ソケット
【課題】板バネ方式とエラストマー方式の両者の長所を生かしつつ、低抵抗、大電流化、高速化に対応すると共に良好なコンタクトを可能とするソケットを提供する。
【解決手段】ソケット1は、貫通穴3Hを設けた絶縁性のエラストマーシート3と、このエラストマーシート3の表裏面の少なくとも一部に設けた金属回路5A,5Bと、前記エラストマーシート3又は前記金属回路5A,5Bの少なくとも一部に設けた凸部7と、前記貫通穴3Hの内壁に金属膜を形成したスルーホール9とを有する。さらに、前記凸部7の周りに溝部11を設け、この溝部11の側壁部は、エラストマーシート3の表裏面に対して鈍角をなすように傾斜するテーパ部13を形成していることを特徴とする。
【解決手段】ソケット1は、貫通穴3Hを設けた絶縁性のエラストマーシート3と、このエラストマーシート3の表裏面の少なくとも一部に設けた金属回路5A,5Bと、前記エラストマーシート3又は前記金属回路5A,5Bの少なくとも一部に設けた凸部7と、前記貫通穴3Hの内壁に金属膜を形成したスルーホール9とを有する。さらに、前記凸部7の周りに溝部11を設け、この溝部11の側壁部は、エラストマーシート3の表裏面に対して鈍角をなすように傾斜するテーパ部13を形成していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、CPUやLSI等のICパッケージをマザーボード側のプリント基板に実装する際に使用するソケットに関し、特に三次元回路技術を用いて立体回路を形成する構造のソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、CPUやLSI等のICパッケージをソケットによりプリント基板に実装する技術が検討されている。パーソナルコンピユータやマザーボードの多くは、LGAパケージやBGAパッケージのCPUを装着するソケットが実装されている。
【0003】
CPUは、機能、性能の向上に伴う多ピン化、高速化に対応するため、パッケージのサイズアップやファインピッチ化が進められている。それに伴い、ソケット側もサイズアップ化、ファインピッチ化が進められている。
【0004】
パッケージ側ではサイズアップに伴い、たわみ量の増大、接触ランドやボールばらつきが増大するものと予想される。一方、ソケット側としては、パッケージのサイズアップに対応するため、許容コンタクトストロークを増大させる必要がある。
【0005】
また、ファインピッチ化への対応としては、コンタクト物の小型化が予想されるが、接触抵抗の安定化に必要なストロークを確保する構造でなければならない。
【0006】
現在のLGAパッケージ用ソケットの主流は、約1mmピッチの400〜1000ピンのものであり、金属板を複雑に折り曲げて所定形状のコンタクト端子を作り、ソケットハウジングにコンタクト端子を挿入して製造する構造が用いられている。これらの従来技術は、例えば特許文献1及び特許文献2に示されている。
【特許文献1】特開2004−158430号公報
【特許文献2】特開2005−19284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に示された従来技術は、コンタクト端子が板バネ方式であるため、コンタクトのストロークを大きくしようとバネを長くすると、隣接するピンに接触してしまうため、ファインピッチ化になるとストロークを大きくできないという問題点があった。
【0008】
この問題を解決すべく導電性エラストマーを用いた方式が検討されている。この構造では反発力はエラストマーの特性で決まるため、要求にあった反発力を有するエラストマーを選択することで、要求の荷重で充分なストロークを確保することが可能である。
【0009】
しかし、導電性エラストマーを用いる問題点としては、コンタクトが金属でなくエラストマーであるため、金属接触に比較して接触抵抗が高く、高電流化に対して発熱や電圧降下の増大の恐れがある。さらに、パッケージの挿入の際にコンタクトが金属ランドをワイピングしないため、ランドの酸化膜除去が期待できないという新たな問題が発生する。
【0010】
この発明は、板バネ方式とエラストマー方式の両者の長所を生かしつつ、低抵抗、大電流化、高速化に対応すると共に良好なコンタクトを可能とするソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明のソケットは、貫通穴を設けた絶縁性のエラストマーシートと、このエラストマーシートの表裏面の少なくとも一部に設けた金属回路と、前記エラストマーシート又は前記金属回路の少なくとも一部に設けた凸部と、前記貫通穴の内壁に金属膜を形成したスルーホールとを有するソケットであって、前記凸部の周りに溝部を設け、この溝部の側壁部は、エラストマーシートの表裏面に対して鈍角をなすように傾斜するテーパ部を形成していることを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明のソケットは、前記ソケットにおいて、前記エラストマーシートがフッ素系エラストマーからなることが好ましい。
【0013】
また、この発明のソケットは、前記ソケットにおいて、前記エラストマーシートは、エラストマーより熱膨張係数の小さい材料からなるシート状の芯材の表裏にそれぞれエラストマー層を積層してなることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明によれば、プリント基板及びICパッケージとの接続用のコンタクト端子は導電性の良好な金属回路で行うことができ、反発力はエラストマーシートによって確保できるので、金属接触によるコンタクトでありながら、荷重−ストローク特性はエラストマーの特性で設計することができる。したがって、接触抵抗が低く、大電流化、高速化に対応することができ、部品点数を少なくできる。
