説明

タグ対応付け方法、タグ移動方向検知システム

【課題】多数のRFIDタグがタグ集団として一つにまとまって移動するような場合において、そのタグ集団に属するRFIDタグとタグ集団の代表として位置づけた代表RFIDタグとを対応付けるタグ対応付けシステムと、その対応付け方法などを提供する。
【解決手段】 本システムは、タグ集団2に属するRFIDタグ2Bと、そのタグ集団2の代表として位置づけた代表RFIDタグ2Aとを対応付けるシステムであって、代表RFIDタグ2Aからデータを読取る第1のアンテナ4Aの通信エリアJと、タグ集団2の各RFIDタグ2Bからデータを読取る第2のアンテナ4Bの通信エリアKとが、一部重複するように設けられ、第1のアンテナ4Aによって代表RFIDタグ2Aからデータを複数回読取る最中に、第2のアンテナ4Bによってタグ集団2の各RFIDタグ2Bからデータを読取り、代表RFIDタグ2Aから読取ったデータとタグ集団2のRFIDタグ2Bから読取ったデータとを一組の対応データとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のRFIDタグがタグ集団として一つにまとまって移動するような場合において、そのタグ集団に属するRFIDタグとタグ集団の代表として位置づけた代表RFIDタグとを対応付けるタグ対応付けシステムと、その対応付け方法、並びに、そのタグ集団に属する多数のRFIDタグの移動方向を正しく検知できるようにしたタグ移動方向検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、RFID(Radio Frequency Identification)タグを荷物に貼付し、このRFIDタグとリーダライタとが無線通信を行なうことにより荷物管理を行なうという手法が用いられている。この手法によれば、例えば、パレットなどにより運搬される荷物に取り付けられたRFIDタグから自動的にID(Identification)等のデータを読取ることができるので物流業務の効率化が図れるが、その荷物やこれに取り付けられたRFIDタグの移動方向までは検知できず、入庫であるのか出庫であるのかを自動的に検知することはできないという問題があった。
【0003】
上記RFIDタグの移動方向を検知する公知の手法としては、センサを利用する方法が一般的である。この一般的な方法は、例えば、荷物に取り付けられたRFIDタグからデータを読取るためのアンテナ周辺に、物体の移動方向を検知するセンサを設置する。そして、RFIDタグを取り付けた荷物が人や機械などによって運ばれアンテナの前方を通過する時に、アンテナを介してリーダライタとRFIRタグとの間で通信が行われ、これと同時に、上記センサが反応して当該荷物やこれを運ぶ人や機械などの移動方向が検知される。このことから、上記センサで検知された荷物、人、機械などの移動方向をRFIDタグの移動方向と推定するものである。
【0004】
しかしながら、上記のようなセンサを利用した技術によると、RFIDタグとは関係なく、荷物を運ぶ人や機械などにセンサを反応させて間接的にRFIDタグの移動方向を推定するものである。このため、荷物を運ばない人や機械など、RFIDタグを取り付けた荷物とは無関係の物体にセンサが反応してしまう場合もある。この場合は、その無関係の物体の移動方向がRFIDタグの移動方向と推定されてしまうから、RFIDタグの移動方向を正しく検知することはできない。例えば、上記のような無関係の物体がRFIDタグの移動方向とは逆向きに移動していると、推定されるRFIDタグの移動方向は実際の移動方向とは逆になってしまう。
【0005】
特許文献1ではRFIDタグの位置を特定する技術を開示しているが、RFIDタグが移動する場合に、そのRFIDタグの移動方向まで検知することはできないし、そのRFIDタグと一緒に移動する別のRFIDタグがあるとき、それらのRFIDタグどうしを対応付けることもできない。
【0006】
【特許文献1】特開2006−10345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、多数のRFIDタグがタグ集団として一つにまとまって移動するような場合において、そのタグ集団に属するRFIDタグとタグ集団の代表として位置づけた代表RFIDタグとを対応付けるタグ対応付けシステムと、その対応付け方法、並びに、タグ集団に属する多数のRFIDタグの移動方向を正しく検知できるようにしたタグ移動方向検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るタグ対応付けシステムは、図1(a)のクレーム対応図に示すように、タグ集団(2)に属するRFIDタグ(2B)と、そのタグ集団(2)の代表として位置づけた代表RFIDタグ(2A)とを対応付けるシステムであって、上記システムは、上記代表RFIDタグ(2A)からデータを読取る第1のアンテナ(4A)の通信エリア(J)と、上記タグ集団(2)の各RFIDタグ(2B)からデータを読取る第2のアンテナ(4B)の通信エリア(K)とが、一部重複するように設けられ、上記第1のアンテナ(4A)によって上記代表RFIDタグ(2A)からデータを複数回読取る最中に、上記第2のアンテナ(4B)によって上記タグ集団(2)の各RFIDタグ(2B)からデータを読取り、上記代表RFIDタグ(2A)から読取ったデータと上記タグ集団(2)のRFIDタグ(2B)から読取ったデータとを一組の対応データとすることを特徴とする。
【0009】
上記本発明に係るタグ対応付けシステムにおいては、例えば、上記タグ集団に属するRFIDタグと上記代表RFIDタグとの対応付けができた場合に、その代表RFIDタグの属性を、タグ集団に属するRFIDタグの属性として用いるようにしてもよい。
【0010】
上記本発明に係るタグ対応付けシステムにおいては、上記代表RFIDタグの属性である該代表RFIDタグの移動方向の情報を、上記タグ集団に属するRFIDタグの属性である該RFIDタグの移動方向の情報として用いるようにしてもよい。
【0011】
上記本発明に係るタグ対応付けシステムにおいて、上記タグ集団に属するRFIDタグ及び上記代表RFIDタグは、それぞれNULLの指向方向を持ち、上記第1のアンテナから出力される電波ビームは、上記タグ集団に属するRFIDタグのNULLの指向方向を向き、上記第2のアンテナから出力される電波ビームは、上記代表RFIDタグのNULLの指向方向を向くように構成することができる。
【0012】
上記本発明に係る対応付けシステムにおいて、上記第1のアンテナから出力される電波ビームの出力強度は、上記代表RFIDタグのみと通信可能なレベルに調整されるように構成することができる。
【0013】
本発明に係るタグ対応付け方法は、タグ集団に属するRFIDタグと、そのタグ集団の代表として位置づけた代表RFIDタグとを対応付ける方法であって、上記対応付け方法は、上記代表RFIDタグからデータを読取る第1のアンテナの通信エリアと上記タグ集団の各RFIDタグからデータを読取る第2のアンテナの通信エリアとを一部重複させ、上記第1のアンテナによって上記代表RFIDタグからデータを複数回読取る最中に、上記第2のアンテナによって上記タグ集団の各RFIDタグからデータを読取り、上記代表RFIDタグから読取ったデータと上記タグ集団のRFIDタグから読取ったデータとを一組の対応データとすることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るタグ移動方向検知システムは、図1(b)のクレーム対応図に示すように、タグ集団(2)に属するRFIDタグ(2B)の移動方向を検知するシステムであって、上記システムは、上記タグ集団(2)の代表として位置づけた代表RFIDタグ(2A)と、上記代表RFIDタグ(2A)の移動経路に向けて電波ビームをスキャンさせ、代表RFIDタグ(2A)からデータを読取る第1のアンテナ(4A)と、上記タグ集団(2)の各RFIDタグ(2B)から一括してデータを読取る第2のアンテナ(4B)と、上記第1のアンテナ(4A)によって代表RFIDタグ(2A)から読取ったデータ、その読取時刻、及び読取時のスキャン角度に基づいて代表RFIDタグ(2A)の移動方向を推定する推定手段(6)とを具備し、上記タグ集団(2)の各RFIDタグ(2B)から読取ったデータに、上記推定手段(6)によって推定された代表RFIDタグ(2A)の移動方向の情報を付加することを特徴とする。
【0015】
上記本発明に係るタグ移動方向検知システムにおいては、例えば、上記第1のアンテナの通信エリアと上記第2のアンテナの通信エリアとが一部重複し、上記第1のアンテナによって代表RFIDタグからデータを複数回読取る最中に、上記第2のアンテナによってタグ集団の各RFIDタグからデータを一括して読取り、上記代表RFIDタグから読取ったデータと上記タグ集団の各RFIDタグから読取ったデータとを一組の対応データとするとともに、そのタグ集団のRFIDタグから読取ったデータに、上記推定手段によって推定された代表RFIDタグの移動方向の情報を付加するようにしてもよい。
