説明

セラミック基板の製造方法

【課題】焼成して得られるセラミック基板の反りが少ない面積の大きいセラミック基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】
グリーンシート形成時のグリーンシートと剥離シート接触面を上にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートのトータル厚みをTu(mm)、剥離シート接触面を下にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートのトータル厚みをTd(mm)とするとき、Tu/(Tu+Td)が0.415〜0.585となる条件で複数のグリーンシートを積層し、焼成して、実質均一な組成のセラミック基板を得ることを特徴とするセラミック基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反りの少ないセラミック基板の製造方法、更に詳しくは特にフラットディスプレイに有用な反りの少ないセラミック基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック基板はあらゆる電子・電気製品の中に組み込まれて使用されている。
製品のコンパクト化に伴ってセラミック基板の小型化が要求される一方、大面積で使用される用途、例えばフラットディスプレイパネルに使用されるセラミック基板も要望されている。大面積で使用される用途では、多くの場合において基板の平坦性も同時に要求される場合が多い。 例えばEL基板などに使用する場合にはA4サイズ程度の面積では、厚みが3mm程度の厚みで、厚み精度約±0.3mmが要求されている。
【0003】
セラミック基板は一般的にはセラミック粉体を含有したグリーンシートを作成してそれを焼成して得られる。しかしながら、グリーンシートを焼成する段階で内部応力が発生し、焼成して得られるセラミック基板に反りやひずみが生ずる。
【0004】
上記大面積で且つフラットな基板を得る場合には、焼成して得られたセラミック基板から反りのないフラットな基板を得るために、基板の表裏を研削し、かなりの部分を削り取ってフラットな基板を得ている。
このような製法では、研削することを見込んで厚めのセラミック基板を焼成する必要があり、また硬質のセラミックを研削するため長時間の工程が余分に必要になるという問題が存在する。
【0005】
【特許文献1】特開2004-50712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題点を解決すべくなされたもので、本発明の課題は焼成して得られるセラミック基板の反りが少ない面積の大きいセラミック基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する、検討を進めた結果、複数のグリーンシートを特定の条件で積層した後焼成することが有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は
(1)セラミック粉体を含有するセラミックスラリーを作成し、
(2)剥離シート上に該セラミックスラリーを塗布した後に、乾燥し、
(3)得られたグリーンシートを剥離シートから剥離し、
(4)剥離シート接触面を上にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートのトータル厚みをTu(mm)、
剥離シート接触面を下にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートのトータル厚みをTd(mm)とするとき、Tu/(Tu+Td)が0.415〜0.585となる条件で複数のグリーンシートを積層し、
(5)該積層されたグリーンシート積層物を焼成して、実質均一な組成のセラミック基板を得ることを特徴とするセラミック基板の製造方法を提供する。
好ましくは
上記グリーンシートの積層が、
剥離シート接触面を上にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートの枚数をNu枚、
剥離シート接触面を下にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートの枚数をNd枚とするとき、Nu/(Nu+Nd)が0.415〜0.585となる条件で全グリーンシートを積層するセラミック基板の製造方法であり、
好ましくは
上記積層の構造が
剥離シート接触面を上にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートA群のそれぞれのシートが連続して重ねられ、