【0015】
しかも、凸部の端子の周りに溝部を設け、この溝部の側壁部が、エラストマーシートの表裏面に対して鈍角をなすように傾斜するテーパ部となっているので、以下の効果を奏する。
【0016】
(1)金属回路を形成する工程において平行光の死角部分がなくなるため、エラストマーシートを数回にわたって傾斜させる等の対策をとる必要がなく、一回の露光で済む。
【0017】
(2)回路上面から側壁部につながる部分が鈍角となり、PEB工程でのレジストの流動によるレジスト切断を防ぐことができる。
【0018】
(3)現像、エッチング工程ではスプレー液の死角がなくなり、常時、新しいスプレー液を供給可能となるので、レジストおよびめっきの溶解や物理的作用による除去を促進することができ、生産効率の向上と品質向上に寄与する。
【0019】
(4)凸部に対する横方向の力ベクトルに対して耐性が増し、回路を垂直に変位することが可能となり、設計通りの機能を果たすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1及び図2を参照するに、この実施の形態に係るソケット1は、貫通穴3Hを設けた絶縁性のエラストマーシート3と、このエラストマーシート3の表裏面の少なくとも一部に設けた金属回路5A,5Bと、前記エラストマーシート3又は前記金属回路5A,5Bの少なくとも一部に設けた凸部7と、前記貫通穴3Hの内壁に金属膜を形成したスルーホール9とを有している。また、前記凸部7の周りに溝部11を設け、この溝部11の側壁部は、エラストマーシート3の表裏面に対して鈍角をなすように傾斜するテーパ部13を形成していることを特徴とする。
【0022】
なお、この実施の形態では、上記の凸部7はエラストマーシート3の少なくとも一部に設けられたものであり、凸部7の断面がほぼ半円形状のドーム状である。また、金属回路5A,5Bは前記凸部7の上に形成されている。この例の場合とは異なり、前述したように凸部7は前記金属回路5A,5Bの少なくとも一部に設けた場合であっても適用される。
【0023】
また、エラストマーシート3の表面側の金属回路5Aと裏面側の金属回路5Bとがスルーホール9によって電気的に接続されている。また、上記の金属回路5A,5Bには、金めっき15が設けられている。
【0024】
さらに、このソケット1は、図3及び図4に示されているように、プリント基板17のパターン配線17A及びICパッケージ19のLGA19Aとの接続用のコンタクト端子としては、銅などの導電性の良好な金属からなる金属箔が使用されており、反発力はエラストマーシート3によって確保する構造である。この構造にすることにより、金属接触によるコンタクトでありながら、荷重−ストローク特性はエラストマーの特性で設計することが可能である。
【0025】
したがって、プリント基板17のパターン配線17A及びICパッケージ19のLGAランド19Aと接触した上記の金属回路5A,5Bに電流が流れるため、接触抵抗が低く、大電流化、高速化に対応するソケット1となる。また、ソケット1の基材と反発力を確保するためのエラストマーとが一体型であるため、部品点数の少ないソケット1を実現できる。
【0026】
このエラストマーシート3の材料としては、金属回路5A,5Bに荷重が印加された際に、適度な弾性反発力を発揮し得る絶縁性の各種エラストマー材料の中から適宜選択して用いることができるが、特に、フッ素系エラストマーを用いることが好ましい。その理由は、フッ素系エラストマーを用いると、耐熱性が高くなり、このソケット1をプリント基板17やICパッケージ19と接合する際に、半田のリフロー処理が可能になり、接合工程が容易となり、生産コストを低減できるからである。
【0027】
基材、または弾性体として使用するエラストマーシート3は、一般に熱膨張係数が大きい。CPUをソケット1を介してプリント基板17に実装した場合、ソケット1にもCPUからの熱が伝わるため、エラストマーシート3を基材として使用する場合は、エラストマーの膨張収縮を考慮して、各端子のクリアランスを設計する必要がある。
【0028】
また、この実施の形態のエラストマーシート3は、エラストマー材料より熱膨張係数が小さい材料からなるシート状の芯材3Aの表裏両面にエラストマー層3Bを積層して構成したものである。上記の芯材3AによってCPUの発熱や製造プロセスにおける熱の影響を軽減する。芯材3Aを構成する熱膨張係数の小さい材料としては、ガラス繊維やガラスエボキシ樹脂、ポリイミドなどのようにエラストマーより熱膨張係数が小さく、ICパッケージ19やプリント基板17の熱膨張係数に近い材料が望ましい。なお、エラストマーシート3としては、上記の構造に限定されず、例えば芯材3Aを用いないで全体がエラストマー層3Bで構成しても良い。
【0029】
さらに、エラストマーシート3の表面、裏面の少なくとも一方の端子形成領域の周縁に沿って平面視で楕円形状に溝部11が設けられている。換言すれば、前記溝部11は凸部7の周りに設けられていることになる。これにより、荷重を印加した状態で、隣接端子同士に生じるエラストマーの引っ張り、圧縮による力の伝達を軽減できる。なお、前記溝部11は、平面視で楕円形状に限定されず、凸部7の周りに例えば平面視でU字状であっても、あるいはその他の形状に設けられてもよい。
【0030】
また、図2に示されているように、金属回路5とスルーホール9とからなる多数の端子を配列した構造であるとしても、荷重印加時に全ての端子の接続を確保することができる。
【0031】
