説明

タイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置および交換方法

【課題】構造を複雑にすることなくブラダ組立体をロックし、そのロックを解除することができるようにする。
【解決手段】下部クランプリング14にハブ7が嵌った状態において、ピストンロッド6を上昇させると、上部ガイド53がロックピン51を下部クランプリング14側に押し出すことで、ロックピン51の端部51bが溝14aに嵌り、ハブ7と下部クランプリング14とがロックされる。一方、ピストンロッド6を下降させると、段付き部6aにより上部ガイド53がロックピン51よりも下方に押し下げられ、ピストンロッド6側に付勢されたロックピン51の端部51bが溝14aから抜けることで、ハブ7と下部クランプリング14とのロックが解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンタイヤを加硫するタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置および交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造工程では、タイヤの各構成部材を組み立てたグリーンタイヤをタイヤ加硫機で加硫する。引用文献1に開示されているように、開閉自在な上下モールド間に装入されたグリーンタイヤの内周面に、タイヤ加硫機の中心機構によって、低圧の圧力媒体で膨張するブラダが密接される。その後、上下モールドの型締めとブラダ内への高圧の加熱媒体の導入が行われる。また、上下モールドはプラテンで常時加熱される。このように、タイヤ加硫機はグリーンタイヤをその内面と外面から加熱することにより加硫する。
【0003】
通常、ブラダは耐熱性のあるゴム製であるが、高温の媒体にさらされて劣化するため、数百本のタイヤを加硫する毎に交換することになる。乗用車用のタイヤでは加硫時間が10分程度であるから、同じタイヤ加硫機で連続的に加硫した場合にはブラダを数日に一度交換する必要がある。また、ブラダの形状はグリーンタイヤの形状に応じて決められており、タイヤサイズが変更になった場合にも別のサイズのブラダに交換する必要がある。また、ブラダはゴム製のため動作中の接触などで損傷を受け、交換が必要になる場合もある。通常、乗用車やライトトラック用のタイヤを加硫する工場では、数百台のタイヤ加硫機が設置されて作動している。このため、このような規模の工場では常に1台以上のタイヤ加硫機においてブラダの交換作業が行われていることになる。
【0004】
ブラダの交換は、タイヤ加硫機の稼働率を向上させる観点から、ブラダと、ブラダの上端部をクランプする上部クランプリングおよび上部ビードリングと、ブラダの下端部をクランプする下部クランプリングおよび下部ビードリングとを備えたブラダ組立体を交換することで行われる。タイヤ加硫機外であらかじめブラダ組立体を組み立てておき、フォークリフト等の吊持機器でタイヤ加硫機内に搬入して取り付ける。その後、ブラダの交換が必要になった場合には、ブラダ組立体をタイヤ加硫機から取り外し、タイヤ加硫機外へ運んでそこでブラダ組立体を分解することになる。
【0005】
ブラダ組立体の交換作業においては、まず、上下モールドを全開にして作業者が下部モールド上に上がり、上部クランプリングとピストンロッドとを取り付けているボルトを外す。その後、上部クランプリングにワイヤをかけて吊持機器で上部クランプリング全体を支える。この状態でピストンロッドを下降させて上部クランプリングの中心部からピストンロッドを引き抜く。さらに吊持機器で上部クランプリングを上方に引き上げながらブラダ全体を上昇させる。次に、中心機構全体を上昇させ、中心機構全体が上昇点にくるとブラダ全体を手で回転させて下部クランプリングと中心機構との螺合を解除して、ブラダ組立体全体をタイヤ加硫機から搬出する。
【0006】
次に、新しいブラダ組立体を吊持機器で吊り上げて、タイヤ加硫機の中心機構の直上に運んで、上昇している中心機構の上に置き、さらにブラダ全体を回転させて中心機構と下部クランプリングとを螺合させる。上部クランプリングを吊ったまま下部クランプリングを下降させ、さらにピストンロッドを上昇させて上部クランプリングの中心部の穴にピストンロッドを挿入する。上昇したピストンロッドに対して吊持機器で上部クランプリングの上下位置を適宜調節してから、ピストンロッドの所定の位置に上部クランプリングをボルトで固定する。
【0007】
この一連の作業でブラダの交換作業が完了することになるが、吊持機器の運転と、タイヤ加硫機上でのワイヤの着脱などの作業と、上下モールドの開閉操作の3種類の作業が必要であるため、通常3人の作業者が交換作業を行い、交換には30分以上かかっている。
【0008】
そこで、特許文献2には、ブラダ組立体の交換作業を容易にするタイヤ加硫機の中心機構が開示されている。即ち、ピストンロッドの上端部に段差を設け、この段差に上部クランプリングの中心部を係合させて、段付ブロックおよびパイプ材で上部クランプリングをピストンロッドの上端部に固定している。また、ピストンロッドを内装するリフトシリンダ内に係合部材を回転自在に支持し、この係合部材を歯車で回転させることにより、下部ビードリングの内径部と係合部材とを係合させることで、下部ビードリングをリフトシリンダに固定している。そして、ブラダ組立体の取り付け時には、下部ビードリングを中心機構上に置いてリフトシリンダに固定した後に、ピストンロッドを上昇させて、上部クランプリングをピストンロッドに固定する。一方、ブラダ組立体を中心機構から取り外す場合は、上記とは逆の動作をする。
【0009】
このように、特許文献2においては、ブラダ組立体の交換作業が簡素化されている。しかし、ブラダの周方向の位置決め作業や、上下クランプリングの中心機構への嵌め込み作業、及び、下部モールド上での係合部材の取り付け作業が必要である。また、この交換作業には複数の作業者が必要である。
【0010】
そこで、特許文献3には、ブラダ組立体の交換作業をさらに容易にするタイヤ加硫装置が開示されている。具体的には、センターポスト(ピストンロッド)の先端に設けられた、外力の作用しない状態では末広がりに拡張する複数の拡窄部材を有するロック機構により、センターポストと上部ブラダリング(上部クランプリング)とをロックし、円筒状のアンロック部材によりセンターポストと上部ブラダリングとのロックを解除している。即ち、センターポストを上昇させて上部ブラダリングの中央貫通穴を貫通させると、拡窄部材が末広がりに拡張することで、センターポストと上部ブラダリングとがロックされる一方、アンロック部材内にロック機構を収容すると、拡窄部材が窄まることで、センターポストと上部ブラダリングとのロックが解除される。
【0011】
また、下部ブラダリング(下部ビードリング)の下方に設けられた被ロック部と、中心機構に固定された第一のロック部材と、アクチュエータによって第一のロック部材に沿って上下動される第二のロック部材と、被ロック部と第一のロック部材との間、または、第一のロック部材と第二のロック部材との間に収まる球状体とにより、下部ブラダリングと中心機構とをロックし、そのロックを解除している。即ち、第二のロック部材を下降させて、球状体を被ロック部と第一のロック部材との間に収めることで、下部ブラダリングと中心機構とがロックされる一方、第二のロック部材を上昇させて、球状体を第一のロック部材と第二のロック部材との間に収めることで、下部ブラダリングと中心機構とのロックが解除される。
【0012】
また、特許文献3には、上記したロック機構以外のロック機構も開示されている。具体的には、上部ブラダリングの中央貫通穴の周囲の上面に設けられた複数の係止部材と、バネの付勢力で係止部材を中央貫通穴に向かって突出させる弾性支持手段とにより、センターポストと上部ブラダリングとをロックし、円筒状のアンロック部材によりセンターポストと上部ブラダリングとのロックを解除している。即ち、センターポストを上昇させて上部ブラダリングの中央貫通穴を貫通させると、センターポストの凹部に係止部材が嵌ることで、センターポストと上部ブラダリングとがロックされる一方、係止部材の内側にアンロック部材を挿入すると、係止部材が押し戻されることで、センターポストと上部ブラダリングとのロックが解除される。
【0013】
また、下部ブラダリングの下方に設けられた被ロック部と、被ロック部の上面に当接する爪部を備えた第一のロック部材と、アクチュエータによって上下動されて爪部を回動させる第二のロック部材とにより、下部ブラダリングと中心機構とをロックし、そのロックを解除している。即ち、第二のロック部材を下降させて、爪部を被ロック部の上面に当接させることで、下部ブラダリングと中心機構とがロックされる一方、第二のロック部材を上昇させて、爪部を被ロック部の上面から離脱させることで、下部ブラダリングと中心機構とのロックが解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開昭53−11031号公報
【特許文献2】特開平5−131453号公報
【特許文献3】特開2000−326330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献3においては、下部ビードリングのロックにおいて、第二のロック部材を上下動させるためのアクチュエータが別途必要であり、このようなアクチュエータを中心機構に組み込むと構造が複雑になりコストも嵩む。また、ブラダ組立体を中心機構に嵌め込む作業が必要である。
