説明

タイヤ加硫プレス

【課題】タイヤ加硫プレスの上部部材の安定的な昇降動作を従来よりもコンパクトな構造で実現するタイヤ加硫プレスを提供することを課題とする。
【解決手段】タイヤ加硫プレス1は、鉛直方向に昇降する上部部材9と、上部部材9を昇降させる昇降措置と、水平方向に移動する下部部材10と、上部部材9に固定され且つ、下部部材10に連結されるタイロッド30と、立設されたサイドガイド11に取り付けられたガイド装置37と、を備える。当該ガイド装置37は、タイロッド30とサイドガイド11の間に配置され、タイロッド30の側部に形成された平坦なガイド面46にて上部部材9の昇降動作をガイドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設車両等に装着される大型タイヤを加硫するタイヤ加硫プレスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りのタイヤはバイク用の小型タイヤから建設車両用の大型タイヤまで小径から大径までのタイヤが広く使用されている。そして、当該大型タイヤを加硫成形する場合には、プレス機構付きの竪型加硫缶であるポットヒータを用いていた。そのため、当該ポットヒータを用いてタイヤを加硫成形する方法がいくつか提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の大型タイヤ加硫方法が知られている。この大型タイヤ用加硫方法は、上下サイドモールドをトレッドモールドから分離可能なモールドを用いる。そして、上下サイドモールドそれぞれを、それぞれが加熱源を有する上部プラテンと下部プラテンとに固定し、上部プラテン及び下部プラテンそれぞれの加熱源にて、当該上下サイドモールドを加熱する。併せて当該加熱源温度に比しより高温の加熱流体をトレッドモールド周囲のポットヒータ内空間に供給しトレッドモールドを加熱する。これにより、上下サイドモールドと、トレッドモールドとの加熱温度差を保持した状態で未加硫タイヤに加硫成形を施すことを特徴とする。ここで、特許文献1に記載の技術において、ポットヒータ内に未加硫タイヤが装填されたモールドの組立品の搬入出及びモールドの組立、プレスヘッド付きカバーの取り付けなどにクレーンが必要である。その結果、ほとんどの作業がクレーンを用いる作業となり、作業効率が悪く、危険である。
【0004】
また、特許文献2に記載の大型タイヤの加硫方法が知られている。この大型タイヤの加硫方法は、量産に向かない大型タイヤの加硫成形にメカニカル手段を利用した方法である。そして、上下モールド及び未加硫大型タイヤを1個のユニット体として、プレス内に搬入セットし、当該ユニット体を上部スチームボックスに固定することなく加硫することである。当該スチームボックスは、左右一対のアームと連結するクランクギアの回転によりの開閉可能となっている。また、膨張した未加硫大型タイヤのため浮上している上モールドを、当該メカニカル手段で完全に締付け、且つ一定の締付力を得られるようにしたことを特徴とする。ここで、特許文献2に記載の技術において、スチームボックスの開閉機構や、上下モールドの締付機構に回転部分が多く、摺動部分の摩耗の保守が必要になる。さらに、対象としている大型タイヤの加硫機では構成部品が大型化し、小型の加硫機に比べ、割高になる傾向がある。
【0005】
そのため、上記特許文献1及び特許文献2に記載の技術における問題を解決するものとして、例えば、特許文献3に記載のタイヤ加硫機が知られている。このタイヤ加硫機は、上下動可能な上部ボルスターに組付けられる上型部と、下部ボルスターに組付けられる下型部とを備えたタイヤ金型を用いてタイヤを加硫するタイヤ加硫機において、上部ボルスターを上昇させた状態で、上部ボルスターを残して下部ボルスターのみを加硫位置からほぼ水平方向へ移動可能に構成されたものである。また、上部ボルスターは、床面上に立設した昇降ガイドにガイドされながら、昇降装置(例えば、油圧シリンダ)によって昇降動作し得るように構成されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−172622号公報
【特許文献2】特公昭49−30280号公報
