説明

タイヤ成型装置

【課題】タイヤ成型の高速化、スペース効率向上、旋回機構の上下方向寸法の低減を可能とするタイヤ成型装置。
【解決手段】複数の成型ドラム3が旋回台4の旋回中心Cに対して同距離、同配向で且つ旋回中心周りに互いに同角度ずれて配置されるように、各ドラム装置2が載置固定され、複数のドラム装置を下支えする旋回台と、旋回台を下支えする旋回軸受17と、旋回台を旋回させる回転装置30とを有し、旋回台は、旋回台に取り付けられた旋回用ギア20に、回転装置の出力ギア31が噛合って旋回され、各成型ドラムの旋回停止成型作業位置5A、5Bにおいて、1つの成型ドラムの延長線上には、カーカスバンド成型用ドラム6が設置され、その間の軌道上7にカーカスバンド搬送装置8が配置され、他の1つの成型ドラムの延長線上には、帯状部材成型用ドラム9が設置され、その間の軌道10上に帯状部材搬送装置11が配置されたタイヤ成型装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ成型装置に関し、特に成型ドラムを旋回させてカーカスバンドと、タイヤ構成部材が組み合わされた帯状部材との組付けを行うタイヤ成型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のドラム装置の成型ドラムを旋回させて、順次工程を加え、成型ドラム上にグリーンタイヤを形成するものは、例えば下記特許文献1〜3のようなものが発表されている。しかし、いずれも成型ドラム上に順次タイヤ構成材料(ゴムのリボン状体等)を貼付するものであり、予め別途成型されたカーカスバンドと、タイヤ構成部材が組み合わされた帯状部材、例えばBTバンド(ベルト・トレッド・バンド:特許請求の範囲および以下において、「BTバンド」という)とを成型ドラム上で組付けるために、複数のドラム装置の成型ドラムを旋回させるものではなかった。
したがって、それらの文献においては、カーカスバンド成型装置からカーカスバンドを、帯状部材成型装置から帯状部材を成型ドラムに移載するための、それぞれの搬送装置との干渉については示すところは無い。また、旋回機構についても特定して示すものも無かった。
【0003】
本発明のように予め成型されたバンド、帯状部材等を扱う旋回するドラムを備えたタイヤ成型機については、例えば、下記特許文献4のものには、2基の対抗配置されたタイヤ成型機の間に位置し、その両者に向かうように旋回して、近接できるドラム(バンド拡張機)が示され、中間位置で受け取ったバンドを拡張した上で、タイヤ成型機に受け渡すものが示されるが、複数の成型ドラムが旋回しつつグリーンタイヤを成型するものではない。
また、特許文献4においては旋回機構に関して具体的には示されていない。
【0004】
さらに、下記特許文献5には、旋回台上に180度ずらせた1対のドラム装置の成型ドラムを設けて旋回させ、複数工程を行うものが示されるが、その旋回停止成型作業位置の一方では、インナーライナー、プライ等を貼り合わせ、他方ではステッチングを行い、ステッチング後は次工程へ引き継がれるもので、本発明の企図するカーカスバンドと、タイヤ構成部材が組み合わされた帯状部材との組付けを行うものではない。
しかも各旋回停止成型作業位置での搬送装置との干渉の回避については、特段示すところは無く、干渉回避のために大きく突き出したドラムによる旋回半径の大きさ、旋回駆動動力の大きさを解決課題としてはいるが、その解決手段として示されるのは、旋回時にドラムの突出を減じるために、ドラム装置全体を旋回軸に接近させるように移動させることである。
しかし、特許文献5のようにドラム装置全体を旋回台上で移動させれば、重量が大きいドラム装置の移動機構、固定機構、動力供給機構が複雑化し、装置重量を増大させるほか、装置の精度にも影響が出る恐れがある。
【0005】
また、特許文献5に示される旋回機構は従来多用される方式で、支持フレームの上部に軸受が取り付けられ、旋回台(テーブル)の旋回軸がその軸受に旋回可能に支持され、旋回台の下方、支持フレームの内側にインデックスドライブが設けられ、インデックスドライブの垂直出力軸が旋回軸に連結されて、旋回台が旋回駆動されるものである。
そのような旋回機構では、インデックスドライブを旋回台の直下に納めるため、上下寸法が嵩み、ピットを設けてベース位置を下げる必要がある場合があった。
【0006】
また、旋回台の下部の支持フレーム内に機器が入るので、支持フレーム左右幅が増大する。しかもタイヤ成型の高速化のため、旋回中も成型工程を加える場合は、電力、エアー等の動力を旋回中も供給する必要があるが、そのためにはインデックスドライブと、そのモータ、トルクリミッタ等の機器を収めた支持フレームの周囲にケーブルベア(登録商標)を配置しなければならず、旋回台の下方の旋回機構の左右幅がさらに増大する。
【0007】
したがって、本発明のように旋回される成型ドラムによって、予め成型されたカーカスバンドと、タイヤ構成部材が組み合わされた帯状部材との組付けを行うタイヤ成型装置を企図する場合、上記の従来の旋回機構では、カーカスバンドと帯状部材の搬送装置を成型ドラムのドラムセンター位置まで支障なく進入させるために、旋回機構を避けて大きくオーバーハングさせた成型ドラムを必要とする。
そのことは、旋回半径増大によるスペース効率低下、慣性重量の増大による旋回速度の向上への障害、装置の耐久性低下等を招き、タイヤ成型の高速化、効率化に反する恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−351164号公報(図1)
【特許文献2】特開2008−126608号公報(図1)
【特許文献3】特表2008−524017号公報(図1)
【特許文献4】特開平10−235744号公報(図1)
