説明

セラミド産生促進剤

細胞内セラミドの産生を促進するための医薬品、化粧品等の提供。ビャクシ、ジオウ、ビャクジュツ、カンゾウ、ダイオウ、ビャクギュウ、カシュウ、キキョウ、ヤクモソウ及びサンヤクから選ばれる植物又はその抽出物を有効成分とするセラミド産生促進剤。ヤクモソウ及びサンヤクから選ばれる植物又はその抽出物を有効成分とする保湿剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミドを増加させるセラミド産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴ脂質の一つであるセラミドは、生体全体の中では微量な脂質であるが、近年、細胞内セラミドの産生を亢進することにより、アポトーシス、分化誘導、増殖抑制といった現象が誘導されることが報告され、細胞の増殖、分化、アポトーシス等を制御する細胞内シグナル分子として注目を集めている。従って、セラミドの産生を促進する物質には、動物細胞の増殖抑制、分化誘導、アポトーシスを誘導するなどの効果が期待でき、ひいては炎症性疾患、悪性腫瘍など、細胞の増殖あるいは分化の異常に起因する疾患に対する治療効果が期待できると考えられている(非特許文献1)。
【0003】
また、スフィンゴ脂質の一つであるセラミドは、皮膚の最も外側の層である角層中で脂質の半分以上を占め、皮膚の保湿機構、バリア機構に重要な役割を果たしている。当該セラミドは、表皮細胞中において産生、分泌された後に角層中の細胞間においてラメラ構造を構築することにより機能している。
しかし、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎、老人性乾皮症(senile xerosis)、乾癬等の皮膚疾患においては、セラミドの健全な代謝が妨げられ、角層中のセラミド量が減少し、皮膚の保湿機能やバリア機能の低下等を引き起こしていることが数多く報告されている。
【0004】
このような皮膚疾患に対し、減少したセラミドを外部から補給する方法も試みられているが、長期的な効果が認められない、安定性が低い等の問題がある。
【0005】
また、セラミドには、骨吸収抑制作用、骨強化作用、歯槽骨減少抑制作用があり、骨粗鬆症、骨折、腰痛、リウマチなどの骨関節疾患の予防及び改善に有用であること(特許文献1)、歯周病の予防に効果があること(特許文献2)が報告されている。従って、セラミド産生促進物質には、斯かる疾患に対する治療効果も期待できる。
【0006】
更に、セラミドには、毛髪のハリ、コシの付与及び感触改善作用があることも報告され(特許文献3)、セラミド産生促進物質には、斯かる効果も期待できる。
【0007】
ビャクシ、ジオウ、ビャクジュツ、カンゾウ、ダイオウ、ビャクギュウ、カシュウ、キキョウ、ヤクモソウ及びサンヤクは、いずれも民間薬又は漢方薬として古くから用いられている薬用植物である。すなわち、ビャクシは、漢方で解熱、鎮痛、解毒、排膿などを目的として用いられ、そのエーテルエキスには、血圧上昇、呼吸運動興奮作用があることが報告されている(非特許文献2)。ジオウは、強壮・解熱薬として、糖尿病、前立腺肥大症、老人性腰痛、白内障などに応用され、漢方では補血、強壮、解熱、止瀉、緩下などの目的で用いられている。また、ジオウの水製又はエタノールエキスには、血糖降下又は高血糖抑制作用、緩下、利尿作用があることが報告されている(非特許文献3)。ビャクジュツは健胃、整腸、利尿、止汗などを目的として用いられ、尿量増加作用や血糖増加作用があることが報告されている。カンゾウは、グリチルリチン酸の製造原料として知られ、鎮咳・去痰薬、消化器性潰瘍治療薬として汎用され、漢方では鎮痛、解毒などを目的として用いられている。また、カンゾウエキスには、顕著な胃酸分泌抑制作用、消化器性潰瘍治癒促進作用、鎮痙、鎮咳作用等があることが報告されている(非特許文献4)。ダイオウは瀉下薬、健胃薬として用いられ、漢方では消炎、瀉下、解毒を目的として用いられている。ビャクギュウは漢方で止血、鎮痛、慢性胃炎を目的として用いられている(非特許文献5)。カシュウは漢方で貧血によるめまいや頭痛、不眠に対して用いられている。キキョウは鎮咳去痰薬として用いられ、唾液分泌や気道分泌促進作用を有することが知られている。ヤクモソウは、活血、新陳代謝、補精の薬として婦人の産前産後の諸症状に用いられ、腎臓炎によるむくみに効果があることが報告されている(非特許文献6)。サンヤクは滋養強壮、鎮咳、止瀉、止渇を目的として用いられ、血圧降下作用、男性ホルモン増強作用があることが報告されている(非特許文献7)。