【特許文献3】特開2000−317943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載のタイヤ加硫機においては、加硫対象が大型タイヤの場合、上型部や上部ボルスターの重量が大きくなるので、それに合わせて昇降ガイドを太くしなければならない(剛性を高めなければならない)。別途設けた昇降ガイドを太くすると、その分だけ加硫機の重量が増加してしまう。また、上型部及び上部ボルスターが下降した状態(加硫時の状態)において、昇降ガイドは上部ボルスターよりも上方へ高く突出したままとなるので、装置高さが高いものとなってしまう。また、昇降ガイドは、円周の全周囲でガイド(拘束)されているので、上部ボルスターが大きくなると、熱膨張によって水平方向に膨張した場合に、昇降ガイドに対する上部ボルスターのガイド部分のズレを逃がす余地が全くなく、ガイド機能自体が阻害される虞がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、大型タイヤを加硫する場合であっても上部ボルスター(上部部材)の安定的な昇降動作を従来よりもコンパクトな構造で実現するタイヤ加硫プレスを提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明は、建設車両等に装着される大型タイヤを加硫するタイヤ加硫プレスに関するものである。そして、本発明に係るタイヤ加硫プレスは、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明のタイヤ加硫プレスは、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0010】
前記課題を解決するための本発明に係るタイヤ加硫プレスの第1の特徴は、タイヤが横置き収容されるモールドと、鉛直方向に昇降し、前記モールドを当該モールドの上方から支持する上部部材と、水平方向に移動し、前記モールドを当該モールドの下方から支持する下部部材と、前記上部部材に固定され当該上部部材とともに鉛直方向に昇降し、且つ前記下部部材に連結されて前記モールドを押圧する押圧力を伝達するタイロッドと、前記タイロッドの側部に形成された平坦なガイド面と、前記上部部材を鉛直方向に昇降させる昇降装置と、前記タイロッドに沿った固定部に取り付けられ、当該タイロッドの周方向において部分的に前記ガイド面と接触して前記上部部材の昇降をガイドするガイド装置と、を備えることである。
【0011】
この構成によると、タイロッドと当該タイロッドに沿った固定部の間にガイド装置が配置され、当該タイロッドに沿った固定部に取り付けられた当該ガイド装置が、タイロッドに形成された平坦なガイド面と当該タイロッドの周方向において部分的に接触して上部部材の昇降動作をガイドすることになる。そのため、上部部材の安定的な昇降動作をコンパクトな構造で実現するタイヤ加硫プレスを得ることができる。
【0012】
また、本発明に係るタイヤ加硫プレスの第2の特徴は、前記ガイド面は、互いに直交する方向に形成された第1ガイド面及び第2ガイド面を備えることである。
【0013】
この構成によると、タイロッドに下部部材の移動方向と当該移動方向に直交する方向にガイド面を設けることができる。そのため、当該ガイド面に接触させるガイド装置の位置調整が行いやすくなる。すなわち、上部部材の傾きが調整しやすい。
【0014】
また、本発明に係るタイヤ加硫プレスの第3の特徴は、前記ガイド装置が、水平軸まわりに回転し前記ガイド面に回転接触するローラと、当該ローラを前記固定部側面に固定するブラケットと、を備えることである。
【0015】
この構成によると、上部部材の昇降動作が回転接触によりガイドされることになる。ガイド面とローラの抵抗は滑り接触に比べて小さいため、上部部材の昇降動作を円滑に行うことができる。
【0016】
また、本発明に係るタイヤ加硫プレスの第4の特徴は、前記昇降装置は、位置検出機能を有するモータと、当該モータに接続され当該モータの回転運動を上下運動に変換する変換機構と、を備え、複数の前記モータ及び前記変換機構により、当該複数の前記モータを同期制御しながら前記上部部材を昇降させることである。
【0017】
この構成によると、上部部材の昇降動作が複数のモータにより制御されることになる。そして、当該複数のモータは、上部部材の昇降動作の駆動を同期することが可能である。また、当該モータは、位置検出機能を有している。そのため、上部部材の水平度を維持しやすくなり、上部部材の傾きを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。ここで、タイヤ加硫プレスは、モールド2内に収容したグリーンタイヤと呼ばれる未加硫のタイヤを、モールド2内外から加熱して加硫、成型する機械であって、通常、ブラダと呼ばれる弾性を有する材料(例えば、ブチルゴム)からなる伸縮自在のゴム袋が、その中心に取り付けられている。なお、グリーンタイヤを加硫成形するための加熱加圧媒体としては、蒸気、高温ガス(ガスの種類として、窒素ガスなどの不活性ガス、空気)などがある。
