説明

ソレノイドバルブ

【課題】ボールガイドを樹脂性材料にて成形して、ボールガイドを抜けとめ部材に設けた爪形状によりベースに係止する際、該ベースの変形や加締め加工による不良品の発生を防止かつ軽量で安価なソレノイドバルブを提供する。
【解決手段】ソレノイドバルブ10は吸入口41、吐出口42を有する弁部12と、弁部12に接続して通電状態に応じて弁部12を作動させるコイル部13とを有する。弁部は、吐出口42を有する中空筒状のベース14と、ベース内に収容されてコイル部32への通電状態に応じて吸入口と吐出口との間を連通・遮断するボール15と、吸入口を有しボール15がベースから抜け落ちるのを防止する抜け止め部材16とを備え、ボール5の外径よりも大径の大径孔25と、大径孔25の外周からボール15の外径よりも内径側に向かって突出する第1の突出部26及び抜け止め部材16の外径方向に突出する第2の突出部28とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATまたはCVT等の自動車の自動変速機に用いられるソレノイドバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のソレノイドバルブは弁機構と該弁機構に接続するコイル装置とから構成され、弁機構は吐出口を有する中空筒状のベースと、該ベース内に収容されるとともにコイル装置への通電状態に応じて吸入口と吐出口との間を連通・遮断するボールと、ベースと異なる部材からなり、吸入口を有するとともにボールがベースから抜け落ちるのを防止するボールガイドとを備えている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−314739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ベースの端面の円周に軸心方向に指向する凹状溝を設け、該凹形状に外力等を加えて変形させ、ボールガイドを該ベースに固定することが開示されている。
この場合、固定されるベースの凹状溝は肉厚が薄く、該凹状溝を形成するためにベースの形状が複雑になり、ボールガイドは金属製材料で形成されているため比較的重くなり、コスト低減を阻害する要因になっている。
本発明は係る課題を解決するためになされたもので、ボールガイドを樹脂性材料にて成形するとともに、該ボールガイドを抜けとめ部材に設けた突出部によりベースに係止することを特徴とするソレノイドバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するため請求項1記載の発明は、流体を吸入する吸入口及び該流体を吐出する吐出口を有する弁部と、
前記弁部に接続するとともに通電状態に応じて前記弁部の作動を切換可能なコイル部とで有するソレノイドバルブあって、
前記弁部は、前記吐出口を有する中空筒状のベースと、前記ベース内に収容されるとともに前記コイル部への通電状態に応じて前記吸入口と前記吐出口との間を連通・遮断するボールと、
前記ベースと異なる樹脂性部材から成り、前記吸入口を有するとともに前記ボールが前記ベースから抜け落ちるのを防止するボールガイドとを備え、
前記ボールガイドは、前記ボールの外径よりも大径の大径孔と、前記ボールガイドの一側に設けられ前記大径孔の外周からボール材の外径よりも内径側に向かって突出しする複数の第一の突出部と、
前記ボールガイドの他側に設けられ前記ボールガイドの外径よりも外径側に向かって突出し前記ボールガイドに係合する複数の第二の突出部と、
を有することを特徴とするソレノイドバルブ。
請求項2記載の発明では、前記第一及び第二の突出部は、周方向に関して等間隔の少なくとも3ヵ所に形成されることを特徴とする。
請求項3記載の発明では、前記ボールガイドは、前記ボールと前記ベースの内周面との間における軸方向に延在するとともに前記ボールの径方向への動きをガイドするガイド部を有することを特徴とするソレノイドバルブ。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、ボールガイドに形成した突出部によって該ボールガイドがベースに係止されるので該ベースから抜け落ちるのが確実に防止される。また、突出部によりボールガイドはベースに係止されるので、変形や加締め加工による不良等の廃品がないので生産性向上に寄与する効果が大である。また、ボールガイドを樹脂成形で製作することによって軽量化かつ安価で生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明を実施の形態に係るソレノイドバルブの縦断面図である。
【図2】図1のベースとボールガイドとの構成を示す要部拡大図である。
【図3】図1のボールガイドの拡大断面図である。
【図4】図3のA矢視方向の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のソレノイドバルブにつき好適な実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態に係るソレノイドバルブ10の縦断面図を示す。
ソレノイドバルブ10は、流体を吸入する吸入口及び流体を吐出する吐出口を有する弁部12と、該弁部12接続するとともに通電状態(通電・非通電)に応じて弁部12の作動を切換える(連通状態を切換える)コイル部13とから構成される。
