説明

タッチパネル表示装置及びタッチパネルユニット製造方法

【課題】 薄型化が可能なタッチパネル表示装置の構造を提供する。
【解決手段】 画面表示を行う表示ユニット1の前側に設けられ、接触されることで情報の入力が行われるタッチパネルユニット11を備えている。タッチパネルユニット11は、表示ユニット1の前面に全面塗布された透明接着剤17により接着されている。タッチパネルユニット11は、表示ユニット1を覆う状態のガラスパネル12,13を有している。ガラスパネル12,13は、溶出液Lを噴射して自重による加速度より大きな加速度で溶出液を吹き付けて衝撃されることで表面が機械研磨されており、厚さが0.5mm以下であって、表面の最大粗さが0.5μm以下である平坦性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、人の指又はタッチペン等を接触させることで情報の入力を行うタッチパネル表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の指又はタッチペン等を接触させることで情報の入力を行うタッチパネル表示装置は、画面表示を行うディスプレイに情報の入力機能も兼ね備えさせたものというべきもので、金融機関におけるキャッシュディスペンサー、駅の券売機、電子手帳等、多機能のヒューマンインターフェースとして各分野で使用が広がっている。
【0003】
タッチパネル表示装置は、画面表示を行いつつ表面への接触によって情報の入力を行うものと定義できるが、原理的には、幾つかの異なるタイプがある。タッチパネルの代表的なものは、抵抗膜式のものである。抵抗膜式を例にして従来のタッチパネル表示装置について説明する。図12は、抵抗膜式である従来のタッチパネル表示装置の断面概略図である。
【0004】
図12に示すタッチパネル表示装置は、画面表示を行う表示ユニット1と、表示ユニット1の前側に設けられ、接触されることで情報の入力が行われるタッチパネルユニットと11を備えている。表示ユニット1は、液晶ディスプレイの場合が多いが、CRTディスプレイなどが採用されることもある。図12に示す従来例は、液晶ディスプレイの場合であり、一対の液晶基板191,192の間に液晶193を封入した構造となっている。また、タッチパネルユニット11は、一対の透明なパネル194,195を接合部190で接合することで貼り合わせた構造になっており、内部には多数のスペーサ196が封入されている。
【0005】
タッチパネルユニット11において、前面側(操作する者が位置する側)に位置するパネル(以下、前面パネル)194は、厚さ0.2mm程度の薄いものとなっている。前面パネル194は、ガラス製の場合もあるが、PET(ポリエチレンテレフタレート)のような透明樹脂で形成されることもある。前面パネル194は、厚さが薄く柔らかであるため、フィルムないしシートと呼んだ方が適切な場合もある。
【0006】
前面パネル194に対向したパネル(以下、主パネル)195は、強度を確保するため、厚さが1.1mm程度の透明なガラス板となっている。一対のパネル194,195の対向面には、ITO(Indiun Tin Oxide)のような透明導電膜で形成された電極格子197,198が設けられている。前面パネル194をタッチして押圧すると、押圧された箇所では一対のパネル194,195の電極格子197,198が接触して電流が流れる。この電流を検出することで、前面パネル194のどの箇所がタッチされた位置が判ることになる。尚、タッチパネルユニット11は、表示ユニット1に対して端部において固定部199を介して固定されている。
【非特許文献1】河村正行著「よくわかるタッチパネル」(株式会社電波新聞社発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したタッチパネルは、導電膜の光透過性向上などの技術改良が図られ、視認性、操作性などの点で優れたものが多くなってきている。これに伴い、各種の情報機器のヒューマンインターフェースとして普及が進んでいる。そして、携帯電話のような小型の情報機器にも搭載されているが、薄型化の点で課題を抱えている。