剥離シート接触面を下にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートB群のそれぞれのシートが連続して重ねられ、且つ
グリーンシートA群の剥離シート接触面側とグリーンシートB群の剥離シート接触面を向かい合わせにして積層された構造であるセラミック基板の製造方法である。
更に好ましくは、
上記セラミック基板の面の最大径が10cm以上であるセラミック基板の製造方法であり、
上記乾燥して得られたグリーンシート一枚の厚みが0.1〜1.5mmであるセラミック基板の製造方法であるであり、
上記セラミック粉体がフォルステライトを60重量%以上含むセラミック基板の製造方法であり、
上記セラミック基板がフラットディスプレイパネルの基板であるセラミック基板の製造方法であり、
上記セラミック基板が無機ELディスプレイパネルの基板であるセラミック基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、焼成して得られるセラミック基板の反りが少なく、特に大面積で且つフラットな基板を得る場合に有用なセラミック基板の製造方法を提供する効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のセラミック基板の製造方法は、セラミック粉体を含有するセラミックスラリーを作成し、剥離シート上に該セラミックスラリーを塗布した後に、乾燥して剥離シート上にグリーンシートを形成し、得られたグリーンシートを剥離シートから剥離し、複数枚数のグリーンシートを特定の条件で積層し、積層されたグリーンシート積層物を焼成する製造方法である。
【0011】
上記セラミックスラリーは、セラミック粉体、溶媒、更に必要に応じて公知の分散剤、結着樹脂、可塑剤、滑剤等を混合して得ることができる。
【0012】
上記セラミック粉体としては、焼成してセラミックを形成する粉体状のセラミック原料であれば特に限定されるものではなく、いずれのものでも使用可能である。
【0013】
例えば、アルミニウムを主要成分として含んでいるセラミック原料として、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫化アルミニウム、窒化アルミニウム等の化合物、曹長石(NaAlSi3O8)、明礬(KAl3(OH)6(SO4)2)、ベーマイト(AlO(OH))、コランダム(Al2O3)、カオリナイト(Al2Si2O5(OH)4)、ムライト(Al6Si2O13)、セリサイト(KAl2(AlSi3O10)(OH)2)等の該化合物を含有する鉱物若しくは該化合物を原料とした合成物を挙げることができる。
【0014】
また、マグネシウムを主要成分として含んでいるセラミック原料として、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭化マグネシウム、炭酸マグネシウム等の化合物、ブルーサイト(Mg(OH)2)、クリソタイル(Mg3Si2O5)、エンスタタイト(MgSiO3)、フォルステライト(2MgO・SiO2若しくは単にMg2SiO4と記載することがある。)、マグネサイト(MgCO3)、ペリクレース(MgO)等の該化合物を含有する鉱物若しくは該化合物を原料とした合成物を挙げることができる。
【0015】
また、珪素を主要成分として含んでいるセラミック原料として、一酸化珪素、二酸化珪素等の珪素酸化物、H2SiO、(H3Si)2O、(H2SiO)6等のシロキサン等の化合物、クリストバライト(SiO2)、石英(SiO2)、タルク(Mg3Si4O10)、トリジマイト(SiO2)等の該化合物を含有する鉱物若しくは該化合物を原料とした合成物を挙げることができる。
【0016】
また、チタンを主要成分として含んでいるセラミック原料として、酸化チタン、水酸化チタン、ハロゲン化チタン、硼化チタン、炭化チタン、窒化チタン等の化合物、灰チタン石(CaTiO3)、ルチル(TiO2)、チタン石(CaTiO(SiO4))等の該化合物を含有する鉱物を挙げることができる。
その他セラミック原料として、カルシウム、バリウム、ジルコニウム、スズ、クロム等を含む化合物及び鉱物を使用することができる。
【0017】
これらの中でもフォルステライトを使用するとそのグリーンシートを焼成すると、従来の方法で単一のグリーンシートを焼成してセラミック基板を製造すると、得られるセラミック基板の反りが大きいために、逆に本発明を適用して反りの少ないセラミック基板を得る効果が大きい。
【0018】
溶媒は、セラミックスラリーを乾燥してグリーンシートを製造する場合に、大部分が揮散して消失するが、セラミックスラリーを適当な粘度とするため、あるいはセラミックスラリーを乾燥する場合に均一な乾燥を可能とするためにその種類、量を選択することが重要である。特に、乾燥工程では、低沸点の溶媒を使用すると乾燥が急激に進み、膜に亀裂が入り、逆に高沸点の溶媒を使用すると乾燥が遅くなるため、複数の溶媒を混合して使用することが好ましい。