【特許文献5】特開平5−154937号公報(図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような従来装置の状況に鑑み、旋回台の下方の旋回機構の左右幅を低減でき、搬送装置との干渉を避けつつ、旋回台上のドラム装置の成型ドラムのオーバーハングを低減でき、その結果、タイヤ成型の高速化、スペース効率向上が図られ、さらには、旋回機構の上下方向寸法を低減して、ピット等を要さず成型ドラムの芯高さを低下させることも可能とするタイヤ成型装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、カーカスバンドと、タイヤ構成部材が組み合わされた帯状部材との組付けを行うタイヤ成型装置において、複数の拡縮可能な成型ドラムが旋回台の旋回中心に対して同距離、同配向で且つ旋回中心周りに互いに同角度ずれて配置されるように、各成型ドラムのドラム装置が載置固定され、複数の同ドラム装置を旋回中心回りに旋回可能に下支えする前記旋回台と、同旋回台を下支えする旋回軸受と、同旋回台を旋回させる回転装置とを有し、同旋回台は、旋回中心を通る軸芯を有し同旋回台に取り付けられた旋回用ギアに、前記回転装置の出力ギアが噛合って旋回され、各成型ドラムの旋回停止成型作業位置において、少なくとも1つの前記成型ドラムの延長線上には、カーカスバンド成型用ドラムが設置され、その間に敷設された軌道上にカーカスバンド搬送装置が配置されるとともに、少なくとも他の1つの前記成型ドラムの延長線上には、帯状部材成型用ドラムが設置され、その間に敷設された軌道上に帯状部材搬送装置が配置されたことを特徴とするタイヤ成型装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタイヤ成型装置において、前記旋回軸受の周囲には、前記タイヤ成型装置のベースフレーム上に立設され、前記旋回軸受を介して前記旋回台を支える中空柱状体が設けられ、同中空柱状体は上部に外周方向に張り出す張出し部が形成され、下部は前記上部に対して小径に形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のタイヤ成型装置において、前記旋回軸受は、スラスト負荷とラジアル負荷を支承する第1のベアリングと、ラジアル負荷を支承する第2のベアリングとからなり、前記第1のベアリングは前記中空柱状体の上部において、前記旋回中心に軸芯を置き前記旋回台の下部に延設された旋回軸の、下部に対し大径の上部旋回軸との間に配設され、前記第2のベアリングは前記中空柱状体の下部において、同中空柱状体の中心部を遊貫する前記旋回軸の、上部に対して小径の下部旋回軸との間に配設されたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載のタイヤ成型装置において、前記旋回用ギアは、前記中空柱状体より外周側において前記旋回台の下面に取り付けられ、前記回転装置は、前記中空柱状体の外周側の前記ベースフレーム上に設置されたことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のタイヤ成型装置において、前記ベースフレーム上に設置され、前記旋回停止成型作業位置において上方に突出させた位置決めピンが、前記旋回台に設けられたV形凹部に嵌合される位置決めピン装置を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項2ないし請求項5のいずれかに記載のタイヤ成型装置において、前記ドラム装置は2基であり、各ドラム装置の成型ドラムは前記旋回中心周りに180度ずれて配置され、前記旋回停止成型作業位置において、1つの前記成型ドラムの延長線上に、カーカスバンド成型用ドラムが設置され、他の1つの前記成型ドラムの延長線上に、帯状部材成型用ドラムが設置され、前記中空柱状体の下部を囲むように、180度反復旋回する前記旋回台上の前記複数のドラム装置に動力を供給するケーブルベアが設けられ、前記回転装置は、前記ケーブルベアの設置範囲外の周方向位置に設けられたことを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のタイヤ成型装置において、前記タイヤ構成部材が組み合わされた帯状部材は、BTバンドであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明のタイヤ成型装置によれば、旋回台に取り付けられた旋回用ギアに、回転装置の出力ギアが噛合って旋回台が旋回されるので、旋回台の下方は旋回軸受とその支持部材と回転装置の箇所以外は、適宜の利用スペースとすることができる。
したがって、従来のように旋回台の下方、支持フレームの内側にインデックスドライブが設けられ、インデックスドライブの垂直出力軸が旋回軸に連結されて旋回台が旋回駆動される構造による旋回台下方の旋回機構の左右幅の増大が防止され、旋回台の旋回中心により近くまで搬送装置の軌道を敷設できる。
【0018】
すなわち、その分、成型ドラムのオーバーハングを減じるようにドラム装置を後退させて旋回台に取り付け、旋回台も軌道方向で後退するように狭めて、カーカスバンド搬送装置や、帯状部材搬送装置が、旋回台や旋回機構と干渉することなく旋回台の旋回中心により近くまで移動可能とし、後退した成型ドラムのドラムセンター位置まで進入させることができる。
そして、旋回台上のドラム装置の成型ドラムのオーバーハングが低減できたので、スペース効率向上が図られるとともに、慣性重量が低減し、旋回速度を向上でき、タイヤ成型の高速化が可能となる。
また、さらには、インデックスドライブを旋回台の直下に納めることによる上下寸法の増大が無くなり、旋回機構の上下寸法が低減して、ピット等を要さず成型ドラムの芯高さを低下させることも可能となる。
【0019】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、旋回軸受けの支持部材である中空柱状体はベースフレーム上に立設され、上部が外周方向に張り出す張出し部となっているため、旋回台を幅広く支えられ、旋回台の湾曲が防止されるとともに、下部が上部より小径とされているため、旋回機構の下部の左右幅が効果的に減じられ、旋回台下方ベースフレーム上に、より多くのスペースが得られ、成型ドラムのオーバーハングの低減が、より容易となる。
【0020】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明の効果に加え、旋回軸受のうち、スラスト負荷とラジアル負荷を支承する第1のベアリングを、旋回台近傍の中空柱状体と上部旋回軸の間で大径のものとすることができ、旋回および荷重負荷を安定して支承できるものとなる。
