説明

ソレノイドおよびこれを用いたポンプ

【課題】 大きな推力を得ることができるとともに、幅広い推力特性を有するソレノイドを提供する。
【解決手段】 励磁コイル32と、励磁コイル32の内側に設けられる円筒状のガイドパイプ37と、ガイドパイプ37内に挿入されて配置される小径部38と、ガイドパイプ37の外部に配置される大径部40とを有する可動子36と、励磁コイル32の一方の端面側を覆い、可動子36の小径部38の外周面に対向する第1の対向面41および小径部38の一方側の端面38aと対向する第2の対向面42を有する第1のヨーク部34aと、励磁コイル32の他方の端面側を覆い、第1のヨーク部34aと磁気的に連結すると共に、可動子36の大径部40の外周面に対向する第3の対向面43および大径部40の一方側の端面40aと対向する第4の対向面44を有する第2のヨーク部34bとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータとしてのソレノイドおよびこれを用いたポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的に知られるソレノイドの構成を図7に示す。
ソレノイド10は、励磁コイル12と、励磁コイル12を囲んで組付けられたヨーク14と、励磁コイル12の中心部分に配置されたガイドパイプ15と、ガイドパイプ15によって摺動自在に保持される可動子16(可動鉄心:プランジャ)とを具備している。ヨーク14は励磁コイル12の一方側に設けられている上ヨーク14aと、励磁コイルの他方側に設けられている下ヨーク14bとからなる(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
このように特許文献1や特許文献2に開示されているソレノイド10の上ヨーク14aには、可動子16の一方側の端面16aに対向する対向面20と、この可動子の一方側の端面16a付近の外周面16bに対向する対向面21が形成されている。
これにより、ヨーク14と可動子16との間の対向面積が増えるので、形成される磁気回路のパーミアンスを大きくすることができ、より大きい推力発生に寄与することができる。
【0004】
また、特許文献3や特許文献4には、可動子16の他方の端部に励磁コイル12の他方側を覆うような大径部18を形成し、大径部18と下ヨーク14bとの間で推力を発生させようと考慮したソレノイドが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−277327号公報
【特許文献2】特開2005−291244号公報
【特許文献3】特開平7−263222号公報
【特許文献4】特開2003−338408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ソレノイドの可動子の推進力は、ヨークと可動子の間に形成される磁気回路のパーミアンスによって大きな影響を受ける。パーミアンスの大きさは、磁路の断面積に比例し、磁路に形成されたギャップ(隙間)の大きさに反比例するので、ヨークと可動子との間の対向面積はなるべく広くし、且つヨークと可動子との間の距離はなるべく短くする必要がある。
【0007】
上述した特許文献1や特許文献2のような構成では、推力の発生に主に寄与するのは可動子の一方側の端面およびこの一方側の外周面で生じるヨークとのギャップの部分であり、可動子の他方側における部位では推力の発生にあまり寄与しておらず、可動子の他方側においても大きい推力を発生に寄与させたいという課題がある。
【0008】
特許文献3や特許文献4に開示されているように、可動子の他方側の端部に大径部を設ければ、この大径部の一方側の端面とヨークとのギャップの部分で推力を生じさせることができ、上記のような課題は解決できる。しかし、大径部がヨークから離れているときには大きな推力を生じさせることができず、推力発生領域を広くとることができない場合もあるという課題がある。
【0009】
なお、上述したように、ソレノイドでは、パーミアンスを大きくするために、可動子とヨークとの間の空隙をなるべく狭くなるように製造することが求められる。
しかし、従来のソレノイドでは、励磁コイルを製造する際にコイルをコイルボビンに巻き付け、このコイルボビンの中心に形成された中空部内に可動子を挿入してガイドパイプとして利用していた。
かかる場合、コイル巻付時にはコイルボビンが変形することもあり、予めコイルボビンの中空部は可動子の外径に対して予め大きく取るようにせざるを得ない。コイルボビンの中空部の径を予め大きくとっておくことで、可動子と中空部の同心度は悪化するので、予めヨークと可動子との間の隙間も予め大きくしておく必要がある。これにより、結果としてパーミアンスを大きくすることができず、構造的に大きな推力を得ることができないという課題もあった。
