説明

セラミックインク層を実質的に正確に位置合わせをして部分的に印刷したガラスパネル

本願は、ガラスパネル製造方法に関し、当該方法では、複数の別個の被印刷領域および/または複数の別個の非印刷領域へパネルを細分する印刷パターンの形態で複数の層を、ガラスパネルに部分的に印刷し、前記複数の層は、実質的に正確な位置合わせがされるガラスパネル製造方法に関する。実質的に正確な位置合わせは、1つの印刷パターンで複数の層を重ねてガラスシートへ塗布することによって行い、セラミックインクを含む複数の層の1つは、ガラスフリットを含んでいる。ガラスシートとそれに塗布される複数の層とを、熱処理工程にかけて、それによって、印刷パターン内において、ガラスフリットをガラスシートに融合させ、少なくとも1つのインク層を結合させる。印刷パターン外のどんなインクも、熱処理工程中に燃焼除去および/または気化させるか、かつ/あるいは後の仕上げ工程により除去して、印刷パターン内において実質的に正確な位置合わせがされた所望の層を残す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックインクを複数の層にし実質的に正確に位置合わせをしてガラスパネルに部分的に印刷することに関する。
【背景技術】
【0002】
実質的に正確な位置合わせは、インク層を重ねて印刷することによって行い、層の1つは、「印刷パターン」内にガラスフリットを含んでいる。インクのこれらの層は、ガラスシートに直接塗布されるか、またはガラスシートにデカールとして転写される場合がある。ガラスおよびインク塗布層は、熱処理されて、それにより、ガラスフリットが、ガラスに融合し、ガラスフリットを含む層の上または下の少なくとも1つのインク層を結合する。印刷パターン外のインクは、熱処理工程において燃焼除去され、かつ/またはそうでなければ次の仕上げ工程において除去されて、所望のセラミックインク層が、印刷パターンに実質的に正確に位置合わせをされて残される。本発明は、ワンウェイビジョンパネルおよび他の製品の製造に利用可能であって、ガラス上において少なくとも1つの共通の境界線を伴ってインク層を実質的に正確に位置合わせをすることが望ましい。あるいは、間隔をおいて境界線を配置したインク領域は、一方に対して他方を横方向に位置合わせをする。
【0003】
ガラスへのセラミック印刷は、周知である。米国特許第4,321,778号明細書(Whitehead)、英国特許出願公開第2 165 292号明細書(Hill)、国際出願公開第WO00/46043号パンフレット(HillおよびClare)、国際出願公開第WO98/43832号パンフレット(Pearson)、および米国特許第5,830,529号明細書(Ross)は、ワンウェイビジョンパネル、ビジョンコントロールパネル、またはシースルーグラフィックパネル、およびそのようなパネルを製造する方法として種々に記載されている、複数の層を重ねて部分的に印刷されるガラスパネルを開示している。英国特許出願公開第2 165 292号明細書は、実質的に正確な位置合わせがされるインク層を含む不透明な「シルエットパターン」で透明な被印刷体を部分的に印刷するためのいくつかの方法を説明しており、この方法では、一方の側からは見えるが他方の側からは見えないデザインを有するパネルを製造し、一般には、黒色層が、他方の側からの「透視(through vision)」を最大限にするように他方の側を向いている。これらの方法の3つの方法は、「直接」法、「ステンシル」法、および「レジスト」法と呼ばれ、それら全ては、実質的に正確な位置合わせをして所望の「シルエットパターン」を残すために、硬化したインクを除去することを含む。不要なインクのこのような除去は、(直接およびステンシル方法の場合)重ねられたインク層へ全体的な力をかけるか、またはレジスト方法の場合溶剤を全面塗布することによって行われる。英国特許出願公開第2 188 873号明細書(Hill)は、実質的に正確な位置合わせをして印刷するこれらの方法への改良を開示し、別々のインク印刷領域を横方向に位置合わせすることを開示している。国際出願公開第WO00/46043号パンフレット(HillおよびClare)は、実質的に正確な位置合わせをしてセラミックインクでこのようなパネルに印刷する一連の方法であって、ベース層に複数の層を、重ねて印刷し、選択的に力をかけることにより不要なインクを除去することによって一体化させる印刷方法を開示している。
【0004】
セラミックインクは、一般にガラス「フリット」と、金属酸化物顔料と、インク媒体とを含み、このインク媒体は、一般には溶剤、樹脂および可塑剤であり、顔料およびフリットがその中に懸濁される。フリットは、ガラスを溶融し水または空気中において急冷して粒子を小さくしたものであって、この粒子は、次に、粉砕または「ミリング加工」されて、所望の最大の粒径、一般には10ミクロンの粒径にされる。セラミックインクは、パイン油などの油を含有し得る。セラミックインクは、不透明または半透明の場合がある。インク媒体は、単に、媒体、結合媒体またはマトリックスと呼ばれることがある。
【0005】
セラミックインク媒体中の溶剤は、印刷後、インク乾燥または硬化工程において、蒸発して、ガラスフリットと種々の顔料との間の隙間に、樹脂および可塑剤が残される。
【0006】
比較的短い強化サイクルにおいてインクを焼き付けることは、当該技術において知られているが、セラミックインクの焼き付けの際に、この樹脂および可塑剤マトリックスを除去することは、問題となる可能性があり、「緩速焼き付け」法が、好ましいと概ね考えられる。
【0007】
一般に第1段階の緩速熱処理工程後の第2段階として、または印刷パターンがガラスに融合される「インク融合法」として、ガラスは、熱処理工程において強化され、これを焼き戻しと呼ぶ場合がある。英国特許第2 174 383 B号明細書(EastonおよびSlavin)は、水による移し絵方式の転写、ならびに単一段階式の強化およびデカール融合工程によってセラミックインクでガラスを装飾する方法を開示する。
【0008】
別のタイプのビジョンコントロールパネルが、EP特許出願公開第0880439A号明細書に記載されており、このパネルは、透明または半透明のシートと、シートの「中間背景」に対して異なる色の透明または半透明の「ベースパターン」とを備えている。
【0009】
既知のセラミックデカール転写方法には次のものがある。
(i)間接転写、例えば水による移し絵方式の転写、および間接加熱転写、および
(ii)直接転写、例えば直接加熱転写。
【0010】
転写工程は、一般にデカール(デカルコマニアの略)と呼ばれる被転写材料を含み、この材料が、一般にデカールキャリヤと呼ばれる転写キャリヤから、被印刷体の表面に転写される。
【0011】
間接転写方法は、デカールキャリヤからデカールを外す手段と、被印刷体へデカールを接着する手段とが、一般に、転写キャリヤ上の単一の層内において組み合わされている1つの方法である。デカールを、まず手、あるいは他の中間表面または手段でキャリヤから剥がして、次に、パッド、ローラーを用いて被印刷体上に配置する。
