セラミックヒータ
【課題】優れた急速昇温性を有し、短時間で定常状態に達するセラミックヒータを提供することである。
【解決手段】棒状のセラミック基体11と、該セラミック基体11中に埋設された発熱体12とを備え、発熱体12は、セラミック基体11の先端側に延びる2本の線状部12a,12bと、これらの線状部12a,12bの先端同士をつなぐ折り返し部2cとを有し、セラミック基体11の軸方向に垂直で、かつ、2本の線状部12a,12bを含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部12aが円形ないし楕円形であり、他方の線状部12bが多角形である。
【解決手段】棒状のセラミック基体11と、該セラミック基体11中に埋設された発熱体12とを備え、発熱体12は、セラミック基体11の先端側に延びる2本の線状部12a,12bと、これらの線状部12a,12bの先端同士をつなぐ折り返し部2cとを有し、セラミック基体11の軸方向に垂直で、かつ、2本の線状部12a,12bを含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部12aが円形ないし楕円形であり、他方の線状部12bが多角形である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン予熱用のグロープラグ、ガス、灯油などを使用する給湯器や石油ファンヒータ等の各種燃焼機器の点火用ヒータなどに好適なセラミックヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図14は、上記のような用途に用いられる従来のセラミックヒータを示す斜視図である。図15は、図14のX1−X1線断面図である。このセラミックヒータは、棒状のセラミック基体1中に、発熱体2と、一端側が発熱体2に接続されたリード3と、リード3の他端側との導通をとるための電極4とが埋設されている。この電極4には、セラミック基体1の側面に設けられた電極金具5が接続されている。発熱体2は、セラミック基体1の先端側に延びる2本の線状部2a,2bと、これらの線状部2a,2bの先端同士をつなぐ折り返し部2cとからなる。
【0003】
図16(a),(b)は、図15のY1−Y1線断面図である。図16(a)は線状部2a,2bの断面形状を示す一例であり、図16(b)は線状部2a,2bの断面形状を示す他の例である。従来のセラミックヒータでは、図16(a),(b)に示すように、発熱体2の線状部2a,2bがセラミック基体1中に均等な位置に配置されており、2本の線状部2a,2bの断面形状は同じ形状である(例えば、特許文献1,2)。
【特許文献1】特開2002−289327
【特許文献2】特開2002−334768
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、セラミックヒータには以下のような特性が要求されている。すなわち、燃料をすばやく燃焼させることにより低温で発生する煤などを減少させることが望まれている。また、寒冷地などの低温地帯においても始動性が確保されるという点で急速昇温性が望まれている。これらの要求は、近年、益々強くなってきている。急速昇温させるために発熱体径を細くすることや、ヒータ径を細くすることが試みられている。これにより立ち上がる速度は速くできるが、設定温度よりも温度が過度に上昇した後、設定値に落ち着く現象、所謂オーバーシュートを起こし一定の温度になる(定常状態になる)までの時間が長くなるという問題があった。このような場合、ヒータの燃焼温度が高いことに起因して窒素酸化物が発生して環境に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、優れた急速昇温性を有し、短時間で定常状態に達するセラミックヒータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1のセラミックヒータは、棒状のセラミック基体と、該セラミック基体中に埋設された発熱体とを備えたセラミックヒータであって、前記発熱体は、前記セラミック基体の先端側に延びる2本の線状部と、これらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、前記セラミック基体の軸方向に垂直で、かつ、前記2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部が円形ないし楕円形であり、他方の線状部が多角形であることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2のセラミックヒータは、棒状のセラミック基体と、該セラミック基体中に埋設された発熱体とを備えたセラミックヒータであって、前記発熱体は、前記セラミック基体の先端側に延びる2本の線状部と、これらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、前記セラミック基体の軸方向に垂直で、かつ、前記2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部の周囲の長さが他方の線状部の周囲の長さよりも長く、前記一方の線状部の中心と前記他方の線状部の中心とを結ぶ直線に対して垂直な方向の長さが、一方の線状部の方が他方の線状部よりも長いことを特徴とする。
【0008】
本発明の第3のセラミックヒータは、棒状のセラミック基体と、該セラミック基体中に埋設された発熱体とを備えたセラミックヒータであって、前記発熱体は、前記セラミック基体の先端側に延びる2本の線状部と、これらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、前記セラミック基体の軸方向に垂直で、かつ、前記2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部の表面から前記セラミック基体の表面までの最短距離が他方の線状部の表面から前記セラミック基体の表面までの最短距離よりも短いことを特徴とする。
【0009】
本発明における前記断面において、前記他方の線状部の断面積は前記一方の線状部の断面積よりも小さくなっているのが好ましい。また、前記断面において、前記セラミック基体の断面が円形なし楕円形であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1のセラミックヒータによれば、発熱体がセラミック基体の先端側に延びる2本の線状部とこれらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、セラミック基体の軸方向に垂直でかつ2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部が円形ないし楕円形であり、他方の線状部が多角形であるので、優れた急速昇温性を有し、かつ、定常状態になるまでの所要時間を短くすることができる。すなわち、一方の線状部が円形ないし楕円形であり、他方の線状部が多角形であるので、ヒータに大電流を流したときに、断面形状が円形ないし楕円形である一方の線状部と比較して他方の線状部における多角形の角部では電送損失が大きくなる。その結果、一方の線状部に比べて他方の線状部の方が急速に加熱昇温することになる。これにより、従来のように2本の線状部が同じ断面形状の場合と比較して昇温速度を高めることができる。また、昇温の途中段階においては、一方の線状部と他方の線状部間で昇温速度の差に起因した温度差が生じるが、目標温度に到達する過程で両方の線状部間で熱交換が行われることに加え、従来のように発熱体全体の径を細くしたり、セラミック基体の径を細くする必要がないのでオーバーシュートが生じるのを抑制することができる。これにより、短時間で定常状態に達するセラミックヒータを得ることができる。
【0011】
本発明の第2のセラミックヒータによれば、発熱体がセラミック基体の先端側に延びる2本の線状部とこれらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、セラミック基体の軸方向に垂直でかつ2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部の周囲の長さが他方の線状部の周囲の長さよりも長く、一方の線状部の中心と他方の線状部の中心とを結ぶ直線に対して垂直な方向の長さが、一方の線状部の方が他方の線状部よりも長いときには、優れた急速昇温性を有し、かつ、定常状態になるまでの所要時間を短くすることができる。線状部の周囲長が長くなることで、熱がセラミック基体に奪われやすくなる。また、線状部の断面形状において、一方の線状部の中心と他方の線状部の中心とを結ぶ直線の方向に対して垂直な方向は、前記直線方向と比較すると、互いに熱の影響を与え難い方向である。したがって、一方の線状部における前記垂直な方向の長さと線状部の周囲長とを他方の線状部よりも長くすることにより、他方の線状部を優先的に発熱させやすくなる。その結果、一方の線状部に比べて他方の線状部の方が急速に加熱昇温することになる。これにより、従来のように2本の線状部が同じ断面形状の場合と比較して昇温速度を高めることができる。また、昇温の途中段階においては、一方の線状部と他方の線状部間で昇温速度の差に起因した温度差が生じるが、目標温度に到達する過程で両方の線状部間で熱交換が行われることに加え、従来のように発熱体全体の径を細くしたり、セラミック基体の径を細くする必要がないのでオーバーシュートが生じるのを抑制することができる。これにより、短時間で定常状態に達するセラミックヒータを得ることができる。
