説明

タッチパネル並びにタッチパネル付き表示入力装置

【課題】 タッチパネルの操作面に凹部と凸部との間の段差,境界が明確な凹凸形状を形成すること,微小サイズのキー等に対応する微細な凹凸形状を形成すること,タッチパネルの厚みの拡大を防止すること。
【解決手段】タッチパネルBの積層構造に,付与された電圧等の刺激の程度に応じて膜厚方向に変形する複数のピエゾ素子P(形状変形素子)を含んで構成されるピエゾ基板10を設ける。上記ピエゾ素子Pに電圧を印加すれば,上記ピエゾ素子Pが伸縮してその変化量がそのままタッチパネルの操作面上に凹凸部として現れるため,タッチパネルの操作面に凹凸の差が明確な凹凸形状を形成することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,LCD(液晶ディスプレイ)などの表示画面に配設されるシート状のタッチパネルに関し,特に,上記タッチパネルの操作面上に凹凸形状を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,複写機,駅の券売機,貨幣の自動引き落とし装置(ATM)等に設けられた操作表示部には,その表示画面上に現れるキー(図柄)がタッチ操作された場合に,その位置座標を検出してタッチ操作された位置に応じた情報を入力するタッチキー入力タイプの情報入力装置(以下「タッチパネル装置」と称す)が広く採用されている。
上記タッチパネル装置は,大別して,LCDと該LCDの画面上に配設された透明の平坦シート状のタッチパネルとを備えて構成されている。このタッチパネルにおけるタッチ操作位置の座標検出としては,抵抗膜式,静電容量式,光学方式等の種々の方式が知られている。
ここで,図8の模式断面図を用いて抵抗膜式タッチパネルCの概略構造について簡単に説明する。上記抵抗膜式タッチパネルCは,図示するように,一面にX座標位置を検出するための透明導電膜(透明電極膜)2aが配設された操作面側の電極基板2と,一面にY座標位置を検出するための透明電極膜3aが配設されたLCD貼付面側の電極基板3とを有し,これらの電極基板2,3が互いに上記透明電極膜2a,3aを内側にして所定の隙間dを隔てて対向配置された構造を備え,更に,上記隙間dには上記透明電極膜2a,3aの自然接触を防止するドットスペーサ4が設けられて構成されている。なお,図中の符号5はタッチパネルの端部の隙間をシールするシール剤,符号6は銀電極である。このように構成されることにより,図8の(a)の状態から操作面がタッチ操作されると,図8(b)に示すようにタッチされた位置において上記透明電極膜2aと3aとが接触する。そして,上記透明電極膜2a,3aの抵抗変化からその座標位置が検出される。
【0003】
ところで,上記従来のタッチパネル装置に備えられたタッチパネルは,機械式のスイッチ等と比較すると,画面上の任意の位置にキーを配列させることができる点で優れている。しかし,上記タッチパネルはその操作面が平坦状であるため,タッチ操作時のキーに対する触覚を得られず,操作感覚が無いという点において上記機械式のスイッチ等に劣る。また,操作面上に現れるキーが立体的でないため,視覚的にもキー位置を認識しづらいという問題もある。
一方,特許文献1には,タッチパネルにおいても上記キー操作感覚を得ることを目的として,付与された電気的刺激又は熱的刺激に応じて体積が増減する高分子ゲルからなる高分子ゲル層をタッチパネルに積層させた凹凸形成パネルが開示されている。これによれば,LCD等の表示画面に現れる図柄に対応する位置に凹凸形状を形成することが可能となるため,ある程度のキー操作感覚を得ることができる。
【特許文献1】特開平11−203025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,上記特許文献1に記載の凹凸形成パネルでは,上記高分子ゲル層の所定部分に電気的刺激等を与えた場合,その部分を中心とする周辺部分にも多少なりとも微弱な電気的刺激が伝達されるため,操作面上には上記所定部分を頂部とする末広がり状の凸部が形成されることになる。このように,凹部と凸部との間に明確な境界(段差)が現れないため,利用者が上記凸部に触れたとしても,凹部と凸部との境界を容易に識別することができないという問題がある。
また,上述の如く末広がり状の凸部が形成されるため,微小サイズのキーや配置間隔の狭いキーに対応する微細な凹凸形状を形成することは困難であるという問題もある。
