説明

センサモジュールオフセットキャンセル回路

【課題】センサモジュールオフセットキャンセル回路の小型化。
【解決手段】ひずみセンサと、オペアンプ(27〜29)と、AD/DA変換器を制御するコントローラと、コントローラに接続されるRFICと、RFICに接続されるアンテナとを有し、ひずみセンサはブリッジ回路で形成され、第1の端子bから電圧Vin-を出力し、第2の端子dから電圧VIN+を出力し、電圧VIN-は第1の入力抵抗を介して27の非反転入力端子に送られ、電圧VIN+は第2の入力抵抗を介して28の+端子に送られ、27の出力端子は29の反転入力端子に接続され、28の出力端子は29の+端子に接続され、29の出力はAD変換器に送られ、29の電源端子にはCPUからゲイン調整信号が送られ、28の+端子とDA変換器との間には第3の入力抵抗が接続されてDA変換器から第3の入力抵抗を介してアナログ出力電圧が送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はひずみセンサを含むセンサを有するセンサモジュールにおいて、ひずみセンサのオフセット電圧をキャンセルするセンサモジュールオフセットキャンセル回路に関する。
【背景技術】
【0002】
センサモジュールにおいて、ひずみセンサ(ひずみゲージ)は被測定物に貼りつけられ、被測定物の変形を検出するセンサとして使用される。ひずみセンサはホイートストンブリッジ回路を構成し、ひずみ(歪)によるホイートストンブリッジ回路の出力電圧の変化から歪を検出する(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、ひずみセンサを半導体プロセスで形成したものも知られている(例えば、特許文献2)。特許文献2には、本明細書で呼称するひずみセンサに対応するひずみ検出部を、温度検出部(p−n接合ダイオード構成)とともに半導体プロセスによって一体に形成することが記載されている。
【0004】
ひずみセンサはその製造時あるいは被測定物に取り付ける際変形(撓む)することがあり、被測定物が何ら変形しない状態でもセンサ出力が発生してしまうことがある。このセンサ出力、即ちオフセット電圧は測定の誤差となる。従って、ひずみセンサから入力される信号のオフセット電圧をキャンセルする必要がある。
【0005】
一般に、オフセットキャンセル回路としては、回路を構成する部品にディジタル・ポテンションメータ、あるいは複数の抵抗を使用している(例えば、特許文献3)。また、非特許文献1には、256分解能のディジタル・ポテンションメータが開示されている。
【0006】
特許文献3に開示されているオフセットキャンセル回路では、複数の抵抗を用い、これら抵抗の抵抗分圧点の電圧をオフセットキャンセル電圧として使用している。即ち、オフセットキャンセル回路では、AMP1の出力端子に接続される出力トランジスタ(nチャンネルMOSFET)のソースに直列に6個の抵抗を接続し、各接続部分の電圧をそれぞれの回路部分の入力電位として使用する構成になっている。また、AMP2の出力端子に接続される出力トランジスタ(nチャンネルMOSFET)のドレインに直列に3個の抵抗を接続し、各接続部分の電圧をそれぞれの回路部分の入力電位として使用する構成になっている。
【0007】
【特許文献1】特開平7−270109号公報
【特許文献2】特開2005−156298号公報
【特許文献3】特開平11−27060号公報
【非特許文献1】http://www.analog.com/jp/subCat/0,2879,761%255F797%255F0%255F%255F0%255F,00.html、C03436-0-3/04(A)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ひずみセンサのオフセット電圧を任意に調整するには、前述のように一般的な方法として、増幅回路の入力段に、ディジタル・ポテンションメータもしくは複数の抵抗を接統する方法が知られている。ディジタル・ポテンションメータもしくは、複数の抵抗を使用する構造の場合は、以下の問題がある。
【0009】
(1)ディジタル・ポテンションメータを用いる構造は消費電力が大きく、バッテリの消耗が大きい。このため、バッテリの交換頻度が高くなる。
(2)ディジタル・ポテンションメータを用いる構造は、装置が大掛かりとなり重量も重くなる。このため、ひずみセンサモジュールを高所に設置した場合、バッテリの交換作業が大変である。