【0012】
本発明の第3のセラミックヒータによれば、発熱体がセラミック基体の先端側に延びる2本の線状部とこれらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、セラミック基体の軸方向に垂直でかつ2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部の表面からセラミック基体の表面までの最短距離が他方の線状部の表面からセラミック基体の表面までの最短距離よりも短いときには、優れた急速昇温性を有し、かつ、定常状態になるまでの所要時間を短くすることができる。すなわち、上記断面において、最短距離Lが短い方の線状部(上記他方の線状部)に比べて長い方の線状部(上記一方の線状部)の方が周囲のセラミック基体に熱を奪われやすいことに起因して、上記他方の線状部の方が優先的に発熱して発熱量が多くなる。その結果、一方の線状部に比べて他方の線状部の方が急速に加熱昇温することになる。これにより、従来のように2本の線状部が同じ断面形状の場合と比較して昇温速度を高めることができる。また、昇温の途中段階においては、一方の線状部と他方の線状部間で昇温速度の差に起因した温度差が生じるが、目標温度に到達する過程で両方の線状部間で熱交換が行われることに加え、従来のように発熱体全体の径を細くしたり、セラミック基体の径を細くする必要がないのでオーバーシュートが生じるのを抑制することができる。これにより、短時間で定常状態に達するセラミックヒータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明の一実施形態にかかるセラミックヒータについて図面を参照し詳細に説明する。図1は本実施形態のセラミックヒータを示す斜視図であり、図2は図1におけるX−X線断面図である。図1及び図2に示すように、このセラミックヒータは、棒状の絶縁性セラミック基体11中に、導電性のセラミックスからなる発熱体12と、一端側が発熱体12に接続されたリード13と、リード13の他端側との導通をとるための電極14とが埋設されている。この電極14には、セラミック基体11の側面に設けられた電極金具15が接続されている。発熱体12は、セラミック基体11の先端側に延びる2本の線状部12a,12bと、これらの線状部12a,12bの先端同士をつなぐ折り返し部12cとからなる。なお、以下の第1〜第3の実施形態において、線状部の形態が異なる場合であっても線状部の符号は、すべて同じ符号12a,12bを用いることとする。
【0014】
図3(a)は、図2のY−Y線断面図であって2本の線状部12a,12bの断面形状の一例を示し、図3(b)は、図2のY−Y線断面図であって2本の線状部12a,12bの断面形状の他の例を示し、図3(c)は、図2のY−Y線断面図であって2本の線状部12a,12bの断面形状のさらに他の例を示している。図3(a)〜(c)に示すように、線状部12a,12bの断面形状は、一方の線状部12aが円形ないし楕円形であり、他方の線状部12bが多角形である。このセラミックヒータに電流を流すと、断面形状が円形ないし楕円形である一方の線状部12aと比較して他方の線状部12bにおける多角形の角部では電送損失が大きくなる。その結果、一方の線状部12aに比べて他方の線状部12bの方が急速に加熱昇温することになる。これにより、従来のように2本の線状部が同じ断面形状の場合と比較して昇温速度を高めることができる。また、昇温の途中段階においては、一方の線状部12aと他方の線状部12b間で昇温速度の差に起因した温度差が生じるが、目標温度に到達する過程で両方の線状部12a,12b間で熱交換が行われることに加え、従来のように発熱体全体の径を細くしたり、セラミック基体の径を細くする必要がないのでオーバーシュートが生じるのを抑制することができる。これにより、短時間で定常状態に達するセラミックヒータを得ることができる。線状部12bでは、角部の角度が小さいほど伝送損失が大きくなって昇温速度が高まるので、本発明における多角形は三角形〜六角形であるのが好ましい。
【0015】
図3(d)は、図2のY−Y線断面図であって2本の線状部12a,12bの断面形状のさらに他の例を示している。図3(d)に示すように、断面形状が多角形の線状部12bの断面積が円形の線状部12aの断面積よりも小さいときには、線状部12bの抵抗が高くなるので伝送損失がさらに大きくなる。これにより、通電時に線状部12bの昇温速度をより高めることができる。また、昇温速度の差に起因した温度差がより大きくなるため、温度勾配により両側での熱交換が行われる。このため目標温度付近では熱平衡によりオーバーシュートがより抑制される。
【0016】
セラミック基体11の断面形状は円形ないし楕円形であるのがよい。セラミック基体11の断面形状が多角形の場合には、曲線である場合と比較してその角部の熱容量が大きくなる。したがって、断面形状が円形ないし楕円形であると、多角形である場合よりも熱引きが少なくなるので、昇温速度が速くなる。
【0017】
セラミック基体11を構成する絶縁性セラミックスは、高温での絶縁特性が優れている点からアルミナ質セラミックス又は窒化珪素質セラミックスが好ましいが、特に急速昇温時の耐久特性が高い点で窒化珪素質セラミックスがより好ましい。窒化珪素質セラミックスの組織は、窒化珪素(Si3N4)を主成分とする主相粒子が、焼結助剤成分等に由来した粒界相により結合された形態のものである。主相は珪素(Si)あるいは窒素(N)の一部がアルミニウム(Al)あるいは酸素(O)で置換され、さらには、相中にLi、Ca、Mg、Y等の金属原子が固溶したものであっても良い。本実施形態におけるセラミック基体11は、窒化珪素粉末にイッテリビウム(Yb)やイットリウム(Y)、エルビウム(Er)等の希土類元素の酸化物からなる焼結助剤を添加した上記セラミック原料粉末を、周知のプレス成形法等によりプレス成形できるが、好ましくは、形状が金型に沿って自由に決められる射出成形によりセラミック基体11を成形するのがよい。セラミック基体11を成形する金型は、上下2分割されたものであり、発熱体12やリード13を装着できるように設計されており、射出成形にて作製できる。
【0018】
発熱体12の材料としては、炭化タングステン(WC)、二珪化モリブデン(MoSi2)および二珪化タングステン(WSi2)等の周知の導電性セラミックスを用いることができる。以下、炭化タングステンを用いた場合を例に挙げて説明する。まず、WC粉末を準備し、このWC粉末に、セラミック基体11との熱膨張係数を減少させるためにセラミック基体11の主成分となる窒化珪素質セラミックスなどの絶縁性セラミックスを配合することが望ましい。絶縁性セラミックスと導電性セラミックスとの含有比率を変化させることにより、発熱体12の電気抵抗を所望の値に調整することができる。発熱体12は、WC粉末にセラミック基体11の主成分となる絶縁性セラミックスである窒化珪素質セラミックスを配合したセラミック原料粉末を、周知のプレス成形法等によりプレス成形できるが、好ましくは、形状が金型に沿って自由に決められる射出成形により成形することが望ましい。金型形状は焼成後の発熱体12が図3のような断面形状になるように設計される。
【0019】
発熱体12と導通を得るためのリード13は、W等の抵抗の小さい金属ピンなどで形成されていてよいが、より好ましくは発熱体12と同様に絶縁性セラミックスと導電性セラミックスを配合することでセラミック基体11との熱膨張係数差を低減することができる。リードの電気抵抗は、発熱部よりも小さく設定される。
【0020】
リード13及び電極14は、セラミック基体11と同様、周知のプレス成形でも成形できるが、好ましくは、形状が金型に沿って自由に決められる射出成形で成形するのがよい。
【0021】