更に,上記凹凸形成パネルは,電気的刺激等を受けた高分子ゲルが,該高分子ゲルが保持された層とは別の層(膨潤液保持層)に保持された膨潤液と化学反応を起こすことにより上記高分子ゲルの体積変化(膨張又は収縮)を来たすよう構成されているが,凹凸形状を形成するために少なくとも2層(高分子ゲル層と膨潤液保持層)を必要とするため,パネルの厚みが大きくなるいう問題がある。
更にまた,上記高分子ゲルの体積は上記膨潤液を吸収(又は排出)することにより膨張(又は収縮)するが,上記膨潤液の吸収の前後における各物質の総体積はほとんど変化しないと考えられるため,たとえ上記高分子ゲルが膨潤液を吸収してその体積が膨張したとしても,吸収された膨潤液が存在していたスペースを埋めるように上記高分子ゲルが膨張する可能性が高く,パネル表面に凹凸形状が明確に現れてこないというおそれがある。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,上記各問題を解決することにあり,即ち,タッチパネルの操作面に凹部と凸部との間の段差,境界が明確な凹凸形状を形成すること,微小サイズのキー等に対応する微細な凹凸形状を形成すること,タッチパネルの厚みの拡大を防止することを実現可能なタッチパネル及びタッチパネル及びタッチパネル付き表示入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は,LCD等の表示手段の表示画面上に配置されるタッチパネルに関し,一面に透明電極膜が配設された一対の電極基板が上記透明電極膜を内側にして所定の隙間を設けて対向配置され,与えられた刺激の程度に応じて膜厚方向に変形する複数の形状変形素子を含んで構成される変形基板が上記一対の電極基板と共に積層されて構成される。
このように,上記形状変形素子を用いることにより,その変化量がそのままタッチパネルの操作面上に凹凸部として現れるため,タッチパネルの操作面に凹凸の差が明確な凹凸形状を形成することが可能となる。これにより,触覚或いは視覚的に凹部と凸部との境界を容易に識別することが可能となる。また,微小サイズの図柄(キー画像等)に対応する凹凸形状を形成することが可能となる。更に,タッチパネルの積層構造中に上記変形基板を1層設けるだけで上記凹凸形状を形成することができるため,タッチパネルの厚みの大幅な拡大を防止することが可能となる。
ここで,上記形状変形素子は,印加された電流や電圧等の電気的信号(刺激の一例)に応じて変形する圧電素子であることが望ましい。この圧電素子としては,例えばピエゾ素子が該当するが,これに限定されることはない。
【0006】
ここで,上記タッチパネルがLCD等の表示手段の表示画面上に配置されることを考慮すれば,該タッチパネルに積層される上記変形基板は略透明に構成することが考えられる。
この場合,上記変形基板は,上記複数の形状変形素子の変形に応じて伸縮する可撓性のある樹脂フィルムで形成されてなるものであることが望ましい。
【0007】
また,上記変形基板が,上記一対の電極基板の表面側に配置(積層)されたものであることが考えられる。例えば,上記一対の電極基板のうち当該タッチパネルの操作面側に配置された電極基板の表面側に上記変形基板が配置された場合は,上記変形基板の変形がダイレクトに指先等に伝わるため好ましい。このとき,上記変形基板が上記一対の電極基板のうち当該タッチパネルの操作面側に配置された電極基板と一体に形成されてなることが望ましい。これにより,上記変形基板の層厚分だけ上記タッチパネルの厚みを縮小させることができる。
【0008】
また本発明は,画像を表示する表示手段の表示画面上に配置された上述のタッチパネルと,上記タッチパネルが具備する上記複数の形状変形素子それぞれに所定の変形量に応じた刺激を与える刺激付加手段とを有して構成されるタッチパネル付き表示入力装置として捉えることもできる。
この場合,上記刺激付加手段が,上記複数の形状変形素子それぞれに電流や電圧等の電気的信号を供給して刺激を与えるものであることが考えられる。
また,上記刺激付加手段が,上記表示手段の表示画面上に表示される複数の図柄の配置間隔及び/又は各図柄の面積に応じた刺激を上記複数の形状変形素子それぞれに与えるものであることが望ましい。上記配置間隔如何によっては,表示画面上に現れる凹凸形状の高さが同じであっても,例えば上記配置間隔が広い場合は隣り合う図柄間の凹凸形状を明確に区別することができるが,上記配置間隔が狭い場合は,図柄間の凹凸形状を明確に区別できない場合が生じ得る。そのため,上記図柄の配置間隔に応じた刺激が上記形状変形素子に付与されるようにすることで,例えば,上記配置間隔が狭い場合は付加する刺激量を自動的に増加させて,形成される凸部を際立たせることが可能となる。上記配置間隔が広い場合は刺激量が自動的に減少される。