【0012】
例えば、セラミックインクを、水により移し絵式に転写することは、一般に、大量生産されたデカールキャリヤを含み、このデカールキャリヤは、一般には、特別に用意された、シーラント層および水溶性接着層を有する紙である。これに、任意選択的に、一般にはメタクリル酸メチルベースのラッカーであるダウンコーティングで印刷またはコーティングする。次いで、それに、必要な画像を形成する所望のセラミックインク層で印刷を行い、次に、一般にはメタクリル酸ブチルまたはメタクリル酸メチルベースのラッカーであるカバーコーティングを塗布する。この転写アセンブリは、一般には水に浸し、カバーコーティング、セラミックインク、任意選択的なダウンコーティング、および接着用のある水溶性接着剤を含むデカールを、キャリヤから外し、次に、一般には手で、装飾が行われる被印刷体表面に貼る。
【0013】
別の例として、間接セラミックインク加熱転写法は、一般に、大量生産されたデカールキャリヤを含み、このデカールキャリヤは、紙、シーラント層、組み合わされた熱活性化剥離および接着層を含み、この組み合わされた層は、一般に接着剤または粘着剤の混合物を組み込んだ改質ワックスである。これに、一般にはメタクリル酸メチルラッカーであるダウンコーティングで、任意選択的に一般に印刷するか、またはコーティングする。次いで、それに、所望のセラミックインク層を印刷し、次に、一般にメタクリル酸ブチルまたはメタクリル酸メチルベースのラッカーであるカバーコーティングを塗布する。その後、デカールを、加熱、一般には紙の下から鋼板を加熱することにより剥がし、この用紙は、剥離/接着剤層を活性化して、それによって、デカールを、キャリヤから外し、次に、手でまたは中間パッド、ローラーを介して、装飾される被印刷体に転写し接着することができる。
【0014】
直接転写法は、転写アセンブリを被印刷体に直接貼り、デカールキャリヤを取り外し、被印刷体上にデカールを残す一方法である。
【0015】
例えば、直接セラミックインク加熱転写は、一般に、大量生産されたデカールキャリヤを含み、このデカールキャリヤは、紙、シーラント層および加熱層を含み、これらは、一般にはポリエチレングリコール(PEG)ワックスを含んでいる。これを、一般にはフィルム形成カバーコーティングであるカバーコーティングで任意選択的に印刷し、このカバーコーティングは、例えば、メタクリル酸ブチルまたはメタクリル酸メチルからなる。その後、それに、所望のセラミックインク層を印刷する。どんなデザインも、被印刷体のインク側から意図した向きとは逆に印刷する。熱活性化接着層に、例えば、メタクリル酸樹脂を塗布する。その後、一般に、被印刷体の表面に接着層を接触させて、この転写アセンブリを直接被印刷体に配置する。紙を介して加熱し、この加熱によって、接着層と別の加熱剤とが、同時に活性化される。これによって、接着剤、セラミックインクおよび種々のカバーコーティングからなるデカールが、被印刷体に接着され、キャリヤから転写されて、このキャリヤを、デカールおよび被印刷体から取り外す。被印刷体は、任意選択的に予熱してもよい。
【0016】
「カバーコーティング」および「ダウンコーティング」という用語は、常に被印刷体に対する位置に関連して使用しており、カバーコーティングは、被印刷体のインク上の層であり、ダウンコーティングは、被印刷体のインクの真下の、被印刷体に接着される層である。
【0017】
セラミックデカールが転写される一般的な被印刷体には、深さのある陶磁製の家庭用食器、平たい陶磁製の家庭用食器、中空のガラス食器および平たいガラス食器が含まれる。
【0018】
上記の転写材料および方法はすべて、当該技術において周知である。
【0019】
多くの自動デカール貼付方法、例えば、国際公開第WO98/43832号パンフレットに記載されたすべて機械による処理である、焼き付け用オーブンおよび炉が、考案されている。
【0020】
セラミックインクを、フロートガラス、アニールガラスと呼ばれることがある通常の平坦なガラスシートに塗布した後、次に、印刷されたガラスシートを一般には570°Cの温度まで加熱処理して、これにより、ガラスフリットおよび顔料以外のセラミックインクの全構成成分が燃焼除去され、ガラスフリットが溶融し、インクの残りがガラスに融合し、一般にはその次に、ガラスを、比較的緩慢に冷却して、再度アニールし、この工程を「インク融合法」と呼ぶ。任意選択的には、セラミックインクを有しアニールされたガラスの被印刷体に、焼き入れまたは強化法を行い、この方法は、ガラスの温度を、一般にはガラスが比較的軟化する670°Cと700°Cとの間の温度に上昇させ、次に、比較的急速に、一般には低温の空気による焼き入れにより、冷却することを含む。これによって、ガラスシートが差異を伴って冷却され、中心が凝固する前に、2つの主要な表面が凝固する。その後、中心が冷却され収縮することによって、主要な各表面に隣接する領域が、先に圧縮される。ガラスシートの物理的な強度特性は、このようにガラスを焼き入れまたは強化する方法によって、根本的に変化させられ、これによって、曲げ強度が著しく改善されて、焼き入れまたは強化されたガラスができる。このようにガラスを焼き入れまたは強化する方法は、別のインク融合法の後にまたは1つの工程として、行ってもよく、インクは、その1つの工程の一部分として、ガラスに融合される。
【0021】
インク融合法またはガラス焼入れ方法では、どんな転写工程の接着剤、カバーコーティング、ダウンコーティングおよびセラミックインク媒体も、炉内において燃焼除去され、その結果できたパネルの一部にはならない。
【0022】
知覚される色を強化するために、ガラスフリットの割合が比較的低いセラミックインクを用いてデザインを印刷し、次に、顔料と「結合する」ように、以下でフラックスと呼ばれる場合がある、ガラスフリットを有し澄んだ透明なセラミックインクの全面層を重ね刷りすることは、当該技術では既知である。米国特許第3,898,362号明細書(Blanco)は、オーバーグレーズセラミックデカール製造方法を開示しており、この方法は、バッキングシートに、ガラスのないデザイン層をウェット印刷し、別々に、未乾燥のデザイン層に、予め溶融させたガラスフラックスの保護コーティングを積層することによって行われる。米国特許第5,132,165号明細書(Blanco)、および米国特許第5,665,472号明細書(Tanaka)は、この工程への改良を開示している。Blancoは、さらに、先行技術の平版デカール印刷法を開示し、この方法では、透明ワニス中の1つの顔料用の所望のパターンの層を印刷し、その後、平版工程においてシート全体の顔料のダストを払い、シートを清浄にし、ワニスがある場所にのみ顔料を残す。1つを超える色が必要な場合、各段階の間に本工程を繰り返し乾燥を行わなければならない。
【0023】
EP特許出願公開第1 207 050A2号明細書(Geddes他)は、セラミック着色画像をバッキングシートにデジタル印刷し、その次に、フリットおよびバインダーを含有する全面的なオーバーコーティングを行う転写方式を開示している。Geddesは、フリットのないインクを熱転写デジタル印刷することも開示している。