【0016】
本発明の目的は、構造を複雑にすることなくブラダ組立体をロックし、そのロックを解除することが可能なタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置および交換方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明におけるタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置は、ブラダと、当該ブラダの上端を挟持する上部クランプリングおよび上部モールドリングと、前記ブラダの下端を挟持する下部クランプリングおよび下部ビードリングとを有するブラダ組立体を、タイヤ加硫機の中心機構に対して交換する交換装置であって、前記中心機構は、前記下部クランプリングの内周面に嵌るハブと、前記ハブの中心を貫通して昇降されるセンターポストと、前記センターポストを昇降させる昇降機構と、を有し、前記ハブと前記下部クランプリングとをロックし、そのロックを解除するロック機構を備え、前記ロック機構は、前記センターポストの径方向に前記ハブに穿孔された貫通孔と、前記貫通孔内に設けられたピンと、前記貫通孔内に設けられて前記ピンを前記センターポスト側に付勢する第1の付勢手段と、前記センターポストと前記ハブとの間に設けられた押圧部材と、前記センターポストと前記ハブとの間において前記押圧部材の下方に設けられて、前記押圧部材を上方に付勢する第2の付勢手段と、前記センターポストの上部に設けられて上方から前記押圧部材に当接可能な段付き部と、前記下部クランプリングの内周面に設けられた溝と、を有し、前記下部クランプリングに前記ハブが嵌った状態において、前記センターポストが上昇された際には、前記ピンに当接した前記押圧部材により当該ピンが前記下部クランプリング側に押し出されることで、当該ピンの端部が前記溝に嵌り、前記ハブと前記下部クランプリングとがロックされる一方、前記センターポストが下降された際には、前記段付き部により前記押圧部材が前記ピンよりも下方に押し下げられることで、前記センターポスト側に付勢された前記ピンの端部が前記溝から外れ、前記ハブと前記下部クランプリングとのロックが解除されることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、下部クランプリングにハブが嵌った状態において、センターポストを上昇させると、押圧部材がピンを下部クランプリング側に押し出すことで、ピンの端部が溝に嵌り、ハブと下部クランプリングとがロックされる一方、センターポストを下降させると、段付き部により押圧部材がピンよりも下方に押し下げられ、センターポスト側に付勢されたピンの端部が溝から抜けることで、ハブと下部クランプリングとのロックが解除される。したがって、ハブと下部クランプリングとをロックし、そのロックを解除するためのアクチュエータを中心機構に別途設ける必要がない。これにより、構造を複雑にすることなくブラダ組立体をロックし、そのロックを解除することができる。また、ブラダ組立体の交換作業が安全になるとともに作業時間が短縮されるので、タイヤ加硫機の稼働率を向上させることができる。
【0019】
また、本発明におけるタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置においては、前記中心機構に対してタイヤを搬送するタイヤ搬送装置と、前記タイヤ搬送装置に取り付けられて前記ブラダ組立体の前記上部クランプリングを把持することが可能な治具と、を更に有し、前記上部クランプリングを把持した前記治具が前記タイヤ搬送装置で移動されることで、前記中心機構に対して前記ブラダ組立体が搬入乃至は搬出されてもよい。上記の構成によれば、上部クランプリングを把持した治具をタイヤ搬送装置で移動させることで、中心機構に対してブラダ組立体を搬入乃至は搬出する。これにより、中心機構に対してブラダ組立体を搬入乃至は搬出するための専用の装置を別途設ける必要がないので、コストを抑えることができる。
【0020】
また、本発明におけるタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置において、前記上部クランプリングの中心部の外周面に外溝が設けられており、前記タイヤ搬送装置は、前記タイヤを把持可能な複数のチャックと、前記複数のチャックをタイヤ径方向に開閉させる開閉機構と、を有し、前記治具は、前記複数のチャックの前記タイヤ径方向における内側に配置され、前記開閉機構によって閉じられる前記チャックにより押圧されて前記上部クランプリングの中心に向かって移動される一対のフックと、各フックを前記上部クランプリングの中心から離れる方向に付勢する第3の付勢手段と、を有し、前記上部クランプリングの中心に向かって移動された前記一対のフックにより前記外溝が把持されてもよい。上記の構成によれば、開閉機構により閉じられるチャックで一対のフックを押圧して一対のフックを上部クランプリングの中心に向かって移動させることで、上部クランプリングの外溝が一対のフックで把持される一方、複数のチャックを開いて第3の付勢手段の付勢力で一対のフックを上部クランプリングの中心から離れる方向に移動させることで、上部クランプリングの外溝から一対のフックが外れる。このように、開閉機構により閉じられる複数のチャックと、各フックを上部クランプリングの中心から離れる方向に付勢する第3の付勢手段とにより、一対のフックが開閉される。よって、一対のフックを開閉させるための専用の装置を別途設ける必要がないので、コストを抑えることができる。
【0021】
また、本発明におけるタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置においては、前記中心機構に対して前記ブラダ組立体を搬入する際に使用される芯出し装置を更に有し、前記芯出し装置は、前記上部クランプリングの中心に設けられた前記センターポストを挿入可能な中心貫通穴に挿入されるガイドロッドと、前記下部クランプリングの上方に取り付けられ、前記ガイドロッドが中心を貫通する保持部材と、を有していてもよい。上記の構成によれば、上部クランプリングの中心に設けられた中心貫通穴にガイドロッドを挿入し、下部クランプリングの上方に取り付けられた保持部材の中心をガイドロッドで貫通させることで、ブラダ組立体の搬入時に、下部クランプリングおよび下部ビードリングを上部クランプリングおよび上部モールドリングに対して位置決めすることができる。また、ブラダ組立体を上記のタイヤ搬送装置で移動させる場合には、下部クランプリングおよび下部ビードリングが揺動するのを防止することができる。
【0022】
また、本発明におけるタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置においては、前記センターポストと前記上部クランプリングとをロックし、そのロックを解除する上部ロック機構を更に備え、前記上部ロック機構は、前記センターポストの上端に取り付けられ、上下動可能なピストンと当該ピストンを下方に付勢する第4の付勢手段とを内部に備えたロッドヘッドと、前記ロッドヘッド内の密閉空間に流体を供給し、前記密閉空間から前記流体を排出する流体給排装置と、前記ロッドヘッドの周壁に穿設された穴と、前記上部クランプリングの中心に設けられた前記ロッドヘッドを挿入可能な中心貫通穴の内面に設けられた内溝と、前記第4の付勢手段により前記ピストンが押し下げられている際、前記穴よりも下方に位置するように前記ピストンの外面に設けられた外溝と、前記内溝と前記穴とが形成する空間、または、前記穴と前記外溝とが形成する空間に収容される球体と、を有し、前記中心貫通穴に前記ロッドヘッドが挿入された状態において、前記密閉空間から流体が排出された際には、前記第4の付勢手段で付勢された前記ピストンが下降されて、前記内溝と前記穴とが形成する空間に前記球体が収容されることで、前記センターポストと前記上部クランプリングとがロックされる一方、前記密閉空間に流体が供給された際には、前記ピストンが上昇されて、前記穴と前記外溝とが形成する空間に前記球体が収容されることで、前記センターポストと前記上部クランプリングとのロックが解除されてもよい。上記の構成によれば、中心貫通穴にロッドヘッドが挿入された状態において、ロッドヘッド内から流体を排出して第4の付勢手段の付勢力によりピストンを下降させることで、内溝と穴とが形成する空間に球体が収容されて、センターポストと上部クランプリングとがロックされる一方、ロッドヘッド内に流体を供給してピストンを上昇させることで、穴と外溝とが形成する空間に球体が収容されて、センターポストと上部クランプリングとのロックが解除される。このように、ロッドヘッド内に流体を供給し、ロッドヘッド内から流体を排出するだけで、センターポストと上部クランプリングとをロックし、そのロックを解除することができる。よって、ブラダ組立体の交換作業が安全になるとともに作業時間が短縮されるので、タイヤ加硫機の稼働率を向上させることができる。
【0023】
