説明

センサ信号処理回路基板

【課題】静電気によるセンサ信号処理ICの破壊が起き難く、小型・低コストのセンサ信号処理回路基板を提供する。
【解決手段】センサとマイコン20の間に介在させる制御回路11が設けられたセンサ信号処理IC10と、該センサ信号処理IC10の出力端子Toと接地配線の間に挿入されるコンデンサCとが、回路基板101に表面実装されてなるセンサ信号処理回路基板100であって、回路基板101が、2層以上の内部導体層33〜36を有してなる多層回路基板であり、接地配線とセンサ信号処理IC10の出力端子Toの間で、内部導体層33,34を層間接続して形成されたループ状をなすインダクタM1が、コンデンサCに直列に挿入されてなるセンサ信号処理回路基板100とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサとマイコンの間に介在させる制御回路が設けられたセンサ信号処理ICが表面実装されてなる、センサ信号処理回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
センサとマイコンの間に介在させる制御回路が、例えば、特開2001−20743号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
図6は、上記制御回路が設けられたセンサ信号処理ICが表面実装されてなる、センサ信号処理回路基板90を示した図である。図6(a)は、センサ信号処理回路基板90の回路構成の概略を示したブロック図であり、図6(b)は、センサ信号処理回路基板90の一部を拡大して模式的に示した断面図である。
【0004】
図6に示すセンサ信号処理回路基板90は、車載用の電子制御装置(ECU、Electronic Control Unit)に用いられ、車に搭載される各種センサから検出されるセンサ信号をマイコンで情報処理し、車の各種の制御に利用するものである。
【0005】
図6のセンサ信号処理回路基板90においては、両側の表面にだけ表面導体層31,32が形成された両面回路基板91に、センサ信号処理IC10,マイコン20,コンデンサC等が表面実装されている。
【0006】
センサ信号処理IC10には、センサとマイコン20の間に介在させる制御回路11が設けられており、入力端子Tiからのセンサ信号をマイコンで利用できる情報に変換して、出力端子Toからマイコン20へ送る。また、センサ信号処理IC10の出力端子Toと回路基板91の接地配線(基板共通グランド)の間に挿入されているコンデンサCは、センサ信号処理IC10において制御回路11の後段に接続された抵抗Rとで、RCフィルタ回路を構成するものである。この抵抗RとコンデンサCで構成されるRCフィルタ回路は、特定周波数の信号を取り出したり、ノイズを除去したりするためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−20743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図6のセンサ信号処理回路基板90において、(a)に示すセンサ信号処理IC10の入力端子Tiと接地端子Tgの間および出力端子Toと接地端子Tgの間には、それぞれ、当該センサ信号処理IC10を静電気から保護するための保護ダイオードD1,D2が挿入されている。従って、例えば(a)に示すようにセンサからの入力信号ラインに負の静電気が印加されると、保護ダイオードD1に順方向のインパルス(100MHz以上)電流が流れて、制御回路11の破壊が防止される。
【0009】
一方、回路基板91の基板共通グランドに接続するセンサ信号処理IC10のリードLおよびボンディングワイヤWは、それぞれ、(a)に図示したインダクタ成分を持っている。従って、上記した静電気によるインパルス電流が大きい場合には、リードLやボンディングワイヤWのインダクタ成分で図中のノードN1が負電位となる。コンデンサCはインパルスに対してショート状態のため、上記のようにノードN1が負電位となって、保護ダイオードD2にかかる電圧が耐圧を超えると、保護ダイオードD2が破壊してしまう。
【0010】
上記問題を解決するためには、例えば保護ダイオードD2を高耐圧化する方法や、より高度な静電気保護回路を導入する方法がある。しかしながら、これらの対策では、製造コストが増大すると共に、回路基板が大型化してしまう。
【0011】
