説明

タイル、アンカータイル、ユニットタイル、タイルの手張り工法、タイルの型枠先付け工法およびタイルのPC板先付け工法

【課題】施工が容易であって、且つ経時的に剥がれてしまうのを確実に防止することができるタイル、アンカータイル、タイルの手張り工法、タイルの型枠先付け工法およびタイルのPC板先付け工法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のタイル1は、中央部に、アンカリングのためのアンカー6が装着される座ぐり穴3b付きの貫通穴3を備えたものであり、本発明のアンカータイル5は、上記のタイル1と、タイル1の貫通穴3に装着されるアンカー6と、から成り、アンカー6は、座ぐり穴3bに納まるように嵌合する頭部6aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として建物の外壁、内壁、床等の仕上げに用いるタイル、アンカータイル、ユニットタイル、タイルの手張り工法、タイルの型枠先付け工法およびタイルのPC板先付け工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のタイルおよびタイルの施工方法として、上下2箇所に斜め下向きの溝条を有するタイルを用い、建物の躯体に塗り付けたモルタルに、斜め上向きの掛止め片を有する上下2つの受け金具を固定し、この2つの掛止め片に、タイルを掛け止めするようにして固定するものも知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−253848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来のタイルおよびその施工方法では、モルタルに対し各タイル宛て2つの受け金具を取り付ける必要があり、タイル自信の施工は簡単であるが、タイル下地の施工に手間がかかり、全体として施工に手間がかかる問題があった。
【0004】
本発明は、施工が容易であって、且つ経時的に剥がれてしまうのを確実に防止することができるタイル、アンカータイル、ユニットタイル、タイルの手張り工法、タイルの型枠先付け工法およびタイルのPC板先付け工法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のタイルは、中央部に、アンカリングのためのアンカーが装着される貫通穴を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明のアンカータイルは、上記のタイルと、タイルの貫通穴に装着されるアンカーと、から成り、アンカーは、貫通穴の表側開口部より大きく且つ薄肉に形成された頭部を有していることを特徴とする。
【0007】
これらの構成によれば、タイルの貫通穴に装着されるアンカーにより、タイルをモルタルや躯体にアンカリングすれば、タイルが経時的に剥がれるのを確実に防止することができる。また、タイルの貫通穴、或いはこれに装着したアンカーの頭部は、タイルの意匠として機能する。なお、タイルの貫通穴は、アンカーを用いることなく施工した場合であっても、この部分にモルタルが入り込むことで裏あしとして機能し、且つピンニング工法用のアンカーピン挿填穴としても機能する。
【0008】
本発明の他のタイルは、中央部に、アンカリングのためのアンカーが装着される座ぐり穴付きの貫通穴を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の他のアンカータイルは、上記のタイルと、タイルの貫通穴に装着されるアンカーと、から成り、アンカーは、座ぐり穴に納まるように嵌合する頭部を有していることを特徴とする。
【0010】
これらの構成によれば、タイルの貫通穴に装着されるアンカーにより、タイルをモルタルや躯体にアンカリングすれば、タイルが経時的に剥がれるのを確実に防止することができる。また、タイルの貫通穴、或いはこれに装着したアンカーの頭部は、タイルの意匠として機能する。そして、座ぐり穴は、アンカーの頭部を没入させてタイル仕上げを良好なものとする。なお、タイルの貫通穴は、アンカーを用いることなく施工した場合であっても、この部分にモルタルが入り込むことで裏あしとして機能し、且つピンニング工法用のアンカーピン挿填穴としても機能する。
【0011】
これらの場合、アンカーの軸部に、雄ネジが形成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、アンカーの引抜き強度をアップさせることができ、タイルの脱落を確実に防止することができる。
【0013】