【0008】
この課題を、上記抵抗膜式のタッチパネル表示装置を例にして説明する。上述したタッチパネル表示装置において、前面パネルは0.2mm程度のかなり薄いものを使用しているが、主パネルは1.1mm程度と相当程度厚いものとなっている。この主な理由は、機械的強度の確保のためである。タッチパネル表示装置は、指などで押圧して情報の入力を行うものであるため、繰り返しの押圧に耐えられるよう、タッチパネルユニットはある程度の剛性や機械的耐久性を持つ必要がある。このため、主パネルはガラス製であり、1.1mm程度の厚さを持っている。従って、タッチパネルユニット全体としては、厚さが1.6mm程度に達している。
【0009】
このように、従来のタッチパネル表示装置では、タッチパネルユニットの部分で厚さが薄くできていないため、携帯電話のような電子機器では薄型化が要求されているにもかかわらず、全体が厚くなってしまっている。
本願の発明は、このような課題を解決するために為されたものであり、薄型化が可能なタッチパネル表示装置の構造を提供するものであり、薄型化が要求される携帯電話のような電子機器に好適に搭載されるタッチパネル表示装置を提供する意義を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、画面表示を行う表示ユニットと、表示ユニットの前側に設けられ、接触されることで情報の入力が行われるタッチパネルユニットとを備えたタッチパネル表示装置であって、
タッチパネルユニットは、表示ユニットの前面に全面塗布された透明接着剤により接着されており、
タッチパネルユニットは、表示ユニットを覆う状態の少なくとも一枚のガラスパネルを有しており、このガラスパネルは、溶出液を噴射して自重による加速度より大きな加速度で溶出液を吹き付けて衝撃されることで表面が機械研磨されており、厚さが0.5mm以下であって、表面の最大粗さが0.5μm以下である平坦性を有しているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、接触されることで情報の入力が行われるタッチパネル表示装置に用いられ、画像表示を行う表示ユニットの前側に設けられるタッチパネルユニットの製造方法であって、
タッチパネルユニットは、表示ユニットを覆う状態となる少なくとも一枚のガラスパネルを備えるものであり、
溶出液をガラスパネルの表面に向けて噴射して自重による加速度より大きな加速度で溶出液を吹き付けて衝撃されることでガラスパネルの表面を機械研磨することで厚さを0.5mm以下に削減する削減工程を有しており、削減工程における機械研磨により、ガラスパネルの表面の最大粗さを0.5μm以下とするという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項2の構成において、前記溶出液による前記表面の衝撃の際の圧力は、0.5kg/cm〜3.5kg/cmの範囲であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項2又は3の構成において、前記溶出液は、フッ酸であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項2、3又は4の構成において、研磨を始める際の前記ノズルの噴射孔から前記ガラスパネルの表面までの距離は、5mm以上100mm以下となっているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、前記請求項2乃至5いずれかの構成において、前記ノズルの各噴射孔は、前記ガラスパネルの表面と平行な方向に並んで設けられており、
