説明

タッチパネル用ハードコートフィルム及びタッチパネル

【課題】干渉縞の発生が抑制され、且つ耐ブロッキング性に優れたタッチパネル用ハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】フィルム基材1の両面にそれぞれハードコート層2,3を積層したタッチパネル用ハードコートフィルムである。上記フィルム基材1の一方の面に積層したハードコート層を第1面ハードコート層2と定義し、他方の面に積層したハードコート層を第2面ハードコート層3と定義した場合に、上記第2面ハードコート層3に樹脂粒子を含有させて第2面ハードコート層3の一方の面に凹凸を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニュートンリングの発生が抑制され、耐ブロッキング性に優れた透明タッチパネル等に用いられるタッチパネル用ハードコートフィルム及びタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CRTやLCDなどの表示装置上に配置され、表示を見ながら指やペン等で押さえることによりデータや指示・命令を入力できる透明タッチパネルが普及している。通常、タッチパネル等の基板としては、プラスチックフィルム上に透明導電膜としてインジウムと錫の複合酸化物(ITO)を成膜した透明導電性ハードコートフィルムが用いられてきた。
【0003】
例えば特許文献1に記載したタッチパネル用プラスチック基板がある。
すなわち、透明タッチパネルは2枚の透明電極層の電極面同士を相対するように配置された構造を有し、その電極間の空間部には誤動作を防ぐ為に少なくとも一方の電極層上に、10μm以下の非導電性のスペーサーを設けて、両者の間隙を一定に保持している。例えば、アナログ式タッチパネルの場合、タッチペンまたは指の押し圧により電極面同士が接触して導通し、位置検出をする構造をとる。タッチパネルに押し圧がかかる場合、上下の電極面同士が平滑であるため、接触する際にニュートンリングが生じるという問題があった。
【0004】
これらに対する技術として、例えば特許文献2〜特許文献4に記載した技術がある。
すなわち、このような用途に利用されるハードコートフィルムにおいては、プラスチックフィルムに含まれるオリゴマーの析出による白化や不透明化を防いだり、フィルムの収縮による反りを防ぐなどの目的で、透明基材のハードコート層とは反対側にシロキサン系樹脂などからなる背面コート層を設けることがよく行われている
【0005】
しかるに、上記の背面コート層を設けてオリゴマーの析出防止などの効果を得るには、100nm以上のかなりの厚さにする必要があるが、この場合、ハードコートフィルムを重ね合わせたり巻回して保存・運搬する際にハードコート層と背面コート層とが貼り付いてしまう、耐ブロッキング性の問題を生じるという問題があった。
また、透明導電性ハードコートフィルムを用いた透明タッチパネルには、熱可塑性樹脂が好ましく用いられているが、一般に熱可塑性樹脂からなるプラスチックフィルムは、上記用途での電極パターニング工程、接着工程等で使用される極性溶媒等への耐性が不十分となる場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−190189号公報
【特許文献2】特開2007−70456号公報
【特許文献3】特開平7−13695号公報
【特許文献4】特開平11−34593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の様な問題点に鑑み、干渉縞の発生が抑制され、且つ耐ブロッキング性に優れたタッチパネル用ハードコートフィルム及びタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、フィルム基材の両面にそれぞれハードコート層を積層したタッチパネル用ハードコートフィルムにおいて、上記フィルム基材の一方の面に積層したハードコート層を第1面ハードコート層と定義し、上記フィルム基材の他方の面に積層したハードコート層を第2面ハードコート層と定義した場合に、
上記第2面ハードコート層に樹脂粒子を含有させたことを特徴とするものである。
【0009】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した構成に対し、上記第2面ハードコート層は、JIS K 5400で規定する1kg荷重での鉛筆硬度が2H以上であり、
第1面ハードコート層の鉛筆硬度は、第2面ハードコート層よりも高いことを特徴とするものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2に記載した構成に対し、上記第2面ハードコート層上に透明導電層を形成したことを特徴とするものである。
【0010】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した構成に対し、上記各ハードコート層を形成するハードコート剤は、アクリレートを主成分とするモノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含有することを特徴とするものである。
次に、請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した構成に対し、上記ハードコート剤に含まれるアクリレートを主成分とするモノマーもしくはオリゴマーは、光硬化型アクリレートオリゴマーあるいは光硬化型アクリレートモノマーであることを特徴とするものである。
【0011】
