説明

セメント成形板の切断装置

【課題】 従来装置における切断面が好ましくないという問題、及び、比較装置における打抜屑を装置外へ取り出すことが難しいという問題を、剪断も打ち抜きも支障なく行える状態で、一挙に解消し得る手段を提供する。
【解決手段】 セメント成形板Aにおける剪断刃2の接当部分A1を、剪断刃2とは反対側から接当して受け止めつつ、剪断刃2の相対移動を吸収自在な受止部3を設け、且つ、セメント成形板Aにおける打抜刃8の接当部分A2に対し、打抜刃8とは反対側となる部分に、打抜刃8による打抜屑を落下させる落下空間Sを下方へ貫通状態に設ける。しかも、打抜刃8の下端縁高さを、剪断刃2の下端縁高さよりも下方へ突出させた位置に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント成形板の切断装置に関し、更に詳しくは、セメント成形板を、その下方から受け止め自在な受刃部を設けると共に、前記セメント成形板の上方から前記セメント成形板に接当しつつ、前記セメント成形板の厚さ方向へ前記受刃部と擦れ違うように相対移動自在な剪断刃及び打抜刃を設け、前記受刃部に対する前記剪断刃の相対移動によって、前記セメント成形板から切り出される切断品の周囲部を切断自在に構成し、且つ、前記受刃部に対する前記打抜刃の相対移動によって、前記切断品の周囲部から内側に入り込んだ切欠溝部を打ち抜き自在に構成してあるセメント成形板の切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなセメント成形板の切断装置としては、従来、図7に示すように、被切断材としてのセメント成形板Aに対し、剪断刃2とは反対側となる部分に、単に、前記セメント成形板Aを定位置で受け止め自在な受刃部1が設けられたもの(以下、従来装置という)が採用されていた。
【0003】
上述した従来装置では、セメント成形板Aに対して前記剪断刃2とは反対側となる部分に、単に、セメント成形板Aを受け止め自在な受刃部1が存在するだけであり、セメント成形板Aにおける前記剪断刃2との接当部分A1の前記剪断刃2とは反対側部分に、セメント成形板Aをその切断過程で受け止めるものが存在しないため、上述した従来装置による前記セメント成形板Aの切断過程では、前記セメント成形板Aが、単に剪断加工を受けるだけでなく、前記受刃部1の先端よりも更に先端側の部分が前記剪断刃2の移動方向へ偏位するような曲げ変形も受けるようになる。しかも、前記セメント成形板Aは、或る大きさの外力を受けると、比較的容易にクラック等が生じる材料である。従って、前記セメント成形板Aの切断過程においては、前記セメント成形板Aが、単に剪断加工を受けることに加え、前記曲げ変形も受けるようになり、その曲げ変形に基づいて、前記セメント成形板Aには、前記クラック等が比較的容易に発生するようになる。そして、そのクラック等の発生に基づいて、前記セメント成形板Aの切断面が好ましくない状態になる、という問題があった。
【0004】
そこで、本発明者等は、上述した従来装置における問題を解消し得る手段として、図8に示すように、前記セメント成形板Aにおける剪断刃2の接当部分A1を、前記剪断刃2とは反対側から接当して受け止めつつ、前記剪断刃2の相対移動を吸収自在な受止部3を設けた切断装置(以下、比較装置という)を既に開発している。
【0005】
この比較装置によれば、前記セメント成形板Aの切断過程で、前記セメント成形板Aにおける剪断刃2の接当部分が、前記剪断刃2とは反対側から接当する前記受止部3によって受け止められることとなる。従って、前記切断過程においても、前記セメント成形板Aは、従来のような曲げ変形を受けるということが回避されるようになり、上述した従来装置における問題が解消されるようになる。しかも、前記受止部1は、前記剪断刃2の相対移動を吸収することができるようになっているので、従来装置による場合と同様、前記剪断刃2の相対移動に基づく前記セメント成形板Aの切断が有効に行われるようになる。
【特許文献1】特開平11−254227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した比較装置においても、次に述べるような改良すべき問題があった。