これらの場合、アンカーの頭部が、タイルの表面と同色に着色されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、タイルの表面におけるアンカーの頭部を目立たないものとすることができ、仕上げ状態を良好なものとすることができる。
【0015】
本発明のユニットタイルは、タイルにアンカーを装着した上記のアンカータイルの複数個を、連結部材により並べて連結したことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、複数のタイルを効率良く施工することができる。
【0017】
本発明のタイルの手張り工法は、上記したアンカータイル用いて行うタイルの手張り工法であって、躯体の表面にモルタルを塗付けるモルタル塗付け工程と、タイルをモルタル上に手張りするタイル張り工程と、タイル張り工程の後、タイルを貫通させてアンカーをモルタルにアンカリングするアンカー装着工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、タイルをモルタル上に手張りし、このタイルを貫通させてアンカーをモルタルに押し入れるだけで、タイルの脱落を確実に防止できるタイル施工を、簡単且つ迅速に行うことができる。
【0019】
本発明の他のタイルの手張り工法は、上記したユニットタイル用いて行うタイルの手張り工法であって、躯体の表面にモルタルを塗付けるモルタル塗付け工程と、ユニットタイルをモルタル上に手張りするタイル張り工程と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、ユニットタイルをモルタル上に手張りするだけで、タイルの脱落を確実に防止できるタイル施工を、簡単且つ迅速に行うことができる。
【0021】
本発明のタイルの型枠先付け工法は、上記したアンカータイルの多数と、多数のアンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルの型枠先付け工法であって、タイルセット部材に、多数のアンカータイルをセットするタイルセット工程と、タイルセット部材を、施工後のコンクリート用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、セット部材取付け工程の後、コンクリート用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリートからコンクリート用型枠と共にタイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
本発明の他のタイルの型枠先付け工法は、上記したアンカータイルの多数と、多数のアンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルの型枠先付け工法であって、タイルセット部材に、多数のアンカータイルをセットするタイルセット工程と、タイルセット部材を、施工前のコンクリート用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、セット部材取付け工程の後、コンクリート用型枠を組み上げる型枠施工工程と、型枠施工工程の後、コンクリート用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリートからコンクリート用型枠と共にタイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
これらの構成によれば、タイルをコンクリート躯体に直付け(直張り)で簡単に施工することができると共に、打設したコンクリート躯体に、タイルをアンカリングするためのアンカーを埋め込むことができる。したがって、コンクリート躯体に直付けではあっても、タイルが経時的に剥がれるのを確実に防止することができる。なお、タイルセット工程とセット部材取付け工程とは、工程順を問うものではない。すなわち、相前後して行なわれればよく、また同時並行で行われてもよい。
【0024】
これらの場合、アンカータイルに代えて、上記のユニットタイルを用いることが、好ましい。
【0025】
この構成によれば、タイルセット工程を効率良く行うことができ、施工性を向上させることができる。
【0026】
これらの場合、タイルセット部材が、目地ますおよびタイルユニットのいずれかであることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、タイルのセットを効率良く行うことができる。なお、施工性を考慮し、発泡スチロール製の目地ますを用いることが好ましい。
【0028】