【0024】
ガラスフリットを含有した単一のインク層を有する複数のインク層が、部分的に被印刷体をカバーするようにパターンを画定して、その断面は、被印刷部分と非印刷部分とを交互に含むことを、先行技術のどれもが開示していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明によれば、ガラスパネルを製造する方法であって、パネルを複数の別個の被印刷領域および/または複数の別個の非印刷領域に細分する印刷パターンの形態で複数の層が部分的に印刷され、前記複数の層が実質的に正確に位置合わせされる方法が存在し、本方法は、(i)前記印刷パターンの形態で複数の層をガラスシートに設けるステップであって、前記複数の層の1つの層は、ガラスフリットを含むセラミックインクを含有し、前記複数の層の別の層は、ガラスフリットを含まないセラミックインクを含有するステップと、(ii)ガラスシートおよび複数の層を加熱処理工程にかけるステップであって、前記ガラスフリットが、前記印刷パターン内において、溶融し前記ガラスシートと融合し、前記複数の層の別の層を結合する前記ステップと、(iii)前記印刷パターン外の前記複数の層の別の層の部分を、前記熱処理工程中に燃焼除去しかつ/または気化させ、かつ/あるいは次の仕上げ工程により除去するステップとを含む。
【0026】
ガラスフリットのない単一または複数の被塗布層は、それ以外はセラミックインクと同様であるのが一般的であり、顔料と、一般に溶剤、樹脂および可塑剤である結合媒体またはマトリックスとを含むか、あるいは顔料と、硬化し得る樹脂、例えば紫外線硬化樹脂からなる媒体とを含む。
【0027】
複数のインク層は、ガラスに直接スクリーン印刷されるか、あるいは予め印刷されたデカールキャリヤ材から転写するデカールの形態でガラスに塗布されることが一般的である。デカールは、間接的に塗布を行い、例えば、水による移し絵方式の転写デカールであるが、一般には熱および圧力によって、キャリヤから直接塗布されることが好ましい。
【0028】
ガラスフリットを含有するセラミックインク層は、熱処理工程において少なくとも1つの他の層内への移動にガラスフリットが必要であることから、ガラスフリットの割合が高いことが一般的であり、本明細書では、フリット入りセラミックインクと呼ぶ場合がある。
【0029】
印刷パターンを画定するフリット入りセラミックインク層には、ガラスを印刷することによって、あるいは間接デカールまたは直接デカールによって、
(i)ガラスパネル表面への塗布(本明細書では「下部印刷パターン」と呼ぶ)、または
(ii)他の単一または複数の層の露出された上部表面への塗布(本明細書では「上部印刷パターン」と呼ぶ)、または
(iii)他の複数の層同士の間への塗布(本明細書では「中間印刷パターン」と呼ぶ)
のいずれかを行うことができる。
【0030】
デカールによるガラス表面へのインクの転写は、単一または複数の段階で行うことができる。
【0031】
例えば、前述の方法は、組み合わせ可能であり、例えば、ガラスフリットの「下部印刷パターン」を、最初に直接スクリーン印刷によりガラスシートに塗布し、その次にデカールの形態で他の単一または複数の層に塗布してもよい。あるいは、ガラスフリットの「下部印刷パターン」を、最初にデカールにより塗布し、次いで、ガラスパネルを直接印刷することによって、または別のデカールによって、他の単一または複数の層を塗布してもよい。
【0032】
熱処理工程は、例えば570°Cの温度で、被印刷パネルがゆっくり加熱される第一次熱処理を含むことが好ましく、その目的は、樹脂および可塑剤マトリックスをゆっくり燃焼除去して、急速加熱により、ピンホールが生じる可能性、インクが「縮れて」皺になる可能性、および他の欠陥が生じる可能性を最小限にすることである。セラミックインクは、不活性顔料を含むことが一般的であり、一般に金属酸化物または貴金属、あるいは加熱サイクルにおいて「燃焼除去されない」他の材料を含む。加熱に続いて、セラミックインク中の樹脂および可塑剤マトリックスは、実質的に「燃焼除去」され、印刷パターン外のガラス領域には顔料がダストの形態で残り、ガラス表面には、結果として光学的ひずみのない平面が残る。不要な顔料粉末を、後の工程において、例えば真空吸引、任意選択的に「真空ナイフ(vacuum knife)」、ウォータージェットまたはエアジェット方式で除去可能である。ガラスを強化する必要がある場合、これは、次の熱処理工程において行うことが一般的であって、この工程は、ガラス温度を一般に670°Cと700°Cとの間に上昇させることを含み、この温度範囲において、ガラスを、比較的柔らかくし、次に、一般には低温空気による焼き入れをすることによって比較的急速に冷却する。したがって、次の強化工程は、空気による焼き入れを含み、空気による焼き入れ工程で顔料ダストを吹き飛ばすことなく行い得ることが保証される。
【0033】
本方法は、1つの層から、印刷パターンを画定する層の下にあるか、またはその上に重ねられた他の単一または複数の層へ、溶融したガラスフリットが移動すること、あるいは顔料が、溶融したフリットの層内へ沈下することに依存することが一般的である。この移動または沈下は、以下のメカニズムの1つまたはそれらの組み合わせによって生じる。
(i)重力、
(ii)(表面張力により生じる)毛管作用、
(iii)熱処理炉内において樹脂および可塑剤が気化する前の、フリット入りの溶融樹脂および可塑剤の、例えば膨張による移動、
(iv)吸引、例えば、上部インク層から樹脂マトリックスを燃焼除去することにより、以前はマトリックス材を含んでいたインクの隙間内に部分的に真空が引き起こされることにより生じる吸引、
(v)熱処理および真空/排気を行い得るオートクレーブの排気により生じる真空または部分的な真空、
(vi)熱処理および圧力を生じ得るオートクレーブ内においてかけられる圧力、または
(vii)遠心力。
【0034】
インクの各層を完全に乾燥または硬化させることは、顔料が1つの層から別の層へ移動するなど、層同士の間の望ましくない相互作用を最小限にするように、セラミックインクの層を重ねることで、製品を順調に製造することに、非常に重要であることが知られている。
【0035】
インクのすべての層を塗布した後に熱処理を行う代わりに、印刷パターンを予め塗布している場合、熱処理は、どの段階でも行うことができる。例えば、まずセラミックインクの「下部印刷パターン」を塗布して、次にその1つの層のみを溶融させ融合させるように第1の熱処理を行い、次いで、次の単一または複数のインク層を塗布して、次に第2の熱処理工程を行う。これによって、第1の層内の樹脂マトリックスを第一次熱処理段階において燃焼除去して、これにより、最終加熱段階において燃焼除去されるマトリックスの量を減少させることができ、さらに重要なことは、溶融したフリットが上部の単一または複数の層内に移動する可能性を最大限にすることができ、それは、上部の単一または複数の層内の樹脂マトリックスを燃焼除去することにより生じる吸引力と、溶融したフリットが上方へ動く種々の毛細管作用、または溶融したフリット内へ顔料が沈下する重力による作用と結びつけられることによって、最大限にすることができる。予め処理されたこの「下部印刷パターン」の第1の層は、着色顔料のない、透明なフリット入りのセラミックインクであることが好ましい。
