説明

センサ装置及びロボット装置

【課題】検出部から出力される原検出信号から可撓体の振動に起因するノイズ成分を良好に除去し、フィルタ処理により得られる検出信号の位相の遅れを抑制する。
【解決手段】検出部101は、被測定対象の状態により変形する可撓体と、可撓体の変形量を検出し、検出結果を示す原検出信号102を出力するセンサとを有する。フィルタ部103は、フィルタ係数を用いて原検出信号102をフィルタ処理して得られる検出信号107を出力する。演算装置104は、原検出信号102に含まれる可撓体の振動数を演算により求める。変更部106は、フィルタ部103のフィルタ係数を変更して、フィルタ部103を、演算装置104により演算された振動数fを減衰させるフィルタとして機能させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力覚センサやトルクセンサ等の検出部を有するセンサ装置及びセンサ装置を有するロボット装置に関するもので、詳しくは安定かつ高速に位置決めを行うロボット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、組み付け用のロボット装置は、複数のリンク及びハンドを有するロボットアーム本体を備え、リンク同士が関節部で揺動可能に連結されている。この関節部には、サーボモータが設けられており、サーボモータの駆動により位置制御が行われている。
【0003】
この種のロボット装置は、リンクに作用する関節トルクを検出するトルクセンサを備え、検出したトルク値に基づいてトルク指令値を生成し、サーボモータを制御している(特許文献1参照)。このトルクセンサは、中心部から放射状に延びる複数の梁及び梁を連結するリング状の枠で構成された可撓体と、可撓体の変形量(撓み量)を検出するセンサとを有して構成され、可撓体の変形量に対応するトルクを示す検出信号を出力する。
【0004】
また、ロボット装置は、ハンドが把持対象物を把持した際にハンドが受ける力を検出する力覚センサを備えている。この力覚センサは、ハンドに把持された把持対象物によりハンドが受ける力に応じて変形する可撓体と、可撓体の変形量を検出するセンサを備えている。そして、力覚センサは、センサの検出結果を示す検出信号を出力するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−118275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した力覚センサやトルクセンサ等の検出部を有するロボット装置では、ロボットアーム本体が、ある固有振動数で振動するため、検出部の可撓体もこの固有振動数で振動する。このように可撓体が振動すると、出力される原検出信号には、信号成分に固有振動数で振動するノイズ成分が重畳することとなる。このノイズ成分が重畳されている原検出信号を用いて各サーボモータを制御したのでは、ハンドや各リンクの位置制御の精度が低下してしまう。
【0007】
図14には、検出部からの原検出信号を説明するための図を示している。図14(a)に示すように、ロボットアーム本体の振動に起因するノイズ成分Nは、信号成分Sの周波数よりも高い周波数帯域で発生することが判明した。そこで、検出部の原検出信号から特定の周波数成分f1を除去する処理を施して検出信号を出力するフィルタを用いることが考えられる。このフィルタを用いる場合、固有振動数で振動するノイズ成分Nの周波数f1が変化しなければ、原検出信号からノイズ成分Nを除去することが可能である。
【0008】
しかし、この固有振動数に起因するノイズ成分Nの周波数は、ハンドで把持している把持対象物の重量に応じて変化するものである。例えば、図14(b)に示すように、周波数f1とは異なる周波数f2に変化することがある。したがって、このフィルタでは周波数が変化した場合にノイズ成分Nを除去することができない。
【0009】
そこで、検出部にて出力された原検出信号から周波数が変化する固有振動数のノイズ成分を除去するために、ノイズ成分Nの取り得る範囲の周波数帯域Wを減衰させる図14(c)に示すような周波数特性を有するローパスフィルタ等を適用することが考えられる。このフィルタを用いれば、カットオフ周波数fc以下の周波数成分は減衰量が低いので、検出信号における信号成分Sは通過し、ノイズ成分Nの周波数が信号成分Sよりも高い周波数帯域Wで変化してもノイズ成分Nはカットされる。
【0010】
このフィルタを用いる場合、ノイズ成分Nの変化する周波数f1,f2に対応するために、カットオフ周波数fcをできるだけ低い周波数に設定しておく必要がある。したがって、カットオフ周波数fcの近傍に検出信号の信号成分Sが存在することとなる。
【0011】
しかし、フィルタには、図14(d)に示すように、位相の周波数特性が存在するため、フィルタのカットオフ周波数fcの近傍の周波数帯では、位相がずれてしまい、フィルタ処理された検出信号の信号成分Sは、常に位相の遅れが生じる。したがって、位相の遅れた検出信号Sでサーボモータを制御することとなり、目標に対して遅れのある応答となってしまう。
【0012】
したがって、本発明は、検出部から出力される原検出信号から可撓体の振動に起因するノイズ成分を良好に除去し、フィルタ処理により得られる検出信号の位相の遅れを抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のセンサ装置は、被測定対象の状態により変形する可撓体、及び前記可撓体の変形量を検出し、検出結果を示す原検出信号を出力するセンサを有する検出部と、フィルタ係数を用いて前記原検出信号をフィルタ処理して得られる検出信号を出力するデジタルフィルタと、前記原検出信号に含まれる前記可撓体の振動数を演算により求める演算手段と、前記デジタルフィルタのフィルタ係数を変更して、前記デジタルフィルタを、前記演算手段により演算された前記振動数を減衰させるフィルタとして機能させる変更手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のセンサ装置は、被測定対象の状態により変形する可撓体、及び前記可撓体の変形量を検出し、検出結果を示す原検出信号を出力するセンサを有する検出部と、フィルタ係数を用いてフィルタ処理するフィルタ部を複数有し、前記原検出信号を前記複数のフィルタ部でフィルタ処理して得られる検出信号を出力するデジタルフィルタと、前記原検出信号に含まれる前記可撓体の複数の振動数のそれぞれを演算により求める演算手段と、前記各フィルタ部のフィルタ係