【0016】
上記本発明に係るタグ移動方向検知システムにおいて、上記タグ集団に属するRFIDタグ及び上記代表RFIDタグは、それぞれNULLの指向方向を持ち、上記第1のアンテナから出力される電波ビームは、上記タグ集団に属するRFIDタグのNULLの指向方向を向き、上記第2のアンテナから出力される電波ビームは、上記代表RFIDタグのNULLの指向方向を向くように構成することもできる。
【0017】
上記本発明に係るタグ移動方向検知システムにおいて、上記第1のアンテナから出力される電波ビームの出力強度は、上記代表RFIDタグのみと通信可能なレベルに調整されるように構成してもよい。
【0018】
代表RFIDタグとタグ集団に属するRFIDタグなど、物理的に独立した2つの物体を一緒に行動するものとして対応付けるには、少なくともそれらの物体が同じエリアと同じ時間を共有していたことが要件になる。本発明では、その時間的な要件を満たすようにする手段として、上記のように「第1のアンテナ(4A)によって代表RFIDタグ(2A)からデータを複数回読取る最中に、第2のアンテナ(4B)によってタグ集団(2)の各RFIDタグ(2B)からデータを読取る」ものとした。また、かかるエリア的な要件を満たすようにする手段として、本発明では、上記のように「上記代表RFIDタグ(2A)からデータを読取る第1のアンテナ(4A)の通信エリア(J)と、上記タグ集団(2)の各RFIDタグ(2B)からデータを読取る第2のアンテナ(4B)の通信エリア(K)とが、一部重複するように設けられる」ものとした。
【0019】
本発明において、上記「タグ集団」とは、パレットに載せられた多数の荷物に個々に付されたRFIDタグの集団など、一つの集団として一箇所にまとめられた2以上のRFIDタグからなるものが含まれる。
【0020】
また、上記本発明に係るタグ対応付け方法においては、「タグ集団」には移動するものと移動しないものとの双方を含み、移動しないタグ集団に属するRFIDタグと代表RFIDタグとの対応付けを行なうことも含む。
【0021】
上記「代表RFIDタグ」とは、タグ集団に属するRFIDタグを付した荷物を載せるパレットなど、タグ集団とは物理的に独立しているが、タグ集団と行動を伴にする物に付されたRFIDタグを含む。
【0022】
また、上記「代表RFIDタグ」は、タグ集団(2)に含まれてもよいし、含まれていなくてもよい。なお、図1(a)(b)では、代表タグ(2B)をタグ集団(2)の外側に配置してタグ集団(2)に含まれていないように図示したが、この図中の代表タグ(2B)をタグ集団(2)の内側に配置してタグ集団(2)に含まれるようにしてもよい。
【0023】
上記「代表RFIDタグの属性」は、その属性の全部でなく、属性の中の所定部分、例えばタグ移動方向など、タグ集団に属するRFIDタグと代表タグとに共通に使用できる部分のみが、タグ集団に属するRFIDタグの属性として使用可能となる。例えば代表RFIDタグがパレットに付された場合、代表RFIDタグには所有者属性としてパレットの所有者の名前が与えられるが、パレット上に米俵が20俵あった場合、各米俵の所有者はパレットの所有者と異なり、米俵の購入者であるから、代表RFIDタグに与えられた所有者属性(パレットの所有者)をタグ集団に属するRFIDタグの属性として用いることはしない。
【0024】
上記「代表RFIDタグ」や「タグ集団に属するRFIDタグ」としては、例えば、電池などの電源を有しておらず、リーダライタから電波で送電された電力によって回路が動作し、リーダライタと無線通信を行なうパッシブタイプのRFIDタグや、電池などの電源を有するアクティブタイプのRFIDタグが含まれる。
【0025】
上記「第1のアンテナ」にはスキャンアンテナを採用することができる。スキャンアンテナとは、複数の方向に電波を放射できるアンテナのことで、電波の放射方向を電子的にスキャンすることができる。本発明では、スキャンアンテナは、例えば、電子的制御によって送信する電波のビームを高速にスキャン可能なフェーズドアレイアンテナからなり、複数のアンテナ素子と、この複数のアンテナ素子のそれぞれに接続された複数の位相器と、この複数の位相器のすべてに接続された1つの分配合成器から構成されているが、これ以外の構成のスキャンアンテナを用いてもよい。分配合成器に入力された電波は、それぞれのアンテナ素子ごとの位相器に分配され、各位相器にて所望の位相変化がなされた後、各アンテナ素子から放射され、この際位相後の各電波がすべて同相となるような方向、すなわち正弦波の位相が一致する方向に強く電波が放射される。この最も強い電波が本発明における上記「第1のアンテナ」の「電波ビーム」、例えばメインローブであり、メインローブの方向は、位相器の設定により任意に変化させることができる。
【0026】
また、「第1のアンテナ」として、スキャンアンテナを用いず、第2のアンテナと同じアンテナを複数別々の方向に向けて設置して、高速で各アンテナを切り替えながらRFIDタグの情報を読むという構成でもよい。
【0027】
また、上記複数のアンテナ素子は、パッチアンテナから構成されていてもよく、更に、上記複数のアンテナ素子は、2次元配列されており、上記スキャンアンテナは、代表RFIDタグの移動経路に対して2次元スキャンするようにしてもよい。パッチアンテナから複数のアンテナを構成すれば、スキャンアンテナを薄く製造できるし、製造コストも低く抑えられるので好適である。また、複数のアンテナを2次元配列、例えば、複数のアンテナ素子を同一平面上に円形状、マトリクス状などに配列すれば、円を描くようにスキャンすることができるので、代表RFIDタグの移動方向が2次元的に検知することができる。すなわち、代表RFIDタグがXY平面上を移動する場合には、X方向への移動と、Y方向への移動とが同時に検知可能となる。
【0028】
上記代表RFIDタグから読取る「データ」や上記タグ集団に属するRFIDタグから読取る「データ」とは、RFIDタグを識別するためのタグNO.からなるID(Identification)などであり、「何が」移動したかを検知するうえでこのIDが利用される。
【0029】
上記「スキャン角」とは、スキャンアンテナが送信する電波のビームをスキャンする際に、そのビームの放射方向を示す角度である。例えば、複数のアンテナ素子がリニアに配列されたフェーズドアレイアンテナをスキャンアンテナに用いた場合には、ブロードサイド方向を基準に測定したビームの傾斜角である。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係るタグ対応付け方法によると、例えば、上記のように推定された代表RFIDタグの移動方向の情報を、タグ集団の各RFIDタグから読取ったデータに付加するような場合など、代表RFIDタグの属性をタグ集団に属する個々のRFIDタグの属性として用いる場合に、当該代表RFIDタグとタグ集団に属するRFIDタグとの対応付けができるから、属性のコピーがし易いなどの作用効果が得られる。
【0031】
本発明に係るタグ移動方向検知システムにあっては、上記の通り、代表RFIDタグの移動方向を推定し、推定された代表RFIDタグの移動方向の情報をタグ集団のRFIDタグから読取ったデータに付加する構成を採用した。このため、その付加された代表RFIDタグの移動方向の情報からタグ集団やこれに属する個々のRFIDタグの移動方向を検知することができ、また、タグ集団に属するRFIDタグの数が多数になっても、代表RFIDタグの個数は変わらないから、移動方向の推定が困難若しくは不可能となったり、その推定精度が低下したりすることもなく、タグ集団に属する多数のRFIDタグの移動方向を正しく検知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
<本発明を適用したRFID通信システムの基本構成>
図2は、本発明に係るタグ対応付けシステム、タグ対応付け方法、タグ移動方向検知システムを適用したRFID通信システムの機器構成の説明図、図3は、図2のRFID通信システムを構成する第1及び第2のアンテナの配置と、これらのアンテナの前方を通過するタグ集団を示す斜視図である。
【0034】
本RFID通信システムは、図3に示すようにRFIDタグ2Bを付した多数の荷物5がパレットPに載せられて移動する場合において、個々の荷物5に付したRFIDタグ2Bを全体として1つのタグ集団2と観念し、タグ集団2に属する個々のRFIDタグ2Bの移動方向を検知する機能を備えたシステムである。
【0035】