【0036】
このように「下部印刷パターン」を予め印刷し、この印刷パターンを焼き付けることによって、ストック、「部分処理済みパネル」とみなし得る処理済みガラスの製造が可能になる。次の黒色および白色層を、種々のデザインのための均一な背景を提供するために追加し得る。次いで、黒色および白色層は、任意選択的に加熱処理可能であり、印刷パターン外の不要な黒色および白色顔料は、除去するか、あるいはそれらは、代わりの「部分処理済みパネル」を形成するように均一な層として残してもよい。「部分処理済みパネル」には、次に、異なる製品種類のための印刷を行ってもよく、それは、複数の生産操業または1回限りで複数のパネルに1つまたはそれ以上の着色層を塗布することによって行う。必要な種々のデザインの色を、そのような「部分処理済みパネル」に、スクリーン印刷、平版印刷、またはデジタル印刷することができ、画像が形成されたパネルは、最後に加熱処理され、印刷パターン外の不要なデザイン色顔料を除去することができる。デザインは、単一の「スポット」色または4色で加工処理し、あるいは他の複数の色で加工処理してもよいし、また例えばガラス張りの建物の正面全体に、全面ディスプレイを設けるように、「タイル張り」することもできる。スクリーン印刷、平版印刷、インクジェット印刷、静電印刷、電子写真印刷、熱転写印刷などの、(黒色および/または白色の「不透明層」と、熱転写キャリヤに予め印刷されているか、または熱転写リボンからデジタル印刷されるデザインとに)適切な種々の印刷工程を用いることができる。この方法の特に好ましい変形は、予め印刷を行う2つのタイプのデカールキャリヤに基づく。1つは、透明セラミックインクの印刷パターン層を有する。この印刷パターン層は、まずガラスシートに転写され、予め焼き付けされる。予め印刷される第2のタイプのデカールキャリヤには、黒色層に、それぞれフリットのない1つまたは2つの白色層を重ねて印刷し、この白色層に、フリットなしのインクで重ねて印刷して特定のデザインを形成し、その結果生じた黒色、白色、およびデザインが層状になったデカールを、被溶融フリット印刷パターンでガラスパネルに転写する。第2の熱処理において、フリットは、他の層をガラスパネルに結合する。
【0037】
樹脂マトリックスは、2つの方法の1つの方法で固体状態から液体状態へ変化し得る。炉温度が上昇することで、どちらの固体の樹脂も、いわゆる熱分解温度で直接炭化され「燃焼除去される」か、あるいは溶融または液体状態を経て気化し得る。一般に、徐々に上昇する温度領域において、上部層内の樹脂が、それより下の層内の樹脂より前に「燃焼除去」または気化し得るように、異なるインク層には別の樹脂を選択し得ることが好ましい。このように異なる層から樹脂を段階的または連続的に除去することによって、顔料および/またはフリットの層の障害と、重ねられたインク層の焼き付けに一般に関連する欠陥とが最小限になる。
【0038】
通常のセラミックインクを「焼き付け」、マトリックスを「燃焼除去」または気化させるとき、インク層は、「急激に落ち込む」かまたは厚さが薄くなり、それは、顔料が溶融したフリット内を移動して、それが、樹脂マトリックスにより残された顔料の間の空隙の少なくともいくつかをふさぐからである。しかしながら、フリットがないセラミックインクまたはセラミックタイプのインクの場合、結果として生じるインク構造および焼き付けた結果残る厚さは、主に、顔料粉末の「粒径」または「粒度分布」の性質に依存する。どんな固体粒子も、いわゆる「粒度曲線」または「粒度分布曲線」を有し、これらの曲線は、異なる粒径範囲における割合を表わす。これは、石および砂などのより大きなサイズの粒子を、開口サイズが異なるふるいにかけることにより確認し測定し得る。より小さなサイズの粒子については、レーザ散乱技術、例えば.....により製造されるHORIBA LA−920などの別の技術が必要であって、それは、0.02から2000ミクロンまでの粒径を測定するということである。セラミックインクおよびコンクリートなどの複合材料の場合、より細かい固形物がより大きな固形物同士の間の隙間を満たすことになるような、固形物の粒度曲線を提供する点で、利点が存在し得る。コンクリートでは、砂または「細骨材」が、「石骨材」間の空隙を満たす。セラミックインクでは、より細かい顔料粒子がまた、より大きな顔料粒子間の空隙を満たすことになる。そのような顔料粒子の分布曲線によって、顔料を結合し、ガラスシートおよび/またはセラミックインク層に熱処理された層を融合するのに必要な溶融フリットの量が最小限になる。しかしながら、コンクリートおよび他の微粒子材料技術では、「空隙による類別化」用の粒度曲線を固形物が有することが知られている。例えば、より細かい粒子がない場合、より大きな粒子同士の間の隙間または空隙の割合が高くなる。空隙により類別化される顔料粒子は、紙フィルタおよび超音波振動技術、または空気およびサイクロンシステムを用いて、精選し得る。このように空隙により類別化された構成は、1つの層から別の層へガラスフリットを比較的容易に移動させ得ること、ならびに溶融した樹脂により運ばれる細かい顔料が移動すること、あるいは燃焼除去される樹脂または溶融したガラスフリットが1つの層から別の層へ移動することを最小限にし得る(もしそうでなければ、1つまたはそれ以上の層内において望ましくない色の混合が生じてしまう)本方法において好ましい。あるいは、細かい下地顔料は、溶融した樹脂または他のメカニズムによって、その顔料より大きな粒径であり空隙により類別化されたフリット層内へ運ばれ得る。
【0039】
顔料に対して、フリットは、任意選択的に、熱処理工程において気化する前に溶融したマトリックスにより運ばれることにより、層同士の間を所望のように移動する。溶融した、適切な流動性の樹脂および可塑剤マトリックスは、水が吸取紙へ吸収されるのと同様に、表面張力または毛管作用によって隣接した層の空隙内へ移動する。例えば、フリット入りの印刷パターンとフリットなしのインクカバー層とを有するガラスパネルは、印刷パターン層におけるよりもカバー層において、樹脂マトリックスの溶融および気化温度が低くなるように構成されることが好ましい。したがって、カバー層のマトリックスは、印刷パターン層内のマトリックスより前に気化し、印刷パターン層内のマトリックスは、それ自体が気化する前に、上部層内へフリットとともに移動する。この移動は、一般に、上部層内においてマトリックスが気化することによって生じる部分的な真空によって促進される。
【0040】
溶融したマトリックス内にフリットを移動させることは、さらに、インクマトリックス内へ膨張剤を導入して、フリット入りの溶融したマトリックスを、マトリックスがより低い溶融および気化温度を有する(そうでなければ、最初に「燃焼除去」されてしまう)1つまたはそれ以上の他の層の間隙内へ押し込むことによって、可能となる。
【0041】