また、第2ベアリングは、旋回台より下方に離れた位置において、中空柱状体と下部旋回軸の間でラジアル負荷を支承するので、旋回台の揺動を防止し旋回を安定させ、成型ドラムの位置精度を向上させることができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、請求項2または請求項3の発明の効果に加え、旋回用ギアは中空柱状体より外周側に設けられるので、旋回軸受とは並列に別途の設置となり、旋回機構の高さの低減に資することができる。
また、旋回用ギアは大径のものとなるが、ベースフレーム上の回転装置の出力ギアと噛合って旋回駆動されるものであるから、チェーンタイプのいわゆるピンギアを旋回台の下面に取り付けて構成し、回転装置はサーボモータと減速機の組み合わせとして、出力ギアはスプロケットタイプのギアで構成することもでき、旋回駆動機構の低コスト簡略小型化が可能となり、旋回機構の高さ低減、スペース削減がなされる。
【0022】
請求項5の発明によれば、請求項2ないし請求項4のいずれかの発明の効果に加え、サーボモータによる旋回制御に加え、ベースフレーム上の位置決めピン装置の位置決めピンが、旋回停止成型作業位置において上方に突出して、旋回台のV形凹部に嵌合するので、繰り返しの旋回においても成型ドラムの旋回停止成型作業位置への正確な停止が常に確保される。
【0023】
請求項6の発明によれば、請求項2ないし請求項5のいずれかの発明の効果が、ドラム装置を2基備えるタイヤ成型装置において効果的に奏され、180度反復旋回する旋回台上の複数のドラム装置に常時動力を供給することができ、旋回中においても成型工程を加えることができる。
また、ケーブルベアは中空柱状体の下部を囲むように設けられ、回転装置は、ケーブルベアと周方向に並んだ位置に設けられるので、旋回機構の左右幅の低減に資することができる。
【0024】
請求項7の発明によれば、タイヤ成型において、請求項1ないし請求項6のいずれかの発明の効果が特に効果的に奏される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ成型装置の全体平面図であり、カーカスバンド搬送機とBTバンド搬送機を、旋回停止成型作業位置における成型ドラムのドラムセンター位置に進入した状態で示し、ステッチャー装置を、ステッチャー待機場に格納された状態で示す。
【図2】図1中、II−II矢視による、本実施形態のタイヤ成型装置の全体立面図である。
【図3】図1と同じ本実施形態のタイヤ成型装置の全体平面図であり、カーカスバンド搬送機とBTバンド搬送機を、旋回停止成型作業位置における成型ドラムのドラムセンター位置から退出した状態で示し、ステッチャー装置を、成型ドラムのドラムセンター位置に進出した状態で示す。
【図4】図3中、IV−IV矢視による、本実施形態のタイヤ成型装置の全体立面図である。
【図5】図2中、概ねV−V矢視、および図4中、概ねV−V矢視による、タイヤ成型装置の旋回台の下面以下を示す平面図であり、旋回機構の説明図である。
【図6】図5中、概ねVI−VI矢視による、旋回台上に載置固定されるドラム装置等を図示省略したタイヤ成型装置の立面断面図であり、旋回機構の説明図である。ただし、一部機器はその機能が分かりやすいように位置と配向を変更して示されている。
【図7】図5中、概ねVII−VII矢視による、旋回台上に載置固定されるドラム装置等を図示省略したタイヤ成型装置の立面断面図であり、旋回機構の説明図である。ただし、一部機器はその機能が分かりやすいように位置と配向を変更して示されている。
【図8】図5中、VIII−VIII矢視による、ステッチャー装置の拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ成型装置1の、略式図示された平面図であり、複数のドラム装置2の成型ドラム3を旋回させて、カーカスバンドと、タイヤ構成部材が組み合わされた帯状部材としてのBTバンドとの組付けを行うタイヤ成型装置1である。
本実施形態においては、本発明における「タイヤ構成部材が組み合わされた帯状部材」として、BTバンドを例として以下記載するが、それに限らず、多様な「タイヤ構成部材が組み合わされた帯状部材」が本発明に適用できる。
本タイヤ成型装置1は、旋回台4に、拡縮可能な成型ドラム3が旋回台4の旋回中心Cに対して同距離、同配向で且つ旋回中心C周りに互いに同角度ずれて配置されるように2基のドラム装置2を載置固定している。すなわち、2基のドラム装置2が旋回中心Cに対して同距離、同配向で旋回中心C周りに180度ずらせて配置され、旋回台4は旋回中心Cを通る鉛直軸回りに、180度反復旋回される。
【0027】
したがって、成型ドラム3は180度反復旋回の両端位置を、2箇所の旋回停止成型作業位置5A、5Bとする。180度反復旋回によって、両成型ドラム3は2箇所の旋回停止成型作業位置5A、5Bに、交互に位置することができる。
図1、図2の図示上、左側の旋回停止成型作業位置(以下「カーカス側作業位置」という)5Aの成型ドラム3の延長線上には、カーカスバンド成型用ドラム6が配置され、その間には軌道7上を走行するカーカスバンド搬送装置8が配置される。
図1、図2の図示上、右側の旋回停止成型作業位置(以下「BT側作業位置」という)5Bの成型ドラム3の延長線上には、BTバンド成型用ドラム(本発明における「帯状部材成型用ドラム」)9が配置され、その間には軌道10上を走行するBTバンド搬送装置(本発明における「帯状部材搬送装置」)11が配置される。
【0028】
カーカスバンド成型用ドラム6上では、図示しない供給装置から供給されたインナ、カーカスプライ、サイドウォール等からなるカーカスバンドが成型される。
カーカスバンドは、カーカスバンド搬送装置8によって持ち出され、図3、図4に示されるようにカーカス側作業位置5Aに停止した成型ドラム3上に、ドラムセンター位置13において受け渡される。しかる後、カーカスバンド搬送装置8は、カーカスバンド成型用ドラム6に向けて退出する。
【0029】
なお、ここでドラムセンター位置13とは、成型ドラム3上で成型されるタイヤの幅方向中心(ドラム軸方向中心)が位置すべき成型ドラム3上の位置である。
カーカスバンド搬送装置8、BTバンド搬送装置11はそれぞれ、搬送するカーカスバンドの幅方向把持中心(軌道方向把持中心)8a、BTバンド(本発明における「タイヤ構成部材が組み合わされた帯状部材」)の幅方向把持中心(軌道方向把持中心)11aがドラムセンター位置13に一致する位置まで進入(特許請求の範囲および本明細書において、以下、単に「ドラムセンター位置まで進入」という)して、カーカスバンド、BTバンドを成型ドラム3に受け渡す。