次に、請求項6に記載した発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した構成に対し、上記樹脂粒子の平均粒径は、2μm以上30μm以下であることを特徴とするものである。
次に、請求項7に記載した発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した構成に対し、上記樹脂粒子は、第2面ハードコート層を形成する硬化樹脂に対し0.5質量%以上5質量%以下であることを特徴とするものである。
【0012】
次に、請求項8に記載した発明は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載したハードコートフィルムを用いたことを特徴とするタッチパネルを提供するものである。
なお、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載したハードコートフィルムは、少なくとも指などからの押し圧を受ける側のプラスチック基板として使用すれば良い。
また、本発明のハードコートフィルムは、透明導電層の耐ペン摺動性として(荷重:2.2N)10万回試験前後の抵抗値変化比(R/R0)が1.5以下となるように設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、第2面ハードコート層に樹脂粒子を含有させることで、当該第2面ハードコート層の表面に凹凸を形成する。これによって、ニュートンリングの発生が抑制されると共に耐ブロッキング性も優れたタッチパネル用ハードコートフィルムを提供することが出来る。
なお、第1面ハードコート層に樹脂粒子を含有させない場合には、一方の面側の平滑度が保障される。
【0014】
また請求項2に係る発明によれば、一方の面側の第1面ハードコート層の鉛筆硬度を1kg荷重で2Hよりも高く設定出来る結果、耐ペン摺動性が優れたタッチパネル用ハードコートフィルムを提供することが出来る。
第1面ハードコート層の鉛筆硬度は、1kg荷重で3H以上が好ましい。
また請求項3に係る発明によれば、干渉縞の発生が抑制され、耐ブロッキング性に優れた透明導電性タッチパネル用ハードコートフィルムを提供することが出来る。
また、透明導電層に対する耐ペン摺動性が優れたものとなる。
【0015】
また請求項4に係る発明によれば、上記ハードコート層を確実に形成できる。
また請求項5に係る発明によれば、紫外線硬化性樹脂からなるハードコート層を用いている為、生産性に優れ、透明性への影響度合いも少なく、品質面で向上したハードコート層積層フィルムを提供することができる。
また請求項6に係る発明によれば、樹脂層からの樹脂粒子の脱落を防止しつつ、当該樹脂粒子をブロッキング防止のために樹脂層表面に突出させることが可能となる。
【0016】
また請求項7に係る発明によれば、ハードコート層のヘイズ上昇を抑えつつ、樹脂粒子をブロッキング防止のために樹脂層表面に突出させることが可能となる。
また請求項8に係る発明によれば、以上のような効果を奏するタッチパネルを提供することが出来る。
以上のように、本発明を採用することで、タッチパネル用プラスチック基板(ハードコートフィルム)が押圧されたときに生じるニュートンリングが抑制され、耐ブロッキング性、及び耐ペン摺動性を改善することが出来、さらに紫外線硬化性樹脂からなるハードコート層を用いている為、生産性に優れ、透明性への影響度合いも少なく、品質面で向上したハードコート層積層フィルムからなるタッチパネル用プラスチック基板を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】タッチパネル用ハードコートフィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(構成)
本実施形態のタッチパネル用ハードコートフィルム(以下、タッチパネル用プラスチック基板とも呼ぶ。)は、図1に示すように、熱可塑性樹脂からなるプラスチックフィルム(フィルム基材1)の両面にハードコート層を積層する。上記フィルム基材1の他方の面に積層する第2面ハードコート層3には、樹脂粒子を含有させる。
【0019】
上記樹脂粒子の平均粒径は、2μm以上30μm以下に設定する。また、上記樹脂粒子は、第2面ハードコート層3を形成する硬化樹脂に対し0.5質量%以上5質量%以下とする。
上記第2面ハードコート層3は、JIS K 5400で規定する1kg荷重での鉛筆硬度が2H以上に設定する。また、第1面ハードコート層2の鉛筆硬度は、第2面ハードコート層3よりも高く、例えばJIS K 5400で規定する1kg荷重での鉛筆硬度が2H以上に設定する。そして、上記第2面のハードコート層上に透明導電層4を形成する。
【0020】
上記各ハードコート層2,3を形成するハードコート剤は、アクリレートを主成分とするモノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含有する。例えば、上記ハードコート剤に含まれるアクリレートを主成分とするモノマーもしくはオリゴマーを、光硬化型アクリレートオリゴマーあるいは光硬化型アクリレートモノマーとする。
【0021】
ここで、本実施形態のタッチパネル用プラスチック基板は、JIS K 5400に定める1kg荷重での鉛筆硬度が2H以上のハードコート層を積層することにより、その上に透明導電層4を形成した際の透明導電層4の耐ペン摺動性として(荷重:2.2N)10万回試験前の抵抗値R0、試験後の抵抗値Rの比(R/R0)が1.5以下であることが好ましい。耐ペン摺動性試験前後の抵抗値の変化比(R/R0)が1.5を超えると、正確な位置の検出が難しくなるという問題が発生し、実使用に耐えないおそれがある。
【0022】
(タッチパネルについて)
