タイヤの検査方法及びその装置
【課題】ベルトスプライス段差の有無を正確に判定することができ、しかも検査に要する時間の短縮を図ることのできるタイヤの検査方法及びその装置を提供する。
【解決手段】撮像された画像中のベルトコードBCが撮像されたベルトコード領域を確定するとともに、ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて配置された複数の検出位置で検出し、互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算し、各演算結果のうち少なくとも1つ以上の演算結果が所定の基準値以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定することから、例えば第2ベルト部材BE2のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じている場合に、ベルトスプライス段差が生じていると判定される。
【解決手段】撮像された画像中のベルトコードBCが撮像されたベルトコード領域を確定するとともに、ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて配置された複数の検出位置で検出し、互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算し、各演算結果のうち少なくとも1つ以上の演算結果が所定の基準値以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定することから、例えば第2ベルト部材BE2のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じている場合に、ベルトスプライス段差が生じていると判定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用空気入りタイヤのベルト部材の状態を非破壊で検査するためのタイヤの検査方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のタイヤの検査方法としては、タイヤの内周面側からタイヤに向かってX線を照射するとともに、タイヤを周方向に回転させながら、タイヤの外周面側に配置された撮像装置によってタイヤを透過した透過X線像を撮像するとともに、撮像した画像を表示装置に表示し、表示装置によって表示される画像中のベルトコードの状態等を検査員が目視によって判定するようにしたものが知られている。
【0003】
また、他のタイヤの検査方法としては、前述と同様に撮像装置によって透過X線像を撮像するとともに、予め記憶されている基準データと撮像された画像とを比較し、基準データと撮像された画像との差異に基づきベルトコードの状態等を判定するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−15172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前者の検査方法では、検査員が目視によってベルトコードの状態等を判定していることから、判定精度を向上することが難しく、検査に要する時間の短縮を図ることも難しいという問題点があった。
【0005】
また、後者の検査方法では、予め記憶されている基準データと撮像された画像とを比較し、基準データと撮像された画像との差異に基づきベルトコードの状態等を判定するようにしているが、基準データは複数個のタイヤを撮像して各画像を加算平均することにより作成されるので、例えばベルト部材のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にわずかにずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じている場合に、その小さなベルトスプライス段差の有無等の細かな判定を行うことができないという問題点があった。
【0006】
また、タイヤの品種ごとに基準データを作成して記憶しておく必要があるので、基準データを作成する分だけ検査に要する時間が長くなるという問題点があった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベルトスプライス段差の有無を正確に判定することができ、しかも検査に要する時間の短縮を図ることのできるタイヤの検査方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、タイヤの内周面側からX線やγ線等の電磁波をタイヤに向かって照射するとともに、タイヤの外周面側に配置された撮像装置によってタイヤを透過した透過電磁波像を撮像し、透過電磁波像を撮像したタイヤにベルト部材のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じているか否か検査するタイヤの検査方法において、撮像装置によって撮像された画像中のベルトコードが撮像されたベルトコード領域を確定するベルトコード領域確定ステップと、ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出する幅寸法検出ステップと、互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算し、各演算結果のうち少なくとも1つの演算結果が所定の基準値以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定する判定ステップとを含むようにしている。
【0009】
また、本発明は、タイヤの内周面側からX線やγ線等の電磁波をタイヤに向かって照射する照射装置と、タイヤの外周面側に配置され、タイヤを透過した透過電磁波像を撮像する撮像装置とを備え、透過電磁波像を撮像したタイヤにベルト部材のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じているか否か検査するタイヤの検査装置において、撮像装置によって撮像された画像中のベルトコードが撮像されたベルトコード領域を確定するベルトコード領域確定手段と、ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出する幅寸法検出手段と、互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算し、各演算結果のうち少なくとも1つの演算結果が所定の基準値以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定する判定手段とを備えている。
【0010】