数を変更して、前記デジタルフィルタを、前記演算手段により演算された前記各振動数を減衰させるフィルタとして機能させる変更手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のロボット装置は、関節部で連結された複数のリンク、及び前記複数のリンクのうち、先端部に配置された先端リンクに設けられ、把持対象物を把持するハンドを有するロボットアーム本体と、前記複数のリンク及び前記ハンドを駆動する複数のアクチュエータと、前記ハンドに作用する力又はトルクにより変形する可撓体、及び前記可撓体の変形量を検出し、検出結果を示す原検出信号を出力するセンサを有する力覚センサと、フィルタ係数を用いて前記原検出信号をフィルタ処理して得られる検出信号を出力するデジタルフィルタと、前記原検出信号に含まれる前記可撓体の振動数を演算により求める演算手段と、前記デジタルフィルタのフィルタ係数を変更して、前記デジタルフィルタを、前記演算手段により演算された前記振動数を減衰させるフィルタとして機能させる変更手段と、前記デジタルフィルタから出力される検出信号を用いて前記アクチュエータを制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明のロボット装置は、関節部で連結された複数のリンク、及び前記複数のリンクのうち、先端部に配置された先端リンクに設けられ、把持対象物を把持するハンドを有するロボットアーム本体と、前記複数のリンク及び前記ハンドを駆動する複数のアクチュエータと、前記リンクに作用するトルクにより変形する可撓体、及び前記可撓体の変形量を検出し、検出結果を示す原検出信号を出力するセンサを有するトルクセンサと、フィルタ係数を用いて前記原検出信号をフィルタ処理して得られる検出信号を出力するデジタルフィルタと、前記原検出信号に含まれる前記可撓体の振動数を演算により求める演算手段と、前記デジタルフィルタのフィルタ係数を変更して、前記デジタルフィルタを、前記演算手段により演算された前記振動数を減衰させるフィルタとして機能させる変更手段と、前記デジタルフィルタから出力される検出信号を用いて前記アクチュエータを制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、検出部における可撓体の振動数が変動した場合においても、位相の遅れが抑制され、検出部が出力した原検出信号に含まれるノイズを良好に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】検出部の説明図であり、(a)は力覚センサである検出部を示す図、(b)はトルクセンサである検出部を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第7実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第8実施形態に係るロボット装置の概略構成を示す斜視図である。
【図10】ロボット装置のハンド近傍の拡大斜視図である。
【図11】本発明の第8実施形態に係るロボット装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】各駆動演算部の概略構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第9実施形態に係るロボット装置に搭載されたセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。
【図14】検出部からの原検出信号を説明するための図であり、(a)は原検出信号に含まれる信号成分とノイズ成分の周波数特性の概略図、(b)は原検出信号に含まれる信号成分とノイズ成分の周波数特性の概略図である。(c)はローパスフィルタの周波数特性の概略図、(d)はローパスフィルタの位相特性の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。センサ装置100は、検出部101と、デジタルフィルタであるフィルタ部103と、演算手段である演算装置104と、変更手段である変更部106とを備えている。
【0021】
検出部101は、図2(a)に示す力覚センサである。図2(a)に示す力覚センサである検出部101は、可撓体1602と、センサとしての歪センサ1603とをそれぞれ4つ有している。各可撓体1602は、ケース1601に固定され、各歪センサ1603は、各可撓体1602に固定されている。各可撓体1602には、可撓体1602が被測定対象1605の状態に応じて変形するように、取付構造体1604を介して被測定対象1605が固定されている。歪センサ1603は、可撓体1602の変形量として歪量(撓み量)を検出し、検出結果を示す原検出信号102(図1)を出力する。
【0022】
4つの歪センサ1603の4つの出力を演算することで、被測定対象1605の上下動の力と、倒れのトルクの3成分を算出することが可能である。可撓体1602と歪センサ1603を増やすことで検出成分を増やすことも可能である。したがって、図2に示す検出部101である力覚センサは、4つの原検出信号102を出力することとなるが、各原検出信号102におけるノイズの除去動作は同じであるので、以下、1つの原検出信号102について説明する。
【0023】
フィルタ部103は、例えばFIRやIIR等のデジタルフィルタであり、フィルタ係数を用いて原検出信号102をフィルタ処理して検出信号107を出力する。このフィルタ部103により、原検出信号102に含まれる信号成分に重畳するノイズを低減させた検出信号107を得ることが可能である。しかし、フィルタ効果が強すぎると原検出信号102に対してフィルタ処理後の検出信号107の位相が遅れてしまうことがある。更に、原検出信号102に含まれるノイズの振動数は常に一定であるとは限らない。
【0024】
そこで、演算装置104は、原検出信号102に含まれる可撓体1602の振動数を演算により求めている。ここで、原検出信号102は、可撓体1602のバネ剛性kと、取付構造体1604及び被測定対象1605の合計重量mで決まる固有振動数fのノイズを少なからず含んでいる。k、m、fの関係式は以下の(式1)の通りである。
f=(1/2π)√(k/m) (式1)
【0025】
なお、重力加速度をg、検出信号107から求まる力をFとすると、重量mは、以下の(式2)の関係式で求まる。
m=F/g (式2)
【0026】