また、このソケット1は、上記の溝部11の寸法(溝の深さ、溝の幅、溝で囲まれる面積など)を調整することにより、各端子は所望の荷重−変位特性を得るように制御することができる。したがって、荷重−変位特性の異なる各種のソケットを容易に製造できるので、荷重−変位特性の異なる各種のソケットの要求にも対応できる。さらに、各端子に荷重をかけたときに、隣接する端子にその荷重がおよぼす影響を限りなく小さくすることができる。また、回路形成部に電流が流れるため、電気的な導通経路を短距離にすることで、低インダクタンス化を実現することができ、低抵抗、大電流化、高速化に対応するソケット1を提供できる。
【0032】
上記の溝部11は、回路形成が終わった後に、YAGレーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、フェムト秒レーザなどのレーザで加工しても、あるいは細いドリルで設けても良い。また、予め、隣接端子間同士に生じるエラストマーの引っ張り、圧縮による力の伝達を軽減するための溝部11を設けたエラストマーシート3を成形しても良い。
【0033】
このソケット1は、ICパッケージ19側の端子が、ランドである場合やサーバ用ソケットのようにコンタクト部分をメンテナンス時に交換するため、プリント基板17側も半田付けせずランドのまま接続したい場合などに使用されるICパッケージ19としての例えばLGAパッケージとプリント基板17とを接続するためのソケット構造である。金属回路5A,5Bの形成部の一部に凸部7を設けたことにより、この凸部7の高さによってストロークを発生する構造となっている。
【0034】
また、金属回路形成部の一部に凸部7を設ける方法としては、予めエラストマーシート3に凸部7を設けておき、前記凸部7および金属回路形成部、スルーホール9となる貫通穴3Hにめっきなどの処理を施すことも可能である。エラストマーシート3に形成する凸部7は、エラストマーシート3の成形の際に、所望の位置に凸部7を設ける凹部が形成してある型を準備すれば、容易に形成することができる。
【0035】
このとき、凸部7を含めたエラストマーシート3の表面に回路形成を行う必要がある。この場合、凸部7を含めた表面にエッチングレジストを塗布できるかどうかが課題となる。
【0036】
一般的に、厚いレジスト膜を形成するためには、遠心力と表面張力を利用したスピンコート法などが用いられるが、平面でない所にレジストを塗布するにはスピンコート法を適用しにくい。すなわち、エラストマーシート3は、製造工程の一つのフォトリソグラフィー工程で問題が生じる立体構造であるため、一般的なラミネータを用いてラミネートを行うフィルム型フォトレジスト、スピンコート、またはカーテンコータや印刷で行う液状フォトレジストを適用することは困難である。
【0037】
そのため、電着型ポジフォトレジスト(関西ペイント ゾンネEDUV−P800B)を使用しているが、このレジストは露光後、PEB(露光前ベーク)による加熱が必要であり、加熱による軟化、流動が起こり、例えば、図9に示されているような比較例としてのソケット21では、垂直壁面23の角部でレジストが切断され易い。
【0038】
より詳しく説明すると、比較例のソケット21は、この実施の形態のソケット1の特徴を分かりやすく説明するために記載したものであり、凸部25の周りに溝部11を設け、この溝部11の側壁部が垂直壁面23となっていることが、この実施の形態のソケット1と異なる点である。その他はソケット1と同様である。
【0039】
また、ソケット21の場合は、露光時においては、垂直壁面23に対してフォトマスク27を通過する紫外光UVを照射するために、図10及び図11に示されているように傾斜用治具29を用いてエラストマーシート3を傾ける必要が生じる。このように露光を行うと、紫外光UVを当てたい部分と当てたくない部分の境界のコントロールは、エラストマーシート3の傾け方の誤差やエラストマーシート3の反りなどの影響により、非常に難しくなる。
【0040】
さらに、現像、エッチング工程では垂直壁面23がスプレー液の死角となり、直接にスプレー液が当たらないため、垂直壁面23のレジストおよびめっき除去には長時間を要する。
【0041】
ソケット21のマザーボード装着時においては、凸部25の端子に対して垂直に荷重が加われば期待通りの動きを示すことができるが、常に理想通りの垂直荷重が加わるとは限らず、図12のように凸部25に対して斜め方向の荷重が加わった場合、凸部25の端子が図13のように傾いてしまうので、設計通りの機能を発揮することができない。
【0042】
しかしながら、この実施の形態のソケット1では、凸部7の周りに溝部11を設け、この溝部11の側壁部が、エラストマーシート3の表裏面に対して鈍角をなすように傾斜するテーパ部13となっているので、PEB時における電着フォトレジストの軟化、流動によるレジスト切断を防ぐことができる。その上、露光時については垂直に紫外光UVを照射したとしても側壁部の死角がなくなる。そのため、エラストマーシート3を傾けて露光する必要がなくなり、工程管理が容易となる。垂直壁面23を有するソケット21では、各々の垂直壁面23に応じて傾斜させる必要があるために数回〜数十回の露光が必要となるが、この実施の形態のソケット1は1回の露光で済むので生産性が向上する。
【0043】
また、現像、エッチング工程では、テーパ部13に対しても直接液が当たるため、常時新しい液を供給でき、レジスト、めっきの溶解や物理的作用による除去を促すことができるので、これらの工程に要する時間の短縮化を図ることができる。
【0044】
また、ソケット1を実装する時は、凸部7の上部より下部の面積が広くなるため、横方向の力ベクトルに対する耐性が増加することになる。そのため、図5に示されているように、たとえ凸部7に対して斜め方向に荷重が加わったとしても、図6に示されているように、凸部7の端子が垂直に変位することが可能となり、設計通りの機能を果たすことができる。
【0045】
次に、この実施の形態のソケット1の製造方法の概略を説明する。
【0046】