(3)ディジタル・ポテンションメータは一般的に256分解能を持つ。しかし、分解能が256程度となるディジタル・ポテンションメータを用いる構造では、ひずみセンサから入力されるオフセット電圧をキャンセルできる分解能が低く、オフセット電圧キャンセル性能が低い。
(4)多くの抵抗を使用する構造では、高分解能を実現するには、多数の抵抗を必要とするためセンサモジュールが大きくなり、センサモジュールの小型化が図り難い。
【0010】
本発明の目的は、センサモジュールの小型化及び消費電力の低減を図ることができるセンサモジュールオフセットキャンセル回路を提供することにある。
本発明の他の目的は、分解能が高いセンサモジュールオフセットキャンセル回路を提供することにある。
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面からあきらかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
【0012】
(1)センサモジュールオフセットキャンセル回路は、
ひずみセンサと、第1乃至第3のオペアンプ(AMP1〜AMP3)と、ADコンバータ及びDAコンバータを制御する中央処理装置を有するコントローラと、前記コントローラの出力端子、入力端子及び入出力端子に、入力端子、出力端子及び入出力端子が接続されるRFICと、前記RFICの入出力端子に接続されるアンテナとを有し、
前記ひずみセンサは、4個の抵抗RS1〜RS4によるホイートストンブリッジ回路で形成され、前記抵抗RS1と前記抵抗RS3との接続部は第1基準電圧端子となり、前記抵抗RS2と前記抵抗RS4との接続部は第2基準電圧端子となり、前記抵抗RS1と前記抵抗RS2との接続部は電圧VINを出力する第1の端子となり、前記抵抗RS3と前記抵抗RS4との接続部は電圧VINを出力する第2の端子となり、
前記第1のオペアンプはボルテージホロワからなり、非反転入力端子と前記第1の端子との間には第1の入力抵抗Rが接続され、
前記第2のオペアンプはボルテージホロワからなり、非反転入力端子と前記第2の端子との間には第2の入力抵抗Rが接続され、
前記第1のオペアンプの出力端子は前記第3のオペアンプの反転入力端子に接続され、
前記第2のオペアンプの出力端子は前記第3のオペアンプの非反転入力端子に接続され、
前記第3のオペアンプの出力端子は前記ADコンバータの入力端子に接続され、
前記第3のオペアンプのゲイン調整端子には前記中央処理装置からゲイン調整信号が送られるように構成され、
前記第2のオペアンプの非反転入力端子と前記第2の入力抵抗Rとの接続間と前記DAコンバータの出力端子との間には第3の入力抵抗Rが接続され、前記DAコンバータから出力される出力電圧VDAが前記第2のオペアンプの非反転入力端子に送られるように構成され、
前記ひずみセンサのオフセット電圧をキャンセルすることを特徴とする。
【0013】
また、前記センサモジュールオフセットキャンセル回路において、
前記第2のオペアンプに入力される前記電圧VINと前記VDAの電圧差を前記第2の入力抵抗R及び前記第3の入力抵抗Rで分圧した電圧をVとし、
前記第3のオペアンプに供給されるゲイン調整信号をAとし、
前記第3のオペアンプの出力電圧をVとし、
前記第3のオペアンプの基準電圧をVrefとし、
DA=ハイインピーダンスまたはVDA=Vrefのとき、入力オフセット電圧をキャンセルする場合、前記DAコンバータの出力電圧VDAは、

なる数式で与えられるので、
前記Vref、前記R、前記R、前記Aを設定してVを関数とする最終の数式を求め、
ついで、前記最終の数式を用い、前記第3のオペアンプの出力電圧Vが零に収束するまで前記中央処理装置で演算を繰り返し行って前記第3のオペアンプに入力される入力オフセット電圧をキャンセルする。
【0014】
また、前記センサモジュールオフセットキャンセル回路において、前記中央処理装置は分解能が1024〜4096となるマイクロプロセッサで構成されている。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
【0016】
前記(1)の手段によれば、(a)センサモジュール(装置)が大型となるディジタル・ポテンションメータを用いることなく、抵抗を使用したセンサモジュールオフセットキャンセル回路としたこと、また使用する抵抗の数も少ないことからセンサモジュールオフセットキャンセル回路の小型化が図れる。従って、センサモジュールオフセットキャンセル回路を使用するセンサモジュールを高所に設置した場合でも、センサモジュールの交換作業が容易になる。
【0017】