【0009】
弁部12は、吐出口42を有する中空筒状のベース14と、該ベース14内に収容されるとともにコイル部13への通電状態に応じて吸入口41と吐出口42との間を連通・遮断するボール15と、ベース14と異なる部材から成り、吸入口41を有するとともにボール15がベース14から抜け落ちるのを防止するボールガイド16と、ベース14の内周面に挿入して固定された第1のシート部材17と、同じくベース14の内周面に挿入して固定された第2のシート部材18と、を備えている。
また、ベース14は後述するヨーク38との間で流体を排出する排出口(図示しない)を形成してし、オイルパン(図示せず)につながっており、大気圧となっている。吸入口41はオイルポンプ(図示しない)に連通しており、該オイルポンプから吐出される圧油を吸入している。吐出口42はシフトバルブ(図示しない)と連通しており、吐出される流体に応じてシフトバルブの位置を切換えている。
【0010】
次に弁部12の各構成についてさらに説明する。ベース14は金属材料、例えばアルミニウム製であり、切削により異なる内径となるように中空とされ、吐出口42がこの中空部分と連通するようにベース14の軸心方向と垂直に形成されている。第1のシート部材17は図1の左側から挿入して固定され、ボール15を着座させるボールシート部19を一端側に形成するとともに中心に貫通穴20を形成している。また、第2のシート部材18は図1の右側からベース14に挿入して固定され、後述する可動鉄心35のドレン弁部37を着座させる弁部シート部23を一端側に形成するとともに同じく中心に貫通穴24が形成されている。なお、可動鉄心35にはピン22が固定されている。
【0011】
本発明の主旨であるボールガイド16について説明する。図2はベース14とボールガイド16との構成を示す要部拡大図であり、図3はボールガイド16の拡大断面図、図4は図3のA矢視方向をそれぞれ示す。ボールガイド16は樹脂性材料で成形されて円筒状を呈している。そして、ボールガイド16はその一端側(図1及び図2で左側)でボール15が抜け落ちるのを防止するように構成されるとともに、内周側でボール5の径方向位置をガイドするように構成されている。ボールガイド16には、ボール15の外径よりも大径の大径孔25が形成されている。
【0012】
さらに、ボールガイド16の一端側(図1で左側)には大径孔25の外周からボール15の外径よりも内径側に向かって第1の突出部26が突出している。第1の突出部26は周方向に等間隔に複数個、例えば3箇所に形成されており、この第1の突出部26によってボール15が抜け止めされている。ボールガイド16の内周側には、内周面からボール15の外径と若干外径側となるように径方向内方に向かうガイド部27が形成されている。ガイド部27は、周方向に関して第1の突出部26と同位置となるように該突出部26に沿って軸方向に延在しており、このガイド部27によってボールガイド16内におけるボール15の径方向への移動がガイドされている。
【0013】
さらに、ボールガイド16の他端側(図1及び図2で右側)には、該ボールガイド16の外径方向の突出する第2の突出部28が形成されている。この第2の突出部28によって、ボールガイドを挿入した際にベースの溝部分に嵌め込まれ、ベースと係止されている。第2の突出部28は周方向に等間隔に複数個、例えば3箇所に形成されている。この場合、第1及び第2の突出部26,28は、円周方向の位置が同一でも良いし、同一でなくても良いが、同一位置の方がボールガイド16を成形、例えば射出成形する際には金型の構造が簡単に成形しやすくなり、コストが低減できるのでよい。
【0014】
コイル部13は、樹脂性材料で成形される筒状のボビン31と、ボビン31の外周に巻回されるコイル32と、ボビン31の一端側でコイル32と電気的に接続するターミナル33と、磁性体より成り、ボビン31の他端側に形成される固定鉄心34と、磁性体より成りボビン31の一端側の内周に軸方向に摺動可能に配設されるピン22を有する可動鉄心35とから構成されている。
固定鉄心34はボビン31の他端側(図1で右側)の内周に挿入されるとともに該ボビン31の外周を覆う形状を呈している。可動鉄心35の一端(図1で左端)には貫通孔20、24より小径のロッド部36が形成され、さらに、ドレン弁部37が形成されている。また、可動鉄心35は、固定鉄心34との間に配設されるコイルスプリング39により図1の左方向に常時付勢されている。ボビン31の内周面には、可動鉄心35との磁気の受け渡しを助長するための筒状のヨーク38が形成されている。
【0015】
次に、本実施形態におけるソレノイドバルブ10の作動について説明する。コイル32への通電がなされていない図1に示す状態では、可動鉄心35と固定鉄心34との間に磁気吸引力が作用しておらず、可動鉄心35はコイルスプリング39の弾発力によって図1の左方向に付勢されている。なお、コイルスプリング39の弾発力は、吸入口41から吸入される流体がボール15に作用して該ボール15がロッド部36を図1で右方向に押し付ける力よりも充分大きく設定されており、コイル32の非通電時に可動鉄心35が右方向に移動することはない。
【0016】
