説明

セラミック基板、及び、そのセラミック基板の製造方法

【課題】セラミック部の表面に形成された金属層の密着強度が向上されたセラミック基盤を提供する。
【解決手段】セラミック部2と、セラミック部2の少なくとも1面に形成されたアルミナが点在するアルミナ点在層3と、アルミナ点在層3の表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第1の金属層4と、第1の金属層4表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第2の金属層5と、からなるセラミック基板1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板、及びセラミック基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック多層基板は、耐熱性・耐湿性に優れ、また、高周波回路において良好な周波数特性を有することから、モバイル機器のRF(Radio Frequency)モジュール、放熱性を利用したパワーLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)用の基板や液晶のバックライト向けLED用の基板、また、自動車搭載用の電子制御回路用の基板として用いられている。
【0003】
現在、これらセラミック多層基板の製造方法としては、セラミック部を準備するセラミック準備工程と、前記セラミック部の表面を研磨する工程(セラミック部研磨工程)と、前記研磨後のセラミック部の表面に、金属層を形成する工程(金属形成工程)と、
を有していた(例えば、これに類似する技術は下記特許文献1に記載されている)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−245393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したセラミック基板の製造方法では、前記セラミック部の表面を研磨することによって、セラミック部を形成する際のセラミック部の反り(セラミック基板の反り)の低減することができる。
【0006】
しかしながら、前記従来例における課題は、前記セラミック部と前記金属層との熱膨張係数の違いに起因して、前記セラミック部と、前記セラミック基板表面に形成した金属層の間の密着強度が低下してしまうという課題を有していた。
【0007】
そこで、本発明は、前記セラミック部と、前記セラミック部の表面に形成された金属層の間の密着強度を向上させたセラミック基板、およびそのセラミック基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そしてこの目的を達成するために本発明は、セラミック部と、前記セラミック部の少なくとも1面に形成されたアルミナが点在するアルミナ点在層と、前記アルミナ点在層の表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第1の金属層と、前記第1の金属層表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第2の金属層と、からなるセラミック基板とした。
【0009】
また、本発明は、セラミック部を準備するとともに、前記セラミック部上にアルミナが点在するアルミナ点在層を形成するセラミック部準備工程と、前記アルミナ点在層の表面に、無電界めっき法によって、第1の金属層を形成する第1の金属層形成工程と、前記第1の金属層形成工程にて形成された前記第1の金属層上に、無電界めっき法によって、第2の金属層を形成する第2の金属層形成工程と、前記第2の金属層形成工程にて形成された前記第2の金属層上に、電界めっき法によって、第3の金属層を形成する第3の金属層形成工程と、からなるセラミック基板の製造方法とした。
【0010】
これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明は、セラミック部と、前記セラミック部の表面に、アルミナが点在するアルミナ点在層と、前記アルミナ点在層の表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第1の金属層と、前記第1の金属層表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第2の金属層と、いう構成を有するセラミック基板とすることができるので、前記セラミック部と、前記セラミック部の表面に形成された金属層の密着強度を向上することができる。
【0012】