【0019】
図1は、本実施形態に係るタイヤ加硫プレス1の平面図である。図2は、本実施形態に係るタイヤ加硫プレス1の中央機構部とタイロッド30部の概略を示した図であり、図1において示したA−A断面の断面図である。図3は、本実施形態に係るタイヤ加硫プレス1の側面図である。図4は、本実施形態に係るタイヤ加硫プレス1のガイド装置37の概略を示した図であり、図2において示したB−B断面の断面図である。
【0020】
(タイヤ加硫プレスの構成)
図1〜3に示すように、本実施形態に係るタイヤ加硫プレス1は、タイヤTが横置き収容されるモールド2と、モールド2の外側に配置されたモールドコンテナ6と、下モールド4及びブラダBを鉛直方向に昇降させる中心機構7と、基礎上に設置されたベース8と、昇降する上部部材9と、ベース8上を水平に移動する下部部材10と、当該上部部材9の側部に取り付けられ、当該上部部材9を昇降させる昇降装置とを有して構成されている。
【0021】
(モールド周辺の構成)
モールド2は、横置きされたタイヤTの上側に配置される上モールド3と、下側に配置される下モールド4と、上モールド3および下モールド4の外周部に係合され周方向に分割されたサイドモールド5とを有している。
【0022】
モールドコンテナ6は、サイドモールド5を固定するスライドブロック12とスライドブロック12の外側に設けられたコンテナリング13とを有している。スライドブロック12は、その周方向に分割されたブロックであり、分割数は上述のサイドモールド5と同数である。サイドモールド5は、通常8〜12分割されたものである。また、スライドブロック12の背面は、上方に向かって外側向きに傾斜している。この背面の傾斜角度は、通常15°〜20°程度である。また、コンテナリング13は、その内面にスライドブロック12の背面と同じ傾斜角を有する中空円筒形状の部材であり、下部プラテン15上に固定されている。そして、コンテナリング13は、スライドブロック12の作動のガイドとタイヤTの内圧によるスライドブロック12の外側への移動を規制し、下モールド4の上下運動をサイドモールド5の横方向の運動に変換している。尚、コンテナリング13の外側には作業者の火傷防止と断熱のための断熱筒45が設けられ、この断熱筒45は上部部材9に固定されている。
【0023】
図2に示すように、上モールド3は、上部プラテン14の下面に取り付けられており、この上部プラテン14は押え金物35に取り付けられている。尚、当該押え金物35に形成された内ネジは、外ネジが形成された固定ネジ部と内ネジ及び外ネジが形成された駆動ネジ部からなる高さ調整装置36における駆動ネジ部の外ネジに取り付けられており、駆動ネジ部を回転させることで上下に昇降することができる。これにより、タイヤ加硫プレス1が全閉した状態で上下プラテン14、15間の間隔を調整することができる。また、下モールド4は、加硫済タイヤTの取出しのために下部プラテン15上に接離可能に載置されることになる。
【0024】
(中心機構)
図2に示すように、モールド2の下モールド4は、その中央部において下方から円筒状の当接部材43で支えられている。また、当接部材43の下端部には2本のモールド用シリンダ(図示せず)が取り付けられている。また、当接部材43の上端部は、下モールド4の下面中央部に形成された段差部に対して、軸方向に接離可能にはめられている。
【0025】
また、ブラケット17の中央部には上部リング用シリンダ16が取り付けられ、そのピストンロッドはカップリング20を介してセンターポスト21に接続されている。また、ブラケット17には、下部リング用シリンダ18のピストンロッド19が取り付けられている。
【0026】
尚、当該中心機構7は、タイヤT内側に装着されたブラダBの装入、引き抜きを行っている。また、下部リング用シリンダ18を用いてタイヤTの下モールド4との分離を行い、モールド用シリンダを用いて下モールド4を上昇させることでサイドモールド5の周方向の動作を行っている。
【0027】
図2に示すように、下部部材10の上面には締付シリンダ22が取り付けられている。そして、当該締付シリンダ22で駆動される下部プラテンサポート23が、締付シリンダ22の上部に取り付けられている。尚、下部プラテンサポート23の中央部には、当接部材43を摺動自在に案内する筒状ガイドが固定されており、下部プラテンサポート23上面に下部プラテン15が取り付けられている。また、下部部材10の下面には、それを水平方向に案内するためのガイド25aと、ガイド25bが取り付けられている。
【0028】