【0019】
上記溶媒としては、特に限定はないが、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、t-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、テトラリン、デカリン、芳香族ナフサなどの芳香族炭化水素類;例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、i-オクタン、n-デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、テレピン油などの脂肪系もしくは脂環族系炭化水素類;例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸2-ヒドロキシエチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸3-メトキシブチル、安息香酸メチルなどのエステル類;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどのケトン類;例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、s-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどのアルコール類;水などを挙げることができる。
【0020】
上記結着樹脂としては、特に制限は無いが、EVA樹脂、ポリスチレン、APP、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアセタール、セルロース、エチレン酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなどを挙げることができる。
【0021】
原材料の配合は、ボールミル、振動ミル、ホモミキサー、ロールミル等の公知の混合装置で混合し、セラミックスラリーを得ることができる。
【0022】
セラミックスラリーの粘度は、好ましくは5000〜40000 mPa・s (ミリパスカル・セカンド)、更に好ましくは10000〜30000 mPa・s であり、溶媒の添加量を調整して粘度を調整することができ、粘度が低いと無機粉体が沈降する傾向にあり、また、粘度が高いと塗工性が低下する。
【0023】
セラミックスラリーにおける溶媒以外の成分の割合は、50〜90%が好ましく、65〜80%がより好ましい。
【0024】
上記セラミックスラリーを剥離シート上に塗布し、乾燥することによりグリーンシートを得ることができる。
【0025】
セラミックスラリーの塗工は、コンマコーター、ダイコーター、カーテンコーター、ファウンテンコーター等の塗工機を使用して剥離シート上に塗工することができる。
【0026】
セラミックスラリーを塗工する剥離シートとしては、公知の合成樹脂シート、紙、布、不織布等を離型処理したものを使用することができるが、表面精度の観点からポリエステル樹脂等の合成樹脂シートの表面を離型処理したものが好ましい。
【0027】
本発明においては、複数枚のグリーンシートを積層し、積層されたグリーンシート積層体を焼成してセラミック基板を製造するため1枚あたりのグリーンシートの厚みは通常の場合に比べて薄く、例えば無機EL基板を製造する場合には0.1〜1.5mmが好ましく、0.3〜0.6mmがさらに好ましい。
上記セラミックスラリーを剥離シート上に塗布する場合には、乾燥して得られるグリーンシートが上記厚みになる様にセラミックスラリーの量を塗布する。
【0028】
剥離シート上に塗工されたスラリーシートは、温風乾燥機、熱風乾燥機、遠赤外乾燥機等で乾燥してグリーンシートを得ることができる。乾燥操作後にシートの内部に溶媒が残存すると、膜に亀裂が入る可能性があるため、スラリー内部の溶媒が抜けきる前にスラリー表面が乾燥しないようにすることが好ましい。乾燥温度は好ましくは20〜150℃、更に好ましく40〜120℃、乾燥時間は好ましくは5〜45分が好ましく、更に10〜30分が更に好ましく、低温から高温まで段階的に、若しくは連続的に昇温して乾燥することが好ましい。
本発明のグリーンシートは、前述したごとく通常のものに比較して厚みが薄いため乾燥時間を短くすることができ、乾燥して得られるグリーンシートをそのままロール状に巻き取ることができる。
【0029】
本発明のセラミック基板は、上記のごとくして得られた複数のグリーンシートを特定の条件で積層し、積層されたグリーンシート積層物を焼成する製造される。