【0030】
カーカス側作業位置5Aにおいて、成型ドラム3上のカーカスバンドには図示しない供給装着装置によってビードリングが装着された後、成型ドラム3は旋回台4の180度旋回によって、BT側作業位置5Bに位置される。
カーカス側作業位置5AからBT側作業位置5Bへの旋回中、およびカーカス側作業位置5Aにおいて、カーカスバンドは公知の手段でビード幅が縮小され且つ加圧されて、成型ドラム3上でトロイダル形状のいわゆるグリーンケースに成型される。
【0031】
一方、BTバンド成型用ドラム9上では、図示しない供給装置から供給されたベルト、スパイラルレイヤー、トレッド等からなるBTバンドが成型される。
BTバンドは、BTバンド搬送装置11によって持ち出され、図3、図4に示されるようにドラムセンター位置13まで進入したBTバンド搬送装置11により、BT側作業位置5Bに停止した成型ドラム3上のグリーンケース上に、ドラムセンター位置13において外嵌される。
【0032】
BT側作業位置5Bにおいては、成型ドラム3とBTバンド搬送装置11との協働で、成型ドラム3上のグリーンケースが膨張され、BTバンドが接着されて、グリーンタイヤが形成される。
以上の個々の成型工程自体は広く公知のものであり、詳説は省略する。
【0033】
しかる後、BTバンド搬送装置11はBTバンドから離れ、BTバンド成型用ドラム9に向けて退出する。
それと同時に、あるいは引き続いて、BTバンド搬送装置11の軌道10上の、BTバンド搬送装置11より旋回台4の旋回中心C側において、BTバンド搬送装置11と抵触しない位置にあるステッチャー待機場51で待機していたステッチャー装置50が、軌道10上をステッチャー装置50のステッチング操作の幅方向ステッチング中心(軌道方向ステッチング中心)50aがドラムセンター位置13と一致するまで進出(特許請求の範囲および本明細書において、以下、単に「ドラムセンター位置まで進出」という)し、成型ドラム3上のグリーンタイヤに対してステッチングを行い、グリーンタイヤを整形する。
ステッチング工程自体は広く公知であるので詳説は省略する。
【0034】
しかる後、BT側作業位置5Bの成型ドラム3上に在ったグリーンタイヤは、旋回台3の逆方向180度旋回(このように正方向、逆方向旋回を繰り返すことを、特許請求の範囲および本明細書で「反復旋回」という)によって、カーカス側作業位置5Aに戻り、図示しない取出し装置によって、次工程に送られる。
なお、成型ドラム3がBT側作業位置5Bに停止中、あるいは、BT側作業位置5Bからカーカス側作業位置5Aへ180度逆に旋回して戻る間に、成型ドラム3に内蔵された図示しない折り返しフィンガによって、カーカスプライはビードリングに巻きつけられるように折り曲げられている。
上記した一方の成型ドラム3とは反対向きの他方の成型ドラム3においても、半サイクルずらせた同じ成型工程が行われ、2ラインのタイヤ成型工程が並行して行われて、タイヤ成型の高速化、効率化が可能となっている。
【0035】
なお、カーカスバンド成型用ドラム6、成型ドラム3、BTバンド成型用ドラム9は拡縮機構を有し、対象物を内周側から支持、開放する機能を有する。さらに、成型ドラム3は、膨張機能、ビードリングにカーカスプライが巻きつけられるように折り曲げる機能を有し、ドラム装置2にその駆動機構が備えられている。
カーカスバンド搬送装置8、BTバンド搬送装置11も拡縮機構を有し、対象物を外周側から把持、開放する機能を有し、BTバンド搬送装置11はさらに、圧縮機能を有する。
それらの構造、機能自体は広く公知のものであるので詳説を省略する。
また、図1から図4において、カーカスバンド成型用ドラム6、成型ドラム3、BTバンド成型用ドラム9は、縮状態を模式的に示すに止め、カーカスバンド搬送装置8、BTバンド搬送装置11は、概ねの位置を模式的に示すに止めている。
【0036】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ成型装置1は、旋回台4上に2基のドラム装置2が旋回中心Cに対して同距離、同配向で旋回中心C周りに180度ずらせて配置され、載置固定され、旋回台4は、旋回台4とベースフレーム15との間に設けられた、中空柱状体16、旋回軸受17、旋回軸18、旋回用ギア20、回転装置30、ケーブル類保護案内装置としてのケーブルベア(登録商標)40等からなる旋回機構100によって旋回駆動される。
【0037】
図2に示されるように、旋回台4はベースフレーム15上に立設された中空柱状体16に旋回軸受17を介して、旋回中心C回りに旋回自在に支えられる。
中空柱状体16は、上部に外周方向に張り出す張出し部16aが形成され、下部16bは上部の張出し部16aより小径に形成されている。
旋回台4の下部には、旋回中心Cを通る鉛直線を軸芯とする旋回軸18が下方に向けて延設されており、旋回台4に取り付く上部旋回軸18aは大径に、下部旋回軸18bは上部旋回軸18aより小径に形成され、ともに中空柱状体の中心部16cの空間を遊貫している。
【0038】
旋回軸受17は、スラスト負荷とラジアル負荷を支承する大径ベアリング(第1のベアリング)17Aと、ラジアル負荷を支承する小径ベアリング(第2のベアリング)17Bとからなり、
上部旋回軸18aは大径ベアリング17Aを介して中空柱状体16の張出し部16aの内面に上下荷重と半径方向荷重を支えられ、下部旋回軸18bは小径ベアリング17Bを介して中空柱状体16の下部16bの内面に半径方向荷重を支えられる。
すなわち、主たる旋回台4等旋回部分の荷重は、大径の大径ベアリング17Aで支えるので旋回台4の撓みが防止され、下方の離れた位置で小径ベアリング17Bが旋回台4に掛かる転倒モーメントを支えるので、旋回台4が安定して支持され、旋回される。
【0039】
中空柱状体16の下部16bは上部の張出し部16aより小径で、中空柱状体16はいわば杯型をなしているので、下部16b周りのベースフレーム15上には、例えば前述のインデックスドライブを用いた従来装置よりも旋回中心C寄りに機器を配置できる。