【0008】
しかしながら、斯かる植物にセラミド産生促進効果や保湿効果があることは、これまで全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−158736号
【特許文献2】特開2001−158735号
【特許文献3】特開平10−152421号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Sphingolipid targets in cancer therapy,David E.Modrak ら,Molecular Cancer Therapeutics 2006 5(2):200−8
【非特許文献2】天然医薬資源学(第2版、竹田忠紘ら編集、廣川書店)、215〜216頁
【非特許文献3】天然医薬資源学(第2版、竹田忠紘ら編集、廣川書店)、132〜133頁
【非特許文献4】和漢薬物学(第1版、高木敬次郎ら編集、南山堂)、72〜73頁
【非特許文献5】和漢薬用植物(第20版、刈米達夫ら編集、廣川書店)、359頁
【非特許文献6】和漢薬用植物(第20版、刈米達夫ら編集、廣川書店)、72頁
【非特許文献7】天然医薬資源学(第2版、竹田忠紘ら編集、廣川書店)、263〜264頁
【発明の概要】
【0011】
本発明は、細胞内セラミドの産生を促進するための医薬品、化粧品等を提供することに関する。また、本発明は、皮膚のバリア機能及び保湿機能を回復又は維持し得る化粧品又は医薬品を提供することに関する。
【0012】
本発明者らは、安全性の高い天然物素材を探索したところ、ビャクシ、ジオウ、ビャクジュツ、カンゾウ、ダイオウ、ビャクギュウ、カシュウ、キキョウ、ヤクモソウ及びサンヤクの抽出物にセラミド産生促進作用があり、セラミド産生促進剤として使用できることを見出した。
【0013】
本発明は、ビャクシ、ジオウ、ビャクジュツ、カンゾウ、ダイオウ、ビャクギュウ、カシュウ、キキョウ、ヤクモソウ及びサンヤクから選ばれる植物又はその抽出物を有効成分とするセラミド産生促進剤に関する。
【0014】
前記ビャクシ、ビャクジュツ、ビャクギュウ、カシュウ、キキョウ、ヤクモソウ又はサンヤクの抽出物は、抽出溶剤として石油エーテルを用いて得られた石油エーテル抽出物でもよい。また、前記ジオウ又はカンゾウの抽出物は、抽出溶剤として石油エーテル及びエタノールを順次用いて得られたエタノール抽出物でもよい。前記ダイオウの抽出物は、抽出溶剤として石油エーテル、エタノール及び水を順次用いて得られた水抽出物でもよい。
【0015】
また、本発明は、セラミド産生促進剤を製造するためのビャクシ、ジオウ、ビャクジュツ、カンゾウ、ダイオウ、ビャクギュウ、カシュウ、キキョウ、ヤクモソウ及びサンヤクから選ばれる植物又はその抽出物の使用に関する。
【0016】
さらに、本発明は、ヤクモソウ及びサンヤクから選ばれる植物又はその抽出物を有効成分とする保湿剤に関する。
【0017】
保湿剤における前記ヤクモソウ又はサンヤクの抽出物は、抽出溶剤として石油エーテルを用いて得られた石油エーテル抽出物でもよい。
【0018】
また、本発明は、保湿剤を製造するためのヤクモソウ及びサンヤクから選ばれる植物又はその抽出物の使用に関する。
【0019】
本発明のセラミド産生促進剤は、細胞内のセラミドを増加させ、炎症性疾患、骨関節疾患、歯周病等の予防又は改善のための医薬品等、或いは毛髪のハリ、コシの付与及び感触改善のための化粧品等として有用である。
【0020】
本発明者らは、安全性の高い天然物素材を探索したところ、特定の植物又はその抽出物にセラミド産生促進作用があり、これらが角層の高いバリア機能及び保湿機能を回復又は維持し得る医薬品又は化粧品として有用であることを見出した。
【0021】