演算装置104は、記憶部108を有している。記憶部108には、力Fと振動数fとの相関関係を示す関係式が予め記憶されている。そして、演算装置104は、検出信号107を入力し、記憶部108に記憶されている関係式を用いてノイズの振動数fを求める。具体的には、演算装置104は、入力した検出信号107から、被測定対象1605に作用する力Fを求め、求めた力Fから重量mを求め、求めた重量mから振動数fを求める。ここで、バネ剛性k及び重力加速度gの値は、予め演算装置104に設定されている。なお、式2を式1に予め代入しておけば、演算処理は容易になる。
【0027】
変更部106は、演算装置104で演算された振動数fを示す信号を入力し、デジタルフィルタであるフィルタ部103のフィルタ係数を変更して、フィルタ部103を、演算装置104により演算された振動数fを減衰させるフィルタとして機能させる。特に、変更部106は、フィルタ部103を、振動数fを減衰させるノッチフィルタとして機能させるのが好適である。
【0028】
このように、変更部106は、演算された振動数fを示す信号に基づいてフィルタ部103のフィルタ係数を変更することで、フィルタ部103は、振動数fを除去するのに適したフィルタとなる。したがって、フィルタ特性が固定のローパスフィルタを用いてノイズを除去する場合よりも、原検出信号102に対する検出信号107の位相の遅れが抑制され、フィルタ部103により原検出信号102からノイズ除去された検出信号107を得ることができる。また、デジタルフィルタであるフィルタ部103として、位相特性のよいIIRを用いると、信号成分の位相の遅れを効果的に抑制することができる。
【0029】
なお、検出部101が図2(b)に示すトルクセンサである場合についても適用可能である。図2(b)に示すトルクセンサは、可撓体1702と、可撓体1702の変形量Δxを検出し、検出結果を示す原検出信号102を出力するセンサ1703とをそれぞれ2つ有している。各可撓体1701には、可撓体1701が被測定対象(不図示)の状態に応じて変形するように、被測定対象が固定されている。
【0030】
そして、(式1)の重量mを、トルクセンサに取り付けられた構造体のイナーシャIに置き換え、剛性kをトルクセンサのねじり剛性Kに置き換えた関係式である以下の(式3)を用いても、固有振動数fは計算可能である。
f=(1/2π)√(K/I) (式3)
【0031】
また、イナーシャIは、トルクセンサのトルク値から求められる。式3に示す関係式は予め記憶部108に記憶されており、演算装置104は、検出信号107を入力し、記憶部108に記憶されている関係式を用いてノイズの振動数fを求める。このように、簡単な計算で原検出信号102のノイズの振動数105を求めることができるので、演算装置104の計算性能を低減できる。つまり演算装置104をコストダウンできるのである。
【0032】
同様に、検出部101が力覚センサの場合に、力覚センサにより検出されるトルクを示す検出信号からも演算装置104により振動数fを演算することが可能である。以上、検出部101が、力を検出するものであっても、トルクを検出するものであっても、上記構成により、可撓体の振動に起因するノイズを除去することが可能となる。
【0033】
なお、図示は省略するが、関係式の代わりに、関係式と同様の結果が得られる、力(又はトルク)と振動数との相関関係を示すテーブルを用いてもよい。この場合も、予め記憶部108にテーブルを記憶させておけばよい。そして、演算装置104は、テーブルを用いて振動数fを求めればよい。
【0034】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るセンサ装置について詳細に説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。なお、本第2実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する。本第2実施形態では、演算装置104が、フィルタ部103及び変更部106に対して、別体に組み込まれる場合について説明する。演算装置104は、上記第1実施形態と同様の演算処理を行い、演算された振動数fを示す信号を出力する。
【0035】
本第2実施形態のセンサ装置100Aは信号処理回路203を備え、信号処理回路203が、検出部101、フィルタ部103及び変更部106を有している。つまり、演算装置104は、信号処理回路203とは別体に設けられている。
【0036】
そこで、本第2実施形態では、センサ装置100Aは、演算装置104に接続される第一の通信部201と、変更部106に接続される第二の通信部202を備えている。そして、通信部201,202同士で有線又は無線で互いに通信を行うように構成されている。
【0037】
つまり、第一の通信部201は、第一の送信手段及び第一の受信手段として機能し、第二の通信部202は、第二の送信手段及び第二の受信手段として機能する。そして、信号処理回路203は、第二の通信部202を有して構成され、第一の通信部201は、信号処理回路203と別体に設けられている。
【0038】
第一の送信手段として機能している第一の通信部201は、演算装置104により演算された振動数fを示す信号を入力し、当該振動数fを示す信号を第二の受信手段として機能する第二の通信部202に有線又は無線で送信する。振動数fを示す信号を受信した第二の通信部202は、受信した振動数fを示す信号を変更部106に出力する。変更部106は、第二の通信部202から入力した振動数fを示す信号に基づいてフィルタ部103のフィルタ係数を変更する。この構成により、フィルタ部103により原検出信号102から良好にノイズ除去された検出信号107が得られる。
【0039】
また、第二の送信手段として機能する第二の通信部202は、第一の受信手段として機能する第一の通信部201に検出信号107を送信し、第一の通信部201は、演算装置104に検出信号107を送る。そして、演算装置104は、入力した検出信号107より記憶部108に記憶した関係式又はテーブルを用いて、振動数fを演算する。
【0040】
以上、第一の通信部201と第二の通信部202により通信がなされることにより、演算装置104を構成するコントローラと変更部106及びフィルタ部103を構成するコントローラとで分散処理を行うことが可能となる。これにより、演算装置104の計算負荷にかかわらず、原検出信号102を高速にフィルタ処理することが可能となる。