また,各図柄の面積如何によっても,隣り合う図柄間の凹凸形状を明確に区別することができない場合があるため,各図柄の面積に応じた刺激を上記形状変形素子に付与するよう構成することも考えられる。例えば,面積の大きい図柄に対しては刺激量を増加させ,面積の小さな図柄に対しては刺激量を減少させることにより,図柄間の凹凸形状を容易に区別することが可能となる。
もちろん,上記図柄間隔及び各図柄の面積の双方を考慮した刺激量を上記形状変形素子に付与するようにしてもかまわない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば,上記複数の形状変形素子を有する変形基板が設けられているため,上記複数の形状変形素子それぞれに所定の変形量に応じた刺激を与えることにより,上記形状変形素子の変化量がそのままタッチパネルの操作面上に凹凸部として現れる。したがって,タッチパネルの操作面上に凹凸の差が明確な凹凸形状を形成することが可能となる。これにより,触覚或いは視覚的に凹部と凸部との境界を容易に識別することが可能となる。また,微小サイズの図柄に対応する凹凸形状を形成することが可能となる。更に,タッチパネルの積層構造中に上記変形基板を一層設けるだけで上記凹凸形状が形成されるため,タッチパネルの厚みの拡大を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下,添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態及び実施例について説明し,本発明の理解に供する。なお,以下に説明する実施の形態及び実施例は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施の形態に係るタッチパネル付き表示入力装置の一例である表示入力装置Aの概略構成を示すブロック図,図2はタッチパネルに積層されるピエゾ素子アレイ基板(以下「ピエゾ基板」と称す)を示す模式図,図3はピエゾ素子の構成を示す模式図,図4はピエゾ素子に対する重み係数及び該重み係数に応じてピエゾ素子に供給される電圧の一例を示す図,図5は図4に示す電圧がピエゾ素子に印加されたときのタッチパネルの断面形状を示す模式図,図6及び図7はLCDに表示される表示画像の一例を示す図,図8は従来の抵抗膜式タッチパネルCの概略構造を示す模式断面図である。
まず,図1を用いて上記表示入力装置Aの概略構成について説明する。なお,上記表示入力装置Aは,複写機などの画像形成装置や自動券売機,自動引き落とし装置(ATM),車載用カーナビゲーションシステム,PDA,パーソナルコンピュータ等に備えられた操作表示部に適用される。
図1に示すように,上記表示入力装置Aは大別すると,LCD(液晶表示ディスプレイ)7と,該LCD7の表示画面上に貼り付けられたタッチパネルBと,上記LCD7及び上記タッチパネルBを統括的に制御する制御ユニット20とを備えて構成される。
【0011】
上記タッチパネルBは,いわゆる抵抗膜式のタッチパネルであって,一面にX座標位置を検出するための透明電極膜2aが配設された電極基板2と,一面にY座標位置を検出するための透明電極膜3aが配設された電極基板3とを有し,これらの電極基板2,3が互いに上記透明電極膜2a,3aを内側にしてドットスペーサ4を介して所定の隙間dを設けて対向配置されたタッチパネル本体8と,該タッチパネル本体8のLCD貼付側の面に上記電極基板2,3と共に積層された変形基板の一例であるピエゾ素子アレイ基板(以下「ピエゾ基板」と称す)10とを備えて構成される。
上記電極基板2,3はPETフィルム等の透明樹脂からなる薄膜シートの一面に,透明導電物質であるITO(インジウム錫酸化物)が成膜されている。このITO成膜が上記透明電極膜2a,3aに該当する。
上記タッチパネル本体8は,従来のタッチパネルに相当するものであり,前記した抵抗膜式タッチパネルC(図8参照)と略同様に構成されている。そのため,上記タッチパネル本体8についての詳細な説明は省略する。なお,本実施の形態では,上記タッチパネルBを抵抗膜式のタッチパネルとして説明するが,言うまでもなく前記した他の座標検出方式(静電容量式,光学式)のタッチパネルにも本発明は適用可能である。