本発明のセラミド産生促進剤は、角層中のセラミドを増加させ、皮膚のバリア機能及び保湿機能を回復又は維持するための化粧品、医薬品等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明において、ビャクシ(Angelicae Dahuricae Radix)は、セリ科(Umbelliferae)のヨロイグサ(Angelica dahurica Bentham et Hooker)、ジオウ(Rehmanniae Radix)はゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)のアカヤジオウ(Rehmannia glutinosa Liboschitz var. purpurea Makino又はRehmannia glutinosa Liboschitz)、ビャクジュツ(Atractylodis Rhizoma)は、キク科(Compositae)のオオバナオケラ(Atractylodes ovata De Candolle)、カンゾウ(Glycyrrhizae Radix )は、マメ科(Leguminosae)のカンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fisher又はG.glabra Linne)、ダイオウ(Rhei Rhizoma)は、タデ科(Polygonaceae)の掌葉大黄(Rheum palmatum L.)、ビャクギュウ(Bletilla Tuber白及)はラン科(Orchidaceae)のシラン(Bletilla striata Reichb. fil.)、カシュウ(Polygoni Multiflori Radix)はタデ科(Polygonaceae)のツルドクダミ(Polygonum multiflorum Thunb.)、キキョウ(Platycodi Radix)はキキョウ科(Campanulaceae)のキキョウ(Platycodon grandiflorum A. De Candolle)、ヤクモソウ(Leonuri Herba)はシソ科(Laminaceae)のメハジキ(Leonurus sibiricus L.)、サンヤク(Dioscoreae Rhizoma)はヤマノイモ科(Dioscoreaceae)のヤマイモ(Dioscorea japonica Thunberg)をそれぞれ起源植物とする。
【0023】
上記植物は、その植物の全草、葉、樹皮、枝、果実又は根等をそのまま又は粉砕して用いることができるが、ビャクシ、ジオウについては根、ビャクジュツについては根、茎、カンゾウ、ダイオウについては根、根茎、ビャクギュウについては塊茎、カシュウについては根、キキョウについては根、ヤクモソウについては地上部分、サンヤクについては根、茎を使用することが好ましい。
【0024】
本発明の植物抽出物としては、前記植物の用部を、そのままあるいは乾燥した後に適当な大きさに切断したり、粉砕加工したりしたものを抽出して得られる抽出エキスの他、さらに分離精製して得られるより活性の高い画分(成分)が包含される。
【0025】
抽出は、室温又は加熱した状態で溶剤に含浸させるか又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて行われる溶剤抽出の他に、水蒸気蒸留等の蒸留法を用いて抽出する方法、炭酸ガスを超臨界状態にして行う超臨界抽出法、あるいは圧搾して抽出物を得る圧搾法等を用いることができる。
【0026】
溶剤抽出に用いられる抽出溶剤としては、極性溶剤、非極性溶剤のいずれをも使用することができ、これらを混合して用いることもできる。例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類;超臨界二酸化炭素;油脂、ワックス、その他オイル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、溶剤を変えて繰り返し行うことも可能である。このうち、水、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、石油エーテル等を用いるのが好ましく、特に水・エタノール混液、石油エーテルを用いるのが好ましい。
【0027】
抽出は、例えば、水、アルコール類、炭化水素類又は水・アルコール混液により抽出する場合、植物1質量部に対して1〜50質量部の溶剤を用い、4〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度で、1時間〜30日間、より好ましくは1時間〜10日間で抽出するのが好ましい。
