説明

セフトビプロールメドカリルの製造方法

本発明は、有機化合物、特に、(6R,7R)−7−[(Z)−2−(5−アミノ−[1,2,4]チアジアゾール−3−イル)−2−ヒドロキシイミノ−アセチルアミノ]−8−オキソ−3−[(E)−(R)−1’−(5−メチル−2−オキソ−[1,3]−ジオキソール−4−イルメトキシカルボニル)−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イリデンメチル]−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸ナトリウム(セフトビプロールメドカリル)の製造方法、ならびに一般式(1)および一般式(2)の化合物、化合物それ自体、および本発明に記載の製造工程における中間体に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物、特に、(6R,7R)−7−[(Z)−2−(5−アミノ−[1,2,4]チアジアゾール−3−イル)−2−ヒドロキシイミノ−アセチルアミノ]−8−オキソ−3−[(E)−(R)−1’−(5−メチル−2−オキソ−[1,3]−ジオキソール−4−イルメトキシカルボニル)−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イリデンメチル]−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸ナトリウム(セフトビプロールメドカリル)の製造方法、ならびに一般式(1)および一般式(2)の化合物、化合物それ自体、および本発明に従う製造における中間体に関する。セフトビプロールメドカリルは、顕著な抗菌性を有する非経口用セファロスポリンである。その全体像は、例えば、Current Opinion in Pharmacology 2006年、第6巻、480−485頁に示されている。
【背景技術】
【0002】
セフトビプロールメドカリルの製造方法は、それ自体公知である。既存技術により公知である方法は、7−アミノセファロスポラン酸から出発して、十分な純度を有する一般式(1)のセフトビプロールメドカリルを得るには、多数の中間段階を単離し、精製しなければならないという共通の特色を有する。
【0003】
【化1】

一般式(1)の化合物は、それ自体公知であり、例えば、WO99/65920に記載されている。細菌性感染症、特に、メチシリン耐性スタフィロコッカス・オウレウス(Staphylococcus aureus)株によって引き起こされる感染症の治療および予防に使用される。
【0004】
WO99/65920は、セフトビプロールメドカリルの製造方法の最後のステップとして、メドカリルプロドラッグ単位が一般式(2)の化合物に導入される反応を記載している。
【0005】
【化2】

一般式(2)の化合物は、同様にそれ自体公知であって、例えば、EP0849269A1に記載されている。EP0849269A1によれば、一般式(2)の化合物の製造は、(2R,6R,7R)−t−ブトキシカルボニルアミノ−3−ホルミル−8−オキソ−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクト−3−エン−2−カルボン酸ベンズヒドリルエステルから出発して、(1’−アリルオキシカルボニル−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イル)−トリフェニルホスフォニウムブロミドとのWittig反応により実施される。この反応により形成される△2反応生成物は、スルホオキシデーションおよび続いての還元により所望の△3異性体に異性化され、その後、ベンズヒドリルエステルからトリフルオロ酢酸で脱保護される。7位におけるアシル化は、(Z)−(5−アミノ−[1,2,4]−チアジアゾール−3−イル)−トリチロキシイミノチオ酢酸S−ベンゾチアゾール−2−イルエステルとの反応により実施される。一般式(2)の化合物は、続いて保護基を除去することにより得られる。
【0006】
EP1067131A1は、トルエンまたはトルエンおよび塩化メチレンの混合物中においてテトラヒドロフラン中のt−酪酸のアルカリ金属塩を添加することにより、イリドを形成させることを記載している。この方法により、塩基が溶液として添加可能である。反応温度−70℃での対応するアルデヒドとのイリドの反応が記載されている。
【0007】
EP0841339A1は、セファロスポリン誘導体およびその製造方法を記載している。同様に、WO95/29182は、セファロスポリンの製造のための中間体生成物を開示している。
【0008】
WO01/90111には、デアセチル−7−アミノセファロスポラン酸から出発して、N,N−ジメチルホルムアミド中において(Z)−(5−アミノ−[1,2,4]−チアジアゾール−3−イル)−トリチロキシイミノチオ酢酸S−ベンゾチアゾール−2−イルエステルでアシル化することにより、次いで、塩化メチレン中においてジフェニルジアゾメタンでin situエステル化を行って対応するベンズヒドリルエステルを得、ヘキサンを加えてこれを沈殿させ、単離する数段のステップで、セフトビプロールメドカリルを製造することがさらに記載されている。次のステップでは、この生成物は、塩化メチレン/水中においてTEMPO/NaOClで、またはテトラヒドロフラン/塩化メチレン中において二酸化マンガンで、対応するアルデヒドに酸化される。次の反応ステップは、塩化メチレン/トルエン/テトラヒドロフラン中において−78℃で、反応が実施される、3−ビニル置換誘導体を得るためのWittig反応を含む。粗生成物を撹拌してエタノールで抽出し、塩化メチレン/t−ブチルメチルエーテルから再結晶化させるかまたはクロマトグラフィーで精製する。WO01/90111に記載の方法に従い、Wittig反応は、塩化メチレン、トルエンおよびテトラヒドロフランの複雑な混合物中において−80から−70℃の低温で実施される。反応が製造スケールで行われる場合、使用する溶媒の再生が困難となるために、このことが顕著な欠点となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第99/65920号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0849269号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1067131号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0841339号明細書
【特許文献5】国際公開第95/29182号
【特許文献6】国際公開第01/90111号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Current Opinion in Pharmacology 2006年、第6巻、480−485頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
既存の技術で公知の合成法の欠点は、一般式(2)または一般式(1)の化合物が、複雑な合成ステップを含む多段の工程を経由して製造され、全体としての収率が良くないことである。さらに、保護基を含む操作が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、一般式(1)および一般式(2)の化合物が、産業用スケールであっても少ないステップで実施できる方法を経由して製造し得ることが今般発見された。
【0013】
明確に記述されない限り、それぞれの場合に、本発明の文脈における以下の記述は、前記化合物それ自体およびその薬学的に許容される塩に関する。
【0014】
したがって、本発明は、一般式(1)の化合物の製造方法であって、
【0015】
【化3】