すなわち、本発明においては、前記セラミック部と前記第1の金属層との間に、アルミナが点在するアルミナ点在層を形成し、そのアルミナ成分によって、前記セラミック部と前記第1の金属層間の密着強度を向上させることができると推測される。その結果として、前記セラミック部の表面に形成された金属層の密着強度を向上することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1におけるセラミック基板1の構成を示す断面図
【図2】セラミック部の表面のSEM(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)の観察図(1500倍)であり、図2(a)はアルミナ点在層が形成されている(本発明の実施の形態1における)セラミック部の表面のSEMの観察図、図2(b)はアルミナ点在層が形成されていない従来例のセラミック部の表面のSEMの観察図
【図3】本発明の実施の形態1におけるセラミック基板の製造方法を示すフローチャート
【図4】本発明の実施の形態1におけるセラミック部準備工程を示すフローチャート
【図5】本発明の実施の形態1におけるグリーンシートの断面図を示すものであり、図5(a)はグリーンシート9Aの断面図、図5(b)はグリーンシート9Bの断面図、図5(c)はグリーンシート9Cの断面図
【図6】本発明の実施の形態1の積層工程における積層手順を示す断面図
【図7】本発明の実施の形態1の積層工程におけるグリーンシート積層体の断面図
【図8】本発明の実施の形態1の積層工程における加圧加熱方法を説明する断面図
【図9】本発明の実施の形態1の脱バインダー工程における加圧加熱方法を説明する断面図
【図10】本発明の実施の形態1の焼成工程における加圧加熱方法を説明する断面図
【図11】本発明の実施の形態1の焼成工程後におけるグリーンシート積層体の断面図
【図12】本発明の実施の形態1の拘束層除去工程後におけるグリーンシート積層体の断面図
【図13】本発明の実施の形態1の第1の金属層形成工程後におけるグリーンシート積層体の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態を図面とともに詳細に説明するが、これら実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0015】
(実施の形態1)
[1]セラミック基板の構成
まずはじめに、本実施形態におけるセラミック基板の構成に関して説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態1におけるセラミック基板1の構成を示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、セラミック基板1は、セラミック部2と、そのセラミック部2の少なくとも1面(図1中では、上面)に形成されたアルミナが点在するアルミナ点在層3と、そのアルミナ点在層3の表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第1の金属層4と、その第1の金属層4の表面に、湿式めっき法によって形成された第2の導電性金属からなる第2の金属層5とから構成されるものである。このセラミック部2の表面に形成されている第1の金属層4、第2の金属層5は、この後加工されて、所望の電子部品(例えば、前述のLEDや、IC=Integrated Cuircuit)を実装するための外部電極(図示なし)や、電気回路パターン配線(図示なし)を形成することできる。
【0018】
また、本実施形態において、セラミック部2、アルミナ点在層3、第1の金属層4、第2の金属層5の厚さは、それぞれ、セラミック部2は0.48[mm]、アルミナ点在層3は0.9[um]、第1の金属層4は0.5[um](=500[nm])とした。なお、第2の金属層5は、5[um]から100[um]の間の膜厚で、適宜決定を行った。
【0019】
また、本実施形態におけるセラミック部2は、主成分がセラミックの成分から構成されている。本実施形態におけるセラミック部2は、アルミナ(Al2O3)粉末を55[wt%]、ガラス粉末を45[wt%]の割合で配合したガラス・セラミックの固体成分と、有機溶剤等からなる有機バインダーを、固体成分と有機バインダーとの割合が、固体成分84:有機バインダー16の重量比の割合で混合された組成物からなる、シート状の形状のグリーンシートと呼ばれるものを、複数枚(少なくとも2枚以上)積層し、加圧し、その後、900[℃]にて焼成することによって形成されたものである。さらに、図1に示すように、セラミック部2内部には、内部配線部6、ビア7が形成されている。
また、本実施形態におけるアルミナ点在層3は、アルミナが点在しているセラミック部2の表面に形成されている層である。
【0020】