エラストマーの成型金型においては、凸部7の端子側壁のテーパ部13に該当する部分にテーパが設けられる。前記成型金型にポリイミド基材の芯材3Aをセットし、フッ素系エラストマーなどのエラストマーを射出注型し、エラストマーの母材が作製される。次に、このシートにドリルやレーザなどで、所定の位置にスルーホール9となる貫通穴3Hが穿設される。
【0047】
次に、このエラストマーに特殊な前処理を行うことにより、活性化し、無電解銅めっきと電解銅めっきを併用してエラストマーの表面、裏面、スルーホール9となる貫通穴3Hに金属膜としての例えば銅めっきが施される。なお、予め無電解めっきで薄い金属膜をつけた後に、電解めっきを施せば、エラストマーシート3に厚い金属膜を付けることができる。
【0048】
次に、酸系の前処理液により、前記銅めっきの銅表面の酸化物を除去し、電着レジストが塗布される。電着レジストを塗布する方法としては、スプレーコートで霧状にして噴射する方法がある。
【0049】
フォトマスクが電着レジストの上にジグを用いてセットされる。次いで電着レジストに対して上下面の露光が行われ、140°Cで15分程度のPEB(Post Exposure Bake)が行われる。次いで、現像が行われ、回路部分のみのレジストを残した状態でエッチングが行われ、回路部分のみの銅箔が残される。この状態で、回路を形成するために塩化鉄、1塩化銅、水酸化アンモニウムなどの水溶液を用いて、回路形成が行われる。さらにその後、金めっき15により表面仕上げが行われる。
【0050】
上記の製造工程にて作製したソケット1は、ピッチが0.5〜1mmの非常に微細なものであるが、接触抵抗が安定化するのに充分な荷重を示すことができた。
【0051】
また、上部より下部に向けて広がるテーパ部13により面積を増したことで、凸部7の端子にかかる横方向の力ベクトルに対する耐性が増し、設計通りの端子動作をすることができ、ICパッケージ19のランド及び基板ランドに対するワイピングが行われるのを確認することができた。
【0052】
次に、この実施の形態のソケット1を用いた半導体装置におけるコンタクトの動作を説明する。なお、一例として、このソケット1をICパッケージ19としての例えばLGAパッケージのICのためのソケットとして用いた場合のコンタクト動作について説明する。
【0053】
図3を参照するに、半導体装置のプリント基板17にソケット1を載せ、さらにソケット1の上にICパッケージ19(LGAパッケージ)を載せる。上記のプリント基板17にはパターン配線17Aが形成されており、ICパッケージ19にはLGAランド19Aが形成されている。なお、このソケット1は、金属回路5の部分に設けた凸部7の高さによってストロークを発生する構造となっている。
【0054】
ICパッケージ19に荷重を加えると、図6に示されているように、エラストマーシート3が圧縮され、それに応じて反発力を発生しながら沈み込み、この時の荷重と発生する沈みが、荷重−変位特性となる。また、金属回路5A,5Bはスルーホール9の付近を支点にして沈み込むので、荷重を加えると、接触点がスルーホール9側に移動する。これによりワイピング効果をもたらし、それぞれの金属接触面にある酸化膜を除去してフレッシュな金属面同士を接触させることができるため、低低抗で接触を実現できる。
【0055】
なお、前述した実施の形態のソケット1では、凸部7の断面がほぼ半円の湾曲形状であるが、凸部形状の他の実施の形態としては、図7及び図8に示されているように、先端を鋭角の突起形状とすることができる。これにより、金属表面の酸化物を除去するワイピング効果をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の実施の形態のソケットを示す側面断面図で、図2の矢視I−I線の断面図である。
【図2】この発明の実施の形態のソケットを示す平面図である。
【図3】図1のソケットを装着した半導体装置で押圧力付与する前の状態を示す側面断面図である。
【図4】図3の半導体装置で押圧力付与した時の状態を示す側面断面図である。
【図5】図1のソケットの凸部の端子に斜めの荷重がかかる前の状態の説明図である。
【図6】図1のソケットの凸部の端子に斜めの荷重がかかった時の状態の説明図である。
【図7】この発明の他の実施の形態のソケットを示す側面断面図である。
【図8】この発明の他の実施の形態のソケットを示す側面断面図である。
【図9】垂直壁面を有するソケットを示す側面断面図である。
【図10】傾斜用治具を用いてエラストマーシートを傾けた状態説明図である。
【図11】傾斜用治具を用いてエラストマーシートを図10と反対側に傾けた状態説明図である。
【図12】図9のソケットの凸部の端子に斜めの荷重がかかる前の状態の説明図である。
【図13】図9のソケットの凸部の端子に斜めの荷重がかかった時の状態の説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ソケット
3 エラストマーシート
3A 芯材
3B エラストマー層
5A,5B 金属回路
7 凸部
9 スルーホール
11 溝部
13 テーパ部
15 金めっき
17 プリント基板
17A パターン配線
19 ICパッケージ
19A LGAランド
21 ソケット
23 垂直壁面
25 凸部
27 フォトマスク
29 傾斜用治具
【技術分野】
【0001】
この発明は、CPUやLSI等のICパッケージをマザーボード側のプリント基板に実装する際に使用するソケットに関し、特に三次元回路技術を用いて立体回路を形成する構造のソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、CPUやLSI等のICパッケージをソケットによりプリント基板に実装する技術が検討されている。パーソナルコンピユータやマザーボードの多くは、LGAパケージやBGAパッケージのCPUを装着するソケットが実装されている。