【0010】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、大きな推力を得ることができるとともに、幅広い推力特性を有するソレノイドを提供すること、およびこのようなソレノイドを用いて吸入・吐出能力に優れたポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明にかかるソレノイドによれば、励磁コイルと、励磁コイルの内側に設けられる円筒状のガイドパイプと、ガイドパイプ内に挿入されて配置される小径部と、ガイドパイプの外部に配置される大径部とを有する可動子と、前記励磁コイルの一方の端面側を覆い、可動子の小径部の外周面に対向する第1の対向面および小径部の一方側の端面と対向する第2の対向面を有する第1のヨーク部と、前記励磁コイルの他方の端面側を覆い前記第1のヨーク部と磁気的に連結すると共に、前記大径部の外周面に対向する第3の対向面および大径部の一方側の端面と対向する第4の対向面を有する第2のヨーク部とを具備することを特徴としている。
この構成を採用することによる作用は以下の通りである。
すなわち、可動子の一方側の端部と第1のヨーク部との間では、可動子の端面と外周面が第1のヨーク部と対向して推力を発生させることができる。また、可動子の他方側の端部では大径部の一方側の端面と大径部の外周面の双方で、ヨークと対向する。すなわち、大径部がガイドパイプから最も突出している位置においても大径部の外周面が第2のヨーク部の第3の対向面に対向しているので、推力の安定領域を広げて幅広い推力特性を得られ、制御性を良くすることができる。
【0012】
また、前記ガイドパイプの外周面に予め巻回されて形成された励磁コイルが装着されて構成されていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、予め励磁コイルを巻線整形しておき、予め整形された励磁コイルをガイドパイプに外挿することでソレノイドを構成することができる。これにより、ガイドパイプに導線を巻き付けて励磁コイルを整形することによるガイドパイプの変形を防止することができ、予めガイドパイプの内径と可動子の小径部との外径との間のクリアランスを極小にしておくことができる。したがって、第2のヨーク部の各対向面と可動子の小径部との間のギャップと、第2のヨーク部の各対向面と可動子の大径部との間のギャップとをきわめて狭くすることが可能となり、パーミアンスを大きくすることができるため、大きな推力を得ることができる。
【0013】
また、前記ガイドパイプは合成樹脂製であって、励磁コイルと一体に成形されてなることを特徴としてもよい。
この構成によれば、予め励磁コイルを巻線整形しておき、予め整形された励磁コイルガイドパイプの成形と一体に成形するので、ガイドパイプに導線を巻き付けて励磁コイルを整形することによるガイドパイプの変形を防止することができ、予めガイドパイプの内径と可動子の小径部との外径との間のクリアランスを極小にしておくことができる。したがって、第1のヨーク部の各対向面と可動子の小径部との間のギャップと、第2のヨーク部の各対向面と可動子の大径部との間のギャップとをきわめて狭くすることが可能となり、パーミアンスを大きくすることができるため、大きな推力を得ることができる。
【0014】
前記ガイドパイプは合成樹脂製であって、前記第1のヨーク部および前記第2のヨーク部のうちの少なくとも一方と、インサート成形またはアウトサート成形されてなることを特徴としてもよい。
この構成によれば、可動子の小径部との間でクリアランスを極小にすることができるガイドパイプを基準として各ヨーク部の組み付けが行えるので、各ヨーク部の対向面と可動子との間のギャップ精度をきわめて正確に出すことができる。このため、パーミアンスを大きくすることができるため、より大きな推力を得ることができる。
【0015】
さらに、前記可動子の大径部の他方側の端面には、一方側に凹んだ凹部が形成されていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、凹部を形成した分だけ可動子が軽量化されるので、より大きな推力の発生に寄与する。
【0016】
また、前記大径部の他方側の端面に形成された凹部の内壁面は、開口部から底面に向かうにしたがって徐々に凹部が小径となるようなテーパ状に形成されていることを特徴としてもよい。
すなわち、大径部の外周面は第2のヨーク部の第3の対向面と磁路を形成するが、凹部を形成することで小径部に向う部分が狭くなってしまうと磁気飽和を生じて可動子とヨークとの間で大きな磁束を生じることができなくなってしまう。しかし、このように底面に向けて凹部が徐々に小径となることで、大径部の第2のヨーク部の第3の対向面と対向した部位が他方側に向けて徐々に肉厚となり、磁気飽和を生じにくくしてより大きな推力を得ることができる。
