説明

センサ挿入装置およびセンサ挿入システム

【課題】柔軟な生体センサであっても皮下に挿入した後に変形することなく留置させることができる。
【解決手段】皮下に挿入されて生体情報を測定するための短冊状のセンサ片3をその長軸方向に、先端から抜き出し可能に収容する細長い針状部12を備え、該針状部12の先端に、該針状部12内に収容するセンサ片3の短軸と略平行な面からなる刃面15が設けられているセンサ挿入装置10を提供する。本発明によれば、刃面15が穿刺孔を押し広げる方向に対して略垂直にセンサ片3が挿入されることにより、センサ片3に周辺組織から表面方向の押圧力が作用することを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ挿入装置およびセンサ挿入システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血中の糖濃度などを測定する生体センサを皮下に埋め込むデバイスとして、中空の針の内部に生体センサを装着した状態で針を皮下に穿刺し、針のみを皮下から引き抜くことにより、生体センサを皮下に挿入するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−507456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プラスチック基板などから形成された柔軟な生体センサを特許文献1のデバイスを使用して皮下に挿入した場合、針を皮下から引き抜いた後にそれまで針よって押し広げられていた皮膚の切り込みが閉じるのに伴って生体センサが捩れたり湾曲したりして正常に作動しなくなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、柔軟な生体センサであっても皮下に挿入した後に変形することなく留置させることができるセンサ挿入装置およびセンサ挿入システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、皮下に挿入されて生体情報を測定するための短冊状のセンサ片をその長軸方向に、先端から抜き出し可能に収容する細長い針状部を備え、該針状部の先端に、該針状部内に収容する前記センサ片の短軸と略平行な面からなる刃面が設けられているセンサ挿入装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、センサ片を収容した針状部を皮膚に穿刺した後、センサ片に対して針状部を穿刺方向と反対方向に引き抜くことにより、センサ片を皮下に挿入することができる。
この場合に、針状部が皮膚に穿刺される過程において皮膚に形成された穿刺孔は刃面によって押し広げられ、押し広げられた穿刺孔内にセンサ片が挿入される。そして、針状部が引き抜かれた後に穿刺孔は皮下の周辺組織からの押圧力によって閉じられる。
【0008】
このときに、穿刺孔が押し広げられる方向に対して略垂直にセンサ片が挿入されるので、針状部を引き抜いた後にセンサ片は周辺組織によって厚さ方向に挟まれる。これにより、皮下においてセンサ片に対して周辺組織から表面方向の押圧力が作用することが防止されるので、柔軟なセンサ片を備えた生体センサであっても変形することなく皮下に留置させることができる。
【0009】
上記発明においては、前記針状部が、その長手方向に沿って全長にわたり壁厚方向に貫通するスリットを備え、該スリットが、前記センサ片の厚さ寸法より大きい幅寸法を有していてもよい。
このようにすることで、センサ片の基端側に、操作者による取り扱いを容易にするための、センサ片よりも大きな幅寸法を有する把持片が備えられた生体センサであっても、センサ片を皮膚に穿刺した後にスリット内に把持片を通過させることによりセンサ片を皮下に残したまま針状部のみを皮膚から引き抜くことができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記スリットが、前記針状部内に収容される前記センサ片と短軸方向に隣接する位置に形成されていてもよい。
このようにすることで、センサ片と把持片とが同一平面上に形成された生体センサが使用される場合に、皮下に挿入されたセンサ片の姿勢を変更することなく針状部材を皮下から引き抜くことができる。
【0011】
また、本発明は、皮下に挿入されて生体情報を測定するための短冊状のセンサ片を備える生体センサと、前記センサ片をその長軸方向に先端から抜き出し可能に収容する細長い針状部を備えるセンサ挿入装置とを備え、前記針状部は、前記センサ片を、該センサ片の短軸が前記針状部の長手方向と略直交する所定の方向に沿う方向に収容し、前記針状部の先端に、前記所定の方向と略平行な面からなる刃面が設けられているセンサ挿入システムを提供する。
【0012】
上記発明においては、前記生体センサが、前記センサ片の基端側において該センサ片と同一平面上に一体に形成され、前記センサ片の前記短軸方向に該センサ片よりも大きな寸法を有する平板状の把持片を備え、前記針状部が、該針状部内に収容される前記センサ片と前記短軸方向に隣接する位置において、長手方向に沿って全長にわたり壁厚方向に貫通するスリットを備え、該スリットが、前記センサ片の厚さ寸法より大きな幅寸法を有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、柔軟な生体センサであっても皮下に挿入した後に変形することなく留置させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る生体センサおよびセンサ挿入装置を備えるセンサ挿入システムの全体構成図である。