図2は、セラミック部2の表面のSEM(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)の観察図(1500倍)であり、図2(a)はアルミナ点在層が形成されている(本発明の実施の形態1における)セラミック部2の表面のSEMの観察図、図2(b)はアルミナ点在層が形成されていない従来例のセラミック部2の表面のSEMの観察図、を示すものである。
本実施形態におけるセラミック部2の表面に形成されたアルミナ点在層3は、図2(a)中に示すように、アルミナ成分が溶解後の固化された状態のアルミナ粒子8が形成され、そのアルミナ粒子8がセラミック部2の表面に点在している。このアルミナ点在層3の形成方法に関しては、後述で詳しく説明する。
【0021】
一方、図2(b)に示すように、アルミナ点在層3が形成されていないセラミック部2(=従来のセラミック部2)は、図2(a)中に示すようなアルミナ粒子8は観測されないことがわかる。
【0022】
ここで、図2(a)中に、丸で囲うようにアルミナ粒子8を表記しているが、図2(a)中には、わかりやすく表記するために、図2(a)中の一部のアルミナ粒子8を丸で囲ったものであり、この丸で囲ったものだけがアルミナ粒子8ではない。図2中の白いブツブツ(微粒子のようなもの)は、このアルミナ粒子8を示すものである。
また、本実施形態における第1の金属層4は、セラミック部2の少なくとも1面にアルミナ点在層3を形成し、その後、その表面に金属触媒を付与し、さらにその後、前記金属触媒を還元させ、その後、無電界めっき法で第1の金属層4を形成した。本実施形態における第1の金属層4としては銅(Cu)を用いた。なお、本実施形態においては、第1の金属層4として銅(Cu)を用いたが、特に銅(Cu)に限定するものではく、例えば、ニッケルリン(Ni−P)、銅ニッケルリン(Cu−Ni−P)等をはじめとする、ニッケルを含む合金を用いることもできる。
【0023】
また、本実施形態における第2の金属層5は、第1の金属層4を形成後、電界めっき法で第2の金属層5を形成した。本実施形態における第2の金属層5としては銅(Cu)を用いた。ここで、第2の金属層5としての銅(Cu)を電界めっき法で形成したのは、乾式めっき法(例えば、スパッタ法や真空蒸着法)や無電界めっき法に比べ、膜厚形成レート(単位時間当たりの膜の成長速度)が速いため、比較的安価に形成できること、及び、乾式めっき法や無電界めっき法に比べ、厚い膜厚のもの(数ミクロンオーダー)を形成することができ、その結果として、前述のパワーLED用基板の配線に必要とされる膜厚の第2の金属層5が形成できるからである。なお、第2の金属層5の材料としては、本実施形態で用いた例えば銅の他に、電気抵抗の低い物質、例えば金(Au)や銀(Ag)等も用いることができる。
【0024】
以上が、本実施形態におけるセラミック基板の構成である。
【0025】
[2]セラミック基板の製造方法
次に、本実施形態におけるセラミック基板の製造方法に関して説明する。
【0026】
図3は、本発明の実施の形態1におけるセラミック基板の製造方法を示すフローチャートである。
【0027】
図3に示すように、本実施形態におけるセラミック基板の製造方法は、
S1:セラミック部準備工程
S2:第1の金属層形成工程と、
S3:第2の金属層形成工程と、
という3つの工程から構成されるものである。
【0028】
以下に、S1〜S3の製造工程の詳細を説明する。
【0029】
[2]−(1): セラミック部準備工程S1
図4は、本発明の実施の形態1におけるセラミック部準備工程を示すフローチャートである。
【0030】
図4に示すように、本実施形態におけるセラミック部準備工程S1は、
S100:グリーンシート準備工程
S200:積層工程
S300:脱バインダー工程
S400:焼成工程
S500:拘束層除去工程
という5つの工程から構成されるもので、この5つの工程によって、セラミック部2を形成し、さらに、そのセラミック部2の少なくとも片面(セラミック部2の表面、裏面両方でも良い)にアルミナが点在するアルミナ点在層3を形成するのである。
【0031】
それでは、以下に、この5つの工程の順次説明を行う。
【0032】
[2]−(1)−(i):グリーンシート準備工程S100
まずはじめに、図5を用いて、セラミック部2の材料となるグリーンシート9A、グリーンシート9B、グリーンシート9Cを準備するグリーンシート準備工程S100に関して説明する。
【0033】
図5は、本発明の実施の形態1におけるグリーンシートの断面図を示すものであり、図5(a)はグリーンシート9Aの断面図、図5(b)はグリーンシート9Bの断面図、図5(c)はグリーンシート9Cの断面図を示すものである。
【0034】