【0028】
また、抽出物の分離精製手段としては、例えば、抽出物を活性炭処理、液液分配、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲル濾過、精密蒸留等を挙げることができる。必要により公知の方法で更に脱臭、脱色等の処理を施してもよい。
【0029】
本発明の植物抽出物は、斯くして得られる抽出液や画分をそのまま用いてもよく、適宜な溶媒で希釈した希釈液として用いてもよく、或いは加熱下あるいは減圧下濃縮したエキスや乾燥粉末としたり、ペースト状に調製したものでもよい。また、凍結乾燥し、用時に、通常抽出に用いられる溶剤、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、水・エタノール混液、水・プロピレングリコール混液、水・ブチレングリコール混液等の溶剤で希釈して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0030】
本発明の植物又はその抽出物は、後記実施例に示すように、正常ヒト角化細胞において、セラミド量を増加させる作用を有する。
セラミドは、皮膚の保湿機構、バリア機構に重要な役割を果たしている(芋川玄爾:香粧会誌、1(4)、250−253、1991)。ここで、保湿機能とは、適度な水分を含有することによって皮膚に柔軟性を持たせ、なめらかな美しい肌にする働きを意味し、バリア機能とは、体内の水分が出ていくのを防ぎ、身体が干からびないようにするとともに、外部からの異物が体内に侵入するのを防ぐ働きを意味する。
【0031】
従って、本発明の植物又はその抽出物は、セラミド産生促進剤或いは保湿剤、バリア補強剤として使用でき、またセラミド産生促進剤或いは保湿剤、バリア補強剤を製造するために使用できる。当該セラミド産生促進剤或いは保湿剤は、角層中のセラミドを増加させ、皮膚のバリア機能及び保湿機能を回復又は維持するための医薬品、日本国における医薬部外品、化粧品等として使用できる。当該セラミド産生促進剤は、動物細胞の増殖抑制、分化誘導、アポトーシスの誘導等の効果が期待できることから、炎症性疾患、悪性腫瘍など、細胞の増殖あるいは分化の異常に起因する疾患を予防又は治療するための医薬品、日本国における医薬部外品等として使用でき(前記非特許文献1)、また、骨粗鬆症、骨折、腰痛、リウマチなどの骨関節疾患の予防又は改善、歯周病の予防又は改善のための医薬品、日本国における医薬部外品等として使用できる(前記特許文献1及び2)。また更に、毛髪にハリ、コシを付与したり毛髪の感触を改善するための日本国における医薬部外品、化粧品として使用できる(前記特許文献3)。当該セラミド産生促進剤は、セラミド産生促進或いは保湿をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した日本国における医薬部外品、化粧品として使用することもできる。
【0032】
本発明のセラミド産生促進剤及び保湿剤を医薬品として用いる場合の投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与又は注射剤、外用剤、坐剤、経皮吸収剤等による非経口投与のいずれでもよい。当該医薬製剤を調製するには、本発明の植物又はその抽出物を単独で、又は他の薬学的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤等を適宜組み合わせて用いることができる。該製剤中の本発明植物の含有量は、乾燥固形成分として0.01〜20質量%、特に0.05〜10質量%含有することが好ましく、植物抽出物としては、固形分換算で0.0001〜10質量%、特に0.001〜5質量%含有することが好ましい。尚、本発明のセラミド産生促進剤を医薬品として使用する場合、成人1人当たりの1日の投与量は、本発明の植物又はその抽出物(乾燥固形分換算)として、例えば0.001〜1000mg、特に0.01〜100mgであることが好ましい。
【0033】