上記機能を実現する手段として、本RFID通信システムは、図2に示すように、タグ集団2の代表として位置づけた代表RFIDタグ2Aと、代表RFIDタグ2Aの移動経路に向けて電波ビームをスキャンさせ、代表RFIDタグ2Aからデータを読取る第1のアンテナ4Aを有する第1のリーダライタ3Aと、タグ集団2のRFIDタグ2Bから一括してデータを読取る第2のアンテナ4Bを有する第2のリーダライタ3Bとを備える。第1のリーダライタ3Aは、第1のアンテナ4Aによって代表RFIDタグ2Aからデータとして読取ったデータ(ID)、その読取時刻、及び読取時のスキャン角度に基づいて、代表RFIDタグ2Aの移動方向を推定する機能、すなわち、図1(b)の推定手段6としての機能を備える。そして、本RFID通信システムでは、タグ集団2に属するRFIDタグ2Bと代表RFIDタグ2Aとの対応付けができた場合に、上記のように推定された代表RFIDタグ2Aの移動方向の情報を、タグ集団2に属するRFIDタグ2Bの属性である移動方向の情報として用いるようにしたものである。その用い方は、具体的には、タグ集団2のRFIDタグ2Bから読取ったID(データ)に、推定された代表RFIDタグ2Aの移動方向の情報を付加するという手法を採る。
【0036】
以下、本RFID通信システムを詳細に説明する。
【0037】
本RFID通信システムにおいては、システム運用にあたり、建物の出入り口など、タグ集団2に属するRFIDタグ2Bの移動方向検知を行いたい場所に図3に示すゲートGTを設け、パレットPに載せられた多数の荷物5が当該ゲートGTを通過することを前提とする。
【0038】
ゲートGTの幅は、ゲートGTを通過するパレットPの最大の大きさの1.5倍程度とし、2つのパレットPが同時に並行して当該ゲートGTを通過することを禁止する。
【0039】
また、図3のようにパレットPには代表RFIDタグ2Aが付され、パレットPで搬送される多数の荷物5には個々にRFIDタグ2Bが付されているものとし、これらの荷物5に付された多数のRFIDタグ2Bを一のパレットP上でのタグ集団と考える。
【0040】
さらに、本RFID通信システムにおいては、1つのパレットPが上記ゲートGTを通過する時に、そのパレットPに付された代表RFIDタグ2Aの移動方向を推定し検知するが、移動方向の検知中は、ゲートGTをバーで閉鎖する等の方法によって、次のパレットのゲート通過を禁止する。
【0041】
図4は、図3のゲートの正面から見たときの各アンテナ、代表RFIDタグ、及びタグ集団に属するRFIDタグの指向方向、通信エリアを示した説明図である。図5は、図3のゲートの上方から見たときの第1のアンテナと代表RFIDタグの指向方向、通信エリアを示した説明図である。図6は、図3のゲートの上方から見たときの第2のアンテナとタグ集団に属するRFIDタグの指向方向、通信エリアを示した説明図である。これらの図において、Jは第1のアンテナ4Aの通信エリア、Kは第2のアンテナ4Bの通信エリア、Qは代表RFIDタグ2Aの通信エリア、Rはタグ集団2に属するRFIDタグ2Bの通信エリアを示している。
【0042】
<代表RFIDタグ、タグ集団に属するRFIDタグの要件>
パレットPに取り付けられた代表RFIDタグ2AはNULL(図4中の矢印Y2で示す部位)の指向方向を持ち、そのNULLの指向方向は図4のようにゲートGTの上下方向に向けられる。タグ集団2に属する各RFIDタグ2BもNULL(図4中の矢印Y1で示す部位)の指向方向を持つが、そのNULLの指向方向は図4のようにゲートGTの左右方向に向けられる。
【0043】
ここで、「NULLの指向方向」とは、アンテナ周囲の空間における指向方向のNULL点に向いた方向のことである。NULL点とは、アンテナの指向性パターンが落ち込む点(アンテナの放射電界が0とみなせる点)のことをいう。
【0044】
NULLの指向方向を持つアンテナとは、電波がどの方向にも均一に放射されるホイップアンテナではなく、ダイポールアンテナに代表されるような指向性アンテナのことである。「電波ビームをRFIDタグのNULLの指向方向に向ける」とは、タグ通過時に「RFIDタグの最も強い利得の方向を基準の0°として、第1(第2)のアンテナとRFIDタグのアンテナの対向角度が、RFIDタグのアンテナ利得の半値となる角度以上となるようにRFIDタグと第1(第2)アンテナを設置して、RFIDタグと読取器の通信成功率を落とす」ことを意味する。(図28を参照)
【0045】
パレットPに取り付けられる代表RFIDタグ2Aは一つでもよいが、本実施形態では代表RFIDタグ2Aとの通信が不可能となる確率を下げるため、代表RFIDタグ2Aは図5のようにパレットPの対角線上に一つずつ合計2つ配置し、パレットPがどの向きで第1のアンテナ4Aの前方を通過しても、第1のアンテナ4Aによる代表RFIDタグ2Aからのデータの読取りが可能となるようにした。
【0046】
<アンテナから出力される電波ビームと通信エリアの要件>
本RFID通信システムは、代表RFIDタグ2Aの移動方向を推定検知する時に、第1のアンテナ4Aが代表RFIDタグ2A以外の余計なRFIDタグ(例えばタグ集団2に属するRFIDタグ2Bなど)からデータを読取ることのない、若しくは読取り難い環境を作ることで、代表RFIDタグ2Aの移動方向の推定を可能としている。そのために必要な第1のアンテナ4Aの構成要件(電波ビームの方向性、出力強度、通信エリア)は、以下の要件1〜3を全て満たすことが望ましい。
【0047】
要件1:第1のアンテナ4Aから出力される電波ビームは、図4中の矢印Y1で示すようにタグ集団2に属するRFIDタグ2BのNULLの指向方向に向ける。
【0048】
要件2:第1のアンテナ4Aから出力される電波ビームの出力強度は、パレットPに取り付けられた代表RFIDタグ2Aのみと通信可能なレベルに調整する。
【0049】
要件3:第1のアンテナ4Aの通信エリアは、図4及び図5中の符号Jで示す範囲、すなわちゲートGTを通過する代表RFIDタグ2Aの移動経路に設けられる。
【0050】
第2のアンテナ4Bから出力される電波ビームは、図4中の矢印Y2で示すように、代表RFIDタグ2AのNULLの指向方向に向けられている。また、この第2のアンテナ4Bの通信エリアは、図4及び図6中の符号Kで示す範囲、すなわちゲートGTを通過するタグ集団2全体を漏れなくカバーする範囲とする。
【0051】
<タグ集団と代表RFIDタグとを対応付けるためのシステム構成>
本RFID通信システムにおいては、上述の通りタグ集団2のRFIDタグ2Bから読取ったデータに、推定された代表RFIDタグ2Aの移動方向の情報を付加するが、その前提として、タグ集団2に属するRFIDタグ2Bと代表RFIDタグ2Aとが実際に正しく対応しているかどうか、両者を正確に対応付けるためのシステム構成が必要となる。タグ集団2に属するRFIDタグ2Bを付した個々の荷物5と、代表RFIDタグ2Aを付したパレットPとは物理的に独立しているため、実際に荷物5を載せているパレットPとは別のパレットに付した代表RFIDタグの移動方向が推定されることも想定され、この場合、誤った代表RFIDタグの移動方向が付加されてしまうからである。
【0052】
以上のような不具合を防止し、タグ集団2に属するRFIDタグ2Bと代表RFIDタグ2Aとを正確に対応付けるために必要となるシステム要件は、以下の要件4〜5をすべて満たすものである。
【0053】
要件4:第1のアンテナ4Aの通信エリアJと第2のアンテナ4Bの通信エリアKとを図4のように一部重複させる。
【0054】
要件5:本RFID通信システムでは、後述するように第1のアンテナ4Aによって代表RFIDタグ2Aからデータを複数回読取るが、その読取りの最中に(例えば読取り回数が20回に設定されているならば10回目の読取りが完了した時点)、第2のアンテナ4Bによってタグ集団2の各RFIDタグ2Bから一括してデータを読取る。そして、そのタグ集団2のRFIDタグ2Bから読取ったデータと、代表RFIDタグ2Aから読取ったデータとを一組の対応データとする。
【0055】
<第1、第2のアンテナの概要>
第1のアンテナ4Aは、図11、図12に示すスキャンアンテナSAからなり、図2のようにアンテナケーブルCA1と制御ケーブルCA2とを介して第1のリーダライタ3Aに接続されている。制御ケーブルCA2はスキャンアンテナSAを制御するケーブルであり、この制御ケーブルCA2を介して第1のリーダライタ3AからスキャンアンテナSAへスキャン制御信号が出力される。スキャンアンテナSAは、そのスキャン制御信号によって、外部に送信する電波ビームの方向を所定のスキャン角度で繰り返しスキャンさせる。なお、スキャンアンテナSAの詳細は後述する。
【0056】
第2のアンテナ4Bは、スキャン機能を有しない一般的な公知のRFIDアンテナから構成され、図2のようにアンテナケーブルCA1を介して第2のリーダライタ3Bに接続されている。