【図2】図1のセンサ挿入装置の針状部の拡大図である。
【図3】図2の針状部によって皮膚に形成される切り込みと該切り込み内に挿入されるセンサ片との位置関係を説明する図であり、(a)針状部が皮下に挿入されている状態と(b)針状部が引き抜かれた後のセンサ片のみが皮下に挿入されている状態とを示している。
【図4】図1のセンサ挿入装置の針状部の変形例を示す(a)正面図、(b)側面図、および(c)(b)のIV−IV断面図である。
【図5】図1のセンサ挿入装置の針状部のもう1つの変形例を示す(a)、正面図(b)側面図、および(c)(b)のV−V断面図である。
【図6】図1のセンサ挿入装置の針状部のもう1つの変形例を示す(a)正面図、(b)側面図、および(c)(b)のVI−VI断面図である。
【図7】図1の生体センサおよびセンサ挿入装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態に係るセンサ挿入システム100について図面を参照して説明する。
本実施形態に係るセンサ挿入システム100は、図1に示されるように、生体センサ1と該生体センサ1を皮下に挿入するセンサ挿入装置10とを備えている。
【0016】
生体センサ1は、平板状の基板から一体成形された把持片2とセンサ片3とを備えている。基板としては、センサ片3が皮下に挿入される際の皮膚組織への影響が低減されるように、プラスチックなどの可撓性を有する材料からなり十分に薄いものが使用される。
【0017】
把持片2は、センサ挿入装置10が生体センサ1を生体に挿入する際にセンサ挿入装置10によって把持される部分である。把持片2は矩形状であり、操作者による把持が容易になるように、把持片2の各辺はセンサ片3の幅寸法よりも十分に大きな寸法を有している。
センサ片3は、把持片2の一の端辺部がその長手方向に延長されてなる短冊状である。センサ片3には、皮下の血液や間質液などの被検液と接触させられることにより該被検液の情報、例えば、血液中の糖濃度を生体情報として測定する回路(図示略)が形成されている。
【0018】
センサ挿入装置10は、把持片2を保持するプレート部11と、センサ片3を収容する針状部12とを備えている。プレート部11および針状部12は一枚の基板から一体成形され、針状部12を皮膚に穿刺可能な十分な強度を有する材料、例えば、金属からなる。
【0019】
プレート部11は、把持片2の表面を支持する矩形状の支持面11aと、該支持面11aの対向する両端部分に設けられた保持枠11bとを備えている。保持枠11bは、基板の端辺部分が、把持片2の厚さ寸法よりも若干大きい隙間を空けて折り返されることにより形成されている。プレート部11は、隙間からなる溝11c内に把持片2が挿入されることにより該把持片2を保持する。
【0020】
針状部12は、一方の保持枠11bが該保持枠11bの長手方向に延長されてなる略筒状の胴部13を備えている。該胴部13には溝11cが延長されてなるスリット14が長手方向に全長にわたって形成されている。すなわち、スリット14は、胴部13を構成する筒状の側壁を壁厚方向(図2の矢印Z参照。)に貫通している。胴部13は、プレート部11に保持された把持片2から一方の保持枠11bに沿って延びるセンサ片3を収容する。すなわち、胴部13内においてセンサ片3は、該センサ片3の短軸Xが支持面11aと略平行となるように配置される。また、胴部13内に収容されたセンサ片3と、該センサ片3の短軸方向の把持片2側に隣接する位置にスリット14が配置される。
【0021】
針状部12の先端には、該針状部12の長軸Y方向に対して斜めに形成された胴部13の先端面からなる刃面15が設けられている。該刃面15には、スリット14および溝11cと連通する開口15aが形成されている。これにより、把持片2を支持面11aが支持され、センサ片3が針状部12内に収容された状態から、センサ挿入装置10を針状部12の長軸Y方向に沿って生体センサ1に対して移動させたときに、センサ片3および把持片2がそれぞれ刃面15の開口15a内またはスリット14内を通過させられて、センサ片3が開口15aから抜き出し可能となっている。
【0022】
ここで、刃面15は、図2に示されるように、支持面11aに対して胴部13の長手方向に傾斜した面からなる。すなわち、刃面15は、胴部13内に収容されたセンサ片3の短軸と略平行な面からなる。刃面15の先端部は、V字形状に切断されることにより尖鋭な刃先16が形成されている。
【0023】
次に、このように構成されたセンサ挿入システム100の作用について説明する。
本実施形態に係るセンサ挿入システム100を用いて生体情報を測定するには、センサ片3が針状部12内に収容されるように、把持片2の端辺部を保持枠11bの溝11c内に挿入することにより生体センサ1をセンサ挿入装置10に装着する。次に、針状部12の先端部を皮膚に穿刺し、センサ片3を皮下に残したまま針状部12を穿刺時とは反対方向に引き抜くことにより、針状部2を皮下から引き抜いてセンサ挿入装置10を生体センサ1から取り外すことができる。センサ3を引き抜く際に、図示しない器具が使用されてもよい。
【0024】