【0003】
CPUは、機能、性能の向上に伴う多ピン化、高速化に対応するため、パッケージのサイズアップやファインピッチ化が進められている。それに伴い、ソケット側もサイズアップ化、ファインピッチ化が進められている。
【0004】
パッケージ側ではサイズアップに伴い、たわみ量の増大、接触ランドやボールばらつきが増大するものと予想される。一方、ソケット側としては、パッケージのサイズアップに対応するため、許容コンタクトストロークを増大させる必要がある。
【0005】
また、ファインピッチ化への対応としては、コンタクト物の小型化が予想されるが、接触抵抗の安定化に必要なストロークを確保する構造でなければならない。
【0006】
現在のLGAパッケージ用ソケットの主流は、約1mmピッチの400〜1000ピンのものであり、金属板を複雑に折り曲げて所定形状のコンタクト端子を作り、ソケットハウジングにコンタクト端子を挿入して製造する構造が用いられている。これらの従来技術は、例えば特許文献1及び特許文献2に示されている。
【特許文献1】特開2004−158430号公報
【特許文献2】特開2005−19284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に示された従来技術は、コンタクト端子が板バネ方式であるため、コンタクトのストロークを大きくしようとバネを長くすると、隣接するピンに接触してしまうため、ファインピッチ化になるとストロークを大きくできないという問題点があった。
【0008】
この問題を解決すべく導電性エラストマーを用いた方式が検討されている。この構造では反発力はエラストマーの特性で決まるため、要求にあった反発力を有するエラストマーを選択することで、要求の荷重で充分なストロークを確保することが可能である。
【0009】
しかし、導電性エラストマーを用いる問題点としては、コンタクトが金属でなくエラストマーであるため、金属接触に比較して接触抵抗が高く、高電流化に対して発熱や電圧降下の増大の恐れがある。さらに、パッケージの挿入の際にコンタクトが金属ランドをワイピングしないため、ランドの酸化膜除去が期待できないという新たな問題が発生する。
【0010】
この発明は、板バネ方式とエラストマー方式の両者の長所を生かしつつ、低抵抗、大電流化、高速化に対応すると共に良好なコンタクトを可能とするソケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明のソケットは、貫通穴を設けた絶縁性のエラストマーシートと、このエラストマーシートの表裏面の少なくとも一部に設けた金属回路と、前記エラストマーシート又は前記金属回路の少なくとも一部に設けた凸部と、前記貫通穴の内壁に金属膜を形成したスルーホールとを有するソケットであって、前記凸部の周りに溝部を設け、この溝部の側壁部は、エラストマーシートの表裏面に対して鈍角をなすように傾斜するテーパ部を形成していることを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明のソケットは、前記ソケットにおいて、前記エラストマーシートがフッ素系エラストマーからなることが好ましい。
【0013】
また、この発明のソケットは、前記ソケットにおいて、前記エラストマーシートは、エラストマーより熱膨張係数の小さい材料からなるシート状の芯材の表裏にそれぞれエラストマー層を積層してなることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明によれば、プリント基板及びICパッケージとの接続用のコンタクト端子は導電性の良好な金属回路で行うことができ、反発力はエラストマーシートによって確保できるので、金属接触によるコンタクトでありながら、荷重−ストローク特性はエラストマーの特性で設計することができる。したがって、接触抵抗が低く、大電流化、高速化に対応することができ、部品点数を少なくできる。
【0015】
しかも、凸部の端子の周りに溝部を設け、この溝部の側壁部が、エラストマーシートの表裏面に対して鈍角をなすように傾斜するテーパ部となっているので、以下の効果を奏する。
【0016】
(1)金属回路を形成する工程において平行光の死角部分がなくなるため、エラストマーシートを数回にわたって傾斜させる等の対策をとる必要がなく、一回の露光で済む。
【0017】
(2)回路上面から側壁部につながる部分が鈍角となり、PEB工程でのレジストの流動によるレジスト切断を防ぐことができる。
【0018】
(3)現像、エッチング工程ではスプレー液の死角がなくなり、常時、新しいスプレー液を供給可能となるので、レジストおよびめっきの溶解や物理的作用による除去を促進することができ、生産効率の向上と品質向上に寄与する。
【0019】
(4)凸部に対する横方向の力ベクトルに対して耐性が増し、回路を垂直に変位することが可能となり、設計通りの機能を果たすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1及び図2を参照するに、この実施の形態に係るソケット1は、貫通穴3Hを設けた絶縁性のエラストマーシート3と、このエラストマーシート3の表裏面の少なくとも一部に設けた金属回路5A,5Bと、前記エラストマーシート3又は前記金属回路5A,5Bの少なくとも一部に設けた凸部7と、前記貫通穴3Hの内壁に金属膜を形成したスルーホール9とを有している。また、前記凸部7の周りに溝部11を設け、この溝部11の側壁部は、エラストマーシート3の表裏面に対して鈍角をなすように傾斜するテーパ部13を形成していることを特徴とする。
【0022】