前記機械研磨において、前記複数の噴射孔から噴射された溶出液が、前記ガラスパネルの表面と平行な面で見た際、各噴射孔の並ぶ方向に対して斜めの方向に広がるようにして前記ガラスパネルの表面を衝撃し、前記ノズルの噴射孔に対して前記ガラスパネルを機械的に相対的に移動させ、隣接するノズルから噴射された溶出液の広がりの端部において前記ガラスパネルが重複して溶出液による衝撃を受けるようにすることで、前記ガラスパネルの表面の各点を均一に溶出液により衝撃して研磨を行うという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、前記請求項2記載のタッチパネルユニット製造方法に使用されるガラス研磨機であって、
内部で外面機械研磨処理が行われる処理チャンバーと、
処理チャンバー内の所定位置に前記ガラスパネルを垂直に保持する保持具と、
ガラスパネルの表面の材料を溶出させる溶出液を保持具に保持されたガラスパネルの当該表面に向けて噴射する噴射孔を有するノズルと、
ノズルに溶出液を供給する溶出液供給系と
を備えており、
前記溶出液供給系は、自重による加速度より大きな加速度を付けて溶出液を前記外面に吹き付けて前記外面を衝撃し、衝撃による物理的作用を利用して前記外面を研磨できる圧力で溶出液を前記ノズルに供給するものであり、
さらに、ノズルの噴射孔に対して保持具を機械的に相対的に移動させてガラスパネルの表面の各領域に溶出液が均一に供給されるようにする移動機構を備えているという構成を有する。
【発明の効果】
【0011】
以下に説明する通り、本願の各請求項記載の発明によれば、ガラスパネルの強度を十分に確保しつつ厚さを薄くし且つ表面平坦性を高くできる。このため、薄型化が要求される携帯電話のような電子機器に好適に搭載されるタッチパネル表示装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本願発明の実施形態に係るタッチパネル表示装置の断面概略図である。図1に示すタッチパネル表示装置は、画面表示を行う表示ユニット1と、表示ユニット1の前側に設けられ、接触されることで情報の入力が行われるタッチパネルユニット11とを備えている。
【0013】
表示ユニット1としては、本実施形態では、液晶ディスプレイが想定されており、一対のガラス基板191、192の間に液晶193を封入した構造である。本実施形態では特に薄型の液晶ディスプレイが好適に採用されるが、携帯電話等で採用されているものと同様で良いので、詳細な説明は割愛する。尚、液晶ディスプレイの他、有機ELディスプレイ等でも薄型のものが開発されているので、そのようなものが使用されることもある。
タッチパネルユニット11は、表示ユニット1を覆う少なくとも一枚のガラスパネルを有している。本実施形態では、タッチパネルユニット11は抵抗膜式のものとなっており、一対のガラスパネル12,13を有している。一対のガラスパネル12,13の対向面には、ITOのような透明導電膜で形成された電極格子14,15が設けられている。
【0014】
電極格子14,15は、透明導電膜をスパッタリングのような成膜技術によって作成した後、フォトリソグラフィによってパターニングすることで形成される。電極格子14,15の材料や構造は、従来のタッチパネルユニットと同様で良いので、詳細な説明は割愛する。尚、電極格子14,15の表面に凹凸が形成される場合もある。これは、タッチされた場合、電極格子14,15が接触し易くするためである。
【0015】
一対のガラスパネル12,13は、ホウ珪酸ガラス又はソーダガラス等である。一対のガラスパネル12,13は、弾性を有するスペーサ16を介在させながら、接合部10で接着されることで貼り合わせされている。尚、接合部10における接着には、表示ユニット1による表示エリアに重なる場合等、必要に応じて透明接着剤が使用される。スペーサ16及び貼り合わせについても、従来のガラスパネルユニットと同様で良いので、詳細な説明は割愛する。尚、スペーサは、接合部10に混ぜて設けられる場合もある。
【0016】
本実施形態のタッチパネルユニット11の大きな特徴点の一つは、各ガラスパネル12,13が、必要な強度を保ちつつ、厚さ(図1にt1,t2で示す)が0.5mm以下と薄くなっており、且つ最大粗さ(図1にRmaxで示す)が0.5μm以下という表面平坦性を有している点である。以下、この点について説明する。