これにより、撮像装置によって撮像された画像中のベルトコードが撮像されたベルトコード領域を確定するとともに、ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出し、互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算し、各演算結果のうち少なくとも1つの演算結果が所定の基準値以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定することから、例えばタイヤ周方向の端部がタイヤ幅方向に対して所定角度で傾斜しているベルト部材を有するタイヤにおいて、そのベルト部材のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向に10mmずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じ、前記所定の基準値が5mmに設定されている場合は、スプライス部を挟むように位置する2つの検出位置の幅寸法検出結果の差が5mm以上となり、ベルトスプライス段差が生じていると判定される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えばタイヤ周方向の端部がタイヤ幅方向に対して所定角度で傾斜しているベルト部材を有するタイヤにおいて、そのベルト部材のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向に10mmずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じ、前記所定の基準値が5mmに設定されている場合は、スプライス部を挟むように位置する2つの検出位置の幅寸法検出結果の差が5mm以上となり、ベルトスプライス段差が生じていると判定されるので、前記基準値をタイヤの品種等に応じて適宜設定することにより、ベルトスプライス段差の有無を正確に判定することができる。また、目視によらず自動で判定を行うことも可能であり、タイヤの品種ごとに基準データを作成する必要もないことから、検査に要する時間の短縮を図る上で極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1乃至図12は本発明の一実施形態を示すもので、図1は照射装置及び撮像装置の概略図、図2はタイヤの断面図、図3はタイヤ検査装置のブロック図、図4は第1制御装置の制御部の動作を示すフローチャート、図5乃至図11は第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図、図12は演算結果を示す表である。
【0013】
本実施形態のタイヤ検査装置は、タイヤTの内周面側に配置され、X線をタイヤTに向かって照射する照射装置10と、タイヤTの外周面側に配置され、タイヤTを透過した透過電磁波像としての透過X線像を撮像する撮像装置20と、撮像装置20に接続された検査装置本体30とを備えている。また、タイヤTは図示しない支持装置によって回転自在に支持されるようになっている。タイヤTは複数の金属製のカーカスコードCCがラジアル方向に延びるように配置されたラジアルタイヤである。また、タイヤTの外周面側には第1ベルト部材BE1、第2ベルト部材BE2、第3ベルト部材BE3及び第4ベルト部材BE4が設けられ、各ベルト部材BE1〜BE4のうち第2ベルト部材BE2の幅寸法が最も大きい(図2参照)。また、各ベルト部材BE1〜BE4は金属製のベルトコードBCを有し、第1ベルト部材BE1、第3ベルト部材BE3及び第4ベルト部材BE4は第2ベルト部材BE2の幅方向内側に位置するように設けられている。各ベルト部材BE1〜BE4のタイヤ周方向の端部はタイヤ幅方向に対して所定角度で傾斜しており、各ベルト部材BE1〜BE4はそれぞれタイヤ周方向の端部がスプライスされている。ここで、図5及び図6に示すように、各ベルト部材BE1〜BE4のうち例えば最も幅寸法の大きい第2ベルト部材BE2のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にずれてスプライスされる場合があり、このような現象がベルトスプライス段差と称されている。
【0014】
照射装置10はX線を放射状に照射する周知のX線管から成り、前記支持装置によって支持されたタイヤTの内周面側に配置されるようになっている。尚、X線の代わりにγ線を照射するように構成することも可能である。
【0015】
撮像装置20は、支持装置に支持されたタイヤTの上側に配置された上方カメラ21と、支持装置に支持されたタイヤTの幅方向両側に配置された一対の側方カメラ22とを有する。各カメラ21,22は周知のラインセンサカメラから成り、各カメラ21,22はタイヤTを透過した透過X線像を線状に撮像するようになっている。即ち、支持装置によってタイヤTを所定速度で周方向に回転させながら、各カメラ21,22によって所定時間おきに撮像を行うことにより、タイヤTの一周分の透過X線像が撮像される。
【0016】
検査装置本体30は、図2に示すように、第1乃至第3制御装置31,32,33を備えている。また、各制御装置31,32,33はそれぞれ制御部31a,32a,33a、液晶表示画面等の表示部31b,32b,33b及びハードディスク等の記憶部31c,32c,33cを有する。制御部31a,32a,33aは演算装置、記憶装置、入力装置等を有する周知のマイクロコンピュータである。さらに、撮像装置20における上方カメラ21によって撮像された画像が第1制御装置31の制御部31aに送信され、各側方カメラ22のうち一方の側方カメラ22によって撮像された画像が第2制御装置32の制御部32aに送信され、各側方カメラ22のうち他方の側方カメラ22によって撮像された画像が第3制御装置33の制御部33aに送信される。
【0017】
以上のように構成されたタイヤ検査装置では、前述のように図示しない支持装置によってタイヤTを所定速度で周方向に回転させながら、各カメラ21,22によって所定時間おきに撮像を行うことにより、タイヤTの一周分の透過X線像が撮像され、各カメラ21,22によって撮像された画像がデジタル画像として各制御装置31,32,33の制御部31a,32a,33aにそれぞれ送信される。尚、各カメラ21,22で撮像された線状の撮像データを各制御装置31,32,33内で繋ぎ合わせてタイヤTの一周分の画像を作成することも可能である。
【0018】
続いて、第1制御装置31の制御部31aによってタイヤTの一周分の画像の画像処理を行い、画像処理された画像に基づきベルトスプライス段差の有無を判定する。各制御装置32,33も制御部32a,33aによってタイヤTの一周分の画像の画像処理を行い、画像処理された画像に基づきタイヤTの検査を行う。この時の第1制御装置31の制御部31aの動作について図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。ここで、第1制御装置31の制御部31aに送信されるタイヤTの一周分の画像はタイヤTを径方向外側から撮像したものであり、この画像の幅方向中央側には各ベルト部材BE1〜BE4を構成する複数の金属製のベルトコードBCが撮像され、そのベルトコードBCの幅方向両側にはカーカス部材を構成する複数の金属製のカーカスコードCCが撮像されている(図5参照)。図5はタイヤTの一周分の画像の一部を示すものである。各カーカスコードCCは画像幅方向に延びるように配置されるとともに、互いに画像上下方向に間隔をおいて配置されている。各ベルトコードBCは各カーカスコードCCの延設方向と所定角度をなすように配置されるとともに、互いに画像上下方向に間隔をおいて配置されている。ここでは、上方カメラ21から送信された画像中には各ベルトコードBC及び各カーカスコードCC以外のものは撮像されていない。尚、上方カメラ21から送信された画像中に例えば背景が撮像されている場合には、送信された画像から背景単独の画像を差分処理する等により、上方カメラ21から送信された画像中から各ベルトコードBC及び各カーカスコードCC以外のものを除去することが好ましい。