したがって、顔料およびフリット両方の粒径または粒度分布曲線、および樹脂マトリックスの特性は、本方法を最適化するように、特に印刷パターン層から別の単一または複数の層へフリットを再分布させるために、各層において選択可能である。
【0042】
セラミックインクでは、顔料1対フリット10のオーダーからなることが一般的である。「フリット入り」インクを提供するためにこの比率を高くすると、知覚される種々の色の強度が減少してしまう。フリット入りの着色セラミックインク印刷パターンを具えることには利点のある場合があり、例えば別の白色インク層に関連づけて見えるように追加の二酸化チタン白色顔料を含ませて、白色の全面的な不透明度を高められる点で利点のある場合があるが、本方法では、フリット入り印刷パターン層を、「無色透明」と呼ぶことがある透明または無色にすることが好ましいのが一般的である。したがって、色は、よりよい色強度および色調節のために他の層に集中して設け得る。中間印刷パターンの場合には、透明なフリット入りインクは、色同士の間に、例えば黒色のドットに白色ドットを重ねた単純なビジョンコントロールパネルの白色層と黒色層との間に、またはその逆の色同士の間に別個の層を設けることのさらに別の潜在的な利点を有する。白色および黒色のセラミックインクを重ねた層を含む先行技術のパネルには、顔料の転写、クラック、ピンホールまたは他の欠陥によって、見ている側から他方の側の色が見えてしまうことがあるという点で、問題がある。中間の透明インク層によって、1つの層から他の層への顔料のこのような移動が最小限になる。
【0043】
本発明の本方法は、ビジョンコントロールパネルを形成するために、先行技術の方法と組み合わせてもよく、例えば1つの色の印刷パターンを印刷し、これに、英国特許出願公開第2 118 096号明細書(Hill)および第2 165 292号明細書(Hill)に開示の別の色の顔料を振りかけることと組み合わせてもよい。例えば、まずデザインを、次いでフリット入りの白色セラミックインクの印刷パターンを、ガラスまたはデカールキャリヤに印刷し硬化させ、それに、まだ湿気があるときに、黒色顔料、例えば黒色の酸化鉄を振りかけ、次に硬化させてもよい。これらの層を有するガラスシートを焼き付けると、白色インク層内のフリットは、デザインおよび黒色顔料をガラスシートに結合して、ビジョンコントロールパネルが形成される。
【0044】
例えば、ガラスフリットの移動を促進するために、構成材料の粒径分布が、重要であって、例えば、最大寸法が3ミクロン未満に粉砕されたガラスフリットは、粒径が約8から10ミクロンの、間隙により類別された顔料の層内へ移動し得る。
【0045】
一般にドットまたはラインの印刷パターンを有するワンウェイビジョンコントロールパネルと同様に、本方法は、実質的に正確な位置合わせが望ましい様々な他の製品を製造するために用いることができる。例えば、デザインの色は、一般に、白色の背景上に見えるようにするために必要であることが知られている。本方法によって、着色されたデザインを、例えば建築上のサイン、ガラスのドアに赤色で「出口ではありません」のしるしを印刷することができ、この印刷は、白色の層を赤色の各文字の下に正確に配置して、各層の周囲を実質的に正確に位置合わせして、赤色または白色の層にはフリットを入れ、他の層にはフリットを入れないことによって、行われる。
【0046】
別の例として、本方法は、異なる色の単一の層を横方向に位置合わせするように使用してもよい。例えば、建築物の仕切用装飾ガラスパネルには、赤色および灰色のラインを交互に含ませてもよい。通常の先行技術の印刷方法では、必然的に位置合わせがうまくいかない。一般には、2つの異なるスクリーン印刷用スクリーンを使用して塗布される、着色されたラインの2つのセットでは、このような生産操業において、単一のパネルの異なる部分および異なるパネルではライン同士の間の間隔が異なってしまう。単一の層内のすべてのラインを透明なガラスフリット印刷パターンで印刷することによって、単一のパネルを通じて、また生産操業の全てのパネルについて、他の色の上下いずれかに、また透明なガラスフリットラインに部分的に重なる他の色の上下いずれかにおいて、必要なラインの色、厚さ、間隔を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
図1Aに、一般にはアニールされた通常のガラスからなるガラスパネル10を示す。図1Bでは、印刷パターン13の被印刷領域同士の間に非印刷部分15を残して、着色された下部印刷パターン層14をガラスパネル10に塗布している。層14は、一般に、ガラスフリットを含むスクリーン印刷用のセラミックインクを含んでいる。例えば、簡単なビジョンコントロールパネルを製造するには、一般に、印刷パターンを、規則的なレイアウトのドット、ライン、または他の幾何学的形状のパターンにし、また層14は、一般に、よく透視し得るように黒色にする。図1Cでは、印刷パターン13中の層14には、層20が重ねられており、この層20は、一般にセラミックインクと同様のインクからなるがガラスフリットはなく、スクリーン印刷されるのが一般的である。単純なビジョンコントロールパネルでは、層20は、一般に、白色または他の明るい色である。図1Dでは、印刷されたパネルは、熱処理工程を経て、この熱処理工程は、一般に、印刷されたパネルを炉内に配置し、インク媒体またはマトリックスが燃焼除去され印刷パターンの外側の領域15に顔料ダスト(図示せず)が残る温度領域にすることによって、行われる。図1Eにおいて、熱処理工程によって、ガラスフリットが溶融しガラスパネル10に融合する。溶融したフリットのいくらかは、層20内に移動し、その組成が改質されて層120になり、層14も、ガラスフリットが減少することにより改質されて、層114になる。必要に応じて、真空吸引、エアジェット、またはウォータージェットにより、不要な顔料ダストを除去可能である。
【0048】
層14には、層120へ改質される層20のすべてまたは一部分を結合し、層114へ改質される層14の全てまたは一部分を結合するのに十分なガラスフリットがある。層120および114は、印刷パターンの形態で、実質的に正確な位置合わせをされたままである。したがって、ガラスフリットを含む層14は、ガラス表面に残る最終パターンを決定する制御層として有効である。例えば、層114は、黒色のセラミックインクを含み、層120は、白色のセラミックインクを含み、印刷パターンは、ドットからなる規則的なパターンを含み、その結果生じるパネルは、一方の側からは白色に、他方の側からは黒色に、片側が同じ外観の典型的なワンウェイビジョンパネルを形成する。黒色のドット114によって、黒色インクに面した側からパネルをよく透視することができ、白色インク120は、入射光を反射し、非印刷領域15から透視できないようにすることに役立つ。