【0007】
即ち、上述した比較装置においては、前記切断品の周囲部を剪断切断する部分に取り入れられている技術思想が、単純に、前記切断品の切欠溝部を打抜切断する部分にも適用されており、前記周囲部を剪断切断する部分に、前記セメント成形板の接当部分を受け止めつつ前記剪断刃の相対移動を吸収自在な受止部が設けられると共に、前記切欠溝部を打抜切断する部分にも、前記受止部と同様の機能を果たす受止部、即ち、前記セメント成形板における打抜刃の接当部分を、前記打抜刃とは反対側から接当して受け止めつつ、前記打抜刃の相対移動を吸収自在な受止部が設けられているので、前記切欠溝部を打抜切断したときに、前記打抜刃による打抜屑が、前記打抜刃とそれに対応する前記受止部との間に挟持保持されるようになる。従って、前記打抜刃による打抜屑を装置外へ取り出すことが難しく、その打抜屑が装置内に詰まり易い、という問題があった。
【0008】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであり、上述した従来装置における問題、及び、上述した比較装置における改良すべき問題を、前記剪断切断及び前記打抜切断を支障なく行える状態で、一挙に解消し得る手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るセメント成形板の切断装置(以下、本発明装置という)は、
セメント成形板を、その下方から受け止め自在な受刃部を設けると共に、前記セメント成形板の上方から前記セメント成形板に接当しつつ、前記セメント成形板の厚さ方向へ前記受刃部と擦れ違うように相対移動自在な剪断刃及び打抜刃を設け、
前記受刃部に対する前記剪断刃の相対移動によって、前記セメント成形板から切り出される切断品の周囲部を剪断自在に構成し、且つ、前記受刃部に対する前記打抜刃の相対移動によって、前記切断品の周囲部から内側に入り込んだ切欠溝部を打ち抜き自在に構成してあるセメント成形板の切断装置であって、
前記セメント成形板における前記剪断刃の接当部分を、前記剪断刃とは反対側から接当して受け止めつつ、前記剪断刃の相対移動を吸収自在な受止部を設け、旦つ、前記セメント成形板における前記打抜刃の接当部分に対し、前記打抜刃とは反対側となる部分に、前記打抜刃による打抜屑を落下させる落下空間を下方へ貫通状態に設け、
しかも、前記打抜刃の下端縁高さを、前記剪断刃の下端縁高さよりも下方へ突出させた位置に設定してあることを第一の特徴構成として備えている。
【0010】
また、セメント成形板を、その下方から受け止め自在な受刃部を設けると共に、前記セメント成形板の上方から前記セメント成形板に接当しつつ、前記セメント成形板の厚さ方向へ前記受刃部と擦れ違うように相対移動自在な剪断刃及び打抜刃を設け、
前記受刃部に対する前記剪断刃の相対移動によって、前記セメント成形板から切り出される切断品の周囲部を剪断自在に構成し、且つ、前記受刃部に対する前記打抜刃の相対移動によって、前記切断品の周囲部から内側に入り込んだ切欠溝部を打ち抜き自在に構成してあるセメント成形板の切断装置であって、
前記セメント成形板における前記剪断刃の接当部分を、前記剪断刃とは反対側から接当して受け止めつつ、前記剪断刃の相対移動を吸収自在な受止部を設け、且つ、前記セメント成形板における前記打抜刃の接当部分に対し、前記打抜刃とは反対側となる部分に、前記打抜刃による打抜屑を落下させる落下空間を下方へ貫通状態に設け、
しかも、前記周囲部の剪断のための前記剪断刃の相対移動を、前記切欠溝部の打ち抜きのための前記打抜刃の相対移動に対し、切断段階で遅延させる遅延機構を設けてあることを第二の特徴構成として備えている。
【0011】
第一の特徴構成を備えた本発明装置によれば、前記セメント成形板の切断過程において、前記切断品の周囲部を剪断切断する部分で、前記セメント成形板における前記剪断刃の接当部分が、前記剪断刃とは反対側から接当する前記受止部によって受け止められることとなる。従って、前記切断過程においても、前記セメント成形板は、従来のような曲げ変形を受けるということが回避されるようになる。
【0012】