【0012】
上記ピエゾ基板10は,図2に示すように,PETフィルム等の透明樹脂からなるシート状部材11と,該シート状部材11に適宜埋設された複数のピエゾ素子P(形状変形素子の一例)とを備えて構成される。なお,便宜上,図2では方形のピエゾ素子を示しているが,もちろんこのような形状に限定されることはない。
上記ピエゾ素子Pは上記シート状部材11のX座標方向及びY座標方向に整然と配列されており,具体的には上記シート状部材11上に格子状に配列されている。なお,説明の便宜上,図2には比較的大形のピエゾ素子が表されているが,上記ピエゾ基板10には透光性を持たせる必要があるため,実際は微小なピエゾ素子が配列される。そのため,上記ピエゾ基板10は上記LCD7に表示された画像を透視可能な程度の透明性を有する。
また,上記ピエゾ基板10に配列されるピエゾ素子の数は,上記タッチパネルBの操作面の面積や凹凸形状を付ける図柄の形状等により適宜決定されるが,上記ピエゾ基板10の透明性を損なわない程度とする必要がある。もちろん,上記ピエゾ素子が透明素材からなるものであればピエゾ素子の配列数が極端に制限されることはない。
また,図示するように,上記シート状部材11には上記制御ユニット20(図1)から上記ピエゾ素子Pそれぞれに供給される電流を送給する複数の線路が敷設されている。この複数の線路は図示しないコネクタ等に集約されて後述の制御ユニット20とコネクタ接続される。
なお,上記シート状部材11に埋設されたピエゾ素子Pは,後述するように上記シート状部材11の厚さ方向に変形(伸縮)するため,上記シート状部材11は上記複数のピエゾ素子Pの変形に応じて伸縮する可撓性のある樹脂フィルムであることが好ましい。もちろんこのような条件を具備すれば上記PETフィルムに限定する必要はない。
【0013】
上記ピエゾ素子Pは,周知の如く,電気や電圧などの電気的信号を与えることによりその形状が変化する特性(ピエゾ圧電効果)をもつ物質からなるものであり,別名を圧電素子という。このピエゾ素子Pの素材としては,チタン酸バリウム,チタン酸鉛,チタン酸ジルコン酸鉛などの強誘電体が用いられる。また,鉛(Pb)・ランタン(La)・ジルコン(Zr)・チタン(Ti)を含む酸化物セラミックス(PLZTセラミックス)を含む素材を用いてもよい。
このような素材からなるピエゾ素子においては,典型的には1Vの電圧印加に対して,その変形量は1nm程度(1MVの電圧印加に対して1mm程度)であると言われているが,複数のピエゾ素子を組み合わせるなどすることによりその変形量の拡大を図ることは可能である。
もちろん,上記ピエゾ素子Pの素材が上記チタン酸バリウム等の強誘電体に限定されることはない。例えば,上記ピエゾ素子Pの素材として,イオン導電性高分子・貴金属接合体(Ionic Polymer-Metal Composite,以下「IPMC」と称す)を用いてもよい。このIPMCはフッ素系イオン交換樹脂膜の表面に金や白金などの貴金属を接合したもので,その接合体に対して1〜2V程度の低電圧を加えることで高速にその形状が容易に変形(屈曲)するため,上記チタン酸バリウム等の強誘電体素材に較べれば高電圧を印加する必要がないため実用性が高い。
【0014】
また,上記シート状部材11に配列されたピエゾ素子Pは,該ピエゾ素子Pに電気的信号(電圧)が与えられると上記シート状部材11の膜厚方向に変形するものを採用する。例えば,図3(a)に示すように,電圧が印加された方向に伸縮する強誘電体等の薄膜30を上記シート状部材11の膜厚方向(図中の矢印方向)へ幾重にも積層した円柱状の構造を有するピエゾ素子P′を採用する。各々の薄膜30には,図3(b)に示すように,一方向(図3(b)では下方から上方)に電圧を印加するようにVcc電極及びGND電極が接続されている。このようなピエゾ素子P′であれば,電圧が印加された場合の変形は主として上記シート状部材11の膜厚方向に作用することになる。もちろん,このような構造に限定されることはない。
【0015】
本実施の形態では,電流や電圧等の電気的信号を付与することにより形状が変形するピエゾ素子を形状変形素子の一例として説明するが,例えば,刺激の一例である磁界(磁力)を加えることにより形状の歪み或いは変化を来たす磁歪性を有する物質からなる素子を上記ピエゾ素子に代えて上記形状変形素子の一例として用いることも可能である。なお,特に磁歪性の高いニッケル,コバルト,フェライト(酸化金属セラミックの一種)等の物質からなる素子を用いることが好ましい。