上下2分割された状態で成形されたセラミック基体11と、発熱体12と、リード13と、電極14とを作製し、これらを所定の配置に組み立てた後、脱脂工程を経て、還元雰囲気下、1650℃〜1780℃程度の温度、30〜50MPa程度の圧力でホットプレスにより焼成する。このようにして得られた焼結体の表面に露出した電極14に図1に示すような電極金具15をロウ付けしてセラミックヒータを得ることができる。
【0022】
(第2の実施形態)
図4は、図2のY−Y線断面図であって2本の線状部12a,12bの断面形状のさらに他の一例を示す。この実施形態では、一方の線状部12aの中心と他方の線状部12bの中心とを結ぶ直線Lに対して垂直な方向の長さが、一方の線状部12aの方が他方の線状部12bよりも長くなっている。すなわち、図4において、一方の線状部12aにおける長さβが、他方の線状部12bにおける長さαよりも長くなっている。また、他方の線状部の周囲の長さが一方の線状部の周囲の長さよりも長くなっている。これにより、周囲長の長い一方の線状部12aは、他方の線状部12bと比較してセラミック基体に熱を奪われやすくなるので、ヒータ等で使用される大電流を流したときには、他方の線状部12bの方から加速的に加熱され、昇温に速度の速いヒータを得ることができる。また、線状部の断面形状において、一方の線状部の中心と他方の線状部の中心とを結ぶ直線の方向に対して垂直な方向は、前記直線方向と比較すると、互いに熱の影響を与え難い方向であるので、他方の線状部がより優先的に昇温しやすくなる。
【0023】
また、一方の長さが、他方の長さより長いことにより、昇温の過渡状態では昇温速度の差に起因した温度差ができて、温度勾配により両側での熱交換が行われるため最高温度付近では熱平衡により、狙いの温度に発熱した後のオーバーシュートが抑制される。すなわち、温度が一定になる平衡状態までの所要時間が短くなるヒータを得ることが出来る。好ましくは、長さの差が大きい方が、昇温速度の差に起因した温度差がより大きくなるため、温度勾配により両側での熱交換が行われるため最高温度付近では熱平衡により、狙いの温度に発熱した後のオーバーシュートがより抑制される。
【0024】
なお、第2の実施形態における「線状部の中心」とは、線状部の断面形状が円、楕円または正多角形の場合にはこれらの中心のことである。また、正多角形以外の多角形の場合には、複数の対角線が交わる点を中心とする。さらに、線状部の断面形状が上記以外の場合には、次のようにして中心を求める。線状部の断面における最大長の部位に直線1を引き、この直線に対して垂直な方向の最大長の部位に直線2を引き、直線1と直線2が交わった部分を中心とする。
【0025】
(第3の実施形態)
図5(a)は、図2のY−Y線断面図であって2本の線状部12a,12bの断面形状のさらに他の一例を示す。この実施形態では、線状部の表面からセラミック基体の表面までの最短距離を比較すると、一方の線状部12aにおける最短距離δが他方の線状部12bにおける最短距離γよりも長くなっている。これにより、ヒータ等で使用される大電流を流したとき長さγの方の発熱体がセラミック基体への熱引きが大きくなるため、熱をセラミック基体に奪われてしまい短いδの方の発熱体がある側の方から加速的に加熱され、昇温に速度の速いヒータを得ることが出来る。
【0026】
また、一方の長さγが、他方の長さδより短いことにより、昇温の過渡状態では昇温速度の差に起因した温度差ができて、温度勾配により両側での熱交換が行われるため最高温度付近では熱平衡により、狙いの温度に発熱した後のオーバーシュートが抑制される。すなわち、温度が一定になる平衡状態までの所要時間が短くなるヒータを得ることが出来る。好ましくは、長さの差が大きい方が、昇温速度の差に起因した温度差がより大きくなるため、温度勾配により両側での熱交換が行われるため最高温度付近では熱平衡により、狙いの温度に発熱した後のオーバーシュートがより抑制される。
【0027】
また、図5(b)に示すように、線状部12bの断面積が線状部12aの断面積よりも小さいことにより、抵抗が高くなるため電送損失がさらにおおきくなる。これにより、他方の線状部12bがさらに加速的に加熱され昇温速度が速くなる。また、昇温速度の差に起因した温度差がより大きくなるため、温度勾配により両側での熱交換が行われるため最高温度付近では熱平衡により、狙いの温度に発熱した後のオーバーシュートがより抑制される。
【実施例1】
【0028】
まず、主成分の窒化珪素に対して焼結助剤3〜12重量%のYb2O3を添加して調整したセラミック原料粉末を用いて、有機バインダと混練したコンパウンドを作製した。ついで、このコンパウンドを射出成形機にて加熱溶融し流動化させて成形し、セラミック基体11を作製した。図6は、射出成形に用いた金型の一例を示す断面図である。この金型は上金型61と下金型62に2分割できる構造になっている。これを用いてセラミック基体11を構成する上半分と下半分をそれぞれ成形した。図7は、セラミック基体11を構成する部材(上半分)11a,部材(下半分)11bを示す断面図である。後述するように、発熱体を種々の形状に成形する際には、その形状に合わせてセラミック基体の形状も適宜変更した。
【0029】
発熱体12は、次のようにして作製した。すなわち、主成分であるWCに対して、セラミック基体11に用いたセラミック原料粉末を20〜45重量%添加して調整したセラミック粉末を準備し、このセラミック粉末を有機バインダと混練したコンパウンドを作製した。ついで、このコンパウンドを加熱溶融し流動化させて射出成形機にて所定の形状に成形した。図8は、発熱体12の成形に使用した金型の一例を示す断面図である。この金型は、上金型21と下金型22に2分割できる金型である。この金型を用いると、断面形状が円形の発熱体を成形することができる。他の断面形状を有した発熱体は、所定の断面形状を有した金型を用いて作製した。リード13、電極14についても発熱体12と同様に原料粉末からコンパウンドを作製し成形した。
【0030】
上記のようにして得られるセラミック基体11aとセラミック基体11bに各種形状の発熱体12とリード13、電極14を配置し、組み立て後、400〜500℃で24〜72時間の脱脂工程を経た脱脂体を、還元雰囲気下、1650℃〜1780℃の温度、30〜50MPaの圧力でホットプレスにより焼成した。最後に、得られた焼結体の表面に露出した電極14に、図1に示すような電極金具15をロウ付けして、図9(a)〜(e)の断面形状をもつセラミックヒータを作製した。セラミックヒータの外形寸法は厚み3mm、幅4mm、全長40mmであった。
【0031】
各セラミックヒータに所定の電圧をかけて発熱させて、先端から2mmの位置(図2のY−Y線の位置)で線状部12bの温度を放射温度計にて測定し、1000℃に達するまでの昇温時間を測定した。また、セラミックヒータの温度がオーバーシュート後、一定の温度(バラツキが±5℃以下)で平衡状態に達するまでの平衡状態到達時間を測定した。結果を表1に示す。
【表1】
【0032】
表1からわかるように、発熱体12a,12bの形状がA−1(図9(a)),B−1(図9(b)),C−1(図9(c))に比べて、発熱体12a,12bの形状が異なり一方が多角形であるD−1(図9(d)),E−1(図9(e)),F−1(図9(f))の方が、昇温時間が約1.0秒速いことが判明した。さらに、平衡状態到達時間に関しても同様に、発熱体12a,12bの形状がA−1,B−1,C−1に比べて、D−1,E−1,F−1の方が10秒〜15秒速いことが判明した。
【実施例2】
【0033】
セラミック基体11、発熱体12、リード13および電極14は実施例1と同様の方法を用いて作製した。発熱体12の線状部12a,12bは、その断面形状が、図10(a)〜(e)に示す形状になる金型を用いて成形した。線状部12bの長さα及び線状部12aの長さβが表2に示す長さになるような金型を用いて発熱体12を作製した。
【0034】
作製したそれぞれのセラミックヒータに所定の電圧をかけ発熱させて、先端から2mmの位置(図2のY−Y線の位置)で線状部12bの温度を放射温度計にて測定し、1000℃に達するまでの昇温時間を測定した。また、セラミックヒータの温度がオーバーシュート後、一定の温度(バラツキが±5℃以下)で平衡状態に達するまでの平衡状態到達時間を測定した。これらの結果を表2に示す。
【表2】
【0035】
表2からわかるように、線状部12a,12bの長さが同じであるサンプルA−2(図10(a)),B−2(図10(b))に比べて、長さαよりも長さβの方が長いサンプルC−2(図10(c))、D−2(図10(d))、E−2(図10(e))の方が、昇温時間が1.0秒以上速いことが、判明した。さらに、平衡状態到達時間に関しても同様に、A−2、B−2に比べて、C−2、D−2、E−2の方が、10秒以上速いことが判明した。なお、C−2、D−2、E−2は、線状部12bの周囲長よりも線状部12aの周囲長の方が長い。
【実施例3】
【0036】