しかも、前記受止部は、前記剪断刃の相対移動を吸収することができるようになっている。従って、本発明装置によっても、従来装置による場合と同様、前記剪断刃の相対移動に基づく前記セメント成形板の剪断切断が有効に行われるようになる。
【0013】
従って、前記セメント成形板の切断過程において、前記切断品の周囲部を剪断切断が有効に行われることは勿論、前記セメント成形板に従来のようにクラック等が発生するということも回避されて、前記セメント成形板の切断面が好ましくない状態になるということも回避され、もって、前記従来装置における問題が解消されるようになる。
【0014】
しかも、前記切断品の切欠溝部を打抜切断する部分においては、前記セメント成形板における前記打抜刃の接当部分に対し、前記打抜刃とは反対側となる部分に、前記打抜刃による打抜屑を落下させる落下空間が下方へ貴通状態に設けられているので、前記切欠溝部の打抜切断によって生じる前記打抜屑は、前記落下空間を通過して装置下方へ容易に取り出されるようになり、前記打抜屑が装置内に詰まり易いという前記比較装置における問題も解消されるようになる。
【0015】
更に、前記打抜刃の下端縁高さが、前記剪断刃の下端縁高さよりも下方へ突出した位置に設定されているので、前記打抜及び前記剪断の双方を含む切断の過程で、剪断刃による剪断切断に先行して、打抜刃による打抜切断が実行されるようになり、その時間差切断に基づいて、前記切欠溝部の打抜切断が確実に実行された後、前記周囲部の剪断切断も確実に実行されるようになる。
【発明の効果】
【0016】
従って、第一の特徴構成を備えた本発明装置によれば、前述した従来装置における問題、及び、前述した比較装置における改良すべき問題の双方が、前記剪断切断及び前記打抜切断を支障なく行える状態で、一挙に解消されるようになり、もって、本発明の目的が達成されるようになる。
【0017】
また、第二の特徴構成を備えた本発明装置によれば、第一の特徴構成を備えた本発明装置による上述のメリットが生じることに加え、次に述べるようなメリットが生じるようになる。
【0018】
即ち、前記打抜及び前記剪断の双方を含む切断の過程で、剪断刃による剪断切断に先行して、打抜刃による打抜切断を実行させる手段として、剪断刃、打抜刃の各下端縁の元々の高さを異ならせるという上記手段を採用することに替え、第二の特徴構成を備えた本発明装置においては、前記周囲部の剪断のための剪断刃の相対移動を、前記切欠溝部の打ち抜きのための打抜刃の相対移動に対し、切断段階で遅延させる遅延機構を設けるという手段を採用しているため、前記切断の実行前における剪断刃、打抜刃の下端縁高さに予め差異を設けておかなくても、前記切断の実行時における剪断刃、打抜刃の下端縁高さを、前記遅延機構を用いて、打抜刃の下端縁高さの方が剪断刃の下端縁高さよりも低くなるようにすることができ、その切断時における下端縁高さの差異に基づいて、剪断刃による剪断切断に先行して、打抜刃による打抜切断が実行されるようになる。そして、前記切断前における剪断刃、打抜刃の下端縁高さに予め差異を設けておかなくても済むことから、切断前の状態で、打抜刃が下方へ突出してその打抜刃が邪魔になるということがない切断箇所へ、前記セメント成形板を搬入することができるようになり、それによって、前記セメント成形板の搬入作業が、第一の特徴構成を備えた本発明装置を使用する場合よりも容易になる、というメリットが生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は同一又は相当の部分を示している。
【0020】
図1〜図4中、Aは、本発明に係る切断装置(以下、本装置という)による切断対象物としてのセメント成形板であり、その平面形状は単なる長方形となっている。そのセメント成形板Aは、一枚ずつ、図1〜図4に示す本装置内へ送り込まれ、その装置によって、図5に示すように、平面形状が単なる長方形の素材(即ち、前記セメント成形板A)から、所望形状の切断品B(即ち、周囲部B1及びその周囲部B1から一部が内側に入り込んだ切欠溝部B2を備えた切断品B)に切断されて、一枚ずつ順繰りに切り出され、その切断品Bによって、所定形状の瓦材が順次生成されるようになっている。
【0021】