本実施形態においては、純のグリーンシート(アルミナ粉末を55[wt%]、ガラス粉末を45[wt%]の割合で配合したガラス・セラミックの固体成分と、有機溶剤等からなる有機バインダーを、固体成分と有機バインダーとの割合が、固体成分84:有機バインダー16の重量比の割合で混合された組成物をシート状に形成したもの)から、図5(a)〜図5(c)に示すように、グリーンシート9A(図5(a))、グリーンシート9B(図5(b))、グリーンシート9C(図5(c))を作成する。
【0035】
まず、はじめに、図5(a)に示すグリーンシート9Aに関して説明する。グリーンシート9Aには、例えば、レーザー光による加工によってスルーホール(一般には穴とも呼ばれる)を形成し、その後、そのスルーホーに導体ペーストを充填することによって、ビア7を形成する。これにて、グリーンシート9Aが完成する。
【0036】
次に、図5(b)に示すグリーンシート9Bに関して説明する。グリーンシート9Bは、はじめに、グリーンシート9Aと同様に、スルーホールを形成し、その後、スルーホールに導体ペーストを充填することによって、ビア7を形成する。次に、グリーンシート9B上面に導体ペーストを、スクリーン印刷法を用いて所望のパターンに印刷して内部配線部6を形成する。これにて、グリーンシート9Bが完成する。
【0037】
次に、図5(c)に示すグリーンシート9Cに関して説明する。グリーンシート9Cは、はじめに、グリーンシート9Aと同様に、ビア7を形成する。これにて、グリーンシート9Cが完成する。
【0038】
[2]−(1)−(ii):積層工程S200
次に、図6、図7、図8を用いて、積層工程S200について説明する。
【0039】
図6は、本発明の実施の形態1の積層工程における積層手順を示す断面図である。また、図7は、本発明の実施の形態1の積層工程におけるグリーンシート積層体の断面図を示すものである。また、図8は、本発明の実施の形態1の積層工程における加圧加熱方法を説明する断面図を示すものである。
【0040】
まず、はじめに、図6、図7に示している拘束層10に関して説明する。
【0041】
一般に、アルミナ粉末とガラス粉末を配合したガラス・セラミックの組成物で、シート状の形状のグリーンシートを、高温を印加すると、アルミナ粉末とガラス粉末が焼成することによって、そのグリーンシートの体積(平面方向、および厚さ方向)に収縮する。
【0042】
本実施形態においても、本工程である積層工程S200、次の工程である脱バインダー工程S300、次々工程である焼成工程S400にて、グリーンシート積層体11を、熱を印加するのであるが、その際、図6に示すように、それらグリーンシート9A、9B、9Cを挟み込むように、印加する温度では焼成しない成分のセラミックからなる拘束層10を上下面に配置しておく。
【0043】
こうすることによって、グリーンシー9A、9B、9Cは、図14中に示す、X方向、およびY方向(すなわち、グリーンシート積層体11の平面方向)には収縮せず、Z方向(すなわち、グリーンシート積層体11の厚さ方向)にのみ収縮する。このX方向、Y方向に収縮させないために、この拘束層10を使用するのである。本実施形態においては、アルミナ粉末をシート状に成形したものを拘束層10として用いた。
【0044】
次に、図6を用いて、グリーンシート9A、9B、9Cを積層し、グリーンシート積層体11を準備する方法を説明する。
【0045】
まず、拘束層10上に、グリーンシート9Cを積層する。次に、グリーンシート9C上にグリーンシート9Bを、グリーンシート9Aに形成されているビア7と、グリーンシート9Bに形成されているビア7の位置が合うように位置合わせを実施しながら積層する。
【0046】
次に、グリーンシート9B上のグリーンシート9Aを積層する。最後に、グリーンシート9A上に、拘束層10を配置する。
【0047】
このようにして、図7に示すような、グリーンシート積層体11が準備されるのである。
【0048】
次に、図8に示すように、グリーンシート積層体11の上下面にステンレス板12を配置し、それを台座13上に配置し、その上面から加圧加熱をすることによって、グリーンシート積層体11中のグリーンシート9A、9B、9C同士を仮接着する。
【0049】
ここで、図8中のグリーンシート積層体11は、図7中のグリーンシート積層体11と同一のものであるが、図8中のグリーンシート積層体11は簡略化して図示している。
【0050】
また、本実施形態において、グリーンシート積層体11上のステンレス板12上から加圧した圧力は15.2[MPa]とし、加熱温度は85℃[℃]を用いた。このようにして、グリーンシート積層体11中のグリーンシート9A、9B、9C同士を仮接着する。
なお、グリーンシート積層体11と、グリーンシート積層体11の上下面に配置したステンレス板12とは、ステンレス板12の材質が石英(SiO2)であるため接着されることはない。
【0051】
