説明

ソルダリング用支持板

【課題】 回路ショート、導通不良などの問題が発生するおそれを抑制ししつつも、電子部品がソルダリング時に熱のダメージを受けることを抑制し得るソルダリング用支持板を提供することにある。
【解決手段】 プリント配線板のソルダリングに用いられ、前記プリント配線板を搭載して支持した状態で前記ソルダリングを行うソルダリング用支持板であって、前記ソルダリング時にプリント配線板を支持し得る耐熱性を有し且つ樹脂100重量部に対し水酸化アルミニウムが50〜300重量部配合されてなる耐熱性樹脂混和物を用いて形成されていることを特徴とするソルダリング用支持板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板のソルダリング時に前記プリント配線板を支持するソルダリング用支持板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板は、絶縁性基材の表面に銅箔で回路が形成されたプリント配線板を用いて前記回路上に設けられたランドと呼ばれる個所に、抵抗、コンデンサーなどの電子部品の端子をハンダ付けすることで実装されて形成されている。
このように電子部品をプリント配線板上に実装する方法として、従来、表面実装、挿入実装などの方法が広く用いられている。
この表面実装においては、粉末ハンダをバインダーでペースト状にしたクリームハンダをプリント配線板のランド部にスクリーン印刷などで塗布し、該塗布されたクリームハンダの上に電子部品の端子を配した状態で、熱風や赤外線などの加熱手段を備えたリフロー炉の中をコンベヤなどの搬送手段により通過させ、これらの加熱手段によりプリント配線板表面を、通常、220〜260℃に加熱してクリームハンダを溶融させ端子とランドとのハンダ付けを行うソルダリング工程が採用されている。
【0003】
一方、挿入実装においては、ランド部にプリント配線板の裏面まで貫通する貫通孔を設け、この貫通孔にランドの裏面側から電子部品の端子を挿通し、端子の先端部をプリント配線板表面のランドから突出させ、該プリント配線板表面を下に向けた状態で、通常、220〜260℃の温度で溶融されたハンダが噴流している噴流ハンダ槽の溶融ハンダと前記ランド部とを接触させて端子とランドとをハンダ付けするソルダリング工程が採用されている。
【0004】
このようなソルダリング工程においては、プリント配線板が高い温度に加熱されて熱変形することを防止すべくステンレスやアルミニウムなどの金属製のソルダリング用支持板にプリント配線板を支持させる方法が採用されている。
しかし、金属板は、熱伝導性が高いために、ソルダリング時の熱を伝達し電子部品にダメージを与えやすいものとなり、特許文献1には、ソルダリング用支持板の一部をガラス入りエポキシ樹脂など金属板よりも熱伝導率の低い耐熱性樹脂にて構成させ、電子部品がソルダリング時に熱のダメージを受けることを抑制する方法が記載されている。
【0005】
ところで、樹脂材料は、前記金属材料に比べて溶融したハンダが付着しやすい事が知られている。そのため、前述のごとくソルダリング用支持板が樹脂材料を備えている場合は、該樹脂材料部にハンダが付着し、該付着したハンダによりプリント回路基板にショートや導通不良などの問題を発生させるおそれを有する。すなわち、ハンダが、ソルダリング用支持板から外れてプリント回路基板に付着すると回路間をショートさせるおそれがある。また、ソルダリング用支持板に付着しているハンダが酸化している場合には、ハンダ酸化物は、溶融状態のハンダに対し不溶不融であることから、溶融ハンダとランド部との間にこのハンダ酸化物が介在して回路と電子部品とのハンダ付けを阻害し、プリント回路基板に導通不良を発生させるおそれを有している。
すなわち、従来のソルダリング用支持板は、回路ショート、導通不良などの問題が発生するおそれを抑制しつつ電子部品がソルダリング時に熱のダメージを受けることを抑制することが困難であるという問題を有している。
【0006】
