説明

セラミック・マトリックス複合材料タービン・エンジン

【課題】セラミック・マトリックス複合材料で構成される1つまたは複数の構成部品を備えるタービン・エンジン(10)用の移行部分(16)を提供する。
【解決手段】
一実施形態において提供されるタービン・エンジン(10)用の移行部分(16)は、ガス・タービン・エンジン(10)内の高圧タービン(12)と低圧タービン(14)とを流体的に接続しても良い。移行部分(16)は、移行ダクト(33)と可変面積タービン・ノズル(44)とを備えていても良い。移行ダクト(33)および可変面積タービン・ノズル(44)の一方または両方が、セラミック・マトリックス複合材料で構成されていても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示する主題は、ガス・タービンに関し、より具体的には、ガス・タービン内の可変面積タービン・ノズルおよび移行ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガス・タービン・エンジンは、圧縮空気と燃料との混合物を燃焼させて、高温燃焼ガスを生成する。燃焼ガスは、1つまたは複数のタービン段を通って流れて、負荷および/または圧縮機に対するパワーを発生させる場合がある。デュアル・シャフト・ガス・タービンは、圧縮機を駆動する高圧タービンと、負荷(たとえば送風機または発電機)を駆動する低圧タービンとを備えている場合がある。燃焼ガスは、高圧タービンから低圧タービンの可変面積タービン・ノズルへ移行ダクトを通って流れる場合がある。燃焼ガスが高温であるために、移行ダクトおよびタービン・ノズルを、高温に耐えるようにデザインする必要がある場合がある。第1段の低圧タービン・ノズルは、空力負荷の関数として可変の流路面積を提供するようにデザインする必要がある場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,653,669号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セラミック・マトリックス複合材料で構成される1つまたは複数の構成部品を備えるタービン・エンジン用の移行部分を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
当初に請求される発明と範囲において見合っている特定の実施形態を以下にまとめる。これらの実施形態は、請求される発明の範囲を限定することは意図しておらず、むしろこれらの実施形態は、本発明の可能な形態の簡単な概要を与えることのみを意図している。実際には、本発明は、以下に述べる実施形態と同様の場合も異なる場合もある種々の形態を包含する場合がある。
【0006】
一実施形態においては、タービン・エンジンが、高圧タービンと、低圧タービンと、流体を高圧タービンから低圧タービンへ送るように構成された移行部分とを備える。移行部分の少なくとも1つの構成部品は、セラミック・マトリックス複合材料で構成される。
【0007】
別の実施形態においては、可変面積タービン・ノズル・アセンブリが、セラミック・マトリックス複合材料で構成される少なくとも1つの可変翼と、ガス・タービン・エンジン内に少なくとも1つの可変翼を回転可能に取り付けるように構成された少なくとも1つのトラニオンとを備える。
【0008】
さらに別の実施形態においては、移行ダクトが、高圧タービンを低圧タービンに流体的に接続するセラミック・マトリックス複合材料ハウジングを含む。
【0009】
さらに別の実施形態においては、ガス・タービン・エンジンが、高圧タービンと、低圧タービンと、燃焼ガスを高圧タービンまたは低圧タービン内に送るように構成された可変面積タービン・ノズルと、高圧タービンと低圧タービンとを流体的に接続するように構成された移行ダクトとを、備える。移行ダクト、可変面積タービン・ノズル、またはそれらの組み合わせは、セラミック・マトリックス複合材料で構成されている。
【0010】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および優位性は、以下の詳細な説明を添付図面を参照して読むことでより良好に理解される。添付図面では、同様の文字は図面の全体に渡って同様の部分を表わす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】セラミック・マトリックス複合材料で構成される移行ダクトおよび可変面積タービン・ノズルを伴うガス・タービン・エンジンの実施形態の概略的なフロー図である。