本発明のタイルのPC板先付け工法は、上記したアンカータイルの多数と、多数のアンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルのPC板先付け工法であって、タイルセット部材に、多数のアンカータイルをセットするタイルセット工程と、タイルセット工程の後、多数のアンカータイルと共にタイルセット部材を、PC用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、セット部材取付け工程の後、PC用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリートからPC用型枠と共にタイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、タイルをPC(プレキャストコンクリート)板に直付け(直張り)で簡単に取り付けることができると共に、打設したコンクリート(PC)に、タイルをアンカリングするためのアンカーを埋め込むことができる。したがって、PC板に直付けではあっても、タイルが経時的に剥がれるのを確実に防止することができる。なお、タイルセット工程とセット部材取付け工程とは、工程順を問うものではない。すなわち、相前後して行なわれればよく、また同時並行で行われてもよい。
【0030】
これらの場合、アンカータイルに代えて、上記のユニットタイルを用いることが、好ましい。
【0031】
この構成によれば、タイルセット工程を効率良く行うことができ、施工性を向上させることができる。
【0032】
この場合、タイルセット部材が、目地ますおよびタイルユニットのいずれかであることが好ましい。
【0033】
この構成によれば、タイルのセットを効率良く行うことができる。なお、作業性を考慮し、発泡スチロール製の目地ますを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明のタイル、アンカータイル、ユニットタイル、タイルの手張り工法、タイルの型枠先付け工法およびタイルのPC板先付け工法によれば、施工が容易であって、且つタイルが躯体等から剥がれてしまうのを確実に防止することができる。したがって、タイル仕上げの信頼性および安全性を格段に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係るタイル、アンカータイル、タイルの手張り工法、タイルの型枠先付け工法およびタイルのPC板先付け工法を、建物における外壁の施工方法に適用した場合について説明する。この外壁の施工方法は、タイル張りの外壁を施工するものであり、特殊なタイルを用いることを前提としている。そこで、先ずタイルから説明する。
【0036】
図1に示すように、タイル1は、例えば「二丁掛」や「三丁掛」等の大きさを有し、裏面側には裏あし2(JIS A 5209)が形成されている。タイル1の正面視中央部には、タイル1をコンクリート躯体やモルタルにアンカリングのためのアンカーピン6(後述する)が装着される貫通穴3が形成されている。貫通穴3は、円形に形成され、いわゆる座ぐり穴3bが設けられている。すなわち、貫通穴3は、同軸上に位置する貫通穴本体3aと表側の座ぐり穴3bとで一体に形成されている。
【0037】
この貫通穴3付のタイル1は、貫通穴3をデザインの一部としてそのまま外壁にタイル張りすることも可能である。かかる場合には、貫通穴3は、経時的にタイルやモルタルの剥がれ(浮き)が生じたときに、アンカーピンニング工法における穿孔穴の一部としても活用可能である。実施形態のものでは、貫通穴3付のタイル1とこの貫通穴3に装着されるアンカーピン6とをセット(アンカータイル)にして用いる。
【0038】
図2に示すように、アンカータイル5は、上記のタイル1と、タイル1の貫通穴3に装着されるアンカーピン(アンカー)6と、で構成されている。アンカーピン6は、頭部6aと軸部6bとから成り、軸部6bをいわゆる全ネジ(雄ネジ)で構成することが好ましい。頭部6aは、上記の座ぐり穴3bと相補的形状を有しており、座ぐり穴3bの奥行きが頭部6aの厚みに合致し、座ぐり穴3bの径が頭部6aの径に合致している。また、アンカーピン6の頭部6aは、焼付け塗装等により、タイル1の表面と同色に着色されている。したがって、アンカーピン6をタイル1に装着した状態では、タイル1の表面とアンカーピン6の頭部6aの表面とが面一となり且つ同色となるため、アンカーピン6の頭部6aが目立つことがなく、良好な仕上がりとなる。
【0039】
ところで、図3に示すように、タイル1の貫通穴3を座ぐり穴3bの無いストレート穴としてもよい。かかる場合に、貫通穴3に装着されるアンカーピン6は、貫通穴3の表側開口部より大きく且つ薄肉に形成された頭部6cを有していることが、好ましい。頭部6cの肉厚は、0.3mmから0.5mm程度が好ましく、またタイル1の表面と同色に着色されていることが好ましい。この場合も、アンカーピン6の頭部6cが目立つことがなく、良好な仕上がりとなる。なお、アンカーとしてアンカーピン6を用いた場合について説明したが、軸部6bの先端が拡開形状等のアンカーを用いてもよい。また、貫通穴3は、「きじ」の段階で形成してもよいし、焼成後にダイヤモンドビット等により穿孔してもよい。