少なくとも以下のステップ(a)、(b)および(c):
(a)一般式(3)の化合物
【0016】
【化4】

(式中、QおよびQは、互いに独立に、水素原子またはシリル基を表す。)
を、一般式(4)の化合物
【0017】
【化5】

(式中、Rはアミノ保護基を表す。)
と反応させて、一般式(5)の化合物
【0018】
【化6】

(式中、Q、QおよびRは、上記で定義した通りである。)
を得るステップ、
(b)一般式(5)の化合物と一般式(6)の化合物
【0019】
【化7】

(式中、Rは、ヒドロキシ保護基を表し、Yは、活性化官能基を表す。)
とを反応させて、必要な場合には、Qがシリル基を表す場合、保護基の除去の後、一般式(7)の化合物
【0020】
【化8】

(式中、R、QおよびRは、上記で定義した通りである。)
を得るステップ、
(c)必要な場合には、Qがシリル基を表す場合、保護基の除去の後、一般式(7)の化合物を一般式(2)の化合物
【0021】
【化9】

に変換するステップ、ならびに、場合によって、
(d)一般式(2)の化合物を一般式(1)の化合物に変換するステップ
を含む方法に関する。
【0022】
その上、本発明は、一般式(2)の化合物の製造方法であって、
【0023】
【化10】

少なくとも以下のステップ(a)、(b)および(c):
(a)一般式(3)の化合物
【0024】
【化11】

(式中、QおよびQは、互いに独立に、水素原子またはシリル基を表す。)
を、一般式(4)の化合物
【0025】
【化12】

(式中、Rは、アミノ保護基を表す。)
と反応させて、一般式(5)の化合物
【0026】
【化13】

(式中、Q、QおよびRは、上記で定義した通りである。)
を得るステップ、
(b)一般式(5)の化合物と一般式(6)の化合物
【0027】
【化14】

(式中、Rは、ヒドロキシ保護基を表し、Yは、活性化官能基を表す。)
とを反応させて、必要な場合には、Qがシリル基を表す場合、保護基の除去の後に、一般式(7)の化合物
【0028】
【化15】