【0019】
先ず、上方カメラ21から第1制御装置31の制御部31aにタイヤTの一周分の画像が送信されると(SA1)、その画像のコントラストを強調する(SA2)。このコントラストの強調は、例えば線形変換処理、二値化処理、輝度スライシング処理等の周知の処理を用いて行われる。これにより、画像中の各ベルトコードBC及び各カーカスコードCCが明確になる(図6参照)。尚、ステップSA2を行わずにステップSA3以降を行うことも可能である。
【0020】
続いて、コントラストが強調された画像において画像上下方向(各カーカスコードCCが延びる方向と略直行する方向)の成分を強調する(SA3)。画像上下方向の成分の強調は、例えば画像上下方向のシフト処理及び差分処理を用いる周知の方法によって行われる。これにより、画像中の各ベルトコードBCが強調され、各カーカスコードCCが薄くなるか除去される(図7参照)。
【0021】
続いて、画像上下方向の成分が強調された画像のコントラストを強調する(SA4)。このコントラストの強調は、例えば線形変換処理、二値化処理、輝度スライシング処理等の周知の処理を用いて行われる。これにより、画像中の各ベルトコードBCが明確になる(図8参照)。
【0022】
続いて、撮像装置によって撮像された画像中の各ベルトコードBCが撮像されたベルトコード領域を確定する(SA5)。この領域確定は、例えば画像上下方向のシフト処理及び加算処理を適宜行うことにより、ステップSA3によって強調された成分(各ベルトコードBC)が集合している領域を塗り潰した後(図9参照)、例えばPrewittフィルタやSobelフィルタを用いてエッジ強調処理を行うことにより、ステップSA3によって強調された成分が集合している領域のうち最も大きな面積を有する領域を確定する輪郭線OLを作成する(図10参照)。ここで、輪郭線OLはベルトコード領域の輪郭線である。尚、前記シフト処理及び加算処理の代わりに画像上の各線を膨張させる膨張処理を行うことにより、ステップSA3によって強調された成分が集合している領域を塗り潰すことも可能である。また、単位面積当たり(例えば数画素×数画素の範囲)の平均濃度に基づき前記ベルトコード領域の確定を行うことも可能である。
【0023】
続いて、ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向(画像上下方向)に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出する(SA6)。例えば、図11に示すように、互いに画像上下方向に等間隔をおいて設定された複数の検査用線Lを設け、各検査用線Lのベルトコード領域内の長さを検出することにより、ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出する。
【0024】
続いて、互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算する(SA7)。例えば、画像中の最も上に配置された検査用線Lによる幅寸法検出結果と上から2番目に配置された検査用線Lによる幅寸法検査結果との差をα1として演算し、上からn番目に配置された検査用線Lによる幅寸法検査結果と上からn+1番目に配置された検査用線Lによる幅寸法検査結果との差をαnとすることにより、互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算する(図12参照)。
【0025】
続いて、各演算結果のうち少なくとも1つの演算結果が所定の基準値(本実施形態では5mm)以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定する(SA8)。例えば、図12のように、各演算結果のうち演算結果α2(8.8mm)が所定の基準値(5mm)以上になっている場合は、ベルトスプライス段差が生じていると判定される。
【0026】
続いて、ステップSA8においてベルトスプライス段差が生じていると判定された場合は(SA9)、表示部31bにステップSA2でコントラストを強調する前の画像を表示するとともに、ベルトスプライス段差が生じていると判定された演算結果の基になった2本の検査用線Lを目立つように表示する表示処理を行い、また、記憶部31cに測定日時、測定したタイヤTの品種、判定結果等を記憶する記憶処理を行う(SA10)。ステップSA8においてベルトスプライス段差が生じていると判定されない場合は(SA9)、記憶部31cに測定日時、測定したタイヤTの品種、判定結果等を記憶する記憶処理を行う(SA11)。
【0027】
このように、本実施形態によれば、撮像装置20によって撮像された画像中のベルトコードBCが撮像されたベルトコード領域を確定するとともに、ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出し、互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算し、各演算結果のうち少なくとも1つの演算結果が所定の基準値以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定することから、例えば第2ベルト部材BE2のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向に10mmずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じ、前記所定の基準値が5mmに設定されている場合は、スプライス部を挟むように位置する2つの検出位置の幅寸法検出結果の差が5mm以上となり、ベルトスプライス段差が生じていると判定される。即ち、前記所定の基準値をタイヤの品種等に応じて適宜設定することにより、ベルトスプライス段差の有無を正確に判定することができる。また、目視によらず自動で判定を行うことが可能であり、タイヤの品種ごとに基準データを作成する必要もないことから、検査に要する時間の短縮を図る上で極めて有利である。
【0028】
また、撮像装置20で撮像した画像に制御装置31の制御部31aによって前述のような画像処理を行うとともに、ベルトスプライス段差の有無を自動で検査するようにしたので、撮像装置20で撮像した画像を検査員が目視で確認してベルトスプライス段差の有無を検査する場合と比較し、検査精度及び速度を向上することができる。