(b)消費電力が大きいディジタル・ポテンションメータを用いていないので、センサモジュールオフセットキャンセル回路の消費電力の低減が図れる。また、消費電力が小さいことからバッテリの消耗が小さく、バッテリの交換頻度を低くすることができる。
【0018】
(c)前記中央処理装置は分解能が1024〜(4096)となるマイクロプロセッサで構成されていることから、ひずみセンサから入力されるわずかなオフセット電圧を確実にキャンセルすることができ、高精度のセンサモジュールの実現に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0020】
図1乃至図5は本発明の実施例1であるセンサモジュールオフセットキャンセル回路に係わる図である。図1はセンサモジュールオフセットキャンセル回路を示す回路図である。
【0021】
実施例1のセンサモジュールオフセットキャンセル回路を説明する前に、実施例1のセンサモジュールオフセットキャンセル回路を組み込んだセンサモジュールについて、図2乃至図4を用いて説明する。図2はセンサモジュールの概要を示す模式図、図3はセンサモジュールの概要を示すブロック図である。
【0022】
センサモジュール1は、図2に示すように、例えば、小型化を図るために、第1の配線基板2の上面側に第2の配線基板3を重ねる構造となっている。第1の配線基板2と第2の配線基板3との間にはポスト4及びスタッキングコネクタ5,6が介在されている。ポスト4は複数設けられ、第1の配線基板2と第2の配線基板3を所定間隔で支持する部材となっている。スタッキングコネクタ5は第1の配線基板2の上面に固定され、スタッキングコネクタ6は第2の配線基板3の下面に取り付けられ、二つのスタッキングコネクタ5,6によって上下の配線基板(第1の配線基板2及び第2の配線基板3)の所定の配線が電気的に接続されている。
【0023】
第1の配線基板2の配線には、複数のセンサからそれぞれ延在するコード8が接続されている。センサは、ひずみ(歪)センサ7aやセンサA、Bである。例えば、センサAは温度センサ7bであり、センサBは傾斜センサ7cである。センサA、Bは他のセンサであってもよく、またセンサの種類はさらに多くてもよい。ひずみセンサ7aは第1の配線基板2に搭載された電子部品9,10等による増幅回路Aによって増幅される(図3参照)。また、温度センサ7bは電子部品11等による増幅回路Bによって増幅される(図3参照)。第1の配線基板2と、この第1の配線基板2に搭載されて形成された増幅回路A、Bによってセンサ部が形成される(図2、図3参照)。
【0024】
第2の配線基板3には、例えば、下面には、MPU(microprocessing unit)12が搭載され、上面にはRFIC13及びアンテナ14が搭載されている。第2の配線基板3と、この第2の配線基板3に搭載されたMPU12,RFIC13,アンテナ14等によってRF部が形成されている(図3参照)。
【0025】
図3はセンサモジュール1の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、センサモジュール1はセンサ、センサ部、RF部で代表される。
ひずみセンサ7aの検出情報は増幅回路Aで増幅された後、MPU12で形成されるコントローラ30にアナログ信号として入力される。また、コントローラ30からアナログ信号としてゲイン調整信号が増幅回路Aに供給されてオフセット電圧の調整、例えば、オフセット電圧のキャンセルが行われる。図3では図示しないが、分解能が4096となるMPU12(図2参照)によって制御されるDAコンバータ(DA変換器:DA)からゲイン調整信号が増幅回路Aに供給される。
【0026】
温度センサ7bの検出情報は増幅回路Bで増幅された後、コントローラ30にアナログ信号として入力される。また、傾斜センサ7cの検出情報は直接コントローラ30にアナログ信号として入力される。
【0027】
RF部ではRFIC13はコントローラ30によって制御される。RFIC13は各センサ7a〜7cによる検出情報をアンテナ14から所定の監視ステーションに無線情報として発信するように構成されている。また、監視ステーションから送られてくる電波情報はアンテナ14で捕らえられる。捕らえた電波情報はRFIC13で処理されてコントローラ30に送られる。
【0028】
図4はひずみセンサ7aの概要を示す斜視図である。ひずみセンサ7aは、例えば、シリコン半導体基板15にそれぞれ不純物を拡散させて複数の抵抗を形成した構造になっている。そして、各抵抗によって図1に示すようなホイートストンブリッジ回路を形成してひずみを測定できるようになっている。図4で点々を施した四角形部分が抵抗形成領域16である。そして、この抵抗形成領域16から4本の配線17が引き出され、その先端が電極パッド18となっている。各電極パッド18は、図1のホイートストンブリッジ回路の各ノードa〜dに対応する。図4には各電極パッド18に対応するノードa〜dを付して示す。