(式中、R、QおよびRは、上記で定義した通りである。)
を得るステップ、ならびに、
(c)必要な場合には、Qがシリル基を表す場合、保護基の除去の後に、一般式(7)の化合物を一般式(2)の化合物に変換するステップ
を含む方法に関する。
【0029】
本発明に従う方法は、少なくともステップ(a)、(b)および場合によって(c)を含む。さらに、本発明に従う方法は、それ以上のステップ、例えば、保護基操作をも含む。この点において、これらのそれ以上のステップが、ステップ(a)、(b)および(c)の前または後に実施されることが可能である。しかし、これらのそれ以上のステップを、ステップ(a)と(b)の間、またはステップ(b)と(c)の間で実施することも同様に可能である。
【0030】
本発明に従う方法は、一般式(1)または一般式(2)の化合物の製造を、簡単な方法で、高純度で行うことを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明に従う方法は、ステップ(a)、すなわち、一般式(3)の化合物
【0032】
【化16】

(式中、QおよびQは、互いに独立に、水素原子またはシリル基を表し、特に、QおよびQは、互いに独立に、シリル基を表し、またはQが水素原子およびQがシリル基を表す。)
と一般式(4)の化合物
【0033】
【化17】

(式中、Rは、アミノ保護基を表す。)
とで一般式(5)の化合物
【0034】
【化18】

(式中、Q、QおよびRは、上記で定義した通りである。)
を得る反応を含む。
【0035】
本発明によれば、ステップ(a)に従う反応は、当業界に公知の方法で実施し得る。この反応では、一般式(3)の化合物を、一般式(4)のホスフォニウム塩と反応させる。反応は、塩基の存在下で本発明に従って実施され、一般式(5)の化合物を形成する。
【0036】
適切な反応条件および溶媒系は、例えば、WO95/29182の26頁、第2段落から、27頁の最後の1段落まで、およびWO95/29182の42頁の実施例31に記載されている。
【0037】
ステップ(a)に従う反応は、本発明に従い、例えば、シリル化剤および/またはエポキシドの存在下、特に、BSAおよび/またはプロピレンオキシドの存在下で実施され得る。
【0038】
したがって、本発明はまた、上述したように、ステップ(a)がシリル化剤およびエポキシドの存在下で実施される、一般式(1)の化合物の製造方法または一般式(2)の化合物の製造方法に関する。
【0039】
好ましい実施形態によれば、本発明はまた、上述したように、シリル化剤がBSAでありまたはエポキシドがプロピレンオキシドである、一般式(1)の化合物の製造方法または一般式(2)の化合物の製造方法に関する。
【0040】
さらに、本発明に従う方法は、ステップ(b)、すなわち、一般式(5)の化合物と一般式(6)の化合物
【0041】
【化19】

(式中、Rは、ヒドロキシ保護基であり、Yは、活性化官能基を表す。)
とを反応させて、必要な場合には、Qがシリル基を表す場合、保護基を除去した後、一般式(7)の化合物
【0042】
【化20】

(式中、R、QおよびRは、上記で定義した通りである。)
を得る反応を含む。
【0043】
本発明に従う方法のステップ(b)によれば、一般式(5)の化合物は、一般式(6)の化合物でアシル化される。
【0044】
本発明によれば、Yは、例えば、ハロゲン化物、適切なハロゲン化物は、例えば、J.Antibiotics、第37巻、557−571頁、1984年に開示されており、混合酸無水物、適切な混合酸無水物は、例えば、薬学雑誌、第110巻(9)、658−664頁、1990年に開示されており、または基(s)、(t)および(u)から選択される基などの活性化官能基である。
【0045】
【化21】