【0029】
また、撮像装置20によって撮像された画像のコントラストを強調するとともに(ステップSA2)、コントラストが強調された画像中の各カーカスコードCCが延びる方向と略直交する方向の成分を強調し(ステップSA3)、ステップSA3によって強調された成分が集合している領域を確定することにより、ベルトコード領域を確定している。このため、タイヤTの品種に応じて各ベルト部材BE1〜BE4の幅寸法が変化する場合でも、ベルトコード領域の確定を常に正確に行うことができ、ベルトスプライス段差の有無の判定を正確に行う上で極めて有利である。特に、金属製のカーカスコードCCを有するタイヤTにおいて、ベルトコード領域を正確に確定することができ、金属製のカーカスコードCCを有するタイヤTにおいてベルトスプライス段差の有無の判定を正確に行う上で極めて有利である。
【0030】
尚、本実施形態では、制御装置31の制御部31aによってタイヤTの一周分の画像の画像処理を行い、画像処理された画像に基づきベルトスプライス段差の有無を判定するものを示した。これに対し、制御装置31の制御部31aによってタイヤTの一部を撮像した画像の画像処理を行い、その画像処理が行われた画像に基づきベルトスプライス段差の有無を判定することも可能である。
【0031】
また、本実施形態では、ステップSA1〜SA11を第1制御装置31の制御部31aによって行うようにしたものを示したが、ステップSA1〜SA11のうち任意のステップを例えば検査員による制御部31aの操作によって行うことも可能である。
【0032】
尚、本実施形態では、金属製のカーカスコードCCを有するタイヤTのベルトスプライス段差の有無を検査するようにしたものを示したが、樹脂繊維製のカーカスコードCCを有するタイヤTの場合であっても、前述と同様にベルトスプライス段差の有無を検査することが可能である。
【0033】
また、本実施形態では、複数のベルト部材BE1〜BE4のうち最も幅寸法の大きい第2ビード部材BE2のベルトスプライス段差の有無を判定するようにしている。これに対し、第1ベルト部材BE1、第3ベルト部材BE3及び第4ベルト部材BE4のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にずれてスプライスされる場合もあり、これらの場合もベルトスプライス段差と称されている。また、本実施形態と同様の画像処理及び判定処理を行うことにより、第1ベルト部材BE1、第3ベルト部材BE3及び第4ベルト部材BE4のベルトスプライス段差の有無を判定することも可能である。即ち、本実施形態と同様の画像処理及び判定処理により、最も幅寸法の大きい第2ビード部材BE2のベルトスプライス段差だけではなく、他のベルト部材BE1,BE3,BE4のベルトスプライス段差の有無も判定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明における一実施形態を示す照射装置及び撮像装置の概略図
【図2】タイヤの断面図
【図3】タイヤ検査装置のブロック図
【図4】第1制御装置の制御部の動作を示すフローチャート
【図5】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図6】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図7】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図8】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図9】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図10】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図11】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図12】演算結果を示す表
【符号の説明】
【0035】
10…照射装置、20…撮像装置、21…上方カメラ、22…側方カメラ、30…検査装置本体、31…第1制御装置、31a…制御部、31b…表示部、31c…記憶部、32…第2制御装置、32a…制御部、32b…表示部、32c…記憶部、33…第3制御装置、33a…制御部、33b…表示部、33c…記憶部、CC…カーカスコード、BC…ベルトコード、T…タイヤ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用空気入りタイヤのベルト部材の状態を非破壊で検査するためのタイヤの検査方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のタイヤの検査方法としては、タイヤの内周面側からタイヤに向かってX線を照射するとともに、タイヤを周方向に回転させながら、タイヤの外周面側に配置された撮像装置によってタイヤを透過した透過X線像を撮像するとともに、撮像した画像を表示装置に表示し、表示装置によって表示される画像中のベルトコードの状態等を検査員が目視によって判定するようにしたものが知られている。
【0003】
また、他のタイヤの検査方法としては、前述と同様に撮像装置によって透過X線像を撮像するとともに、予め記憶されている基準データと撮像された画像とを比較し、基準データと撮像された画像との差異に基づきベルトコードの状態等を判定するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−15172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前者の検査方法では、検査員が目視によってベルトコードの状態等を判定していることから、判定精度を向上することが難しく、検査に要する時間の短縮を図ることも難しいという問題点があった。
【0005】
また、後者の検査方法では、予め記憶されている基準データと撮像された画像とを比較し、基準データと撮像された画像との差異に基づきベルトコードの状態等を判定するようにしているが、基準データは複数個のタイヤを撮像して各画像を加算平均することにより作成されるので、例えばベルト部材のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にわずかにずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じている場合に、その小さなベルトスプライス段差の有無等の細かな判定を行うことができないという問題点があった。
【0006】