【0016】
このように構成された上記タッチパネルBにおいては,後述する制御ユニット20から上記タッチパネルBが具備する上記複数のピエゾ素子Pそれぞれに対して所定の変形量に応じた電気的信号が与えられることにより,上記ピエゾ素子Pが膜厚方向に変形され,上記タッチパネル本体8が押上げ或いは押し下げられることにより,上記タッチパネルBの操作面上に上記所定の変形量に応じた凹凸形状が形成される。
なお,本実施の形態では,上記タッチパネル本体8のLCD貼付側の面に上記ピエゾ基板10が配設された構造を例示して説明するが,近年のLCDの薄膜化技術の進歩に鑑みれば,上記ピエゾ基板10を上記LCD7の下面に配置させることも考えられる。この場合は,上記タッチパネル本体8及び上記LCD7を上記ピエゾ素子Pにより押上げ或いは押し下げることにより,上記タッチパネルBの操作面上に凹凸形状が形成される。なお,この場合は,上記ピエゾ基板10に透明性を持たせる必要がないため,ピエゾ素子の選択の幅が広まるという点で有利である。
【0017】
ここで,上記制御ユニット20の概略構成について説明する。
図1に示すように,上記制御ユニット20は,画像表示処理部22と,刺激付加手段の一例である凹凸成形処理部23と,位置情報検出部24と,これらの各部を統括的に制御するCPUやROM,EEPROM,RAM等の周辺機器からなる主制御部21とを備えて構成される。上記画像表示処理部22,凹凸成形処理部23,位置情報検出部24は,ASIC等の集積回路で構成されており,上記主制御部21から入力された命令に基づいて各部に応じた後述の処理が実行される。
上記画像表示処理部22では,主制御部21による指示に基づいて上記LCD7に所定の画像情報を表示する処理が実行される。例えば,上記主制御部21から上記LCD7に図6(a)に示すテンキー画像の表示指示がなされると,該テンキー画像を画像表示処理部22内の図示しない記憶部から読み出して,予め定められた表示サイズで表示する処理が実行される。また,上記LCD7に表示された図6(a)に示すテンキー画像を所定の倍率で縮小する旨の指示が上記主制御部21からなされた場合は,該テンキー画像を図7(a)に示すような縮小画像に縮小する処理も行われる。なお,図6(a)及び図7(a)は上記LCD7に表示される画像の一例を示す。
上記位置情報検出部24では,上記タッチパネルBの透明電極膜2a,3aから出力されるX座標位置情報及びY座標位置情報に基づいて,タッチ操作された座標位置を検出すると共に,その検出された座標位置を主制御部21に入力する処理が実行される。これにより,上記主制御部21はタッチ操作が行われた座標位置を認識することができる。
なお,上記画像表示処理部22及び上記位置情報検出部24で実行される処理は従来公知の手法により達成されるものであるため,ここでの詳細な説明は省略する。
【0018】
上記凹凸成形処理部23では,上記画像表示処理部22によって上記LCD7に表示された表示画面中の予め定められた図柄に位置対応するピエゾ素子Pに対して,上記主制御部21から入力された重み係数(制御信号)(図4参照)に応じた電圧を印加する処理が行われる。そのため,上記凹凸成形処理部23は,各ピエゾ素子Pに個別に電圧を供給可能なように回路構成されている。
本実施の形態では,上記ピエゾ素子Pに印加される電圧は上記ピエゾ素子Pの変形量に応じて5段階に分けられており,具体的には下記表1に示すように,上記ピエゾ素子Pの変形量が「小」から「大」に移るにつれて,V(−2),V(−1),V(0),V(1),V(2)に設定されている。また,全てのピエゾ素子Pに対して電圧V(0)を印加させることにより上記タッチパネルBの操作面全域が平坦形状に成形された状態を基準形状として設定している。
また,上記凹凸成形処理部23に上記電圧を印加させるために上記主制御部21から出力される重み係数(−2〜2)を下記表1に示す。
なお,表1に示すような上記各設定に関するデータ(設定情報)や上記重み係数に関するデータ等は,上記凹凸成形処理部23内のROM或いはEEPROM等の記憶部23aにテーブル化して予め記憶させておく。
【表1】

【0019】