図2に示すように、ベース8上には、下部部材10が水平方向に移動するためのガイド溝24が設けられている。本実施形態においては、ガイド溝24が2つ設けられており、各ガイド溝24a,24bに対応したガイド25a,25bが下部部材10の下面に取り付けられている。そして、下部部材10の各ガイド25がベース8の各ガイド溝24にはまり合うように、ベース8上に下部部材10が配置される。尚、各ガイド溝24は形状が異なるものである。ここで、ガイド溝24aの形状は、傾斜状の断面を有している。そして、当該ガイド溝24aは、下部部材10の水平方向への移動をガイドし下部部材10の水平運動を制御する機能を備え且つ、下部部材10の重量を支持するものである。また、ガイド溝24bの形状は、凹形状の断面を有している。そして、当該ガイド溝24bは、下部部材10の重量を支持している。
【0029】
また、図3に示すように、ベース8上には、両端を軸受26で支えられたボールネジ27が下部部材10の移動用に設けられている。このボールネジ27のナット28は、下部部材10の後部側面に取付けられている。そして、ベース8の後方には、減速機付きのブレーキモータ29が取り付けられ、ボールネジ27と連結されており、下部部材10の水平方向への移動を駆動している。
【0030】
図1、図2に示すように、上部部材9の下部には、高さ調整装置36が固定されおり、上部部材9の4隅には、下方に伸びるタイロッド30の上端部が固定装置44にて固定されている。一方、下部部材10には、当該タイロッド30が挿通することができる孔31が設けられている。尚、タイロッド30の形状は長尺な円柱形であり、当該タイロッド30の下端部の外周面の周方向に沿って一定の幅をもたせた溝(図示せず)が設けられている。この溝に下部部材10の下面に設けられたロック装置32が装着されることにより、タイロッド30の下端部が下部部材10にロックされる。
【0031】
ここで、本実施形態におけるロック装置32は、中空円筒形状の部材を軸方向の平面で2分割にしたものであり、当該2分割にされた部材を半径方向に近づくように移動させることでタイロッド30が下部部材10にロックされることになる。また、2分割にされた部材が半径方向に遠のくように移動した状態において、当該2分割にされた部材の径は下部部材10に設けられた孔31の径よりも大きい径である。尚、当該ロック装置32は、上述したハーフブロック方式や、ブリーチロック方式などが考えられるがこれらに限るものではない。
【0032】
本実施形態ではタイロッド30の側部には、ガイド面46がタイロッド30の軸方向に沿って且つ軸直角方向において平坦に形成されている(図4参照)。そして、このガイド面46は、下部部材10の移動方向及びタイロッドの長手方向に沿って形成された第1ガイド面46aと、当該第1ガイド面46aに対して直交する方向に形成された第2ガイド面46bを有する。また、第1ガイド面46a及び第2ガイド面46bともにタイロッド30の側部の軸方向に一定の幅をもたせたものである。そして、この幅は上部部材9が上限から下限まで昇降動作する際に、後述するガイド装置37のローラ39が当該ガイド面46に接触するように形成される。尚、ガイド面46の幅はローラ39の幅よりも広く形成されている。
【0033】
(昇降装置)
上部部材9を昇降させる昇降装置は、アーム33と、上部部材9を昇降させる昇降シリンダ34と、ベース8の側面にタイロッド30に沿って設けられたサイドガイド11とを有して構成されている。尚、当該昇降装置は、上部部材9の両側面に設けられている。
【0034】
図2に示すように、上部部材9の両側面には、アーム33が固定されており、当該アーム33部にて上部部材9の昇降用の昇降シリンダ34のロッドが固定されている。そして、ベース8の両側面にタイロッド30に沿って各サイドガイド11の上部には、昇降シリンダ34が取り付けられており、当該昇降シリンダ34により、上部部材9を昇降動作させることになる。尚、当該昇降シリンダ34は、昇降シリンダ34のヘッド側室へ通じる流路を閉止可能で、且つ当該流路の開度を調節することができるバルブ(図示せず)が備えられている。
【0035】
(ガイド装置)
ここで、タイロッド30に沿って設けられたサイドガイド11の側面上部には、上部部材9の昇降動作をガイドするガイド装置37が取り付けられている。本実施形態では、ガイド装置37が左右のサイドガイド11に取り付けられている。そして、当該ガイド装置37は、左右各8個のガイドブラケット38とローラ39にて構成されている。具体的には、図4に示すように、上部部材9の左右方向の位置を規制するローラ39aと、前後方向の位置を規制するローラ39bとが直交して設けられている。尚、各ローラ39は、タイロッド30に沿って設けられたガイドブラケット38に回転可能に保持された状態で、サイドガイド11へ取り付けられることになる。そして、各タイロッド30の側部に対して平坦に形成されたガイド面46と各ローラ39とが、当該タイロッド30の周方向において部分的に回転接触して上部部材9の昇降動作をガイドすることになる。