また、タイヤの品種ごとに基準データを作成して記憶しておく必要があるので、基準データを作成する分だけ検査に要する時間が長くなるという問題点があった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベルトスプライス段差の有無を正確に判定することができ、しかも検査に要する時間の短縮を図ることのできるタイヤの検査方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、タイヤの内周面側からX線やγ線等の電磁波をタイヤに向かって照射するとともに、タイヤの外周面側に配置された撮像装置によってタイヤを透過した透過電磁波像を撮像し、透過電磁波像を撮像したタイヤにベルト部材のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じているか否か検査するタイヤの検査方法において、撮像装置によって撮像された画像中のベルトコードが撮像されたベルトコード領域を確定するベルトコード領域確定ステップと、ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出する幅寸法検出ステップと、互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算し、各演算結果のうち少なくとも1つの演算結果が所定の基準値以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定する判定ステップとを含むようにしている。
【0009】
また、本発明は、タイヤの内周面側からX線やγ線等の電磁波をタイヤに向かって照射する照射装置と、タイヤの外周面側に配置され、タイヤを透過した透過電磁波像を撮像する撮像装置とを備え、透過電磁波像を撮像したタイヤにベルト部材のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じているか否か検査するタイヤの検査装置において、撮像装置によって撮像された画像中のベルトコードが撮像されたベルトコード領域を確定するベルトコード領域確定手段と、ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出する幅寸法検出手段と、互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算し、各演算結果のうち少なくとも1つの演算結果が所定の基準値以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定する判定手段とを備えている。
【0010】
これにより、撮像装置によって撮像された画像中のベルトコードが撮像されたベルトコード領域を確定するとともに、ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出し、互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算し、各演算結果のうち少なくとも1つの演算結果が所定の基準値以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定することから、例えばタイヤ周方向の端部がタイヤ幅方向に対して所定角度で傾斜しているベルト部材を有するタイヤにおいて、そのベルト部材のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向に10mmずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じ、前記所定の基準値が5mmに設定されている場合は、スプライス部を挟むように位置する2つの検出位置の幅寸法検出結果の差が5mm以上となり、ベルトスプライス段差が生じていると判定される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えばタイヤ周方向の端部がタイヤ幅方向に対して所定角度で傾斜しているベルト部材を有するタイヤにおいて、そのベルト部材のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向に10mmずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じ、前記所定の基準値が5mmに設定されている場合は、スプライス部を挟むように位置する2つの検出位置の幅寸法検出結果の差が5mm以上となり、ベルトスプライス段差が生じていると判定されるので、前記基準値をタイヤの品種等に応じて適宜設定することにより、ベルトスプライス段差の有無を正確に判定することができる。また、目視によらず自動で判定を行うことも可能であり、タイヤの品種ごとに基準データを作成する必要もないことから、検査に要する時間の短縮を図る上で極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1乃至図12は本発明の一実施形態を示すもので、図1は照射装置及び撮像装置の概略図、図2はタイヤの断面図、図3はタイヤ検査装置のブロック図、図4は第1制御装置の制御部の動作を示すフローチャート、図5乃至図11は第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図、図12は演算結果を示す表である。
【0013】
本実施形態のタイヤ検査装置は、タイヤTの内周面側に配置され、X線をタイヤTに向かって照射する照射装置10と、タイヤTの外周面側に配置され、タイヤTを透過した透過電磁波像としての透過X線像を撮像する撮像装置20と、撮像装置20に接続された検査装置本体30とを備えている。また、タイヤTは図示しない支持装置によって回転自在に支持されるようになっている。タイヤTは複数の金属製のカーカスコードCCがラジアル方向に延びるように配置されたラジアルタイヤである。また、タイヤTの外周面側には第1ベルト部材BE1、第2ベルト部材BE2、第3ベルト部材BE3及び第4ベルト部材BE4が設けられ、各ベルト部材BE1〜BE4のうち第2ベルト部材BE2の幅寸法が最も大きい(図2参照)。また、各ベルト部材BE1〜BE4は金属製のベルトコードBCを有し、第1ベルト部材BE1、第3ベルト部材BE3及び第4ベルト部材BE4は第2ベルト部材BE2の幅方向内側に位置するように設けられている。各ベルト部材BE1〜BE4のタイヤ周方向の端部はタイヤ幅方向に対して所定角度で傾斜しており、各ベルト部材BE1〜BE4はそれぞれタイヤ周方向の端部がスプライスされている。ここで、図5及び図6に示すように、各ベルト部材BE1〜BE4のうち例えば最も幅寸法の大きい第2ベルト部材BE2のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にずれてスプライスされる場合があり、このような現象がベルトスプライス段差と称されている。
【0014】
照射装置10はX線を放射状に照射する周知のX線管から成り、前記支持装置によって支持されたタイヤTの内周面側に配置されるようになっている。尚、X線の代わりにγ線を照射するように構成することも可能である。
【0015】