そして、前記所定形状の瓦材は、その多数枚が、屋根葺き時に、図6に示すように重ね葺きされて使用されるようになっている。尚、前記切断品Bは、その底辺の一部が他の部分に対して僅かに傾斜しており、その底辺の僅かな傾斜部分の存在が、前記重ね葺きの状態に視覚的変化を与えて、屋根全体の美観を向上させるようになっている。
【0022】
本装置は、その要部が、以下のように構成されている。
【0023】
即ち、先ず、セメント成形板Aを、その下方から受け止め自在な受刃部1が、前記切断品Bの周囲部B1を形成自在な平面形状(図3参照)に設けられ、しかも、前記セメント成形板Aの上方から前記セメント成形板Aに接当しつつ、前記セメント成形板Aの厚さ方向へ前記受刃部1と擦れ違うように相対移動自在な剪断刃2(図1、図2参照)が、前記切断品Bの周囲部B1を形成自在な平面形状(図4参照)に設けられている。そして、前記受刃部1に対する前記剪断刃2の相対移動によって、前記切断品Bの周囲部B1を剪断切断することができるようになっている。
【0024】
尚、前記周囲部B1形成用の受刃部1の縁部を構成するため、前記受刃部1の本体(即ち、図1、図2に示す固定下型4、又はその付属物)に対し、長尺片状の刃先部1Aの複数個が図3に示すように着脱自在に取り付けられている。それら長尺片状の刃先部1Aは、寿命に達すると、上述の着脱自在な構造を利用して容易に交換されるようになっている。一方、前記周囲部B1形成用の剪断刃2を構成するため、図4に示すように、前記剪断刃2の本体(即ち、図1に示す昇降上型6、又はその付属物)に対し、板状刃物2Aの複数個が着脱自在に取り付けられている。それら板状刃物2Aは、寿命に達すると、上述の着脱自在な構造を利用して容易に交換されるようになっている。
【0025】
また、前記切断品Bにおける前記切欠溝部B2を打抜切断する部分も、前記切断品Bの周囲部B1を剪断切断する部分と同様に構成されている。
【0026】
即ち、前記セメント成形板Aを、その下方から受け止め自在な受刃部1が、前記切断品Bの切欠溝部B2を形成自在な平面形状(図3参照)に設けられ、しかも、前記セメント成形板Aの上方から前記セメント成形板Aに接当しつつ、前記セメント成形板Aの厚さ方向へ前記受刃部1と擦れ違うように相対移動自在な打抜刃8(図1、図2参照)が、前記切断品Bの切欠溝部B2を形成自在な平面形状(図4参照)に設けられている。そして、前記受刃部1に対する前記打抜刃8の相対移動によって、前記切断品Bの切欠溝部B2を打抜切断することができるようになっている。
【0027】
尚、前記切欠溝部B2形成用の受刃部1の縁部を構成するため、前記受刃部1の本体(即ち、図1、図2に示す固定下型4、又はその付属物)に対し、長尺片状の刃先部1Aの複数個が、図3に示すように着脱自在に取り付けられるようになっている。それら長尺片状の刃先部1Aは、寿命に達すると、上述の着脱自在な構造を利用して容易に交換されるようになっている。一方、前記切欠溝部B2形成用の打抜刃8を構成するため、前記打抜刃8の本体(即ち、図1、図2に示す昇降上型6、又はその付属物)に対し、板状刃物2Aの複数個が、図4に示すように着脱自在に取り付けられるようになっている。それら板状刃物2Aは、寿命に達すると、上述の着脱自在な構造を利用して容易に交換されるようになっている。
【0028】
更に、本装置においては、図1、図2に示すように、前記セメント成形板Aにおける前記剪断刃2の接当部分A1を、前記剪断刃2とは反対側から接当して受け止めつつ、前記剪断刃2の相対移動を吸収自在な受止部3が設けられている。更に詳しくは、前記固定下型4に対し、その剪断刃2下方に相当する箇所に、図1、図2に示すように、下方背後からバネ3Aにて弾性付勢されつつ取り付けられることにより、前記相対移動の吸収が行える構造となっている。このような構造によれば、セメント成形板Aの切断過程で、セメント成形板Aにおける剪断刃2の接当部分A1が、剪断刃2とは反対側から接当する受止部3によって受け止められることとなる。従って、前記切断過程においても、セメント成形板Aは、従来のような曲げ変形を受けることがない。しかも、受止部3は、剪断刃2の相対移動を吸収することができるので、前記剪断刃2の相対移動に基づくセメント成形板Aの切断も有効に行われる。