【0036】
尚、図2、図3に示すように、ガイド装置37は上下2段でタイロッド30のガイド面46と接触する構成となっている。そのため、上部部材9の傾きをより効率よく抑制することができる。ここで、本実施形態において、ガイド装置37は上下2段の構成としているが、これに限らず、さらに段数を増やしたほうがより安定して上部部材9の昇降動作をガイドすることができる。また、ガイド装置37の上下2段の間隔は狭いものに比べて、広いものの方が上部部材9の傾きをより効果的に抑制し、上部部材9の昇降動作を安定してガイドすることができる。尚、ガイド装置37の上下2段の間隔は、上部部材9が下限から上限まで昇降する際に、ガイド装置37の上下2段のローラ39部がタイロッド30のガイド面46と接触することができるように設計されている。
【0037】
また、図4に示すように、タイロッド30に設けられた第1ガイド面46aと第2ガイド面46bは互いに直交したガイド面46であり、各ガイド面46に沿ってガイド装置37が配置されている。そのため、ガイド装置37の前後左右の位置調整を各ガイド面46に沿って配置された各ローラ39とガイドブラケット38で行うことができる。すなわち、ガイド装置37の前後方向の位置調整は、第2ガイド面46bに沿って配置されたローラ39bとガイドブラケット38で行い、ガイド装置37の左右方向の位置調整は、第1ガイド面46aに沿って配置されたローラ39aとガイドブラケット38で行うことができる。尚、ガイド装置37の位置調整は、各ローラ39が取り付けられたガイドブラケット38とサイドガイド11の間にシム板を挟むことで調整することができる。しかし、これに限らず、各ローラ39の取付部にネジジャッキなどを設けて位置調整を行ってもよい。
【0038】
(タイヤ加硫プレスの動作)
次に、実施形態に係るタイヤ加硫プレス1の動作について説明する。本実施形態に係るタイヤ加硫プレス1は、上部部材9に接続された昇降シリンダ34により上部部材9が鉛直方向に昇降することになる。また、下部部材10の後部側面に取り付けられたボールネジ27のナット28をブレーキモータ29により駆動させることで、下部部材10がグリーンタイヤGTを搬入出する位置(以下アウト側と呼ぶ)から当該上部部材9の直下位置(以下イン側と呼ぶ)まで水平方向に移動することになる。尚、下部部材10の下面に設けられたガイド25により、重量を支持されながらベース8上に設けられたガイド溝24aに沿って移動することになる。尚、ガイド25の上面は移動時の抵抗を小さくするため、潤滑されている。
【0039】
加硫するタイヤサイズが決まるとそのグリーンタイヤGT用にモールド2が選定される。そして、上モールド3と、下モールド4と、サイドモールド5とが一体になったモールド2を準備する。次に、上部部材9を上昇させてタイヤ加硫プレス1を全開させる。そして、当該モールド2を下部部材10がアウト側にある状態のタイヤ加硫プレス1の下部プラテン15上に載置する。その後、下部部材10をイン側に移動させ、上部部材9を下降させてタイヤ加硫プレス1を全閉させる。
【0040】
この全閉させた状態で、上部部材9に上端部を固定されたタイロッド30の下端部が、下部部材10に設けられたロック装置32で下部部材10にロックされる。そして、上モールド3を上部部材9に接続させるために上昇させていた押え金物35を、高さ調整装置36で押え金物35と上モールド3が接触するまで下降させる。その後、上モールド3を上部プラテン14にボルト(図示せず)で一時的に固定する。そして、下部部材10にロックされているタイロッド30のロック装置32を解除し、上部部材9を上昇させタイヤ加硫プレス1を全開させる。そして、下部部材10をアウト側に移動させて、モールド2のコンテナリング13を下部プラテン15にボルト等の締結具(図示せず)で固定する。
【0041】
(加硫動作)
次に、グリーンタイヤGTを装入する前に、モールド2を装着した上部プラテン14及び下部プラテン15と、コンテナリング13に蒸気などの加熱媒体を入れて十分に予熱しておく。その後、グリーンタイヤGTを上昇させた下モールド4上に置き、加硫サイズにあったブラダBをグリーンタイヤGT内に装入する。本実施形態におけるブラダBの装入は、グリーンタイヤGTをクレーンで支持して、ブラダBに蒸気などの低圧の気体を入れながら、その上端を中心機構7で上下させることによって行う。ブラダB内が低圧の気体で充満された状態でグリーンタイヤGTに装着されると、当該クレーンをグリーンタイヤGTから外す。この状態で、下部部材10をイン側へ移動させる。