撮像装置20は、支持装置に支持されたタイヤTの上側に配置された上方カメラ21と、支持装置に支持されたタイヤTの幅方向両側に配置された一対の側方カメラ22とを有する。各カメラ21,22は周知のラインセンサカメラから成り、各カメラ21,22はタイヤTを透過した透過X線像を線状に撮像するようになっている。即ち、支持装置によってタイヤTを所定速度で周方向に回転させながら、各カメラ21,22によって所定時間おきに撮像を行うことにより、タイヤTの一周分の透過X線像が撮像される。
【0016】
検査装置本体30は、図2に示すように、第1乃至第3制御装置31,32,33を備えている。また、各制御装置31,32,33はそれぞれ制御部31a,32a,33a、液晶表示画面等の表示部31b,32b,33b及びハードディスク等の記憶部31c,32c,33cを有する。制御部31a,32a,33aは演算装置、記憶装置、入力装置等を有する周知のマイクロコンピュータである。さらに、撮像装置20における上方カメラ21によって撮像された画像が第1制御装置31の制御部31aに送信され、各側方カメラ22のうち一方の側方カメラ22によって撮像された画像が第2制御装置32の制御部32aに送信され、各側方カメラ22のうち他方の側方カメラ22によって撮像された画像が第3制御装置33の制御部33aに送信される。
【0017】
以上のように構成されたタイヤ検査装置では、前述のように図示しない支持装置によってタイヤTを所定速度で周方向に回転させながら、各カメラ21,22によって所定時間おきに撮像を行うことにより、タイヤTの一周分の透過X線像が撮像され、各カメラ21,22によって撮像された画像がデジタル画像として各制御装置31,32,33の制御部31a,32a,33aにそれぞれ送信される。尚、各カメラ21,22で撮像された線状の撮像データを各制御装置31,32,33内で繋ぎ合わせてタイヤTの一周分の画像を作成することも可能である。
【0018】
続いて、第1制御装置31の制御部31aによってタイヤTの一周分の画像の画像処理を行い、画像処理された画像に基づきベルトスプライス段差の有無を判定する。各制御装置32,33も制御部32a,33aによってタイヤTの一周分の画像の画像処理を行い、画像処理された画像に基づきタイヤTの検査を行う。この時の第1制御装置31の制御部31aの動作について図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。ここで、第1制御装置31の制御部31aに送信されるタイヤTの一周分の画像はタイヤTを径方向外側から撮像したものであり、この画像の幅方向中央側には各ベルト部材BE1〜BE4を構成する複数の金属製のベルトコードBCが撮像され、そのベルトコードBCの幅方向両側にはカーカス部材を構成する複数の金属製のカーカスコードCCが撮像されている(図5参照)。図5はタイヤTの一周分の画像の一部を示すものである。各カーカスコードCCは画像幅方向に延びるように配置されるとともに、互いに画像上下方向に間隔をおいて配置されている。各ベルトコードBCは各カーカスコードCCの延設方向と所定角度をなすように配置されるとともに、互いに画像上下方向に間隔をおいて配置されている。ここでは、上方カメラ21から送信された画像中には各ベルトコードBC及び各カーカスコードCC以外のものは撮像されていない。尚、上方カメラ21から送信された画像中に例えば背景が撮像されている場合には、送信された画像から背景単独の画像を差分処理する等により、上方カメラ21から送信された画像中から各ベルトコードBC及び各カーカスコードCC以外のものを除去することが好ましい。
【0019】
先ず、上方カメラ21から第1制御装置31の制御部31aにタイヤTの一周分の画像が送信されると(SA1)、その画像のコントラストを強調する(SA2)。このコントラストの強調は、例えば線形変換処理、二値化処理、輝度スライシング処理等の周知の処理を用いて行われる。これにより、画像中の各ベルトコードBC及び各カーカスコードCCが明確になる(図6参照)。尚、ステップSA2を行わずにステップSA3以降を行うことも可能である。
【0020】
続いて、コントラストが強調された画像において画像上下方向(各カーカスコードCCが延びる方向と略直行する方向)の成分を強調する(SA3)。画像上下方向の成分の強調は、例えば画像上下方向のシフト処理及び差分処理を用いる周知の方法によって行われる。これにより、画像中の各ベルトコードBCが強調され、各カーカスコードCCが薄くなるか除去される(図7参照)。
【0021】
続いて、画像上下方向の成分が強調された画像のコントラストを強調する(SA4)。このコントラストの強調は、例えば線形変換処理、二値化処理、輝度スライシング処理等の周知の処理を用いて行われる。これにより、画像中の各ベルトコードBCが明確になる(図8参照)。
【0022】
続いて、撮像装置によって撮像された画像中の各ベルトコードBCが撮像されたベルトコード領域を確定する(SA5)。この領域確定は、例えば画像上下方向のシフト処理及び加算処理を適宜行うことにより、ステップSA3によって強調された成分(各ベルトコードBC)が集合している領域を塗り潰した後(図9参照)、例えばPrewittフィルタやSobelフィルタを用いてエッジ強調処理を行うことにより、ステップSA3によって強調された成分が集合している領域のうち最も大きな面積を有する領域を確定する輪郭線OLを作成する(図10参照)。ここで、輪郭線OLはベルトコード領域の輪郭線である。尚、前記シフト処理及び加算処理の代わりに画像上の各線を膨張させる膨張処理を行うことにより、ステップSA3によって強調された成分が集合している領域を塗り潰すことも可能である。また、単位面積当たり(例えば数画素×数画素の範囲)の平均濃度に基づき前記ベルトコード領域の確定を行うことも可能である。
【0023】
続いて、ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向(画像上下方向)に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出する(SA6)。例えば、図11に示すように、互いに画像上下方向に等間隔をおいて設定された複数の検査用線Lを設け、各検査用線Lのベルトコード領域内の長さを検出することにより、ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出する。
【0024】
続いて、互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算する(SA7)。例えば、画像中の最も上に配置された検査用線Lによる幅寸法検出結果と上から2番目に配置された検査用線Lによる幅寸法検査結果との差をα1として演算し、上からn番目に配置された検査用線Lによる幅寸法検査結果と上からn+1番目に配置された検査用線Lによる幅寸法検査結果との差をαnとすることにより、互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算する(図12参照)。
【0025】
続いて、各演算結果のうち少なくとも1つの演算結果が所定の基準値(本実施形態では5mm)以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定する(SA8)。例えば、図12のように、各演算結果のうち演算結果α2(8.8mm)が所定の基準値(5mm)以上になっている場合は、ベルトスプライス段差が生じていると判定される。