【0057】
<タグの詳細>
代表RFIDタグ2Aやタグ集団2に属するRFIDタグ2Bの概略構成は図9に示されている。これらのタグはいずれも、同図のように、タグアンテナ部20と無線通信IC21とを備える構成である。これらのタグとしては、例えば、上述したパッシブタイプやアクティブタイプのものが使用される。
【0058】
タグアンテナ部20は、リーダライタ3からの電波を、無線通信IC21を動作させる電力源として受け取る。また、タグアンテナ部20は、リーダライタ3A又は3Bから受信した電波を無線信号に変換して無線通信IC21に送信するとともに、無線通信IC21からの無線信号を電波に変換してリーダライタ3に送信する。このタグアンテナ部20には、アンテナ、共振回路などが使用される。
【0059】
無線通信IC21は、リーダライタ3A又は3Bからタグアンテナ部20を介して受信した信号に基づいて、リーダライタ3A又は3Bからのデータを記憶したり、記憶されたデータを、タグアンテナ部20を介してリーダライタ3A又は3Bに送信したりする。この無線通信IC21は、図2に示すように、電源部211、無線処理部212、制御部213、メモリ部214を備える構成である。
【0060】
電源部211は、アンテナ部20が電波を受信することにより発生する誘起電圧を整流回路にて整流し、電源回路にて所定の電圧に調整した後、無線通信IC21の各部に供給するものである。電源部211には、ブリッジダイオード、電圧調整用コンデンサなどが使用される。
【0061】
無線処理部212は、タグアンテナ部20を介して受信した無線信号を元の形式に変換する処理と、その変換したデータを制御部213に送信する処理と、制御部213から受信したデータを無線送信に適した形式に変換する処理と、その変換した無線信号を、タグアンテナ部20を介して外部に送信する処理を行なうものである。この無線処理部212には、A/D(Analog to Digital)変換回路、D/A(Digital to Analog)変換回路、変復調回路、RF回路などが使用される。
【0062】
制御部213は、無線通信IC21内における上述した各種構成の動作を統括的に制御するものである。制御部213は、論理演算回路、レジスタなどを備え、コンピュータとして機能する。そして、各種構成の動作制御は、制御プログラムをコンピュータに実行させることによって行なわれる。このプログラムは、例えばメモリ部214のROM(Read Only Memory)などにインストールされたものを読込んで使用する形態であってもよいし、リーダライタ3A又は3Bからタグアンテナ部20および無線処理部212を介して上記プログラムをダウンロードしてメモリ部214にインストールして実行する形態であってもよい。
【0063】
特に、制御部213は、リーダライタ3A又は3Bからタグアンテナ部20および無線処理部212を介して受信したデータに基づいて、リーダライタ3からのデータをメモリ部214に記憶させる処理や、メモリ部214に記憶されたデータを読出して、無線処理部212およびタグアンテナ部20を介してリーダライタ3へ送信させる処理を行なう。
【0064】
メモリ部214は、上記したROMや、SRAM(Static RAM)、FeRAM(強誘電体メモリ)などの半導体メモリによって構成される。このメモリ部214に記憶される内容としては、上記した制御プログラム、およびその他各種のプログラム、ならびにIDなどの各種データが挙げられる。なお、無線通信IC21は、リーダライタ3A又は3Bから送信される電波を電力源としているため、ROMなどの不揮発性メモリや、SRAM、FeRAMなどの消費電力の少ないメモリを使用することが望ましい。
【0065】
<第1、第2のリーダライタと、第1、第2のアンテナの概要>
第1、第2のリーダライタ3A、3Bは、いずれも図2のようにイーサネット(登録商標)ケーブルCA3にてインターネットを介し本RFIDタグ通信システムの上位コンピュータ7に接続されている。
【0066】
第1のリーダライタ3Aでは第1のアンテナ(スキャンアンテナSA)を利用して代表RFIDタグ2Aの移動方向を推定するため、スキャンアンテナSAの制御機能と移動方向の推定機能を有するものとして構成される。
【0067】
第2のリーダライタ2Bとしては、スキャンアンテナSAの制御機能や移動方向の推定機能を持たない一般的なRFIDリーダライタを使用することができる。第2のリーダライタ2Bに接続される第2のアンテナ4Bはスキャン機能がない一般的なRFIDアンテナであり、また、第2のリーダライタ2Bでは移動方向の推定も行わないためである。
【0068】
本実施形態では、アンテナ4A、4Bごとに一つずつ対応させてリーダライタ3A、4Bを設ける構成を採ったが、これらのリーダライタ3A、3Bは一つのリーダライタとして統合してもよい。
【0069】
<第1のリーダライタと第1のアンテナ(スキャンアンテナ)の詳細>
図10は第1のリーダライタの概略構成を示すブロック図、図11は第1のアンテナとして使用されるスキャンアンテナの概要を示す模式図、図12はスキャンアンテナのスキャンの状態を示す模式図、図13はスキャンパターンテーブルを示す図、図14は測定データテーブルを示す図である。
【0070】
なお、図10には、タグ集団に属するRFIDタグ2Aと第1のリーダライタ3AとがスキャンアンテナSA(第1のアンテナ4A)を介して無線通信を行っている状態も併せて模式的に示されている。
【0071】
第1のリーダライタ3Aは外部通信部31、タグ通信制御部32、送信部33、受信部34、スキャンアンテナ制御部35、記録部36、移動方向推定部37を備えており、スキャンアンテナSA(第1のアンテナ4A)を介して代表RFIDタグ2Aと無線通信可能に構成されている。なお、この第1のリーダライタ3Aは移動方向推定部37を具備することによって前述の推定手段50として機能し、代表RFIDタグ2の移動方向の検知処理がなされる。
【0072】
外部通信部31は、リーダライタ3Aにおいて読出された代表RFIDタグ2AのID(Identification)、移動方向推定部37により算出された代表RFIDタグ2Aの移動方向情報、及び代表RFIDタグ2Aへの書込みが成功したか否かを示す情報など、代表RFIDタグ2Aとの通信結果を上位コンピュータ7に送信する。また、外部通信部31は、代表RFIDタグ2Aに対する上位コンピュータ7からの書込み情報(送信コマンド情報)や上位コンピュータ7からのコマンド(命令)を受信するよう構成されている。
【0073】
タグ通信制御部32は、上位コンピュータ7から外部通信部31を介して送信された送信コマンド情報を受信し、送信部33に送信する。また、タグ通信制御部32には、図6に示すスキャンパターンテーブルT1が格納されている。
【0074】
スキャンパターンテーブルT1には、スキャンアンテナSAの各アンテナ素子40A、40B、40Cの電力と位相を定義したデータが含まれており、各アンテナ素子40A、40B、40Cについてそれぞれ定義された電力、位相を電気的に設定することで、スキャンアンテナSAのスキャンパターンが生成される。
【0075】
すなわち、このスキャンパターンテーブルT1により、スキャンアンテナSAのスキャン角が設定される。スキャン角とは、図12に示すように、ブロードサイド方向(アンテナ素子40A、40B、・・・40Kの配列方向に垂直な方向)を基準に測定した電波ビームMの傾斜角である。本実施形態では、図中右回り方向(α)を+値とし、左周り方向(β)を−値としている。なお、このスキャンテーブルT1はスキャン角α、βとテーブルNO.とを関連付けるものとして機能し、このテーブルNO.(0、1)は後述する移動方向判定グラフG(プロットグラフ)における縦軸となる。
【0076】
また、タグ通信制御部32は、スキャンテーブルT1からスキャン角を読出し、読出したスキャン角をスキャンアンテナ制御部35に送信する。ここでは、スキャン角として、αとβのスキャン角がスキャンパターンテーブルT1に設定されているので、タグ通信制御部32は、αとβのスキャン角を順次繰り返しスキャンアンテナ制御部35に対し送信する。タグ通信制御部32は、スキャンアンテナSAが代表RFIDタグ2Aから読取ったIDを受信するとともに、このIDを受信した際のスキャンアンテナSAのスキャン角(αあるいはβ)を、当該ID読取り時のスキャン角として該IDに関連付けした後、記録部36に送信する。なお、スキャン角α、βは、2つに限定されるものではなく、使用者において任意に設定するようにしてもよい。
【0077】
送信部33は、タグ通信制御部32から送信される送信コマンド情報を無線送信に適した形式に変換し、変換した無線信号(送信コマンド)を、スキャンアンテナSAを介して外部に送信するものであり、送信コマンド情報の変調、増幅などの処理を行なう。