なお、この実施の形態では、上記の凸部7はエラストマーシート3の少なくとも一部に設けられたものであり、凸部7の断面がほぼ半円形状のドーム状である。また、金属回路5A,5Bは前記凸部7の上に形成されている。この例の場合とは異なり、前述したように凸部7は前記金属回路5A,5Bの少なくとも一部に設けた場合であっても適用される。
【0023】
また、エラストマーシート3の表面側の金属回路5Aと裏面側の金属回路5Bとがスルーホール9によって電気的に接続されている。また、上記の金属回路5A,5Bには、金めっき15が設けられている。
【0024】
さらに、このソケット1は、図3及び図4に示されているように、プリント基板17のパターン配線17A及びICパッケージ19のLGA19Aとの接続用のコンタクト端子としては、銅などの導電性の良好な金属からなる金属箔が使用されており、反発力はエラストマーシート3によって確保する構造である。この構造にすることにより、金属接触によるコンタクトでありながら、荷重−ストローク特性はエラストマーの特性で設計することが可能である。
【0025】
したがって、プリント基板17のパターン配線17A及びICパッケージ19のLGAランド19Aと接触した上記の金属回路5A,5Bに電流が流れるため、接触抵抗が低く、大電流化、高速化に対応するソケット1となる。また、ソケット1の基材と反発力を確保するためのエラストマーとが一体型であるため、部品点数の少ないソケット1を実現できる。
【0026】
このエラストマーシート3の材料としては、金属回路5A,5Bに荷重が印加された際に、適度な弾性反発力を発揮し得る絶縁性の各種エラストマー材料の中から適宜選択して用いることができるが、特に、フッ素系エラストマーを用いることが好ましい。その理由は、フッ素系エラストマーを用いると、耐熱性が高くなり、このソケット1をプリント基板17やICパッケージ19と接合する際に、半田のリフロー処理が可能になり、接合工程が容易となり、生産コストを低減できるからである。
【0027】
基材、または弾性体として使用するエラストマーシート3は、一般に熱膨張係数が大きい。CPUをソケット1を介してプリント基板17に実装した場合、ソケット1にもCPUからの熱が伝わるため、エラストマーシート3を基材として使用する場合は、エラストマーの膨張収縮を考慮して、各端子のクリアランスを設計する必要がある。
【0028】
また、この実施の形態のエラストマーシート3は、エラストマー材料より熱膨張係数が小さい材料からなるシート状の芯材3Aの表裏両面にエラストマー層3Bを積層して構成したものである。上記の芯材3AによってCPUの発熱や製造プロセスにおける熱の影響を軽減する。芯材3Aを構成する熱膨張係数の小さい材料としては、ガラス繊維やガラスエボキシ樹脂、ポリイミドなどのようにエラストマーより熱膨張係数が小さく、ICパッケージ19やプリント基板17の熱膨張係数に近い材料が望ましい。なお、エラストマーシート3としては、上記の構造に限定されず、例えば芯材3Aを用いないで全体がエラストマー層3Bで構成しても良い。
【0029】
さらに、エラストマーシート3の表面、裏面の少なくとも一方の端子形成領域の周縁に沿って平面視で楕円形状に溝部11が設けられている。換言すれば、前記溝部11は凸部7の周りに設けられていることになる。これにより、荷重を印加した状態で、隣接端子同士に生じるエラストマーの引っ張り、圧縮による力の伝達を軽減できる。なお、前記溝部11は、平面視で楕円形状に限定されず、凸部7の周りに例えば平面視でU字状であっても、あるいはその他の形状に設けられてもよい。
【0030】
また、図2に示されているように、金属回路5とスルーホール9とからなる多数の端子を配列した構造であるとしても、荷重印加時に全ての端子の接続を確保することができる。
【0031】
また、このソケット1は、上記の溝部11の寸法(溝の深さ、溝の幅、溝で囲まれる面積など)を調整することにより、各端子は所望の荷重−変位特性を得るように制御することができる。したがって、荷重−変位特性の異なる各種のソケットを容易に製造できるので、荷重−変位特性の異なる各種のソケットの要求にも対応できる。さらに、各端子に荷重をかけたときに、隣接する端子にその荷重がおよぼす影響を限りなく小さくすることができる。また、回路形成部に電流が流れるため、電気的な導通経路を短距離にすることで、低インダクタンス化を実現することができ、低抵抗、大電流化、高速化に対応するソケット1を提供できる。
【0032】
上記の溝部11は、回路形成が終わった後に、YAGレーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、フェムト秒レーザなどのレーザで加工しても、あるいは細いドリルで設けても良い。また、予め、隣接端子間同士に生じるエラストマーの引っ張り、圧縮による力の伝達を軽減するための溝部11を設けたエラストマーシート3を成形しても良い。
【0033】
このソケット1は、ICパッケージ19側の端子が、ランドである場合やサーバ用ソケットのようにコンタクト部分をメンテナンス時に交換するため、プリント基板17側も半田付けせずランドのまま接続したい場合などに使用されるICパッケージ19としての例えばLGAパッケージとプリント基板17とを接続するためのソケット構造である。金属回路5A,5Bの形成部の一部に凸部7を設けたことにより、この凸部7の高さによってストロークを発生する構造となっている。
【0034】
また、金属回路形成部の一部に凸部7を設ける方法としては、予めエラストマーシート3に凸部7を設けておき、前記凸部7および金属回路形成部、スルーホール9となる貫通穴3Hにめっきなどの処理を施すことも可能である。エラストマーシート3に形成する凸部7は、エラストマーシート3の成形の際に、所望の位置に凸部7を設ける凹部が形成してある型を準備すれば、容易に形成することができる。