セラミック基体11、発熱体12、リード13および電極14は実施例1と同様の方法を用いて作製した。発熱体12の線状部12a,12bは、その断面形状が、図11(a)〜(e)に示す形状になる金型を用いて成形した。線状部12bからセラミック基体11の外表面までの最短距離γ、及び線状部12aからセラミック基体11の外表面までの最短距離δが表3に示す長さになるような金型を用いて発熱体12を作製した。
【0037】
作製したそれぞれのセラミックヒータに所定の電圧をかけ発熱させて、先端から2mmの位置(図2のY−Y線の位置)で線状部12bの温度を放射温度計にて測定し、1000℃に達するまでの昇温時間を測定した。また、セラミックヒータの温度がオーバーシュート後、一定の温度(バラツキが±5℃以下)で平衡状態に達するまでの平衡状態到達時間を測定した。これらの結果を表3に示す。
【表3】
【0038】
表3からわかるように、発熱体2E、2Fからセラミック基体11の外表面までの最短距離Lをγ、δが同じ長さであるサンプルA−3(図11(a))、B−3(図11(b))に比べて、発熱体2E、2Fからセラミック基体11の外表面までのγがδより長いサンプルであるC−3(図11(c))、D−3(図11(d))、E−3(図11(e))の方が、昇温時間が1.0秒以上速いことが、判明した。
【0039】
さらに、平衡状態到達時間に関しても同様に、最短距離γと最短距離δが同じ長さであるサンプルA−3、B−3に比べて、最短距離δが最短距離γより長いサンプルC−3、D−3、E−3の方が約10秒速いことが判明した。
【実施例4】
【0040】
セラミック基体11、発熱体12、リード13、および電極14は実施例1と同様の方法を用いて作製した。線状部12a,12bは図12に示す断面形状とした。G−1(図12(b))は、線状部12aの断面形状及び断面積がF−1(図12(a))と同じとし、線状部12bの断面形状がF−1と相似形で、断面積をF−1の1/3倍とした。G−2(図12(d))は、線状部12aの断面形状及び断面積がE−2(図12(c))と同じとし、線状部12bの断面形状がE−2と相似形で、断面積をE−2の1/3倍とした。G−3(図12(f))は、線状部12aの断面形状及び断面積がD−3(図12(e))と同じとし、線状部12bの断面形状がD−3と相似形で、断面積をD−3の1/3倍とした。
【0041】
作製したそれぞれのセラミックヒータに所定の電圧をかけ発熱させて、先端から2mmの位置(図2のY−Y線の位置)で線状部12bの温度を放射温度計にて測定し、1000℃に達するまでの昇温時間を測定した。また、セラミックヒータの温度がオーバーシュート後、一定の温度(バラツキが±5℃以下)で平衡状態に達するまでの平衡状態到達時間を測定した。これらの結果を表4に示す。
【表4】
【0042】
表4からわかるように、断面形状が相似形状でありそれぞれ2Gの断面積が2Hの断面積の1/3倍としたG−1、G−2、G−3は、昇温時間、平衡状態到達時間ともに、F−1、E−2、D−3より、より速くなったことが判明した。
【実施例5】
【0043】
セラミック基体11、発熱体12、リード13および電極14は実施例1と同様の方法を用いて作製した。線状部12a,12bの断面形状をG−1(図13(a))、G−2(図13(b))、G−3(図13(c))と同様とし、セラミック基体11の断面形状を円形としたH−1(図13(d))、H−2(図13(e))、H−3(図13(f))、楕円としたI―1(図13(g))、I―2(図13(h))、I―3(図13(i))をそれぞれ作製した。
【0044】
作製したそれぞれのセラミックヒータに所定の電圧をかけ発熱させて、先端から2mmの位置(図2のY−Y線の位置)で線状部12bの温度を放射温度計にて測定し、1000℃に達するまでの昇温時間を測定した。また、セラミックヒータの温度がオーバーシュート後、一定の温度(バラツキが±5℃以下)で平衡状態に達するまでの平衡状態到達時間を測定した。これらの結果を表5に示す。
【表5】
【0045】
表5からわかるように、セラミック基体11の断面が円形となるものH−1、H−2、H−3、楕円となるものI―1、I―2、I―3は、昇温時間、平衡状態到達時間いずれかにおいて、G−1、G−2、G−3に比べて、より良好な結果が出たことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態にかかるセラミックヒータを模式的に示す斜視図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】(a)は、図1のセラミックヒータにおける発熱体の断面形状の一例を説明するための断面図であり(図2のY−Y線の位置で図1のセラミックヒータを切断したときの断面図)、(b)〜(d)は発熱体の断面形状の他の例をそれぞれ説明するための断面図である。
【図4】図1のセラミックヒータにおける発熱体の断面形状のさらに他の例を示す断面図である。
【図5】(a)及び(b)は、図1のセラミックヒータにおける発熱体の断面形状のさらに他の例を示す断面図である。
【図6】セラミック基体を成形するための金型を示す断面図である。
【図7】図1のセラミックヒータのセラミック基体を示す断面図である。
【図8】発熱体を成形するための金型を示す断面図である。
【図9】(a)〜(f)は、実施例1において評価したセラミックヒータの発熱体の断面形状をそれぞれ示す断面図である。
【図10】(a)〜(e)は、実施例2において評価したセラミックヒータの発熱体の断面形状をそれぞれ示す断面図である。
【図11】(a)〜(e)は、実施例3において評価したセラミックヒータの発熱体の断面形状をそれぞれ示す断面図である。
【図12】(a)〜(f)は、実施例4において評価したセラミックヒータの発熱体の断面形状をそれぞれ示す断面図である。
【図13】(a)〜(i)は、実施例5において評価したセラミックヒータの発熱体の断面形状をそれぞれ示す断面図である。
【図14】従来のセラミックヒータを示す斜視図である。
【図15】図14のX1−X1線断面図である。
【図16】(a)及び(b)は、図14のセラミックヒータにおける発熱体の断面形状の一例を説明するための断面図である(図15のY1−Y1線の位置で図14のセラミックヒータを切断したときの断面図)。
【符号の説明】
【0047】
11 セラミック基体
12 発熱体
12a,12b 線状部
13 リード
14 電極
15 電極金具
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン予熱用のグロープラグ、ガス、灯油などを使用する給湯器や石油ファンヒータ等の各種燃焼機器の点火用ヒータなどに好適なセラミックヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図14は、上記のような用途に用いられる従来のセラミックヒータを示す斜視図である。図15は、図14のX1−X1線断面図である。このセラミックヒータは、棒状のセラミック基体1中に、発熱体2と、一端側が発熱体2に接続されたリード3と、リード3の他端側との導通をとるための電極4とが埋設されている。この電極4には、セラミック基体1の側面に設けられた電極金具5が接続されている。発熱体2は、セラミック基体1の先端側に延びる2本の線状部2a,2bと、これらの線状部2a,2bの先端同士をつなぐ折り返し部2cとからなる。
【0003】
図16(a),(b)は、図15のY1−Y1線断面図である。図16(a)は線状部2a,2bの断面形状を示す一例であり、図16(b)は線状部2a,2bの断面形状を示す他の例である。従来のセラミックヒータでは、図16(a),(b)に示すように、発熱体2の線状部2a,2bがセラミック基体1中に均等な位置に配置されており、2本の線状部2a,2bの断面形状は同じ形状である(例えば、特許文献1,2)。
【特許文献1】特開2002−289327
【特許文献2】特開2002−334768