また、本発明におけるタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置においては、前記センターポストと前記上部クランプリングとをロックし、そのロックを解除する上部ロック機構を更に備え、前記上部ロック機構は、前記センターポストの上端に取り付けられ、上下動可能で上端面が露出したピストンと当該ピストンを上方に付勢する第5の付勢手段とを内部に備えたロッドヘッドと、前記ロッドヘッドの周壁に穿設された穴と、前記上部クランプリングの中心に設けられた前記ロッドヘッドを挿入可能な中心貫通穴の内面に設けられた内溝と、前記第5の付勢手段により前記ピストンが押し上げられている際、前記穴よりも上方に位置するように前記ピストンの外面に設けられた外溝と、前記中心機構の外部であって前記ロッドヘッドの上方に設けられ、前記ピストンを下方に押し下げることが可能なシリンダと、前記内溝と前記穴とが形成する空間、または、前記穴と前記外溝とが形成する空間に収容される球体と、を有し、前記中心貫通穴に前記ロッドヘッドが挿入された状態において、前記第5の付勢手段により前記ピストンが押し上げられた際には、前記内溝と前記穴とが形成する空間に前記球体が収容されることで、前記センターポストと前記上部クランプリングとがロックされる一方、前記シリンダにより前記ピストンが押し下げられた際には、前記穴と前記外溝とが形成する空間に前記球体が収容されることで、前記センターポストと前記上部クランプリングとのロックが解除されてもよい。上記の構成によれば、中心貫通穴にロッドヘッドが挿入された状態において、第5の付勢手段の付勢力によりピストンを押し上げることで、内溝と穴とが形成する空間に球体が収容されて、センターポストと上部クランプリングとがロックされる一方、シリンダでピストンを押し下げることで、穴と外溝とが形成する空間に球体が収容されて、センターポストと上部クランプリングとのロックが解除される。このように、第5の付勢手段でピストンを押し上げ、シリンダでピストンを押し下げるだけで、センターポストと上部クランプリングとをロックし、そのロックを解除することができる。よって、ブラダ組立体の交換作業が安全になるとともに作業時間が短縮されるので、タイヤ加硫機の稼働率を向上させることができる。また、シリンダを中心機構の外部に設けることで、中心機構の構造を簡素化することができる。
【0024】
また、本発明におけるタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換方法は、ブラダと、当該ブラダの上端を挟持する上部クランプリングおよび上部モールドリングと、前記ブラダの下端を挟持する下部クランプリングおよび下部ビードリングとを有するブラダ組立体を、タイヤ加硫機の中心機構に対して交換する交換方法であって、前記下部クランプリングの内周面に前記中心機構のハブが嵌った状態において、前記ハブの中心を貫通するセンターポストを上昇させることで、前記センターポストと前記ハブとの間に設けられて上方に付勢された押圧部材を、前記センターポストの径方向に前記ハブに穿孔された貫通孔内に設けられ、前記センターポスト側に付勢されたピンに当接させて、当該ピンを前記下部クランプリング側に押し出し、前記下部クランプリングの内周面に設けられた溝に当該ピンの端部を嵌めることで、前記ハブと前記下部クランプリングとをロックするロックステップと、前記下部クランプリングの内周面に前記ハブが嵌った状態において、前記センターポストを下降させることで、前記センターポストの上部に設けられた段付き部で前記押圧部材を前記ピンよりも下方に押し下げて、前記センターポスト側に付勢された前記ピンの端部を前記溝から外すことで、前記ハブと前記下部クランプリングとのロックを解除するアンロックステップと、を有することを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、下部クランプリングにハブが嵌った状態において、センターポストを上昇させると、押圧部材がピンを下部クランプリング側に押し出すことで、ピンの端部が溝に嵌り、ハブと下部クランプリングとがロックされる一方、センターポストを下降させると、段付き部により押圧部材がピンよりも下方に押し下げられ、センターポスト側に付勢されたピンの端部が溝から抜けることで、ハブと下部クランプリングとのロックが解除される。したがって、ハブと下部クランプリングとをロックし、そのロックを解除するためのアクチュエータを中心機構に別途設ける必要がない。これにより、構造を複雑にすることなくブラダ組立体をロックし、そのロックを解除することができる。また、ブラダ組立体の交換作業が安全になるとともに作業時間が短縮されるので、タイヤ加硫機の稼働率を向上させることができる。
【0026】
また、本発明におけるタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換方法においては、前記中心機構に対してタイヤを搬送するタイヤ搬送装置が、当該タイヤ搬送装置に取り付けられ、前記ブラダ組立体の前記上部クランプリングを把持することが可能な治具に当該上部クランプリングを把持させた状態で、前記ブラダ組立体を移動させることで、前記中心機構に対して前記ブラダ組立体を搬入乃至は搬出する搬入・搬出ステップを更に有していてもよい。上記の構成によれば、上部クランプリングを把持した治具をタイヤ搬送装置で移動させることで、中心機構に対してブラダ組立体を搬入乃至は搬出する。これにより、中心機構に対してブラダ組立体を搬入乃至は搬出するための専用の装置を別途設ける必要がないので、コストを抑えることができる。
【0027】
また、本発明におけるタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換方法においては、前記搬送装置が備える、タイヤ径方向に開閉機構で開閉されて前記タイヤのビード部を把持可能な複数のチャックの当該タイヤ径方向における内側に、前記治具が備える、前記上部クランプリングの中心から離れる方向に付勢手段で付勢された一対のフックを配置しており、前記開閉機構によって閉じられる前記チャックで前記一対のフックを押圧して当該一対のフックを前記上部クランプリングの中心に向かって移動させることで、前記上部クランプリングの中心部の外周面に設けられた外溝を前記一対のフックで把持する把持ステップを更に有していてもよい。上記の構成によれば、開閉機構により閉じられるチャックで一対のフックを押圧して一対のフックを上部クランプリングの中心に向かって移動させることで、上部クランプリングの外溝が一対のフックで把持される一方、複数のチャックを開いて付勢手段により一対のフックを上部クランプリングの中心から離れる方向に移動させることで、上部クランプリングの外溝から一対のフックが外れる。このように、開閉機構により閉じられる複数のチャックと、各フックを上部クランプリングの中心から離れる方向に付勢する付勢手段とにより、一対のフックが開閉される。よって、一対のフックを開閉させるための専用の装置を別途設ける必要がないので、コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置および交換方法によると、ハブと下部クランプリングとをロックし、そのロックを解除するための専用のアクチュエータを中心機構に設ける必要がない。これにより、構造を複雑にすることなくブラダ組立体をロックし、そのロックを解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】タイヤ加硫機を示す断面図である。
【図2】保管装置を示す断面図である。
【図3】図2をB方向から見た平面図である。
【図4】吊り上げ治具を示す側面図である。
【図5】図4をC方向から見た平面図である。
【図6】図1の要部Dの拡大図である。
【図7】図1の要部Eの拡大図である。
【図8】図1の要部Eの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
[第1実施形態]
(タイヤ加硫機の構成)
本実施形態によるタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置(交換装置)101は、タイヤ加硫機1に備わっている。タイヤ加硫機1は、図1に示すように、グリーンタイヤGを着脱可能に収容する下部モールド3および上部モールド(図示せず)と、グリーンタイヤG内に装着されるブラダが取り付けられる中心機構2とを有している。グリーンタイヤGは、成形工程において、ビード、トレッド、サイドウォールなどの各構成部材を繋ぎ合わせ、貼り合わせることで成形、構成されている。このグリーンタイヤGが、加硫工程に運ばれ、タイヤ加硫機1で加硫成形される。
【0032】
下部モールド3は、加熱源である下部プラテン4の上に交換自在に設けられている。また、上部モールドは、加熱源である上部プラテン(図示せず)の下に交換自在に設けられている。図示しない上部構造体が上部モールドを上下動させることにより、上部モールドは下部モールド3に対して上方から開閉自在にされている。
【0033】
下部モールド3の中心下方には、中心機構2が配置されている。中心機構2には、後述するブラダ11内にガスを導入する流体入口(図示せず)と、ブラダ11内からガスを排出させる流体出口(図示せず)とが設けられている。
【0034】
図1に示すように、下部モールド3と上部モールドとが開放された状態において、中心機構2上には、ブラダ組立体10が載置される。ブラダ組立体10は、ブラダ11と、ブラダ11の上端部を挟持する上部クランプ部16(上部クランプリング12および上部モールドリング13)と、ブラダ11の下端部を挟持する下部クランプ部17(下部クランプリング14および下部ビードリング15)と、を有している。下部ビードリング15は下部モールド3上に載置される。