[2]−(1)−(iii):脱バインダー工程S300
次に、図9を用いて、脱バインダー工程S300について説明する。
【0052】
図9は、本発明の実施の形態1の脱バインダー工程における加圧加熱方法を説明する断面図を示すものである。
【0053】
この工程では、図9に示すように、(図8と同じように)、グリーンシート積層体11の上下面にステンレス板12を配置し、それを台座14上に配置し、加熱をすることによって、グリーンシート積層体11中のグリーンシート9A、9B、9C内部の有機バインダーを除去する。
【0054】
本実施形態において、グリーンシート積層体11上のステンレス板12上から石英ガラスをつけた状態で、加熱温度は650[℃]にて加熱を行った。このようにして、グリーンシート積層体11中のグリーンシート9A、9B、9C内部の有機バインダーを除去する。
【0055】
[2]−(1)−(iv):焼成工程S400
次に、図10を用いて、焼成工程S400について説明する。
【0056】
図10は、本発明の実施の形態1の焼成工程における加圧加熱方法を説明する断面図を示すものである。また、図11は、本発明の実施の形態1の焼成工程後におけるグリーンシート積層体の断面図を示すものである。
グリーンシート積層体11の上下面にステンレス板12を配置し、それを台座15上に配置し、加熱をすることによって、グリーンシート積層体11を焼成する。
【0057】
本実施形態において、グリーンシート積層体11上にステンレス板12を配置した状態とし、加熱温度は900[℃]を用いた。
このようにして、この焼成工程後、図11に示すように、グリーンシート積層体11は、その厚さ方向に収縮するのである。
また、この焼成工程S400を実施することによって、グリーンシート9A、9B、9Cがセラミック部2となるのである。
【0058】
更に、この焼成工程S400を実施することによって、拘束層10とグリーンシート9Aとの界面E、及び拘束層10とグリーンシート9Cとの界面Fでは、拘束層10の成分であるアルミナ(Al2O3)が、一部溶融するため、アルミナ粒子8がセラミック部2の表面に点在するアルミナ点在層3が形成されるのである。
【0059】
[2]−(1)−(v):拘束層除去工程S500
次に、拘束層除去工程S500について説明する。
【0060】
この工程では、水96gと平均粒径0.1〜10umのアルミナ粉末4gの割合の混合物を、圧力0.4[MPa]の圧縮空気にて、グリーンシート積層体11の上下面の拘束層10上から吹き付ける。
【0061】
図12は、本発明の実施の形態1の拘束層除去工程後におけるグリーンシート積層体の断面図を示すものである。こうすることによって、拘束層10を除去することができ、図12に示すようなものになる。
【0062】
本実施形態においては、この「水96gと平均粒径0.1〜10umのアルミナ粉末4gの割合の混合物を、圧力0.4[MPa]の圧縮空気にて、グリーンシート積層体11の上下面の拘束層10上から吹き付ける」、という作業を、上面より長く実施することによって、図12における下面側のみアルミナ点在層3を除去し、図12における上面側のアルミナ点在層3が残存するように形成した。
【0063】
このように、水96gと平均粒径0.1〜10umのアルミナ粉末4gの割合の混合物を、圧力0.4[MPa]の圧縮空気にて、グリーンシート積層体11の上下面の拘束層10上から吹き付ける作業を行うことによって、セラミック部2上に、0.1um以上(アルミナ粉末の最小の平均粒径)、30um以下(アルミナ粉末の最大の平均粒径の3倍程度)のアルミナ点在層3を形成することができる。このアルミナ点在層3の厚さは、この吹き付ける作業(吹き付け時間)を調整することによって調整可能である。本実施形態においては、前述の[1]で説明したように、アルミナ点在層3が0.9umになるように、吹き付け時間を調整した。
【0064】
なお、本実施形態においては、図12における下面側のみアルミナ点在層3を除去し、図12における上面側のアルミナ点在層3が残存するように形成したが、上下面両方のアルミナ点在層3を残すように、この「水96gと平均粒径0.1〜10umのアルミナ粉末4gの割合の混合物を、圧力0.4[MPa]の圧縮空気にて、グリーンシート積層体11の上下面の拘束層10上から吹き付ける」、という作業を、実施することも可能である。
【0065】
本実施形態の場合は、この後、図12における上面のみに、第1の金属層4、第2の金属層5を形成し、更にその後加工されて、図12における上面のみに所望の電子部品(例えば、前述のLEDや、IC=Integrated Cuircuit)を実装するための外部電極(図示なし)や、電気回路パターン配線(図示なし)を形成するのであるが、例えば、図12における上下面の両面に、第1の金属層4、第2の金属層5を形成し、更にその後加工されて、図12における上面のみに所望の電子部品(例えば、前述のLEDや、IC=Integrated Cuircuit)を実装するための外部電極(図示なし)や、電気回路パターン配線(図示なし)を形成する場合は、図12における上下面の両面にアルミナ点在層3を残すように、この工程を行うことができるのである。