【0017】
本発明にかかるポンプによれば、請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載のソレノイドを用い、前記可動子の一方側の端部にダイアフラムを設け、該ダイアフラムの動作によって容積変化するダイアフラム室を設け、該ダイアフラム室の容積変化に伴って動作する吸入弁および吐出弁を設けたことを特徴としている。
この構成のポンプによれば、推力の大きいソレノイドでダイアフラムを動作させるので、吸入・吐出能力に優れたポンプを提供できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかるソレノイドによれば、推力の安定領域を広げて幅広い推力特性を得られるので、制御性を良くすることができる。
また、本発明にかかるポンプによれば、吸入・吐出能力に優れたポンプとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態について図1に基づいて説明する。
ソレノイド30は、励磁コイル32と、ヨーク34と、可動子36を具備している。可動子36はガイドパイプ37の内部に収納保持されている。ガイドパイプ37は、非磁性体材料で構成されており、具体的には合成樹脂製である。
【0020】
ヨーク34は、磁性体材料から構成され、励磁コイル32の周囲を覆って形成される。励磁コイル32の両端部とヨーク34との間には絶縁部材33が設けられている。
ヨーク34は、励磁コイル32の一方側に配置された上ヨーク34aと、他方側に配置された下ヨーク34bとから構成されている。
なお、特許請求の範囲で言う第1のヨーク部が上ヨーク34a、第2のヨーク部が下ヨーク34bに該当する。本実施形態では、下ヨーク34bがコイルの側面を覆うようにしている。
【0021】
可動子36は、磁性体から構成された部材である。可動子36は、ガイドパイプ37内に収納される部位である小径部38と、小径部38の他方側の端部に設けられた大径部40とを有している。
小径部38の外径は、ガイドパイプ37の内径よりもわずかに小さく形成されており、ガイドパイプ37内で可動子36が良好に摺動するように設けられる。
大径部40の外径はガイドパイプ37の内径よりも大径に形成されており、大径部40はガイドパイプ37内には収納されず、ガイドパイプ37の外部に位置している。
【0022】
可動子36は、励磁コイル32が生じる磁気エネルギーによって吸引される方向に動作する。なお、可動子36の突出方向への移動はばね(図6参照)等によって行なわれる。
【0023】
上ヨーク34aの中心部には、可動子36の小径部38の一方側の端面38aと対向する第2の対向面42が形成されている。上ヨーク34aには、第2の対向面42を囲み、第2の対向面42に対して他方方向に垂直に立ち上げられた延出部の内壁面に、第1の対向面41が形成されている。第1の対向面41は、可動子36の小径部38の一方側の端面38a近傍の外周面38bと対向している。
上ヨーク34aにおいては、第1の対向面41と第2の対向面42とが可動子36との間で磁路を形成する。
【0024】
下ヨーク34bは、励磁コイル32の側面を覆う側壁部34cと励磁コイル32の他方の端部を覆う対向面部34dとから構成されている。対向面部34dは、大径部40の外周面40bに対向する第3の対向面43と、大径部40の一方側の端面40aに対向する第4の対向面44とを有している。
第3の対向面43は、第4の対向面44に対して他方方向に垂直に立ち上げられた延出部の内壁面に形成されている。
【0025】
第1の対向面41および第3の対向面43は、可動子36の小径部38の外周面38bおよび大径部40の外周面40bに対してそれぞれ接触しない程度のわずかな隙間を空けて配置される。
そして、このように第1の対向面41と第3の対向面43における隙間が極めて微小な幅となるように製造できるのは、ソレノイド30の製造段階において、予めコイルを巻いて構成しておいた励磁コイル32をガイドパイプ37と一体成形したためである。このため、励磁コイル32はリング状のモールド型のコイルとなる。このようにすることで、ガイドパイプ37にコイルを直接巻き付ける場合に生じるガイドパイプの変形を防止し、このガイドパイプ37を基準として上ヨーク34aと下ヨーク34bとを組付けることによって、正確な組付けが達成できる。
ちなみに本実施形態では、第1の対向面41と可動子36の小径部38の外周面38bとの間、および第3の対向面43と大径部40の外周面40bとの間の隙間を、それぞれ0.1mm程度にすることが可能となる。
【0026】