【0041】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るセンサ装置について詳細に説明する。図4は、本発明の第3実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。なお、本第3実施形態において、上記第1、第2実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0042】
本第3実施形態のセンサ装置100Bは、更に第三の通信部302及び第一の記録装置303を備えている。検出部101からの原検出信号102は、フィルタ部103によってノイズを除去する処理がなされ、検出信号107となる。第二の送信手段として機能している第二の通信部202は、原検出信号102及び検出信号107の少なくとも一方を入力し、測定データ301を示す信号として第三の通信部302に送信する。
【0043】
第三の通信部302に送信された測定データ301を示す信号は第一の記録装置303に出力され、第一の記録装置303に測定データ301が記録される。つまり、第三の通信部302は、測定データを示す信号を受信する第三の受信手段として機能する。
【0044】
以上、本第3実施形態では、上記第1及び第2実施形態と同様の効果を奏する。また、測定データ301を第一の記録装置303に入力する手段として第二の通信部202、第三の通信部302を結線しているが、この配線は第一の通信部201と第二の通信部202の間の結線と共用とすることが可能である。この構成にすることで別途配線を省略できる。
【0045】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係るセンサ装置について詳細に説明する。図5は、本発明の第4実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。なお、本第4実施形態において、上記第1〜第3実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0046】
図5に示すセンサ装置100Cは、検出部101、デジタルフィルタとしてのフィルタ部103、演算手段としての演算装置104C及び変更手段としての変更部106を備えているが、演算装置104Cの演算処理が上記第1〜第3実施形態と異なる。
【0047】
演算装置104Cは、原検出信号102を入力して高速フーリエ変換により時間領域信号から周波数領域信号に変換する演算を行う。そして、演算装置104Cは、演算結果から原検出信号102に含まれる信号成分の周波数帯域を超える周波数であってピーク値となる周波数成分を、振動数fとして抽出し、振動数fを示す信号を出力する。
【0048】
つまり、演算装置104Cは、入力した原検出信号102のFFT解析を行う。FFT解析は、原検出信号102を入力として高速フーリエ変換し、事前にノイズの振動数fとして想定されている振動数帯、つまり信号成分の周波数帯域を超える周波数におけるピーク値を検出する。そして、ピーク値を示す振動数をノイズの振動数fと判断するものである。そして、例えば平均信号レベルの2倍程度に閾値を設け、この閾値を超えるものをピーク値と判断する。
【0049】
変更部106は、上記第1実施形態と同様に、演算装置104Cからノイズの振動数fを示す信号を入力し、振動数fを示す信号に基づいてフィルタ部103のフィルタ係数を変更する。この構成により、上記第1実施形態と同様に、原検出信号102に対する検出信号107の位相の遅れが抑制され、フィルタ部103により原検出信号102から良好にノイズ除去された検出信号107が得られる。
【0050】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係るセンサ装置について詳細に説明する。図6は、本発明の第5実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。なお、本第5実施形態において、上記第1〜第4実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0051】
本第2実施形態では、演算装置104Cが、フィルタ部103及び変更部106に対して、別体に組み込まれる場合について説明する。演算装置104Cは、上記第4実施形態と同様の演算処理を行い、振動数fを示す信号を出力する。
【0052】
本第5実施形態のセンサ装置100Dは信号処理回路203Dを備え、信号処理回路203が、検出部101、フィルタ部103及び変更部106を有している。つまり、演算装置104Cは、信号処理回路203とは別体に設けられている。
【0053】
そこで、本第5実施形態では、センサ装置100Dは、演算装置104Cに接続される第一の通信部201と、変更部106に接続される第二の通信部202を備え、通信部201,202同士で有線又は無線で互いに通信を行うように構成されている。したがって、信号処理回路203Dは、第二の通信部202を有して構成され、第一の通信部201は、信号処理回路203と別体に設けられている。
【0054】
第二の通信部202は、第一の通信部201に原検出信号102を送信し、第一の通信部201は、演算装置104Cに原検出信号102を出力する。演算装置104Cは、原検出信号102を入力して高速フーリエ変換により時間領域信号から周波数領域信号に変換する演算を行う。そして、演算装置104Cは、演算結果から原検出信号102に含まれる信号成分の周波数帯域を超える周波数であってピーク値となる周波数成分を、振動数fとして抽出し、振動数fを示す信号を出力する。
【0055】
また、第一の通信部201は、演算装置104Cにより演算された振動数fを示す信号を入力し、当該振動数fを示す信号を第二の通信部202に有線又は無線で送信する。振動数fを示す信号を受信した第二の通信部202は、受信した振動数fを示す信号を変更部106に出力する。変更部106は、第二の通信部202から入力した振動数fを示す信号に基づいてフィルタ部103のフィルタ係数を変更する。この構成により、フィルタ部103により原検出信号102から良好にノイズ除去された検出信号107が得られる。
【0056】
以上、第一の通信部201と第二の通信部202により通信がなされることにより、演算装置104Cを構成するコントローラと変更部106及びフィルタ部103を構成するコントローラとで分散処理を行うことが可能となる。これにより、演算装置104Cの計算負荷にかかわらず、原検出信号102を高速にフィルタ処理することが可能となる。
