説明

センサ

本発明は、電磁放射線を検出するためのセンサであって、センサ素子(10)と、センサ素子が配設されるハウジング(31,33)と、検出される電磁放射線を透過する材料(32)によって閉鎖されるハウジングの放射線入射窓(35)とを具備する。該透過材料(32)は、センサ素子の視野領域に配置されていない固定手段(38)によってハウジングに固定される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、独立請求項の前提部に従ったセンサに関する。特に周囲温度が変動する場合の特性を改善した赤外線センサに関する。このようなセンサ素子およびセンサは独国特許出願公開第19710946号明細書および欧州特許出願公開第1039280号明細書から知られる。
【0002】
本発明は、特に、放射線センサ、好ましくは赤外線測定手段により、温度を測定するように設計された放射線センサに関する。実際のセンサ素子は、この場合、測定される赤外線が入射し、これを電気的に利用可能な信号、たとえば電流、電圧、電荷に変換することができるような構造である。これらはサーモパイル、焦電検出器またはボロメータであってもよい。
【0003】
特に、サーモパイルでは、電気出力信号は入射する(赤外領域における)電磁放射線に依存するだけでなく、センサが動作している周囲温度にも依存するという性質を有している。センサ素子をできる限りヒートシンクおよび周囲温度から切り離すように、たとえば図1に示すように、サーモパイルは熱伝導の悪い構造の上に配置される。実際のセンサ素子は参照番号4(4a,4b)によって示される。これは熱端部4aと冷端部4bとを有する。熱端部4aの上方には、たとえば、暗黒色であるために入射赤外線(IR(To)で示す)を効率よく吸収し、その結果熱端部4aを加熱する吸収層5aを設けてもよい。一方、反射層5bは冷端部4bの上方に設けてもよく、冷端部4bをあまり加熱しないように前記反射層5bは入射赤外線を反射する。冷端部と熱端部の温度差は測定可能な電位差を発生する。対応してより高い信号電圧が得られるように、かかる構造を複数直列に接続してもよい。
【0004】
センサ素子は、フレームとして形成されている基板1によって支持されている薄膜3上に配置される。熱端部4aは、この場合、通常フレーム1の上方ではなく、フレーム1の開口部2の上方の薄膜3の上に配設される。このように、入射赤外線が比較的に強い加熱を起こし、したがって信号が強くなるように、熱端部4aはフレーム1の熱容量塊から熱的に隔離される。
【0005】
周囲温度(センサ素子のフレームの下方に矢印Tuで表示)が一定であるということが仮定できるのであれば、冷接点4bはフレーム1の上方に設けられていることが望ましく、薄膜3が存在するのであればその上方に配置されていることが望ましい。このように冷接点はフレーム1の熱容量塊に結合しているので、入射赤外線による冷接点の加熱は少ない。
【0006】
一方で、周囲温度が急速に変化すると仮定せねばならない場合は、熱接点だけでなく冷接点も、図1に示すように、フレーム1の上方に設けられるのではなく、図1に示すように、変動する周囲温度から冷接点の遮断が達成されるように、フレーム1の開口部2の上方に設けられるのが望ましい。周囲温度が変化する場合のセンサ素子またはセンサが応用される典型的な領域は空調の分野である。このような分野では、周囲温度の急速な変化がおこり、その結果、センサおよびその構成部品もまた前記の周囲温度の変化に曝される可能性がある。
【0007】
冷接点の温度条件が、不明確であるとき、または変化するとき、このことは対象物温度Toに従って行われる赤外線の(直接的)測定を介した(間接的)温度測定に悪影響を与える。
【0008】
正確な温度測定には、温度分布の動的な特性が関連している。この目的を達成するために独国特許出願公開第19710946号明細書は、コールドスポットとホットスポットの周りの熱伝導度だけでなく、後に詳細に記述される方法で、コールドスポットとホットスポットの熱容量を設定すべきであることを提案している。ホットスポットだけの照射を実現するために、ハウジングに関してサーモパイルのホットスポットの配置を非対称とすることが提案されている。引用文献から知られる測定では、コールドスポット上への周囲温度条件の影響がホットスポット上への影響と同じになるように企図されている。
【0009】
欧州特許出願公開第1039280号明細書から、サーモパイルセンサを有する赤外センサが知られる。このセンサは、窓部品が組み込まれているようなキャップを有する。この窓部品は、内側から樹脂によってキャップに取り付けられている。