前述したように、ガラス板は厚さを薄くするとどうしても強度が低下する。本実施形態では、ある特殊な加工によりガラス板の厚さを削減することで必要な強度と表面の平坦性を確保したものを採用している。
【0017】
図2は、図1に示すガラスパネル12,13を製作する際の加工方法について概略的に示した図である。本実施形態におけるガラスパネル12,13は、溶出液を噴射して自重による加速度より大きな加速度で溶出液を吹き付けて衝撃されることで表面が機械研磨されている。また、より均一に研磨を行うため、ガラスパネル12,13を、溶出液を噴射するノズル4の噴射孔に対して相対的に機械的に移動させながら、噴射された溶出液でガラスパネル12,13を衝撃する。
尚、「機械研磨」とは、吹き付け圧力という溶出液の物理的な作用を利用した研磨であるという意味と、研磨の際にガラスパネル12,13が機械的に移動するという意味とを併せ持つ。「機械的に移動する」とは、「機械を利用して移動する」との意味である。
【0018】
溶出液としては、フッ酸のような強酸が使用される。フッ酸の場合、例えば水100に対して10〜50%程度(体積百分率)に希釈して使用される。衝撃圧力は、貼り合わせガラスパネル12,13の表面上で0.5kg/cm〜3.5kg/cmである。
ノズル4から噴射された溶出液により衝撃された外面は、溶出液に溶かし出され、かつ溶出液の衝撃により流出していく。これにより表面が機械研磨され、ガラスパネル12,13の厚さが薄くなる。
【0019】
このように溶出液を使用した機械研磨によると、ガラスパネル12,13の強度を十分に確保しつつ厚さを薄くし且つ表面平坦性を高くできる。この点について図3を使用して説明する。図3は、溶出液を使用した機械研磨の作用効果について示した図である。
一般にガラスは破損に弱いが、その理由の一つは、表面に存在するマイクロクラックである。ガラス板の製法としては、フロート法が主流であり、ヒュージョン法、ダウンロード法なども実用化されているが、いずれにしても製造されたガラス板の表面には、図3(1)に示すように小さな傷(マイクロクラック)100が多数形成されている。このため、薄い厚さのものを製造すると、どうしても強度が弱くなる。
【0020】
一方、上述したような溶出液を使用した機械研磨加工により厚さを薄くすると、図3(2)に示すように、マイクロクラック100が形成されていた表面層が溶かし出されて除去される。従って、削減後のガラスパネル12,13の表面はマイクロクラックの無い状態となる。従って、厚さが薄くなっても十分な強度が確保される。尚、ガラス板の厚さを薄くする技術としては、リードロー法(熱圧延法)などがあるが、このような方法でも、薄くなったガラス板の表面に依然としてマイクロクラックが形成されているので、十分な強度が確保できない。
【0021】
言い換えると、現状のガラス板の製造方法及びガラス板の削減加工方法においては、本実施形態のような溶出液を使用した機械研磨によらなければ、表面にマイクロクラックが形成されていない状態で、厚さ0.5mm以下、最大粗さ0.5μm以下のガラス板を得ることは不可能である。従って、溶出液を使用した機械研磨法により厚さ0.5mm以下最大粗さ0.5μm以下としたガラス板と、溶出液を使用した機械研磨法によらずに厚さ0.5mm以下最大粗さ0.5μm以下としたガラス板とは、表面にマイクロクラックが形成されているか否かによって明確に峻別できる。
【0022】
また、表面平坦性は、後述するようにノズル4の配置や噴射強度を適宜選定することで確保される。表面平坦性が悪いと、ガラスパネル12,13を光が通過する際に微妙に光が屈折し、これが原因で視認性が悪くなる。つまり、タッチパネル表示装置を見た者にとって、画面にムラがあるように感じられる。本実施形態によれば、最大粗さRmaxが0.5μm以下であるので、このような問題はない。尚、最大粗さが0.1μm以下であるとより好ましく、後述するガラス研磨機を使用すると、0.1μm以下の最大粗さを実現することも可能である。