【0057】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係るセンサ装置について詳細に説明する。図7は、本発明の第6実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。なお、本第6実施形態において、上記第1〜第5実施形態と同様の構成については、説明を省略する。本第6実施形態のセンサ装置100Eは、上記第1実施形態と同様に、検出部101,フィルタ部103,演算装置104及び変更部106を備えると共に、更に、第二の記録装置801を備えている。
【0058】
そして、演算装置104は、検出信号107を入力する代わりに、第二の記録装置801から信号802を入力する。検出部101により出力された原検出信号102は、フィルタ部103によってノイズを除去する処理がなされる。
【0059】
第二の記録装置801には、検出信号107と、構造体の重量と、検出部101の剛性からなる情報が記録されている。第二の記録装置801に記録された情報からなる信号802は、演算装置104に出力される。演算装置104においては2種類の計算がなされる。一方は信号802を用いた(式1)と同様の計算である。
【0060】
なお、(式3)を用いても同様の計算が可能である。この場合、信号802は構造体の重量の代わりにイナーシャ、検出部101の剛性の代わりにねじり剛性で構成される。また、構造体の剛性が検出部の剛性に対して著しく低く柔軟な場合、信号802は構造体の重量の代わりに構造体の柔軟部分より先端部の重量、検出部101の剛性の代わりに構造体の剛性で構成される。これにより、柔軟部より先の振動がノイズとなる場合に、ノイズの振動数を計算することができる。
【0061】
これらの計算のいずれかにより、原検出信号102の振動数105を計算する。演算装置104で計算された振動数105は変更部106に出力され、変更部106は、振動数105に基づいてフィルタ部103を変更する。この構成により、簡易な計算でより精密に振動数105を求めることが可能となり、フィルタ部103により原検出信号102から良好にノイズ除去された検出信号107が得られる。
【0062】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態に係るセンサ装置について説明する。図8は、本発明の第7実施形態に係るセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。なお、本第7実施形態において、上記第1〜第6実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
【0063】
本第7実施形態のセンサ装置100Fは、上記第1実施形態と同様の検出部101と、フィルタ部103a,103bを複数有するデジタルフィルタ103Aを備えている。また、センサ装置100Fは、変更手段としての複数の変更部106a,106bと、演算手段としての複数の演算装置104a,104bとを備えている。なお、本第7実施形態では、原検出信号102に含まれるノイズのピークが2つ現れることを想定し、フィルタ部が2つ、演算装置が2つ、変更部が2つの場合について説明する。
【0064】
検出部101が出力した原検出信号102は、フィルタ部103aによってノイズを除去する処理がなされ、処理後の信号である検出信号107はフィルタ部103bによって別の周波数のノイズを除去する処理がなされる。
【0065】
各演算装置104a,104bで演算されたノイズの各振動数f,fは、各変更部106a,106bに出力され、各変更部106a,106bは、各振動数f,fに基づいてフィルタ部103a,103bのフィルタ係数を変更する。
【0066】
つまり、第一の演算装置104aで演算された第一の振動数fは、第一の変更部106aに出力され、第一の変更部106aは、第一の振動数fに基づいて第一のフィルタ部103aのフィルタ係数を変更する。同様に、第二の演算装置104bで演算された第二の振動数fは、第二の変更部106bに出力され、第二の変更部106bは、第二の振動数fに基づいて第二のフィルタ部103bのフィルタ係数を変更する。
【0067】
以上、本第7実施形態では、複数のフィルタ部103a,103bを有するデジタルフィルタ103Aにより、複数のノイズの振動数が除去され、原検出信号102からさらに良好にノイズ除去された検出信号107Aを得る。
【0068】
なお、第7実施形態では、演算手段が複数の演算装置からなる場合について説明したが、演算手段が1つの演算装置からなる場合であってもよい。この場合、一つの演算装置で複数の振動数を検知すればよい。また、第7実施形態では、変更手段が複数の変更部からなる場合について説明したが、変更手段が1つの変更部からなる場合であってもよい。この場合、1つの変更部が複数のフィルタ部のフィルタ係数を変更することで同様な効果が得られる。
【0069】
また、第7実施形態では、フィルタ部を2つ有するデジタルフィルタについて説明したが、ノイズのピークが出現する数に応じて、フィルタ部の数量を増加すればよく、これによりノイズ処理が良好になる。なお、演算の結果、ノイズのピークの数がフィルタ部の数よりも少なくなった場合には、余剰分のフィルタ部を、全周波数帯域を通過させるように動作させればよい。
【0070】
[第8実施形態]
次に、本発明の第8実施形態に係るロボット装置について説明する。図9は、本発明の第8実施形態に係るロボット装置の概略構成を示す斜視図である。図10は、ロボット装置のハンド近傍の拡大斜視図である。図11は、本発明の第8実施形態に係るロボット装置の概略構成を示すブロック図である。
【0071】
本第8実施形態のロボット装置1000は、上記第1実施形態のセンサ装置に相当するセンサ装置を備えている。以下、本第8実施形態のロボット装置1000の構成について詳細に説明する。ロボット装置1000は、図9に示すロボットアーム本体(マニピュレータ)1001と、図11に示す駆動装置及び制御装置50と、を備えている。
【0072】
マニピュレータ1001は、関節部901,902,903,904,905,906で連結されたベース910、複数のリンク911,912,913,914,915及びハンド908を備えている。
【0073】
つまり、ベース910と第一のリンク911とが、第一の関節部901で連結されており、第一のリンク911と第二のリンク912とが、第二の関節部902で連結されている。第二のリンク912と第三のリンク913とが、第三の関節部903で連結されており、第三のリンク913と第四のリンク914とが、第四の関節部904で連結されている。第四のリンク914と第五のリンク915とが、第五の関節部905で連結されている。