【0026】
続いて、ステップSA8においてベルトスプライス段差が生じていると判定された場合は(SA9)、表示部31bにステップSA2でコントラストを強調する前の画像を表示するとともに、ベルトスプライス段差が生じていると判定された演算結果の基になった2本の検査用線Lを目立つように表示する表示処理を行い、また、記憶部31cに測定日時、測定したタイヤTの品種、判定結果等を記憶する記憶処理を行う(SA10)。ステップSA8においてベルトスプライス段差が生じていると判定されない場合は(SA9)、記憶部31cに測定日時、測定したタイヤTの品種、判定結果等を記憶する記憶処理を行う(SA11)。
【0027】
このように、本実施形態によれば、撮像装置20によって撮像された画像中のベルトコードBCが撮像されたベルトコード領域を確定するとともに、ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出し、互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算し、各演算結果のうち少なくとも1つの演算結果が所定の基準値以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定することから、例えば第2ベルト部材BE2のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向に10mmずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じ、前記所定の基準値が5mmに設定されている場合は、スプライス部を挟むように位置する2つの検出位置の幅寸法検出結果の差が5mm以上となり、ベルトスプライス段差が生じていると判定される。即ち、前記所定の基準値をタイヤの品種等に応じて適宜設定することにより、ベルトスプライス段差の有無を正確に判定することができる。また、目視によらず自動で判定を行うことが可能であり、タイヤの品種ごとに基準データを作成する必要もないことから、検査に要する時間の短縮を図る上で極めて有利である。
【0028】
また、撮像装置20で撮像した画像に制御装置31の制御部31aによって前述のような画像処理を行うとともに、ベルトスプライス段差の有無を自動で検査するようにしたので、撮像装置20で撮像した画像を検査員が目視で確認してベルトスプライス段差の有無を検査する場合と比較し、検査精度及び速度を向上することができる。
【0029】
また、撮像装置20によって撮像された画像のコントラストを強調するとともに(ステップSA2)、コントラストが強調された画像中の各カーカスコードCCが延びる方向と略直交する方向の成分を強調し(ステップSA3)、ステップSA3によって強調された成分が集合している領域を確定することにより、ベルトコード領域を確定している。このため、タイヤTの品種に応じて各ベルト部材BE1〜BE4の幅寸法が変化する場合でも、ベルトコード領域の確定を常に正確に行うことができ、ベルトスプライス段差の有無の判定を正確に行う上で極めて有利である。特に、金属製のカーカスコードCCを有するタイヤTにおいて、ベルトコード領域を正確に確定することができ、金属製のカーカスコードCCを有するタイヤTにおいてベルトスプライス段差の有無の判定を正確に行う上で極めて有利である。
【0030】
尚、本実施形態では、制御装置31の制御部31aによってタイヤTの一周分の画像の画像処理を行い、画像処理された画像に基づきベルトスプライス段差の有無を判定するものを示した。これに対し、制御装置31の制御部31aによってタイヤTの一部を撮像した画像の画像処理を行い、その画像処理が行われた画像に基づきベルトスプライス段差の有無を判定することも可能である。
【0031】
また、本実施形態では、ステップSA1〜SA11を第1制御装置31の制御部31aによって行うようにしたものを示したが、ステップSA1〜SA11のうち任意のステップを例えば検査員による制御部31aの操作によって行うことも可能である。
【0032】
尚、本実施形態では、金属製のカーカスコードCCを有するタイヤTのベルトスプライス段差の有無を検査するようにしたものを示したが、樹脂繊維製のカーカスコードCCを有するタイヤTの場合であっても、前述と同様にベルトスプライス段差の有無を検査することが可能である。
【0033】
また、本実施形態では、複数のベルト部材BE1〜BE4のうち最も幅寸法の大きい第2ビード部材BE2のベルトスプライス段差の有無を判定するようにしている。これに対し、第1ベルト部材BE1、第3ベルト部材BE3及び第4ベルト部材BE4のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にずれてスプライスされる場合もあり、これらの場合もベルトスプライス段差と称されている。また、本実施形態と同様の画像処理及び判定処理を行うことにより、第1ベルト部材BE1、第3ベルト部材BE3及び第4ベルト部材BE4のベルトスプライス段差の有無を判定することも可能である。即ち、本実施形態と同様の画像処理及び判定処理により、最も幅寸法の大きい第2ビード部材BE2のベルトスプライス段差だけではなく、他のベルト部材BE1,BE3,BE4のベルトスプライス段差の有無も判定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明における一実施形態を示す照射装置及び撮像装置の概略図
【図2】タイヤの断面図
【図3】タイヤ検査装置のブロック図
【図4】第1制御装置の制御部の動作を示すフローチャート
【図5】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図6】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図7】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図8】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図9】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図10】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図11】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図12】演算結果を示す表
【符号の説明】
【0035】