【特許文献1】特開2002−185124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記問題点に鑑み、回路ショート、導通不良などの問題が発生するおそれを抑制ししつつも、電子部品がソルダリング時に熱のダメージを受けることを抑制し得るソルダリング用支持板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、耐熱性樹脂混和物として水酸化アルミニウムが配合されたものを用いることで、ソルダリング工程において、前記耐熱性樹脂混和物と溶融したハンダとの接触時に水酸化アルミニウムに脱水反応を起こさせることができ、水酸化アルミニウムが配合されていない樹脂材料に比べてハンダ付着を抑制し得ることを見出し本発明の完成に到ったのである。
【0009】
即ち本発明は、前記課題を解決すべく、プリント配線板のソルダリングに用いられ、前記プリント配線板を搭載して支持した状態で前記ソルダリングを行うソルダリング用支持板であって、前記ソルダリング時にプリント配線板を支持し得る耐熱性を有し且つ樹脂100重量部に対し水酸化アルミニウムが50〜300重量部配合されてなる耐熱性樹脂混和物を用いて形成されていることを特徴とするソルダリング用支持板を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ソルダリング用支持板が耐熱性樹脂混和物を備えているためソルダリング時の熱により電子部品がダメージを受けることを抑制することができ、前記耐熱性樹脂混和物に水酸化アルミニウムが配合されていることからハンダの付着を抑制し、プリント回路基板の導通不良やショートなどの問題を抑制し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について挿入実装に用いられるソルダリング用支持板について説明する。
本実施形態において、ソルダリング用支持板は、複数積層されたガラスマットと該ガラスマットに含浸されて配された耐熱性樹脂混和物からなる平板状の素材板をエンドミル等の切削加工手段により、支持するプリント配線板に適した形状に加工され形成されている。
【0012】
すなわち、本実施形態のソルダリング用支持板1の表面には、図1に示す通り、支持するプリント配線板2より僅かに大きな外縁を有し且つプリント配線板2の厚さより僅かに大きな深さを有する凹部11が形成されている。該凹部11には、電子部品4を配したプリント配線板2を取付けてプリント配線板2の上面とソルダリング用支持板1との表面を略同一とさせ得るように、配される電子部品4の位置に該電子部品4の高さに応じてさらに凹入した凹入個所12が形成されている。さらに、前記凹部11にはハンダAと接触させるランド21が配される位置に、ソルダリング用支持板1の裏面側から溶融したハンダを接触させてハンダ付けし得るように、裏面まで貫通する開口個所13が形成されている。
また、前記ソルダリング用支持板1は、ソルダリング時にプリント配線板2を前記凹部11に固定させて保持するための固定具3を備えている。
【0013】
本実施形態の前記ソルダリング用支持板1は、ハンダと接する面を2〜7μmの表面粗さに粗化されている。該表面粗さが2μm以上であれば、粗化がなされていない場合に比べて、さらにハンダの付着を抑制し得るものとなる。また、前記表面粗さが7μmを超えると美観が極端に低下して、商品価値が乏しいものとなるおそれがあるためである。
なお、前記表面粗さとは、JIS B 0601に準じ、表面粗さ計を用い10点平均粗さ(Rz)を測定した値である。
【0014】
前記素材板は、前記耐熱性樹脂混和物をガラスマットに含浸させ、該ガラスマットを複数積層して熱プレスで加熱して架橋するとともに積層一体化されて平板状に形成されている。
なお、前記耐熱性樹脂混和物をガラスマットに含浸させる手段、該耐熱性樹脂混和物を含浸したガラスマットを複数積層して熱プレスにより加熱一体化させる手段などは、一般的に用いられるコーター、熱プレスなどの機器を用いることができる。
【0015】
本実施形態においては、安価でかつソルダリング用支持板としての強度を優れたものとし得る点から前記ガラスマットを採用しているが、本発明においては、ガラスマットに代えて、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維などの織布または不織布などを用いることも可能で、また、これらを用いずに耐熱性樹脂混和物だけでソルダリング用支持板を形成することも可能である。この耐熱性樹脂混和物だけでソルダリング用支持板を形成する場合には、前記プレスに代えて射出成形等により所定形状に成形することもでき、エンドミルなどによる外形加工工程を省略することができることから生産性に優れるものとなる。