【0074】
第五のリンク915は、マニピュレータ1001の先端部に配置された先端リンクである。この先端リンクである第五のリンク915には、把持対象物であるワークWを把持するハンド908が設けられている。つまり、第五のリンク915とハンド908とが、第六の関節部906で連結されている。
【0075】
各関節部901,902,903,904,905には、トルクセンサである検出部101,101,101,101,101が設けられている。第六の関節部906には、力覚センサである検出部101が設けられている。また、各関節部901〜906には、各リンク911〜915及びハンド908を駆動する駆動装置である複数のアクチュエータとしての第一から第六の関節のモータ920〜920(図11)が設けられている。ハンド908がワークWを把持した状態でモータ920〜920の駆動により、ワークWを移動させることができる。
【0076】
力覚センサである検出部101は、第1実施形態で説明した図2(a)と同様の構成である。すなわち、力覚センサである検出部101は、図10に示すように、第六の関節部906に設けられたケース1601と、ケース1601に締結された可撓体1602と、可撓体1602に固定された4つのセンサとしての歪センサ1603とを有している。そして、ハンド908が取付構造体1604を介して可撓体1602に締結されている。なお、トルクセンサである検出部101〜101も、第1実施形態で説明した図2(b)と同様の構成であり、可撓体1702とセンサ1703とを有している。
【0077】
力覚センサである検出部101によって、4つの歪センサ1603が出力する4つの原検出信号をフィルタ処理した4つの検出信号を用いて、ハンド908に作用する力とトルクを求めることができる。同様に、トルクセンサである検出部101〜101によって、2つのセンサ1703が出力する2つの原検出信号をフィルタ処理した2つの検出信号を用いて、各リンクに作用するトルクを求めることができる。
【0078】
ここで、各検出部101〜101からは複数の原検出信号が出力されるが、各原検出信号は同様のフィルタ処理が行われるので、本第8実施形態では、各検出部101〜101を検出部101と称して説明する。そして、検出部101から出力される複数の原検出信号のうちの1つの原検出信号について説明する。従って、以下の説明では、検出部101は、力又はトルクを示す原検出信号を出力する。
【0079】
図11に示すように、ロボット装置1000の制御装置50は、ロボットコントローラ51と、動作入力部53と、上記第1実施形態と同様のセンサ装置100とを有している。センサ装置100は、上述した検出部101と、デジタルフィルタとしてのフィルタ部103と、演算手段としての演算装置104と、変更手段としての変更部106とを有している。
【0080】
検出部101は、ハンド908に作用する力又はトルクを示す原検出信号(又は、リンクに作用するトルクを示す原検出信号)102を出力する。フィルタ部103は、例えばFIRやIIR等のデジタルフィルタであり、フィルタ係数を用いて原検出信号102をフィルタ処理して検出信号107を出力する。
【0081】
ロボットコントローラ51は、演算装置104及び駆動演算部55〜55で構成され、いわゆるインピーダンス制御を行うものであり、フィルタ部103から出力される検出信号107を用いてモータ920〜920を制御する制御手段として機能する。つまり、演算装置104は、演算手段として機能するほか、制御手段としても機能する。ここで、本第8実施形態では、インピーダンス制御として、力覚センサである検出部101の出力が一定になるようにマニピュレータ1001を移動する制御を行う。
【0082】
なお、演算装置104は、本第8実施形態では、ロボットコントローラ51に組み込まれているが、ロボットコントローラとは別装置であってもよい。つまり、演算装置が演算手段として機能し、演算装置とは別のロボットコントローラが制御手段として機能してもよい。
【0083】
動作入力部53は、マニピュレータ1001に動作指令1015を出力する。ロボットコントローラ51の演算装置104は、動作指令1015を入力し、動作指令1015及び上述した検出信号107に基づき、各モータ920〜920の位置目標値θ〜θ及びトルク目標値T〜Tを生成する。
【0084】
そして、各駆動演算部55〜55は、各位置目標値θ〜θ及び各トルク目標値T〜Tに基づいてモータ920〜920の電流目標値I〜Iを求め、各モータドライバ57〜57に出力する。各モータドライバ57〜57は、入力した電流目標値I〜Iに従って各モータ920〜920に電流I〜Iを供給する。これにより、各モータ920〜920は、各位置目標値θ〜θ及び各トルク目標値T〜Tに従って動作し、各リンク911〜915及びハンド908を駆動する。
【0085】
次に、ロボットコントローラ51の各駆動演算部55〜55の動作について図12を参照しながら説明する。なお、各駆動演算部55〜55の演算動作は同一であるので、この図12において、各モータ920〜920をモータ920と称し、各駆動演算部55〜55を駆動演算部55と称して説明する。
【0086】
駆動演算部55は、位置フィードバック制御部61、加算器63及びモータ電流目標値生成部65とを有している。位置フィードバック制御部61は、位置目標値θとエンコーダ67が検出したモータ920の位置θを入力し、トルク補正値Trを計算する。加算器63は、トルク目標値Tにトルク補正値Trを加算し、トルク指令値Taを生成する。
【0087】
モータ電流目標値生成部65は、入力したトルク指令値Taをモータ920の電流目標値Iに換算する。モータ920は、例えばブラシレスDCモータであり、電流目標値IはU相,V相,W相の3相に分けられる。この電流目標値Iはモータドライバ57に出力される。モータドライバ57は電流目標値Iに対応する電流Iをモータ920に出力し、モータ920を回転させる。このとき、トルク目標値Tが実際に必要なトルクと合致しているほど、位置目標値θと位置θとの偏差が小さくなる。そこで、検出部101により実際に計測される値からトルク目標値Tを算出している。
【0088】