そこで本発明は、センサとマイコンの間に介在させる制御回路が設けられたセンサ信号処理ICが回路基板に表面実装されてなるセンサ信号処理回路基板であって、静電気によるセンサ信号処理ICの破壊が起き難く、小型・低コストのセンサ信号処理回路基板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、センサとマイコンの間に介在させる制御回路が設けられたセンサ信号処理ICと、該センサ信号処理ICの出力端子と接地配線または電源配線のいずれか一方の間に挿入されるコンデンサとが、回路基板に表面実装されてなるセンサ信号処理回路基板であって、前記回路基板が、2層以上の内部導体層を有してなる多層回路基板であり、前記接地配線または電源配線のいずれか一方と前記センサ信号処理ICの出力端子の間で、前記内部導体層を層間接続して形成されたループ状をなすインダクタが、前記コンデンサに直列に挿入されてなることを特徴としている。
【0013】
上記センサ信号処理回路基板においては、センサ信号処理ICの出力端子と接地配線または電源配線のいずれか一方の間に挿入されるRCフィルタを構成するためのコンデンサと直列に、インダクタが挿入されている。該インダクタは、前記コンデンサからセンサ信号処理ICに向かって流れようとするインパルス電流を抑制するものである。これによって、センサからの入力信号ラインに静電気が印加された時、センサ信号処理ICのリードやボンディングワイヤがインダクタ成分を持っている場合であっても、該センサ信号処理ICの破壊を起き難くすることができる。
【0014】
また、上記センサ信号処理回路基板には、2層以上の内部導体層を有してなる多層回路基板が用いられている。該多層回路基板は、両側の表面にだけ表面導体層が形成された両面回路基板に較べて、配線密度と電子部品の実装密度を上げることができ、小型化が可能である。さらに、上記センサ信号処理回路基板においては、上記したコンデンサと直列に挿入されるインダクタが、内部導体層を層間接続して、ループ状をなすように形成されている。該インダクタは、例えば表面導体層の一層だけでインダクタを形成する場合に較べて基板占有面積が小さく、またチップ部品からなるインダクタを用いる場合のように基板表面の実装部品が追加されることもない。従って、該インダクタを付加することによって、回路基板が大型化したり、製造コストが増大したりすることもない。
【0015】
以上のようにして、上記センサ信号処理回路基板は、センサとマイコンの間に介在させる制御回路が設けられたセンサ信号処理ICが回路基板に表面実装されてなるセンサ信号処理回路基板であって、静電気によるセンサ信号処理ICの破壊が起き難く、小型・低コストのセンサ信号処理回路基板とすることができる。
【0016】
上記センサ信号処理回路基板は、請求項2に記載のように、前記センサ信号処理ICにおいて、入力端子と接地端子の間および出力端子と接地端子の間、または入力端子と電源端子の間および出力端子と電源端子の間の少なくとも一方に、それぞれ、保護ダイオードが挿入されてなる場合にも効果的である。
【0017】
センサ信号処理ICの静電気破壊対策として上記のように保護ダイオードを入れた場合にもおいても、センサ信号処理ICのリードやボンディングワイヤがインダクタ成分を持っていると、出力端子側に挿入した保護ダイオードに電圧がかかり、その電圧が耐圧を超えると保護ダイオードが破壊してしまう。この場合にも、上記インダクタが、コンデンサからセンサ信号処理ICに向かって流れようとするインパルス電流を抑制し、保護ダイオードにかかる電圧を耐圧以下として、破壊に至らないようすることができる。
【0018】
上記センサ信号処理回路基板は、請求項3に記載のように、前記センサ信号処理ICと前記コンデンサが、前記多層回路基板の同じ側の表面に実装され、前記インダクタが、前記センサ信号処理ICと前記コンデンサが実装される表面に最も近い厚さ方向において隣り合った内部導体層を層間接続して形成されてなる構成とすることが好ましい。これによれば、センサ信号処理IC、コンデンサおよびインダクタの各接続配線を短くできるため、接続配線によるインダクタ成分を無視することができ、インダクタの設計が容易になると共に、他の配線パターン等への影響も小さくすることができる。
【0019】