【0040】
次に、図4を参照して、上記のアンカータイル5の複数個により構成されるユニットタイルについて説明する。このユニットタイル7は、図2に示すアンカータイル5(図3のものは省略)を複数個並べて構成されている。すなわち、ユニットタイル7は、台紙(連結部材)7a上に、所定の割付けに従って複数のアンカータイル5を貼着したものであり、各アンカータイル5は、タイル1にアンカーピン6を装着した状態で、台紙7aに貼着されている。この場合、台紙7aには耐水性のシートが用いられ、最終的に台紙7aを引き剥がすようになっている。なお、実施形態のユニットタイル7は、いわゆる表張りユニットタイルであるが、裏張りユニットタイルとしてもよい。
【0041】
次に、図5を参照して、上記のアンカータイル5を用いたタイル1の手張り工法について説明する。この手張り工法は、コンクリート躯体8の表面にモルタル9を塗付けるモルタル塗付け工程(同図(b)参照)と、タイル1をモルタル9上に手張りするタイル張り工程(同図(c)参照)と、タイル張り工程の後、タイル1を貫通させてアンカーピン6をモルタル9にアンカリングするアンカー装着工程(同図(d)参照)と、を備えている。
【0042】
モルタル塗付け工程では、アンカーピン6の長さを考慮して、コンクリート躯体8の表面(或いはモルタル下地の表面)に20mm以上のモルタル9を塗付けるようにする。タイル張り工程では、塗付けたモルタル9を張付けモルタルとして、通し目地や馬踏み目地等の割付けにより多数のタイル1を手張りする。アンカー装着工程では、モルタル9が硬化する前に、各タイル1を貫通させてアンカーピン6を押入れモルタル9に埋め込むようにする。
【0043】
このようにして、タイル1の手張り工法による外壁の施工が完了し、モルタル9が硬化すると、タイル1は、モルタル9に接着されると共に、アンカーピン6のよりモルタル9にアンカリングされる。これにより、経時的にタイル1が剥がれ落ちるのを確実に防止することができる。なお、上記のアンカーピン6と同様なアンカーを用いて、モルタル9をコンクリート躯体8にアンカリングしておくことが、より好ましい(図5に仮想線で図示)。
【0044】
特に図示しないが、上記のタイル1の手張り工法において、アンカータイル5に代えて、上記のタイルユニット7を用いるようにしてもよい。かかる場合には、モルタル塗付け工程の後、タイルユニット7をモルタル9上に手張りするタイル張り工程を行って、作業を完了する。もっとも、タイルユニット7が表張りユニットタイルの場合には、モルタル9が硬化した後、台紙7aを引き剥がすようにする。このように、タイルユニット7を用いることにより、アンカーピン6の扱いが容易になると共に、作業の効率化を図ることができる。なお、タイルユニット7の運搬において、アンカーピン6の先端にプロテクタ(発泡スチロール)をもうけておくことが好ましい。
【0045】
次に、図6を参照して、上記のアンカータイル5を用いたタイル1の型枠先付け工法について説明する。この型枠先付け工法は、多数のアンカータイル5を所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材11用い、タイルセット部材11に、多数のアンカータイル5をセットするタイルセット工程(同図(a)参照)と、タイルセット工程の後、多数のアンカータイル5と共にタイルセット部材11を、施工後のコンクリート用型枠12の内側に取り付けるセット部材取付け工程(同図(b)参照)と、セット部材取付け工程の後、コンクリート用型枠12内にコンクリート13を打設するコンクリート打設工程(同図(c)参照)と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリート13からコンクリート用型枠12と共にタイルセット部材11を取り外すセット部材除去工程(同図(d)参照)と、を備えている。
【0046】
この場合、タイルセット部材11としては、目地ますおよびタイルユニットのいずれかを用いることがこのましいが、実施形態のものでは、発泡スチロール製の目地ますを用いるようにしている。具体的には、タイルセット部材11のセット側の面には、タイル(アンカータイル5)1を通し目地等の所定の割付けに従ってセットするための多数のセット溝11aが形成されており、各セット溝11aは、タイル1が隙間なく収まるようにタイル1と略相補的形状に形成されている。
【0047】