【0035】
中心機構2は、下部クランプリング14の内周面に嵌るハブ7と、ハブ7の中心を貫通しており、図示しない昇降機構により昇降されるピストンロッド6(センターポストの一例)と、中心機構2全体を昇降させる図示しない駆動機構と、中心機構2全体の昇降を案内するガイド5と、を有している。なお、中心機構2には、グリーンタイヤGの高さやブラダ11の高さにあわせて、ピストンロッド6の高さをあらかじめ設定した任意の高さ位置に停止可能なように、図示しないセンサーが設けられている。
【0036】
加硫が行われている間、ブラダ組立体10の上部クランプリング12はピストンロッド6にロックされ、ブラダ組立体10のの下部クランプリング14はハブ7にロックされる。そして、ブラダ組立体10の交換時には、これらのロックがそれぞれ解除されることになる。
【0037】
下部クランプリング14の上部には、保持部材93が取り付けられている。この保持部材93は、ブラダ組立体10のハブ7への取付時にブラダ11の下部クランプ部17を上部クランプ部16に対して位置決めするものであり、詳細は後述する。
【0038】
また、交換装置101は、タイヤ加硫機1の外と中心機構2との間で移動して、中心機構2に対してグリーンタイヤGを搬入するタイヤ装入装置(タイヤ搬送装置)20を備えている。タイヤ装入装置20は、パドル22を備えてグリーンタイヤGを把持可能なチャック21をグリーンタイヤGの周方向に複数有している。チャック21は通常4個から8個で構成され、図示しない開閉機構によって同期してグリーンタイヤGの径方向に開閉される。
【0039】
このような構成のタイヤ装入装置20は、タイヤ加硫機1の外において、グリーンタイヤGの内径(ビード部内径)よりも縮径したチャック21をグリーンタイヤGの上方からグリーンタイヤG内に装入し、その位置でパドル22を拡開させることによってグリーンタイヤGを把持する。そして、タイヤ装入装置20は、グリーンタイヤGをブラダ組立体10の直上に搬送し、グリーンタイヤGを下降させて、中心機構2上にグリーンタイヤGを載置する。その後、タイヤ装入装置20は、チャック21をグリーンタイヤGの内径よりも縮径させることでグリーンタイヤGを開放して、タイヤ加硫機1外の位置に戻ることになる。
【0040】
なお、タイヤ装入装置20には、タイヤ装入装置20全体を昇降させる昇降機構、タイヤ加硫機1外と中心機構2の直上との間でタイヤ装入装置20を移動させる移動機構、及び、チャック21を開閉させる開閉機構が含まれている。
【0041】
このような構成において、グリーンタイヤGを加硫する際には、中心機構2は、ブラダ11内に低圧の窒素ガスを導入することによりブラダ11を伸展させつつ、ピストンロッド6を下降させることで、ピストンロッド6にロックされた上部クランプリング12を所定位置まで下降させて、下部モールド3上に載置されたグリーンタイヤGの内周面にブラダ11を密接させる。この工程がシェーピング工程と呼ばれる。
【0042】
シェーピング工程が終わると、グリーンタイヤGが加硫成形される。即ち、上部モールドが下降されることによって、上部モールドと下部モールド3とが閉じられ、上部モールドと下部モールド3との間に締付力が発生される。同時に、流体入口からブラダ11内に高温・高圧の窒素ガスが導入される。これにより、グリーンタイヤGが内側および外側から加熱されることで、グリーンタイヤGが加硫成形される。
【0043】
加硫成形工程が終わると、一部の加硫済タイヤは、ポストインフレータと呼ばれる装置で、冷却時の変形を防ぐために空気圧で膨張された状態で冷却され、さらに次の工程に搬送されることとなる。また、一部の加硫済タイヤは、そのまま自然冷却されて、次の工程に搬送されることとなる。
【0044】
(保管装置の構成)
また、交換装置101は、図2に示すように、交換前のブラダ組立体10を保管する保管装置40を備えている。保管装置40は、下部クランプリング14の内周面に嵌る突起部41と、突起部41の板状部材に形成された後述するガイドロッド91が貫通する中心貫通穴42と、上方に伸びる複数本のロッド43と、を有している。突起部41の板上部材の上面には、下部ビードリング15が載る座面が形成されている。また、保管装置40の下部には車輪44が取り付けられたフレーム45が設けられており、保管装置40全体を移動させることが可能にされている。
【0045】
また、交換装置101は、中心機構2に対してブラダ組立体10を搬入する際に使用される芯出し装置90を備えている。芯出し装置90は、上部クランプリング12の中心に設けられたピストンロッド6(図1参照)を挿入可能な中心貫通穴12bに挿入されるガイドロッド91と、ガイドロッド91の上端に設けられ、ガイドロッド91の直径よりも大径なストッパー92と、下部クランプリング14の上方に取り付けられた保持部材93と、を有している。
【0046】
ガイドロッド91は、ブラダ組立体10の搬入時にのみに使用され、図示しない昇降機構により昇降される。ストッパー92は、ガイドロッド91が上部クランプリング12から抜け落ちるのを抑止している。保持部材93は、ガイドロッド91が中心を貫通する円環状の保持板93aと、下部クランプリング14の上方に固定され、保持板93aを支持するリブ93bとを有している。保持部材93は、ブラダ組立体10を中心機構2に取り付ける際に、下部クランプ部17を上部クランプ部16に対して位置決めするとともに、後述するように、ブラダ組立体10をタイヤ装入装置20で保持して移動させる際に、下部クランプ部17が揺動するのを防止するものである。
【0047】
ブラダ組立体10は、別の場所で組み立てられ、中心にガイドロッド91が装入された状態でフォークリフトなどの吊持機器で保管装置40上に載置される。
【0048】
図2をB方向から見た平面図である図3に示すように、下部クランプリング14上に取り付けられた保持部材93のリブ93bとロッド43とは、互いに干渉しないように、ガイドロッド91を中心として60°の間隔をあけて交互に配置されている。なお、図3ではブラダ11を図示していない。図2に示すように、ブラダ組立体10は、突起部41と下部クランプリング14とによって、保管装置40に対して位置決めされている。また、上部クランプリング12がロッド43上に載置されている。
【0049】
このような構成において、保管装置40に保管されたブラダ組立体10は、芯出し装置90により下部クランプ部17が上部クランプ部16に対して位置決めされた状態で、保管装置40によりタイヤ装入装置20の真下まで搬送されることとなる。
【0050】
(吊り上げ治具の構成)
また、交換装置101は、図4に示すように、ブラダ組立体10を吊り上げる吊り上げ治具(治具)30を備えている。吊り上げ治具30は、中心機構2に対してグリーンタイヤGを搬入するタイヤ装入装置20のチャック21の上方において、チャック21の固定部23に取り付けられる。そして、吊り上げ治具30は、上部クランプリング12の中心部の外周面に設けられた外溝12aを把持することが可能である。この吊り上げ治具30は、中心機構2に対してブラダ組立体10を搬入乃至は搬出するときにのみ使用され、ブラダ組立体10の交換後はチャック21から取り外されることになる。
【0051】
図4をC方向から見た平面図である図5に示すように、吊り上げ治具30は、チャック21の固定部23に取り付けられる支持板31と、支持板31の下部に設けられた2組のレール32と、2組のレール32に支えられた一対のLMガイド(リニアモーションガイド)33を上部に備える一対のフック34と、各フック34を上部クランプリング12の中心から離れる方向に付勢する引っ張りばね(第3の付勢手段)35と、ガイドロッド91が貫通する穴36と、を有している。なお、図5ではタイヤ装入装置20とブラダ組立体10を図示していない。
【0052】
一対のフック34は、図4に示すように、複数のチャック21のタイヤ径方向における内側に配置されている。そして、開閉機構によりチャック21が閉じられてパドル22が上部クランプリング12の中心方向に移動されると、パドル22がフック34に当接する。さらにパドル22が上部クランプリング12の中心方向に移動されると、フック34はパドル22に押圧されて、引っ張りばね35の付勢力に反して上部クランプリング12の中心に向かって移動される。このようにして、上部クランプリング12の外溝12aが一対のフック34で把持される。この状態からチャック21を開くと、フック34は引っ張りばね35の付勢力で原点位置に戻ることとなる。
【0053】
このような構成において、吊り上げ治具30が取り付けられたチャック21が、タイヤ挿入装置20の昇降機構によって保管装置40に保管されたブラダ組立体10の上方から下降され、所定の位置で停止される。そして、開閉機構により閉じられるチャック21で一対のフック34が押圧されて一対のフック34が上部クランプリング12の中心方向に移動されることにより、上部クランプリング12の外溝12aが一対のフック34で把持される。その後、上部クランプリング12を把持した吊り上げ治具30がタイヤ装入装置20で移動されることにより、ブラダ組立体10がタイヤ加硫機1の中心機構2上に搬入されることとなる。また、中心機構2上からブラダ組立体10を搬出する際にも、上部クランプリング12を把持した吊り上げ治具30がタイヤ装入装置20で移動されることとなる。