【図2】長手軸を通して区分された図1のガス・タービン・エンジンの断面図である。
【図3】移行部分を示す図2のガス・タービン・エンジンの一部の詳細図である。
【図4】セラミック・マトリックス複合材料で構成される可変面積タービン・ノズル・アセンブリの実施形態の一部の斜視図である。
【図5】図4に示す可変面積タービン・ノズルのうちの1つの斜視図である。
【図6】単純化した冷却通路を伴う可変面積タービン・ノズルの別の実施形態の斜視図である。
【図7】冷却通路を伴わない可変面積タービン・ノズルの別の実施形態の斜視図である。
【図8】長手軸を通して区分された可変面積タービン・ノズルの実施形態の断面図である。
【図9】減少した冷却通路を示す長手軸を通して区分された可変面積タービン・ノズルの別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の1つまたは複数の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態について簡潔な説明を与えるために、本明細書では実際の具体化のすべての特徴については説明しない場合がある。次のことを理解されたい。すなわち、任意のこのような実際の具体化を開発する際には、任意のエンジニアリングまたはデザイン・プロジェクトの場合と同様に、開発者の特定の目標(たとえばシステム関連およびビジネス関連の制約と適合すること)を達成するために、具体化に固有の多数の決定を行なわなければならない。特定の目標は具体化ごとに変わる場合がある。また次のことを理解されたい。すなわち、このような開発努力は、複雑で時間がかかる場合があるが、それでも、本開示の利益を受ける当業者にとってはデザイン、作製、および製造の日常的な取り組みであろう。
【0013】
本発明の種々の実施形態の要素を導入するとき、冠詞「a」、「an」、「the」、および「前記」は、要素の1つまたは複数が存在することを意味することが意図されている。用語「含む(comprising)」、「備える(including)」、および「有する(having)」は、包含的であることが意図されており、列記された要素以外の付加的な要素が存在していても良いことを意味する。
【0014】
本開示は、セラミック・マトリックス複合材料(CMC)をタービン・ノズルおよび/または移行ダクトに取り入れたガス・タービンに関する。特定の実施形態によれば、ガス・タービンは、高圧タービンと、低圧タービンと、両者を流体的に接続して燃焼ガスを高圧タービンから低圧タービンへ送る移行ダクトと、を備えていても良い。移行ダクトを出たらすぐに、燃焼ガスは、タービンの部分負荷性能を最適化するために可変面積タービン・ノズル(VATN)を通っても良い。VATNを調整して、ガス・タービン・エンジン内での燃焼ガスの流速および角度を、低圧タービン負荷の関数として変えても良い。燃焼ガスは高温である(約650℃を超える)ため、移行ダクトおよびVATNを高温に耐えるようにデザインしても良い。移行ダクトおよびVATN(特に、金属超合金で構成されるもの)を、圧縮機から流出される圧縮空気の一部を用いて冷却しても良い。しかし圧縮機から流出される空気は必ずしも、パワーを発生させるためには用いられず、ガス・タービン・エンジンの全体的効率および出力が相応に減少する。さらに、移行ダクトおよび/またはVATNは、入り組んだ幾何学的形状を有しながらシール要求を受ける場合があり、その結果、冷却デザインのコストが増加する場合がある。また、従来の冷却された金属製VATNでは、可変面積が必要であることから圧縮機空気流のさらなる寄生漏れが生じる可能性がある。
【0015】
したがって本開示では、ガス・タービン・エンジン内での冷却の必要性を軽減するかまたはなくす場合があるCMCで構成されたVATNと移行ダクトとを備えるガス・タービンについて説明する。冷却の必要性が軽減されると、より多くの圧縮空気をパワー発生に利用できる場合があり、その結果、ガス・タービンの動作効率および出力が増加する。さらに、冷却の必要性が軽減されることによって、冷却デザインおよびシールを単純化できる場合があり、その結果、コストが下がり製造が容易になる。また、VATNがCMCで構成されることによって、不注意の寄生漏れ損失が減る場合がある。
【0016】