また、ガラスパネル12,13は、搭載される機器の薄型化の要請に応じて薄ければ薄いほど好ましい。しかし、強度の点から限界があり、材質などにもよるが、厚さの下限は0.1mm程度であり、0.1mm以上の厚さとすることが好ましい。
【0023】
本実施形態のもう一つの大きな特徴点は、上述したタッチパネルユニット11が表示ユニット1に対して全面接着により固定されている点である。即ち、図1に示すように、タッチパネルユニット11と表示ユニット1は、界面の全面に接着材17を付着させた状態で接着されている。
この接着材17としては、表示ユニット1の前面を覆うものであるため、十分な光透過性を有するものが採用される。例えば、協立化学産業株式会社製のXVL−90が使用できる。接着材17の層の厚さは30μm〜100μ程度である。接着材17の層は、必要な接着強度を確保しつつできるだけ薄くすることが好ましく、50μm〜70μmの範囲とすることがより好ましい。
【0024】
このように、タッチパネルユニット11と表示ユニット1とは光透過性接着材17により全面接着されているので、タッチパネルユニット11の強度が高くなっている。図12に示す従来のように、タッチパネルユニット11が表示ユニット1に対して端部において固定部199で固定されていて、両者の間に空洞が形成されている場合、タッチ時の押圧力に耐えるために主パネル195は相当程度厚くしなければならない。一方、本実施形態では、タッチパネルユニット11が表示ユニット1に対して全面接着されているので、主パネルの厚さが薄くなっても十分な耐タッチ強度が確保されている。つまり、タッチの際の押圧力は、表示ユニット1で受けるようになっており、表示ユニット1を機器に対して適切に取り付けることで十分な耐タッチ強度が確保されるようになっている。
【0025】
上記実施形態のタッチパネル表示装置によれば、ガラスパネル12,13が0.5mm以下と非常に薄いので、タッチパネルユニット11全体の厚さも薄くでき、結果的に装置全体の厚さも薄くできる。具体的には、各ガラスパネル12,13の厚さを0.2mmとすると、タッチパネルユニット11の厚さは0.5mm程度となる。そして、表示ユニット1として薄型の液晶ディスプレイを採用すれば、タッチパネル表示装置全体の厚さは例えば1.6mm程度まで薄くできる。このため、携帯電話のような薄型化が要求されている電子機器のヒューマンインターフェースとして好適に採用できる。
【0026】
この際、各ガラスパネル12,13は、溶出液を使用した機械研磨法により削減されているので、表面にマイクロクラックが無く、薄くなっても十分な強度が確保されている。さらに、タッチパネルユニット11と表示ユニット1とは透明接着材17により全面接着されているので、この点でもタッチパネルユニット11の強度が高くなっている。そして、ガラスパネル12,13の最大粗さが0.5μm以下と高いので、表示ムラが無く、視認性の高いタッチパネル表示装置が提供される。
【0027】
次に、抵抗膜式以外のタッチパネル表示装置の実施形態について説明する。図4は、抵抗膜式以外のタッチパネル表示装置の実施形態について示した概略図である。
図4(1)には、静電容量式のタッチパネルユニットの断面概略図が示されている。図4(1)に示すように、静電容量式では、タッチパネルユニットは、ガラスパネル101と、ガラスパネル101の表面に形成された導電膜102と、導電膜102の上に形成された表面膜103とから成っている。表面膜103は、反射防止膜又は防汚膜である。ガラスパネル101の裏面にシールド用の導電膜が形成されることもある。
【0028】
このような静電容量式のタッチパネルでは、ガラスパネル101に沿って低い電界が印加され、タッチした人間の指とガラスパネル101との間に形成されるコンデンサに流れる微弱な充電電流を捉えて情報の入力が行われる。本実施形態のタッチパネルユニットにおいて、ガラスパネル101は、前述した抵抗膜式の主パネルと同様に、溶出液を噴射して自重による加速度より大きな加速度で溶出液を吹き付けて衝撃されることで表面が機械研磨されており、厚さが0.5mm以下であって、表面の最大粗さが0.5μm以下である平坦性を有している。
【0029】