例えば、ケーブルベア40は、下部16b周りに配置して、旋回中のドラム装置2に動力を供給して、旋回中の成型工程を可能としながら、それに要するスペースを抑制できる。
【0040】
したがって、ドラムセンター位置13まで進入するカーカスバンド搬送装置8やBTバンド搬送装置11と、旋回機構100との抵触範囲は従来より狭められ、各作業位置5A、5Bでのドラムセンター位置13は、旋回中心Cにより近づけて設定できる。
その結果、各成型ドラム3の先端3aは、旋回中心Cにより近づけられ、図3に示すように、先端3aの旋回半径Rが縮小され、装置スペースの低減に寄与できる。
ドラム装置2はその分後退して位置するため、旋回台4は、従来装置で例えば4角形にベースフレーム15を略覆う大きさだったものが、図3に示されるように略平行四辺形に一部を切欠いた形状とでき、旋回台4の軽量化と、その下方のスペースの有効利用に資することができるものとなる。
【0041】
図1、図3に示されるように、ベースフレーム15上には、旋回台4の下方で、中空柱状体16の外周側に回転装置30が設けられており、軸芯を鉛直上向きにしたその出力ギア31が、旋回中心Cを通る鉛直方向の軸芯を有し、中空柱状体16より外周側の旋回台4の下面に取り付けられた旋回用ギア20と噛合って、旋回台4を旋回駆動する。
【0042】
図1に示されるように、カーカス側作業位置5Aの成型ドラム3の延長線上には、カーカスバンド成型用ドラム6が配置され、その間には軌道7上を走行するカーカスバンド搬送装置8が配置される。
BT側作業位置5Bの成型ドラム3の延長線上には、BTバンド成型用ドラム9が配置され、その間には軌道10上を走行するBTバンド搬送装置11が配置される。
BTバンド搬送装置11の軌道10は、ベースフレーム15上に延設され、BT側作業位置5Bにおけるドラムセンター位置13まで進入したBTバンド搬送装置11より旋回台4の旋回中心C側において、中空柱状体16の下部16bの外周側でステッチャー装置50がBTバンド搬送装置11と抵触しない位置にステッチャー待機場51が設けられている。
【0043】
ステッチャー装置50とBTバンド搬送装置11は、ともに後述の摺動軸受52、12を介して摺動自在に軌道10上にあり、ステッチャー装置50は、後述の移動用エアシリンダ57(図5参照)で軌道10方向に進退駆動され、BTバンド搬送装置11は図示しないサーボモータによる駆動装置を備え、軌道10上を前後走行駆動される。
カーカスバンド搬送装置8は、軌道7上を図示しない駆動装置で前後走行駆動される。
【0044】
図5から図7を参照して、本実施形態のタイヤ成型装置1の旋回機構100とステッチャー装置50に関して、さらに説明するが、上述した点は各部に同一の符号を付して、重なる説明は省略し、拡大された図面で追加説明すべき点を重点に説明する、
【0045】
図5、図6に示されるように、旋回台4の下方には旋回中心Cに軸芯を合わせて、旋回軸18が締結されて延設され、上部旋回軸18aが、ベースプレート15から同軸に立設された中空柱状体16の上部の張出し部16aの内周面に、旋回軸受17の大径ベアリング17Aを介して支えられている。
大径ベアリング17Aは、張出し部16aに設けられることで、図示直径D1のように、より大径のものを選択でき、旋回台4の安定、撓み防止に資することができる。
大径ベアリング17Aは、スラスト負荷とラジアル負荷を支承するもので、アンギュラボールベアリングや市販のクロスローラーベアリング等が用いることができる。
【0046】
下部旋回軸18bは、中空柱状体16の下部16bの内周面に、旋回軸受17の小径ベアリング17Bを介して支えられ、旋回台4に掛かるモーメントを支持して旋回台4を安定化に資する。
小径ベアリング17Bは、ラジアル負荷を支承するもので、通常のボールベアリング等を用いることができる。
【0047】
中空柱状体16の下部16bの周囲には、旋回台4の180度反復旋回において、ベースフレーム15側から旋回台4上の機器に動力を供給し、また信号をやりとりするためのケーブルベア40が設けられる。
41は、ベースフレーム15上に立設された固定側ターミナルであり、42は旋回台4に取り付けられ、下方に延設された旋回側ターミナルであって、両ターミナル41、42間に、ケーブルベアテーブル43上に載置されたケーブルベア40が連結されている。ケーブルベア40は、水平なケーブルベアテーブル43上で水平面内の屈曲摺動によって、旋回側ターミナルが180度反復旋回のいずれの位置に来ても連結状態を保てる。図5中では、旋回台4が最も反時計方向に回転した状態での旋回側ターミナルが符号42で示され、旋回台4が最も時計方向に回転した状態での旋回側ターミナルが符号42′で示されている。
【0048】
たとえば、180度の反復旋回において、必要とされるケーブルベアテーブル43の設置角度は、周囲220〜230度程度であり、ケーブルベアテーブル43を含めたケーブルベア40の設置範囲外の周方向位置には、他の機器を旋回中心Cにより近づけて配置できる。
本実施形態では、図5に示すように、ベースプレート15上の回転装置30と、ベースプレート15上に延設されたBTバンド搬送機11用の軌道10上に設定されたステッチャー待機場51とが、中空柱状体16の下部16bの外周側に設けられている。
【0049】
回転装置30は、サーボモータ32と減速機33とで構成され、出力軸34は鉛直方向上向きの軸芯を有し、出力ギア31が取り付けられている。減速機は、高減速比と小型化のため、ハーモニックドライブ(登録商標)等が使用でき有効である。
回転装置30の出力ギア31は、中空柱状体16より外周側で旋回台4の下面に取り付けられた旋回用ギア20と噛合って、旋回台4を旋回駆動する。旋回用ギア20は、図示直径D2の大径のギアとなるので、回転装置30の負荷が軽減される。
【0050】
また、旋回用ギア20は大径のギアとなるが、図6に図示のように、旋回中心Cを軸芯として円形に配置、取り付けされたチェーン状の、いわゆるピンギアとしている。それに合わせて、出力ギア31はスプロケット状のギアとしている。
そのため、回転装置30の構成と合わせて、旋回駆動部の構成が簡略小型化し、低コストになるほか、旋回軸受17とは並列配置で重畳しないので旋回機構100の高さが低減し、スペースが削減される。
【0051】