【0035】
このとき、凸部7を含めたエラストマーシート3の表面に回路形成を行う必要がある。この場合、凸部7を含めた表面にエッチングレジストを塗布できるかどうかが課題となる。
【0036】
一般的に、厚いレジスト膜を形成するためには、遠心力と表面張力を利用したスピンコート法などが用いられるが、平面でない所にレジストを塗布するにはスピンコート法を適用しにくい。すなわち、エラストマーシート3は、製造工程の一つのフォトリソグラフィー工程で問題が生じる立体構造であるため、一般的なラミネータを用いてラミネートを行うフィルム型フォトレジスト、スピンコート、またはカーテンコータや印刷で行う液状フォトレジストを適用することは困難である。
【0037】
そのため、電着型ポジフォトレジスト(関西ペイント ゾンネEDUV−P800B)を使用しているが、このレジストは露光後、PEB(露光前ベーク)による加熱が必要であり、加熱による軟化、流動が起こり、例えば、図9に示されているような比較例としてのソケット21では、垂直壁面23の角部でレジストが切断され易い。
【0038】
より詳しく説明すると、比較例のソケット21は、この実施の形態のソケット1の特徴を分かりやすく説明するために記載したものであり、凸部25の周りに溝部11を設け、この溝部11の側壁部が垂直壁面23となっていることが、この実施の形態のソケット1と異なる点である。その他はソケット1と同様である。
【0039】
また、ソケット21の場合は、露光時においては、垂直壁面23に対してフォトマスク27を通過する紫外光UVを照射するために、図10及び図11に示されているように傾斜用治具29を用いてエラストマーシート3を傾ける必要が生じる。このように露光を行うと、紫外光UVを当てたい部分と当てたくない部分の境界のコントロールは、エラストマーシート3の傾け方の誤差やエラストマーシート3の反りなどの影響により、非常に難しくなる。
【0040】
さらに、現像、エッチング工程では垂直壁面23がスプレー液の死角となり、直接にスプレー液が当たらないため、垂直壁面23のレジストおよびめっき除去には長時間を要する。
【0041】
ソケット21のマザーボード装着時においては、凸部25の端子に対して垂直に荷重が加われば期待通りの動きを示すことができるが、常に理想通りの垂直荷重が加わるとは限らず、図12のように凸部25に対して斜め方向の荷重が加わった場合、凸部25の端子が図13のように傾いてしまうので、設計通りの機能を発揮することができない。
【0042】
しかしながら、この実施の形態のソケット1では、凸部7の周りに溝部11を設け、この溝部11の側壁部が、エラストマーシート3の表裏面に対して鈍角をなすように傾斜するテーパ部13となっているので、PEB時における電着フォトレジストの軟化、流動によるレジスト切断を防ぐことができる。その上、露光時については垂直に紫外光UVを照射したとしても側壁部の死角がなくなる。そのため、エラストマーシート3を傾けて露光する必要がなくなり、工程管理が容易となる。垂直壁面23を有するソケット21では、各々の垂直壁面23に応じて傾斜させる必要があるために数回〜数十回の露光が必要となるが、この実施の形態のソケット1は1回の露光で済むので生産性が向上する。
【0043】
また、現像、エッチング工程では、テーパ部13に対しても直接液が当たるため、常時新しい液を供給でき、レジスト、めっきの溶解や物理的作用による除去を促すことができるので、これらの工程に要する時間の短縮化を図ることができる。
【0044】
また、ソケット1を実装する時は、凸部7の上部より下部の面積が広くなるため、横方向の力ベクトルに対する耐性が増加することになる。そのため、図5に示されているように、たとえ凸部7に対して斜め方向に荷重が加わったとしても、図6に示されているように、凸部7の端子が垂直に変位することが可能となり、設計通りの機能を果たすことができる。
【0045】
次に、この実施の形態のソケット1の製造方法の概略を説明する。
【0046】
エラストマーの成型金型においては、凸部7の端子側壁のテーパ部13に該当する部分にテーパが設けられる。前記成型金型にポリイミド基材の芯材3Aをセットし、フッ素系エラストマーなどのエラストマーを射出注型し、エラストマーの母材が作製される。次に、このシートにドリルやレーザなどで、所定の位置にスルーホール9となる貫通穴3Hが穿設される。
【0047】
次に、このエラストマーに特殊な前処理を行うことにより、活性化し、無電解銅めっきと電解銅めっきを併用してエラストマーの表面、裏面、スルーホール9となる貫通穴3Hに金属膜としての例えば銅めっきが施される。なお、予め無電解めっきで薄い金属膜をつけた後に、電解めっきを施せば、エラストマーシート3に厚い金属膜を付けることができる。
【0048】
次に、酸系の前処理液により、前記銅めっきの銅表面の酸化物を除去し、電着レジストが塗布される。電着レジストを塗布する方法としては、スプレーコートで霧状にして噴射する方法がある。
【0049】
フォトマスクが電着レジストの上にジグを用いてセットされる。次いで電着レジストに対して上下面の露光が行われ、140°Cで15分程度のPEB(Post Exposure Bake)が行われる。次いで、現像が行われ、回路部分のみのレジストを残した状態でエッチングが行われ、回路部分のみの銅箔が残される。この状態で、回路を形成するために塩化鉄、1塩化銅、水酸化アンモニウムなどの水溶液を用いて、回路形成が行われる。さらにその後、金めっき15により表面仕上げが行われる。
【0050】
上記の製造工程にて作製したソケット1は、ピッチが0.5〜1mmの非常に微細なものであるが、接触抵抗が安定化するのに充分な荷重を示すことができた。
【0051】