ここで,図4及び図5を用いて,実際に上記主制御部21から上記凹凸成形処理部23に重み係数が出力されたときに,上記タッチパネルBの形状がどのように変化するのか,即ち,上記タッチパネルBの操作面上にどのような凹凸形状が形成されるかについて説明する。ここに,図4(a)はピエゾ素子P1〜P10(図2参照)に対する重み係数の一例を示し,図4(b)は(a)の重み係数に応じて上記凹凸成形処理部23から各ピエゾ素子P1〜P10に供給される電圧を示す。また,図5は図4(b)に示す電圧が上記ピエゾ素子P1〜P10に印加されたときの上記タッチパネルBの断面形状を示す。なお,理解を容易にするため,ここでは図2のピエゾ基板10におけるX座標方向のピエゾ素子列L(P1〜P10)に対して図4(a)の重み係数が上記凹凸成形処理部23に入力された場合について説明する。
上記主制御部21から上記ピエゾ素子列Lに対して図4(a)に示す重み係数が入力されると,上記凹凸成形処理部23では入力された重み係数に応じた電圧情報が上記記憶部23aから読み出されて,該電圧情報に応じた電圧が上記ピエゾ素子列Lの各ピエゾ素子P1〜P10に印加される。具体的には,上記ピエゾ素子P1,P6,P10には電圧V(0)が供給され,ピエゾ素子P2,P5には電圧V(1)が供給され,ピエゾ素子P3,P4には電圧V(2)が供給される。またピエゾ素子P7,P9には電圧V(−1)が供給され,ピエゾ素子P8には電圧V(−2)が供給される。
このようにして上記ピエゾ素子P1〜P10それぞれに対してそれぞれに応じた電圧が供給されるため,上記ピエゾ素子は供給された電圧に応じた変形量だけ変形される。これにより,図5に示すように,電圧V(0)が供給されたピエゾ素子P1,P6,P10は上記基本形状が維持され,電圧V(1)が供給されたピエゾ素子P2,P5は上記基本形状から一段突出した凸形状に変形され,電圧V(2)が供給されたピエゾ素子P3,P4は基本形状から二段突出した凸形状に変形される。また,電圧V(−1)が供給されたピエゾ素子P7,P9は基本形状から一段陥没した凹形状に変形され,電圧V(−2)が供給されたピエゾ素子P8は基本形状から二段陥没した凹形状に変形される。そして,これらの変形が上記タッチパネルBの操作面上に現れることになる。これにより,上記タッチパネルBの操作面上に凹凸形状が形成されることになる。
【0020】
上述では上記ピエゾ基板10におけるX座標方向の一のピエゾ素子列L(P1〜P10)を例にとって上記タッチパネルBの操作面上に凹凸形状を形成する手法について説明したが,この手法を用いて図6(a)に示すテンキー画像の各数値画像60〜69(0〜9の数値画像)に対応するピエゾ素子を厚さ大となる方向へ変形させたときに,上記タッチパネルBの操作面上に現れる凹凸形状を図6(b),(c)に示す。
図6(b),(c)に示すように,上記タッチパネルBの操作面上の上記各数値画像60〜69に対応する部分に一段突出した凸形状(網掛け部分)が形成される。なお,図6(b)は,図示する網目の一枡に上記ピエゾ素子Pが一つ配列されている場合に上記各数値画像60〜69に対応する部分が突出された状態を示し,図6(c)は突出部分の操作面上の断面形状を示す。
また,図7(a)に示すような微小なテンキー画像を表示させる場合は,図7(b),(c)に示すように,各数値画像70〜79(0〜9の数値画像)に対応する上記タッチパネルBの操作面上の位置に凸形状(網掛け部分と黒塗り部分)が形成される。ここに,図7(b)は上記各数値画像70〜79に対応する部分が突出された状態を示し,図7(c)は突出部分の操作面上の断面形状を示す。なお,図7(a)に示すテンキー画像は各数値画像の面積が小さく,その配置間隔も狭いため,各数値画像の中央のピエゾ素子に電圧V(2)を供給し,周辺部分のピエゾ素子には電圧V(1)を供給することにより,各数値画像の中央部に二段突出した凸形状(黒塗り部分)を形成させ,周辺部分に一段突出した凸形状(網掛け部分)を形成させている。
【0021】
このように,上記ピエゾ基板10にそれぞれ独立して配列された各ピエゾ素子に対して個別に各ピエゾ素子に応じた電圧が供給されるため,例えば,一のピエゾ素子(例えばピエゾ素子P3(図5))に供給された電圧が該ピエゾ素子に隣接する他のピエゾ素子(例えばピエゾ素子P2,P4(図5))に影響を与えることはない。したがって,図5〜図7に示すように,上記各ピエゾ素子の変化量がそのままタッチパネルBの操作面上に凹凸部として現れることとなり,タッチパネルBの操作面に凹凸の差の明確な凹凸形状が形成される。