また、図5、図7に示されるように、ベースフレーム15には、位置決めピン装置35が立設されており、成型ドラム3がカーカス側作業位置5AやBT側作業位置5Bに位置した状態で、位置決めピン36を上方に突出させ、旋回台4に設けられ下方に向けて開口するV形凹部37に嵌合されるようにしている。位置決めピン36は、エアシリンダ38によってガイドブロック39とともに上下動操作される。
なお、図7において位置決めピン装置35は、位置決めピン36が旋回台4の周方向の位置を規定する構造を、より分かりやすく示すために、配向を変更して示されている。
【0052】
そのため、回転装置30の出力ギア31と旋回用ギア20との間にバックラッシュを許容しても、サーボモータ32の制御による所定角度位置で旋回停止後の、位置決めピン36とV形凹部37の嵌合によって、高い精度の停止位置が、反復旋回を繰り返していても常に得られるようになり、成型ドラム3の位置を正確に維持することで精度の高いタイヤ成型に資することができる。
【0053】
ステッチャー装置50は、図5に示されるように、ベースフレーム15上の中空柱状体16の下部16bの外周側において、ケーブルベア40の設置範囲外の周方向位置に、回転装置30と並んで設けられているステッチャー待機場51に、通常は格納されている。
ステッチャー待機場51には、BTバンド搬送装置11用の軌道10が延設されて、ステッチャー装置50は、その幅方向ステッチング中心50aがステッチャー待機場51の待機場センター51aと一致するまで入り込んで、BTバンド搬送装置11と干渉しない状態でいられる。
【0054】
図8に示されるように、ステッチャー装置50はベースプレート53上に、BT側作業位置5Bに位置した成型ドラム3に(すなわち成型ドラム3上のグリーンタイヤに)に向かって、軌道10と直交する面内で半径方向に進退できる3セットの圧着ローラ54A、54B、54Cを備えている。図8中、Xは成型ドラム4の回転中心である。
圧着ローラ54A、54B、55Cは、成型ドラム3に対して上向きに圧着作動する構成を有し、最も下降した状態において、旋回台4の下面4aより下方に位置し、それぞれ備えられたエアシリンダ55によって、ガイド部材56に従って上下進退でき、ステッチング時には上方に進出し、移動時、格納時等、ステッチング時以外は下方に後退した状態となる。
また、圧着ローラ54A、54B、55Cは、一定範囲の成型ドラム(グリーンタイヤ)の径に対応できる。
【0055】
図8に示すように、ベースプレート53の下部には、軌道10の2本の軌条10aにそれぞれ摺動自在に嵌め合わされる摺動軸受52が備えられている。
また、図5に示されるように、ベースプレート53にはブラケット53aを介して、軌条10aと平行に取り付けられた移動用エアシリンダ57のロッド先端57aが取り付けられる。
移動用エアシリンダ57が伸長したとき、ステッチャー装置50はその幅方向ステッチング中心50aがステッチャー待機場51の待機場センター51aと一致し、移動用エアシリンダ57が縮退したとき、ステッチャー装置50はその幅方向ステッチング中心50aがBT側作業位置5Bにおけるドラムセンター位置13と一致するように設定されている。
摺動軸受52は、ボールベアリングタイプ、例えばLMガイド(登録商標)等を用いることで、高精度と低抵抗の移動ができる。
なお、BTバンド搬送装置11の摺動軸受12も同様のタイプのものが備えられている。
【0056】
図8において成型ドラム3は、図示の回転方向Tで回転し、図5に示されるように、圧着ローラ54Aは一本の平ローラ、圧着ローラ54B、55Cはそれぞれ一対の円錐台断面のローラで構成されており、一対の円錐台断面のローラは間隔調整機構を介して取り付けられている。
ステッチャー装置の圧着ローラの機構自体は広く公知のものであるので、詳説は省略する。
【0057】
本実施形態におけるステッチャー装置50は、前述した従来のもののような成型ドラムの横方向から圧着ローラが圧着作動をするものと異なり、成型ドラム3の下方から上に向けて圧着作動をするものであり、圧着ローラ54A、54B、54Cが最も下降した状態において、ステッチャー装置50は全て旋回台4より下方に位置するから、上述のようなステッチャー待機場51に格納されたステッチャー装置50は、旋回台4の旋回において旋回台4等の旋回部分と抵触することが無い。
したがって、従来装置にあったように、ステッチャー装置自体が成型ドラムに側方から移動して来てステッチング工程を行うもののように、ステッチャー装置の走行移動装置や広いスペースを要することが無い。
【0058】
また、本実施形態のステッチャー装置50は、旋回台4上に搭載されるものではないので、そのような従来装置に比べて、旋回台4上の装置重量と、慣性重量が著しく低減されるので、旋回速度の向上、タイヤ成型装置の重量低減、作業性の向上が得られ、タイヤ成型速度向上、コスト低減等の効果を奏する。
また、ステッチング作業以外はステッチャー装置50をステッチャー待機場51に格納して置けば、BTバンド搬送装置11、旋回台4等と抵触することなく格納しておけるので、タイヤ成型装置1の省スペース化が図れる。
【0059】
そして、ステッチャー装置50は、ステッチング工程ではステッチャー待機場51に至近に隣接するBT側作業位置5Bにおけるドラムセンター位置13まで進出するだけで、作業位置につくことができ、ステッチャー待機場51へ後退するのも短時間に行えるから、ステッチング工程の時間短縮を図ることができる。
またさらに、ステッチング装置50は移動用エアシリンダ57で移動駆動されるから、クッション性があるため、BT側作業位置5Bにおけるドラムセンター位置13から退出するBTバンド搬送装置11と同時にその後に当接しつつ進出することもでき、工程の切り替え時間をより短縮できる。
なお、図5、図8中の58は、BTバンド搬送装置11と当接するゴムストッパーである。また、図8中の59は、ステッチャー装置50に動力等を供給する図示しないケーブルベアの、ステッチャー装置50側に取り付けられた移動側ターミナルである。
【0060】
以上のような本実施形態のタイヤ成型装置1は、下記のような特徴を有している。