【0054】
(下部ロック機構の構成)
また、交換装置101は、図1の要部Dを拡大した断面図である図6に示すように、中心機構2のハブ7とブラダ組立体10の下部クランプリング14とをロックし、そのロックを解除する下部ロック機構(ロック機構)50を備えている。
【0055】
下部ロック機構50は、ピストンロッド6の径方向にハブ7に穿孔された複数の貫通孔7aと、貫通孔7a内にそれぞれ設けられたロックピン(ピン)51と、貫通孔7a内にそれぞれ設けられてロックピン51をピストンロッド6側に付勢する圧縮ばね(第1の付勢手段)54と、ハブ7の外周側から貫通孔7aにねじ込まれてロックピン51を貫通させながら圧縮ばね54が貫通孔7aから抜けるのを防止するストッパー板52と、ピストンロッド6とハブ7との間に設けられた環状の上部ガイド(押圧部材)53と、ピストンロッド6とハブ7との間において上部ガイド53の下方に設けられて、上部ガイド53を上方に付勢する圧縮ばね(第2の付勢手段)55と、ピストンロッド6の上部に設けられて上方から上部ガイド53に当接可能な段付き部6aと、下部クランプリング14の内周面に環状に設けられた溝14aと、を有している。
【0056】
ロックピン51は、ハブ7の内周面側に大径部51aを有している。大径部51aの先端にはテーパが設けられている。圧縮ばね54は、ロックピン51の大径部51aとストッパー板52との間に設けられている。上部ガイド53は、ピストンロッド6の上昇時にはロックピン51に当接してロックピン51を下部クランプリング14側に押し出す一方、ピストンロッド6の下降時には段付き部6aによりロックピン51よりも下方に押し下げられる。上部ガイド53の上部には、大径部51aのテーパと摺動するテーパが設けられている。溝14aには、上部ガイド53により押し出されたロックピン51の端部51bが嵌る。
【0057】
また、ハブ7の上部にはヘッド60が固定されている。このヘッド60には、ブラダ11内に供給される高圧の加熱媒体の供給口61および排出口62が設けられている。供給口61は複数の小径の穴からなり、排気口62は矩形に開口する穴からなっている。ヘッド60の中心を貫通する穴は、段付き部6aと干渉しないように段付き部6aの外径よりも少し大きな径とされている。
【0058】
ハブ7には、供給口61および排出口62に外部からの配管を接続する図示されない配管の出入口が設けられている。また、ハブ7と下部クランプリング14との間には高圧の加熱媒体をシールするパッキン63、64が設けられている。また、圧縮ばね55の下方にはピストンロッド6の案内と加熱媒体のシールのためのパッキン組立65が設けられている。
【0059】
図6に示されているように、ハブ7と下部クランプリング14とのロック状態では、ピストンロッド6は図示された位置より上方で作動する(上部クランプ部16を昇降させる)。圧縮ばね55は上部ガイド53を押し上げてヘッド60の下面に押し当てている。また、ロックピン51は上部ガイド53の外周に当接することにより圧縮ばね54の付勢力に反して下部クランプリング14側に押し出されており、押し出されたロックピン51の端部51bは溝14aに嵌っている。
【0060】
このような構成において、ハブ7と下部クランプリング14とのロックを解除する際には、ピストンロッド6から上部クランプリング12が取り外された後に、ピストンロッド6が下降される。すると、段付き部6aにより上部ガイド53が下方に押し下げられる。上部ガイド53が圧縮ばね55の付勢力に反してロックピン51よりも下の位置まで押し下げられると、圧縮ばね54の付勢力によりロックピン51の大径部51aがピストンロッド6の段付き部6aよりも上方の外周面に接触するまで移動することで、ロックピン51の端部51bはハブ7の内部に収容され下部クランプリング14の溝14aから外れる。これにより、ハブ7と下部クランプリング14とのロックが解除されることとなる。
【0061】
また、ハブ7と下部クランプリング14とをロックする際には、新しいブラダ組立体10の下部クランプリング14がハブ7に嵌められた後に、ピストンロッド6が上昇される。すると、圧縮ばね55に付勢された上部ガイド53が上方に移動する。そして、上部ガイド53のテーパがロックピン51の大径部51aのテーパと摺動することで、ロックピン51が圧縮ばね54の付勢力に反してハブ7の内部から下部クランプリング14側に押し出され、ロックピン51の端部51bが下部クランプリング14の溝14aに嵌る。これにより、ハブ7と下部クランプリング14とがロックされることとなる。
【0062】
(上部ロック機構の構成)
また、交換装置101は、図1の要部Eを拡大した断面図である図7に示すように、中心機構2のピストンロッド6とブラダ組立体10の上部クランプリング12とをロックし、そのロックを解除する上部ロック機構70を備えている。
【0063】
上部ロック機構70は、ピストンロッド6の上端にボルト81で取り付けられ、上下動可能なピストン72とピストン72を下方に付勢する圧縮ばね(第4の付勢手段)73とを内部に備えたロッドヘッド71と、ロッドヘッド71の上端に固定された蓋74と、ロッドヘッド71に接続された配管83により、ロッドヘッド71内の密閉空間に流体を供給し、ロッドヘッド71内の密閉空間から流体を排出する図示しない流体給排装置と、ロッドヘッド71の周壁に穿設された複数の鋼球保持穴(穴)71aと、上部クランプリング12の中心に設けられたロッドヘッド71を挿入可能な中心貫通穴12bの内周面に環状に設けられた鋼球固定溝(内溝)12cと、鋼球保持穴71aよりも下方においてピストン72の外周面に設けられた鋼球逃がし溝(外溝)72aと、鋼球固定溝12cと鋼球保持穴71aとが形成する空間、または、鋼球保持穴71aと鋼球逃がし溝72aとが形成する空間に収容される鋼球(球体)75と、を有している。
【0064】
蓋74は、流体圧によって上昇するピストン72のストッパーとして機能している。鋼球保持穴71aは、鋼球75がロッドヘッド71外に脱落しないように、上部クランプリング12側に向かって開口面積が小さくなるように形成されることで、鋼球75を部分的に露出させることができるものとされている。鋼球固定溝12cは、断面が鋼球保持穴71aから露出した鋼球75の一部に対応する円弧状、すなわち鋼球75の曲率半径に適合する形状にされている。
【0065】
また、上部クランプリング12とロッドヘッド71との間には、ブラダ11内に供給される加熱媒体をシールするパッキン82が設けられている。また、ロッドヘッド71には、上部クランプリング12の下面に当接することでロッドヘッド71の高さ方向の位置を位置決めするための段付き部71bが設けられている。また、ロッドヘッド71の内周面とピストン72の外周面とはOリング84によりシールされている。
【0066】
このような構成において、ピストンロッド6と上部クランプリング12とをロックする際には、上部クランプリング12とロッドヘッド71とが嵌合された後に、ロッドヘッド71内においてOリング84よりも下方に形成される密閉空間から流体が排出される。すると、ピストン72の重量と圧縮ばね73の付勢力とによってピストン72が下降することで、鋼球保持穴71aと鋼球逃がし溝72aとが形成する空間に収容されていた鋼球75は、鋼球逃がし溝72aから外れ、ピストン72の外周面で押されて鋼球固定溝12cに嵌り、鋼球固定溝12cと鋼球保持穴71aとが形成する空間に収容される。これにより、ピストンロッド6と上部クランプリング12とがロックされることとなる。
【0067】
また、ピストンロッド6と上部クランプリング12とのロックを解除する際には、上記のロッドヘッド71内のピストン72の下方に形成した密閉空間に流体が供給される。すると、圧縮ばね73の付勢力に反してピストン72が蓋74と接触するまで上昇することで、鋼球固定溝12cと鋼球保持穴71aとが形成する空間に収容され固定状態であった鋼球75は、鋼球固定溝12cから外れて鋼球保持穴71aと鋼球逃がし溝72aとが形成する空間に収容される。これにより、ピストンロッド6と上部クランプリング12とのロックが解除されることとなる。
【0068】
(ブラダ組立体の交換方法)
次に、交換装置101の動作(ブラダ組立体10の交換方法)について説明する。
【0069】
まず、ブラダ組立体10の取り付け方法について説明する。図1において、タイヤ加硫機1の中心機構2上には何もない状態で、下部モールド3は下部プラテン4の上に取り付けられ、上部モールドは上部プラテンの下に取り付けられている。また、中心機構2全体は図示しない駆動機構により上昇され、ピストンロッド6は図示しない昇降機構により下降されている。下部ロック機構50および上部ロック機構70はロックが解除された状態で待機している。また、タイヤ装入装置20はチャック21が開かれ、タイヤ加硫機1外で待機している。
【0070】
次に、図2に示すように、ガイドロッド91を上部クランプリング12の中心貫通穴12bに挿入した状態のブラダ組立体10を保管装置40上に載置する。また、図4に示すように、タイヤ装入装置20のチャック21に吊り上げ治具30を取り付ける。そして、ブラダ組立体10が載置された保管装置40をタイヤ装入装置20の真下に移動させる。
【0071】