グリーンシートを積層する前に、グリーンシートを剥離シートから剥離し、その用途に応じて必要な大きさにカットすることが好ましい。カットと剥離シートからの剥離はいずれが前後してもよい。
【0030】
本発明のセラミック基板の製造方法は、カットされた複数のグリーンシートを特定の条件で積層する。、
剥離シート接触面を上にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートのトータル厚みをTu(mm)、
剥離シート接触面を下にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートのトータル厚みをTd(mm)とするとき、Tuの値を(Tu+Td)の値で除した値、即ちTu/(Tu+Td)が0.413〜0.583となる条件で全グリーンシートを積層し、好ましくはTu/(Tu+Td)が0.450〜0.550、特に好ましくはTu/(Tu+Td)が0.474〜0.526である。
【0031】
本発明において上記「剥離シート接触面」とは、剥離シートを剥離して取り去った後のグリーンシートの2つの面の内、剥離シートに塗布されたセラミックスラリーが乾燥してグリーンシートとなった時点で剥離シートに接触していたグリーンシートの面を意味する。また、上記「剥離シート接触面を上にして」あるいは「剥離シートを下にして」とはグリーンシートの重ね合わせる方向を便宜上表現しており、「剥離シート接触面を上にして」重ね合わせるグリーンシートの剥離シート接触面が一方の方向を向いているとき、「箔のシート接触面を上にして」重ね合わせるグリーンシートの剥離シート接触面は「剥離シート接触面を上にして」重ね合わせるグリーンシートとは逆の方向を向いていることを表す。
【0032】
上記グリーンシートの積層が、
剥離シート接触面を上にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートの枚数をNu枚、
剥離シート接触面を下にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートの枚数をNd枚とするとき、Nu/(Nu+Nd)が0.415〜0.585となる条件で全グリーンシートを積層することが好ましく、Nu/(Nu+Nd)が0.450〜0.550となるのが更に好ましく、 Nu/(Nu+Nd)が0.474〜0.526であるのが特に好ましい。
【0033】
例えば、積層する全てのグリーンシートの厚みが同一である場合、3枚のグリーンシートを剥離シート接触面を上にし、4枚のグリーンシートを剥離シート接触面を下にして積層する場合には、Nu/(Nu+Nd)の値は3/(3+4)=0.429となり、Nu/(Nu+Nd)の好適な範囲に入る。
この場合、Tu/(Tu+Td)の値も0.429となり、本発明のTu/(Tu+Td)の範囲に入る。
【0034】
また、
上記積層の構造が
剥離シート接触面を上にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートA群のそれぞれのシートが連続して重ねられ、
剥離シート接触面を下にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートB群のそれぞれのシートが連続して重ねられ、且つ
グリーンシートA群の剥離シート接触面側とグリーンシートB群の剥離シート接触面を向かい合わせにして積層された構造であることが端部が密着しやすいという観点で好ましい。
【0035】
具体的には、剥離シート接触面を上にして積層する全てのグリーンシートを剥離シート接触面を上にして重ねあわせ、その上に剥離シート接触面を下にして積層する全てのグリーンシートを剥離シート接触面を下にして重ね合わせた後に加圧して一体に積層して製造することができる。
【0036】
上記積層されたセラミックシート積層体は、加圧されることにより、一体化される。
加圧は好ましくは1〜20メガパスカル、更に好ましくは3〜10メガパスカル、加圧時間は好ましくは1秒〜10分、更に好ましくは30秒〜3分で均一に加圧されることが好ましい。
【0037】
上記セラミックシート積層体を焼成する場合には、グリーンシート中のセラミック粉体が焼結を開始する前に結着剤樹脂が分解し、その後成形体が焼成される必要がある。
このため、例えは゛200〜500℃で約1〜10時間加熱して結着樹脂を十分に分解した後、800〜1800℃で数時間加熱して、成形体を焼結する焼成工程をとることができる。
【0038】
焼成して得られるセラミック基板は一般的にはセラミック基板の面積が大面積であればあるほど反りが大きく現れるため、本発明のセラミック基板の製造方法は、大面積のセラミック基板の製造に使用することが効果的であり、そのセラミック基板の面の最大径が10cm以上が好ましく、更に好ましくは25cm以上である。