また、本発明のセラミド産生促進剤及び保湿剤を日本国における医薬部外品や化粧品として用いる場合は、皮膚外用剤、洗浄剤、メイクアップ化粧料とすることができ、使用方法に応じて、ローション、乳液、ゲル、クリーム、軟膏剤、粉末、顆粒等の種々の剤型で提供することができる。このような種々の剤型の日本国における医薬部外品や化粧料は、本発明の植物又はその抽出物を単独で、又は日本国における医薬部外品、皮膚化粧料及び洗浄料に配合される、油性成分、保湿剤、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬効成分、香料、樹脂、防菌防黴剤、植物抽出物、アルコール類等を適宜組み合わせることにより調製することができる。尚、薬効成分としては、ヒアルロン酸ナトリウム等の他の保湿成分が挙げられる。
【0034】
当該日本国における医薬部外品、化粧料中の本発明植物の含有量は、乾燥固形成分として0.01〜100質量%とすることが好ましく、特に0.05〜70質量%とすることが好ましい。一方、抽出物の含有量は、一般的に固形分換算で0.00001%〜100質量%とすることが好ましく、特に0.0001〜70質量%とすることが好ましい。
【0035】
前記「日本国における医薬部外品」(quasi drug)とは、日本の薬事法第2条第2項に決められた特殊効果を有する化粧品であり、医薬品より効果が緩和である。
【実施例】
【0036】
製造例1 ビャクシ抽出物の製造
ビャクシ100gに対して、5倍量の石油エーテルを入れ、50℃にて1時間攪拌抽出、ろ過し、石油エーテル抽出物を得た。さらに、この石油エーテル抽出物を蒸発乾燥させ、約0.9gのビャクシの石油エーテル抽出物を得た。
【0037】
製造例2 ジオウ抽出物の製造
製造例1のビャクシ100gをジオウ100gに代えて同様の抽出を行い、石油エーテル抽出物を得た。石油エーテルで抽出した後の残渣に、5倍量の95%エタノールを加え、78℃で加熱還流、1時間攪拌抽出、ろ過し、エタノール抽出物を得た。さらにこのエタノール抽出物を蒸発乾燥させ、約5.0gのジオウのエタノール抽出物を得た。
【0038】
製造例3 ビャクジュツ抽出物の製造
製造例1のビャクシ100gをビャクジュツ100gに代えて同様の抽出を行い、石油エーテル抽出物を得た。さらにこの石油エーテル抽出物を蒸発乾燥させ、約0.8gのビャクジュツの石油エーテル抽出物を得た。
【0039】
製造例4 カンゾウ抽出物の製造
製造例1のビャクシ100gをカンゾウ100gに代えて同様の抽出を行い、石油エーテル抽出物を得た。石油エーテルで抽出した後の残渣に、5倍量の95%エタノールを加え、78℃で加熱還流、1時間攪拌抽出、ろ過し、エタノール抽出物を得た。さらにこのエタノール抽出物を蒸発乾燥させ、約9.1gのカンゾウのエタノール抽出物を得た。
【0040】
製造例5 ダイオウ抽出物の製造
製造例1のビャクシ100gをダイオウ100gに代えて同様の抽出を行い、石油エーテル抽出物を得た。石油エーテルで抽出した後の残渣に、5倍量の95%エタノールを加え、78℃で加熱還流、1時間攪拌抽出、ろ過し、エタノール抽出物を得た。このエタノールで抽出した後の残渣に、5倍量の水を加え、60℃の湯浴にて超音波照射下、1時間攪拌抽出、ろ過し、水抽出物を得た。さらにこの水抽出物を蒸発乾燥させ、約6.9gのダイオウの水抽出物を得た。
【0041】
製造例6 ビャクギュウ抽出物の製造
製造例1のビャクシ100gをビャクギュウ100gに代えて同様の抽出を行い、石油エーテル抽出物を得た。さらにこの石油エーテル抽出物を蒸発乾燥させ、0.4gのビャクギュウの石油エーテル抽出物を得た。
【0042】
製造例7 カシュウ抽出物の製造
製造例1のビャクシ100gをカシュウ100gに代えて同様の抽出を行い、石油エーテル抽出物を得た。さらにこの石油エーテル抽出物を蒸発乾燥させ、カシュウの石油エーテル抽出物約0.2gを得た。
【0043】
製造例8 キキョウ抽出物の製造
製造例1のビャクシ100gをキキョウ100gに代えて同様の抽出を行い、石油エーテル抽出物を得た。さらにこの石油エーテル抽出物を蒸発乾燥させ、キキョウの石油エーテル抽出物約0.5gを得た。
【0044】
製造例9 ヤクモソウ抽出物の製造
製造例1のビャクシ100gをヤクモソウ100gに代えて同様の抽出を行い、石油エーテル抽出物を得た。さらにこの石油エーテル抽出物を蒸発乾燥させ、ヤクモソウの石油エーテル抽出物約0.5gを得た。
【0045】
製造例10 サンヤク抽出物の製造