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、セラミックヒータには以下のような特性が要求されている。すなわち、燃料をすばやく燃焼させることにより低温で発生する煤などを減少させることが望まれている。また、寒冷地などの低温地帯においても始動性が確保されるという点で急速昇温性が望まれている。これらの要求は、近年、益々強くなってきている。急速昇温させるために発熱体径を細くすることや、ヒータ径を細くすることが試みられている。これにより立ち上がる速度は速くできるが、設定温度よりも温度が過度に上昇した後、設定値に落ち着く現象、所謂オーバーシュートを起こし一定の温度になる(定常状態になる)までの時間が長くなるという問題があった。このような場合、ヒータの燃焼温度が高いことに起因して窒素酸化物が発生して環境に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、優れた急速昇温性を有し、短時間で定常状態に達するセラミックヒータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1のセラミックヒータは、棒状のセラミック基体と、該セラミック基体中に埋設された発熱体とを備えたセラミックヒータであって、前記発熱体は、前記セラミック基体の先端側に延びる2本の線状部と、これらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、前記セラミック基体の軸方向に垂直で、かつ、前記2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部が円形ないし楕円形であり、他方の線状部が多角形であることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2のセラミックヒータは、棒状のセラミック基体と、該セラミック基体中に埋設された発熱体とを備えたセラミックヒータであって、前記発熱体は、前記セラミック基体の先端側に延びる2本の線状部と、これらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、前記セラミック基体の軸方向に垂直で、かつ、前記2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部の周囲の長さが他方の線状部の周囲の長さよりも長く、前記一方の線状部の中心と前記他方の線状部の中心とを結ぶ直線に対して垂直な方向の長さが、一方の線状部の方が他方の線状部よりも長いことを特徴とする。
【0008】
本発明の第3のセラミックヒータは、棒状のセラミック基体と、該セラミック基体中に埋設された発熱体とを備えたセラミックヒータであって、前記発熱体は、前記セラミック基体の先端側に延びる2本の線状部と、これらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、前記セラミック基体の軸方向に垂直で、かつ、前記2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部の表面から前記セラミック基体の表面までの最短距離が他方の線状部の表面から前記セラミック基体の表面までの最短距離よりも短いことを特徴とする。
【0009】
本発明における前記断面において、前記他方の線状部の断面積は前記一方の線状部の断面積よりも小さくなっているのが好ましい。また、前記断面において、前記セラミック基体の断面が円形なし楕円形であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1のセラミックヒータによれば、発熱体がセラミック基体の先端側に延びる2本の線状部とこれらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、セラミック基体の軸方向に垂直でかつ2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部が円形ないし楕円形であり、他方の線状部が多角形であるので、優れた急速昇温性を有し、かつ、定常状態になるまでの所要時間を短くすることができる。すなわち、一方の線状部が円形ないし楕円形であり、他方の線状部が多角形であるので、ヒータに大電流を流したときに、断面形状が円形ないし楕円形である一方の線状部と比較して他方の線状部における多角形の角部では電送損失が大きくなる。その結果、一方の線状部に比べて他方の線状部の方が急速に加熱昇温することになる。これにより、従来のように2本の線状部が同じ断面形状の場合と比較して昇温速度を高めることができる。また、昇温の途中段階においては、一方の線状部と他方の線状部間で昇温速度の差に起因した温度差が生じるが、目標温度に到達する過程で両方の線状部間で熱交換が行われることに加え、従来のように発熱体全体の径を細くしたり、セラミック基体の径を細くする必要がないのでオーバーシュートが生じるのを抑制することができる。これにより、短時間で定常状態に達するセラミックヒータを得ることができる。
【0011】
本発明の第2のセラミックヒータによれば、発熱体がセラミック基体の先端側に延びる2本の線状部とこれらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、セラミック基体の軸方向に垂直でかつ2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部の周囲の長さが他方の線状部の周囲の長さよりも長く、一方の線状部の中心と他方の線状部の中心とを結ぶ直線に対して垂直な方向の長さが、一方の線状部の方が他方の線状部よりも長いときには、優れた急速昇温性を有し、かつ、定常状態になるまでの所要時間を短くすることができる。線状部の周囲長が長くなることで、熱がセラミック基体に奪われやすくなる。また、線状部の断面形状において、一方の線状部の中心と他方の線状部の中心とを結ぶ直線の方向に対して垂直な方向は、前記直線方向と比較すると、互いに熱の影響を与え難い方向である。したがって、一方の線状部における前記垂直な方向の長さと線状部の周囲長とを他方の線状部よりも長くすることにより、他方の線状部を優先的に発熱させやすくなる。その結果、一方の線状部に比べて他方の線状部の方が急速に加熱昇温することになる。これにより、従来のように2本の線状部が同じ断面形状の場合と比較して昇温速度を高めることができる。また、昇温の途中段階においては、一方の線状部と他方の線状部間で昇温速度の差に起因した温度差が生じるが、目標温度に到達する過程で両方の線状部間で熱交換が行われることに加え、従来のように発熱体全体の径を細くしたり、セラミック基体の径を細くする必要がないのでオーバーシュートが生じるのを抑制することができる。これにより、短時間で定常状態に達するセラミックヒータを得ることができる。
【0012】
本発明の第3のセラミックヒータによれば、発熱体がセラミック基体の先端側に延びる2本の線状部とこれらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、セラミック基体の軸方向に垂直でかつ2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部の表面からセラミック基体の表面までの最短距離が他方の線状部の表面からセラミック基体の表面までの最短距離よりも短いときには、優れた急速昇温性を有し、かつ、定常状態になるまでの所要時間を短くすることができる。すなわち、上記断面において、最短距離Lが短い方の線状部(上記他方の線状部)に比べて長い方の線状部(上記一方の線状部)の方が周囲のセラミック基体に熱を奪われやすいことに起因して、上記他方の線状部の方が優先的に発熱して発熱量が多くなる。その結果、一方の線状部に比べて他方の線状部の方が急速に加熱昇温することになる。これにより、従来のように2本の線状部が同じ断面形状の場合と比較して昇温速度を高めることができる。また、昇温の途中段階においては、一方の線状部と他方の線状部間で昇温速度の差に起因した温度差が生じるが、目標温度に到達する過程で両方の線状部間で熱交換が行われることに加え、従来のように発熱体全体の径を細くしたり、セラミック基体の径を細くする必要がないのでオーバーシュートが生じるのを抑制することができる。これにより、短時間で定常状態に達するセラミックヒータを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明の一実施形態にかかるセラミックヒータについて図面を参照し詳細に説明する。図1は本実施形態のセラミックヒータを示す斜視図であり、図2は図1におけるX−X線断面図である。図1及び図2に示すように、このセラミックヒータは、棒状の絶縁性セラミック基体11中に、導電性のセラミックスからなる発熱体12と、一端側が発熱体12に接続されたリード13と、リード13の他端側との導通をとるための電極14とが埋設されている。この電極14には、セラミック基体11の側面に設けられた電極金具15が接続されている。発熱体12は、セラミック基体11の先端側に延びる2本の線状部12a,12bと、これらの線状部12a,12bの先端同士をつなぐ折り返し部12cとからなる。なお、以下の第1〜第3の実施形態において、線状部の形態が異なる場合であっても線状部の符号は、すべて同じ符号12a,12bを用いることとする。
【0014】