タイルセット工程では、タイルセット部材11の各セット溝11aに、アンカーピン6を装着したタイル(アンカータイル5)1を、嵌め込むようにしてセットする。この状態では、タイルセット部材11のセット側面(目地となる部分)からタイル1の裏面側が突出した状態となる。セット部材取付け工程では、躯体(外壁)打設用のコンクリート用型枠12の内側に、接着剤や両面粘着テープにより、アンカータイル5付きのタイルセット部材11を固定する。コンクリート打設工程では、流し込んだコンクリート13を十分に締め固め、養生に移行する。セット部材除去工程では、先ずコンクリート用型枠12を外し、続いてタイルセット部材11を取り外す。
【0048】
このようにして、タイルセット部材11を外すと、打設したコンクリート躯体14(13)の屋外側表面にタイル1が直付けされた状態となり、且つアンカーピン6により各タイル1がコンクリート躯体14にアンカリングされた状態となる。これにより、コンクリート躯体14に直付けではあっても、タイル1が経時的に剥がれ落ちるのを確実に防止することができる。なお、タイルセット部材11を、コンクリート用型枠12に固定してからこれにアンカータイル5をセットしてもよい。また、セット部材取付け工程の直後に鉄筋20の配筋を行うようにする。
【0049】
次に、図7を参照して、上記の型枠先付け工法の変形例について説明する。この変形例の型枠先付け工法では、タイルセット部材11に、多数のアンカータイル5をセットするタイルセット工程(同図(a)参照)と、タイルセット工程の後、多数のアンカータイル5と共にタイルセット部材11を、施工前のコンクリート用型枠12の内側に取り付けるセット部材取付け工程(同図(b)参照)と、セット部材取付け工程の後、コンクリート用型枠12を組み上げる型枠施工工程(同図(c)参照)と、型枠施工工程の後、コンクリート用型枠12内にコンクリート13を打設するコンクリート打設工程(同図(d)参照)と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリート13からコンクリート用型枠12と共にタイルセット部材11を取り外すセット部材除去工程(同図(e)参照)と、を備えている。
【0050】
すなわち、この変形例では、コンクリート用型枠12を組み上げる(施工)前に、コンクリート用型枠12にアンカータイル5付きのタイルセット部材11を固定するようにしている。その後、タイルセット部材11を固定したコンクリート用型枠12を組み上げてコンクリート13を打設する。この構成でも、タイルセット部材11を外すと、打設したコンクリート躯体14(13)の屋外側表面にタイル1が直付けされた状態となり、且つアンカーピン6により各タイル1がコンクリート躯体14にアンカリングされた状態となる。なお、この場合も、タイルセット部材11を、コンクリート用型枠12に固定してからこれにアンカータイル5をセットしてもよい。
【0051】
また、これらの型枠先付け工法において、アンカータイル5に代えて、上記のタイルユニット7を用いるようにしてもよい。このようにすれば、タイルセット工程を極めて効率良く行うことができ、施工性を向上させることができる。
【0052】
次に、図8を参照して、上記のアンカータイル5を用いたタイル1のPC板先付け工法について説明する。このPC板先付け工法は、上記したタイルセット部材11用い、タイルセット部材11に、多数のアンカータイル5をセットするタイルセット工程(同図(a)参照)と、タイルセット工程の後、多数のアンカータイル5と共にタイルセット部材11を、PC用型枠16の内側に取り付けるセット部材取付け工程(同図(b)参照)と、セット部材取付け工程の後、PC用型枠16内にコンクリート17を打設するコンクリート打設工程(同図(c)参照)と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリート17からPC用型枠16と共にタイルセット部材11を取り外すセット部材除去工程(同図(d)参照)と、を備えている。
【0053】
この場合も、上記の型枠先付け工法と同様に、タイルセット部材11として発泡スチロール製の目地ますが用いられ、タイルセット部材11のセット側の面には、タイル(アンカータイル5)1を通し目地等の所定の割付けに従ってセットするための多数のセット溝11aが形成されている。
【0054】
タイルセット工程では、タイルセット部材11の各セット溝11aに、アンカーピン6を装着したタイル(アンカータイル5)1を、嵌め込むようにしてセットする。この状態では、タイルセット部材11のセット側面(目地となる部分)からタイル1の裏面側が突出した状態となる。セット部材取付け工程では、PC板(外壁)打設用のPC用型枠16の内側に、接着等により、アンカータイル5付きのタイルセット部材11を固定する。コンクリート打設工程では、流し込んだコンクリート17を十分に締め固め、養生に移行する。セット部材除去工程では、PC用型枠16を表裏反転した後、PC用型枠16を外し、続いてタイルセット部材11を取り外す。