また、上記センサ信号処理回路基板は、請求項4に記載のように、前記多層回路基板が、3層以上の内部導体層を有してなり、前記インダクタが、厚さ方向において隣り合わない内部導体層を層間接続して形成され、前記インダクタの内側に、前記隣り合わない内部導体層の中間の内部導体層が配置されてなる構成とすることもできる。これによれば、上記インダクタの内側に配置される中間の内部導体層が透磁率を上げるように作用するため、当該インダクタのインダクタンス値を大きくすることができ、インパルス電流の抑制効果も高めることができる。
【0020】
また、上記センサ信号処理回路基板は、請求項5に記載のように、前記センサ信号処理ICと前記コンデンサが、前記多層回路基板の異なる側の表面に実装され、前記インダクタが、前記コンデンサが実装される側の表面に最も近い厚さ方向において隣り合った内部導体層を層間接続して形成されてなるように構成してもよい。これによれば、センサ信号処理ICとコンデンサが多層回路基板の異なる側の表面に実装されるため、例えばセンサ信号処理IC周りの配線パターンが混み合う場合であっても、センサ信号処理ICとコンデンサの接続配線を短くすることができる。また、コンデンサが実装される側の表面に最も近い厚さ方向において隣り合った内部導体層を層間接続してインダクタが形成されているため、コンデンサとインダクタの接続配線も短くすることができる。従って、該接続配線によるインダクタ成分を無視することができ、インダクタの設計が容易になると共に、他の配線パターン等への影響も小さくすることができる。
【0021】
センサ信号処理IC周りの配線パターンは、一般的に、複雑で混み合った状態となり易い。従ってそれらと干渉しないよう、上記センサ信号処理回路基板においては、請求項6に記載のように、前記インダクタが、前記センサ信号処理ICの直下に掛からないように配置されてなることが好ましい。
【0022】
上記センサ信号処理回路基板において、内部導体層を層間接続して形成されたループ状をなすインダクタの巻き数は、1より小さくてもよい。また、インダクタンス値を大きくするため、請求項7に記載のように、前記インダクタが、一巻き以上のループをなすコイル状であるようにしてもよい。
【0023】
以上のようにして、上記センサ信号処理回路基板は、センサとマイコンの間に介在させる制御回路が設けられたセンサ信号処理ICが回路基板に表面実装されてなるセンサ信号処理回路基板であって、静電気によるセンサ信号処理ICの破壊が起き難く、小型・低コストのセンサ信号処理回路基板とすることができる。
【0024】
従って、上記センサ信号処理回路基板は、請求項8に記載のように、静電気やノイズレベルの高い過酷な環境で使用される、車載用の電子制御装置に用いられて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るセンサ信号処理回路基板の一例を示す図で、(a)は、センサ信号処理回路基板100の回路構成の概略を示したブロック図であり、(b)は、センサ信号処理回路基板100の一部を拡大して模式的に示した断面図である。
【図2】(a),(b)は、それぞれ、図1(b)に示す内部導体層33,34を接続導体40で層間接続してループ状をなすようにして形成した、インダクタM1a,M1bの模式的な上面図である。
【図3】別の例を示す図で、センサ信号処理回路基板110の一部を拡大して模式的に示した断面図である。
【図4】別の例を示す図で、センサ信号処理回路基板120の一部を拡大して模式的に示した断面図である。
【図5】別の例を示す図で、センサ信号処理回路基板130の回路構成の概略を示したブロック図である。
【図6】従来のセンサ信号処理回路基板90を示した図である。(a)は、センサ信号処理回路基板90の回路構成の概略を示したブロック図であり、(b)は、センサ信号処理回路基板90の一部を拡大して模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を、図に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明に係るセンサ信号処理回路基板の一例を示す図で、図1(a)は、センサ信号処理回路基板100の回路構成の概略を示したブロック図であり、図1(b)は、センサ信号処理回路基板100の一部を拡大して模式的に示した断面図である。尚、図1に示すセンサ信号処理回路基板100において、図6に示したセンサ信号処理回路基板90と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0028】