なお、下ヨーク34bの対向面部34dには、防振ゴム48が取り付けられている。可動子36が一方側へ移動していくと、大径部40の一方側の端面40aが防振ゴム48に当接するので、大径部40が下ヨーク34bに当接することに起因する振動を防止することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
次に、ソレノイドの第2の実施形態について、図2および図3に基いて説明する。
なお、上述した実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する場合もある。
【0028】
本実施形態における可動子36の大径部40は、他方側の端面40cが一方側に凹んで形成されている。このように、大径部40の他方側の端面40cに凹部45を形成したことにより、大径部40の外周面40bにおける下ヨーク34bとの対向面面積をそのままにして軽量化を図ることができる。
【0029】
ガイドパイプ37と、上ヨーク34aまたは下ヨーク34bとの組み付けは、ガイドパイプ37と、上ヨーク34aまたは下ヨーク34bとをインサート成形またはアウトサート成形により行うと好適である。
インサート成形とは、上ヨーク34aまたは下ヨーク34bを金型に埋め込んでガイドパイプ37を構成する合成樹脂を金型内に射出する成形方法であり、アウトサート成形とは、上ヨーク34a上または下ヨーク34b上に合成樹脂を射出してガイドパイプ37を成形するものである。
どちらの方法によっても、ガイドパイプ37と上ヨーク34aまたは下ヨーク34bの同心度が向上するので、第1の対向面41、第3の対向面43における可動子36との隙間をきわめて小さくすることができ、パーミアンスを大きくすることにより大きい推力を生じさせることができる。
【0030】
本実施形態の励磁コイル32は、予めコイルを巻いて構成しておいたものをガイドパイプ37の外周部に外挿することにより、固定される。
このように励磁コイル32を組み付けることにより、ガイドパイプ37にコイルを直接巻き付ける場合に生じるガイドパイプの変形を防止することができる。
【0031】
ガイドパイプ37は、励磁コイル32の他方側の端部を覆うように励磁コイル32方向に突出するフランジ部46が形成されている。ガイドパイプ37のフランジ部46が励磁コイル32の他方側の端部と下ヨーク34bの対向面部34dとの間に介在するので、絶縁部材を設けなくとも励磁コイル32と下ヨーク34bとの間の絶縁を図ることができる。
【0032】
なお、図4に示すように、可動子36の大径部40の他方側端面の凹部45は、内壁面45aがテーパ状になるように形成してもよい。すなわち、大径部40の凹部45の内壁面45aは底面側に向かって徐々に小径となるように形成されている。これにより、大径部40の外周面40bから小径部38へ向かう磁路の断面積が増加することとなり、磁気飽和を防いで良好に磁路を形成させることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、ガイドパイプ37と下ヨーク34bとをインサート成形またはアウトサート成形により行う場合について図示して説明した。かかる場合、本実施形態のソレノイド30は、ガイドパイプ37と下ヨーク34bとを一体成形したのちに、予めコイルを巻いて構成しておいた励磁コイル32をガイドパイプ37の外周に挿入し、その後に上ヨーク34aを組み付けることによって製造される。
ただし、ガイドパイプ37を成形する際には、励磁コイル32、上ヨーク34aおよび下ヨーク34bの各部材全てを、ガイドパイプ37と一体となるようにインサート成形またはアウトサート成形するようにしてもよい。
【実施例】
【0034】
図1で示したように、大径部40の外周面40bに対向する第3の対向面43を下ヨーク34bに設けた第1の実施形態のソレノイドの推力特性を、従来品(大径部40は形成されているが、大径部40の外周面40bに対向する対向面が形成されていない)の推力特性と比較してグラフに示す(図5参照)。
グラフは、横軸が可動子36の他方側への突出距離を示し、縦軸が推力を示している。
【0035】
グラフによれば、第1の実施形態におけるソレノイドは、従来品と比較して可動子36の移動距離の全域(可動子36が一方側に最も近づいたときを除く)にわたって大きな推力を得ていることが判明した。
これにより、下ヨーク34bに、大径部40の外周面40bに対向する第3の対向面43を形成することによる推力の増加を図れることが実証された。
【0036】
(ポンプの実施形態)
次に、上述してきたソレノイド30を用いたポンプについて図6に基いて説明する。
ここで図示しているソレノイド30は第1の実施形態のソレノイドであり、上述してきた構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する場合もある。
【0037】