【0055】
このようにして、タイルセット部材11を外すと、打設したPC板18(17)の屋外側となる表面にタイル1が直付けされた状態となり、且つアンカーピン6により各タイル1がPC板18にアンカリングされた状態となる。これにより、PC板18に直付けではあっても、タイル1が経時的に剥がれ落ちるのを確実に防止することができる。なお、この工法は、ALC板にも適用できることは、言うまでもない。
【0056】
次に、図9を参照して、上記のPC板先付け工法の変形例について説明する。この変形例のPC板先付け工法では、タイルセット部材11を、PC用型枠16の内側に取り付けるセット部材取付け工程(同図(a)参照)と、セット部材取付け工程の後、タイルセット部材11に多数のアンカータイル5をセットするタイルセット工程(同図(b)参照)と、タイルセット工程の後、PC用型枠16内にコンクリート17を打設するコンクリート打設工程(同図(c)参照)と、コンクリート打設工程の後、硬化したコンクリート17からPC用型枠16と共にタイルセット部材11を取り外すセット部材除去工程(同図(d)参照)と、を備えている。
【0057】
すなわち、この変形例では、タイルセット部材11をPC用型枠16に固定し、このタイルセット部材11にアンカータイル5をセットするようにしている。この構成でも、タイルセット部材11を外すと、打設したPC板18(17)の屋外側となる表面にタイル1が直付けされた状態となり、且つアンカーピン6により各タイル1がPC板18にアンカリングされた状態となる。
【0058】
そして、これらのPC板先付け工法においても、アンカータイル5に代えて、上記のタイルユニット7を用いることが好ましい。このようにすれば、タイルセット工程を極めて効率良く行うことができ、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係るタイルの断面図である。
【図2】実施形態に係るアンカータイルの断面図である。
【図3】変形例に係るアンカータイルの断面図である。
【図4】実施形態に係るユニットタイルの断面図である。
【図5】アンカータイルを用いたタイルの手張り工法の説明図である。
【図6】アンカータイルを用いたタイルの型枠先付け工法の説明図である。
【図7】変形例に係るタイルの型枠先付け工法の説明図である。
【図8】アンカータイルを用いたタイルのPC板先付け工法の説明図である。
【図9】変形例に係るタイルのPC板先付け工法の説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 タイル 3 貫通穴
3b 座ぐり穴 5 アンカータイル
6 アンカーピン 6a 頭部
6b 軸部 6c 頭部
7 ユニットタイル 7a 台紙
8 コンクリート躯体 9 モルタル
11 タイルセット部材 11a セット溝
12 コンクリート用型枠 13 コンクリート
14 コンクリート躯体 16 PC用型枠
17 コンクリート 18 PC板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に、アンカリングのためのアンカーが装着される貫通穴を備えたことを特徴とするタイル。
【請求項2】
中央部に、アンカリングのためのアンカーが装着される座ぐり穴付きの貫通穴を備えたことを特徴とするタイル。
【請求項3】
請求項1に記載のタイルと、
前記タイルの前記貫通穴に装着される前記アンカーと、から成り、
前記アンカーは、前記貫通穴の表側開口部より大きく且つ薄肉に形成された頭部を有していることを特徴とするアンカータイル。
【請求項4】
請求項2に記載のタイルと、
前記タイルの前記貫通穴に装着される前記アンカーと、から成り、
前記アンカーは、前記座ぐり穴に収まるように嵌合する頭部を有していることを特徴とするアンカータイル。
【請求項5】
前記アンカーの軸部に、雄ネジが形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載のアンカータイル。
【請求項6】
前記アンカーの頭部が、前記タイルの表面と同色に着色されていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のアンカータイル。
【請求項7】
前記タイルに前記アンカーを装着した請求項3ないし6のいずれかに記載のアンカータイルの複数個を、連結部材により並べて連結したことを特徴とするユニットタイル。
【請求項8】