また,図7(c)に示される断面形状のように,数値画像70〜79の配置間隔が狭く,各数値画像70〜79の面積が小さい場合は,各数値画像70〜79間の段差や各数値画像70〜79の凹凸形状を明確に区別し得るように,ピエゾ素子の変形量を適宜変更することが可能となる。
【実施例1】
【0022】
上述の実施の形態では,図1に示すように,タッチパネル本体8のLCD7側の面,即ち,電極基板3のLCD7側の表面(即ち図1における電極基板3の下面)に上記ピエゾ基板10が積層(配設)された構造例について説明した。しかしながら,上記ピエゾ基板10の積層位置はこれに限られず,例えば,上記タッチパネル本体8の操作面側,即ち,電極基板2の操作面側の表面(即ち図1における電極基板2の上面)に上記ピエゾ基板10が積層(配設)された構造であってもよい。
上述の実施の形態では,ピエゾ素子Pの変形はタッチパネル本体8を経てその操作面上に凹凸形状として現れるが,この場合は,少なくとも上記タッチパネル本体8の厚みの影響を受けるため,上記タッチパネル本体8の厚み如何によっては,タッチパネルBの表面に凹凸差の明確な凹凸形状が形成されないおそれがある。また,上記電極基板2,3間にドットスペーサ4を設けていたとしても,上記タッチパネル本体8の変形により上記電極基板2,3間が誤接触するおそれもある。しかしながら,本実施例のように,電極基板2の表面に上記ピエゾ基板10を積層させる構造とすることにより,上記タッチパネル本体8の厚みの影響を受けないため,凹凸差のより明確な凹凸形状がタッチパネルBの操作面に形成することが可能となる。また,上記タッチパネル本体8の変形を伴わないため,上記誤接触も防止される。更に,比較的肉厚の厚いタッチパネル本体8を適用することも可能となる。
また,本実施例においては,上記ピエゾ素子Pを上記電極基板2の上記タッチパネル本体8の操作面側の面に直接埋設することにより,上記ピエゾ基板10を上記電極基板2と一体に形成することも可能である。このような構造であれば,上記ピエゾ基板10の厚さ分だけ上記タッチパネルBの厚みを縮小させることができため好適である。
【0023】
また,上述の実施の形態では,LCD7の表面にタッチパネルBが貼り付けられた構成について説明したが,例えば,LCD7の表面を覆う可撓性のある偏向フィルター(不図示)とガラス基板(不図示)との間に上記ピエゾ基板10を組み込み,そして,上記偏向フィルターの表面にタッチパネル本体8を貼り付ける構成であってもよい。なお,上記ガラス基板に代替する他の基板部材が可撓性を有するものであればその背面に,また,LCD7自体が可撓性を有するものであれば該LCD7を構成する複数の薄膜シートや基板の間に,上記ピエゾ基板10を組み込む実施例であっても良い。
更にまた,上記タッチパネルBがLCD7の表面を形成する偏向フィルターと一体に構成された構成も本発明の技術的範囲に属する。
【実施例2】
【0024】
上述の実施の形態に係る表示入力装置Aには,表示手段の一例であるLCD7に表示される図柄をユーザの任意のサイズに変更可能とする機能や,ユーザによる操作や装置の設定により自動的に図柄のサイズが変更される機能等が備えられたものがある。このような機能に基づき,たとえば図6(a)に示すサイズのテンキー画像を図7(a)に示す縮小されたサイズに変更されると,表示される各数字画像の間隔や面積が縮小されるが,このとき,タッチパネルBの操作面上に形成された凹凸形状の高さが変えられずにそのままに維持されると,各数字画像の間隔や面積が小さいために,数字画像間の凹凸形状を明確に区別できない場合が生じ得る。
したがって,このような場合は,上記LCD7の表示画面上に表示される複数の図柄の配置間隔や,その面積に応じて予め定められた電圧を上記複数のピエゾ素子Pに供給するように上記表示入力装置Aを構成することが好ましい。
本実施例では,例えば,図柄間隔や図柄面積の大小に対応付けられた印加電圧を予め設定し,その設定情報を上記主制御部21内の記憶部に格納しておき,上記LCD7に表示される図柄のサイズ変更指示が入力された場合に,上記主制御部21が変更された後の図柄間隔や図柄面積を画像処理により求め,そして,上記記憶部内の上記設定情報を参照することにより,上記求められた図柄間隔や図柄面積に応じた印加電圧を決定するように本表示入力装置を構成する。