そのため、可動鉄心35のロッド部36は貫通穴20、24を貫通してボール15を図1の左方向に押し付ける。この状態では、ボール15はボールガイド16の第1の突出部26に当接し、第2のボールシート部17には当接しないので、吸入口41から吸入された流体は、ボールガイド16内部から貫通穴20、24を介して吐出口42に導入される。このとき、弁部シート部23に可動鉄心35のドレン弁部37が当接しているので、流体は排出口からは排出されな。したがって、吸入口41から吸入された流体は全て吐出口42から吐出され、吐出された流体圧に応じてシフトバルブが作動する。
【0017】
次に、図1に示す状態からコイル32が通電されると、可動鉄心35と固定鉄心34との間に磁気吸引力が作用する。磁気吸引力と流体の吐出圧による軸心方向のスラスト力との和がコイルスプリング39の弾発力よりも大きくなると、可動鉄心35は図1の右方向に移動して、ボール15とロッド部36とが離間するとともにボール15は第1のシート部材17のボールシート部19に当接する。これと同時に可動鉄心35のドレン弁部37と弁部シート部23とが離間する。
【0018】
この状態では、吸入口41から吸入される流体は吐出口42に向けて吐出されることなく、さらに、吐出口41と排出口(図示しない)とが連通しているので、シフトバルブに供給された吐出圧は排出口を介して排出される。このように、コイル32の非通電から通電への切換えに応じてシフトバルブの作動も切換えられる。
【0019】
本発明の実施の形態によると、第1の突出部26によりボール15の抜け止めを行うようにするとともに、大径孔25をボール15の外径よりも径方向外側に形成しているので、コイル32の非通電時には、ボールガイド16の大径孔25を介して吐出口42に向けて吐出される流体の流量損失が小さくなり、性能上有利である。
【0020】
また、ボールガイド16はベース14と異なる部材、例えば樹脂性材料から構成されているので、ボールガイド16に大径孔25、第1及び第2の突出部26、28を形成する際に、射出成形加工で成形することが可能となり、製造上有利である。
さらに、ボールガイド16はベース14に加締め加工をすることなく第2の突出部28によりボールガイド16を挿入した際にベースの溝部分に嵌め込まれ係止し、大きな外力等を加えないので固定による変形や不良等の廃品が少ない。
【0021】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、例えば、自動変速機のシフトバルブの切換え以外にも、流体圧を切換え制御する装置に適用できることは言うまでもない。また、ボールガイド16の第1及び第2の突出部26、28の数は、ボール15の抜け止めが可能であれば3つでなくてもよい。
【符号の説明】
【0022】
10 ソレノイドバルブ 12 弁部
13 コイル部 14 ベース
15 ボール 16 ボールガイド
17、18 シート部材 19 ボールシート部
20、24 貫通穴 22 ピン
25 大径孔 26、28 突出部
27 ガイド部 31 ボビン
32 コイル 33 ターミナル
34 固定鉄心 35 可動鉄心
36 小径のロッド部 37 ドレン弁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を吸入する吸入口及び該流体を吐出する吐出口を有する弁部と、
前記弁部に接続するとともに通電状態に応じて前記弁部の作動を切換え可能なコイル部とで有するソレノイドバルブあって、
前記弁部は、前記吐出口を有する中空筒状のベースと、前記ベース内に収容されるとともに前記コイル装置への通電状態に応じて前記吸入口と前記吐出口との間を連通・遮断するボールと、
前記ベースと異なる樹脂性部材から成り、前記吸入口を有するとともに前記ボールが前記ベースから抜け落ちるのを防止するボールガイドとを備え、
前記ボールガイドは、前記ボールの外径よりも大径で該ボール部材をガイドする大径孔と、前記ボールガイドの一側に設けられ前記大径孔の外周から前記ボールの外径よりも内径側に向かって突出しする複数の第一の突出部と、
前記ボールガイドの他側に設けられ前記ボールガイドの外径よりも外径側に向かって突出し前記ボールガイドに係合する複数の第二の突出部と、
を有することを特徴とするソレノイドバルブ。
【請求項2】
請求項1に記載のソレノイドバルブにおいて、
前記第一及び第二の突出部は、周方向に関して等間隔の少なくとも3ヵ所に形成されることを特徴とするソレノイドバルブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のソレノイドバルブにおいて、
前記ボールガイドは、前記ボールと前記ベースの内周面との間における軸方向に延在するとともに前記ボールの径方向への動きをガイドするガイド部を有することを特徴とするソレノイドバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−127729(P2011−127729A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288909(P2009−288909)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】