【0010】
本発明の目的は、センサまたはセンサ素子の周囲温度の変化に対して、また一般的には信号源への干渉に対し比較的影響を受けにくいセンサを提供することである。
【0011】
上記の目的は独立請求項が有する特徴により解決される。従属請求項は本発明の好適な実施形態に関する。
【0012】
センサのハウジングは、側壁と、ハウジングの内部にあるセンサ素子に入射する検出すべき放射線が透過する放射線入射窓を多くの場合具備している天井部と、センサ素子が実装される底板とを含む。側壁および天井部は、多くは、一体化された円筒状の部品である。放射線入射窓は、検出されるべき放射線を透過させる材料であって、結像特性(レンズ、フレネルレンズ、格子および位相板)を有していることが多い材料によって閉鎖されている。上記材料は、固定手段により、固定手段がセンサ素子の視野には存在しないように、ハウジングに取り付けられる。
【0013】
放射線入射窓の材料は、望ましくは、固着手段が外側に配置、または特に接着剤によって、外部にむけられた溝または凹部またはスエージにおいて固定できるように、外部からハウジングに取り付けられている。このようにして、固定材料が周囲温度に依存して放出する放射線が測定結果を乱すことがないように、放射線放出性の高い固着材料はセンサ素子の視野の中には存在しない。
【0014】
センサ素子の視野内にあるハウジング内の内壁は、殆ど放射しない表面であってもよい。
【0015】
加えて、または、代わりに、センサ素子の視野に入るハウジングの内表面は、外部からの放射線が内表面によっては、全く、または極僅かしかセンサ素子へ反射しないように形成されてもよい。内表面は外部に対して湾曲、すなわち凹面となっていてもよい。しかしながら、凸面もまた可能である。この場合は特に、センサ素子の直上での断面積が、放射線入射窓の高さでの断面積より大きくなるような配置であってもよい。このようにして、センサ素子上に投影されるべきでない外部から入射する雰囲気放射線は、センサ素子には到達せず、したがって温度測定にも影響を与えないように、ハウジング内で反射されることが確保される。
【0016】
センサは赤外線または温度を測定するように設計されている。たとえば、空調などにおける温度計に設けられてもよい。本明細書に従ったセンサまたはセンサ素子を有する温度計は本発明の一部分であるものと理解されるべきである。
【0017】
本発明の各実施形態について、添付の図を参照し、以下において説明する。
図2は、センサの垂直断面を示す。センサ30の内部には、特に赤外線(λ>800nm、望ましくは、>2μm)に対して高感度である感熱性のセンサ素子10を具備している。上記のように形成してもよく、しかしそうでなくてもよい。センサは、特に、サーモパイルセンサであってもよい。センサ素子10に隣接して、または直接センサ素子の直上には、評価および補償のために使用可能である温度参照素子37であって、周囲温度を測定してそれを電気信号に変換する温度参照素子37を具備してもよい。センサ素子10および、必要な場合、温度参照素子37は、実施形態で示されているように、底板33、側壁31および放射線透過材料32である放射線入射窓35とによって閉鎖されているハウジングの内部に配設される。
【0018】
ハウジング、特に側壁31は円筒軸40まわりに円筒状であるように形成されていてもよい。放射線入射窓35は放射線透過材料32で形成された結像素子でカバーされていてもよい。結像素子は集光または焦点の作用を有していてもよい。これはたとえば、位相板、格子、フレネルレンズまたは通常のレンズであってもよい。放射線透過材料32は、センサ素子10の視野の範囲に入らない位置にある固定手段32によりハウジングに固定される。固定手段は、通常、接着剤または一般的な樹脂材料であるが、これらは周囲温度が変動した場合には特に強い放射線の変化を生じさせるような比較的高い放射率を有している。固定手段がセンサ素子10の視野の外に配置されていれば、固定手段が測定信号に影響を与えることはない。
【0019】
固定手段38が外側に配置されるように、放射線入射窓材料をハウジングの外側から取り付けられるような構成としてもよい。特に、放射線入射窓材料はハウジングの外側にある溝または凹部内に挿入され、接着により、たとえば図示されているように、凹部34の側壁とかかる材料32の側壁との間で、接着剤、合成樹脂、すなわち一般的に樹脂38によって固定することができる。以上のように、固定手段は、放射される放射線によって信号を乱すことがないように、センサ10の視野の範囲には配置されない。