【0029】
このようなひずみセンサ7aは、下面が接着面となり、ひずみを検出する被測定物に接着されて使用される。そして、被測定物の変形(歪)を、ひずみセンサ7a各部の抵抗の歪に伴う抵抗値の変化をホイートストンブリッジ回路のノードb,d(電極パッド18のb,d)からの情報として検出することによって測定する。
【0030】
図1はセンサモジュールオフセットキャンセル回路を示す回路図である。センサモジュールオフセットキャンセル回路25は、ひずみセンサ7aと、インピーダンス変換プリアンプとなる第1のオペアンプ(AMP1)27と、インピーダンス変換プリアンプ第2のオペアンプ(AMP2)28と、ゲイン調整機能付き計装アンプからなる第3のオペアンプ(AMP3)29と、コントローラ30と、RFIC13と、アンテナ14とを有する。
【0031】
ひずみセンサ7aは、図1に示すように、4個の抵抗RS1〜RS4によるホイートストンブリッジ回路で形成され、前記抵抗RS1と前記抵抗RS3との接続部(ノード)aに連なる電極パッド18(図4参照)は第1基準電圧端子となり、第1基準電圧(Vcc)が供給される端子となっている。抵抗RS2と前記抵抗RS4との接続部(ノード)cに連なる電極パッド18(図4参照)は第2基準電圧端子となり、第2基準電圧(グランド)が供給される端子となっている。抵抗RS1と抵抗RS2との接続部(ノード)bに連なる電極パッド18(図4参照)は電圧VINを出力する第1の端子となる。また、抵抗RS3と抵抗RS4との接続部(ノード)dに連なる電極パッド18(図4参照)は電圧VINを出力する第2の端子となる。回路の説明では各ノードに対応させて、第1基準電圧端子を第1基準電圧端子aと、第2基準電圧端子を第2基準電圧端子cと、電圧VINを出力する第1の端子を第1の端子bと、電圧VINを出力する第2の端子を第2の端子dとも呼称する。
【0032】
第1のオペアンプ27はボルテージホロワからなり、非反転入力端子(+)と第1の端子bとの間には第1の入力抵抗Rが接続されている。また、第1の端子bには第1の入力抵抗Rと並列接続となりかつ他端に第2基準電圧が供給される第1の入力保護抵抗RIN1の一端が接続されている。
【0033】
第2のオペアンプ28はボルテージホロワからなり、非反転入力端子(+)と電圧VINを出力する第2の端子dとの間には第2の入力抵抗Rが接続されている。また、第2の端子dには第2の入力抵抗Rと並列接続となりかつ他端に第2基準電圧が供給される第2の入力保護抵抗RIN2の一端が接続されている。
【0034】
第2のオペアンプ28にはひずみセンサ7aからの入力オフセット電圧を調整するために第2の入力抵抗Rが必要となる。即ち、微小なオペアンプの入力バイアス電流より発生する第2のオペアンプ28自体の入力オフセット電圧と、第1のオペアンプ27自体の入力オフセット電圧をほぼ同じくするため、第1の入力抵抗Rを接続する。しかし、第1のオペアンプ27自体の入力オフセット電圧が、回路に影響しない場合は第1の入力抵抗Rは不要となる。
【0035】
第1のオペアンプ(AMP1)27の出力端子は第3のオペアンプ(AMP3)29の反転入力端子(−)に接続され、第2のオペアンプ(AMP2)28の出力端子は第3のオペアンプ(AMP3)29の非反転入力端子(+)に接続されている。
【0036】
コントローラ30は、ADコンバータ(AD)31、DAコンバータ(DA)32及び中央処理装置(CPU)33等によって構成されている。CPU33はMPU12で形成され、ADコンバータ31及びDAコンバータ32を制御する構成になっている。分解能が4096となるMPUは市販されている。実施例においてはひずみセンサのオフセット電圧をキャンセルするための分解能を上げるため、MPU12としては分解能が1024〜4096となるマイクロプロセッサを使用する。
【0037】
また、コントローラ30とRFIC13はそれぞれの入出力端子を介して接続されている。また、RFIC13の入出力端子にはアンテナ14が接続されている。
【0038】
一方、第3のオペアンプ(AMP3)29の出力端子はADコンバータ31の入力端子に接続されている。そして、第3のオペアンプ(AMP3)29のゲイン調整端子にはCPU33からゲイン調整信号が送られるように構成されている。
【0039】