図3(a)は、図2のY−Y線断面図であって2本の線状部12a,12bの断面形状の一例を示し、図3(b)は、図2のY−Y線断面図であって2本の線状部12a,12bの断面形状の他の例を示し、図3(c)は、図2のY−Y線断面図であって2本の線状部12a,12bの断面形状のさらに他の例を示している。図3(a)〜(c)に示すように、線状部12a,12bの断面形状は、一方の線状部12aが円形ないし楕円形であり、他方の線状部12bが多角形である。このセラミックヒータに電流を流すと、断面形状が円形ないし楕円形である一方の線状部12aと比較して他方の線状部12bにおける多角形の角部では電送損失が大きくなる。その結果、一方の線状部12aに比べて他方の線状部12bの方が急速に加熱昇温することになる。これにより、従来のように2本の線状部が同じ断面形状の場合と比較して昇温速度を高めることができる。また、昇温の途中段階においては、一方の線状部12aと他方の線状部12b間で昇温速度の差に起因した温度差が生じるが、目標温度に到達する過程で両方の線状部12a,12b間で熱交換が行われることに加え、従来のように発熱体全体の径を細くしたり、セラミック基体の径を細くする必要がないのでオーバーシュートが生じるのを抑制することができる。これにより、短時間で定常状態に達するセラミックヒータを得ることができる。線状部12bでは、角部の角度が小さいほど伝送損失が大きくなって昇温速度が高まるので、本発明における多角形は三角形〜六角形であるのが好ましい。
【0015】
図3(d)は、図2のY−Y線断面図であって2本の線状部12a,12bの断面形状のさらに他の例を示している。図3(d)に示すように、断面形状が多角形の線状部12bの断面積が円形の線状部12aの断面積よりも小さいときには、線状部12bの抵抗が高くなるので伝送損失がさらに大きくなる。これにより、通電時に線状部12bの昇温速度をより高めることができる。また、昇温速度の差に起因した温度差がより大きくなるため、温度勾配により両側での熱交換が行われる。このため目標温度付近では熱平衡によりオーバーシュートがより抑制される。
【0016】
セラミック基体11の断面形状は円形ないし楕円形であるのがよい。セラミック基体11の断面形状が多角形の場合には、曲線である場合と比較してその角部の熱容量が大きくなる。したがって、断面形状が円形ないし楕円形であると、多角形である場合よりも熱引きが少なくなるので、昇温速度が速くなる。
【0017】
セラミック基体11を構成する絶縁性セラミックスは、高温での絶縁特性が優れている点からアルミナ質セラミックス又は窒化珪素質セラミックスが好ましいが、特に急速昇温時の耐久特性が高い点で窒化珪素質セラミックスがより好ましい。窒化珪素質セラミックスの組織は、窒化珪素(Si3N4)を主成分とする主相粒子が、焼結助剤成分等に由来した粒界相により結合された形態のものである。主相は珪素(Si)あるいは窒素(N)の一部がアルミニウム(Al)あるいは酸素(O)で置換され、さらには、相中にLi、Ca、Mg、Y等の金属原子が固溶したものであっても良い。本実施形態におけるセラミック基体11は、窒化珪素粉末にイッテリビウム(Yb)やイットリウム(Y)、エルビウム(Er)等の希土類元素の酸化物からなる焼結助剤を添加した上記セラミック原料粉末を、周知のプレス成形法等によりプレス成形できるが、好ましくは、形状が金型に沿って自由に決められる射出成形によりセラミック基体11を成形するのがよい。セラミック基体11を成形する金型は、上下2分割されたものであり、発熱体12やリード13を装着できるように設計されており、射出成形にて作製できる。
【0018】
発熱体12の材料としては、炭化タングステン(WC)、二珪化モリブデン(MoSi2)および二珪化タングステン(WSi2)等の周知の導電性セラミックスを用いることができる。以下、炭化タングステンを用いた場合を例に挙げて説明する。まず、WC粉末を準備し、このWC粉末に、セラミック基体11との熱膨張係数を減少させるためにセラミック基体11の主成分となる窒化珪素質セラミックスなどの絶縁性セラミックスを配合することが望ましい。絶縁性セラミックスと導電性セラミックスとの含有比率を変化させることにより、発熱体12の電気抵抗を所望の値に調整することができる。発熱体12は、WC粉末にセラミック基体11の主成分となる絶縁性セラミックスである窒化珪素質セラミックスを配合したセラミック原料粉末を、周知のプレス成形法等によりプレス成形できるが、好ましくは、形状が金型に沿って自由に決められる射出成形により成形することが望ましい。金型形状は焼成後の発熱体12が図3のような断面形状になるように設計される。
【0019】
発熱体12と導通を得るためのリード13は、W等の抵抗の小さい金属ピンなどで形成されていてよいが、より好ましくは発熱体12と同様に絶縁性セラミックスと導電性セラミックスを配合することでセラミック基体11との熱膨張係数差を低減することができる。リードの電気抵抗は、発熱部よりも小さく設定される。
【0020】
リード13及び電極14は、セラミック基体11と同様、周知のプレス成形でも成形できるが、好ましくは、形状が金型に沿って自由に決められる射出成形で成形するのがよい。
【0021】
上下2分割された状態で成形されたセラミック基体11と、発熱体12と、リード13と、電極14とを作製し、これらを所定の配置に組み立てた後、脱脂工程を経て、還元雰囲気下、1650℃〜1780℃程度の温度、30〜50MPa程度の圧力でホットプレスにより焼成する。このようにして得られた焼結体の表面に露出した電極14に図1に示すような電極金具15をロウ付けしてセラミックヒータを得ることができる。
【0022】
(第2の実施形態)
図4は、図2のY−Y線断面図であって2本の線状部12a,12bの断面形状のさらに他の一例を示す。この実施形態では、一方の線状部12aの中心と他方の線状部12bの中心とを結ぶ直線Lに対して垂直な方向の長さが、一方の線状部12aの方が他方の線状部12bよりも長くなっている。すなわち、図4において、一方の線状部12aにおける長さβが、他方の線状部12bにおける長さαよりも長くなっている。また、他方の線状部の周囲の長さが一方の線状部の周囲の長さよりも長くなっている。これにより、周囲長の長い一方の線状部12aは、他方の線状部12bと比較してセラミック基体に熱を奪われやすくなるので、ヒータ等で使用される大電流を流したときには、他方の線状部12bの方から加速的に加熱され、昇温に速度の速いヒータを得ることができる。また、線状部の断面形状において、一方の線状部の中心と他方の線状部の中心とを結ぶ直線の方向に対して垂直な方向は、前記直線方向と比較すると、互いに熱の影響を与え難い方向であるので、他方の線状部がより優先的に昇温しやすくなる。
【0023】
また、一方の長さが、他方の長さより長いことにより、昇温の過渡状態では昇温速度の差に起因した温度差ができて、温度勾配により両側での熱交換が行われるため最高温度付近では熱平衡により、狙いの温度に発熱した後のオーバーシュートが抑制される。すなわち、温度が一定になる平衡状態までの所要時間が短くなるヒータを得ることが出来る。好ましくは、長さの差が大きい方が、昇温速度の差に起因した温度差がより大きくなるため、温度勾配により両側での熱交換が行われるため最高温度付近では熱平衡により、狙いの温度に発熱した後のオーバーシュートがより抑制される。
【0024】
なお、第2の実施形態における「線状部の中心」とは、線状部の断面形状が円、楕円または正多角形の場合にはこれらの中心のことである。また、正多角形以外の多角形の場合には、複数の対角線が交わる点を中心とする。さらに、線状部の断面形状が上記以外の場合には、次のようにして中心を求める。線状部の断面における最大長の部位に直線1を引き、この直線に対して垂直な方向の最大長の部位に直線2を引き、直線1と直線2が交わった部分を中心とする。
【0025】
(第3の実施形態)
図5(a)は、図2のY−Y線断面図であって2本の線状部12a,12bの断面形状のさらに他の一例を示す。この実施形態では、線状部の表面からセラミック基体の表面までの最短距離を比較すると、一方の線状部12aにおける最短距離δが他方の線状部12bにおける最短距離γよりも長くなっている。これにより、ヒータ等で使用される大電流を流したとき長さγの方の発熱体がセラミック基体への熱引きが大きくなるため、熱をセラミック基体に奪われてしまい短いδの方の発熱体がある側の方から加速的に加熱され、昇温に速度の速いヒータを得ることが出来る。
【0026】
また、一方の長さγが、他方の長さδより短いことにより、昇温の過渡状態では昇温速度の差に起因した温度差ができて、温度勾配により両側での熱交換が行われるため最高温度付近では熱平衡により、狙いの温度に発熱した後のオーバーシュートが抑制される。すなわち、温度が一定になる平衡状態までの所要時間が短くなるヒータを得ることが出来る。好ましくは、長さの差が大きい方が、昇温速度の差に起因した温度差がより大きくなるため、温度勾配により両側での熱交換が行われるため最高温度付近では熱平衡により、狙いの温度に発熱した後のオーバーシュートがより抑制される。