図2Aから図2Eに、同様の製品を作り出す本発明の代替方法を示す。図2Bにおいて、図2Aのガラスパネル10は、一般にセラミックインクと同様だがセラミックインクのガラスフリット成分がない層14でコーティングされる。図2Cでは、第2の層20を、上部印刷パターン13の形態で塗布し、この層は、一般にガラスフリットを含むセラミックインクである。図2Dでは、図2Cの印刷されたパネルを熱処理し、それによって、層20のガラスフリットが、溶融し、ガラスフリットの一部分が、第1の層14中に移動し、ガラスパネル10と融合する。印刷パターン13の範囲外の第1の層14の部分は、熱処理炉内において燃焼除去し、かつ/または次の仕上げ工程において除去する。図2Eでは、フリットが減少することにより改質されて層120になる層20と、フリットが追加されることにより改質されて層114になる層14とを、非印刷部分15を残すように、印刷パターン13の形態で、実質的に正確に位置合わせをして重ねる。
【0049】
図3Aから図3Fに、図1Eおよび図2Eの例と同様の外観のパネルを製造する、本発明の別の変形を示す。しかしながら、この方法では、図3Bにおいて図3Aのガラスパネル10を第1の層14でコーティングし、図3Cでは、中間の印刷パターン層100を塗布する。層100は、一般に、水性透明セラミックインクを含み、このインクがスクリーン印刷されて、印刷パターン13が形成される。しかしながら、印刷パターン層100は、種々の色にすることができ、例えば、黒色ドット上に白色を用いてパネルを製造する際には、次の白色層20と関連して不透明度がより知覚される白色ドットを得るために、層100を白色にすることができる。図3Dでは、印刷パターン層20を、層100、および層14の露出された部分に塗布し、印刷パターン層20は、一般に、セラミックインクと同様だがガラスフリットのないインクを含んでいる。図3Eでは、熱処理法によって、層100内のガラスフリットが、溶融し層14を移動して、ガラスパネル10への融合が生じ、さらに層20の厚さの全てまたは一部分が、層100に結合する。図3Fでは、層20および14は、フリットが追加されることにより改質されて、層120および114が形成され、この層120および114は、印刷パターン13に、実質的に正確な位置合わせをして重ね合わされて、各側から均一な色の外観、例えば一方の側からは白色ドット、他方の側からは黒色ドットの外観を見せる。
【0050】
図4Aから図4Cは、図2Aから図2Cと同様であり、一般に、層14は黒色であり、層20は白色である。デザイン層25を選択的にパネルに塗布し、デザイン層25は、層20とは異なる色であり、フリットのないセラミックインクであることが一般的である。図4Eは、熱処理にかけられた図4Dのパネルを示し、この熱処理で、層20内のフリットが、溶融し層14を移動して、ガラスパネル10に融合し、デザイン層25の厚さの全てまたは一部分が、層20へ結合されている。印刷パターン13の領域外の層14および25は、図示していない顔料粉末を除いて、燃焼除去されている。結果として得られた図4Fのパネルは、フリットが追加されて改質された層125および114と、フリットが減少して改質された層120とを有する。図4Fのパネルは、英国特許出願公開第2 165 292号明細書による、ワンウェイビジョンシースルーグラフィックパネルであり、このパネルにおいて、デザイン125は、パネルの一方の側から見え、パネルの他方の側からは、よく透視し得る。一般に、層114および120は、ドット、ラインまたは他の規則的な幾何学要素または不規則な幾何学要素からなる不透明な印刷パターン13の形態で、例えば推計的な印刷パターンで、それぞれ、黒色、白色にされる。
【0051】
図5Aから図5Eの方法は、図5Bに示すように、デザイン層27がガラスパネル10に対して最初に印刷されること以外は、図4Aから図4Fの方法に類似しており、一般に、層27は、フリットがないセラミックインクをスクリーン印刷したものである。図5Cでは、層20は、印刷パターン13を形成し、一般に、白色でフリットを有するスクリーン印刷用セラミックインクである。図5Dにおいて、これに、層14を重ね、層14は、一般に、フリットがない黒色のセラミックインクである。図5Eおよび図5Fに、図4Eおよび図4Fと同様の工程を示す。図4Fにおいて、改質された層120が白色であり、かつ改質された層114が黒色である場合、透視は、黒色の側からよく行うことができ、デザイン127は、他方の側からガラスパネル10を通して見える。
【0052】
図6Aから図6Gの方法は、図6Dにおいて層100が一般にフリット入りのセラミックインクからなる印刷パターン13を形成することを除いて、前の方法に類似しており、他の層、デザイン層27、および背景の層20および14は、すべて、フリットなしのセラミックインクを含有している。
【0053】
図7Aから図7Kの方法において、図7Bでは、図7Aのガラスパネル10に、まず一般にはスクリーン印刷用の水性透明セラミックインクである層100を印刷パターン13の形態にして設け、このインクは、フリットがないセラミックインクからなるその後の全ての層と結合する。この構成には、以下の利点がある。ガラスパネルに、透明セラミックインク100である印刷パターンを大量印刷し、その後に複数の層、および一方または両方の側を向いたデザインの構成を種々に変更することができる利点がある。よって、図7Cから図7Fに、熱処理、およびその後の種々の仕上げ工程を行うことで、図1Eおよび図2Eのパネルと同様の一枚のパネルを作り出す一連の層を示す。あるいは、図7Gから図7Kには、図5Fおよび図6Gと同様に、ガラスパネル10を通して見える改質されたデザイン層127と、他方の側から完成したパネルを通してよく透視でき一般に黒色である均一な層16とを提供する一連の印刷および処理を示す。この方法には、さらに利点があり、その利点は、図7Bにおいて透明な「下部印刷パターン」を、予め焼き付け、この層内の樹脂および可塑剤マトリックスを除去し得ることであって、これは、次の層を塗布し、印刷パターン13内のガラスフリット100が他の層内へ移動し、かつ/または他の層内の顔料が印刷パターン13内のガラスフリット内へ沈下して、他の層がパネル10へ結合する燃焼をさせる前に行う。この方法の変形として、「下部印刷パターン」100を、セラミックデカール(ceramic decal)により塗布する。図7Bのパネルは、例えば図7Cから図7Fまたは図7Gから図7Kによって、異なる方法でその後に画像を形成することができる「部分的に処理されたパネル」とみなすことができる。
【0054】
図8Aから図8Fのシーケンスは、フリットがないセラミックインクであるデザイン層27およびデザイン層25が、印刷パターン13の形態でセラミックインク層20により結合されること以外は、前出の方法と同様の段階を採用している。図8Fでは、改質されたデザイン層125は、パネルの一方の側から見え、パネルの他方の側からは見えず、それに対して、改質されたデザイン層127は、パネルの他方の側から見え、最初の側からは見えない。
【0055】