このように構成することにより,図柄の配置間隔や面積に応じた電圧を上記ピエゾ素子Pに供給することができる。これにより,例えば,表示画面が縮小されたことにより,図柄の配置間隔や面積が小さくなった場合は,上記ピエゾ素子Pに供給する電圧が自動的に増加されるため,形成される凸部をより際立たせることが可能となる。なお,反対に,表示画面が拡大されたことにより,図柄の配置間隔や面積が広くなった場合は,供給する電圧が自動的に減少される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係るタッチパネル付き表示入力装置の一例である表示入力装置Aの概略構成を示すブロック図。
【図2】タッチパネルに積層されるピエゾ素子アレイ基板を示す模式図。
【図3】ピエゾ素子の構成を示す模式図。
【図4】ピエゾ素子に対する重み係数及び該重み係数に応じてピエゾ素子に供給される電圧の一例を示す図。
【図5】図4に示す電圧がピエゾ素子に印加されたときのタッチパネルの断面形状を示す模式図。
【図6】LCDに表示される表示画像の一例を示す図。
【図7】LCDに表示される表示画像の他の例を示す図。
【図8】従来の抵抗膜式タッチパネルCの概略構造を示す模式断面図。
【符号の説明】
【0026】
A…表示入力装置(タッチパネル付き表示入力装置の一例)
B…タッチパネル
C…従来の抵抗膜式タッチパネル
P,P′…ピエゾ素子
2,3…電極基板
2a,3a…透明電極膜
4…ドットスペーサ
5…シール剤
6…銀電極
7…LCD
8…タッチパネル本体
10…ピエゾ基板
11…シート状部材
20…制御ユニット
21…主制御部
22…画像表示処理部
23…凹凸成形処理部(刺激付加手段の一例)
24…位置情報検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示手段の表示画面上に配置され,一面に透明電極膜が配設された一対の電極基板が上記透明電極膜を内側にして所定の隙間を設けて対向配置されてなるタッチパネルであって,
上記一対の電極基板と共に積層され,与えられた刺激の程度に応じて膜厚方向に変形する複数の形状変形素子を含んで構成される変形基板を具備してなることを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
上記形状変形素子が,印加された電気的信号に応じて変形する圧電素子である請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
上記変形基板が略透明である請求項1又は2のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項4】
上記変形基板が,上記複数の形状変形素子の変形に応じて伸縮する可撓性のある樹脂フィルムで形成されてなる請求項1〜3のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項5】
上記変形基板が,上記一対の電極基板の表面側に配設されてなる請求項1〜4のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項6】
上記変形基板が,上記一対の電極基板のうち当該タッチパネルの操作面側に配置された電極基板と一体に形成されてなる請求項1〜5のいずれかに記載のタッチパネル。
【請求項7】
画像を表示する表示手段の表示画面上に配置された上記請求項1〜6のいずれかに記載のタッチパネルと,
上記タッチパネルが具備する上記複数の形状変形素子それぞれに所定の変形量に応じた刺激を与える刺激付加手段と,
を具備してなることを特徴とするタッチパネル付き表示入力装置。
【請求項8】
上記刺激付加手段が,上記複数の形状変形素子それぞれに電気的信号を供給して刺激を与えるものである請求項7に記載のタッチパネル付き表示入力装置。
【請求項9】
上記刺激付加手段が,上記表示手段の表示画面上に表示される複数の図柄の配置間隔及び/又は各図柄の面積に応じた刺激を上記複数の形状変形素子それぞれに与えるものである請求項7又は8のいずれかに記載のタッチパネル付き表示入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−243812(P2006−243812A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54641(P2005−54641)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】