また、図4(2a)には、表面弾性波式のタッチパネルユニットの平面概略図が示され、図4(2b)には、表面弾性波式のタッチパネルユニットの断面概略図が示されている。図4(2a)に示すように、表面弾性波式のタッチパネルユニットは、方形なガラスパネル104の隅にX方向発振子105が設けられ、この隅とは対角の隅にY方向発振子106が設けられる。そして、別の隅にX方向受信子107とY方向受信子108が設けられる。さらに、ガラスパネル104の周縁に沿って反射アレイ109が形成されている。反射アレイ109は、X方向又はY方向に対して45度の各度を持った多数の共振子が並んで配置されたものである。ガラスパネル104の表面には、反射防止や防汚のため表面膜が形成されることがある。
【0030】
各発振子105,106から超音波が発せられると、反射アレイ109を通して伝搬しながら、90度反射して方形の内側方向に向けて伝搬し、ガラスパネル104の表面を弾性波として広がる。ガラスパネル104を指でタッチすると(ガラスパネル104の上に表面膜が形成されている場合にはその表面膜をタッチすると)、表面弾性波が指に吸収され、受信子に届いた表面弾性波は弱いものとなる。その弱い弾性波が届いた時間を計測することで、どこでタッチされたのかが判り、情報の入力が行える。
【0031】
このような表面弾性波式のタッチパネルユニットも、ガラスパネル104は表示ユニットを覆う状態となる。このガラスパネル104は、上記各実施形態と同様、溶出液を噴射して自重による加速度より大きな加速度で溶出液を吹き付けて衝撃されることで表面が機械研磨されており、厚さが0.5mm以下であって、表面の最大粗さが0.5μm以下である平坦性を有している。
【0032】
図4(3)には、光学式のタッチパネルユニットの断面概略図が示されている。光学式のタッチパネルユニットは、ガラスパネル110の縦横の四つの辺のうち縦方向の一辺と横方向の一辺に発光器(通常はLED)111が設け、縦横の他方の辺には受光器112が設けられる。ガラスパネル110の表面をタッチすると、タッチされた位置で光が遮られる。従って、受光器112への光の入射状況からどの位置でタッチされたか判り、これにより情報の入力を行うことができる。
【0033】
本実施形態の光学式タッチパネルユニットでも、ガラスパネル110は表示ユニットを覆う状態となる。そして、このるガラスパネル110は、上記各実施形態と同様、溶出液を噴射して自重による加速度より大きな加速度で溶出液を吹き付けて衝撃されることで表面が機械研磨されており、厚さが0.5mm以下であって、表面の最大粗さが0.5μm以下である平坦性を有している。
【0034】
図4に示した各実施形態の他、タッチペンを使用する電磁誘導式のタッチパネルユニットやタッチ画像をカメラで撮像してタッチ位置を検出する画像認識式のタッチパネルユニットなどが知られている。これらのタッチパネルユニットにおいても表示ユニットを覆う状態となる少なくとも一枚のガラスパネルがあり、このガラスパネルは、溶出液を噴射して自重による加速度より大きな加速度で溶出液を吹き付けて衝撃されることで表面が機械研磨されており、厚さが0.5mm以下であって、表面の最大粗さが0.5μm以下である平坦性を有するものとされる。
【0035】
次に、タッチパネルユニット製造方法の発明の実施形態及びこの方法に使用されるガラス研磨機の発明の実施形態について説明する。以下の説明は、上述したガラスパネルの機械研磨のさらに具体的な説明も含んでいる。
図5は、実施形態に係るタッチパネルユニット製造方法の概略図である。図5に示す方法は、少なくとも一枚の大きなガラス基板を使用してタッチユニット原盤を製作する。タッチユニット原盤とは、製品としてのタッチパネルユニット11の構造をガラス基板の個々の領域に作り込んだものを指しており、切断して個々の領域にすることで複数のタッチパネルユニット11ができあがるものを指している。以下の説明では、一例として、前述したのと同様、抵抗膜式のタッチパネルユニット11を採り上げる。
【0036】