この文脈では、本発明に従う方法のステップ(b)に従う反応は、原則的には、当業界に公知の方法により実施し得る。
【0046】
適切な反応条件および溶媒系は、例えば、EP37380A2の8頁の16行から9頁の5行までに記載されている。
【0047】
本発明に従えば、ステップ(b)に従う反応のためには、一般式(5)の化合物をシリル化または塩形成により溶解することおよび一般式(6)の化合物でのアシル化の後に、保護基を一段のステップで除去することが好ましい。
【0048】
この場合、本発明の文脈では、ステップ(b)は、中間的な単離操作なしでまたはワンポットの工程として実施され得る。
【0049】
好ましい実施形態に従えば、本発明はまた、したがって、上述したように、ステップ(b)に従う反応のために、一般式(5)の化合物をシリル化または塩形成により溶解し、一般式(6)の化合物でのアシル化が実施された後に、保護基を一段のステップで除去する、一般式(1)の化合物の製造方法または一般式(2)の化合物の製造方法に関する。
【0050】
本発明に従う方法はまた、ステップ(a)および(b)に加えて追加でステップ(c)を含み得る。ステップ(c)に従えば、必要な場合には、Qがシリル基を表す場合、保護基の除去の後に、一般式(2)の化合物への一般式(7)の化合物の変換が実施される。
【0051】
適切な反応条件および溶媒系は、例えば、WO01/90111の11頁、3行から27行までに、特に、WO01/90111の実施例5および6に記載されている。
【0052】
本発明に従えば、ステップ(c)は中間の単離操作なしでまたはワンポット工程で実施されるのが好ましい。さらなる実施形態によれば、したがって、本発明はまた、上述したように、ステップ(c)が、ステップ(b)から得られる中間体の中間の単離操作なしでまたはワンポット工程で実施される、一般式(1)の化合物の製造方法または一般式(2)の化合物の製造方法に関する。
【0053】
驚くべきことに、本発明に従うこの方法により、一般式(1)または一般式(2)の化合物、特に、セフトビプロールメドカリルの製造において、別々の中間段階の数を減らすことが可能であり、このことは、最終的には、全体の収率を高め、結果としてより好ましい製造コストをもたらすことが見出された。
【0054】
一般式(1)の化合物の製造のための本発明に従う方法はまた、ステップ(a)、(b)および(c)に加えて、ステップ(d)を含み、ステップ(d)はステップ(a)、(b)および(c)の後で実施される。しかし、本発明に従えば、さらなるステップ、例えば、保護基操作が、ステップ(c)と(d)の間に実施されることも可能である。ステップ(d)に従い、一般式(2)の化合物の一般式(1)の化合物への変換が実施される。
【0055】
この文脈においては、本発明に従う方法のステップ(d)に従う変換は、原則的には、当業界に公知の方法で実施し得る。
【0056】
適切な反応条件および溶媒系は、例えば、WO99/65920の9および10頁の実施例1.1に記載されている。
【0057】
本発明に従う方法により得られる化合物は、とりわけ、その純度が高いことにおいて際立っている。
【0058】
さらなる態様に従えば、本発明はまた、上述した方法により得られる、一般式(1)の化合物に関する。
【0059】
【化22】

【0060】
本発明はまた、上述したようなまたは実施例中で記載したような方法により得られる、一般式(2)の化合物
【0061】
【化23】

およびその塩、特にトリフルオロ酢酸塩またはトシレートもしくはメシラートなどの有機の強酸との塩に関する。
【0062】
一般式(2)の化合物は、本発明に従う方法により、高純度で、HPLCの手段で測定して、例えば、>99面積%で、例えば、99.5面積%の純度で得られる。そのため、さらなる精製ステップを経ることなく、それから薬学的に使用可能な品質で一般式(1)の化合物が得られる。
【0063】
本発明はまた、新規な合成中間体に関する。さらなる態様に従えば、したがって、本発明は、一般式(5)の化合物
【0064】
【化24】

(式中、QおよびQは、互いに独立に、水素原子またはシリル基を表し、Rは、Alloc基を除くアミノ保護基を表す。)
およびその塩、特に、例えば、実施例3からのジシクロヘキシルアミン塩などの有機アミン塩に関する。
【0065】
本発明に従えば、アミノ保護基として、Alloc基を除く通常の保護基はすべて適切である。例えば、Rは、BOC基を表す。さらなる実施形態に従えば、本発明はしたがって、上述したように、Qがトリメチルシリル基を表し、Rは、BOC基を表す、一般式(5)の化合物に関する。
【0066】
BOCで保護されたこの中間体は結晶化し、例えば、HPLCで99面積%またはそれ以上の、非常に純粋な形態で得られる。セフトビプロールメドカリルの製造において、BOCで保護された中間体を使用することのさらなる本質的な利点は、EP0849269に記載されている中間体はALLOCでの保護であって、保護基は別のステップにおいて除去されねばならないのに対して、開示された方法によって、用いた保護基、BOCまたはトリメチルシリル基は、ステップ(c)で同時に除去できることである。したがって、本発明はまた、セフトビプロールメドカリルの製造において、BOCで保護されたこの中間体、すなわち、上述したように、Qがトリメチルシリル基を表し、RがBOC基を表す、一般式(5)の化合物を使用することに関する。
【0067】
本発明はまた、上述したステップ(a)または(b)のうちの1つに従う反応により得られる、一般式(5)または一般式(7)の化合物に関する。
【0068】
一般式(5)の化合物は、本発明に従う方法の必須の中間段階であり、本発明に従う方法の単純な合成シークエンスを可能とするものである。
【0069】
それゆえ、本発明はまた、上述したように、一般式(1)または一般式(2)の化合物の製造のための、一般式(5)の化合物の使用に関する。その上、本発明はまた、一般式(1)の化合物の製造のための、一般式(5)の化合物の使用に関する。
【0070】
本発明を、実施例の助けを借りて以下に詳細に説明する。
【0071】
(実施例)
【実施例1】
【0072】
(6R,7R)−7−アミノ−3[E−(R)−1’−(5−t−ブチルオキシカルボニル)−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イリデンメチル]−8−オキソ−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸
【0073】
【化25】