【0078】
受信部34は、スキャンアンテナSAを介して受信した無線信号(受信データ)を元の形式に変換し、変換したデータをタグ通信制御部32に送信するものであり、受信データの増幅、復調などの処理を行なう。
【0079】
スキャンアンテナ制御部35は、タグ通信制御部32からスキャン角情報を受信するとともに、受信したスキャン角情報に基づいてスキャン制御信号をスキャンアンテナSAに送信し、スキャンアンテナSAから放射される電波ビームMの方向を制御する。スキャンパターンテーブルT1にはαとβのスキャン角が設定されている。そのため、スキャンアンテナ制御部35では、αとβのスキャン角を、スキャンアンテナSAから放射される電波ビームMが、順次スキャン角α、スキャン角βの方向に向くようにするためのスキャン制御信号に変換し、スキャンアンテナSAに対し送信する処理を行なう。
【0080】
記録部36は、タグ通信制御部32から送信された情報、すなわち、上記のように関連付けされた代表RFIDタグ2AのIDと該ID読取り時のスキャン角(α、β)とを図14に示す測定データテーブルT2に記録するとともに、記録された代表RFIDタグ2AのIDと該ID読取り時のスキャン角情報とを移動方向推定部37に送信する処理を行なう。測定データテーブルT2は、「読取NO.」と、「読取時刻」と、「RFIDタグNO.」と、「テーブルNO.」とから構成されており、これらの項目に該当するデータがスキャンアンテナSAにおいて代表RFIDタグ2AのIDを読取った順番に記録される。
【0081】
測定データテーブルT2中の「読取NO.」は、代表RFIDタグ2AのIDを読取った順番を示し、「読取時刻」は、スキャンアンテナSAが代表RFIDタグ2AからIDを読取ったときの読取時刻であり、読取時刻は記録部36が有する時計により記録される。なお、ここでは、測定データテーブルT2には読取NO.が記録されるとしているが、読取時刻だけで読取った順番は判断できるので、この読取NO.が測定データテーブルT2に記録されないような実施態様も適用し得る。
【0082】
また、「RFIDタグNO.」は、代表RFIDタグ2Aのメモリ部214からスキャンアンテナSAが読取ったIDである。「テーブルNO.(スキャン角)」は、スキャンパターンテーブルT1においてスキャン角α、βに対応付けて設定されたものであり、後述する移動方向判定グラフGにおける縦軸となるものである。なお、本実施形態においては、一つのパレットPに代表RFIDタグ2Aを2つ付しているが、図14では、そのうちの1つの代表RFIDタグ2AからIDを読取った場合を示した。例えば、RFIDタグNO.が「100001」の代表RFIDタグ2Aは、主にスキャンアンテナSAから放射される電波ビームMの方向がスキャン角αのときに読取られている。
【0083】
移動方向推定部37は、測定データテーブルT2に記録された「読取NO.」と「ID」と「テーブルNO.」などの情報を受信するとともに、この受信した情報から後述する移動方向判断処理を行い、その結果算出された移動方向情報とIDとを外部通信部31に送信するように構成されている。
【0084】
スキャンアンテナSAは、図11のように複数のアンテナ素子40を直線状に配列し、各アンテナ素子40に可変位相器(位相器)41を接続した構成である。このアンテナ素子40は直線状配列に限定されるものではなく、2次元配列状に配置してもよい。アンテナ素子40の個数を増やすと、出力する電波ビームMの幅が細くなる。なお、図11では、アンテナ素子40の個数は任意の数としており、同図を参照して以下にスキャンアンテナSAにおけるビーム方向のスキャンの方法について説明する。
【0085】
全てのアンテナ素子40A、40B、・・・40Kが同じ位相で電波を送信する場合には、スキャンアンテナSAから放射される電波はブロードサイド方向(アンテナ素子40A、40B、・・・40Kの配列方向に垂直な方向)の平面波として伝搬する。一方、電波の伝播方向を、ブロードサイド方向から測って角度θ(rad)だけ傾斜させるためには、次式を満たすように各アンテナ素子40A、40B、・・・40Kが送信する電波の位相をずらせばよい。
【0086】
図11に示すように、送信または受信する電波の波長をλ(m)とし、基準となるアンテナ素子40Aとk番目のアンテナ素子40Kとの距離をd(m)とし、図4に破線で示される等位相面のうち、基準となるアンテナ素子40Aを通る等位相面と、k番目のアンテナ素子40Kとの距離をl(m)とすると、基準となるアンテナ素子40Aの位相に対するk番目のアンテナ素子40Kの位相のずれψは次式となる。
【0087】
ψ=(l/λ)×2π=(d×sinθ/λ)×2π
【0088】
このように、スキャンアンテナSAは、各位相器41A、41B、・・・41Kが、上式を満たすように信号の位相をずらすことにより、目的の方向に電波のビームMを向けることができる。一方、電波を受信する場合には、各アンテナ素子40A、40B、・・・40Kの位相のずれを検出することにより、受信した電波の方向を判別することができる。
【0089】
<スキャン処理の詳細>
図15(a)はスキャン処理と移動方向判断処理を示すフローチャート、同図(b)はそのうちの移動方向判断処理を示すフローチャートである。
【0090】
タグ通信制御部32が、外部通信部31を介して、上位コンピュータから送信された送信コマンド情報を受信すると、スキャン処理がスタートする。スキャン処理がスタートすると、タグ通信制御部32がスキャンパターンテーブルT1に基づいてスキャンアンテナSA(第1のアンテナ)に対しスキャン角の情報を送信する。本実施形態ではスキャン角はαとβの2つとしている。
【0091】
具体的には、まず、スキャン角情報として、タグ通信制御部32からスキャンアンテナ制御部35にスキャン角=αが送信されると(S801)、スキャンアンテナ制御部35はスキャンアンテナSAから送信される電波ビームMがスキャン角=αの方向に向くようスキャンアンテナSAにスキャン制御信号を送信する。そのスキャン制御信号を受信したスキャンアンテナSAは、電波ビームMをスキャン角=αに向けて放射する読取り処理を行なう(S802)。この読取り処理の結果から代表RFIDタグ2Aが有るか否かを調べる。すなわち、代表RFIDタグ2AからのIDの読取りがあるか否かを調べ(S803)、IDの読取りが有った場合は(S803のY)、そのIDとスキャン角情報(スキャン角α)とを関連付けて測定データテーブルT2に読取NO.とともに記録する(S804)。そして、スキャン角をβに切り替え、以下同様の処理を所定の間繰り返す。その後、移動方向判定処理に移行する。
【0092】
他方、代表RFIDタグ2Aが無かった場合、すなわち、上記読取り処理を行なった結果代表RFIDタグ2Aからの受信情報がなかった場合、もしくは、正常に代表RFIDタグ2Aからの信号を受信できなかった場合には(S803のN)、スキャン角をβに切り替えて上記(S801〜S804)と同様の処理を行なう(S805〜808)。これらの処理を所定の間繰り返すと、荷物5の移動方向を検知すべく次に移動方向判断処理に移行する。このスキャン処理から移動方向判断処理の移行の時期は、例えば、測定データテーブルT2に代表RFIDタグ2AのIDが最初に記憶されたときから20個目のIDが記録された時点など、IDの記録個数によって決定してもよいし、また、最初のIDを記録した時点から150ms経過時点等、経過時間によって決定してもよく、この移行の時点は予め記録部36に設定しておく、あるいは、上位コンピュータ7から送信されるコマンドとして受け付けても良い。
【0093】
なお、スキャン処理と移動方向判断処理は並列処理であり、移動方向判断処理を行なっているときでも、スキャン処理は繰り返し行なわれている。なお、本実施形態では、高速処理を可能とするため、上記のようにスキャン処理と移動方向判断処理とは並列処理としているが、このように並列処理に限定するものではなく、スキャン処理と移動方向判断処理とが直列的に処理される構成も適用可能である。
【0094】
<移動方向判断処理の詳細>
上記スキャン処理により最初のIDが測定データテーブルT2に記録されてから、所定の時間経過するか若しくは所定回数処理が実行されると、この移動方向判断処理がスタートする。移動方向判断処理がスタートすると、移動方向推定部37により記録部36に記録された測定データテーブルT2の読出しが行なわれ(S810)、読出された測定データテーブルT2は一時的にバッファなどに記憶され、記憶された測定データテーブルT2の情報に基づいて移動方向計算が行なわれる(S811)。
【0095】