ポンプ50はソレノイド30の可動子36によってダイアフラム52を往復運動させ、ダイアフラム室53の容積を変化させて流体の吸排を可能にするものである。ダイアフラム室53は、ダイアフラム52の一方側の面と、後述するポンプカバー54の他方側の面とで挟まれて形成された空間である。
【0038】
ソレノイド30の可動子36の中心部には、ダイアフラム52と連結する支持棒56が設けられている。
支持棒56は、ソレノイド30から一方側へ突出して設けられており、ダイアフラム52の中心部に固定されている。
【0039】
また、ソレノイド30の可動子36は、ばね57によって他方方向に付勢されている。ばね57は、可動子36の内部に形成されたばね収納部59において、支持棒56の周囲に配置され、ばね収納部59の他方側の端面と上ヨーク34aの第2の対向面42との間で圧縮されるようにして設けられている。
【0040】
可動子36は、励磁コイル32に励磁電流を流すことによって形成される磁気回路によって一方方向へ動作する方向に力が働く。励磁コイル32に流される励磁電流がオフとなった場合には、磁気回路による力は消滅し、可動子36はばねの付勢力により他方方向へ動作する。
可動子36は、このように励磁コイル32へ流される励磁電流のオン−オフによって、往復運動する。
【0041】
ソレノイド30の上ヨーク34aの一方側端部には、ポンプカバー54が配置されている。ポンプカバー54と上ヨーク34aの外周面には下ヨーク34bの側壁部34cが配置されている。側壁部34cの先端部は、ポンプカバー54の一方側の端面に沿って曲げられており、側壁部34cが上ヨーク34aとポンプカバー54とを挟持している。
【0042】
ダイアフラム52の周縁部52aは、上ヨーク34aの一方側端部とポンプカバー54との間に挟み込まれて固定されている。
ダイアフラム52の周縁部52aは、上ヨーク34aとポンプカバー54との間に挟み込まれて押し潰されることにより、上ヨーク34aとポンプカバー54との間をシールする役割を有する。
【0043】
ポンプカバー54には、ダイアフラム52の往復駆動によって動作する吸入弁と、吐出弁とが設けられている。吸入弁と吐出弁とは、ポンプカバー54から一方側に突出した2つの筒状部70,71の内部に設けられる。
ポンプカバー54の筒状部70,71のいずれか一方の内部は、ダイアフラム室53とポンプ外部とを連通する吸入孔60が形成されている。吸入孔60内には、吸入孔60のポンプ外部に接する部位となる外側開口部63の内側に当接して吸入孔60を閉塞するチェックボール64が配置されている。チェックボール64が吸入弁に該当する。
【0044】
チェックボール64にはばね66の一端が当接しており、ばね66の付勢力によって外側開口部63を閉塞するように付勢されている。ばね66の他端は、ばね66の他端を保持する止め輪72に当接している。止め輪72は、リング状に形成されており、吸入孔60のダイアフラム室53に連通する部位となる内側開口部73が形成されている。
【0045】
ポンプカバー54の筒状部70,71のいずれか他方の内部は、ダイアフラム室53とポンプ外部とを連通する吐出孔62が形成されている。吐出孔62内には、吐出孔62のダイアフラム室53に接する部位となる内側開口部67の外側に当接して吐出孔62を閉塞するチェックボール68が配置されている。チェックボール68が吐出弁に該当する。
【0046】
チェックボール68にはばね69の一端が当接しており、ばね69の付勢力によって内側開口部67を閉塞するように付勢されている。ばね69の他端は、ばね69の他端を保持する止め輪74に当接している。止め輪74は、リング状に形成されており、吐出孔62のポンプ外部に連通する部位となる外側開口部75が形成されている。
【0047】
ポンプ50の動作について説明する。
励磁コイル32に励磁電流が流れると、可動子36はばね57の付勢力に抗して一方方向へ移動し、支持棒56の先端に設けられたダイアフラム52を一方方向に押圧する。
するとダイアフラム室53内の流体が吐出孔62内のチェックボール68をばね69の付勢力に抗して押圧する。すると、内側開口部67が開口し、ダイアフラム室53内の流体が吐出孔62から外部へ吐出される。
【0048】
励磁コイル32へ流れる励磁電流がオフになると、可動子36はばね57の付勢力によって他方方向へ移動し、支持棒56の先端に設けられたダイアフラム52を他方方向に移動させる。
するとダイアフラム室53内の容積が増加し、吸入孔60内のチェックボール64をばね66の付勢力に抗してダイアフラム室53側に引っ張る。すると、外側開口部63が開口し、ダイアフラム室53内へ吸入孔60から流体が流入する。
【0049】
このようにして、ソレノイド30の可動子36の往復動によって、ポンプ50は流体を良好に吸入・吐出できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