5.14gの7−アミノ−3−ホルミル−セファ−3−エム−4−カルボキシレートを27.8mlのビス(トリメチルシリル)−アセトアミドおよび50mlのプロピレンオキシド中に溶解した。16.8gの(1R/S,3’R)−(1’−t−ブチルオキシカルボニル−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イル)−トリフェニルホスフォニウムブロミド(EP1067131、WO02/14332)を、1℃で、小分けして徐々に加えた。次いで、混合物を出発物質が反応するまで1℃で撹拌した。その後、結晶性の沈殿物を窒素気流下でろ過し、50mlのシクロヘキサン/ビス(トリメチルシリル)アセトアミド99.5/0.5で洗浄した。減圧下で乾燥後、所望の生成物をシリル化形態で得た。
【0074】
該原料を100mlの塩化メチレンに溶解し、50mlの濃度3%のNaHCO溶液を0℃で加えた。相を分離し、有機相を30mlの水で洗浄し、活性炭での処理後、水相を合わせて、濃度3%のHPOでpH3.5とした。結晶性の沈殿をろ過し、水で洗浄した後、減圧下で乾燥した。
重量:6.09g
H−nmr(DMSO−d)δ1.39(s,9H)、2.00(m,2H)、2.8−3.2(m,2H)、3.2−3.5(m,6H)、3.84(ABq,2H,J=18.2Hz)、4.57(m,1H)、4.82(d,1H,J=5.1Hz)、5.01(d,1H,J=5.1Hz)、7.21(m,1H)
13C−nmr(DMSO−d)δ24.63、26.11、28.09、28.89、41.54、44.94、45.31、47.98、48.34、51.27、52.00、58.98、63.76、79.95、121.95、126.19、126.28、129.90、134.21、154.97、164.36、169.05、169.13
MS−ESI負イオンモード:927.2(2M−H,100%,463.1(M−H,25%)
Oの含有率:2.2%
IR(ゴールデンゲート、cm−1):2978、1793、1682、1551、1397、1363、1330
【実施例2】
【0075】
(6R,7R)−7−トリメチルシリルアミノ−3[E−(R)−1’−(5−t−ブチルオキシカルボニル)−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イリデンメチル]−8−オキソ−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸トリメチルシリルエステル
【0076】
【化26】

10.28gの7−アミノ−3−ホルミル−セファ−3−エム−4−カルボキシレートを、55.6mlのビス(トリメチルシリル)アセトアミドおよび100mlのプロピレンオキシド中に溶解した。次いで、33.6gの(1R/S,3’R)−(1’−t−ブチロキシカルボニル)−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イル)−トリフェニルホスフォニウムブロミド(EP1067131、WO02/14332)を0℃で22時間にわたって小分けにして徐々に添加した。次いで、混合物を出発物質が反応するまで、1℃で撹拌した。その後、反応混合物を−20℃に冷却した。結晶性の沈殿を窒素気流下でろ過し、180mlのシクロヘキサン/ビス(トリメチルシリル)アセトアミド 99.5/0.5を小分けにして洗浄した。減圧下で乾燥後、ビスシリル化生成物を得た。
重量:16.2g
H−nmr(CDCl)δ0.04、0.10、0.12(3s,9H)、0.34(s,9H)、1.43(s,9H)、1.74(br s,1H)、1.9−2.2(m,2H)、2.8−3.0(m,2H)、3.2−3.7(m,8H)、4.7−4.95(m,3H)、7.43(m,1H)
【実施例3】
【0077】
(6R,7R)−7−アミノ−3[E−(R)−1’−(5−t−ブチルオキシカルボニル)−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イリデンメチル]−8−オキソ−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸ジシクロヘキシルアンモニウム
【0078】
【化27】