図1に示すセンサ信号処理回路基板100も、図6に示したセンサ信号処理回路基板90と同様に、車載用の電子制御装置(ECU、Electronic Control Unit)に用いられ、車に搭載される各種センサから検出されるセンサ信号をマイコンで情報処理し、車の各種の制御に利用するものである。
【0029】
一方、図6のセンサ信号処理回路基板90においては、両側の表面に表面導体層31,32が形成された両面回路基板91が用いられていた。これに対して、図1のセンサ信号処理回路基板100においては、両側の表面に形成された表面導体層31,32だけでなく、2層以上の内部導体層33〜36を有してなる多層回路基板101が用いられ、該多層回路基板101に、センサ信号処理IC10,マイコン20,コンデンサCが表面実装されている。
【0030】
図1のセンサ信号処理IC10は、図6に示したそれと同じもので、センサとマイコン20の間に介在させる制御回路11が設けられており、入力端子Tiからのセンサ信号をマイコンで利用できる情報に変換して、出力端子Toからマイコン20へ送る。また、入力端子Tiと接地端子Tgの間および出力端子Toと接地端子Tgの間には、それぞれ、当該センサ信号処理IC10を静電気から保護するための保護ダイオードD1,D2が挿入されている。これによって、例えばセンサからの入力信号ラインに負の静電気が印加されると、保護ダイオードD1に順方向のインパルス(100MHz以上)電流が流れて、制御回路11の破壊が防止される。
【0031】
また、図1のセンサ信号処理回路基板100において、センサ信号処理IC10の出力端子Toと多層回路基板101の接地配線(基板共通グランド)の間に挿入されているコンデンサCも、図6に示したそれと同じもので、センサ信号処理IC10において制御回路11の後段に接続された抵抗Rとで、RCフィルタ回路を構成するものである。この抵抗RとコンデンサCで構成されるRCフィルタ回路で、特定周波数の信号を取り出したり、ノイズを除去したりする。
【0032】
一方、図1のセンサ信号処理回路基板100においては、図6に示したセンサ信号処理回路基板90と異なり、図1(a)に示すように、センサ信号処理IC10の出力端子Toと多層回路基板101の接地配線の間で、インダクタM1が、コンデンサCに直列に挿入されている。尚、図1(a)ではインダクタM1が図中のノードN2とコンデンサCの間に挿入されているが、インダクタM1の挿入位置は、センサ信号処理IC10の出力端子ToとノードN2の間、あるいはコンデンサCと多層回路基板101の接地配線の間であってもよい。該インダクタM1は、図1(b)に示すように、内部導体層33,34を接続導体40で層間接続して、ループ状をなすように形成されている。
【0033】
以上のように、図1に示すセンサ信号処理回路基板100においては、センサ信号処理IC10の出力端子Toと接地配線の間に挿入されるRCフィルタを構成するためのコンデンサCと直列に、インダクタM1が挿入されている。該インダクタM1は、コンデンサCからセンサ信号処理IC10に向かって流れようとするインパルス電流を抑制するものである。これによって、センサからの入力信号ラインに静電気が印加された時、センサ信号処理IC10のリードLやボンディングワイヤWがインダクタ成分を持っている場合であっても、該センサ信号処理IC10の破壊を起き難くすることができる。
【0034】
上記インダクタM1によるインパルス電流の抑制効果は、入出力端子に保護ダイオードが配置されていないセンサ信号処理ICは言うまでもなく、図1(a)に示すセンサ信号処理IC10のように、入力端子Tiと接地端子Tgの間および出力端子Toと接地端子Tgの間に、それぞれ、保護ダイオードD1、D2が挿入されてなる場合にも効果的である。センサ信号処理ICの静電気破壊対策として、図1(a)のように保護ダイオードD1、D2を入れた場合にもおいても、センサ信号処理IC10のリードLやボンディングワイヤWがインダクタ成分を持っていると、出力端子To側に挿入した保護ダイオードD2に電圧がかかり、その電圧が耐圧を超えると保護ダイオードD2が破壊してしまう。この場合にも、インダクタM1が、コンデンサCからセンサ信号処理IC10に向かって流れようとするインパルス電流を抑制し、保護ダイオードD2にかかる電圧を耐圧以下として、破壊に至らないようすることができる。
【0035】