すなわち、カーカスバンドとBTバンドとの組付けを行うタイヤ成型装置1において、複数の拡縮可能な成型ドラム3が旋回台4の旋回中心Cに対して同距離、同配向で且つ旋回中心C周りに互いに同角度ずれて配置されるように、各成型ドラム3のドラム装置2が載置固定され、複数のドラム装置2を旋回中心C回りに旋回可能に下支えする旋回台4と、旋回台4を下支えする旋回軸受17と、旋回台4を旋回させる回転装置30とを有し、旋回台4は、旋回中心Cを通る軸芯を有し旋回台4に取り付けられた旋回用ギア20に、回転装置30の出力ギア31が噛合って旋回され、各成型ドラムの旋回停止成型作業位置(カーカス側作業位置、BT側作業位置)5A、5Bにおいて、1つの成型ドラム3の延長線上には、カーカスバンド成型用ドラム6が設置され、その間に敷設された軌道7上にカーカスバンド搬送装置8が配置されるとともに、他の1つの成型ドラム3の延長線上には、BTバンド成型用ドラム9が設置され、その間に敷設された軌道10上にBTバンド搬送装置11が配置されている。
【0061】
したがって、旋回台4に取り付けられた旋回用ギア20に、回転装置30の出力ギア31が噛合って旋回台4が旋回されるので、旋回台4の下方は旋回軸受20とそれを支持する中空柱状体16と回転装置30の箇所以外は、適宜の利用スペースとすることができる。
したがって、従来のように旋回台の下方、支持フレームの内側にインデックスドライブが設けられ、インデックスドライブの垂直出力軸が旋回軸に連結されて旋回台が旋回駆動される構造による旋回台下方の旋回機構の左右幅の増大が防止され、旋回台4の旋回中心Cにより近くまで搬送装置8、11の軌道7、10を敷設できる。
【0062】
すなわち、その分、成型ドラム3のオーバーハングを減じるようにドラム装置2を後退させて旋回台4に取り付け、旋回台4も軌道7、10方向で後退するように狭めて、カーカスバンド搬送装置8や、BTバンド搬送装置11が、旋回台4や旋回機構100と干渉することなく旋回台4の旋回中心Cにより近くまで移動可能とし、後退した成型ドラム3のドラムセンター位置13まで進入させることができる。
そして、旋回台4上のドラム装置2の成型ドラム3のオーバーハングが低減できたので、スペース効率向上が図られるとともに、慣性重量が低減し、旋回速度を向上でき、タイヤ成型の高速化が可能となる。
また、さらには、インデックスドライブを旋回台の直下に納めることによる上下寸法の増大が無くなり、旋回機構100の上下寸法が低減して、ピット等を要さず成型ドラム3の回転中心Xの高さを低下させることも可能となる。
【0063】
また、旋回軸受17の周囲には、タイヤ成型装置1のベースフレーム15上に立設され、旋回軸受17を介して旋回台4を支える中空柱状体16が設けられ、中空柱状体16は上部に外周方向に張り出す張出し部16aが形成され、下部16bは上部に対して小径に形成されている。
したがって、旋回軸受17を支持する中空柱状体16はベースフレーム15上に立設され、上部が外周方向に張り出す張出し部16aとなっているため、旋回台4を幅広く支えられ、旋回台4の湾曲が防止されるとともに、下部16bが上部より小径とされているため、旋回機構100の下部の左右幅が効果的に減じられ、旋回台4下方ベースフレーム15上に、より多くのスペースが得られ、成型ドラム3のオーバーハングの低減が、より容易となる。
【0064】
また、旋回軸受17は、スラスト負荷とラジアル負荷を支承する大径ベアリング17Aと、ラジアル負荷を支承する小径ベアリング17Bとからなり、大径ベアリング17Aは中空柱状体16の上部において、旋回中心Cに軸芯を置き旋回台4の下部に延設された旋回軸18の、下部に対し大径の上部旋回軸18aとの間に配設され、小径ベアリング17Bは中空柱状体16の下部において、中空柱状体16の中心部16cを遊貫する旋回軸18の、上部に対して小径の下部旋回軸18bとの間に配設されている。
したがって、旋回軸受17のうち、スラスト負荷とラジアル負荷を支承する大径ベアリング17Aを、旋回台4近傍の中空柱状体16と上部旋回軸18aの間で大径のものとすることができ、旋回および荷重負荷を安定して支承できるものとなる。
また、小径ベアリング17Bは、旋回台4より下方に離れた位置において、中空柱状体16と下部旋回軸18bの間でラジアル負荷を支承するので、旋回台4の揺動を防止し旋回を安定させ、成型ドラム3の位置精度を向上させることができる。
【0065】
また、旋回用ギア20は、中空柱状体16より外周側において旋回台4の下面に取り付けられ、回転装置30は、中空柱状体16の外周側のベースフレーム15上に設置されている。
したがって、旋回用ギア20は中空柱状体16より外周側に設けられるので、旋回軸受17とは並列に別途の設置となり、旋回機構100の高さの低減に資することができる。
また、旋回用ギア20は大径のものとなるが、ベースフレーム15上の回転装置30の出力ギア31と噛合って旋回駆動されるものであるから、チェーンタイプのいわゆるピンギアを旋回台4の下面に取り付けて構成し、回転装置30はサーボモータ32と減速機33の組み合わせとして、出力ギア31はスプロケットタイプのギアで構成でき、旋回駆動機構の低コスト簡略小型化が可能となり、旋回機構100の高さ低減、スペース削減がなされる。
【0066】
また、ベースフレーム15上に設置され、旋回停止成型作業位置5A、5Bにおいて上方に突出させた位置決めピン36が、旋回台4に設けられたV形凹部37に嵌合される位置決めピン装置35を備えている。
したがって、サーボモータ32による旋回制御に加え、ベースフレーム15上の位置決めピン装置35の位置決めピン36が、旋回停止成型作業位置5A、5Bにおいて上方に突出して、旋回台4のV形凹部37に嵌合するので、繰り返しの旋回においても成型ドラム3の旋回停止成型作業位置5A、5Bへの正確な停止が常に確保される。
【0067】
また、ドラム装置2は2基であり、各ドラム装置2の成型ドラム3は旋回中心C周りに180度ずれて配置され、旋回停止成型作業位置5A、5Bにおいて、1つの成型ドラム3の延長線上に、カーカスバンド成型用ドラム6が設置され、他の1つの成型ドラム3の延長線上に、BTバンド成型用ドラム9が設置され、中空柱状体16の下部16bを囲むように、180度反復旋回する旋回台4上の複数のドラム装置2に動力を供給するケーブルベア40が設けられ、回転装置30は、ケーブルベア40の設置範囲外の周方向位置に設けられている。
したがって、180度反復旋回する旋回台4上の複数のドラム装置2に常時動力を供給することができ、旋回中においても成型工程を加えることができる。