1.0gの(6R,7R)−7−トリメチルシリルアミノ−3[E−(R)−1’−(5−t−ブチルオキシカルボニル)−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イリデンメチル]−8−オキソ−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸トリメチルシリルエステルを、10mlの塩化メチレンに溶解した。1mlのエタノールおよび10mlの酢酸エチル中の300mgのジシクロヘキシルアミンの溶液を加えた。沈殿をろ過し、酢酸エチルで洗浄し、減圧下で乾燥した。
重量:0.9g
H−nmr(DO/DMSO−d)δ0.9−1.3(m,10H)、1.30(s,9H) ,1.4−2.18m,12H)、2.7−3.5(m,10H)、3.64(ABq,J=17.2Hz,2H)、4.5(m,1H)*,4.58(d,1H,J=5.1Hz);4.88(d,1H,J=5.1Hz)、7.07(s,1H)
*t/w.はDOシグナルで重複
MS−ESI負イオンモード:927.2(2M−H,100%)、463.1(M−H,25%)
IR(ゴールデンゲート、cm−1):2932、2856、1754、1692、1671、1630、1569、1394、1329
【実施例4】
【0079】
(6R,7R)−7−[(Z)−2−(5−アミノ−[1,2,4]チアジアゾール−3−イル)−2−ヒドロキシイミノ−アセチルアミノ]−8−オキソ−3−[(E)−(R)−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イリデンメチル]−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸トリフルオロアセテート
【0080】
【化28】

4.1 変法A
3.0gのシリル化形態の(6R,7R)−7−アミノ−3[E−(R)−1’−(5−t−ブチルオキシカルボニル)−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イリデンメチル]−8−オキソ−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸を、0℃で、150mlの塩化メチレン中に溶解した。次いで、600μlのDMF/水 5/1および1.8mlのビス(トリメチルシリル)アセトアミドを加え、2.29gの2−トリチルオキシイミノ−2−(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−酢酸クロリド塩酸塩(J.Antibiotics、第37巻、557−571頁、1984年)を小分けして混合物に添加した。0℃で3時間後、混合物を30mlのメタノール/120mlの水の上に注いだ。塩化メチレン相を分離した。有機相を66gにまで濃縮し、25mlのトリフルオロ酢酸を加えた。10分後、1.5mlのトリエチルシランおよび10mlの水を加え、混合物を−15℃まで冷却した。有機相を分離し、もう一度6mlのトリフルオロ酢酸/水 1/1で洗浄した。水相を合わせて、水で150mlにまで希釈し、XAD−1600を有する吸着剤樹脂を通してろ過した。水でカラムを洗浄した後、水/アセトニトリル 85/15で溶出した。生成物を含む分画を減圧下で濃縮し、残渣を0°で後結晶化のために放置した。結晶性の生成物をろ過し、水で洗浄し、減圧下で乾燥した。
重量:2.66g
【0081】
4.2 変法B
7.4gの(6R,7R)−7−アミノ−3[E−(R)−1’−(5−t−ブチルオキシカルボニル)−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イリデンメチル]−8−オキソ−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸を、781mlの塩化メチレン中に0℃で、6.7mlのトリエチルアミンを加えて溶解した。8.65gの2−トリチルオキシイミノ−2−(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−酢酸クロリド塩酸塩を小分けして混合物に添加した。出発物質が反応して後に、混合物を500mlの水の上に注ぎ、塩化メチレン相を分離した。有機相をNaSOで脱水し、減圧下で濃縮した。
【0082】
残渣を、148mlの塩化メチレン中に溶解し、4.5mlのトリエチルシランおよび74mlのトリフルオロ酢酸を室温で加えた。30分後、222mlの塩化メチレンおよび222mlの水を加え、混合物を−20℃に冷却した。有機相を分離し、37mlのトリフルオロ酢酸および148mlの水の混合物で、もう一度洗浄した。水相を合わせ、水で364mlにまで希釈し、吸着剤樹脂を通してろ過し、アセトニトリル/水 15/85で溶出した。ろ液を35gにまでRotavapor上で濃縮し、ろ過し、残渣を水で洗浄した。減圧下で乾燥した後、重量4.5gを得た。
H−nmr(DMSO−d)δ1.9−2.2(m,2H)、2.8−3.5(m,8H)、3.85(Abq,2H;J=18.3Hz)、4.63(m,1H)、5.16(d,2H,J=4.9Hz)、5.85(dd,1H,J1=4.9Hz,J2=8.4Hz)、7.23(s,1H)、8.06(s,2H)、9.08(br.s,2H)、9.49(d,2H,J=8.4Hz)、11.95(s,1H)
【実施例5】
【0083】
(6R,7R)−7−[(Z)−2−(5−アミノ−[1,2,4]チアジアゾール−3−イル)−2−ヒドロキシイミノ−アセチルアミノ]−8−オキソ−3−[(E)−(R)−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イリデンメチル]−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸
【0084】
【化29】