本発明において「面の最大径」とは、該面を挟む平行線の巾が最大幅となる値であり、面が円であればその直径の長さの値、長方形であればその対角線の長さの値が面の最大径となる。
【0039】
本発明において「実質均一な組成のセラミック基板」とは本発明のセラミック基板の製造方法で得られるセラミック基板の内部で組成的な偏りがなく、従来の方法で一枚のグリーンシートを焼成して得られるセラミックシートと同程度に組成的には均一なセラミック基板であることを意味する。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げ、本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例において用いた反りの測定方法は以下のとおりである。
【0041】
反りの測定
各実施例で得られたセラミック基板を平坦なガラス板の上におき、セラミック基板とガラス板の間に生じる最大の隙間部分に隙間ゲージを挿入して隙間の間隔を測定した。
【0042】
実施例1
(1)セラミックスラリーの作成
フォルステライト(共立マテリアル株式会社製:合成フォルステライトFF-200)100重量部、メタノール25重量部、トルエン25重量部、ポリビニルブチラール(積水化学工業(株)社製:エスレックBM−S)10重量部、ジブチルフタレート8重量部をボールミルに添加し、30時間混合してセラミックスラリーを得た。
【0043】
(2)グリーンシートの作成
上記セラミックスラリーをPET剥離シート上にコンマコーターを使用し、巾40cm、長さ300cm以上、乾燥厚み0.5mmに塗布し、熱風乾燥機中で80℃で30分乾燥してグリーンシートを得た。
【0044】
(3)セラミック基板の作成
上記グリーンシートを縦36cm、横24cmに6枚カットし、剥離シートを剥離した。
別の剥離シート上に、まず該グリーンシート作成時のグリーンシートと剥離シートとの接触面を上にして3枚のグリーンシートを重ねて置き、次に剥離シート接触面を下にして残りの3枚のグリーンシートをその上に重ねて置き、更に別の剥離シートをその上に重ねた後、5メガパスカルで加圧して厚みが3.0mmのグリーンシート積層体を作成した。
前記Tu/(Tu+Td)およびNu/(Nu+Nd)はいずれも0.5である。
焼成炉中で400℃で8時間加熱し、更に1350℃で3時間加熱して厚み2.5mmのセラミック基板を得た。
得られたセラミック基板について前記反り試験を行なった結果を表1に示す。
【0045】
実施例2
実施例1のセラミックスラリーをPET剥離シート上に、乾燥厚み1.4mmに塗布し、熱風乾燥機中で80℃で90分乾燥してグリーンシートを得た。
上記グリーンシートを縦36cm、横24cmに2枚カットし、剥離シートを剥離した。
別の剥離シート上にまず該グリーンシート作成時のグリーンシートと剥離シートと接触面を上にして1枚のグリーンシートを重ねて置き、次に剥離シート接触面を下にして残りの1枚のグリーンシートをその上に重ねて置き、更に別の剥離シートをその上に重ねた後、その後は実施例1と同様にしてセラミック基板を作成した。
【0046】
実施例3
7枚の厚み0.4mmのグリーンシートを作成し、剥離シート接触面を上にして3枚のグリーンシートを重ねて置き、次に剥離シート接触面を下にして残りの4枚のグリーンシートをその上に重ねて積層する以外は実施例1と同様にしてセラミック基板を作成した。
前記Tu/(Tu+Td)およびNu/(Nu+Nd)はいずれも0.429である。
【0047】
実施例4
剥離シート上にまず該グリーンシート作成時の剥離シート接触面を下にして3枚のグリーンシートを重ねて置き、次に剥離シート接触面を上にして残りの3枚のグリーンシートをその上に重ねて置き、更に別の剥離シートをその上に重ねる以外は実施例1と同様にしてセラミック基板を作成した。
【0048】
実施例5
ファルステライトの代わりに、アルミナ、カルシア、マグネシア、シリカ、等よりなるアルミナ96%のセラミック粉末を使用し、
焼成炉中で400℃で8時間加熱し、更に1350℃で3時間加熱する代わりに、焼成炉中で400℃で8時間加熱し、更に1600℃で3時間加熱する以外は実施例1と同様にしてセラミック基板を得た。
【0049】
実施例6
実施例1のセラミックスラリーを使用して、厚み0.7mmのグリーンシート2枚と厚み0.3mmのグリーンシート4枚を作成した。
剥離シート上にまず該グリーンシート作成時の剥離シート接触面を上にして厚み0.7mmのグリーンシートを2枚重ねて置き、次に剥離シート接触面を下にして残りの厚み0.3mmのグリーンシートを4枚その上に重ねて置き、更に別の剥離シートをその上に重ねた後、実施例1と同様にしてセラミック基板を得た。
前記Tu/(Tu+Td)は0.536、Nu/(Nu+Nd)は0.333である。