【0020】
本発明の更なる実施形態に従えば、センサ素子10の視野範囲内の内表面36は、ほとんど放射しない、または殆ど放射しない材料で形成することが可能であり、したがって、ハウジング、特にその円筒部分31が受ける周囲温度の変動が、センサ内部の放射によってセンサ素子10にはほとんど伝達されない。。内表面の放射率は理想黒体の10%以下、望ましくは、3%以下であってもよい。
【0021】
更なる実施形態に従えば、センサ素子の視野の範囲にある内表面36は、球状の凹部を有していてもよい。この場合、センサ素子10の直上の開口断面積は放射線入射窓35の断面積より大きいように、すなわち内表面36は、対称軸40方向に、センサ素子10から放射線入射窓35に向かって狭くなっていくように設計することができる。このようにして、測定対象以外のものから放射される放射線の成分はセンサ素子10には到達しない。これは、例示の放射線経路42により図示されている。放射線は、センサ素子10に到達せず、センサ素子に隣接する底部に入射するように、傾斜壁36によって反射される。センサ素子に隣接する底部は、多重反射が起こらないように、吸収性の材料(「底部」)41で被覆されていてもよい。その場合、内表面36は反射性である。
【0022】
しかしながら、形状は、特にセンサ素子10の視野範囲内にあるハウジング内部の内表面が、外部からの放射線が内表面を介してセンサ素子上で反射されないように、またはほとんど反射されないように、形成されているときは、上に行くに従って開放、すなわち拡大してもよい(図3に示す)。内表面は外部に対して球状の曲面、すなわち凹状とすることができる。しかしながら、球状の凸面もまた可能である。
【0023】
内表面36は、大きなハウジング本体31の表面であってもよく、これは、たとえば回転部分として形成されてもよい。しかしながら、鋳造部品の鏡面性の内表面36であってもよく、必要ならば、たとえば、機械的安定性を増加させるために金属性のキャップでカバーされてもよく、または内表面36は、外側ハウジングから独立したハウジングの内部に挿入される別の部品であって、少なくともセンサ素子10から見えるセンサ空洞の内表面36を形成する別の部品によって形成してもよい。
【0024】
39は、センサ素子10および、必要であれば、温度参照素子37の信号を出力するためのセンサの端子を示している。多連素子センサの場合、対応する複数の電気的に独立に読取り可能なセンサ素子が設けられてもよく、これらは、共通のフレーム1の上方の共通の薄膜3上に搭載されてもよく、または共通の基板の独立の凹部上の薄膜に実装されていてもよい。この場合複数の端子を設けてもよい。センサ素子または複数のセンサ素子と共に、さらなる電気信号処理回路を、素子それ自体または素子に隣接して、実装してもよい。
【0025】
上述したように、ハウジングは、特に、熱伝導性とすることができる。この熱伝導度は、純銅の少なくとも20%、望ましくは少なくとも50%とすることができる。
【0026】
放射線入射窓を閉鎖する素子32は、望ましくはエッチングで形成された位相板であってもよい。この場合、同心円状に領域的に膜厚を変化させると、重畳/干渉によって、波長選択的に、センサ素子上に入射する放射線の集光が生じるように、位相板から出る放射線成分はそれぞれ異なった光路を進む。素子32は、レンズ、フレネルレンズまたは集光鏡であってもよく、またはこれらを有してもよい。
【0027】
センサの外寸は、標準化されたハウジング、たとえばTO5ハウジングに対応してもよく、またはセンサはそのようなハウジングを有してもよい。
【0028】
センサ素子は、1または複数のサーモパイルであってもよく、または1または複数のサーモパイルを有してもよい。これらは冷接点および熱接点を有する。熱接点は、フレームの開口部の薄膜上に設けることができる。冷接点はフレームの開口部の上方に設けてもよくし、フレーム上またはフレームの上方に設けてもよい。図1に記載されているように、吸収および/または反射の層を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】センサ素子の断面を示す図である。
【図2】本発明に従ったセンサの断面を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射線を検出する1または複数のセンサ素子(10)と、
センサ素子が配設されるハウジング(31,33)と、
ハウジングに設けられ、検出される電磁放射線を透過する材料(32)によって閉鎖される放射線入射窓(35)とを具備し、