そして、センサ片3を一定時間皮下に留置することによりセンサ片3によって生体情報を測定することができる。一定時間留置した後、操作者は、把持片2を把持して引っ張ることによりセンサ片3を皮膚から引き抜く。
なお、針状部12を皮膚に穿刺する際には、バネの付勢力を利用してセンサ挿入装置10を皮膚に穿刺する図示しない器具が使用されてもよい。
【0025】
この場合に、本実施形態によれば、針状部12を皮下に挿入する過程において、刃先16の形状に沿って皮膚に形成された穿刺孔Aは、図3(a)に示されるように、刃面15によって針状部12内に収容されたセンサ片3の表面に対して略垂直な方向(図中の白抜き矢印参照。)に押し広げられる。したがって、針状部12を皮下から引き抜いた後に穿刺孔Aが周辺組織からの押圧力によって塞がれるときに、図3(b)に示されるように、センサ片3は周辺組織によって厚さ方向に挟まれて穿刺孔Aの形状に沿う方向に配置されることとなる。
【0026】
これにより、皮下においてセンサ片3には周辺組織からセンサ片3の表面に沿う方向の力が作用することが防止されるので、センサ片3に捩じれや湾曲などの変形を生じさせることなくセンサ片3を皮下に留置して正常に作動させることができるという利点がある。
【0027】
なお、本実施形態において、上述した針状部12の形状は一例であって、針状部12は、生体センサ3を長手方向に沿って収容可能な細長い形状であり、刃面15がセンサ片3の短軸Xに対して略平行な面からなっていればよい。針状部12の形状の他の例を図4〜図6に示す。
【0028】
図4に示される針状部12は、円筒状の胴部13を有し、刃面15が、胴部13の長手方向に対して斜めに形成された先端面からなる。
図5に示される針状部12は、四角筒状の胴部13を有し、刃面15が、胴部13の長手方向に対して斜めに形成された先端面からなる。
【0029】
図6に示される針状部12は、正面が開放された横断面形状が略コの字状の胴部13を有している。刃面15は、胴部13の長手方向に対して斜めに形成された胴部3の側壁の先端面からなる。スリットに代えて、支持面11a側に向けられた胴部13の側壁が、収容されたセンサ片3に干渉しないように低く形成されている。刃面15の先端側には直線状の刃先16を有する平刃が設けられている。
【0030】
また、本実施形態においては、生体センサ1として、把持片2とセンサ片3とが同一平面上に形成されたものを例示したが、図7に示されるように、把持片2とセンサ片3とが角度(図示する例では90°)をなした異なる平面上に形成されていてもよい。この場合には、把持片2とセンサ片3とが形成された2つの平面がなす角度に応じてスリット14の位置が変更される。
このようにしても、針状部12内に収容されたセンサ片3の短軸Xと刃面15とが略平行となり、皮下の周辺組織からセンサ片3に捩じったり湾曲させたりする方向の押圧力が作用することを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 生体センサ
2 把持片
3 センサ片
10 センサ挿入装置
11 プレート部
11a 支持面
11b 保持枠
11c 溝
12 針状部
13 胴部
14 スリット
15 刃面
15a 開口
16 刃先
100 センサ挿入システム
A 穿刺孔
X 短軸
Y 長軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮下に挿入されて生体情報を測定するための短冊状のセンサ片をその長軸方向に、先端から抜き出し可能に収容する細長い針状部を備え、
該針状部の先端に、該針状部内に収容する前記センサ片の短軸と略平行な面からなる刃面が設けられているセンサ挿入装置。
【請求項2】
前記針状部が、その長手方向に沿って全長にわたり壁厚方向に貫通するスリットを備え、
該スリットが、前記センサ片の厚さ寸法より大きい幅寸法を有する請求項1に記載のセンサ挿入装置。
【請求項3】
前記スリットが、前記針状部内に収容される前記センサ片と短軸方向に隣接する位置に形成されている請求項2に記載のセンサ挿入装置。
【請求項4】
皮下に挿入されて生体情報を測定するための短冊状のセンサ片を備える生体センサと、
前記センサ片をその長軸方向に先端から抜き出し可能に収容する細長い針状部を備えるセンサ挿入装置とを備え、
前記針状部は、前記センサ片を、該センサ片の短軸が前記針状部の長手方向と略直交する所定の方向に沿う方向に収容し、
前記針状部の先端に、前記所定の方向と略平行な面からなる刃面が設けられているセンサ挿入システム。
【請求項5】
前記生体センサが、前記センサ片の基端側において該センサ片と同一平面上に一体に形成され、前記センサ片の前記短軸方向に該センサ片よりも大きな寸法を有する平板状の把持片を備え、
前記針状部が、該針状部内に収容される前記センサ片と前記短軸方向に隣接する位置において、長手方向に沿って全長にわたり壁厚方向に貫通するスリットを備え、
該スリットが、前記センサ片の厚さ寸法より大きな幅寸法を有する請求項4に記載のセンサ挿入システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−187306(P2012−187306A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54275(P2011−54275)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】