図5に示すように、実施形態のタッチパネルユニット製造方法は、タッチユニット原盤製造工程と、タッチユニット原盤120の外面を溶出液を使用して機械研磨して厚さを削減する削減工程と、タッチユニット原盤120を分断して個々のタッチパネルユニット11を得る分断工程とを含んでいる。
タッチユニット原盤製造工程は、タッチユニット原盤に相当する大きさの一対のガラス基板181,182の表面に電極格子14,15を形成する電極形成工程と、電極格子14,15が形成された一対のガラス基板181,182をスペーサ16を介して貼り合わせる貼り合わせ工程とを含んでいる。
【0037】
電極形成工程は、ITOのような透明導電膜をスパッタリング等の成膜技術によりガラス基板181,182の表面に作成し、フォトリソグラフィによって所定のパターンの電極格子14,15を形成する工程である。貼り合わせ工程では、一対のガラス基板181,182は、電極格子14,15を形成した面を向かい合わせて接着剤により貼り合わされる。貼り合わせの際、向かい合う電極格子14,15が所定の位置関係になるようにし、タッチされた際に機能層として機能するようにする。これらの工程は、従来のタッチパネルユニット11の製造と同様で良い。
【0038】
次に、削減工程について説明する。
図5に示すように、本実施形態のタッチパネルユニット製造方法では、タッチユニット原盤120を組み立てた後にガラスパネル12,13の削減を行う。従って、溶出液Lを噴射しての研磨の対象は、タッチユニット原盤120においては外側の表面(外面)ということになる。
【0039】
図6は、実施形態のガラス研磨機の正面断面概略図、図7は図6に示す装置の側面断面概略図である。図6及び図7に示すガラス研磨機は、内部で機械研磨処理が行われる処理チャンバー2と、処理チャンバー2内の所定位置にタッチユニット原盤120を保持する原盤保持具3と、原盤保持具3に保持されたタッチユニット原盤120の外面に向けて溶出液Lを噴射する位置に設けられたノズル4と、ノズル4に溶出液Lを供給する溶出液供給系5とを備えている。
【0040】
処理チャンバー2には、タッチユニット原盤120を搬入する搬入口21と、機械研磨処理後にタッチユニット原盤120を搬出する搬出口22とを備えている。搬入口21及び搬出口22は、封鎖ゲート23で開閉されるようになっている。尚、開閉は、封鎖ゲート23を搬送方向に垂直な水平方向(図6の紙面垂直方向)に移動させることで行わせる。
この装置は、溶出液が噴射されるタッチユニット原盤120を、ノズル4の噴射孔に対して相対的に機械的に移動させる移動機構を備えている。この移動機構に兼用されるものとして、搬入口21及び搬出口22を通してタッチユニット原盤120を搬送する搬送機構30が設けられている。原盤保持具3は、搬送機構30を構成する部材として設けられている。図8は、図6及び図7に示す装置における原盤保持具3の斜視概略図である。
【0041】
図8に示すように、原盤保持具3は、タッチユニット原盤120をほぼ垂直に立てて保持する部材である。原盤保持具3は、は、水平な姿勢のベース板31と、ベース板31に立設された支柱32と、支柱32に取り付けられた緩衝具33とから主に構成されている。
支柱32は、細長い長方形のベース板31の角の部分にそれぞれ設けられており、計4本設けられている。ベース板31の長辺方向に沿って延びる梁部材34が設けられており、各支柱32の上端をつないで原盤保持具3を補強している。各支柱32は、立てられたタッチユニット原盤120より少し高さが高い。ベース板31の短辺における二本の支柱32の間隔は、タッチユニット原盤120の厚さより少し大きい。ベース板31の長辺方向における二本の支柱32の間隔は、タッチユニット原盤120の長さより少し長い。タッチユニット原盤120は、これらの支柱32で出来た空間に挿入されるようにして保持される。
【0042】
緩衝具33は、タッチユニット原盤120に直接接触する部材であり、タッチユニット原盤120がぐらつかないようにするものである。緩衝具33は、溶出液Lに対して腐食されない(耐薬品性のある)材料で形成されており、例えばテフロン(デュポン社の登録商標)のようなフッ素樹脂で形成されている。