【0027】
また、図5(b)に示すように、線状部12bの断面積が線状部12aの断面積よりも小さいことにより、抵抗が高くなるため電送損失がさらにおおきくなる。これにより、他方の線状部12bがさらに加速的に加熱され昇温速度が速くなる。また、昇温速度の差に起因した温度差がより大きくなるため、温度勾配により両側での熱交換が行われるため最高温度付近では熱平衡により、狙いの温度に発熱した後のオーバーシュートがより抑制される。
【実施例1】
【0028】
まず、主成分の窒化珪素に対して焼結助剤3〜12重量%のYb2O3を添加して調整したセラミック原料粉末を用いて、有機バインダと混練したコンパウンドを作製した。ついで、このコンパウンドを射出成形機にて加熱溶融し流動化させて成形し、セラミック基体11を作製した。図6は、射出成形に用いた金型の一例を示す断面図である。この金型は上金型61と下金型62に2分割できる構造になっている。これを用いてセラミック基体11を構成する上半分と下半分をそれぞれ成形した。図7は、セラミック基体11を構成する部材(上半分)11a,部材(下半分)11bを示す断面図である。後述するように、発熱体を種々の形状に成形する際には、その形状に合わせてセラミック基体の形状も適宜変更した。
【0029】
発熱体12は、次のようにして作製した。すなわち、主成分であるWCに対して、セラミック基体11に用いたセラミック原料粉末を20〜45重量%添加して調整したセラミック粉末を準備し、このセラミック粉末を有機バインダと混練したコンパウンドを作製した。ついで、このコンパウンドを加熱溶融し流動化させて射出成形機にて所定の形状に成形した。図8は、発熱体12の成形に使用した金型の一例を示す断面図である。この金型は、上金型21と下金型22に2分割できる金型である。この金型を用いると、断面形状が円形の発熱体を成形することができる。他の断面形状を有した発熱体は、所定の断面形状を有した金型を用いて作製した。リード13、電極14についても発熱体12と同様に原料粉末からコンパウンドを作製し成形した。
【0030】
上記のようにして得られるセラミック基体11aとセラミック基体11bに各種形状の発熱体12とリード13、電極14を配置し、組み立て後、400〜500℃で24〜72時間の脱脂工程を経た脱脂体を、還元雰囲気下、1650℃〜1780℃の温度、30〜50MPaの圧力でホットプレスにより焼成した。最後に、得られた焼結体の表面に露出した電極14に、図1に示すような電極金具15をロウ付けして、図9(a)〜(e)の断面形状をもつセラミックヒータを作製した。セラミックヒータの外形寸法は厚み3mm、幅4mm、全長40mmであった。
【0031】
各セラミックヒータに所定の電圧をかけて発熱させて、先端から2mmの位置(図2のY−Y線の位置)で線状部12bの温度を放射温度計にて測定し、1000℃に達するまでの昇温時間を測定した。また、セラミックヒータの温度がオーバーシュート後、一定の温度(バラツキが±5℃以下)で平衡状態に達するまでの平衡状態到達時間を測定した。結果を表1に示す。
【表1】
【0032】
表1からわかるように、発熱体12a,12bの形状がA−1(図9(a)),B−1(図9(b)),C−1(図9(c))に比べて、発熱体12a,12bの形状が異なり一方が多角形であるD−1(図9(d)),E−1(図9(e)),F−1(図9(f))の方が、昇温時間が約1.0秒速いことが判明した。さらに、平衡状態到達時間に関しても同様に、発熱体12a,12bの形状がA−1,B−1,C−1に比べて、D−1,E−1,F−1の方が10秒〜15秒速いことが判明した。
【実施例2】
【0033】
セラミック基体11、発熱体12、リード13および電極14は実施例1と同様の方法を用いて作製した。発熱体12の線状部12a,12bは、その断面形状が、図10(a)〜(e)に示す形状になる金型を用いて成形した。線状部12bの長さα及び線状部12aの長さβが表2に示す長さになるような金型を用いて発熱体12を作製した。
【0034】
作製したそれぞれのセラミックヒータに所定の電圧をかけ発熱させて、先端から2mmの位置(図2のY−Y線の位置)で線状部12bの温度を放射温度計にて測定し、1000℃に達するまでの昇温時間を測定した。また、セラミックヒータの温度がオーバーシュート後、一定の温度(バラツキが±5℃以下)で平衡状態に達するまでの平衡状態到達時間を測定した。これらの結果を表2に示す。
【表2】
【0035】
表2からわかるように、線状部12a,12bの長さが同じであるサンプルA−2(図10(a)),B−2(図10(b))に比べて、長さαよりも長さβの方が長いサンプルC−2(図10(c))、D−2(図10(d))、E−2(図10(e))の方が、昇温時間が1.0秒以上速いことが、判明した。さらに、平衡状態到達時間に関しても同様に、A−2、B−2に比べて、C−2、D−2、E−2の方が、10秒以上速いことが判明した。なお、C−2、D−2、E−2は、線状部12bの周囲長よりも線状部12aの周囲長の方が長い。
【実施例3】
【0036】
セラミック基体11、発熱体12、リード13および電極14は実施例1と同様の方法を用いて作製した。発熱体12の線状部12a,12bは、その断面形状が、図11(a)〜(e)に示す形状になる金型を用いて成形した。線状部12bからセラミック基体11の外表面までの最短距離γ、及び線状部12aからセラミック基体11の外表面までの最短距離δが表3に示す長さになるような金型を用いて発熱体12を作製した。
【0037】
作製したそれぞれのセラミックヒータに所定の電圧をかけ発熱させて、先端から2mmの位置(図2のY−Y線の位置)で線状部12bの温度を放射温度計にて測定し、1000℃に達するまでの昇温時間を測定した。また、セラミックヒータの温度がオーバーシュート後、一定の温度(バラツキが±5℃以下)で平衡状態に達するまでの平衡状態到達時間を測定した。これらの結果を表3に示す。
【表3】
【0038】
表3からわかるように、発熱体2E、2Fからセラミック基体11の外表面までの最短距離Lをγ、δが同じ長さであるサンプルA−3(図11(a))、B−3(図11(b))に比べて、発熱体2E、2Fからセラミック基体11の外表面までのγがδより長いサンプルであるC−3(図11(c))、D−3(図11(d))、E−3(図11(e))の方が、昇温時間が1.0秒以上速いことが、判明した。
【0039】
さらに、平衡状態到達時間に関しても同様に、最短距離γと最短距離δが同じ長さであるサンプルA−3、B−3に比べて、最短距離δが最短距離γより長いサンプルC−3、D−3、E−3の方が約10秒速いことが判明した。
【実施例4】
【0040】
セラミック基体11、発熱体12、リード13、および電極14は実施例1と同様の方法を用いて作製した。線状部12a,12bは図12に示す断面形状とした。G−1(図12(b))は、線状部12aの断面形状及び断面積がF−1(図12(a))と同じとし、線状部12bの断面形状がF−1と相似形で、断面積をF−1の1/3倍とした。G−2(図12(d))は、線状部12aの断面形状及び断面積がE−2(図12(c))と同じとし、線状部12bの断面形状がE−2と相似形で、断面積をE−2の1/3倍とした。G−3(図12(f))は、線状部12aの断面形状及び断面積がD−3(図12(e))と同じとし、線状部12bの断面形状がD−3と相似形で、断面積をD−3の1/3倍とした。
【0041】
作製したそれぞれのセラミックヒータに所定の電圧をかけ発熱させて、先端から2mmの位置(図2のY−Y線の位置)で線状部12bの温度を放射温度計にて測定し、1000℃に達するまでの昇温時間を測定した。また、セラミックヒータの温度がオーバーシュート後、一定の温度(バラツキが±5℃以下)で平衡状態に達するまでの平衡状態到達時間を測定した。これらの結果を表4に示す。
【表4】
【0042】
表4からわかるように、断面形状が相似形状でありそれぞれ2Gの断面積が2Hの断面積の1/3倍としたG−1、G−2、G−3は、昇温時間、平衡状態到達時間ともに、F−1、E−2、D−3より、より速くなったことが判明した。
【実施例5】
【0043】
セラミック基体11、発熱体12、リード13および電極14は実施例1と同様の方法を用いて作製した。線状部12a,12bの断面形状をG−1(図13(a))、G−2(図13(b))、G−3(図13(c))と同様とし、セラミック基体11の断面形状を円形としたH−1(図13(d))、H−2(図13(e))、H−3(図13(f))、楕円としたI―1(図13(g))、I―2(図13(h))、I―3(図13(i))をそれぞれ作製した。
【0044】