また、上部より下部に向けて広がるテーパ部13により面積を増したことで、凸部7の端子にかかる横方向の力ベクトルに対する耐性が増し、設計通りの端子動作をすることができ、ICパッケージ19のランド及び基板ランドに対するワイピングが行われるのを確認することができた。
【0052】
次に、この実施の形態のソケット1を用いた半導体装置におけるコンタクトの動作を説明する。なお、一例として、このソケット1をICパッケージ19としての例えばLGAパッケージのICのためのソケットとして用いた場合のコンタクト動作について説明する。
【0053】
図3を参照するに、半導体装置のプリント基板17にソケット1を載せ、さらにソケット1の上にICパッケージ19(LGAパッケージ)を載せる。上記のプリント基板17にはパターン配線17Aが形成されており、ICパッケージ19にはLGAランド19Aが形成されている。なお、このソケット1は、金属回路5の部分に設けた凸部7の高さによってストロークを発生する構造となっている。
【0054】
ICパッケージ19に荷重を加えると、図6に示されているように、エラストマーシート3が圧縮され、それに応じて反発力を発生しながら沈み込み、この時の荷重と発生する沈みが、荷重−変位特性となる。また、金属回路5A,5Bはスルーホール9の付近を支点にして沈み込むので、荷重を加えると、接触点がスルーホール9側に移動する。これによりワイピング効果をもたらし、それぞれの金属接触面にある酸化膜を除去してフレッシュな金属面同士を接触させることができるため、低低抗で接触を実現できる。
【0055】
なお、前述した実施の形態のソケット1では、凸部7の断面がほぼ半円の湾曲形状であるが、凸部形状の他の実施の形態としては、図7及び図8に示されているように、先端を鋭角の突起形状とすることができる。これにより、金属表面の酸化物を除去するワイピング効果をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の実施の形態のソケットを示す側面断面図で、図2の矢視I−I線の断面図である。
【図2】この発明の実施の形態のソケットを示す平面図である。
【図3】図1のソケットを装着した半導体装置で押圧力付与する前の状態を示す側面断面図である。
【図4】図3の半導体装置で押圧力付与した時の状態を示す側面断面図である。
【図5】図1のソケットの凸部の端子に斜めの荷重がかかる前の状態の説明図である。
【図6】図1のソケットの凸部の端子に斜めの荷重がかかった時の状態の説明図である。
【図7】この発明の他の実施の形態のソケットを示す側面断面図である。
【図8】この発明の他の実施の形態のソケットを示す側面断面図である。
【図9】垂直壁面を有するソケットを示す側面断面図である。
【図10】傾斜用治具を用いてエラストマーシートを傾けた状態説明図である。
【図11】傾斜用治具を用いてエラストマーシートを図10と反対側に傾けた状態説明図である。
【図12】図9のソケットの凸部の端子に斜めの荷重がかかる前の状態の説明図である。
【図13】図9のソケットの凸部の端子に斜めの荷重がかかった時の状態の説明図である。
【符号の説明】
【0057】
1 ソケット
3 エラストマーシート
3A 芯材
3B エラストマー層
5A,5B 金属回路
7 凸部
9 スルーホール
11 溝部
13 テーパ部
15 金めっき
17 プリント基板
17A パターン配線
19 ICパッケージ
19A LGAランド
21 ソケット
23 垂直壁面
25 凸部
27 フォトマスク
29 傾斜用治具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴を設けた絶縁性のエラストマーシートと、このエラストマーシートの表裏面の少なくとも一部に設けた金属回路と、前記エラストマーシート又は前記金属回路の少なくとも一部に設けた凸部と、前記貫通穴の内壁に金属膜を形成したスルーホールとを有するソケットであって、前記凸部の周りに溝部を設け、この溝部の側壁部は、エラストマーシートの表裏面に対して鈍角をなすように傾斜するテーパ部を形成していることを特徴とするソケット。
【請求項2】
前記エラストマーシートがフッ素系エラストマーからなることを特徴とする請求項1記載のソケット。
【請求項3】
前記エラストマーシートは、エラストマーより熱膨張係数の小さい材料からなるシート状の芯材の表裏にそれぞれエラストマー層を積層してなることを特徴とする請求項1又は2記載のソケット。
【請求項1】
貫通穴を設けた絶縁性のエラストマーシートと、このエラストマーシートの表裏面の少なくとも一部に設けた金属回路と、前記エラストマーシート又は前記金属回路の少なくとも一部に設けた凸部と、前記貫通穴の内壁に金属膜を形成したスルーホールとを有するソケットであって、前記凸部の周りに溝部を設け、この溝部の側壁部は、エラストマーシートの表裏面に対して鈍角をなすように傾斜するテーパ部を形成していることを特徴とするソケット。
【請求項2】
前記エラストマーシートがフッ素系エラストマーからなることを特徴とする請求項1記載のソケット。
【請求項3】
前記エラストマーシートは、エラストマーより熱膨張係数の小さい材料からなるシート状の芯材の表裏にそれぞれエラストマー層を積層してなることを特徴とする請求項1又は2記載のソケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−272246(P2009−272246A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123801(P2008−123801)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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