また、図1に示すセンサ信号処理回路基板100には、2層以上の内部導体層33〜36を有してなる多層回路基板101が用いられている。該多層回路基板101は、図6の両側の表面にだけ表面導体層31,32が形成された両面回路基板91に較べて、配線密度と電子部品の実装密度を上げることができ、小型化が可能である。さらに、図1のセンサ信号処理回路基板100においては、上記したコンデンサCと直列に挿入されるインダクタM1が、内部導体層33,34を接続導体40で層間接続して、ループ状をなすように形成されている。該インダクタM1は、例えば表面導体層31の一層だけでインダクタを形成する場合に較べて基板占有面積が小さく、またチップ部品からなるインダクタを用いる場合のように基板表面の実装部品が追加されることもない。従って、該インダクタM1を付加することによって、回路基板が大型化したり、製造コストが増大したりすることもない。
【0036】
以上のようにして、図1に示すセンサ信号処理回路基板100は、センサとマイコン20の間に介在させる制御回路11が設けられたセンサ信号処理IC10が回路基板に表面実装されてなるセンサ信号処理回路基板であって、静電気によるセンサ信号処理IC10の破壊が起き難く、小型・低コストのセンサ信号処理回路基板とすることができる。
【0037】
次に、図1に示すセンサ信号処理回路基板100の細部について、より詳細に説明する。
【0038】
図2(a),(b)は、それぞれ、図1(b)に示す内部導体層33,34を接続導体40で層間接続してループ状をなすようにして形成した、インダクタM1a,M1bの模式的な上面図である。図2(a)のインダクタM1aは、巻き数が1より小さいループをなしており、図2(b)のインダクタM1bは、一巻き以上のループをなすコイル状に形成されている。図1のセンサ信号処理回路基板100において、センサ信号処理IC10の静電気破壊を防止するために必要なインダクタM1のインダクタンス値は、概ね数nH(ナノヘンリー)〜数十nHである。図1のセンサ信号処理回路基板100におけるインダクタM1は、必要なインダクタンス値に合わせて、図2(a),(b)に示すインダクタM1a,M1bのいずれのタイプであってもよい。例えば、図2(a)の巻き数が1より小さいインダクタM1aで上記インダクタンス値を確保しようとすると、図1(b)に示す長さd1は、概ね10mm以上となる。従って、大きなインダクタンス値が必要で、図1(b)に示す長さd1が確保できない場合には、図2(b)に示す一巻き以上のループをなすコイル状に形成されたインダクタM1bのタイプを採用するとよい。
【0039】
また、図1のセンサ信号処理回路基板100においては、図1(b)に示すように、センサ信号処理IC10とコンデンサCが、多層回路基板101の同じ側の表面に実装されている。そして、インダクタM1は、センサ信号処理IC10とコンデンサCが実装される表面に最も近い厚さ方向において隣り合った内部導体層33,34を接続導体40で層間接続して形成された構成となっている。これによれば、センサ信号処理IC10、コンデンサCおよびインダクタM1の各接続配線を短くできる。このため、該接続配線によるインダクタ成分を無視することができ、インダクタM1の設計が容易になると共に、他の配線パターン等への影響も小さくすることができる。
【0040】
尚、センサ信号処理IC10周りの配線パターンは、一般的に、複雑で混み合った状態となり易い。従ってそれらと干渉しないよう、図1(b)に示すように、インダクタM1が、センサ信号処理IC10の直下に掛からないように配置されることが好ましい。これは、次に例示するインダクタについても、同様である。
【0041】
図3と図4は、別の例を示す図で、それぞれ、センサ信号処理回路基板110とセンサ信号処理回路基板120の一部を拡大して模式的に示した断面図である。尚、図3と図4に示すセンサ信号処理回路基板110,120において、図1(b)に示したセンサ信号処理回路基板100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0042】
図3に示すセンサ信号処理回路基板110には、3層以上の内部導体層を有してなる多層回路基板111が用いられている。そして、図3のセンサ信号処理回路基板110においては、図1(a)のインダクタM1に相当するインダクタM2が、厚さ方向において隣り合わない内部導体層33,35を接続導体40で層間接続して形成され、インダクタM2の内側に、前記隣り合わない内部導体層33,35の中間の内部導体層34が配置された構成となっている。これによれば、上記インダクタM2の内側に配置される中間の内部導体層34が透磁率を上げるように作用するため、当該インダクタM2のインダクタンス値を大きくすることができ、インパルス電流の抑制効果も高めることができる。