6.0gのシリル化形態の(6R,7R)−7−アミノ−3[E−(R)−1’−(5−t−ブチルオキシカルボニル)−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イリデンメチル]−8−オキソ−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸を、300mlの塩化メチレン中に0°で溶解した。次いで、1,200μlのDMF/水 5/1および8.1mlのビス(トリメチルシリル)アセトアミドを加え、5.3gの2−トリチルオキシイミノ−2−(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−酢酸クロリド塩酸塩(J.Antibiotics、第37巻、557−571頁、1984年)を小分けにして混合物中に加えた。その後、混合物を、60mlのメタノール/240mlの水の上に注ぎ、塩化メチレン相を分離した。有機相を48gにまで濃縮し、1.5mlのトリエチルシランを加えた。50mlのトリフルオロ酢酸を加えた後、混合物を室温で60分間撹拌した。20mlの水を加え、混合物を−15℃まで冷却した。有機相を分離し、20mlのトリフルオロ酢酸/水 1/1でもう一度洗浄した。水相を合わせて、水で500mlにまで希釈し、2.0gの活性炭で処理した。ろ過後、溶液を減圧下で濃縮した。
【0085】
残渣を50mlにまで水で希釈し、混合物を飽和NaHCO溶液でpH6.9とした。次いで、混合物を0℃で2時間撹拌し、沈殿物を水で洗浄した。
重量:4.5g
H−nmr(DMSO−d/CFCOOD)δ1.9−2.3(m,2H)、2.8−3.5(m,8H)、3.85(ABq,2H,18.7Hz)、4.61(m,1H)、5.16(d,1H,J=4.8Hz)、5.86(dd,1H,J1=4.8Hz,J2=8.4Hz)、7.24(s,1H)、8.05(br s,2H)、8.93(s,2H)、9.50(d,1H,J=8.4Hz)、11.96(s,1H)
MS−ESI負イオンモード:533.2(M−H,10%)
【実施例6】
【0086】
セフトビプロールメドカリルナトリウム塩
【0087】
【化30】

0.53gの(6R,7R)−7−[(Z)−2−(5−アミノ−[1,2,4]チアジアゾール−3−イル)−2−ヒドロキシイミノ−アセチルアミノ]−8−オキソ−3−[(E)−(R)−2−オキソ−[1,3’]ビピロリジニル−3−イリデンメチル]−5−チア−1−アザ−ビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボン酸を、5mlのジメチルスルホキシド中に溶解した。0.27gの炭酸(5−メチル−2−オキソ−[1,3]ジオキソール−4−イルメチル)−4−ニトロフェニルエステルを加え、混合物を室温で撹拌した。沈殿させるために、30mlのアセトン中のエチルヘキサン酸ナトリウムの溶液を加えた。沈殿をろ過し、アセトンで洗浄した。
重量:0.6g
H−nmr(DMSO−d)δ1.9−2.05(m,2H)、2.10(s,3H)、2.7−3.1(m,2H)、3.1−3.6(m,6H)、3.64(q,2H;J=17.1Hz)、4.56(m,1H)、4.87(s,2H)、4.98(d,1H,J=4.9Hz)、5.65(dd,1H,J1=4.9Hz,J2=8.4Hz)、7.34(s,1H)、8.02(s,2H)、9.36(d,1H,J=8.4Hz)
MS−ESI負イオンモード:689.0(M−H,100%)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)の化合物の製造方法であって、
【化1】