また、上記ハードコートフィルムを使用した透明タッチパネルは、上記構成の2枚のハードコートフィルムについて、互いの透明電極層の電極面同士を相対するように配置して構成する。なお、電極間の空間部に10μm以下の非導電性のスペーサーを介挿する。もっとも、少なくともタッチペンまたは指で押圧される側のハードコートフィルムに対して、本発明に基づくハードコートフィルムを使用すれば良い。そして例えば、アナログ式タッチパネルの場合、タッチペンまたは指の押し圧により電極面同士が接触して導通し、位置検出をする構造をとる。タッチパネルに押し圧がかかる場合、上下の電極面同士が平滑である場合には、接触する際にニュートンリングが生じる。本実施形態は、これを回避可能である。
【0023】
(フィルム基材1について)
本実施形態に使用するフィルム基材1の厚みは、特に限定はしないが、好ましくは50μm以上500μm以下であり、より好ましくは100μm以上400μm以下である。フィルム基材1は、例えば熱可塑性樹脂からなるプラスチックフィルムを使用する。
プラスチックフィルムは、特に限定されるものではなく、公知のプラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。具体的には、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、セロハン、ナイロンフィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリアセテートフィルム、ポリスチレンフィルム、アクリル系フィルム、耐熱性・エンプラ系フィルム、フッ素樹脂フィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のプラスチックフィルムが挙げられる。
【0024】
(ハードコート層について)
本実施形態に用いられるハードコート剤の主成分のアクリレートとしては、特に限定はしないが、透明導電層4の積層時の温度に耐え、透明性を維持できる樹脂が好ましい。さらに硬化後の機械特性及び透明性、耐薬品性、耐熱性はもちろんのこと、塗布加工時の低粘度化等の諸物性を考慮した場合、具体的には3次元架橋の期待出来る3官能以上のアクリレートを主成分とするモノマーもしくはオリゴマーを架橋して成る紫外線硬化性樹脂が好ましい。3官能以上のアクリレートとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ポリエステルアクリレート等が好ましい。特に好ましいのは、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレートおよびポリエステルアクリレートである。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても構わない。また、これら3官能以上のアクリレートの他にエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、等のいわゆるアクリル系樹脂を併用することが可能である。これらの樹脂は、いずれのコート方法を用いる場合であっても、工業的な製造を考慮すると5分以内で硬化できるものが望ましい。
【0025】
ベースとなる硬化樹脂としては1分子中に少なくとも1個以上の架橋性二重結合を有する化合物が挙げられる。例えば、光硬化型樹脂としては、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリオールアクリレートなどのアクリル系樹脂が好ましい。具体的には、架橋性オリゴマー、単官能または多官能モノマー、光重合開始剤、光開始助剤などを含むものである。
【0026】
架橋性オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のアクリルオリゴマーが好ましい。具体的にはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ポリウレタンのジアクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等がある。
【0027】
単官能または多官能モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル等のアクリルモノマーが好ましい。具体的には2官能の(メタ)アクリル酸エステルとしてはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等がある。3官能の(メタ)アクリル酸エステルとしてはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等がある。4官能の(メタ)アクリル酸エステルとしてはテトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等がある。6官能の(メタ)アクリル酸エステルとしてはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等がある。
【0028】
第2面ハードコート層3に含有させる樹脂粒子は、樹脂から構成される略球状の粒子である。樹脂粒子を構成する樹脂の好適な具体例としては、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂が挙げられる。これらは2種類以上のモノマーが共重合した共重合体であってもよい。これらの中でも樹脂粒子はバインダー樹脂とは異なる樹脂から構成される粒子であることが好ましい。例えばバインダー樹脂がアクリル樹脂である場合、樹脂粒子はポリウレタンから構成されるポリウレタン粒子が好ましい。
【0029】