10…照射装置、20…撮像装置、21…上方カメラ、22…側方カメラ、30…検査装置本体、31…第1制御装置、31a…制御部、31b…表示部、31c…記憶部、32…第2制御装置、32a…制御部、32b…表示部、32c…記憶部、33…第3制御装置、33a…制御部、33b…表示部、33c…記憶部、CC…カーカスコード、BC…ベルトコード、T…タイヤ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの内周面側からX線やγ線等の電磁波をタイヤに向かって照射するとともに、タイヤの外周面側に配置された撮像装置によってタイヤを透過した透過電磁波像を撮像し、透過電磁波像を撮像したタイヤにベルト部材のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じているか否か検査するタイヤの検査方法において、
撮像装置によって撮像された画像中のベルトコードが撮像されたベルトコード領域を確定するベルトコード領域確定ステップと、
ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出する幅寸法検出ステップと、
互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算し、各演算結果のうち少なくとも1つの演算結果が所定の基準値以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定する判定ステップとを含む
ことを特徴とするタイヤの検査方法。
【請求項2】
前記ベルトコード領域確定ステップに、撮像装置によって撮像された画像のコントラストを強調する強調ステップと、強調ステップによってコントラストが強調された画像中のカーカスコードが延びる方向と略直交する方向の成分を強調する直交成分強調ステップと、撮像装置によって撮像された画像中の直交成分強調ステップによって強調された成分が集合している領域を確定することによりベルトコード領域を確定する領域確定ステップとを含めた
ことを特徴とする請求項1記載のタイヤの検査方法。
【請求項3】
タイヤの内周面側からX線やγ線等の電磁波をタイヤに向かって照射する照射装置と、タイヤの外周面側に配置され、タイヤを透過した透過電磁波像を撮像する撮像装置とを備え、透過電磁波像を撮像したタイヤにベルト部材のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じているか否か検査するタイヤの検査装置において、
撮像装置によって撮像された画像中のベルトコードが撮像されたベルトコード領域を確定するベルトコード領域確定手段と、
ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出する幅寸法検出手段と、
互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算し、各演算結果のうち少なくとも1つの演算結果が所定の基準値以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定する判定手段とを備えた
ことを特徴とするタイヤの検査装置。
【請求項4】
前記ベルトコード領域確定手段に、撮像装置によって撮像された画像のコントラストを強調する強調手段と、強調手段によってコントラストが強調された画像中のカーカスコードが延びる方向と略直交する方向の成分を強調する直交成分強調手段と、撮像装置によって撮像された画像中の直交成分強調手段によって強調された成分が集合している領域を確定することによりベルトコード領域を確定する領域確定手段とを設けた
ことを特徴とする請求項3記載のタイヤの検査装置。
【請求項1】
タイヤの内周面側からX線やγ線等の電磁波をタイヤに向かって照射するとともに、タイヤの外周面側に配置された撮像装置によってタイヤを透過した透過電磁波像を撮像し、透過電磁波像を撮像したタイヤにベルト部材のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じているか否か検査するタイヤの検査方法において、
撮像装置によって撮像された画像中のベルトコードが撮像されたベルトコード領域を確定するベルトコード領域確定ステップと、
ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出する幅寸法検出ステップと、
互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算し、各演算結果のうち少なくとも1つの演算結果が所定の基準値以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定する判定ステップとを含む
ことを特徴とするタイヤの検査方法。
【請求項2】
前記ベルトコード領域確定ステップに、撮像装置によって撮像された画像のコントラストを強調する強調ステップと、強調ステップによってコントラストが強調された画像中のカーカスコードが延びる方向と略直交する方向の成分を強調する直交成分強調ステップと、撮像装置によって撮像された画像中の直交成分強調ステップによって強調された成分が集合している領域を確定することによりベルトコード領域を確定する領域確定ステップとを含めた
ことを特徴とする請求項1記載のタイヤの検査方法。
【請求項3】
タイヤの内周面側からX線やγ線等の電磁波をタイヤに向かって照射する照射装置と、タイヤの外周面側に配置され、タイヤを透過した透過電磁波像を撮像する撮像装置とを備え、透過電磁波像を撮像したタイヤにベルト部材のタイヤ周方向の両端部が互いにタイヤ幅方向にずれてスプライスされるベルトスプライス段差が生じているか否か検査するタイヤの検査装置において、
撮像装置によって撮像された画像中のベルトコードが撮像されたベルトコード領域を確定するベルトコード領域確定手段と、
ベルトコード領域の幅寸法を互いにタイヤ周方向に間隔をおいて設定された複数の検出位置で検出する幅寸法検出手段と、
互いにタイヤ周方向に隣り合う2つの検出位置の幅寸法検出結果の差をそれぞれ演算し、各演算結果のうち少なくとも1つの演算結果が所定の基準値以上になると、ベルトスプライス段差が生じていると判定する判定手段とを備えた
ことを特徴とするタイヤの検査装置。
【請求項4】
前記ベルトコード領域確定手段に、撮像装置によって撮像された画像のコントラストを強調する強調手段と、強調手段によってコントラストが強調された画像中のカーカスコードが延びる方向と略直交する方向の成分を強調する直交成分強調手段と、撮像装置によって撮像された画像中の直交成分強調手段によって強調された成分が集合している領域を確定することによりベルトコード領域を確定する領域確定手段とを設けた
ことを特徴とする請求項3記載のタイヤの検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−309649(P2008−309649A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157874(P2007−157874)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
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