請求項3ないし6のいずれかに記載のアンカータイル用いて行うタイルの手張り工法であって、
躯体の表面にモルタルを塗付けるモルタル塗付け工程と、
前記タイルを前記モルタル上に手張りするタイル張り工程と、
前記タイル張り工程の後、前記タイルを貫通させて前記アンカーを前記モルタルにアンカリングするアンカー装着工程と、を備えたことを特徴とするタイルの手張り工法。
【請求項9】
請求項7に記載のユニットタイル用いて行うタイルの手張り工法であって、
躯体の表面にモルタルを塗付けるモルタル塗付け工程と、
前記ユニットタイルを前記モルタル上に手張りするタイル張り工程と、を備えたことを特徴とするタイルの手張り工法。
【請求項10】
請求項3ないし6のいずれかに記載のアンカータイルの多数と、多数の前記アンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルの型枠先付け工法であって、
前記タイルセット部材に、多数の前記アンカータイルをセットするタイルセット工程と、
前記タイルセット部材を、施工後のコンクリート用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、
前記セット部材取付け工程の後、前記コンクリート用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
前記コンクリート打設工程の後、硬化した前記コンクリートから前記コンクリート用型枠と共に前記タイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とするタイルの型枠先付け工法。
【請求項11】
請求項3ないし6のいずれかに記載のアンカータイルの多数と、多数の前記アンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルの型枠先付け工法であって、
前記タイルセット部材に、多数の前記アンカータイルをセットするタイルセット工程と、
前記タイルセット部材を、施工前のコンクリート用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、
前記セット部材取付け工程の後、前記コンクリート用型枠を組み上げる型枠施工工程と、
前記型枠施工工程の後、前記コンクリート用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
前記コンクリート打設工程の後、硬化した前記コンクリートから前記コンクリート用型枠と共に前記タイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とするタイルの型枠先付け工法。
【請求項12】
前記アンカータイルに代えて、請求項7に記載のユニットタイルを用いることを特徴とする請求項10または11に記載のタイルの型枠先付け工法。
【請求項13】
前記タイルセット部材が、目地ますおよびタイルユニットのいずれかであることを特徴とする請求項10ないし12のいずれかに記載のタイルの型枠先付け工法。
【請求項14】
請求項3ないし6のいずれかに記載のアンカータイルの多数と、多数の前記アンカータイルを所定の割付けに従ってセットするためのタイルセット部材と、を用いて行うタイルのPC板先付け工法であって、
前記タイルセット部材に、多数の前記アンカータイルをセットするタイルセット工程と、
前記タイルセット部材を、PC用型枠の内側に取り付けるセット部材取付け工程と、
前記セット部材取付け工程の後、前記PC用型枠内にコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
前記コンクリート打設工程の後、硬化した前記コンクリートから前記PC用型枠と共に前記タイルセット部材を取り外すセット部材除去工程と、を備えたことを特徴とするタイルのPC板先付け工法。
【請求項15】
前記アンカータイルに代えて、請求項7に記載のユニットタイルを用いることを特徴とする請求項14に記載のタイルのPC板先付け工法。
【請求項16】
前記タイルセット部材が、目地ますおよびタイルユニットのいずれかであることを特徴とする請求項14または15に記載のタイルのPC板先付け工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−308926(P2008−308926A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159318(P2007−159318)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(506162828)FSテクニカル株式会社 (26)
【Fターム(参考)】