樹脂粒子の平均粒径は、樹脂層の厚みによって異なってくるので一概にいえないが、下限として2μm以上、より好ましくは5μm以上、上限としては30μm以下、好ましくは15μm以下のものを使用する。樹脂粒子の平均粒径を2μm以上とすることにより、ブロッキング防止性という観点から樹脂層表面に樹脂粒子を突出させることができる。一方、30μm以下とすることにより、樹脂層から樹脂粒子が脱落してしまうのを防止することができる。
【0030】
樹脂粒子の含有量は、硬化樹脂に対し、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましい。5%より大きい場合、ヘイズが上昇していまい外観上問題となる。一方、0.5%より小さい場合、ハードコート層表面の突出部が十分に存在せず、ハードコートフィルムをロール状にした場合、第1面ハードコート層2と第2面ハードコート層3との間でブロッキングが生じる。
【0031】
また、ハードコート層2,3の厚みは、特に限定されないが、透明樹脂基材を介して反対面に存在する透明ハードコート層のカールの強さを考慮した厚みとすることが好ましい。具体的には、ハードコート層2,3の厚みは0.5μm以上15μm以下の範囲が好ましい。また、第1面ハードコート層2の厚みは第2面ハードコート層3より厚いほうが好ましく、これにより接触するときに生じるニュートンリングを更に抑制することができる。 特に、ハードコート層3の厚みは、樹脂層表面に樹脂粒子を突出させてブロッキングを防止するために、樹脂粒子の平均粒径より小さいことが好ましい。具体的には、樹脂粒子の平均粒径を1としたとき、ハードコート層3の厚みを0.5以上0.95以下とすることが好ましい。ハードコート層3の厚みを0.5より小さくした場合、樹脂層からの樹脂粒子の脱落を防止することが出来ないおそれがあるため好ましくない。一方、ハードコート層3の厚みを0.95より大きくした場合、樹脂層表面に樹脂粒子を十分に突出させることができず、ブロッキングを防止することができないため好ましくない。
【0032】
本実施形態において、活性エネルギー線が紫外線である場合には、光増感剤(光重合開始剤)を添加する必要がある。ラジカル発生型の光重合開始剤として、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2、2、−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、などのアセトフェノン類;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4、4−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類及びアゾ化合物などがある。これらは単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン;2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの安息香酸誘導体等の光開始助剤などと組み合わせて使用することができる。
【0033】
上記光重合開始剤の添加量は、主成分のアクリレートに対して0.1質量部以上5質量部以下であり好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。下限値未満ではハードコート層の硬化が不十分となり好ましくない。また、上限値を超える場合は、ハードコート層の黄変を生じたり、耐候性が低下したりするため好ましくない。
光硬化型樹脂を硬化させるのに用いる光は紫外線、電子線、あるいはガンマ線などであり、電子線あるいはガンマ線の場合、必ずしも光重合開始剤や光開始助剤を含有する必要はない。これらの線源としては高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプや加速電子などが使用できる。
【0034】
溶剤については、上記の主成分のアクリレートを溶解するものであれば特に限定しない。具体的には、溶剤として、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、等が挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0035】
(フィルム基材1へのハードコート層2,3の形成方法)
フィルム基材1へのコーティング方法は、特に限定されるものではないが、実用的には、ダイコーター、カーテンフローコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、スピンコーター、マイクログラビアコーター等によるコーティングが一般的である。
【0036】
(透明導電層4の形成方法)
透明導電層4を形成する一般的な方式としては、スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等のPVD法、あるいはCVD法、塗工法、印刷法等がある。なお透明導電層4の形成材としては特に制限されるものではなく、例えば、インジュウム・スズ複合酸化物(ITO)、スズ酸化物、銅、アルミニウム、ニッケル、クロムなどがあげられ、異なる形成材が重ねて形成されてもよい。密着性を向上させるために、上記アンダーコート層と基材フィルムとの間に単一の金属元素または2種以上の金属元素の合金からなる金属層を設ける場合もある。金属層にはシリコン、チタン、錫及び亜鉛からなる群から選ばれた金属を用いることが望ましい。
【実施例】
【0037】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明の有用性について具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、部は特に断りの無い限り質量基準である。