【0043】
また、図4に示すセンサ信号処理回路基板120においては、センサ信号処理IC10とコンデンサCが、多層回路基板121の異なる側の表面に実装されている。そして、図1(a)のインダクタM1に相当するインダクタM3が、コンデンサCが実装される側の表面に最も近い厚さ方向において隣り合った内部導体層35,36を接続導体40で層間接続して形成された構成となっている。これによれば、センサ信号処理IC10とコンデンサCが多層回路基板121の異なる側の表面に実装されるため、例えばセンサ信号処理IC10周りの配線パターンが混み合う場合であっても、センサ信号処理IC10とコンデンサCの接続配線を短くすることができる。また、コンデンサCが実装される側の表面に最も近い厚さ方向において隣り合った内部導体層35,36を接続導体40で層間接続してインダクタM3が形成されているため、コンデンサCとインダクタM3の接続配線も短くすることができる。従って、該接続配線によるインダクタ成分を無視することができ、インダクタの設計が容易になると共に、他の配線パターン等への影響も小さくすることができる。
【0044】
図5も、別の例を示す図で、センサ信号処理回路基板130の回路構成の概略を示したブロック図である。尚、図5に示すセンサ信号処理回路基板130において、図1(a)に示したセンサ信号処理回路基板100と同様の部分については、同じ符号を付した。
【0045】
図1(a)のセンサ信号処理回路基板100では、抵抗Rと共にRCフィルタ回路を構成するコンデンサCが、センサ信号処理IC10の出力端子Toと多層回路基板101の接地配線(基板共通グランド)の間に挿入されていた。そして、インダクタM1が、該コンデンサCに直列になるように、センサ信号処理IC10の出力端子Toと多層回路基板101の接地配線の間で挿入されていた。
【0046】
一方、図5に示すセンサ信号処理回路基板130においては、抵抗Rと共にRCフィルタ回路を構成するコンデンサCaが、センサ信号処理IC10aの出力端子Toと多層回路基板131の電源配線(基板共通電源)の間に挿入されている。そして、インダクタM4が、該コンデンサCaに直列になるように、センサ信号処理IC10aの出力端子Toと多層回路基板131の電源配線の間で挿入されている。また、センサ信号処理IC10aにおいては、電源配線側の入力端子Tiと電源端子Tdの間および出力端子Toと電源端子Tdの間にも、それぞれ、当該センサ信号処理IC10aを静電気から保護するための保護ダイオードD3,D4が挿入されている。
【0047】
図5のセンサ信号処理回路基板130におけるインダクタM4は、図中のノードN3とコンデンサCaの間に挿入されているが、インダクタM4の挿入位置は、センサ信号処理IC10aの出力端子ToとノードN3の間、あるいはコンデンサCaと多層回路基板131の電源配線(基板共通電源)の間であってもよい。そして、図5のセンサ信号処理回路基板130におけるインダクタM4も、図1のセンサ信号処理回路基板100におけるインダクタM1と同様に、多層回路基板131の内部導体層を接続導体で層間接続して、ループ状をなすように形成する。
【0048】
図5のセンサ信号処理回路基板130におけるインダクタM4も、コンデンサCaからセンサ信号処理IC10aに向かって流れようとするインパルス電流を抑制できることは言うまでもない。これによって、センサからの入力信号ラインに静電気が印加された時、センサ信号処理IC10aのリードLaやボンディングワイヤWaがインダクタ成分を持っている場合であっても、該センサ信号処理IC10aの破壊を起き難くすることができる。また、上記インダクタM4によるインパルス電流の抑制効果は、入出力端子に保護ダイオードが配置されていないセンサ信号処理ICは言うまでもなく、図5に示すセンサ信号処理IC10aのように、入力端子Tiと電源端子Tdの間および出力端子Toと電源端子Tdの間に、それぞれ、保護ダイオードD3、D4が挿入されている場合にも効果的である。この場合にも、インダクタM4が、コンデンサCaからセンサ信号処理IC10aに向かって流れようとするインパルス電流を抑制し、保護ダイオードD4にかかる電圧を耐圧以下として、破壊に至らないようすることができる。
【0049】