なお、このようなポンプは、上述したソレノイドを用いることで小型化しても省電力で十分な推力を得られるので、優れた吸排能力を備えることができ、燃料電池の空気や燃料を供給するためのポンプ、医療器具、ノートパソコンの冷却用等様々な用途に良好に用いることができる。
【0051】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明にかかるソレノイドの第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明にかかるソレノイドの第2の実施形態を示す断面図である。
【図3】図2に示したソレノイドにおいて可動子が他方側に突出しているところを示す断面図である。
【図4】第2の実施形態のソレノイドの他の例を示す断面図である。
【図5】第1の実施形態のソレノイドの推力―変位特性を示すグラフである。
【図6】第1の実施形態のソレノイドを用いたポンプの断面図である。
【図7】従来のソレノイドの断面図である。
【符号の説明】
【0053】
30 ソレノイド
32 励磁コイル
33 絶縁部材
34 ヨーク
34a 上ヨーク
34b 下ヨーク
34c 側壁部
34d 対向面部
36 可動子
37 ガイドパイプ
38 小径部
38a 一方側の端面
38b 外周面
40 大径部
40a 一方側の端面
40b 外周面
40c 他方側の端面
41 第1の対向面
42 第2の対向面
43 第3の対向面
44 第4の対向面
45 凹部
45a 凹部の内壁面
46 フランジ部
48 防振ゴム
50 ポンプ
52 ダイアフラム
52a ダイアフラムの周縁部
53 ダイアフラム室
54 ポンプカバー
56 支持棒
57,66,69 ばね
59 収納部
60 吸入孔
62 吐出孔
63,75 外側開口部
64,68 チェックボール
67,73 内側開口部
70,71 筒状部
72,74 止め輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルと、
励磁コイルの内側に設けられる円筒状のガイドパイプと、
ガイドパイプ内に挿入されて配置される小径部と、ガイドパイプの外部に配置される大径部とを有する可動子と、
前記励磁コイルの一方の端面側を覆い、前記可動子の小径部の外周面に対向する第1の対向面および前記小径部の一方側の端面と対向する第2の対向面を有する第1のヨーク部と、
前記励磁コイルの他方の端面側を覆い、前記第1のヨーク部と磁気的に連結すると共に、前記可動子の大径部の外周面に対向する第3の対向面および前記大径部の一方側の端面と対向する第4の対向面を有する第2のヨーク部とを具備することを特徴とするソレノイド。
【請求項2】
前記ガイドパイプの外周面に予め巻回されて形成された励磁コイルが装着されて構成されていることを特徴とする請求項1記載のソレノイド。
【請求項3】
前記ガイドパイプは合成樹脂製であって、励磁コイルと一体に成形されてなることを特徴とする請求項1記載のソレノイド。
【請求項4】
前記ガイドパイプは合成樹脂製であって、前記第1のヨークおよび前記第2のヨークのうちの少なくとも一方と、インサート成形またはアウトサート成形されてなることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項記載のソレノイド。
【請求項5】
前記可動子の大径部の他方側の端面には、一方側に凹んだ凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項記載のソレノイド。
【請求項6】
前記大径部の他方側の端面に形成された凹部の内壁面は、開口部から底面に向かうにしたがって徐々に凹部が小径となるようなテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項5記載のソレノイド。
【請求項7】
請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載のソレノイドを用い、
前記可動子の一方側の端部にダイアフラムを設け、
該ダイアフラムの動作によって容積変化するダイアフラム室を設け、
該ダイアフラム室の容積変化に伴って動作する吸入弁および吐出弁を設けたことを特徴とするポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−281192(P2007−281192A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105653(P2006−105653)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】