検出部101により出力された原検出信号102は、フィルタ部103によってノイズを除去するフィルタ処理がなされる。原検出信号102に含まれるノイズの振動数fは、マニピュレータ1001の固有振動数に由来するものであって、マニピュレータ1001の姿勢やワークWの有無などにより変化する。例えば力覚センサである検出部101の場合、ハンド908がワークWを把持すると、検出部101の可撓体1602の剛性と、ハンド908,ワークW及び取付構造体1604の合計重量が増加し、マニピュレータ1001の固有振動数が低下する。
【0089】
ところで、トルクを実測してトルク目標値Tを計算する場合において、原検出信号102に対して検出信号107の位相が遅れる場合、トルク目標値Tと実際に必要なトルクが乖離してしまう。この乖離は動作が高速になるほど顕著になる。従って原検出信号102に対して検出信号107に位相の遅れが生じる場合、マニピュレータ1001の位置決め精度を向上させるには、マニピュレータ1001の動作速度を抑制する必要がある。これによりマニピュレータ1001の作業時間が長くなってしまう。例えばマニピュレータ1001を折り畳んだ状態と伸ばした状態とでは、固有振動数に2倍以上の差がある。
【0090】
これに対し、仮にフィルタ部103の周波数特性を一定とし、固有振動数の取り得る周波数帯の信号を低減する場合には、マニピュレータ1001を伸ばした状態に合わせてフィルタ遮断周波数を低く設計する必要がある。このためマニピュレータ1001を折り畳んで、固有振動数が2倍になった状態においても検出信号107は原検出信号102に対して位相が遅れてしまう。これにより、マニピュレータを折り畳んだ状態に合わせてフィルタ周波数を設定した場合に比べて半分の速度でしか駆動できなくなる。
【0091】
そこで、本第8実施形態では、演算装置104が、上記第1実施形態と同様の演算処理により、ノイズの振動数fを演算している。演算装置104で演算された振動数fを示す信号は変更部106に出力され、変更部106は、振動数fを示す信号に基づいてフィルタ部103のフィルタ係数を変更する。そしてフィルタ係数が変更されたフィルタ部103により、原検出信号102から良好にノイズが除去され、原検出信号102に対して位相の遅れが抑制された検出信号107が得られる。
【0092】
ロボットコントローラ51は、検出信号107を入力し、各モータ920〜920の位置目標値θ〜θ及びトルク目標値T〜Tの計算に使用される。このようにセンサ装置100をロボット装置1000に適用することで、マニピュレータ1001の位置決め精度が向上する。そして、原検出信号102に対して検出信号107の位相の遅れが抑制されるので、マニピュレータ1001の動作を高速化させることができる。
【0093】
なお、本第8実施形態のマニピュレータ1001には、力覚センサである検出部1016、及びトルクセンサである101〜101が搭載されているが、これらのうちいずれか一つでもマニピュレータに搭載されればよい。この場合も、ロボット装置のマニピュレータの位置決め精度は向上する。
【0094】
[第9実施形態]
次に、本発明の第9実施形態に係るロボット装置について説明する。図13は、本発明の第9実施形態に係るロボット装置に搭載されたセンサ装置の概略構成を示すブロック図である。本第9実施形態のロボット装置は、上記第2実施形態のセンサ装置100Aを備えるものである。
【0095】
即ち、本第9実施形態では、ロボットコントローラ51Aが、演算装置104及び第一の通信部201で構成されている。そして、信号処理回路203を構成する検出部101、フィルタ部103、変更部106及び第二の通信部202が、マニピュレータ1001に搭載されている。ロボットコントローラ51Aは、マニピュレータ1001とは別体に設けられている。
【0096】
演算装置104で演算された振動数fを示す信号は、第一の通信部201に出力され、第二の通信部202に送信される。第二の通信部202に送信された振動数fを示す信号は変更部106に出力される。変更部106は、振動数105の信号に基づいてフィルタ部103のフィルタ係数を変更する。
【0097】
この構成により、フィルタ部103により原検出信号102から良好にノイズ除去された検出信号107が得られる。そして検出信号107が第二の通信部202に出力され、第一の通信部302に送信される。第一の通信部302に送信された検出信号107は、ロボットコントローラ51Aでモータ920〜920の位置目標値θ〜θ及びトルク目標値T〜Tの計算の計算に使用される。
【0098】
また、第一の通信部201と第二の通信部202により通信がなされることにより、検出部101,フィルタ部103,変更部106を信号処理回路203にて処理させることが可能となる。信号処理回路203はロボットコントローラ51Aと別体で、マニピュレータに搭載されている。
【0099】
ロボットコントローラ51Aと別体の信号処理回路203にてフィルタ処理することにより、ロボットコントローラ51Aの計算負荷にかかわらず、原検出信号102を常時高速にフィルタ処理することが可能となる。また、信号処理回路203がマニピュレータに搭載されているとより検出部101とフィルタ部103が近接することになり、電磁ノイズの影響に強くすることが可能になる。
【0100】
なお、第8実施形態では、ロボット装置1000が第1実施形態のセンサ装置100を備える場合について説明し、第9実施形態では、ロボット装置が第2実施形態のセンサ装置100Aを備える場合について説明したが、これに限定するものではない。即ち、ロボット装置が第3〜第7実施形態のセンサ装置のいずれか1つを備える場合であってもよい。特に、複数の固有振動数を有するマニピュレータに第7実施形態のセンサ装置を搭載すると、複数の振動数を有するノイズを除去できるので有効である。
【符号の説明】
【0101】
100,100A,100B,100C,100D,100E,100F センサ装置
101 検出部
103 フィルタ部(デジタルフィルタ)
104,104C 演算装置(演算手段)
106 変更部(変更手段)
201 第一の通信部(送信手段)
202 第二の通信部(受信手段)
1000 ロボット装置
1001 マニピュレータ(ロボットアーム本体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象の状態により変形する可撓体、及び前記可撓体の変形量を検出し、検出結果を示す原検出信号を出力するセンサを有する検出部と、
フィルタ係数を用いて前記原検出信号をフィルタ処理して得られる検出信号を出力するデジタルフィルタと、
前記原検出信号に含まれる前記可撓体の振動数を演算により求める演算手段と、