製造例1のビャクシ100gをサンヤク100gに代えて同様の抽出を行い、サンヤクの石油エーテル抽出物を得た。さらにこの石油エーテル抽出物を蒸発乾燥させ、サンヤクの石油エーテル抽出物約0.3gを得た。
【0046】
実施例1 セラミド産生促進試験
【0047】
【表1】

【0048】
<培養条件>
正常ヒト表皮角化細胞(NHEK(F))をEpiLife−KG2(KURABO社)6well Plate に播種し、コンフルエントの状態になるまで培養した。その後、EpiLife−KG2(増殖添加因子無し)に換え、それぞれ上述の試験用溶液及び対照溶液を添加した。3日間培養した後、各々の細胞を1wellごとに回収した。
【0049】
<脂質抽出>
回収した細胞からBligh and Dyer法によって脂質を抽出した。抽出液を窒素乾固した後、クロロホルム・メタノール混液に再溶解したものを脂質サンプルとした。なお、タンパク量はBCA法により定量した。
【0050】
<セラミド量解析>
抽出した脂質中を薄膜クロマトグラフィー(TLC)法にて解析した。クロロホルム:メタノール:酢酸=190:9:1で2回水平展開し、ブロードライし、且つ硫酸銅呈色溶液をスプレーで噴霧した後、ホットプレートで焼き付けセラミドを検出した。その後、得られた値を各々の蛋白量で割り、セラミド量とした(表2)。表の数値は(前記対照溶液を添加した)対照品のセラミド量を1とした時の相対値を示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表2に示したとおり、本発明の植物抽出物にはヒトケラチノサイトのセラミド産生促進効果が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビャクシ、ジオウ、ビャクジュツ、カンゾウ、ダイオウ、ビャクギュウ、カシュウ、キキョウ、ヤクモソウ及びサンヤクから選ばれる植物又はその抽出物を有効成分とするセラミド産生促進剤。
【請求項2】
前記ビャクシ、ビャクジュツ、ビャクギュウ、カシュウ、キキョウ、ヤクモソウ又はサンヤクの抽出物が、抽出溶剤として石油エーテルを用いて得られた石油エーテル抽出物である、請求項1記載のセラミド産生促進剤。
【請求項3】
前記ジオウ又はカンゾウの抽出物が、抽出溶剤として順次に石油エーテル及びエタノールを用いて得られたエタノール抽出物である、請求項1記載のセラミド産生促進剤。
【請求項4】
前記ダイオウの抽出物が、抽出溶剤として順次に石油エーテル、エタノール及び水を用いて得られた水抽出物である、請求項1記載のセラミド産生促進剤。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のセラミド産生促進剤を製造するための、ビャクシ、ジオウ、ビャクジュツ、カンゾウ、ダイオウ、ビャクギュウ、カシュウ、キキョウ、ヤクモソウ及びサンヤクから選ばれる植物又はその抽出物の使用。
【請求項6】
ヤクモソウ及びサンヤクから選ばれる植物又はその抽出物を有効成分とする保湿剤。
【請求項7】
前記ヤクモソウ又はサンヤクの抽出物が、抽出溶剤として石油エーテルを用いて得られた石油エーテル抽出物である、請求項6記載の保湿剤。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の保湿剤を製造するための、ヤクモソウ及びサンヤクから選ばれる植物又はその抽出物の使用。

【公表番号】特表2012−500231(P2012−500231A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523293(P2011−523293)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【国際出願番号】PCT/CN2009/073291
【国際公開番号】WO2010/020165
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(511043323)復旦大学附属中山医院 (1)
【氏名又は名称原語表記】ZHONGSHAN HOSPITAL OF FUDAN UNIVERSITY
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】