なお、該射出成形の金型内面や、前記熱プレスのプレスプレートの表面を適度に加工することにより、ソルダリング用支持板のハンダと接する面を、前述のように2〜7μmの表面粗さとなるようにしてもよい。
【0016】
前記耐熱性樹脂混和物は、ソルダリング時に溶融したハンダAが付着することを抑制し得るよう水酸化アルミニウムが配合されている。また、前記耐熱性樹脂混和物は、ソルダリング時にプリント配線板2を支持し得る耐熱性を有し、前記素材板の製造を容易にさせ、材料コストを低下させ得るという優れた点を有することからジシクロペンタジエン変成不飽和ポリエステル樹脂と、該ジシクロペンタジエン変成不飽和ポリエステル樹脂を架橋する架橋剤となるラジカル反応性芳香族モノマーと、前記架橋反応を促進させる反応開始剤とが配合されている。
【0017】
前記耐熱性樹脂混和物に用いる前記ジシクロペンタジエン変成不飽和ポリエステル樹脂としては、ジャパンコンポジット株式会社より市販の「ポリホ−プSD−4235」などを用いることができる。
【0018】
前記水酸化アルミニウムは、前記ジシクロペンタジエン変成不飽和ポリエステル樹脂100重量部に対し、50〜300重量部配合される。
配合される水酸化アルミニウムの量が上記のような範囲とされるのは、50重量部未満のときは、水酸化アルミニウムの量が少なくハンダの付着を抑制するのに十分な量とならならず、300重量部を越えて配合しても、配合量に応じたハンダの付着抑制効果が得られないばかりか、前記耐熱性樹脂混和物の強度を低下させてしまうためである。
【0019】
前記水酸化アルミニウムとしては、樹脂に分散させやすく且つ配合重量に対してより表面積を大きくして効率の良い脱水反応が行われ得るという点において、平均粒径が1〜20μmのものが好適である。
なお、該平均粒径は、レーザ回折法により求められる累積粒度分布を示す曲線の50vol%の値を意味し、例えば、島津製作所から「SALD」シリーズとして市販のレーザ回折式粒度分布測定装置などにより測定することができる。
また、前記水酸化アルミニウムとしては、要すれば、脂肪酸やカップリング剤などにより表面処理されたものを用いてもよく、これら表面処理された水酸化アルミニウムを用いた場合には、前記分散をより高いものとすることができ、さらに、耐熱性樹脂混和物の強度を表面処理がなされていない水酸化アルミニウムを用いた場合に比べて高いものにできるという優れた点を有する。
【0020】
前記架橋剤であるラジカル反応性芳香族モノマーとしては、スチレンモノマー、ジアリルフタレ−トモノマ−などを使用することができる。
【0021】
前記反応開始剤としては、ジクミルパーオキサイド、t−ブチル パーオキシ ベンゾエートなどの有機過酸化物を使用することができる。
【0022】
なお、これら耐熱性樹脂混和物の配合剤を混合する手段としては、ボールミキサー、ホモジナイザーなどの一般的な混合攪拌手段を採用することができる。
【0023】
次いで、図2を用いて本実施形態のソルダリング用支持板1の使用方法について説明する。
【0024】
プリント配線板2のランド部21に設けられた貫通孔(図示せず)に、ランド部21が形成された面とは反対側から電子部品4の端子41を挿入し、通常、前記ランド部21から数mm突出させる。
このようにして、電子部品4の配置を行ったプリント配線板2を、前記ソルダリング用支持板1に前記ランド部21が開口箇所13に位置するよう配置して搭載し、固定具3により固定する。
プリント配線板2を上方に搭載して保持した状態で、前記ソルダリング用支持板1を、通常、260℃で溶融噴流しているハンダ槽を用いてソルダリングする。すなわち、前記ハンダ槽の槽壁5から溶融噴流しているハンダAを前記開口個所13の下側からランド部21に接触させ得るようにプリント配線板2を搭載したソルダリング用支持板1をハンダ液面に押し付けて数秒保持し、前記ランド部21と前記端子41とをハンダ付けする。
【0025】
このとき、ソルダリング用支持板1の下面と溶融ハンダAとが接触するが、前記ソルダリング用支持板1に含まれる水酸化アルミニウムが脱水反応を起こして接触面から水蒸気を発してハンダAが付着することを抑制する。
【0026】