次に、チャック21を所定位置まで下降させて、チャック21を閉じることで、一対のフック34で上部クランプリング12の外溝12aを把持する。そして、タイヤ装入装置20でブラダ組立体10を吊り上げ、中心機構2の真上に搬送する。このとき、ガイドロッド91が挿通された保持部材93によって下部クランプ部17が揺動するのが防止される。また、上部クランプリング12を把持した吊り上げ治具30をタイヤ装入装置20で移動させることで、中心機構2に対してブラダ組立体10を搬入するための専用の装置を別途設ける必要がない。さらに、タイヤ装入装置20の開閉機構により閉じられる複数のチャック21で一対のフック34を閉じることで、一対のフック34を閉じるための専用の装置を別途設ける必要がない。そして、ブラダ組立体10を下降させて、予め上昇させた状態の中心機構2のハブ7の上にブラダ組立体10を載置する。このとき、ガイドロッド91及び保持部材93によって、下部クランプ部17が上部クランプ部16に対して位置決めされる。
【0072】
次に、図6に示すように、ハブ7に下部クランプリング14が嵌り込んだことを確認し、予め下降させていたピストンロッド6を少し上昇させることで、下部ロック機構50によりハブ7と下部クランプリング14とをロックする。具体的には、上部ガイド53によりロックピン51を圧縮ばね54の付勢力に反して下部クランプリング14側に押し出し、ロックピン51の端部51bを下部クランプリング14の溝14aに嵌めることで、ハブ7と下部クランプリング14とをロックする。このとき、ハブ7と下部クランプリング14とをロックするのに、ピストンロッド6の動作を利用しているため、特別なアクチュエータは不要である。
【0073】
次に、図7に示すように、ピストンロッド6をさらに上昇させて、上部クランプリング12の中心貫通穴12bにロッドヘッド71を挿入する。そして、ロッドヘッド71の段付き部71bを上部クランプリング12の下面に当接させる。このとき、ピストンロッド6の上昇とともにガイドロッド91も上昇させる。なお、固定したピストンロッド6に対して上部クランプリング12を嵌め込んでもよい。上部クランプリング12の中心貫通穴12bにロッドヘッド71が挿入されたことを確認して、ロッドヘッド71内の密閉空間から流体を排出することで、上部ロック機構70により上部クランプリング12とピストンロッド6とをロックする。具体的には、圧縮ばね73の付勢力によりピストン72を下降させて、鋼球保持穴71aと鋼球逃がし溝72aとが形成する空間に収容されていた鋼球75を鋼球固定溝12cと鋼球保持穴71aとが形成する空間に収容し固定することで、ピストンロッド6と上部クランプリング12とをロックする。
【0074】
次に、チャック21を開いて上部クランプリング12の外溝12aを把持していた一対のフック34を離隔させる。そして、ピストンロッド6を少し下降させることで、フック34の下面よりもロッドヘッド71の上面を下げる。その後、再びチャック21を閉じてフック34でガイドロッド91を把持する。そして、中心機構2全体とピストンロッド6とを下降させて、ガイドロッド91の下端とロッドヘッド71の上面との間に隙間ができたことを確認して、タイヤ装入装置20をタイヤ加硫機1外に運び出す。そして、チャック21を下降させて、ガイドロッド91を上方に外す。その後、チャック21を開いて吊り上げ治具30をチャック21から外す。これにより、タイヤ装入装置20はグリーンタイヤGをタイヤ加硫機1に搬入可能となる。
【0075】
次に、ブラダ組立体10の取り外し方法について説明する。タイヤ装入装置20のチャック21に図5に示す吊り上げ治具30を取り付ける。このとき、チャック21は開いておく。また、中心機構2全体とピストンロッド6とを上昇させることで、上部クランプリング12と下部クランプリング14とを上昇させておく。吊り上げ治具30が取り付けられたタイヤ装入装置20を上昇させ、中心機構2の真上まで搬送する。そして、吊り上げ治具30のフック34で上部クランプリング12を把持することが可能な高さ位置まで、チャック21を下降させる。
【0076】
次に、チャック21を閉じて一対のフック34を上部クランプリング12の中心に向かって移動させることで、一対のフック34で上部クランプリング12の外溝12aを把持する。その後、図7に示すように、ロッドヘッド71内の密閉空間に流体を供給することで、上部ロック機構70により上部クランプリング12とピストンロッド6とのロックを解除する。具体的には、ピストン72を上昇させることで、鋼球固定溝12cと鋼球保持穴71aとが形成する空間に収容され固定状態とされていた鋼球75を鋼球保持穴71aと鋼球逃がし溝72aとが形成する空間に収容することで、ピストンロッド6と上部クランプリング12とのロックを解除する。
【0077】
その後、図6に示すように、ピストンロッド6を下限まで下降させることで、下部ロック機構50によりハブ7と下部クランプリング14とのロックを解除する。具体的には、段付き部6aで上部ガイド53をロックピン51よりも下の位置まで押し下げて、圧縮ばね54の付勢力によりロックピン51の端部51bを下部クランプリング14の溝14aから外すことで、ハブ7と下部クランプリング14とのロックを解除する。このとき、ハブ7と下部クランプリング14とのロックを解除するのに、ピストンロッド6の動作を利用しているため、特別なアクチュエータは不要である。
【0078】
その後、中心機構2全体を下降させて、下部クランプリング14の下面と中心機構2との間に隙間があることを確認して、タイヤ装入装置20をタイヤ加硫機1外に運び出す。その後、チャック21を下降させて、ブラダ組立体10を所定の台に置いた後、チャック21を開いてフック34を上部クランプリング12の外溝12aから外す。
【0079】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る交換装置101および交換方法によると、下部クランプリング14にハブ7が嵌った状態において、ピストンロッド6を上昇させると、上部ガイド53がロックピン51を下部クランプリング14側に押し出すことで、ロックピン51の端部51bが溝14aに嵌り、ハブ7と下部クランプリング14とがロックされる一方、ピストンロッド6を下降させると、段付き部6aにより上部ガイド53がロックピン51よりも下方に押し下げられ、ピストンロッド6側に付勢されたロックピン51の端部51bが溝14aから抜けることで、ハブ7と下部クランプリング14とのロックが解除される。したがって、ハブ7と下部クランプリング14とをロックし、そのロックを解除するための特別なアクチュエータを中心機構2に設ける必要がない。これにより、構造を複雑にすることなくブラダ組立体10をロックし、そのロックを解除することができる。また、ブラダ組立体10の交換作業が安全になるとともに作業時間が短縮されるので、タイヤ加硫機1の稼働率を向上させることができる。
【0080】
また、上部クランプリング12を把持した吊り上げ治具30をタイヤ装入装置20で移動させることで、中心機構2に対してブラダ組立体10を搬入乃至は搬出する。これにより、中心機構2に対してブラダ組立体10を搬入乃至は搬出するための専用の装置を別途設ける必要がないので、コストを抑えることができる。
【0081】
また、タイヤ装入装置20における図示しない開閉機構により閉じられるチャック21で一対のフック34を押圧して一対のフック34を上部クランプリング12の中心に向かって移動させることで、上部クランプリング12の外溝12aが一対のフック34で把持される一方、複数のチャック21を開いて引っ張りばね35の付勢力で一対のフック34を上部クランプリング12の中心から離れる方向に移動させることで、上部クランプリング12の外溝12aから一対のフック34が外れる。このように、開閉機構により閉じられる複数のチャック21と、各フック34を上部クランプリング12の中心から離れる方向に付勢する引っ張りばね35とにより、一対のフック34が開閉される。よって、一対のフック34を開閉させるための専用の装置を別途設ける必要がないので、コストを抑えることができる。
【0082】
また、上部クランプリング12の中心に設けられた中心貫通穴12bにガイドロッド91を挿入し、下部クランプリング14の上方に取り付けられた保持部材93の中心をガイドロッド91で貫通させることで、ブラダ組立体10の搬入時に、下部クランプリング14および下部ビードリング15を上部クランプリング12および上部モールドリング13に対して位置決めすることができる。また、ブラダ組立体10をタイヤ装入装置20で移動させる際に、下部クランプリング14および下部ビードリング15が揺動するのを防止することができる。
【0083】
また、中心貫通穴12bにロッドヘッド71が挿入された状態において、ロッドヘッド71内のピストン72下方に形成された密閉空間から流体を排出して圧縮ばね73の付勢力によりピストン72を下降させることで、鋼球固定溝12cと鋼球保持穴71aとが形成する空間に鋼球75が収容されて固定状態となって、ピストンロッド6と上部クランプリング12とがロックされる一方、ロッドヘッド71内の密閉空間に流体を供給してピストン72を上昇させることで、鋼球保持穴71aと鋼球逃がし溝72aとが形成する空間に鋼球75が収容されて、ピストンロッド6と上部クランプリング12とのロックが解除される。このように、ロッドヘッド71内に流体を供給し、ロッドヘッド71内から流体を排出するだけで、ピストンロッド6と上部クランプリング12とをロックし、そのロックを解除することができる。よって、ブラダ組立体10の交換作業が安全になるとともに作業時間が短縮されるので、タイヤ加硫機1の稼働率を向上させることができる。