図1は、高圧タービン12と低圧タービン14とを備える典型的なガス・タービン・エンジン10の概略的なフロー図である。特定の実施形態においては、ガス・タービン・エンジン10は、航空機、船舶、機関車、パワー発生システム、機械駆動装置、採油プラットフォーム、パイプライン圧縮機、またはそれらの組み合わの中で用いても良い。後述するように、ガス・タービン・エンジン10の1つまたは複数の構成部品が、より高い耐用温度をもたらす場合があるCMCを含んでいても良いし、CMCで構成されていても良く、その結果、ガス・タービン・エンジン10の冷却の必要性が軽減される。本明細書で用いる場合、語句「CMCで構成される」および「CMCから構成される」は、構成部品が実質的にCMCで構成されることを意味するものとする。より具体的には、CMC構成部品は、CMC材料の単なる層またはコーティングよりも多いCMC材料を含むものとする。たとえば、CMCで構成される構成部品は、CMC材料から実質的にまたは完全になっているかまたは構成されていても良く、たとえば約50、60、70、80、90を超えるか、または100パーセントのCMC材料である。
【0017】
高圧タービン12からの燃焼ガスは、移行部分16を通って流れて低圧タービン14において続けて膨張しても良い。タービン12および14は、軸方向に移動しても良く、流体力学的に連絡していても良いが、機械的に接続を切って同心のシャフトを介して異なる速度で回転できるようにしても良い。具体的には、高圧タービン12がシャフト18を回転させて圧縮機20を駆動しても良い。低圧タービン14が、シャフト22を回転させて負荷24を駆動しても良い。負荷24には、発電機、プロペラ、変速機、駆動システム(たとえば負荷圧縮機)、またはそれらの組み合わせが含まれていても良い。特定の実施形態においては、負荷24は、ガス・タービン・エンジン10の周りに空気を送って全体的なエンジン推力を増加させる送風機(たとえばシュラウデッド・プロペラ)を備えていても良い。
【0018】
矢印で示すように、空気が、ガス・タービン・エンジン10に取入口部分26を通って入り、圧縮機20内に流れ込んでも良い。圧縮機20では、空気を燃焼器部分28内に入れる前に圧縮する。燃焼器部分28は、燃焼器ハウジング30を備えている。燃焼器ハウジング30は、シャフト18および22の周りに同心円状に配置され、圧縮機20と高圧タービン12との間に位置している。圧縮機20からの圧縮空気は燃焼器32に入る。そこで圧縮空気は、燃焼器32内の燃料と混合して燃焼し、タービン12および14を駆動しても良い。
【0019】
燃焼器部分28から高温の燃焼ガスが高圧タービン12を通って流れ、シャフト18を介して圧縮機20を駆動する。高温の燃焼ガスが次に、移行部分16を通って低圧タービン14内に流れ、シャフト22を介して負荷24を駆動しても良い。前述したように、高圧タービン12と低圧タービン14とは互いに独立に回転しても良い。したがって移行部分16は、燃焼ガスを収容するための移行ダクト33と、高圧タービン12と低圧タービン14とを同期化するためのVATNアセンブリ34とを、備えていても良い。以下でさらに説明するように、VATNアセンブリ34は、シャフト22の周りの環状構成において複数の半径方向位置に配置された複数のVATNを備えている。各VATNは、低圧タービン14に入る燃焼ガスの迎え角を変えるように、その長手軸に沿って調整可能であっても良い。さらに各VATNを回転させて、燃焼ガスの流れを変調しても良い。VATNアセンブリ34は、可変面積タービン・ノズル、または固定および可変面積タービン・ノズルの組み合わせを備えていても良い。VATNアセンブリ34と低圧タービン14とを通って流れた後に、高温の燃焼ガスは、排気部分36を通ってガス・タービン・エンジン10を出ても良い。
【0020】
前述したように、ガス・タービン・エンジン10の種々の構成部品は、ガス・タービン・エンジン10を通って流れる高温の燃焼ガスにさらされる。具体的には、移行ダクト33とVATNアセンブリ34とは、高圧タービン12から低圧タービン14へ流れる高温の燃焼ガスにさらされる場合がある。いくつかの実施形態においては、内部温度は650℃以上に達する場合があり、その結果、構成部品は、クリープ、腐食および/または高サイクルもしくは低サイクル疲労の影響を受けやすくなる場合がある。したがって、特定の構成部品(たとえば移行ダクト33およびVATNアセンブリ34)を、完全にまたは部分的にCMCで構成して、より高い耐用温度を実現しても良い。特定の実施形態においては、耐用温度が高くなることで、冷却デザインを単純化することができる場合があり、その結果、製造コストおよびシール・デザイン要求が軽減される場合があり、ならびに/または冷却用空気流が低減される場合がある。その結果、ガス・タービン・エンジン10の効率および出力が増加する場合がある。また耐用温度が高くなることで、一酸化窒素および二酸化窒素(一括してNOxとして知られる)ならびに二酸化炭素の排出を減少できる場合もある。