移動方向計算は次のようにして行われる。最初に、測定データテーブルT2から読出した情報のうち、「読取NO.」と「テーブルNO.」とから図16(a)に示す第1の移動方向算出テーブルT3を生成する。第1の移動方向算出テーブルT3は、同図16(a)のように「x(読取NO.)」と、「y(テーブルNO.)」と、これらx、yの乗算値「x*y」と、xの2乗値の「x*x」とからなる。
【0096】
そして、上記第1の移動方向算出テーブルT3を用いて第2の移動方向算出テーブルT4を生成する。第2の移動方向算出テーブルT4は、xの第1項(読取NO.1)から第20項(読取NO.20)までの数値の和である「Σx」、yの1行目から20行目までの数値の和である「Σy」、x*yの1行目から20行目までの数値の和である「Σx*y」、xの最終行の読取NO.の値である20とΣx*yとの積である「20*Σx*y」、x*xの1行目から20行目までの数値の和である「Σx*x」、xの最終行の読取NO.の値である20とΣx*xとの積である「20*Σx*x」とからなる。
【0097】
さらに、上記第2の移動方向算出テーブルT4の各値を、下記の移動方向算出式に代入して計算すると、図16(b)に示す0.0639という値が算出される。下記の移動方向算出式により算出された値である傾き値Sは、後述する線形近似直線Lの傾きを求めた値となる。
【0098】
【数1】

【0099】
なお、上記した移動方向計算の説明においては、読取NO.を1〜20、すなわち、スキャンアンテナSAが代表RFIDタグ2Aから20回IDを読取った場合としているが、これに限定されるものではなく、その読取った回数に応じて、上記移動方向計算式のNをその回数として傾きを求めればよい。
【0100】
ここで、この傾き値Sを求めるというのは、データ上、図17に示す移動方向判定グラフGを生成し、このグラフから線形近似直線Lを求め、この求められた線形近似直線Lの傾きを求めることを意味する。具体的には、この移動方向判定グラフGは、テーブルNO.であるyを縦軸にし、読取NO.であるxを横軸にしたxy座標系に、移動方向算出テーブルT3の各xの値、yの値をプロットして生成される。そして、この移動方向判定グラフGから線形近似直線Lを求め、この線形近似直線Lの傾きを算出する。図17に示す線形近似直線Lの傾きが図17中右肩上がりなら傾き値Sはプラスの値になり、他方、左肩上がりなら傾き値Sはマイナスの値となる。そして、予め、この傾き値Sの値がプラスの値なら図3中矢印A方向に、一方、マイナスの値なら図3中矢印B方向に、それぞれ荷物5が移動していると定義づけておけば、この傾き値Sを算出することにより代表RFIDタグ2Aの移動方向が検知可能となる。
【0101】
上記のようにして移動方向計算を行い、その移動方向が推定されると、その算出によって推定された移動方向が、移動方向推定部37から外部通信部31を介して上位コンピュータ7に通知され(S812)、移動方向判断処理が終了する。
【0102】
上記移動方向計算により算出された移動方向の情報、すなわち、傾き値Sがマイナスの値あるいはプラスの値は、例えば、マイナスの値の場合は0、プラスの値の場合は1に変換され、この変換された1、0の情報は、移動方向推定部37に一時的に記憶された測定データテーブルT2の代表RFIDタグ2AのIDに関連付けられ、この関連付けられたIDが外部通信部31を介して上位コンピュータ7に送信される。
【0103】
従って、上位コンピュータ7においては、代表RFIDタグ2Aがどちらの方向に移動しているかを検知することができる。
【0104】
<上位コンピュータの詳細>
図18は、上位コンピュータ7が備える管理テーブルの説明図である。
【0105】
上位コンピュータ7は、第1及び第2のリーダライタ3A、3Bに対し、データ読取り開始のコマンドなど、各種のコマンドを送出する処理や、図18に示す3つの管理テーブルT4、T5、T6を備え、第1及び第2のリーダライタ3A、3Bから受信したデータを該当する管理テーブルT4、T5、T6に格納する処理などを行なう。
【0106】
第1の管理テーブルT4は「荷物ID」、「パレットID」及び「移動方向」からなり、その「荷物ID」欄には、第1のアンテナ4Aによって代表RFIDタグ2Aからデータを複数回読取る最中に第2のアンテナ4Bが一括して読取ったデータ、すなわち、タグ集団2に属する各RFIDタグ2BのIDが格納される。また、「パレットID」欄には、第1のアンテナ4Aによって読取った代表RFIDタグ2AのIDが格納され、「移動方向」欄には、第1のリーダライタ3Aにおいて推定された代表RFIDタグ2Aの移動方向が格納される。
【0107】
第2の管理テーブルT5は「パレットID」と「移動方向」とからなり、その「パレットID」欄には、第1のアンテナ4Aによって読取った代表RFIDタグ2AのIDが格納され、「移動方向」欄には、第1のリーダライタ3Aにおいて推定された代表RFIDタグ2Aの移動方向が格納される。
【0108】
第3の管理テーブルT6は「ID」からなる。本RFID通信システムにおいては、代表RFIDタグ2Aが第1のアンテナ4Aの通信エリアJから出た後に、再度、第2のアンテナ4Bによる一括読取りを行なうが、その一括読取り時に読取ったデータがこの「ID」欄に格納される。
【0109】
図19は、上位コンピュータ7と第1及び第2のリーダライタ3A、3Bとの間でやり取りされるコマンドやデータを示したデータフロー図である。
【0110】
本RFID通信システムでは、上位コンピュータ7から第1のリーダライタ3Aに対してスキャンによる読取り命令のコマンド(図19中矢印1)を送信し、そのコマンドを受信した第1のリーダライタ3Aが第1のアンテナ4A(スキャンアンテナSA)を介して代表RFIDタグ2AからIDを規定回読取る(同図中矢印2)。ここで読取った代表RFIDタグ2AのIDは、第1のリーダライタ3Aから上位コンピュータ7に送信され(同図中矢印3)、第2の管理テーブルT5の「パレットID」欄に格納される。
【0111】
また、本RFID通信システムでは、上位コンピュータ7から第2のリーダライタ3Bに対して一括読取り命令のコマンドC2を送信し(同図中矢印4)、そのコマンドを受信した第2のアンテナ3Bが第2のアンテナ4Bを介してタグ集団2の各RFIDタグ2BからIDを一括して読取る(同図中矢印5)。ここで読取った各RFIDタグ2BのIDは、第2のリーダライタ3Bから上位コンピュータ7に送信され(同図中矢印6)、第1の管理テーブルT4の「荷物ID」欄に格納される。
【0112】
上位コンピュータ7においては、上記のように代表RFIDタグ2AのIDを第2の管理テーブルT5の「パレットID」欄に格納する前に、予め照合の処理を行なうようにしてもよい。照合処理は、例えば、使用されるパレットPのIDを予め上位コンピュータ7に登録しておき、登録されているパレットPのIDと第1のリーダライタ3Aから受信した代表RFIDタグ2AのIDとを照合するようにしてもよく、また、照合の結果、一致しないなどの異常があれば、ユーザインターフェースを通して第1のリーダライタ3Aの設置場所で警告を出力するようにしてもよい。
【0113】
<本RFID通信システム全体の動作説明>
図20は、本RFID通信システム全体の処理の流れを示すフローチャート、図21から図27は、図18の管理テーブルにおけるデータの格納状況の説明図であり、以下、図20のフローチャートを基に本RFID通信システム全体の処理の流れを説明する。
【0114】
なお、以下の説明は、図3、及び図5から図8に示すように、RFIDタグ2Bを付した多数の荷物5が1つのパレットPに載せられてゲートGTを通過する時の処理の流れであり、この処理の流れを以下の説明では本処理という。
【0115】
また、以下の説明においては、第1のアンテナ4Aによるデータの読取り回数は20回とし、第1のアンテナ4Aによる10回目の読取り動作が完了した時点で第2のアンテナ4Bによる一括読取りを行い、その後に、第1のアンテナ4Aによる残り10回の読取り動作が行われるものとする。
【0116】
本処理は、第1のリーダライタ3Aにおいて第1のアンテナ4A(スキャンアンテナSA)による読取りを開始し(図5参照:ST1)、その読取り結果が図14に示す測定データテーブルT1の「代表RFIDタグNO.」欄に格納される。
【0117】
上記ST1において、IDを何も読取らなかった場合、測定データテーブルT1には何も格納されない。一方、図5のようにパレットPがゲートGTを通過し、パレットPに付された代表RFIDタグ2AのIDを読取った場合はそのIDが格納される。また、読取った代表RFIDタグ2AのIDは、第1のリーダライタ3Aから上位コンピュータ7にも送信され、図18に示す第2の管理テーブルT5の「パレットID」欄に格納される(図21参照:ST2)。
【0118】
次に、第1のリーダライタ3Aでは、測定データテーブルT1を参照し、本RFID通信システムの処理開始から過去に一回以上、代表RFIDタグ2AのIDを読取ったか否かを判断する(ST3)。