少なくとも以下のステップ(a)、(b)および(c):
(a)一般式(3)の化合物
【化2】

(式中、QおよびQは、互いに独立に、水素原子またはシリル基を表す。)
を、一般式(4)の化合物
【化3】

(式中、Rは、アミノ保護基を表す。)
と反応させて、一般式(5)の化合物
【化4】

(式中、Q、QおよびRは、上記で定義した通りである。)
を得るステップ、
(b)一般式(5)の化合物と一般式(6)の化合物
【化5】

(式中、Rは、ヒドロキシ保護基を表し、Yは、活性化官能基を表す。)
とを反応させて、必要な場合には、Qがシリル基を表す場合、保護基の除去の後に、一般式(7)の化合物
【化6】

(式中、R、QおよびRは、上記で定義した通りである。)
を得るステップ、
(c)必要な場合には、Qがシリル基を表す場合、保護基の除去の後に、一般式(7)の化合物を一般式(2)の化合物
【化7】

に変換するステップ、ならびに
(d)一般式(2)の化合物を一般式(1)の化合物に変換するステップ
を含む方法。
【請求項2】
一般式(2)の化合物の製造方法であって、
【化8】

少なくとも以下のステップ(a)、(b)および(c):
(a)一般式(3)の化合物
【化9】

(式中、QおよびQは、互いに独立に、水素原子またはシリル基を表す。)
を、一般式(4)の化合物
【化10】

(式中、Rは、アミノ保護基を表す。)
と反応させて、一般式(5)の化合物
【化11】

(式中、Q、QおよびRは、上記で定義した通りである。)
を得るステップ、
(b)一般式(5)の化合物と一般式(6)の化合物
【化12】

(式中、Rは、ヒドロキシ保護基を表し、Yは、活性化官能基を表す。)
とを反応させて、必要な場合には、Qがシリル基を表す場合、保護基の除去の後に、一般式(7)の化合物
【化13】

(式中、R、QおよびRは、上記で定義した通りである。)
を得るステップ、ならびに
(c)必要な場合には、Qがシリル基を表す場合、保護基の除去の後に、一般式(7)の化合物を一般式(2)の化合物に変換するステップ
を含む方法。
【請求項3】
ステップ(a)が、シリル化剤およびエポキシドの存在下で実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
シリル化剤が、BSAである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
エポキシドが、プロピレンオキシドである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)に従う反応のために、一般式(5)の化合物が、シリル化または塩形成により溶解され、一般式(6)の化合物でのアシル化が実施される場合に、保護基が一段階で除去される、請求項1から5の一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)および(c)が、中間単離操作なしでまたはワンポット工程で実施され得る、請求項1から6の一項に記載の方法。
【請求項8】
一般式(1)の化合物が得られる、請求項1から7の一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8の一項に記載の方法により得られる、一般式(1)の化合物。
【化14】

【請求項10】
請求項2から8の一項に記載の方法により得られる、一般式(2)の化合物。
【化15】

【請求項11】
一般式(5)の化合物
【化16】

(式中、QおよびQは、互いに独立に、水素原子またはシリル基を表し、Rは、Alloc基を除くアミノ保護基を表し、特に、QおよびQは、互いに独立に、シリル基を表し、またはQは水素原子を表し、Qはシリル基を表す。)。
【請求項12】
がトリメチルシリル基を表し、RがBOC基を表す、請求項12に記載の化合物。
【請求項13】
請求項1から8の一項に記載のステップ(a)または(b)のうちの1つのステップに記載の反応により得られる、一般式(5)または(7)の化合物。
【請求項14】
一般式(1)の化合物の製造のための、請求項11または12に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2012−528103(P2012−528103A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512329(P2012−512329)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057105
【国際公開番号】WO2010/136423
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(305008042)サンド・アクチエンゲゼルシヤフト (54)
【Fターム(参考)】