【0021】
図2は、長手軸に沿って見た図1のガス・タービン・エンジン10の実施形態の側面図である。図1に関して前述したように、ガス・タービン・エンジン10は高圧タービン12と低圧タービン14とを備える。空気は、空気取り入れ口部分26を通って入り、圧縮機20によって圧縮されても良い。圧縮機20からの圧縮空気を次に、燃焼器部分28内に送って、そこで圧縮空気を燃料ガスまたは蒸留物、液体燃料と混合しても良い。圧縮空気と燃料との混合物は一般的に、燃焼器部分28内で焼却して、高温で高圧の燃焼ガスを発生させる。この燃焼ガスを用いて、タービン12および14内でトルクを発生させても良い。タービン12および14を通って流れた後で、燃焼ガスは、排気部分36を通って排気ガスとしてガス・タービン・エンジン10を出ても良い。図1に関して前述したように、タービン12に対するシャフトとタービン14に対するシャフトとは、タービン12および14が異なる速度で回転できるように、機械的に接続しなくても良い。
【0022】
図3は、図2に示す移行部分16とタービン12および14との詳細な断面図である。高圧タービン12は、燃焼器部分28から高温の燃焼ガスを受け取っても良いバケット部分38を備える。高温の燃焼ガスは、バケット部分38を通って移行ダクト33内へ流れても良い。移行ダクト33内では、燃焼ガスは、VATNアセンブリ34を通って流れて、低圧タービン14のバケット部分40へ入っても良い。高温の燃焼ガスは次に、排気部分36を通って出ても良い。前述したように、移行ダクト33は一般的に、ハウジング構造として、高圧タービン12を低圧タービン14に流体力学的に結合させ、燃焼ガスがタービン12および14の間を流れるためのダクトとなるハウジング構造を備えていても良い。移行ダクト33は、CMC、高温金属合金、または他の好適な材料で構成されていても良い。
【0023】
VATNアセンブリ34は固定翼42と可変翼44とを備える。翼42および44はそれぞれ、移行ダクト16内に半径方向に配置された複数の翼であって、燃焼ガスを移行ダクトから低圧タービン14のバケット部分40内に送る複数の翼を表わしても良い。固定翼42は固定位置に留まっても良く、一方で、可変翼44はその長手方向軸に沿って回転しても良い。トラニオン46および48を、翼42および44にそれぞれ結合して、翼42および44を支持しても良い。またトラニオン48を、駆動レバー50に結合しても良い。駆動レバー50を、翼44をその長手方向軸に沿って回転させるように作動させて、移行ダクト33を通ってバケット部分40内に流れる燃焼ガスの迎え角を変えても良い。またレバー50を、可変翼44同士の動きを同期させても良い同期リング52に結合しても良い。
【0024】
特定の実施形態においては、翼42および44は、冷却液(たとえば空気または蒸気)を受け取るための内部通路を備えていても良い。たとえば、翼42および44は、圧縮機20(図2)から流出される圧縮空気の一部を受け取っても良い。冷却液は、翼42および44に入って、トラニオン46内の流路54を通っても良い。たとえば、トラニオン46内の流路54を、圧縮機から流出される空気を供給するマニフォールドに流体的に結合しても良い。冷却液は、流路54を通って、個々の翼42および/または44内の冷却通路内に流れても良い。特定の実施形態においては、流路54は空気を移行ダクト33に供給しても良い。
【0025】
図4はVATNアセンブリ34の斜視図である。明瞭にするために、トラニオン46は取り外してある。固定翼42が表面56および58間に配置され、可変翼44が表面60および62間に配置されている。一緒に、表面56、58、60、および62は、移行ダクト33(図3)を形成しても良い。しかし他の実施形態においては、付加的な構造を表面56、58、60、および62に沿って配置して、移行ダクト33を形成しても良い。前述したように、圧縮機からの冷却用空気は流路54を通って固定翼42に入っても良い。特定の実施形態においては、ダクトまたはマニフォールドを設けて、流路54からの空気を可変翼44のトラニオン48内の冷却通路に送っても良い。しかし他の実施形態においては、トラニオン48は、冷却液を可変翼44に与えるための通路を備えていても良い。