【0066】
以上のように、本実施形態におけるセラミック部準備工程S1は、図4に示す、グリーンシート準備工程S100、積層工程S200、脱バインダー工程S300、焼成工程S400、拘束層除去工程S500という5つの工程を実施することによって、セラミック部2を準備するとともに、このセラミック部2上にアルミナが点在するアルミナ点在層3を形成することができるのである。
【0067】
次に、図3中の第1の金属層形成工程S2に関して説明する。
【0068】
[2]−(2):第1の金属層形成工程S2
第1の金属層形成工程S2においては、前述のセラミック部2上のアルミナ点在層3の表面に、無電界めっき法によって、第1の金属層を形成する。
【0069】
まずはじめに、前処理として、セラミック部2上のアルミナ点在層3の表面に付着している異物及び油分などを除去する。この前処理は、本発明に必須の工程ではなく、セラミック部2上のアルミナ点在層3の表面がきれいな状態であれば不要である。
【0070】
次に、セラミック部2上のアルミナ点在層3の表面を、金属触媒を含む水溶液に接触させる。この金属触媒としては、第1の金属層4を形成するための触媒となり得るもの、例えばパラジウム(Pd)触媒、銅(Cu)触媒等を用いることができる。本実施形態においては、銅(Cu)触媒を用いた。また、触媒付与工程における触媒の濃度、処理時間、温度等の諸条件は、適宜変更可能である。こうして、アルミナ点在層3の表面に、これら金属触媒(本実施形態においては銅(Cu)触媒)が結合する。
【0071】
次に、無電界めっき法によって第1の金属層4を形成するが、このとき無電解めっき液に含まれる還元成分により、前記アルミナ点在層3の表面の金属触媒が還元されるため、触媒作用が働き、触媒金属を核として、無電解めっき膜が形成される。本実施形態においては、前述のように、無電界めっき法によって、銅(Cu)を形成した。
【0072】
また、この第1の金属層4の膜厚は、前述のように、0.5[um](500[nm])を用いた。
【0073】
図13は、本発明の実施の形態1の第1の金属層形成工程後におけるグリーンシート積層体の断面図を示すものである。図13に示すように、セラミック部2上のアルミナ点在層3の表面に第1の金属層4が形成されるのである。
【0074】
[2]−(3):第2の金属層形成工程S3
最後に、図3中の第1の金属層形成工程S3に関して説明する。
第2の金属層形成工程S3においては、前述の第1の金属層4の表面に、電界めっき法によって、第2の金属層5を形成する。
【0075】
本実施形態においては、上述したように、第2の金属層として銅を用いた。また、この第2の金属層5の膜厚は、前述のように、50[um]を用いた。
【0076】
以上のように、本実施形態におけるセラミック基板1の製造方法は、セラミック部準備工程S1、第1の金属層形成工程S2、第2の金属層形成工程S3、という3つの工程を実施することによって、図1に示すようなセラミック基板1を製造することができるのである。
【0077】
[3]本発明の一実施形態における発明の効果
次に、本発明の一実施形態の発明の効果に関して説明する。
従来のセラミック部2(アルミナ点在層3がない場合)と、第1の金属層との間の密着強度を測定したところ、0.40[N/mm]であった。
【0078】
一方、本実施形態におけるセラミック基板(セラミック部2上にアルミナ点在層3がある場合)の、アルミナ点在層3と第1の金属層との密着強度を測定したところ、0.71[N/mm]という、密着強度が向上されていることが確認できた。
【0079】
以上のように、この密着強度が向上は、アルミナが点在するアルミナ点在層を有することによって、このアルミナ成分が、セラミック部2と第1の金属層4との間の密着強度を向上させていると考えられる。
【0080】
[4]本実施形態におけるアルミナ点在層3表面の粗さ(Ra)に関して
次に、本実施形態におけるアルミナ点在層3の表面粗さ(Ra)に関して説明する。
【0081】
表1は、セラミック基板上に形成したアルミナ点在層3の表面粗さ(Ra)と、セラミック部2と第1の金属層4の密着性を日本工業標準調査会の規格であるテープ試験JIS H 8504に準じた引き剥がし試験の結果を示すものである。
【0082】
【表1】

【0083】
表1に示すように、アルミナ点在層3の表面粗さ(Ra)が0.8[um]以上、2.0[um]以下の場合は、セラミック部2と第1の金属層4との間の剥離が一切観測されなかった。