[ハードコート層の作成]
表1に、実施例および比較例で使用されるハードコート層を構成する組成を記載する。
【0038】
【表1】

【0039】
表1に記載した組合せで、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人株式会社製、100μm厚)にワイヤーバーにてフィルム基材1の第1面の塗布、乾燥、紫外線照射を行い、続いて同様の処理で第2面を形成し、フィルム基材1の両面それぞれのハードコート層を作製した。そして、作製したそれぞれのハードコート層のニュートンリング発生の抑制能、耐ブロッキング性能、ペン摺動耐性前後の透明導電層4の抵抗値比(R/R0)を調べた。その結果を、表2及び表3に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
〔評価方法〕
(1)ニュートンリング抑制能試験について
ハードコートフィルムを2枚使用し、ハードコート層面と無機コート層面を密着させて1kg/25cmにて加圧し、その際ニュートンリング発生状況を観察し、評価した。評価基準は、下記のとおりである。
○・・・ニュートンリングは発生していなかった
×・・・ニュートンリングが発生していた
【0043】
(2)耐ブロッキング試験について
ハードコートフィルムを2枚使用し、ハードコート層面と無機コート層面を密着させて1kg/25cmにて加圧し、その際の両層のブロッキングの状態を観察し、評価した。評価基準は、下記のとおりである。
○・・・両層面は密着していなかった
×・・・両層面が密着し貼り付いていた
【0044】
(3)ペン摺動耐性試験について
鉛筆硬度:JIS K 5400に準拠し、1kg荷重で測定した。
リニアリティ測定:サンプルを50mm×70mm角で準備し、長手方向(70mmの方向)に電圧5Vを印可して、サンプルにかかる電圧値を10mm間隔でテスターにより測定した。この測定位置と電圧との関係をグラフに表し、理想電圧値(E)からのずれ(ΔE)を算出して、ΔEが最大値となる測定位置におけるΔEとEの値を用い、下記式によりリニアリティを求めた。
リニアリティ(%)=ΔE(V)/E(V)×100%
【0045】
ポリアセタールペンでの摺動を10万往復する前の状態では、各サンプルともリニアリティは1.0%以下であった。
表2及び表3から分かるように、本発明に基づく実施例は、比較例に比べて、ニュートンリング発生の抑制能、耐ブロッキング性能、ペン摺動耐性ともに優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のハードコートフィルムは、タッチパネル用として上部電極および下部電極として用いることが出来る。
【符号の説明】
【0047】
1 フィルム基材
2 第1面ハードコート層
3 第2面ハードコート層
4 透明導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材の両面にそれぞれハードコート層を積層したタッチパネル用ハードコートフィルムにおいて、上記フィルム基材の一方の面に積層したハードコート層を第1面ハードコート層と定義し、上記フィルム基材の他方の面に積層したハードコート層を第2面ハードコート層と定義した場合に、
上記第2面ハードコート層に樹脂粒子を含有させたことを特徴とするタッチパネル用ハードコートフィルム。
【請求項2】
上記第2面ハードコート層は、JIS K 5400で規定する1kg荷重での鉛筆硬度が2H以上であり、
第1面ハードコート層の鉛筆硬度は、第2面ハードコート層よりも高いことを特徴とする請求項1に記載したタッチパネル用ハードコートフィルム。
【請求項3】
上記第2面ハードコート層側に透明導電層を形成したことを特徴とする請求項2に記載したタッチパネル用ハードコートフィルム。
【請求項4】
上記各ハードコート層を形成するハードコート剤は、アクリレートを主成分とするモノマーもしくはオリゴマーと、光重合開始剤と、紫外線吸収剤とを含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載したタッチパネル用ハードコートフィルム。
【請求項5】
上記ハードコート剤に含まれるアクリレートを主成分とするモノマーもしくはオリゴマーは、光硬化型アクリレートオリゴマーあるいは光硬化型アクリレートモノマーであることを特徴とする請求項4に記載したタッチパネル用ハードコートフィルム。
【請求項6】
上記樹脂粒子の平均粒径は、2μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載したタッチパネル用ハードコートフィルム。
【請求項7】
上記樹脂粒子は、第2面ハードコート層を形成する硬化樹脂に対し0.5質量%以上5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載したタッチパネル用ハードコートフィルム。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載したハードコートフィルムを用いたことを特徴とするタッチパネル。

【図1】
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【公開番号】特開2011−39978(P2011−39978A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189209(P2009−189209)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】