【0026】
高温の燃焼ガスを含む移行ダクト容積内に冷却用空気が流れることを妨げるために、流路54の周りにシールを設けても良い。またシールを、冷却液を翼44に与えるように構成された冷却通路およびダクトの周り、ならびに翼44を支持する表面60および62の周りに設けても良い。たとえば、ラビリンスおよび/またはフローティング・シールを表面60および62の周りに配置して、翼42および44を過ぎて流れる高温の燃焼ガス内に冷却液が連行されることを妨げても良い。シールは、翼44が表面60および62間でその長手方向軸に沿って回転するときに、冷却液が移行ダクト33内に流れることを妨げるように、デザインしても良い。
【0027】
前述したように、翼42および44は、より大きな熱能力を実現する場合があるCMCで構成しても良い。また移行ダクト33(図3)の構成部品をCMCで構成しても良い。移行ダクト33と翼42および44とに対するCMC材料は、好適な任意のタイプの繊維強化セラミック材料を含んでいても良い。たとえばCMC材料は、繊維強化非酸化物セラミックス、たとえば炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、およびアルミニウム窒化物を含んでいても良い。またCMC材料は、繊維強化酸化物マトリックス・セラミックス、たとえばアルミナ、シリカ、ムライト、アルミノケイ酸バリウム、アルミノケイ酸リチウム、またはアルミノケイ酸カルシウムを含んでいても良い。さらにCMC材料は、酸化物および非酸化物セラミックスの組み合わせならびに他の好適なCMC材料を含んでいても良い。たとえば、酸化物セラミックスを特定の構成部品に対して用いても良く、一方で非酸化物セラミックスを他の構成部品に対して用いる。CMC材料は、好適な任意のタイプの酸化物または非酸化物強化繊維、たとえば炭化ケイ素、カーボン、ガラス、ムライト、およびアルミナを含んでいても良い。
【0028】
前述したように、CMC材料は、より高い熱能力を実現する場合があり、その結果、ガス・タービン・エンジンの効率が増加する。たとえば、特定の実施形態においては、炭化ケイ素−炭化ケイ素CMC構成部品が、約1204℃〜約1316℃の温度に耐えることができる場合がある。別の例では、炭素繊維−炭化ケイ素マトリックスCMC構成部品が、約1538℃〜約2482℃の温度に耐えることができる場合がある。特定の実施形態においては、CMCを用いることで、翼内の冷却液の流れを減らすことが容易になる場合がある。またCMCによって、VATNアセンブリ34内で用いるシールのデザインが単純になる場合もあり、冷却通路の幾何学的形状が単純になる場合もある。当然のことながら、翼の他の構成部品(たとえばトラニオン、同期リング、およびレバー)もCMCで構成して、さらなる熱冷却の利益を得ても良い。
【0029】
図5は、図4に示す可変翼44のうちの1つの斜視図である。翼44は、蛇行した冷却通路64を備える。VATNアセンブリ34は、冷却液(矢印66)(たとえば圧縮機から流出される空気)を、翼44のトラニオン48上に配置された吸気口ポート68から受け取っても良い。冷却液66は、トラニオン流路54を通って流れて、蛇行した冷却通路64に入っても良い。そこでは、冷却液が翼44の内部を通って流れて翼を冷却しても良い。冷却液は、出口ポート70を通って翼44を出ても良い。当然のことながら、冷却通路64は単に一例として示しており、限定することは意図していない。他の多くの冷却通路構成および/または幾何学的形状を設けても良い。たとえば、出口ポートの数を変えても良く、翼は複数の別個の冷却通路および/または角度の付いた通路を備えていても良い。また翼は、翼の内部を対流冷却するための冷却通路とともに、翼の内面を衝突冷却するための内部の衝突孔を備えていても良い。さらに、フィルム冷却孔が翼の側壁を通って延びて、外部の翼表面の膜冷却をもたらしても良い。
【0030】