【0042】
次に、下部部材10をイン側に移動させていき、上部部材9の直下まで達すると停止することになる。ここで、本実施形態では、昇降シリンダ34のロッド側室に流体を供給し上部部材9を下降させることになる。尚、本実施形態では、上部部材9は自重が作用して下降していくことになる。そのため、上部部材9の下降速度は、昇降シリンダ34のヘッド側室に通じる流路に備えられているバルブを昇降シリンダ34のヘッド側室を閉止している状態から開き、開度を調節して昇降シリンダ34のヘッド側室から流出する流体の流量を増減させることで制御している。
【0043】
上部部材9が下降していくと、サイドモールド5を固定したスライドブロック12と上部プラテン14に取り付けられた上モールド3が接触することになる。この状態で、さらに上部部材9が下降していくと、図2に示すように、スライドブロック12に固定されたサイドモールド5がモールド2中心方向に移動しながらモールド2全体が下降し全閉状態となる。
【0044】
ここで、上部部材9が下降している段階で、上部部材9の4隅に上端部を固定された各タイロッド30も同時に下降していくことになる。尚、当該タイロッド30に設けられた平坦なガイド面46が、サイドガイド11の側部に設けられたガイド装置37で当該タイロッド30の周方向において部分的に接触するように案内されながら下降していくことになる。そして、各タイロッド30の下端部が各タイロッド30に対応して下部部材10の4隅に設けられた孔31を通過することになる。タイヤ加硫プレス1が全閉すると、下部部材10の下面の4隅に設けられたロック装置32でタイロッド30の下端部が下部部材10に対して上下に移動しないようにロックされる。
【0045】
次に、タイロッド30の下端部が下部部材10にロックされると、締付シリンダ22に流体圧が供給されることになる。これにより、下部プラテンサポート23が上昇し、下部プラテンサポート23の上面に取り付けられている下部プラテン15も同時に上昇することになる。当該締付シリンダ22により発生した上昇力はタイロッド30で保持されるため、上部プラテン14と下部プラテン15の間には型締力が発生し、モールド2には上下方向の圧縮力が作用することになる。
【0046】
尚、本実施形態に係るタイヤ加硫プレス1にてグリーンタイヤGTが加硫される場合、加硫中にはグリーンタイヤGT内に高圧の加熱媒体が封入されることになるが、この加熱媒体の圧力による上部プラテン14と下部プラテン15間の引き離し力に比べ、前述した圧縮力が大きければモールド2間に隙間が発生しないことになる。
【0047】
ここで、図2に示すように、本実施形態では、上部部材9の下面に取り付けられた高さ調整装置36の下部に押え金物35が摺動自在に取り付けられており、当該押え金物35の下面には上部プラテン14が取り付けられている。尚、当該押え金物35は高さ調整装置36のネジ機構によって上下に昇降することができる。そして、上部部材9が下限まで下降していき、タイヤ加硫プレス1が全閉状態となると、タイロッド30が下部部材10にロックされることにより上部部材9の昇降動作が規制されることなる。また、モールド2変更の際には、タイヤ加硫プレス1が全閉した状態で、押え金物35が下降することで上下プラテン14、15間の間隔を調整することができる構成となっている。すなわち、上下プラテン14、15とその間に配置されているモールド2の隙間を調整することができる構成となっている。この構成を採用することにより、締付シリンダ22のストロークを調整することができる。すなわち、加硫中のモールド2の変形に追随するだけのストロークで十分であるため、当該締付シリンダ22のストロークは30mm前後の短いストロークとすることができる。これにより、加硫時、万が一締付シリンダ22内の圧力がゼロになっても、それにより生じるモールド2各部の隙間を最小にすることができ、安全な構造となっている。
【0048】
加硫を行うにあたって、モールド2間に圧縮力が発生したことを確認する。その後、中心機構7を通じてグリーンタイヤGT内側に加熱媒体が供給されることでグリーンタイヤGTの加硫が開始される。また、より効果的に加熱するために、上下プラテン14,15及びコンテナリング13の中空部に温度制御された蒸気などを供給して加熱する。一定時間経過後、前述の加熱媒体は排出されタイヤTの加硫が終了する。尚、加硫時間は温度を時間で積分して得られる加硫度により決定されるが、ゴムの性質上あまり高温で加熱することができない。そのため、特にゴムの厚さの大きい大型タイヤでは内部の昇温に時間がかかるため加硫時間が10時間以上かかることもある。