また、第2のオペアンプ(AMP2)28の非反転入力端子(+)と第2の入力抵抗Rとの接続間と、DAコンバータ32の出力端子との間には第3の入力抵抗Rが接続され、DAコンバータ32から出力されるアナログ出力電圧VDAが第2のオペアンプ(AMP2)28の非反転入力端子(+)に送られる(バイアス)ように構成されている。この結果、VINとVDAの電位差がR及びRにより抵抗分圧され、ひずみセンサ7aから入力されるVINとVINのオフセット電圧をキャンセルする。
【0040】
一方、第2の端子dの電圧VINが第1の端子bの電圧VINに対して正のオフセット値を持つときは、DAコンバータ32の出力電圧VDAは前記電圧VINより低い値に設定される。また、第2の端子dの電圧VINが第1の端子bの電圧VINに対して負のオフセット値を持つときは、DAコンバータ32の出力電圧VDAは前記VINより高い値に設定される。さらに、第2の端子dの電圧VINと第1の端子bの電圧VINとの間のオフセット値が零のときは、出力電圧VDAは第1基準電圧端子aのVCC電圧の半分の電圧もしくは入力方向に設定されるようになっている。
【0041】
また、インピーダンス変換プリアンプ(AMP1,AMP2)の入力バイアス電流による電位差を生じさせないために第1の入力抵抗Rと第2の入力抵抗Rは同じ抵抗値とする。
【0042】
なお、図1のセンサモジュールオフセットキャンセル回路25において、ひずみセンサ7aの電圧VINを出力する第1の端子b、電圧VINを出力する第2の端子dからコントローラ30の寸前までの回路部分はひずみセンサ出力信号増幅回路を構成する。
【0043】
このようなセンサモジュールオフセットキャンセル回路25においては、ひずみセンサ7aの出力電圧VIN,VINを第1のオペアンプ(AMP1)27及び第2のオペアンプ(AMP2)28でそれぞれ増幅するとともに、第3のオペアンプ29でVINとVINの差を増幅する。この増幅情報はコントローラ30のADコンバータ31に送られる。CPU33はADコンバータ31に入力されたアナログ入力信号(V)が零になるようにDAコンバータ32からアナログ出力信号(VDA)を第2のオペアンプ(AMP2)28の非反転入力端子(+)に供給して、ひずみセンサ7aのオフセット電圧を零にキャンセルする。
【0044】
つぎに、ひずみセンサのオフセット電圧のキャンセルについて説明する。前提条件として、(1)第1の入力保護抵抗RIN1及び第2の入力保護抵抗RIN2を接続しない回路構成とする。(2)第2の入力抵抗R及び第3の入力抵抗Rは、ひずみセンサ7aの抵抗値(例えば、22kΩ)より十分大きい値(例えば、R2+R3=448kΩ(R2=18kΩ、R3=430kΩ))とし、ひずみセンサ7aを取り付けた初期の定常状態で、出力電圧VDAが変化してもVINの変動は無視できるものとする。
【0045】
センサモジュールオフセットキャンセル回路25において、第2のオペアンプ(AMP2)28に入力される電圧VINと前記出力電圧VDAの電圧差を第2の入力抵抗R 及び第3の入力抵抗Rで分圧した電圧をVとする。また、第3のオペアンプ(AMP3)29に供給されるゲイン調整信号をAとし、第3のオペアンプ29の出力電圧をVとし、第3のオペアンプ29の基準電圧をVrefとする。
【0046】
ここで、出力電圧VはVrefを基準として出力される。VIN>VINのときV>Vrefである。また、VIN<VINのときV<Vrefである。
DA=入力方向のときVは以下の式(数1)で表される。もしくは、VDA=VrefのときVは以下の数1で近似される。
【0047】
【数1】

【0048】
DA=入力方向のときVIN、VIN、Vrefの関係式は以下の式(数2)で表される。もしくは、VDA=VrefのときVIN、VIN、Vrefの関係式は以下の数2で近似される。
【0049】
【数2】

【0050】
DAコンバータ32の出力電圧VDAは以下の式(数3)で表される。
【0051】
【数3】

【0052】
ひずみセンサ出力信号増幅回路に入力される入力オフセット電圧をキャンセルするには、V=VINとなるようにVDAを設定する必要がある。数3にV=VINを代入し、VDAを求める。
【0053】
【数4】

【0054】
数1、数2、数4より、VDAをMPU等のコントローラ30で読み取れる値もしくは、既知の定数、Vref、R、R、A及びVで表す。
【0055】
【数5】

【0056】
数5において、Vref=1.4(V)、R=18000(Ω)、R=430000(Ω)、V=1.5(V)、A=2とすると、VDA=0.1806(V)となる。
【0057】