作製したそれぞれのセラミックヒータに所定の電圧をかけ発熱させて、先端から2mmの位置(図2のY−Y線の位置)で線状部12bの温度を放射温度計にて測定し、1000℃に達するまでの昇温時間を測定した。また、セラミックヒータの温度がオーバーシュート後、一定の温度(バラツキが±5℃以下)で平衡状態に達するまでの平衡状態到達時間を測定した。これらの結果を表5に示す。
【表5】
【0045】
表5からわかるように、セラミック基体11の断面が円形となるものH−1、H−2、H−3、楕円となるものI―1、I―2、I―3は、昇温時間、平衡状態到達時間いずれかにおいて、G−1、G−2、G−3に比べて、より良好な結果が出たことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態にかかるセラミックヒータを模式的に示す斜視図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】(a)は、図1のセラミックヒータにおける発熱体の断面形状の一例を説明するための断面図であり(図2のY−Y線の位置で図1のセラミックヒータを切断したときの断面図)、(b)〜(d)は発熱体の断面形状の他の例をそれぞれ説明するための断面図である。
【図4】図1のセラミックヒータにおける発熱体の断面形状のさらに他の例を示す断面図である。
【図5】(a)及び(b)は、図1のセラミックヒータにおける発熱体の断面形状のさらに他の例を示す断面図である。
【図6】セラミック基体を成形するための金型を示す断面図である。
【図7】図1のセラミックヒータのセラミック基体を示す断面図である。
【図8】発熱体を成形するための金型を示す断面図である。
【図9】(a)〜(f)は、実施例1において評価したセラミックヒータの発熱体の断面形状をそれぞれ示す断面図である。
【図10】(a)〜(e)は、実施例2において評価したセラミックヒータの発熱体の断面形状をそれぞれ示す断面図である。
【図11】(a)〜(e)は、実施例3において評価したセラミックヒータの発熱体の断面形状をそれぞれ示す断面図である。
【図12】(a)〜(f)は、実施例4において評価したセラミックヒータの発熱体の断面形状をそれぞれ示す断面図である。
【図13】(a)〜(i)は、実施例5において評価したセラミックヒータの発熱体の断面形状をそれぞれ示す断面図である。
【図14】従来のセラミックヒータを示す斜視図である。
【図15】図14のX1−X1線断面図である。
【図16】(a)及び(b)は、図14のセラミックヒータにおける発熱体の断面形状の一例を説明するための断面図である(図15のY1−Y1線の位置で図14のセラミックヒータを切断したときの断面図)。
【符号の説明】
【0047】
11 セラミック基体
12 発熱体
12a,12b 線状部
13 リード
14 電極
15 電極金具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状のセラミック基体と、該セラミック基体中に埋設された発熱体とを備えたセラミックヒータであって、前記発熱体は、前記セラミック基体の先端側に延びる2本の線状部と、これらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、前記セラミック基体の軸方向に垂直で、かつ、前記2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部が円形ないし楕円形であり、他方の線状部が多角形であることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項2】
棒状のセラミック基体と、該セラミック基体中に埋設された発熱体とを備えたセラミックヒータであって、前記発熱体は、前記セラミック基体の先端側に延びる2本の線状部と、これらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、前記セラミック基体の軸方向に垂直で、かつ、前記2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部の周囲の長さが他方の線状部の周囲の長さよりも長く、前記一方の線状部の中心と前記他方の線状部の中心とを結ぶ直線に対して垂直な方向の長さが、一方の線状部の方が他方の線状部よりも長いことを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項3】
棒状のセラミック基体と、該セラミック基体中に埋設された発熱体とを備えたセラミックヒータであって、前記発熱体は、前記セラミック基体の先端側に延びる2本の線状部と、これらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、前記セラミック基体の軸方向に垂直で、かつ、前記2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部の表面から前記セラミック基体の表面までの最短距離が他方の線状部の表面から前記セラミック基体の表面までの最短距離よりも短いことを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項4】
前記断面において、前記他方の線状部の断面積が前記一方の線状部の断面積よりも小さい請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックヒータ。
【請求項5】
前記断面において、前記セラミック基体の断面が円形なし楕円形である請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックヒータ。
【請求項1】
棒状のセラミック基体と、該セラミック基体中に埋設された発熱体とを備えたセラミックヒータであって、前記発熱体は、前記セラミック基体の先端側に延びる2本の線状部と、これらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、前記セラミック基体の軸方向に垂直で、かつ、前記2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部が円形ないし楕円形であり、他方の線状部が多角形であることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項2】
棒状のセラミック基体と、該セラミック基体中に埋設された発熱体とを備えたセラミックヒータであって、前記発熱体は、前記セラミック基体の先端側に延びる2本の線状部と、これらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、前記セラミック基体の軸方向に垂直で、かつ、前記2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部の周囲の長さが他方の線状部の周囲の長さよりも長く、前記一方の線状部の中心と前記他方の線状部の中心とを結ぶ直線に対して垂直な方向の長さが、一方の線状部の方が他方の線状部よりも長いことを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項3】
棒状のセラミック基体と、該セラミック基体中に埋設された発熱体とを備えたセラミックヒータであって、前記発熱体は、前記セラミック基体の先端側に延びる2本の線状部と、これらの線状部の先端同士をつなぐ折り返し部とを有し、前記セラミック基体の軸方向に垂直で、かつ、前記2本の線状部を含む平面で切ったときの断面において、一方の線状部の表面から前記セラミック基体の表面までの最短距離が他方の線状部の表面から前記セラミック基体の表面までの最短距離よりも短いことを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項4】
前記断面において、前記他方の線状部の断面積が前記一方の線状部の断面積よりも小さい請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックヒータ。
【請求項5】
前記断面において、前記セラミック基体の断面が円形なし楕円形である請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックヒータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−265893(P2007−265893A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91520(P2006−91520)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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