図9Aから図16Hに、本発明の別の態様を示し、この態様では、インクの層を、まず間接的なデカールキャリヤ11に塗布し、次に、熱処理工程前にガラスパネル10に転写する。それ以外の同様の参照番号は、ここでは、またその他の図9から図15では、図1から8における方法に対応する方法を示す同様の要素を示している。デカールキャリヤ11は、一般に、印刷し次にガラスシート10へ所望のデカールを外して張り得るように、コーティングされた紙基材を含んでいる。例えば、水による移し絵方式の転写には、一般に、シーラントコーティング、ならびに水溶性接着剤コーティングおよび任意選択的にダウンコーティング、例えばメタクリル酸メチルラッカーをコーティングする。一般に、カバーコーティング35は、メタクリル酸ブチルまたはメチルからなる。
【0056】
図17Aから図24Iに、前出の図1から図8および図9から図16の方法に対応する方法だが、例えば直接的なセラミックインク加熱転写方式でデカールを直接貼るのに適するデカールキャリヤ11を用いる方法を示す。デカールキャリヤ11は、一般に紙、シーラント層、および加熱層を含み、これらは、一般にはポリエチレングリコール(peg)ワックスを含んでいる。これには、任意選択的にカバーコーティング、一般には、例えばメタクリル酸ブチルまたはメチルからなるフィルム形成カバーコーティングを伴って印刷される。例えば、他の層の塗布(前出の図中の同様の要素には同様の番号を用いて説明する)に続いて、熱活性化接着剤層29、例えばメタクリル酸樹脂を、塗布する。その後に、ガラスパネル10の表面に対する接着層を具えたこの転写アセンブリを、ガラスパネル10に直接配置するのが一般的である。加熱は、例えば、接着層と個別の加熱剤とを同時に活性化する加熱ローラーまたはプレートから、紙を介して行う。これによって、接着層のデカール、フリット入りのセラミックインク印刷パターンおよびフリットなしのセラミックインク層、ならびに種々のカバーコーティングが、被印刷体に接着され、キャリヤから転写が行われ得、キャリヤが、デカールおよび被印刷体から解放され、取り外される。転写は、加圧により、一般にはニップローラーにより促進される。被印刷体は、任意選択的に予熱可能である。
【0057】
図25Aおよび図25Bに、図4F、図12Hおよび図20Hに断面を示したパネルの両方の側面図を示す。デザイン125は、図25Aに示すようにパネルの一方の側から見え、また、一般には黒色のドットまたはラインからなる均一な層は、図25Bにおいてパネルの他方の側から見え、それによりビジョンコントロールパネルをよく透視し得る。
【0058】
図26Aから図26Gに、実質的に正確な位置合わせをして、所望のデザイン色の白色層を伴ってガラスパネル10上に着色されたサインを作り出す方法を、前の図面中と同様の要素には同様の番号を用いて示す。
【0059】
図27Aから図27Fに、実質的に正確な横方向の位置合わせを行い、異なる色を着色した別個の要素をガラスパネル10上に印刷する方法を、同様の要素には同様の番号用いて示す。
【0060】
例えば、前述の方法は、混合することができる。例えば、まず直接スクリーン印刷することにより、ガラスフリットの下部印刷パターンをガラスシートに塗布して、次に、デカールの形態で複数の層を塗布し得る。あるいは、まず、ガラスフリット印刷パターンをデカールにより塗布して、次に、直接的な印刷または別のデカールにより他の単一または複数の層を塗布し得る。
【0061】
フリット入りの印刷パターンの塗布後に、本方法のどの方法のどの段階においても、炉の加熱処理が可能である。所望の印刷パターンを融合させるための熱処理には、一般に約570°Cまでパネルを加熱することが含まれる。炉から取り出した後、パネルは、領域15から不要な顔料粒子を除去するために、真空ナイフ(vacuum knife)を通過させるか、または高圧のウォータージェットにさらすのが一般的である。
【0062】
本方法は、ヨーロッパ特許出願公開第EP0880439A号明細書(Hill)によるパネル製造に用いることができ、パネルには、半透明の印刷パターンで一般には白色で画像が形成され、パネルの一方の側から照らした場合、パネルの他方の側から見えるデザインを有するガラスパネルが含まれる。
【0063】
本方法により作製されたどのガラスパネルの断面も、被印刷部分および非印刷部分を交互に含む。
【0064】
まずステンシルまたはマスクを、透明にされる単一または複数の領域に印刷し、次にステンシルまたはマスク、およびその上の硬化したインクを除去する先行技術の方法を超える大きな利点を、本方法は有し、それは、一般には真空エアジェット法により、透明な単一または複数の領域に残る残留不要顔料の除去が比較的容易に行われるという利点である。回収されたこの顔料を再利用可能であることは、本方法の別の利点である。先行技術のステンシル方法では、複数の透明領域を有するパターン内の硬化したインクを除去するのが困難であるため、例えばドットまたはラインのパターンなど、別個の複数の被印刷領域を備えてパネルを製造することができただけであって、したがって、本方法ではばらばらの顔料粒子を除去するだけでよいのに対して、各個別の領域について徐々には除去されないが除去する必要がある。
【0065】
本方法は、特に、硬化したインクに対して顔料粒子の除去は容易なので、実質的に正確な位置合わせがされて異なる色のインクで耐久性のある装飾ガラスパネルを作製する先行技術の方法よりも安価な方法である。本方法により製造可能な製品には、建物、船、列車および路上走行車内の、ガラス戸、窓、パーティション、手すりおよびサインが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1A−1E】実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示し、ここでは、ガラスに直接印刷が行われる、ガラスパネルの概略断面図である。
【図2A−2E】実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示し、ここでは、ガラスに直接印刷が行われる、ガラスパネルの概略断面図である。
【図3A−3F】実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示し、ここでは、ガラスに直接印刷が行われる、ガラスパネルの概略断面図である。
【図4A−4F】実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示し、ここでは、ガラスに直接印刷が行われる、ガラスパネルの概略断面図である。
【図5A−5F】実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示し、ここでは、ガラスに直接印刷が行われる、ガラスパネルの概略断面図である。
【図6A−6G】実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示し、ここでは、ガラスに直接印刷が行われる、ガラスパネルの概略断面図である。
【図7A−7K】実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示し、ここでは、ガラスに直接印刷が行われる、ガラスパネルの概略断面図である。
【図8A−8F】実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示し、ここでは、ガラスに直接印刷が行われる、ガラスパネルの概略断面図である。