このとき、ひずみセンサ7aの抵抗RS1及び抵抗RS4がひずんだ場合、上記数5の前提条件の影響がなくなるよう考慮し、実回路動作を検証すると、VDA=0.6384(V)となる。このとき、数式配下の式(数6)で表される。
【0058】
【数6】

【0059】
ここで、数5の前提条件の影響がなくなるよう考慮し、とは図1においてRIN1=RIN2=2.2MΩを接続し、VDAの変化によるVINの変動を加味することである。また、実回路動作とは前提条件の影響がなくなるよう考慮した回路であり、実回路動作を検証するとは前提条件の影響がなくなるよう考慮した回路を回路シミュレータおよび実回路を製作した基板による実動作で検証することである。そして、回路シミュレータによる検証の上数6をシミュレーション結果から得る。この場合Vを1.5Vと決めることによってVDA=0.6384(V)が得られる。このVDA=0.6384(V)はVref=1.4Vに対してV=1.5VのときV=1.4Vに調整する値の意味を有する。
【0060】
また、実回路動作においてはひずみセンサ7aの抵抗値は様々に変化するため、Vを読み取り入力オフセット電圧をキャンセルするVDAを出力する手順を、入力オフセット電圧が収束するまで繰り返す。そして、この繰り返しの結果、ひずみセンサ7aのオフセット電圧をキャンセルすることができる。
【0061】
図5は実施例1のセンサモジュールの使用態様を示すブロック図である。通常の使用方法では複数のひずみセンサが接続されるn台のセンサモジュール1と、センサモジュールがセンシングしたデータを収集するm台のモジュール35と、これらモジュール35を制御する1台の上位コントローラ36で構成される。
【0062】
モジュール35は、アンテナ41が接続されたRFIC42を有している。RFIC42はCPU(ソフトウェア)43を有するコントローラ44で制御される。モジュール35とセンサモジュール1はそれぞれのアンテナ41,14を介して情報の授受を行うことができるようになっている。
【0063】
上位コントローラ36はCPU(ソフトウェア)51を有するコントローラとなり、上位コントローラ36はモジュール35と有線で接続され、直接モジュール35を制御し、かつモジュール35を介して無線情報をセンサモジュール1へ送信することにより、センサモジュール1を制御するようになっている。
【0064】
また、図5において歪センサ出力信号増幅回路から発し、コントローラ30またはコントローラ44もしくはCPU51内で反転して再び歪センサ出力信号増幅回路に向かう一点鎖線で示すループ54は、それぞれひずみセンサオフセット電圧のキャンセルの処理系を示す線図である。ループ54の反転箇所55,56,57はコントローラ30、コントローラ44、CPU51内それぞれ示してある。
【0065】
入力オフセット電圧をキャンセルするためのVDAを出力するトリガは、以下により与えられる。ひずみセンサ7aが接続されたセンサモジュール1が設置された後、センサモジュール1へ電源投入もしくは、電源投入後センサモジュール1にトリガ信号を印加することにより、センサモジュール単独で入力オフセット電圧のキャンセルを行う。この処理系の反転はコントローラ30内に示される反転箇所55となる。
【0066】
ひずみセンサ7aが接続されたセンサモジュール1が設置された後、センサモジュール1が上位コントローラ36が接続されたモジュール35もしくは、上位コントローラ36へセンサモジュール1が設置された情報を通知し、上位コントローラ36が接続されたモジュール35もしくは、上位コントローラ36がセンサモジュール1へひずみセンサのオフセット電圧をキャンセルするトリガ信号を通知する。この処理系の反転はコントローラ44または上位コントローラ36内に示される反転箇所56,57となる。
【0067】
本発明の実施例1によれば以下の効果を有する。
(1)実施例のセンサモジュールオフセットキャンセル回路25は、センサモジュール1が大型となるディジタル・ポテンションメータを用いることなく、抵抗(第1の入力抵抗R、第2の入力抵抗R、第3の入力抵抗R、第1の入力保護抵抗RIN1及び第2の入力保護抵抗RIN2)を使用したセンサモジュールオフセットキャンセル回路25としたこと、また使用する抵抗の数も少ないことからセンサモジュールオフセットキャンセル回路の小型化が図れる。従って、センサモジュールオフセットキャンセル回路25を使用するセンサモジュール1を高所に設置した場合でも、センサモジュール1の交換作業が容易になる。
【0068】
また、第1の入力保護抵抗RIN1及び第2の入力保護抵抗RIN2を使用しない構成の場合、センサモジュールオフセットキャンセル回路25はさらに小さくなり、センサモジュール1をさらに小型化することができる。