また、ケーブルベア40は中空柱状体16の下部16bを囲むように設けられ、回転装置30は、ケーブルベア40と周方向に並んだ位置に設けられるので、旋回機構100の左右幅の低減に資することができる。
【0068】
以上、本発明のタイヤ成型装置の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態の態様に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲で多種多様な態様で実施されるものを含むことは勿論である。
たとえば、上記実施形態は、成型ドラム3が旋回台4の旋回中心Cに対して同距離、同配向で且つ旋回中心C周りに互いに180度ずれて配置されるように、旋回台4上に2基のドラム装置2を設けたものであるが、複数のドラム装置2を、成型ドラム3が旋回台4の旋回中心Cに対して同距離、同配向で且つ旋回中心C周りに互いに同角度ずれて配置されるようにしたものでも、同様の構成をもって同様の作用効果を奏するものとなる。
【0069】
そして、本実施形態は、タイヤ構成部材が組み合わされた帯状部材として、BTバンドの場合を説明し、また、その場合に特に有効であるが、本発明は多様な「タイヤ構成部材が組み合わされた帯状部材」において有効に適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
1…タイヤ成型装置、2…ドラム装置、3…成型ドラム、4…旋回台、5A…カーカス側作業位置(旋回停止成型作業位置)、5B…BT側作業位置(旋回停止成型作業位置)
、6…カーカスバンド成型用ドラム、7…軌道、8…カーカスバンド搬送装置、9…BTバンド成型用ドラム(帯状部材成型用ドラム)、10…軌道、11…BTバンド搬送装置(帯状部材搬送装置)、13…ドラムセンター位置、15…ベースフレーム、16…中空柱状体、16a…張出し部、16b…下部、16c…中心部、17…旋回軸受、17A…大径ベアリング(第1のベアリング)、17B…(第1のベアリング)、18…旋回軸、18a…上部旋回軸、18b…下部旋回軸、20…旋回用ギア、30…回転装置、31…出力ギア、35…位置決めピン装置、36…位置決めピン、37…V形凹部、40…ケーブルベア、50…ステッチャー装置、100…旋回機構、C…旋回中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスバンドと、タイヤ構成部材が組み合わされた帯状部材との組付けを行うタイヤ成型装置において、
複数の拡縮可能な成型ドラムが旋回台の旋回中心に対して同距離、同配向で且つ旋回中心周りに互いに同角度ずれて配置されるように、各成型ドラムのドラム装置が載置固定され、複数の同ドラム装置を旋回中心回りに旋回可能に下支えする前記旋回台と、
同旋回台を下支えする旋回軸受と、
同旋回台を旋回させる回転装置とを有し、
同旋回台は、旋回中心を通る軸芯を有し同旋回台に取り付けられた旋回用ギアに、前記回転装置の出力ギアが噛合って旋回され、
各成型ドラムの旋回停止成型作業位置において、少なくとも1つの前記成型ドラムの延長線上には、カーカスバンド成型用ドラムが設置され、その間に敷設された軌道上にカーカスバンド搬送装置が配置されるとともに、少なくとも他の1つの前記成型ドラムの延長線上には、帯状部材成型用ドラムが設置され、その間に敷設された軌道上に帯状部材搬送装置が配置されたことを特徴とするタイヤ成型装置。
【請求項2】
前記旋回軸受の周囲には、前記タイヤ成型装置のベースフレーム上に立設され、前記旋回軸受を介して前記旋回台を支える中空柱状体が設けられ、
同中空柱状体は上部に外周方向に張り出す張出し部が形成され、下部は前記上部に対して小径に形成されたことを特徴とする請求項1記載のタイヤ成型装置。
【請求項3】
前記旋回軸受は、スラスト負荷とラジアル負荷を支承する第1のベアリングと、ラジアル負荷を支承する第2のベアリングとからなり、
前記第1のベアリングは前記中空柱状体の上部において、前記旋回中心に軸芯を置き前記旋回台の下部に延設された旋回軸の、下部に対し大径の上部旋回軸との間に配設され、
前記第2のベアリングは前記中空柱状体の下部において、同中空柱状体の中心部を遊貫する前記旋回軸の、上部に対して小径の下部旋回軸との間に配設されたことを特徴とする請求項2記載のタイヤ成型装置。
【請求項4】
前記旋回用ギアは、前記中空柱状体より外周側において前記旋回台の下面に取り付けられ、
前記回転装置は、前記中空柱状体の外周側の前記ベースフレーム上に設置されたことを特徴とする請求項2または請求項3記載のタイヤ成型装置。
【請求項5】
前記ベースフレーム上に設置され、前記旋回停止成型作業位置において上方に突出させた位置決めピンが、前記旋回台に設けられたV形凹部に嵌合される位置決めピン装置を備えたことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか記載のタイヤ成型装置。
【請求項6】
前記ドラム装置は2基であり、各ドラム装置の成型ドラムは前記旋回中心周りに180度ずれて配置され、
前記旋回停止成型作業位置において、1つの前記成型ドラムの延長線上に、カーカスバンド成型用ドラムが設置され、他の1つの前記成型ドラムの延長線上に、帯状部材成型用ドラムが設置され、
前記中空柱状体の下部を囲むように、180度反復旋回する前記旋回台上の前記複数のドラム装置に動力を供給するケーブルベアが設けられ、前記回転装置は、前記ケーブルベアの設置範囲外の周方向位置に設けられたことを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか記載のタイヤ成型装置。
【請求項7】
前記タイヤ構成部材が組み合わされた帯状部材は、BTバンドであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか記載のタイヤ成型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−121234(P2012−121234A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274173(P2010−274173)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】