【0050】
参考例1
実施例1のセラミックスラリーをPET剥離シート上に乾燥厚み2.8mmに塗布し、熱風乾燥機中で80℃で240分乾燥してグリーンシートを得た。
得られたグリーンシートを縦36cm、横24cmにカットし、剥離シートを剥離し、それをそのまま焼成炉に入れ、実施例1と同一の条件で焼成して、セラミック基板を得た。
【0051】
参考例2
実施例1のセラミックスラリーをPET剥離シート上に乾燥厚み0.9mmに塗布し、熱風乾燥機中で80℃で30分乾燥してグリーンシートを得、剥離シート上にまず該グリーンシート作成時の剥離シート接触面を上にして1枚のグリーンシートを置き、次に剥離シート接触面を下にして残りの2枚のグリーンシートをその上に重ねて置き、更に別の剥離シートをその上に重ねる以外は実施例1と同様にしてセラミック基板を得た。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のセラミック基板は各種の回路基板、ディスプレイ基板に利用が可能であり、前記の特性を有するので大面積のフラットディスプレイパネル、特に無機EL基板に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)セラミック粉体を含有するセラミックスラリーを作成し、
(2)剥離シート上に該セラミックスラリーを塗布した後に、乾燥し、
(3)得られたグリーンシートを剥離シートから剥離し、
(4)剥離シート接触面を上にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートのトータル厚みをTu(mm)、
剥離シート接触面を下にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートのトータル厚みをTd(mm)とするとき、Tu/(Tu+Td)が0.415〜0.585となる条件で複数のグリーンシートを積層し、
(5)該積層されたグリーンシート積層物を焼成して、実質均一な組成のセラミック基板を得ることを特徴とするセラミック基板の製造方法。
【請求項2】
上記グリーンシートの積層が、
剥離シート接触面を上にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートの枚数をNu枚、
剥離シート接触面を下にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートの枚数をNd枚とするとき、Nu/(Nu+Nd)が0.415〜0.585となる条件で全グリーンシートを積層する請求項1に記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項3】
上記積層の構造が
剥離シート接触面を上にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートA群のそれぞれのシートが連続して重ねられ、
剥離シート接触面を下にして積層する単数若しくは複数のグリーンシートB群のそれぞれのシートが連続して重ねられ、且つ
グリーンシートA群の剥離シート接触面側とグリーンシートB群の剥離シート接触面を向かい合わせにして積層された構造である請求項1又は2のいずれかに記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項4】
上記セラミック基板の面の最大径が10cm以上である請求項1又は3のいずれかに記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項5】
上記乾燥して得られたグリーンシート一枚の厚みが0.1〜1.5mmである請求項1〜4のいずれかに記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項6】
上記セラミック粉体がフォルステライトを60重量%以上含む請求項1〜5のいずれかに記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項7】
上記セラミック基板がフラットディスプレイパネルの基板である請求項1〜6のいずれかに記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項8】
上記セラミツク基板が無機ELディスプレイパネルの基板である請求項1〜7のいずれかに記載のセラミック基板の製造方法。


【公開番号】特開2006−88606(P2006−88606A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278914(P2004−278914)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】