【0029】
また、本装置においては、前記セメント成形板Aにおける前記打抜刃8の接当部分A2に対し、前記打抜刃8とは反対側となる部分には、前記打抜刃8による打抜屑を落下させる落下空間Sが下方へ貫通状態に設けられている。従って、前記切断品Bの切欠溝部B2を打ち抜く時点でも、前記打抜刃8による打抜屑が、前記落下空間Sを経由して下方へ案内されて容易に取り出され、その打抜屑が装置内に詰まるということが回避されるようになる。しかも、前記打抜刃8の下端縁高さが、前記剪断刃2の下端縁高さよりも下方へ突出させた位置に設定されている。従って、前記切断品Bの周囲部B1の剪断切断及び前記切断品Bの切欠溝部B2の打抜切断が行われる時点で、これら一連の切断工程に、前記周囲部B1の剪断切断と前記切欠溝部B2の打抜切断という二つの異なる切断形態が存在するにも拘らず、前記切欠溝部B2の打抜切断が先行して行われた後、前記周囲部B1の剪断切断が遅延して行われるようになり、その時間差切断に基づいて、前記切欠溝部B2の打抜切断が確実に行われた後、前記周囲部B1の剪断切断も確実に実行されるようになる。
【0030】
前記剪断刃2が前記受刃部1と擦れ違うように相対移動自在に設けられている構造及びその周辺構造について、更に詳しく説明する。図1、図2に示すように、上面が前記セメント成形板Aの載置面となっている固定下型4の適宜箇所には、前記受刃部1の取付部4aが形成されており、その取付部4aには、前記受刃部1がボルト5によって取り付けられている。尚、前記受刃部1は、全体形状が上下対称形状に形成され、一定時間使用後には、姿勢が上下反転された上で前記取付部4aに取り付けられることにより、前記受刃部1は、その長寿命化が図られている。
【0031】
前記固定下型4に対して昇降自在に構成された昇降上型6の適宜位置には、図1、図2に示すように、前記剪断刃2が、前記受刃部1に対して前記相対移動が可能なように取り付けられている。また、前記昇降上型6には、前記固定下型4上に載置されたセメント成形板Aを上から押さえ込み自在な押込部材7が、バネ7Aにて上方背後から弾性付勢されつつ取り付けられている。従って、前記周囲部B1の剪断切断及び前記切欠溝部B2の打抜切断が行われる際には、前記セメント成形板Aは、前記押込部材7によって上から押さえ込まれて、有効に保持されるようになっている。
【0032】
次に、別の実施の形態について説明する。
【0033】
上述の実施の形態においては、前記打抜及び前記剪断の双方を含む切断の過程で、剪断刃2による剪断切断に先行して、打抜刃8による打抜切断を実行させる手段として、剪断刃2、打抜刃8の各下端縁の元々の高さを異ならせるという手段を採用したものであったが、このような手段を採用することに替え、前記周囲部B1の剪断のための剪断刃2の相対移動を、前記切欠溝部B2の打ち抜きのための打抜刃8の相対移動に対し、切断段階で遅延させる遅延機構、例えば、前記剪断刃2の駆動系と前記打抜刃8の駆動系とを別個の偏心プレス機構、所謂エキセン機構となし、且つ、それら両駆動系の偏心条件を、前記切断段階での遅延が実現するように相違させておく、という手段を採用する別実施形態が考えられる。
【0034】
このような別実施形態によれば、前記切断の実行前における剪断刃2、打抜刃8の下端縁高さに差異を予め設けておかなくても、前記切断の実行時における剪断刃2、打抜刃8の下端縁高さを、前記遅延機構を用いて、打抜刃8の下端縁高さの方が剪断刃2の下端縁高さよりも低くなるようにすることができ、その切断時における下端縁高さの差異に基づいて、剪断刃2による剪断切断に先行して、打抜刃8による打抜切断が実行されるようになる。そして、前記切断前における剪断刃2、打抜刃8の下端縁高さに予め差異を設けておかなくても済むことから、切断前の状態で、打抜刃8が下方へ突出してその打抜刃8が邪魔になるということがない切断箇所へ、セメント成形板Aを搬入することができるようになる。従って、前記セメント成形板Aの搬入作業が容易なものとなる、というメリットが生じる。
【0035】
また、上述の実施の形態では、前記切断品Bが瓦材であったが、その切断品Bは瓦材に限定されるものではない。また、前記切断品Bの切断形状も、上述の実施の形態のものに限定されるものではない。