【0069】
ここで、本実施例に使用するMPU12(CPU33)とDAコンバータ32による出力部分と分解能が256となるディジタル・ポテンションメータの構成比較について説明する。部品実装面積は、ディジタル・ポテンションメータにおいては2.9mm×2.8mmと1.0mm×0.5mmになるのに対して、実施例では1.0×0.5mmと小さくなる。配線本数はディジタル・ポテンションメータにおいては8本になるのに対して、実施例では1本と大幅に少なくなる。分解能は、ディジタル・ポテンションメータが256であるのに対して、実施例では4096と大幅に高くなる。
【0070】
(2)消費電力が大きい(例えば、400μA)ディジタル・ポテンションメータを用いていないので、センサモジュールオフセットキャンセル回路の消費電力の低減が図れる。実施例の場合、消費電力は、例えば、100μAである。また、消費電力が小さいことからバッテリの消耗が小さく、バッテリの交換頻度を低くすることができる。
【0071】
(3)CPU33はMPU12で構成されている。このMPU12の分解能は4096である。この分解能は分解能が256となるディジタル・ポテンションメータに比較して大幅に高くなる。この結果、ひずみセンサ7aから入力されるわずかなオフセット電圧を確実にキャンセルすることができ、高精度のセンサモジュールオフセットキャンセル回路25となる。従って、センサモジュールオフセットキャンセル回路25を組み込んだセンサモジュール1も高精度にひずみ測定が行えるものとなる。
【実施例2】
【0072】
図6は本発明の実施例2であるセンサモジュールオフセットキャンセル回路を示す回路図である。実施例2のセンサモジュールオフセットキャンセル回路25は、実施例1のセンサモジュールオフセットキャンセル回路25におけるコントローラ30において、コントローラ30はCPU33とADコンバータ31で構成し、DAコンバータ32はコントローラ30から独立させた構成にしたものである。また、実施例2のセンサモジュールオフセットキャンセル回路25においては、回路Aと示す部分、または回路Bと示す部分を単一の半導体基板にモノリシックに形成することもできる。このようなモノリシック化によってさらにセンサモジュールオフセットキャンセル回路25の小型化を図ることができる。
【0073】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施例1であるセンサモジュールオフセットキャンセル回路を示す回路図である。
【図2】実施例1のセンサモジュールオフセットキャンセル回路が組み込まれたセンサモジュールの概要を示す模式図である。
【図3】実施例1のセンサモジュールの概要を示すブロック図である。
【図4】実施例1のセンサモジュールで用いるひずみセンサの概要を示す斜視図である。
【図5】実施例1のセンサモジュールの使用態様を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例2であるセンサモジュールオフセットキャンセル回路を示す回路図である。
【符号の説明】
【0075】
1…センサモジュール、2…第1の配線基板、3…第2の配線基板、4…ポスト、5,6…スタッキングコネクタ、7a〜7c…センサ、7a…ひずみセンサ、7b…温度センサ、7c…傾斜センサ、8…コード、9,10…電子部品、11…電子部品、12…MPU、13…RFIC、14…アンテナ、15…シリコン半導体基板、16…抵抗形成領域、17…配線、18…電極パッド、25…センサモジュールオフセットキャンセル回路、27…第1のオペアンプ(AMP1)、28…第2のオペアンプ(AMP2)、29…第3のオペアンプ(AMP3)、30…コントローラ、31…ADコンバータ(AD交換器)、32…DAコンバータ(DA交換器)、33…中央処理装置(CPU)、35…モジュール、36…上位コントローラ、41…アンテナ、42…RFIC、43…CPU、44…コントローラ、51…CPU、54…ループ、55,56,57…反転箇所。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひずみセンサと、
第1乃至第3のオペアンプと、
ADコンバータ及びDAコンバータを制御する中央処理装置を有するコントローラと、
前記コントローラの出力端子、入力端子及び入出力端子に、入力端子、出力端子及び入出力端子が接続されるRFICと、
前記RFICの入出力端子に接続されるアンテナとを有し、