前述したように、翼44をCMC材料で構成して、冷却通路64内の冷却流を減らしても良い。またCMC材料によって、冷却液が移行ダクト33(図3)内へ流れることを妨げるための単純化されたシールを用いることが容易になる場合がある。たとえば、シールを表面60および72間に設けて、翼44が回転する間に冷却液が連行されることを妨げても良い。またシールを翼44の底面70に沿って設けても良い。特定の実施形態においては、翼44のCMC材料によって、ラビリンス・シールおよび/またはフローティング・シールならびに他の好適なシール・タイプの幾何学的形状が単純になる場合がある。
【0031】
図6は、翼76の代替的な実施形態であり、CMC材料で構成される翼76に対して設けても良い単純化した冷却通路78を示している。前述したように、CMC材料は熱容量が増加する場合があり、その結果、冷却液66の流れを減らすことに加えてまたはその代わりに、単純化した冷却通路を用いることができる。冷却通路78は、比較的直線の幾何学的形状を備えているため、翼76の製造が単純になる場合がある。冷却液66は、吸気口68を通って翼76に入り、トラニオン流路54を通って流れ、冷却通路78を通って流れることによって翼を冷却しても良い。冷却液66は出口ポート70を通って出ても良い。特定の実施形態においては、CMC材料を用いることによって、出口ポートの数が、10〜100パーセント(およびその間のすべての部分範囲)だけ減る場合がある。より具体的には、出口ポートの数が、10、20、30、40、50、60、70、80、または90パーセントを超えて減らせる場合がある。さらにもっと具体的には、CMC材料を用いることによって、出口ポートの数が80〜90パーセントだけ減る場合がある。さらに特定の実施形態においては、CMC材料によって、冷却通路の容積が10〜100パーセント(およびその間のすべての部分範囲)だけ減らせる場合がある。たとえば、CMCによって、冷却通路の容積を、10、20、30、40、50、60、70、80、または90パーセントを超えて減らせる場合がある。より具体的には、冷却通路の容積が、50〜90パーセントだけ、またはさらにもっと具体的には、80〜90パーセントだけ減らせる場合がある。
【0032】
図7に、CMC材料で構成されるVATN翼79の別の実施形態として、冷却通路を備えていない場合を例示する。CMC材料を用いることで、CMC翼79の熱能力が増すために、冷却通路を用いる必要がなくなる場合がある。冷却通路がなくなることで、翼79の周りにシールを設ける必要もなくなる場合があり、また圧縮機から冷却液を与える必要もなくなる場合がある。その結果、ガス・タービン・エンジンの効率が増加する場合がある。
【0033】
図8は、VATN翼80の別の実施形態の切り欠き断面図である。燃焼ガス(矢印82)が翼80を過ぎて流れても良い。高温の燃焼ガス82が翼上を流れるにつれて、ガスが翼を加熱する場合がある。翼80を冷却液66によって冷却しても良い。冷却液66は、トラニオン流路54を通って、翼80の内部容積内に配置された冷却流路84、86、および88内に流れても良い。流路は、断面が概ねより厚い翼の部分に冷却液を与えるための流路84を備える略蛇行した構成で示されている。流路86によって翼の中心部分を冷却しても良く、流路88によって、断面が概ねより薄い翼の部分に対する冷却が行なわれても良い。当然のことながら、流路84、86、および88は一例として与えており、限定することは意図してない。たとえば、翼内の冷却通路の数および幾何学的形状は変えても良い。複数の出口ポート70があると、冷却液66が翼80の外面を通って出て、外部の翼表面に対する膜冷却をもたらすことが可能になる場合がある。翼80をCMC材料で構成して冷却液66の流れを減らすことができる場合がある。
【0034】
冷却流を減らすことに加えてまたはその代わりに、CMC材料によって、出口ポートの数70を減らすことが容易になる場合がある。図8に、VATN翼90の代替的な実施形態として、図8に示すものより約80パーセント少ない出口ポート70を備える場合を示す。前述したように、出口ポートの数を減らすことは、CMC材料を用いて翼を構成することによって可能になる場合がある。さらに、CMC材料を用いて翼を構成することによって、出口ポートを他の割合で減らすことが容易になる場合がある。たとえば、CMC材料を用いることによって、出口ポートを約10〜100パーセント(およびその間のすべての部分範囲)だけ減らすことが容易になる場合がある。より具体的には、CMC材料を用いることによって、出口ポートを10、20、30、40、50、60、70、80、または90パーセントを超えて減らすことが容易になる場合がある。当然のことながら、翼の他の構成部品(たとえばトラニオン、同期リング、およびレバー)もCMC材料で構成して、さらなる冷却の利益を得ても良い。