【0036】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明装置の要部たる切断刃及びその周辺の構成(切断前)を示す縦断面図
【図2】本発明装置の要部たる切断刃及びその周辺の構成(切断後)を示す縦断面図
【図3】前記切断刃の一方である受刃部を示す平面図
【図4】前記切断刃の他方である剪断刃の底面を示す端面図
【図5】本発明装置を用いて切断される切断品をセメント成形板と共に示す平面図
【図6】前記切断品(瓦材)の使用例を示す斜視図
【図7】従来装置の要部構成を模式的に示す縦断面図
【図8】改良装置の要部構成を模式的に示す縦断面図
【符号の説明】
【0038】
1 受刃部
2 剪断刃
3 受止部
8 打抜刃
A セメント成形板
A1,A2 接当部分
B 切断品
B1 周囲部
B2 切欠溝部
S 落下空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント成形板(A)を、その下方から受け止め自在な受刃部(1)を設けると共に、前記セメント成形板(A)の上方から前記セメント成形板(A)に接当しつつ、前記セメント成形板(A)の厚さ方向へ前記受刃部(1)と擦れ違うように相対移動自在な剪断刃(2)及び打抜刃(8)を設け、
前記受刃部(1)に対する前記剪断刃(2)の相対移動によって、前記セメント成形板(A)から切り出される切断品(B)の周囲部(B1)を剪断自在に構成し、且つ、前記受刃部(1)に対する前記打抜刃(8)の相対移動によって、前記切断品(B)の周囲部(B1)から内側に入り込んだ切欠溝部(B2)を打ち抜き自在に構成してあるセメント成形板の切断装置であって、
前記セメント成形板(A)における前記剪断刃(2)の接当部分(A1)を、前記剪断刃(2)とは反対側から接当して受け止めつつ、前記剪断刃(2)の相対移動を吸収自在な受止部(3)を設け、且つ、前記セメント成形板(A)における前記打抜刃(8)の接当部分(A2)に対し、前記打抜刃(8)とは反対側となる部分に、前記打抜刃(8)による打抜屑を落下させる落下空間(S)を下方へ貫通状態に設け、
しかも、前記打抜刃(8)の下端縁高さを、前記剪断刃(2)の下端縁高さよりも下方へ突出させた位置に設定してあるセメント成形板の切断装置。
【請求項2】
セメント成形板(A)を、その下方から受け止め自在な受刃部(1)を設けると共に、前記セメント成形板(A)の上方から前記セメント成形板(A)に接当しつつ、前記セメント成形板(A)の厚さ方向へ前記受刃部(1)と擦れ違うように相対移動自在な剪断刃(2)及び打抜刃(8)を設け、
前記受刃部(1)に対する前記剪断刃(2)の相対移動によって、前記セメント成形板(A)から切り出される切断品(B)の周囲部(B1)を剪断自在に構成し、且つ、前記受刃部(1)に対する前記打抜刃(8)の相対移動によって、前記切断品(B)の周囲部(B1)から内側に入り込んだ切欠溝部(B2)を打ち抜き自在に構成してあるセメント成形板の切断装置であって、
前記セメント成形板(A)における前記剪断刃(2)の接当部分(A1)を、前記剪断刃(2)とは反対側から接当して受け止めつつ、前記剪断刃(2)の相対移動を吸収自在な受止部(3)を設け、且つ、前記セメント成形板(A)における前記打抜刃(8)の接当部分(A2)に対し、前記打抜刃(8)とは反対側となる部分に、前記打抜刃(8)による打抜屑を落下させる落下空間(S)を下方へ貫通状態に設け、
しかも、前記周囲部(B1)の剪断のための前記剪断刃(2)の相対移動を、前記切欠溝部(B2)の打ち抜きのための前記打抜刃(8)の相対移動に対し、切断段階で遅延させる遅延機構を設けてあるセメント成形板の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−123350(P2006−123350A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314614(P2004−314614)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】