【0084】
[第2実施形態]
(上部ロック機構の構成)
次に、第2実施形態による交換装置201について説明する。なお、第1実施形態による交換装置101と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。第2実施形態の交換装置201が第1実施形態の交換装置101と異なる点は、図1の要部Eを拡大した断面図である図8に示すように、上部ロック機構270の構成が異なっている点である。
【0085】
上部ロック機構270は、ピストンロッド6の上端にボルト81で取り付けられ、上下動可能で上端部(上端面)が露出したピストン272とピストン272を上方に付勢する圧縮ばね(第5の付勢手段)273とを内部に備えたロッドヘッド271と、ロッドヘッド271の上端に固定されて(ねじ込まれて)ピストン272の上端部が貫通する蓋274と、ロッドヘッド271の周壁に穿設された鋼球保持穴(穴)271aと、上部クランプリング12の中心に設けられたロッドヘッド271を挿入可能な中心貫通穴12bの内面に環状に設けられた鋼球固定溝(内溝)12cと、鋼球保持穴271aよりも上方においてピストン272の外面に設けられた鋼球逃がし溝(外溝)272aと、中心機構2の外部であってロッドヘッド271の上方に設けられ、ピストン272を下方に押し下げることが可能なシリンダ(アクチュエータ)276と、鋼球固定溝12cと鋼球保持穴271aとが形成する空間、または、鋼球保持穴271aと鋼球逃がし溝272aとが形成する空間に収容される鋼球(球体)275と、を有している。
【0086】
蓋274は、圧縮ばね273によって上方に付勢されるピストン272のストッパーとして機能している。鋼球保持穴271aは、鋼球275がロッドヘッド271外に脱落しないように、上部クランプリング12側に向かって開口面積が小さくなるように形成されることで、鋼球275を部分的に露出させることができるものとされている。鋼球固定溝12cは、断面が鋼球保持穴271aから露出した鋼球275の一部に対応する円弧状、すなわち鋼球275の曲面に適合する形状にされている。
【0087】
また、ロッドヘッド271には、上部クランプリング12の下面に当接することでロッドヘッド271の高さ方向の位置を位置決めするための段付き部271bが設けられている。
【0088】
シリンダ276は、吊り上げ治具30の支持板31の下面中央部に取り付けられている。つまり、本実施形態においては、図5に示す支持板31の中央部にガイドロッド91が貫通する穴36を設ける代わりに、シリンダ276が設けられている。よって、本実施形態では、芯出し装置90による位置決めは行われない。シリンダ276は、チャック21の開閉に使用される流体により駆動される。なお、シリンダ276は、吊り上げ治具30とは別体のものに取り付けられていてもよい。
【0089】
このような構成において、ピストンロッド6と上部クランプリング12とをロックする際には、シリンダ276のロッドが下方に突き出された状態でピストンロッド6が上昇される。ピストン272がシリンダ276に当接して押し下げられることで、鋼球275は鋼球保持穴271aと鋼球逃がし溝272aとが形成する空間に収容される。この状態で上部クランプリング12の中心貫通穴12bにロッドヘッド271が挿入される。ロッドヘッド271の段付き部271bが上部クランプリング12の下面に接触すると、シリンダ276のロッドが上方に移動される。すると、圧縮ばね273の付勢力でピストン272が上昇し、鋼球保持穴271aと鋼球逃がし溝272aとが形成する空間に収容されていた鋼球275は鋼球逃がし溝272aから外れ、ピストン272の外周面で押されて鋼球固定溝12cに嵌り、鋼球固定溝12cと鋼球保持穴271aとが形成する空間に収容され固定状態とされる。これにより、ピストンロッド6と上部クランプリング12とがロックされることとなる。
【0090】
また、ピストンロッド6と上部クランプリング12とのロックを解除する際には、シリンダ276でピストン272が押し下げられる。すると、ピストン272が下降することで、鋼球固定溝12cと鋼球保持穴271aとが形成する空間に収容され固定状態であった鋼球275は鋼球固定溝12cから外れて、鋼球逃がし溝272aに移動し、鋼球保持穴271aと鋼球逃がし溝272aとが形成する空間に収容される。これにより、ピストンロッド6と上部クランプリング12とのロックが解除されることとなる。そして、シリンダ276でピストン272が押し下げられた状態で、ピストンロッド6が下降されることで、上部クランプリング12からロッドヘッド271が抜き出されることとなる。上部クランプリング12からロッドヘッド271が抜き出され、シリンダ276のロッドからピストン272が離れると、ピストン272は圧縮ばね273の付勢力で上昇し、鋼球275は鋼球保持穴271aに嵌って一部が外部に露出することとなる。
【0091】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る交換装置201およびタイヤ加硫方法によると、中心貫通穴12bにロッドヘッド271が挿入された状態において、圧縮ばね273の付勢力によりピストン272を上昇させることで、鋼球固定溝12cと鋼球保持穴271aとが形成する空間に鋼球275が収容されて、ピストンロッド6と上部クランプリング12とがロックされる一方、シリンダ276でピストン272を押し下げることで、鋼球保持穴271aと鋼球逃がし溝272aとが形成する空間に鋼球275が収容されて、ピストンロッド6と上部クランプリング12とのロックが解除される。このように、圧縮ばね273でピストン272を上昇させ、シリンダ276でピストン272を押し下げるだけで、ピストンロッド6と上部クランプリング12とをロックし、そのロックを解除することができる。よって、ブラダ組立体10の交換作業が安全になるとともに作業時間が短縮されるので、タイヤ加硫機1の稼働率を向上させることができる。また、シリンダ276を中心機構2の外部に設けることで、中心機構2の構造を簡素化することができる。
【0092】
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0093】
例えば、圧縮ばね54,55、引っ張りばね35、圧縮ばね73,273を付勢手段として用いているが、付勢手段はコイルばねに限定されるものではなく、ゴムなどの弾性体であってもよい。また、センターポストとしてピストンロッドを用いているが、他の昇降可能なロッドからなるセンターポストであってもよい。また、タイヤ搬送装置としてグリーンタイヤGをハンドリングするタイヤ装入装置を利用してブラダの搬入および搬出を行うようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、タイヤ装入装置と同様に構成され、グリーンタイヤG及び加硫済みタイヤをハンドリング可能なタイヤ搬送装置あるいは加硫済みタイヤをハンドリング可能なタイヤ搬送装置を利用してブラダの搬入および搬出を行うようにしてもよい。また、タイヤ搬送装置として、グリーンタイヤGをハンドリング可能なタイヤ装入装置および加硫済みタイヤをハンドリング可能なタイヤ搬出装置を設けて、タイヤ装入装置とタイヤ搬出装置のそれぞれにブラダの搬入と搬出を分担させて行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 タイヤ加硫機
2 中心機構
3 下部モールド
6 ピストンロッド(センターポスト)
6a 段付き部
7 ハブ
7a 貫通孔
10 ブラダ組立体
11 ブラダ
12 上部クランプリング
12a 外溝
12b 中心貫通穴
12c 鋼球固定溝(内溝)
13 上部モールドリング
14 下部クランプリング
14a 溝
15 下部ビードリング
20 タイヤ装入装置(タイヤ搬送装置)
21 チャック
22 パドル
23 固定部
30 吊り上げ治具(治具)
31 支持板
32 レール
33 LMガイド
34 フック
35 引っ張りばね(第3の付勢手段)
40 保管装置
41 突起部
42 中心貫通穴
43 ロッド
50 下部ロック機構(ロック機構)
51 ロックピン(ピン)
51a 大径部
51b 端部
53 上部ガイド(押圧部材)
54 圧縮ばね(第1の付勢手段)
55 圧縮ばね(第2の付勢手段)
60 ヘッド
70,270 上部ロック機構
71,271 ロッドヘッド
71a,271a 鋼球保持穴(穴)
72,272 ピストン
72a,272a 鋼球逃がし溝(外溝)
73 圧縮ばね(第4の付勢手段)
75,275 鋼球(球体)
90 芯出し装置
91 ガイドロッド
93 保持部材
101,201 交換装置
273 圧縮ばね(第5の付勢手段)
276 シリンダ(アクチュエータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラダと、当該ブラダの上端を挟持する上部クランプリングおよび上部モールドリングと、前記ブラダの下端を挟持する下部クランプリングおよび下部ビードリングとを有するブラダ組立体を、タイヤ加硫機の中心機構に対して交換する交換装置であって、
前記中心機構は、
前記下部クランプリングの内周面に嵌るハブと、
前記ハブの中心を貫通して昇降されるセンターポストと、
前記センターポストを昇降させる昇降機構と、