【0119】
上記ST3において、代表RFIDタグ2AのIDを過去に一回も読取ったことがないならば、ST1〜3の一連の処理を繰り返す(ST3のN)。これは要するに、代表RFIDタグ2Aが見つかるまで、つまり、移動するパレットPに付した代表RFIDタグ2Aが図5のように第1のアンテナ4Aの通信エリアJ内に入って、その代表RFIDタグ2AのIDが第1のアンテナ4Aで読取られるまで、第1のアンテナ4Aによる読取りを行なうことを意味する。
【0120】
一方、上記ST3において、代表RFIDタグ2AのIDを過去一回でも読取ったことがあるならば、次に、その読取り回数が規定回数(10回)に達したか否かを判断する(ST3のY、ST4)。
【0121】
上記ST4において、IDの読取り回数が規定回数(10回)に達していない場合には(ST4のN)、上記ST1〜4の一連の処理を繰り返し、規定回数(10回)に達した場合は(ST4のY)、第1のアンテナ4Aによる読取りを一時中断し、その後直ちに、第2のリーダライタ3Bにおいて第2のアンテナ4Bによる一括読取りを行なう(ST5:図6参照)。これにより、タグ集団2の各RFIDタグ2BからIDが読取られ、読取られた全てのIDが、第2のリーダライタ3Bから上位コンピュータ7へ送信され、図18に示す第1の管理テーブルT4の「荷物ID」欄に格納される(図22参照:ST6)。
【0122】
続いて、上記ST5で中断した第1のアンテナ4Aによる読取りを再開し(図7参照:ST7)、その読取り結果が測定データテーブルT1の「代表RFIDタグNO.」欄に格納される(ST8)。
【0123】
そして、第1のリーダライタ3Aにおいては、測定データテーブルT1を参照し、代表RFIDタグ2AのIDの読取り回数が規定回数(20回)に達したか否かを判断する(ST9)。
【0124】
上記ST9において、IDの読取り回数が規定回数に達していない場合は、上記ST7〜9の処理を繰り返し、規定回数に達したならば、第1のアンテナ4Aによる読取り動作を終了し、移動方向推定処理を行い、代表RFIDタグ2Aの移動方向を推定する。推定された代表RFIDタグ2Aの移動方向は、その代表RFIDタグ2AのIDと一緒に第1のリーダライタ3Aから上位コンピュータ7へ送信される(ST10)。
【0125】
以上説明したST1からST10までの処理は、要するに、第1のアンテナ4Aによって代表RFIDタグ2AからデータとしてIDを20回読取る最中に、第2のアンテナ4Bによってタグ集団2の各RFIDタグ2BからデータとしてIDを一括して読取るものである。
【0126】
次に、上位コンピュータ7では、上記ST10において受信した代表RFIDタグ2Aの移動方向に基づいて入庫か出庫かを判断する。例えば入庫と判断したならば、第2の管理テーブルT5において、受信した代表RFIDタグ2AのIDに対応する「移動方向」欄に“入庫”と記録する(図23参照)。
【0127】
その後、上位コンピュータ7では、上記ST6において第1の管理テーブルT4の「荷物ID」欄に格納したID、すなわちタグ集団2に属する各RFIDタグ2BのIDに、代表RFIDタグ2Aの移動方向の情報を付加する(図24参照)。ここで、その移動方向の情報を基に入出庫の判断をした結果が“入庫”であった場合は、付加する移動方向の情報は“入庫”とし(図24参照)、“出庫”であった場合には、付加する移動方向の情報は“出庫”とする(ST11)。なお、この時点で付加した移動方向の情報“入庫”又は“出庫”は、未だ確定していない。
【0128】
そして、再度、第1のリードライタ3Aにおいて第1のアンテナ4Aによる読取りを開始し(図7参照:ST12)、その読取り結果に基づいてゲートGTの近くにパレットPが存在するか否かを判断する。
【0129】
ここで、第1のアンテナ4Aによって代表RFIDタグ2AのIDを読取ることができた場合は、代表RFIDタグ2Aは第1のアンテナ4Aの通信エリアJ内にあるから、代表RFIDタグ2Aを付したパレットPはゲートGTの近くに存在すると判断する。一方、代表RFIDを読取ることができなかった場合には、その代表RFIDタグ2Aは第1のアンテナ4Aの通信エリアJ外に出ているため、代表RFIDタグ2Aを付したパレットPはゲートGTの近くに存在しないと判断する(ST13)。
【0130】
上記ST13において、パレットPがゲートGTの近くに存在すると判断した場合は、ST12〜13の処理を繰り返すことにより、そのパレットPに付した代表RFIDタグ2AのIDを読取ることができなくなる時を待つ(ST13のY)。
【0131】
一方、上記ST13において、ゲートGTの近くにパレットPは存在しないと判断した場合は、第1のアンテナ4Aによる読取り動作を中止し、その後直ちに、第2のリーダライタ3Bにおいて第2のアンテナ4Bによる一括読取りを行なう(図8参照:ST14)。
【0132】
上記ST14での読取り結果は、第2のリーダライタ3Bから上位コンピュータ7へ送信される。上位コンピュータ7においては、受信した上記ST14での読取り結果を図21に示す第3の管理テーブルT6に格納に格納する(図25参照)。なお、図25では“000003”というIDのRFIDタグ2Bが読取られた場合を示した。そして、この第3の管理テーブルT6と第1の管理テーブルT4とを比較し、これらのテーブルT4、T6の中に一致したIDが存在するか否かを判断する(ST15)。
【0133】
上記ST15において、一致したIDが存在するならば(ST15のY)、その一致したIDのRFIDタグ2Bは“停止”と判定し、第1の管理テーブルT4において、その一致したIDに対応する「移動方向」欄の内容を“停止”と上書きする処理を行う(図26参照:ST16)。
【0134】
このST16での停止の判定は、要するに、タグ集団2に属するRFIDタグ2BのIDとして、上記ST5で読取られ、かつ、上記ST14でも読取られたIDがある場合に、そのIDによって特定されるRFIDタグ2Bを停止と判定するものである。これにより、停止と判定されたRFIDタグ2B以外のRFIDタグ2Bは、代表RFIDタグ2Aと一体的に移動しているものとして観念的に正しく対応付けることができた。
【0135】
なお、停止と判定されたRFIDタグ2Bは、例えばゲートGTを通過するパレットPとは関係なくゲートGTの近くに持って来られた荷物5、又は、移動するパレットPからゲートGTの近くで落下した荷物5(図8参照)に付されているなど、移動するパレットPに付された代表RFIDタグ2Aとは対応しないものである。この対応しないRFIDタグ2Bを除外するため、本RFID通信システムでは、第1の管理テーブルT4上において、上記のように停止と判定されたRFIDタグ2Bについての「移動方向」欄を“停止”と上書きするようにした。この時点でタグ集団2に属するRFIDタグ2Bの移動方向の情報は確定する。
【0136】
次に、上記ST16において、タグ集団2に属するRFIDタグ2Bと代表RFIDタグ2Aとの対応付けができたものだけ、第2の管理テーブルT5の「パレットID」欄に格納されているIDを、第1の管理テーブルT4の「パレットID」欄にコピーして(図27参照:ST17)、本処理を終了する。一方、上記ST15において、一致したIDが存在しない場合は(ST15のN)、上記ST17のコピー処理を行ってから、本処理を終了する。
【0137】
上記ST17におけるコピー処理により、代表RFIDタグ2Aから読取ったID(データ)と、タグ集団2の各RFIDタグ2Bから読取ったID(データ)とが、一組の対応データとして、客観的かつ実体的に正しく対応付けられた(図27参照)。また、第2の管理テーブルT5の「パレットID」欄に格納されているID、すなわちタグ集団2の各RFIDタグ2Bから読取ったID(データ)には、その各RFIDタグ2Bの属性である移動方向の情報として、代表RFIDタグ2Aの属性である移動方向の情報が付加された(図27参照)。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】(a)はタグ対応付けシステムの発明に対応するクレーム対応図、(b)はタグ移動方向検知システムの発明に対応するクレーム対応図。
【図2】本発明に係るタグ対応システムとタグ移動方向検知システムを適用したRFID通信システムの機器構成を示す説明図。
【図3】図2のRFID通信システムを構成する第1及び第2のアンテナの配置と、これらのアンテナの前方を通過するタグ集団を示す斜視図。
【図4】図3のゲートの正面から見たときの各アンテナ、代表RFIDタグ、及びタグ集団に属するRFIDタグの指向方向、通信エリアを示した説明図。
【図5】図3のゲートの上方から見たときの第1のアンテナと代表RFIDタグの指向方向、通信エリアを示した説明図。