【0035】
CMCのVATNおよび移行ダクトの応用例は、種々のタイプのガス・タービン・エンジンにおいて見出せる場合がある。しかしCMC材料は、動作効率を上げるために入口燃焼ガス温度を上げているガス・タービン・エンジンに、特に適している。またCMC材料は、複雑な翼および/または移行ダクトの幾何学的形状を用いているために冷却通路を組み込むことが難しくなっている場合があるガス・タービン・エンジンにも適している。さらに、CMC材料を用いて、種々のタイプのVATNアセンブリで用いる翼を構成しても良い。たとえば、VATNアセンブリは、固定の構成部品と可変の構成部品とを有するデュアル・セグメント翼を含んでいても良い。またVATNアセンブリは、固定翼、可変翼、またはそれらの組み合わせを含んでいても良い。
【0036】
この書面の説明では、例を用いて、ベスト・モードを含む本発明を開示するとともに、どんな当業者も本発明を実行できるように、たとえば任意の装置またはシステムを作りおよび用いること、ならびに取り入れられた任意の方法を行なうことができるようにしている。本発明の特許可能な範囲は、請求項によって規定されるとともに、当業者に想起される他の例を含んでいても良い。このような他の例は、請求項の文字通りの言葉使いと違わない構造要素を有するか、または請求項の文字通りの言葉使いとの差が非実質的である均等な構造要素を含む場合には、請求項の範囲内であることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧タービン(12)と、
低圧タービン(14)と、
流体を高圧タービン(12)から低圧タービン(14)へ送るように構成された移行部分(16)と、を備え、
移行部分(16)の少なくとも1つの構成部品はセラミック・マトリックス複合材料を含むタービン・エンジン(10)。
【請求項2】
セラミック・マトリックス複合材料は、炭化ケイ素繊維−炭化ケイ素マトリックスを含む請求項1に記載のタービン・エンジン(10)。
【請求項3】
セラミック・マトリックス複合材料は、非酸化物セラミック・マトリックス、酸化物セラミック・マトリックス、またはそれらの組み合わせを含む請求項1に記載のタービン・エンジン(10)。
【請求項4】
移行部分(16)は、
高圧タービン(12)と低圧タービン(14)とを流体的に接続するように構成された移行ダクト(33)と、
移行ダクト(33)内に環状に配置された少なくとも1つの可変面積タービン・ノズル(44)と、を備える請求項1に記載のタービン・エンジン(10)。
【請求項5】
少なくとも1つの構成部品には、移行ダクト(33)、少なくとも1つの可変面積タービン・ノズル(44)、または両方が含まれる請求項4に記載のタービン・エンジン(10)。
【請求項6】
少なくとも1つの構成部品には、少なくとも1つの可変面積タービン・ノズルの翼(76)が含まれる請求項4に記載のタービン・エンジン。
【請求項7】
圧縮機(20)と、
冷却液の流れを圧縮機から移行部分(33)へ送るように構成された通路と、を備える請求項1に記載のタービン・エンジン(10)。
【請求項8】
セラミック・マトリックス複合材料で構成される少なくとも1つの構成部品によって、冷却液(66)の流れの低減が促進される請求項7に記載のタービン・エンジン。
【請求項9】
セラミック・マトリックス複合材料で構成される少なくとも1つの可変翼(44)と、
ガス・タービン・エンジン(10)内に少なくとも1つの可変翼(44)を回転可能に取り付けるように構成された少なくとも1つのトラニオン(48)と、を備える可変面積タービン・ノズル・アセンブリ(34)。
【請求項10】
高圧タービン(12)と低圧タービン(14)との間に配置された移行ダクト(33)を備え、少なくとも1つの可変翼(44)は移行ダクト(33)内に配置される請求項9に記載の可変面積タービン・ノズル・アセンブリ(34)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−180878(P2010−180878A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20799(P2010−20799)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】