以上のようにして、図1〜図5で例示したセンサ信号処理回路基板100,110,120,130は、いずれもセンサとマイコン20の間に介在させる制御回路11が設けられたセンサ信号処理IC10,10aが回路基板101,111,121,131に表面実装されてなるセンサ信号処理回路基板であって、静電気によるセンサ信号処理IC10,10aの破壊が起き難く、小型・低コストのセンサ信号処理回路基板とすることができる。
【0050】
従って、上記センサ信号処理回路基板は、静電気やノイズレベルの高い過酷な環境で使用される、車載用の電子制御装置に用いられて好適である。
【符号の説明】
【0051】
90,100,110,120,130 センサ信号処理回路基板
101,111,121,131 多層回路基板
31,32 表面導体層
33〜36 内部導体層
40 接続導体
10,10a センサ信号処理IC
11 制御回路
D1〜D4 保護ダイオード
20 マイコン
C,Ca コンデンサ
M1〜M4,M1a,M1b インダクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサとマイコンの間に介在させる制御回路が設けられたセンサ信号処理ICと、該センサ信号処理ICの出力端子と接地配線または電源配線のいずれか一方の間に挿入されるコンデンサとが、回路基板に表面実装されてなるセンサ信号処理回路基板であって、
前記回路基板が、2層以上の内部導体層を有してなる多層回路基板であり、
前記接地配線または電源配線のいずれか一方と前記センサ信号処理ICの出力端子の間で、前記内部導体層を層間接続して形成されたループ状をなすインダクタが、前記コンデンサに直列に挿入されてなることを特徴とするセンサ信号処理回路基板。
【請求項2】
前記センサ信号処理ICにおいて、
入力端子と接地端子の間および出力端子と接地端子の間、または入力端子と電源端子の間および出力端子と電源端子の間の少なくとも一方に、それぞれ、保護ダイオードが挿入されてなることを特徴とする請求項1に記載のセンサ信号処理回路基板。
【請求項3】
前記センサ信号処理ICと前記コンデンサが、前記多層回路基板の同じ側の表面に実装され、
前記インダクタが、前記センサ信号処理ICと前記コンデンサが実装される表面に最も近い厚さ方向において隣り合った内部導体層を層間接続して形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ信号処理回路基板。
【請求項4】
前記多層回路基板が、3層以上の内部導体層を有してなり、
前記インダクタが、厚さ方向において隣り合わない内部導体層を層間接続して形成され、
前記インダクタの内側に、前記隣り合わない内部導体層の中間の内部導体層が配置されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ信号処理回路基板。
【請求項5】
前記センサ信号処理ICと前記コンデンサが、前記多層回路基板の異なる側の表面に実装され、
前記インダクタが、前記コンデンサが実装される側の表面に最も近い厚さ方向において隣り合った内部導体層を層間接続して形成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ信号処理回路基板。
【請求項6】
前記インダクタが、前記センサ信号処理ICの直下に掛からないように配置されてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のセンサ信号処理回路基板。
【請求項7】
前記インダクタが、一巻き以上のループをなすコイル状であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のセンサ信号処理回路基板。
【請求項8】
前記センサ信号処理回路基板が、車載用の電子制御装置に用いられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のセンサ信号処理回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−177646(P2010−177646A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21873(P2009−21873)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】