【図6】図3のゲートの上方から見たときの第2のアンテナとタグ集団に属するRFIDタグの指向方向、通信エリアを示した説明図。
【図7】中断した第1のアンテナ(スキャンアンテナ)による読取りを再開したときの状態を示した説明図。
【図8】代表タグが第1のアンテナ(スキャンアンテナ)の通信エリアから出た後に行われる第2のアンテナによる一括読取りの状態を示した説明図。
【図9】RFIDタグの概略構成を示すブッロク図。
【図10】リーダライタの概略構成を示すブロック図。
【図11】スキャンアンテナ(第1のアンテナ)の概要を示す模式図。
【図12】スキャンアンテナ(第1のアンテナ)のスキャンの状態を示す模式図。
【図13】スキャンパターンテーブルを示す図。
【図14】測定データテーブルを示す図。
【図15】(a)は、スキャンアンテナ(第1のアンテナ)におけるキャン処理を示すフローチャート、(b)は、移動方向判断処理を示すフローチャートである。
【図16】移動方向算出テーブルを示す図。
【図17】移動方向判定グラフを示す図。
【図18】上位コンピュータ7が備える管理テーブルの説明図。
【図19】RFID通信システム全体の処理の流れを示すフローチャート。
【図20】図18の管理テーブルにおけるデータの格納状況の説明図。
【図21】図18の管理テーブルにおけるデータの格納状況の説明図。
【図22】図18の管理テーブルにおけるデータの格納状況の説明図。
【図23】図18の管理テーブルにおけるデータの格納状況の説明図。
【図24】図18の管理テーブルにおけるデータの格納状況の説明図。
【図25】図18の管理テーブルにおけるデータの格納状況の説明図。
【図26】図18の管理テーブルにおけるデータの格納状況の説明図。
【図27】図18の管理テーブルにおけるデータの格納状況の説明図。
【図28】RFIDタグと指向性の関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0139】
2 タグ集団
2A 代表RFIDタグ
2B タグ集団に属するRFIDタグ
3A 第1のリーダライタ
3B 第2のリーダライタ
32 タグ通信制御部
36 記録部
37 移動方向推定部
4A 第1のアンテナ(スキャンアンテナSA)
4B 第2のアンテナ
40A、40B、・・・40K アンテナ素子
41A、41B、・・・41K 位相器
5 荷物
6 推定手段
7 上位コンピュータ
G 移動方向判定グラフ(プロットグラフ)
GT ゲート
J 第1のアンテナの通信エリア
K 第2のアンテナの通信エリア
SA スキャンアンテナ(第1のアンテナ4A)
T1 スキャンパターンテーブル
T2、T5 測定データテーブル
T3 第1の移動方向算出テーブル
T4 第1の管理テーブル
T5 第2の管理テーブル
T6 第3の管理テーブル
L 線形近似直線
P、P´ プロット
M ビーム
α、β スキャン角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タグ集団に属するRFIDタグと、そのタグ集団の代表として位置づけた代表RFIDタグとを対応付けるシステムであって、
上記システムは、
上記代表RFIDタグからデータを読取る第1のアンテナの通信エリアと、上記タグ集団の各RFIDタグからデータを読取る第2のアンテナの通信エリアとが、一部重複するように設けられ、
上記第1のアンテナによって上記代表RFIDタグからデータを複数回読取る最中に、上記第2のアンテナによって上記タグ集団の各RFIDタグからデータを読取り、
上記代表RFIDタグから読取ったデータと上記タグ集団のRFIDタグから読取ったデータとを一組の対応データとすること
を特徴とするタグ対応付けシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のタグ対応付けシステムにおいて、
上記タグ集団に属するRFIDタグと代表RFIDタグとの対応付けができた場合に、その代表RFIDタグの属性をタグ集団に属するRFIDタグの属性として用いること
を特徴とするタグ対応付けシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のタグ対応付けシステムにおいて、
上記代表RFIDタグの属性である該代表RFIDタグの移動方向の情報を、上記タグ集団に属するRFIDタグの属性である該RFIDタグの移動方向の情報として用いること
を特徴とするタグ対応付けシステム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のタグ対応付けシステムにおいて、
上記タグ集団に属するRFIDタグ及び上記代表RFIDタグは、それぞれNULLの指向方向を持ち、
上記第1のアンテナから出力される電波ビームは、上記タグ集団に属するRFIDタグのNULLの指向方向を向き、
上記第2のアンテナから出力される電波ビームは、上記代表RFIDタグのNULLの指向方向を向くこと
を特徴とするタグ対応付けシステム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のタグ対応付けシステムにおいて、
上記第1のアンテナから出力される電波ビームの出力強度は、上記代表RFIDタグのみと通信可能なレベルに調整されること
を特徴とするタグ対応付けシステム。
【請求項6】
タグ集団に属するRFIDタグと、そのタグ集団の代表として位置づけた代表RFIDタグとを対応付ける方法であって、
上記対応付け方法は、
上記代表RFIDタグからデータを読取る第1のアンテナの通信エリアと上記タグ集団の各RFIDタグからデータを読取る第2のアンテナの通信エリアとを一部重複させ、
上記第1のアンテナによって上記代表RFIDタグからデータを複数回読取る最中に、上記第2のアンテナによって上記タグ集団の各RFIDタグからデータを読取り、
上記代表RFIDタグから読取ったデータと上記タグ集団のRFIDタグから読取ったデータとを一組の対応データとすること
を特徴とするタグ対応付け方法。
【請求項7】
タグ集団に属するRFIDタグの移動方向を検知するシステムであって、
上記システムは、
上記タグ集団の代表として位置づけた代表RFIDタグと、
上記代表RFIDタグの移動経路に向けて電波ビームをスキャンさせ、代表RFIDタグからデータを読取る第1のアンテナと、
上記タグ集団の各RFIDタグから一括してデータを読取る第2のアンテナと、
上記第1のアンテナによって代表RFIDタグから読取ったデータ、その読取時刻、及び読取時のスキャン角度に基づいて代表RFIDタグの移動方向を推定する推定手段とを具備し、
上記タグ集団に属するRFIDタグと代表RFIDタグとの対応付けができた場合に、上記推定手段により推定された代表RFIDタグの移動方向の情報を、上記タグ集団に属するRFIDタグの属性である移動方向の情報として付加すること
を特徴とするタグ移動方向検知システム。
【請求項8】
請求項7に記載のタグ移動方向検知システムにおいて、
上記タグ集団に属するRFIDタグと代表RFIDタグとの対応付けは、
上記第1のアンテナの通信エリアと上記第2のアンテナの通信エリアとが一部重複し、
上記第1のアンテナによって代表RFIDタグからデータを複数回読取る最中に、上記第2のアンテナによってタグ集団の各RFIDタグからデータを一括して読取り、
上記代表RFIDタグから読取ったデータと上記タグ集団の各RFIDタグから読取ったデータとを一組の対応データとするものであること
を特徴とするタグ移動方向検知システム。
【請求項9】
請求項7または8に記載のタグ移動方向検知システムにおいて、
上記タグ集団に属するRFIDタグ及び上記代表RFIDタグは、それぞれNULLの指向方向を持ち、
上記第1のアンテナから出力される電波ビームは、上記タグ集団に属するRFIDタグのNULLの指向方向を向き、
上記第2のアンテナから出力される電波ビームは、上記代表RFIDタグのNULLの指向方向を向くこと
を特徴とするタグ移動方向検知システム。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載のタグ移動方向検知システムにおいて、
上記第1のアンテナから出力される電波ビームの出力強度は、上記代表RFIDタグのみと通信可能なレベルに調整されること
を特徴とするタグ移動方向検知システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公開番号】特開2009−137761(P2009−137761A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197561(P2008−197561)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】