【0049】
加硫が終了すると、締付シリンダ22により上下プラテン14、15に作用していたタイヤ加硫プレス1の締付力を開放する。そして、加硫済みタイヤT内の圧力がなくなったことを確認し、下部部材10に下端部がロックされていたタイロッド30をアンロックし上部部材9を上昇させることで、タイヤ加硫プレス1を全開させる。ここで、下部部材10をアウト側に移動させ、モールド用シリンダを用いて下モールド4を上昇させる。これにより、サイドモールド5は上昇するとともに、コンテナリング13の内側の傾斜面に沿って径方向外側に移動する。そして、加硫済みタイヤTとサイドモールド5とが互いに分離する。今度は下部リング用シリンダ18を用いて加硫済みタイヤTのみを上昇させ、タイヤTと下モールド4とを分離すことになる。この状態で、ブラダBを上方に伸長させ、ブラダBをタイヤT内から引き抜きタイヤTだけをタイヤ加硫プレス1の外に運びだして一連の加硫動作が完了する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係るタイヤ加硫プレス1は、タイロッド30と昇降装置の間に当該タイロッド30の周方向において部分的にガイド面46と接触するガイド装置37が配置される。そして、昇降装置のサイドガイド11側面に取り付けられた当該ガイド装置37が、タイロッド30を全周で拘束することのないように、タイロッド30の側部に対して平坦に形成されたガイド面46にて上部部材9の昇降動作をガイドすることになる。そのため、上部部材9の上方にまで延設されるようなガイド面を有するガイドを新たに設ける必要がなく、上部部材9の安定的な昇降動作をコンパクトな構造で実現するタイヤ加硫プレス1を得ることができる。
【0051】
また、本実施形態に係るタイヤ加硫プレス1は、鉛直方向に昇降する上部部材9と、水平方向に移動する下部部材10とを有して構成されている。そのため、当該上部部材9を上昇させ、下部部材10をアウト側に移動させることで、タイヤTの搬入出作業及びモールド2の交換作業を容易に行うことができる。さらに、上部部材9及び下部部材10は鉛直・水平運動のみで剛性のある機構が採用されており、上部部材9に取り付けられる上モールド3および下部部材10に取り付けられる下モールド4の平行度・同芯度が良好である。
【0052】
また、当該ガイド面46は、互いに直交する方向に形成された第1ガイド面46a及び第2ガイド面46bを備えている。ここで、ガイド面46はタイロッド30の全周を環状のガイドでガイドされるものではなく、直交する2方向から別個のガイド装置37でガイドされているため、当該ガイド面46に接触させるガイド装置37の位置調整が行いやすくなる。すなわち、上部部材の傾きが調整しやすい。
【0053】
また、当該ガイド装置37は、当該ガイド面46に回転接触するローラ39を有している。そして、当該ガイド面46とローラ39の抵抗は滑り接触に比べて小さいため、上部部材9の昇降動作をより円滑に行うことができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することが可能なものである。例えば、以下のように変更して実施可能である。
【0055】
[変形例]
(1)
上述したように、上部部材9の昇降装置には昇降シリンダ34を用いている。しかし、変形例では、図5、図6に示すように、昇降シリンダ34の替わりにサーボモータ40を駆動して上部部材9を昇降させる昇降装置を備えている。ここで、図5は、このタイヤ加硫プレス1の側面図を示す。図6は、変形例に係るタイヤ加硫プレス1のガイド装置37の概略を示した図である。
【0056】
図6に示すように、昇降装置は、位置検出装置を備えたサーボモータ40と、回転運動を上下運動に変換するウォーム減速機(変換機構)を備えたボールネジジャッキ41とを有して構成されている。尚、ボールネジジャッキ41はサーボモータ40に連結されており、当該サーボモータ40がボールネジジャッキ41を駆動している。また、左右のサイドガイド11の上部に溶接された座板42が設けられている。そして、その座板42にボールネジジャッキ41と、このボールネジジャッキ41を駆動するサーボモータ40が取り付けられている。また、ボールネジジャッキ41の上下する部分はアーム33に取り付けられている。
【0057】
次に、当該昇降装置の昇降動作について説明する。サーボモータ40を回転させることにより、アーム33に取り付けられたボールネジジャッキ41を上下運動させることになる。そして、このボールネジジャッキ41の上下運動が上部部材9の昇降動作となる。尚、ボールネジジャッキ41はウォーム減速機でモータの回転運動をボールネジジャッキ41の上下運動に変換している。
