータ構造Aで位置決め固定され、適宜な鉄筋(図外)の配筋状態でコンクリートが打設される。このとき、セパレータ構造Aに負荷される張力は、軸棒2と一体の断熱部12がアンカーブラケット3の段差部4cで保持される。
セパレータ構造Aが埋め殺し状態でコンクリートが打設された鉄筋コンクリート構造体19は図4に示すように、両側の型枠13、14が解体され、一方の軸棒2の長尺ネジ部2aには内装材(図外)が接合され、他方の取付金具9の止めネジ軸9cには断熱材や外装材等の外断熱体(図外)は挿通され適宜なナットで接合される。
【0010】
このほか、鉄筋コンクリート構造体19の躯体の外壁面に外断熱体(図外)を接合する手段としては、取付金具9に代えて図5に示すように、押さえ軸8の凹部8cに嵌着する円形の嵌着部20aを一端に設けてその嵌着部20aの内端から凸状で先細り状の回転放物面を有する金具本体20bと、その右端に突設する止めネジ軸20cと、止めネジ軸20cに嵌着される座金20dと、金具本体20bの嵌着部20aの左端より突設されて前記押さえ軸8の雌ネジ8dに螺合する大ネジ軸20eとから成る取付金具20が用いられる。この取付金具20には金具本体20bの回転放物面の一部に対向して切欠き二面幅部20fが形成されてスパナで回転できるようになっている。
したがって、この取付金具20は層の厚い外断熱体を取り付けできる上、金具本体20bの嵌着部20aによって押さえ軸8のフランジ8aの凹部8cに確実な振れ止め状態で嵌着接合されるとともに、回転放物面が形成される断面によって大なる曲げ強度で外断熱体を保持できる。外断熱体は座金20dを介して止めネジ軸20cに螺合するナットで締め付け固定される。なお、この場合も外部から伝導される熱負荷は断熱部12で遮断される。
このように、外断熱体の仕様に対応して取付金具9、20を選択できるから、各種の外断熱体の接合に即応できる上、外部からの熱負荷を断熱部12で遮断できるから、利用の自由度を広範にして省エネルギー効果を呈するものである。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明のセパレータ構造は、鉄筋コンクリート構造体に埋め殺し状態で各種の外断熱体に対応できる上、外部からの熱負荷を断熱部で遮断できるから軸棒を介して室内側へ伝導することがなく、室内環境が安定することと省エネルギー効果を呈することで需要は大いに期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係わるセパレータ構造Aの分解状態の説明図。
【図2】セパレータ構造Aの要部を縦断した組立て説明図。
【図3】セパレータ構造Aによる型枠組立ての説明図。
【図4】型枠解体後の鉄筋コンクリート構造体19の一部を示す説明図。
【図5】セパレータ構造Aの押さえ軸8に他の取付金具20を螺設した状態の鉄筋コンクリート構造体19の一部を示す説明図。
【符号の説明】
【0013】
1:ナット
2:軸棒
2a:長尺ネジ部
2b:短尺ネジ部
2c:二面幅部
3:アンカーブラケット
4:中空部
4a:雌ネジ部
4b:収納室
4c:段差部
4d:窓部
5:ケース
6:ナット
6a:ネジ孔
7:キャップ
7a:突出部
7b:盤体部
8:押さえ軸
8a:フランジ
8b:雄ネジ
8c:凹部
8d:雌ネジ
9:取付金具
9a:小フランジ
9b:大ネジ軸
9c:止めネジ軸
9d:抜き穴
10、11:型枠固定部
12:断熱部
13、14:型枠
15:軸状ナット
15a:ネジ軸
16:押さえ金
17:フォームタイ
18:ナット
19:鉄筋コンクリート構造体
20:取付金具
20a:嵌着部
20b:金具本体
20c:止めネジ軸
20d:座金
20e:大ネジ軸
20f:切欠き二面幅部
A:セパレータ構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に一方の型枠固定部を設けた軸棒と、他端に他方の型枠固定部を設けたアンカーブラケットとが、該アンカーブラケットの接合部で相互に接合されて成るセパレータ構造において、
前記接合部に、軸棒とアンカーブラケットとを熱伝導的に隔絶して接合する断熱部が配設されて成るセパレータ構造。
【請求項2】
前記断熱部が、横向き凸状の金属製のナットと、該ナットが埋め込まれる合成樹脂製で漏斗状のケースと、該ケースに埋め込まれたナットを封入する合成樹脂製のキャップとから成り、該ナットをネジ孔のみ開口して合成樹脂に包蔵したことを特徴とする請求項1記載のセパレータ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−221744(P2009−221744A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67289(P2008−67289)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(505266271)
【Fターム(参考)】