【図9A−9G】間接的に塗布を行うデカールを用いて、実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図10A−10G】間接的に塗布を行うデカールを用いて、実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図11A−11H】間接的に塗布を行うデカールを用いて、実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図12A−12H】間接的に塗布を行うデカールを用いて、実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図13A−13H】間接的に塗布を行うデカールを用いて、実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図14A−14I】間接的に塗布を行うデカールを用いて、実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図15A−15N】間接的に塗布を行うデカールを用いて、実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図16A−16H】間接的に塗布を行うデカールを用いて、実質的に正確な位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図17A−17G】直接塗布が行われるデカールを用いて、実質的に正確に位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図18A−18G】直接塗布が行われるデカールを用いて、実質的に正確に位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図19A−19H】直接塗布が行われるデカールを用いて、実質的に正確に位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図20A−20H】直接塗布が行われるデカールを用いて、実質的に正確に位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図21A−21H】直接塗布が行われるデカールを用いて、実質的に正確に位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図22A−22I】直接塗布が行われるデカールを用いて、実質的に正確に位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図23A−23H】直接塗布が行われるデカールを用いて、実質的に正確に位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図24A−24I】直接塗布が行われるデカールを用いて、実質的に正確に位置合わせを行ってインク層を重ね合わせてガラスパネルを製造する本方法の連続した段階を示す、デカールキャリヤまたはガラスパネルの概略断面図である。
【図25A−25B】ドットパターンでセラミックインク層を重ね合わせたガラスパネルの概略正面図である。
【図26A−26F】白色層上に着色した文字を正確に重ね合わせてサインを印刷する連続した段階を示すガラスパネルの概略断面図である。
【図26G】このようなサインの正面図である。
【図27A−27E】横方向に位置合わせを行った、異なる色の単一インク層の領域を印刷する連続した工程を示す、ガラスパネルの概略断面図である。
【図27F】このようなパネルの平面図である。






































【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスパネルを製造する方法であって、前記パネルを複数の別個の被印刷領域および/または複数の別個の非印刷領域に細分する印刷パターンの形態で複数の層が部分的に印刷され、前記複数の層が実質的に正確に位置合わせされる前記方法は、
(i)前記印刷パターンの形態で複数の層をガラスシートに設けるステップであって、前記複数の層の1つの層は、ガラスフリットを含むセラミックインクを含有し、前記複数の層の別の層は、ガラスフリットを含まない前記ステップと、
(ii)前記ガラスシートおよび前記複数の層を加熱処理工程にかけるステップであって、前記ガラスフリットが、前記印刷パターン内において、溶融し前記ガラスシートと融合し、前記複数の層の別の層を結合する前記ステップと、
(iii)前記印刷パターン外の前記複数の層の別の層の部分を、前記熱処理工程中に燃焼除去および/または気化させ、かつ/または次の仕上げ工程により除去するステップと、
を含むガラスパネル製造方法。
【請求項2】
複数の前記領域は、同じ長さの境界線を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の前記領域は、異なる色と、間隔をおいて配置された境界線とを有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ガラスフリットおよび樹脂マトリックス材を含む透明なセラミックインクによって、前記印刷パターンを画定する請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記複数の層の前記1つの層は、樹脂マトリックスを含み、前記複数の層の前記1つの層を予熱処理し、前記複数の層の前記1つの層から前記樹脂マトリックスを実質的に除去する請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
溶融した液体状態の前記ガラスフリットが、前記複数の層の別の層内へ移動する請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記熱処理工程中に前記樹脂マトリックスを溶融させて液体樹脂にする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記熱処理工程中に、前記液体の樹脂が、前記複数の層の1つの層から前記複数の層の別の層へ前記ガラスフリットの粒子を運ぶ請求項7に記載の方法。


【公表番号】特表2006−504606(P2006−504606A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540942(P2004−540942)
【出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【国際出願番号】PCT/GB2003/004216
【国際公開番号】WO2004/030935
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(505121604)コントラ ヴィジョン リミテッド (5)
【Fターム(参考)】