【0058】
以上説明したように、変形例によると、上部部材9の昇降動作がサーボモータ40により制御されることになる。そして、各サイドガイド11に取付られた各サーボモータ40は、位置検出装置を有しており、上部部材9の昇降動作の際に同期制御することができる。そのため、上部部材9の水平度を維持しやすくなり、ガイド装置37によるガイド以外においても上部部材9の傾きを抑えることができる。また、万が一、上部部材9が傾いた場合、上部部材9の昇降動作を自動的に停止させることができため、本発明に係るタイヤ加硫プレス1が破損することを抑制することができる。さらに、サーボモータ40の採用により油圧ユニットの容量を減らすことができる。
【0059】
(2)
また、本実施形態で示したように、ガイド装置37がサイドガイド11(固定部)の側面上部に取り付けられる構成に限定されず、例えば、サイドガイド11とは別個にタイロッド30に沿って設けられた固定部材(固定部)に取り付けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施形態に係るタイヤ加硫プレスの平面図である。
【図2】実施形態に係るタイヤ加硫プレスの中央機構部とタイロッド部の概略を示した図であり、図1において示したA−A断面の断面図である。
【図3】実施形態に係るタイヤ加硫プレスの側面図である。
【図4】実施形態に係るタイヤ加硫プレスのガイド装置の概略を示した図であり、図2において示したB−B断面の断面図である。
【図5】変形例に係るタイヤ加硫プレスの側面図である。
【図6】変形例に係るタイヤ加硫プレスのガイド装置の概略を示した図であり、図5において示したC−C断面の断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 タイヤ加硫プレス
2 モールド
3 上モールド
4 下モールド
5 サイドモールド
7 中心機構
8 ベース
9 上部部材
10 下部部材
11 サイドガイド
14 上部プラテン
15 下部プラテン
22 締付シリンダ
24,24a,24b ガイド溝
25,25a,25b ガイド
30 タイロッド
32 ロック装置
33 アーム
34 昇降シリンダ
35 押え金物
36 高さ調整装置
37 ガイド装置
38 ガイドブラケット
39,39a,39b ローラ
46,46a,46b ガイド面
T タイヤ
GT グリーンタイヤ
B ブラダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが横置き収容されるモールドと、
鉛直方向に昇降し、前記モールドを当該モールドの上方から支持する上部部材と、
水平方向に移動し、前記モールドを当該モールドの下方から支持する下部部材と、
前記上部部材に固定され当該上部部材とともに鉛直方向に昇降し、且つ前記下部部材に連結されて前記モールドを押圧する押圧力を伝達するタイロッドと、
前記タイロッドの側部に形成された平坦なガイド面と、
前記上部部材を鉛直方向に昇降させる昇降装置と、
前記タイロッドに沿った固定部に取り付けられ、当該タイロッドの周方向において部分的に前記ガイド面と接触して前記上部部材の昇降をガイドするガイド装置と、
を備えるタイヤ加硫プレス。
【請求項2】
前記ガイド面は、互いに直交する方向に形成された第1ガイド面及び第2ガイド面を備える請求項1に記載のタイヤ加硫プレス。
【請求項3】
前記ガイド装置は、水平軸まわりに回転し前記ガイド面に回転接触するローラと、当該ローラを前記固定部側面に固定するブラケットと、を備える請求項1または2に記載のタイヤ加硫プレス。
【請求項4】
前記昇降装置は、位置検出機能を有するモータと、当該モータに接続され当該モータの回転運動を上下運動に変換する変換機構と、を備え、
複数の前記モータ及び前記変換機構により、当該複数の前記モータを同期制御しながら前記上部部材を昇降させてなる請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ加硫プレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−42557(P2010−42557A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207138(P2008−207138)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】