【0084】
一方、アルミナ点在層3の表面粗さ(Ra)が0.6[um]以下、及び、2.2[um]以上の場合、一部のサンプルにおいて、セラミック部2と第1の金属層4との間の剥離が観測された。
【0085】
アルミナ点在層3の表面粗さ(Ra)が0.6[um]以下の場合は、アルミナ成分が点在せず、純粋なアルミナ層となっていると推測され、その結果として、密着性が低下し、セラミック部2と第1の金属層4との間に剥離が発生したと考えられる。
【0086】
また、アルミナ点在層3の表面粗さ(Ra)の厚さが2.2[um]以上の場合は、前述の拘束層除去工程における水とアルミナ粉末の混合物の吹きつけによって、セラミック部2に物理的なダメージを与えてしまうと推測される。これら理由により、密着性が低下し、セラミック部2と第1の金属層4との間に剥離が発生したと考えられる。
【0087】
以上のように、アルミナ点在層3の厚さは0.8[um]以上、2.0[um]以下の範囲であれば、セラミック部2と第1の金属層4の間の密着強度が、実際の製品として十分な密着性を有するセラミック基板1となると考えられる。
【0088】
[5]まとめ
以上のように、本実施形態においては、セラミック部と、前記セラミック部の表面に、アルミナが点在するアルミナ点在層と、前記アルミナ点在層の表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第1の金属層と、前記第1の金属層表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第2の金属層と、いう構成を有するセラミック基板とすることができるので、前記セラミック部と、前記セラミック部の表面に形成された金属層の密着強度を向上することができる。
【0089】
すなわち、本発明においては、前記セラミック部と前記第1の金属層との間に、アルミナが点在するアルミナ点在層を形成し、そのアルミナ成分によって、前記セラミック部と前記第1の金属層の間の密着強度を向上させることができると推測される。その結果として、前記セラミック部の表面に形成された金属層の密着強度を向上することができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明にかかるセラミック基板は、セラミック部の表面に形成された金属層の密着強度を向上することができるので、特に、最近普及の進んでいる液晶テレビや携帯電話の液晶画面用のバックライト向けLED用基板として用いられるセラミック多層基板として用いられることが大いに期待されるものとなる。
【符号の説明】
【0091】
1 セラミック基板
2 セラミック部
3 アルミナ点在層
4 第1の金属層
5 第2の金属層
6 内部配線部
7 ビア
8 アルミナ粒子
9A、9B、9C グリーンシート
10 拘束層
11 グリーンシート積層体
12 ステンレス板
13、14、15 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック部と、
前記セラミック部の少なくとも1面に形成されたアルミナが点在するアルミナ点在層と、
前記アルミナ点在層の表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第1の金属層と、
前記第1の金属層表面に、湿式めっき法によって形成された導電性金属からなる第2の金属層と、
からなるセラミック基板。
【請求項2】
前記第1の金属層が、無電界めっき法で形成された銅(Cu)であること、
を特徴とする請求項1記載のセラミック基板。
【請求項3】
前記第2の金属層が、銅(Cu)で形成されたこと、
を特徴とする請求項1に記載のセラミック基板。
【請求項4】
前記アルミナ点在層の表面粗さ(Ra)が、0.8[um]以上、2.0[um]以下である請求項1記載のセラミック基板。
【請求項5】
セラミック部を準備するとともに、前記セラミック部上にアルミナが点在するアルミナ点在層を形成するセラミック部準備工程と、
前記アルミナ点在層の表面に、無電界めっき法によって、第1の金属層を形成する第1の金属層形成工程と、
前記第1の金属層形成工程にて形成された前記第1の金属層上に、無電界めっき法によって、第2の金属層を形成する第2の金属層形成工程と、
からなるセラミック基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−186327(P2012−186327A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48692(P2011−48692)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】