なお、本実施形態においては、上記のごとく構成されたソルダリング用支持板を上記のごとく使用しているが、本発明においては、溶融するハンダの付着を抑制し得るように樹脂100重量部に対し、水酸化アルミニウムが50〜300重量部配合され、ソルダリング工程に使用し得る耐熱性を有する耐熱性樹脂混和物を備えていれば前記ソルダリング用支持板として、その構成、形態、使用方法などを特に限定するものではなく、例えば、ソルダリングの熱により電子部品がダメージを受けるおそれのない部分などを金属材料にて構成することも可能である。
【実施例】
【0027】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
(実施例1〜5、比較例1〜5)
基材となるガラスマット(日本ガラス繊維株式会社製「REM360−E1」)に表1の通り配合した配合物を含浸したものを、10枚積層し、150℃×1.0hの熱プレスを行った。該熱プレスされたものを約5cm角に切断し、テストピースとした。
なお、樹脂Aとしては、ジャパンコンポジット株式会社より製品名「ポリホ−プSD−4235」として市販のジシクロペンタジエン変成不飽和ポリエステル樹脂を用い、樹脂Bとしては、ジャパンエポキシレジン株式会社より商品名「エピコート828」として市販のエポキシ樹脂70重量部と、同じく商品名「エピコート1001」として市販のエポキシ樹脂30重量部とを混合して用いた。
架橋剤Aとしては、東都化成株式会社より市販の商品名「ダップトートモノマー」を用い、架橋剤Bとしては、和歌山精化工業株式会社より市販の商品名「セイカキュア−S」を用いた。
反応開始剤Aとしては、日本油脂株式会社より市販の「パ−ブチルZ」を用い、反応開始剤Bとしては、ステラケミファ株式会社より市販の「三フッ化ホウ素モノエチルアミン」を用いた。
水酸化アルミニウムAとしては、昭和電工株式会社より市販の商品名「ハイジライトH−31」を用い、水酸化アルミニウムBとしては、アルマティス株式会社より市販のB−315」を用いた。
【0029】
(評価)
上記のごとく作成したテストピースを、260℃の噴流ハンダ槽に3時間浮かべた後、静かに持ち上げて放冷し、ハンダと接していた面のハンダ付着を観察した。
評価は、テストピース全体の面積に対して、ハンダの付着している面積を百分率にて表すことにより行った。結果を表1に示す。
なお、比較例3においては、テストピースの作成が困難であり上記の評価は実施できなかった。
【0030】
(参考例1)
また、参考例1として、実施例2と同様にして作成したテストピースを、120〜240番のサンドペーパーにて研磨して表面粗さ(Rz)が2〜7μmとなるよう粗化し、上記と同様の評価を行った結果も合わせて表1に示す。
なお、未研磨状態のテストピースの表面粗さ(Rz)は、1.4μmであった。
【0031】
表1から、樹脂100重量部に対し水酸化アルミニウムが50〜300重量部配合されることでハンダの付着を抑制し得ることがわかる。
【0032】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】一実施形態のソルダリング用支持板を示す斜視図。
【図2】同実施形態のソルダリング用支持板を用いたソルダリング工程を示す断面図。
【符号の説明】
【0034】
1 ソルダリング用支持板
2 プリント配線板
A ハンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板のソルダリングに用いられ、前記プリント配線板を搭載して支持した状態で前記ソルダリングを行うソルダリング用支持板であって、
前記ソルダリング時にプリント配線板を支持し得る耐熱性を有し且つ樹脂100重量部に対し水酸化アルミニウムが50〜300重量部配合されてなる耐熱性樹脂混和物を用いて形成されていることを特徴とするソルダリング用支持板。
【請求項2】
前記樹脂としてジシクロペンタジエン変成不飽和ポリエステル樹脂が用いられている請求項1記載のソルダリング用支持板。
【請求項3】
表面粗さが2〜7μmである請求項1又は2記載のソルダリング用支持板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−80250(P2006−80250A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261801(P2004−261801)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000190611)日東シンコー株式会社 (104)
【Fターム(参考)】