前記デジタルフィルタのフィルタ係数を変更して、前記デジタルフィルタを、前記演算手段により演算された前記振動数を減衰させるフィルタとして機能させる変更手段と、を備えたことを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
被測定対象の状態により変形する可撓体、及び前記可撓体の変形量を検出し、検出結果を示す原検出信号を出力するセンサを有する検出部と、
フィルタ係数を用いてフィルタ処理するフィルタ部を複数有し、前記原検出信号を前記複数のフィルタ部でフィルタ処理して得られる検出信号を出力するデジタルフィルタと、
前記原検出信号に含まれる前記可撓体の複数の振動数のそれぞれを演算により求める演算手段と、
前記各フィルタ部のフィルタ係数を変更して、前記デジタルフィルタを、前記演算手段により演算された前記各振動数を減衰させるフィルタとして機能させる変更手段と、を備えたことを特徴とするセンサ装置。
【請求項3】
前記検出部が力覚センサであることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記検出部がトルクセンサであることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記原検出信号を入力して高速フーリエ変換により時間領域信号から周波数領域信号に演算し、演算結果から前記原検出信号に含まれる信号成分の周波数帯域を超える周波数であってピーク値となる周波数成分を、前記振動数として抽出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記演算手段は、前記被測定対象に作用する力又はトルクと前記振動数との相関関係を示す関係式又はテーブルを記憶する記憶部を有し、前記検出信号を入力し、前記関係式又は前記テーブルを用いて前記振動数を求めることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記演算手段は、前記被測定対象に作用するトルクと前記振動数との相関関係を示す関係式又はテーブルを記憶する記憶部を有し、前記検出信号を入力し、前記関係式又は前記テーブルを用いて前記振動数を求めることを特徴とする請求項4に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記演算手段に接続された送信手段と、
前記変更手段に接続され、前記送信手段から前記振動数を示す信号を受信する受信手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
関節部で連結された複数のリンク、及び前記複数のリンクのうち、先端部に配置された先端リンクに設けられ、把持対象物を把持するハンドを有するロボットアーム本体と、
前記複数のリンク及び前記ハンドを駆動する複数のアクチュエータと、
前記ハンドに作用する力又はトルクにより変形する可撓体、及び前記可撓体の変形量を検出し、検出結果を示す原検出信号を出力するセンサを有する力覚センサと、
フィルタ係数を用いて前記原検出信号をフィルタ処理して得られる検出信号を出力するデジタルフィルタと、
前記原検出信号に含まれる前記可撓体の振動数を演算により求める演算手段と、
前記デジタルフィルタのフィルタ係数を変更して、前記デジタルフィルタを、前記演算手段により演算された前記振動数を減衰させるフィルタとして機能させる変更手段と、
前記デジタルフィルタから出力される検出信号を用いて前記アクチュエータを制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするロボット装置。
【請求項10】
関節部で連結された複数のリンク、及び前記複数のリンクのうち、先端部に配置された先端リンクに設けられ、把持対象物を把持するハンドを有するロボットアーム本体と、
前記複数のリンク及び前記ハンドを駆動する複数のアクチュエータと、
前記リンクに作用するトルクにより変形する可撓体、及び前記可撓体の変形量を検出し、検出結果を示す原検出信号を出力するセンサを有するトルクセンサと、
フィルタ係数を用いて前記原検出信号をフィルタ処理して得られる検出信号を出力するデジタルフィルタと、
前記原検出信号に含まれる前記可撓体の振動数を演算により求める演算手段と、
前記デジタルフィルタのフィルタ係数を変更して、前記デジタルフィルタを、前記演算手段により演算された前記振動数を減衰させるフィルタとして機能させる変更手段と、
前記デジタルフィルタから出力される検出信号を用いて前記アクチュエータを制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするロボット装置。
【請求項11】
前記演算手段は、前記原検出信号を入力して高速フーリエ変換により時間領域信号から周波数領域信号に演算し、演算結果から前記原検出信号に含まれる信号成分の周波数帯域を超える周波数であってピーク値となる周波数成分を、前記振動数として抽出することを特徴とする請求項9又は10に記載のロボット装置。
【請求項12】
前記演算手段は、前記ハンドが受ける力又はトルクと前記振動数との相関関係を示す関係式又はテーブルを記憶する記憶部を有し、前記検出信号を入力し、前記関係式又は前記テーブルを用いて前記振動数を求めることを特徴とする請求項9に記載のロボット装置。
【請求項13】
前記演算手段は、前記リンクに作用するトルクと前記振動数との相関関係を示す関係式又はテーブルを記憶する記憶部を有し、前記検出信号を入力し、前記関係式又は前記テーブルを用いて前記振動数を求めることを特徴とする請求項10に記載のロボット装置。
【請求項14】
前記演算手段に接続された送信手段と、
前記変更手段に接続され、前記送信手段から前記振動数を示す信号を受信する受信手段と、を備え、
前記デジタルフィルタ、前記変更手段及び前記受信手段は、前記ロボットアーム本体に設けられ、前記演算手段及び前記送信手段は、前記ロボットアーム本体と別体に設けられていることを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載のロボット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−63164(P2012−63164A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205722(P2010−205722)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】