前記ひずみセンサは、4個の抵抗RS1〜RS4によるホイートストンブリッジ回路で形成され、前記抵抗RS1と前記抵抗RS3との接続部は第1基準電圧端子となり、前記抵抗RS2と前記抵抗RS4との接続部は第2基準電圧端子となり、前記抵抗RS1と前記抵抗RS2との接続部は電圧VINを出力する第1の端子となり、前記抵抗RS3と前記抵抗RS4との接続部は電圧VINを出力する第2の端子となり、
前記第1のオペアンプはボルテージホロワからなり、非反転入力端子と前記第1の端子との間には第1の入力抵抗Rが接続され、
前記第2のオペアンプはボルテージホロワからなり、非反転入力端子と前記第2の端子との間には第2の入力抵抗Rが接続され、
前記第1のオペアンプの出力端子は前記第3のオペアンプの反転入力端子に接続され、 前記第2のオペアンプの出力端子は前記第3のオペアンプの非反転入力端子に接続され、
前記第3のオペアンプの出力端子は前記ADコンバータの入力端子に接続され、
前記第3のオペアンプのゲイン調整端子には前記中央処理装置からゲイン調整信号が送られるように構成され、
前記第2のオペアンプの非反転入力端子と前記第2の入力抵抗Rとの接続間と前記DAコンバータの出力端子との間には第3の入力抵抗Rが接続され、前記DAコンバータから出力される出力電圧VDAが前記第2のオペアンプの非反転入力端子に送られるように構成され、
前記ひずみセンサのオフセット電圧をキャンセルすることを特徴とするセンサモジュールオフセットキャンセル回路。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサモジュールオフセットキャンセル回路において、
前記第1の端子には前記第1の入力抵抗Rと並列接続となりかつ他端に第2基準電圧が供給される第1の入力保護抵抗RIN1の一端が接続され、
前記第2の端子には前記第2の入力抵抗Rと並列接続となりかつ他端に第2基準電圧が供給される第2の入力保護抵抗RIN2の一端が接続されていることを特徴とするセンサモジュールオフセットキャンセル回路。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサモジュールオフセットキャンセル回路において、
前記第2の端子の電圧VINが前記第1の端子の電圧VINに対して正のオフセット値を持つときは、前記DAコンバータの出力電圧VDAは前記電圧VINより低い値に設定され、
前記第2の端子の電圧VINが前記第1の端子の電圧VINに対して負のオフセット値を持つときは、前記DAコンバータの出力電圧VDAは前記VINより高い値に設定され、
前記電圧VINと前記電圧VINとの間のオフセット値が零のときは、前記出力電圧VDAは前記第1基準電圧端子VCCの半分の電圧もしくは入力方向に設定されることを特徴とするセンサモジュールオフセットキャンセル回路。
【請求項4】
請求項1に記載のセンサモジュールオフセットキャンセル回路において、
前記第2のオペアンプに入力される前記電圧VINと前記出力電圧VDAの電圧差を前記第2の入力抵抗R及び前記第3の入力抵抗Rで分圧した電圧をVとし、
前記第3のオペアンプに供給されるゲイン調整信号をAとし、
前記第3のオペアンプの出力電圧をVとし、
前記第3のオペアンプの基準電圧をVrefとし、
DA=ハイインピーダンスまたはVDA=Vrefのとき、入力オフセット電圧をキャンセルする場合、前記DAコンバータの出力電圧VDAは、

なる数式で与えられるので、
前記Vref、前記R、前記R、前記Aを設定してVを関数とする最終の数式を求め、
ついで、前記最終の数式を用い、前記第3のオペアンプの出力電圧Vが零に収束するまで前記中央処理装置で演算を繰り返し行って前記第3のオペアンプに入力される入力オフセット電圧をキャンセルすることを特徴とするセンサモジュールオフセットキャンセル回路。
【請求項5】
請求項1に記載のセンサモジュールオフセットキャンセル回路において、前記中央処理装置は分解能が1024〜4096となるマイクロプロセッサで構成されていることを特徴とするセンサモジュールオフセットキャンセル回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−208427(P2007−208427A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22535(P2006−22535)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000100997)株式会社アキタ電子システムズ (41)
【Fターム(参考)】