該透過材料(32)が、センサ素子の視野領域には配置されていない固定手段(38)によってハウジングに固定されることを特徴とする、特に赤外領域にある電磁放射線を検出するセンサ(10)。
【請求項2】
放射線入射窓の材料はハウジングの外部から該ハウジングに固定されている、または外に向けられた該ハウジングの溝または凹部(34)内に固定されていることを特徴とする請求項1記載のセンサ。
【請求項3】
ハウジングは熱伝導性を有し、特にその熱伝導度は、純銅の少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%であることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
固定手段(38)は樹脂または接着剤からなることを特徴とする前記請求項1、2または3に記載のセンサ。
【請求項5】
電磁放射線を検出する1または複数のセンサ素子(10)と、
センサ素子が配設されるハウジング(31,33)と、
ハウジングに設けられた放射線入射窓(35)とを有し、
殆ど放射しない内表面(36)がハウジング内部のセンサ素子(10)の視野領域に設けられていることを特徴とする、特に赤外領域にある電磁放射線を検出する、請求項1〜4のいずれか1項または複数項に記載のセンサ(10)。
【請求項6】
内表面(36)が反射性であることを特徴とする、請求項5記載のセンサ。
【請求項7】
電磁放射線を検出する1つまたはそれ以上のセンサ素子(10)と、
センサ素子が配置されるハウジング(31,33)と、
該ハウジングに設けられた放射線入射窓とを有し、
縦断面において外側に球状に湾曲した内表面(36)が、ハウジング内のセンサ素子(10)の視野領域に設けられていることを特徴とする、特に赤外領域にある電磁放射線を検出する、請求項1〜4のいずれか1項または複数項に記載のセンサ(10)。
【請求項8】
内表面(36)が、空洞を規定し、放射線入射窓(35)でのその断面積がセンサ素子(10)の直上での断面積より小さいことを特徴とする、請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
内表面(36)が、放射線入射窓に向かって円錐状に拡大していることを特徴とする請求項7に記載のセンサ。
【請求項10】
内表面(36)が、円筒表面を形成していることを特徴とする請求項7に記載のセンサ
【請求項11】
内表面(36)が、ハウジングの内部の補助体の表面を形成していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項または複数項に記載のセンサ。
【請求項12】
ハウジングは、回転部分(31)である、または回転部分(31)を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項または複数項に記載のセンサ。
【請求項13】
内表面(36)は、回転部分の表面であることを特徴とする、請求項12に記載のセンサ。
【請求項14】
センサ素子(10)に隣接するハウジング内の領域は放射線を吸収する材料(41)によって被覆されていることを特徴とする、請求項7〜13のいずれか1項または複数項に記載のセンサ。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項または複数項に記載のセンサを有する非接触温度測定計。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−501963(P2008−501963A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526291(P2007−526291)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006158
【国際公開番号】WO2005/121727
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(505411424)パーキンエルマー オプトエレクトロニクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コー. カーゲー (10)
【氏名又は名称原語表記】PerkinElmer Optoelectronics GmbH & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Wenzel−Jaksch−Strasse 31, Wiesbaden Germany
【Fターム(参考)】