を有し、
前記ハブと前記下部クランプリングとをロックし、そのロックを解除するロック機構を備え、
前記ロック機構は、
前記センターポストの径方向に前記ハブに穿孔された貫通孔と、
前記貫通孔内に設けられたピンと、
前記貫通孔内に設けられて前記ピンを前記センターポスト側に付勢する第1の付勢手段と、
前記センターポストと前記ハブとの間に設けられた押圧部材と、
前記センターポストと前記ハブとの間において前記押圧部材の下方に設けられて、前記押圧部材を上方に付勢する第2の付勢手段と、
前記センターポストの上部に設けられて上方から前記押圧部材に当接可能な段付き部と、
前記下部クランプリングの内周面に設けられた溝と、
を有し、
前記下部クランプリングに前記ハブが嵌った状態において、前記センターポストが上昇された際には、前記ピンに当接した前記押圧部材により当該ピンが前記下部クランプリング側に押し出されることで、当該ピンの端部が前記溝に嵌り、前記ハブと前記下部クランプリングとがロックされる一方、前記センターポストが下降された際には、前記段付き部により前記押圧部材が前記ピンよりも下方に押し下げられることで、前記センターポスト側に付勢された前記ピンの端部が前記溝から外れ、前記ハブと前記下部クランプリングとのロックが解除されることを特徴とするタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置。
【請求項2】
前記中心機構に対してタイヤを搬送するタイヤ搬送装置と、
前記タイヤ搬送装置に取り付けられて前記ブラダ組立体の前記上部クランプリングを把持することが可能な治具と、
を更に有し、
前記上部クランプリングを把持した前記治具が前記タイヤ搬送装置で移動されることで、前記中心機構に対して前記ブラダ組立体が搬入乃至は搬出されることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置。
【請求項3】
前記上部クランプリングの中心部の外周面に外溝が設けられており、
前記タイヤ搬送装置は、
前記タイヤのビード部を把持可能な複数のチャックと、
前記複数のチャックをタイヤ径方向に開閉させる開閉機構と、
を有し、
前記治具は、
前記複数のチャックの前記タイヤ径方向における内側に配置され、前記開閉機構によって閉じられる前記チャックにより押圧されて前記上部クランプリングの中心に向かって移動される一対のフックと、
各フックを前記上部クランプリングの中心から離れる方向に付勢する第3の付勢手段と、
を有し、
前記上部クランプリングの中心に向かって移動された前記一対のフックにより前記外溝が把持されることを特徴とする請求項2に記載のタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置。
【請求項4】
前記中心機構に対して前記ブラダ組立体を搬入する際に使用される芯出し装置を更に有し、
前記芯出し装置は、
前記上部クランプリングの中心に設けられた前記センターポストを挿入可能な中心貫通穴に挿入されるガイドロッドと、
前記下部クランプリングの上方に取り付けられ、前記ガイドロッドが中心を貫通する保持部材と、
を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置。
【請求項5】
前記センターポストと前記上部クランプリングとをロックし、そのロックを解除する上部ロック機構を更に備え、
前記上部ロック機構は、
前記センターポストの上端に取り付けられ、上下動可能なピストンと当該ピストンを下方に付勢する第4の付勢手段とを内部に備えたロッドヘッドと、
前記ロッドヘッド内の密閉空間に流体を供給し、前記密閉空間から前記流体を排出する流体給排装置と、
前記ロッドヘッドの周壁に穿設された穴と、
前記上部クランプリングの中心に設けられた前記ロッドヘッドを挿入可能な中心貫通穴の内面に設けられた内溝と、
前記第4の付勢手段により前記ピストンが押し下げられている際、前記穴よりも下方に位置するように前記ピストンの外面に設けられた外溝と、
前記内溝と前記穴とが形成する空間、または、前記穴と前記外溝とが形成する空間に収容される球体と、
を有し、
前記中心貫通穴に前記ロッドヘッドが挿入された状態において、前記密閉空間から流体が排出された際には、前記第4の付勢手段で付勢された前記ピストンが下降されて、前記内溝と前記穴とが形成する空間に前記球体が収容されることで、前記センターポストと前記上部クランプリングとがロックされる一方、前記密閉空間に流体が供給された際には、前記ピストンが上昇されて、前記穴と前記外溝とが形成する空間に前記球体が収容されることで、前記センターポストと前記上部クランプリングとのロックが解除されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置。
【請求項6】
前記センターポストと前記上部クランプリングとをロックし、そのロックを解除する上部ロック機構を更に備え、
前記上部ロック機構は、
前記センターポストの上端に取り付けられ、上下動可能で上端面が露出したピストンと当該ピストンを上方に付勢する第5の付勢手段とを内部に備えたロッドヘッドと、
前記ロッドヘッドの周壁に穿設された穴と、
前記上部クランプリングの中心に設けられた前記ロッドヘッドを挿入可能な中心貫通穴の内面に設けられた内溝と、
前記第5の付勢手段により前記ピストンが押し上げられている際、前記穴よりも上方に位置するように前記ピストンの外面に設けられた外溝と、
前記中心機構の外部であって前記ロッドヘッドの上方に設けられ、前記ピストンを下方に押し下げることが可能なシリンダと、
前記内溝と前記穴とが形成する空間、または、前記穴と前記外溝とが形成する空間に収容される球体と、
を有し、
前記中心貫通穴に前記ロッドヘッドが挿入された状態において、前記第5の付勢手段により前記ピストンが押し上げられた際には、前記内溝と前記穴とが形成する空間に前記球体が収容されることで、前記センターポストと前記上部クランプリングとがロックされる一方、前記シリンダにより前記ピストンが押し下げられた際には、前記穴と前記外溝とが形成する空間に前記球体が収容されることで、前記センターポストと前記上部クランプリングとのロックが解除されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換装置。
【請求項7】
ブラダと、当該ブラダの上端を挟持する上部クランプリングおよび上部モールドリングと、前記ブラダの下端を挟持する下部クランプリングおよび下部ビードリングとを有するブラダ組立体を、タイヤ加硫機の中心機構に対して交換する交換方法であって、
前記下部クランプリングの内周面に前記中心機構のハブが嵌った状態において、前記ハブの中心を貫通するセンターポストを上昇させることで、前記センターポストと前記ハブとの間に設けられて上方に付勢された押圧部材を、前記センターポストの径方向に前記ハブに穿孔された貫通孔内に設けられ、前記センターポスト側に付勢されたピンに当接させて、当該ピンを前記下部クランプリング側に押し出し、前記下部クランプリングの内周面に設けられた溝に当該ピンの端部を嵌めることで、前記ハブと前記下部クランプリングとをロックするロックステップと、
前記下部クランプリングの内周面に前記ハブが嵌った状態において、前記センターポストを下降させることで、前記センターポストの上部に設けられた段付き部で前記押圧部材を前記ピンよりも下方に押し下げて、前記センターポスト側に付勢された前記ピンの端部を前記溝から外すことで、前記ハブと前記下部クランプリングとのロックを解除するアンロックステップと、
を有することを特徴とするタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換方法。
【請求項8】
前記中心機構に対してタイヤを搬送するタイヤ搬送装置が、当該タイヤ搬送装置に取り付けられ、前記ブラダ組立体の前記上部クランプリングを把持することが可能な治具に当該上部クランプリングを把持させた状態で、前記ブラダ組立体を移動させることで、前記中心機構に対して前記ブラダ組立体を搬入乃至は搬出する搬入・搬出ステップを更に有することを特徴とする請求項7に記載のタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換方法。
【請求項9】
前記搬送装置が備える、タイヤ径方向に開閉機構で開閉されて前記タイヤのビード部を把持可能な複数のチャックの当該タイヤ径方向における内側に、前記治具が備える、前記上部クランプリングの中心から離れる方向に付勢手段で付勢された一対のフックを配置しており、
前記開閉機構によって閉じられる前記チャックで前記一対のフックを押圧して当該一対のフックを前記上部クランプリングの中心に向かって移動させることで、前記上部クランプリングの中心部の外周面に設けられた外溝を前記一対のフックで把持する把持ステップを更に有することを特徴とする請求項8に記載のタイヤ加硫機におけるブラダ組立体の交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−107282(P2013−107282A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254076(P2011−254076)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】