図8に示すように、緩衝具33は、ベース板31の長辺方向の両端において各支柱32の下端をつなぐよう設けられたものと、同じく長辺方向の両端において支柱32の上端をつなぐよう設けられたものからなる。保持されたタッチユニット原盤120は、これらの緩衝具33に各角部が接触する。タッチユニット原盤120の下端角部に接触する下側の緩衝具33は、短辺方向の断面形状が凹状で、長辺方向の断面形状がL字状である。タッチユニット原盤120の上端角部に当接する緩衝具33は、短辺方向の断面形状が横にした凹状である。図8に示すように、タッチユニット原盤120を装着する場合、上から挿入し、各緩衝具33の凹部に落とし込むようにする。
【0043】
搬送機構30としては、例えばラックアンドピニオン機構によるものとされる。ベース板31をラックとし、これに噛み合うピニオン301で搬送機構30は構成される。ピニオンは、搬送ラインに沿って所定間隔で多数設けられる。ピニオン301は、処理チャンバー2内外に配置される。尚、移動する原盤保持具3を全体にガイドするガイド部材が適宜設けられる。
図7に示すように、ノズル4は、原盤保持具3に保持されたタッチユニット原盤120の両側に位置するよう設けられており、タッチユニット原盤120の両側の外面に向けて同時に溶出液Lを噴射させることができるようになっている。図9は、図7に示すノズル4の形状を示した斜視概略図である。
【0044】
図9に示すように、ノズル4は、噴射孔41を有する管状の部材である。図9に示すように、ノズル4は、垂直な方向に延びるよう配置されており、タッチユニット原盤120の長さ方向(搬送方向)に均等間隔をおいて複数並んで設けられている。噴射孔41は、ノズル4のうちタッチユニット原盤120を臨む部分に設けられており、管の延びる方向(垂直方向)に均等間隔をおいて設けられている。尚、ノズル4の構成としては、図9に示すよりもさらに多くの(又は少ない)ものを並べる場合もあるし、水平方向又は斜め方向に沿って複数のノズル4を並べる場合もある。また、ノズル4が管状である必要はなく、板状や他の形状であってもよい。
【0045】
溶出液供給系5は、溶出液Lを溜めた液溜め51と、液溜め51と各ノズル4とをつなぐ配管52と、配管52上に設けられたバルブ53や送液ポンプ54などから構成されている。供給する溶出液Lから不純物やゴミ等を除去するフィルタや調圧用のバルブなどが、必要に応じて設けられる。
溶出液供給系5により各ノズル4に溶出液Lは、各噴射孔41から、原盤保持具3に保持されたタッチユニット原盤120の外面に向けて噴射される。噴射された溶出液Lは、外面を衝撃して溶出し、外面を研磨する。
【0046】
尚、図6に示すように、処理チャンバー2の底部は漏斗状になっており、最下部には、排出孔24が設けられている。排出孔24には、使用済みの溶出液Lを排出する排出管25が接続されている。上記のようにタッチユニット原盤120の材料が溶け込んだ溶出液Lは、処理チャンバー2の底部に落下し、排出孔24及び排出管25を通って排出されるようになっている。
また、処理チャンバー2の内壁面や、処理チャンバー2内の各部材の表面は、溶出液Lに対して耐薬品性の構成となっている。例えば溶出液Lがフッ酸である場合、内壁面や各部材の表面はテフロン(デュポン社の登録商標)のようなフッ素樹脂をコーティングして覆った構成とされる。尚、搬入口21や搬出口22を開閉する封鎖ゲート23は、溶出液Lが漏出しないよう液密に封鎖を行うようになっている。
【0047】
本実施形態の装置は、機械研磨後の外面の平坦性をさらに高めるため、ノズル4の構成に特別の工夫を凝らしている。以下、この点について、図9及び図10を使用して説明する。図10は、各噴射孔41からタッチユニット原盤120の外面に対して溶出液Lが均一に噴射される点を示した概略図である。
図9に示すように、各噴射孔41は、ノズル4の管の延びる方向(垂直方向)に対して斜めの45度の方向に細長い。従って、各噴射孔41から噴射される溶出液Lは、図9に示すように、この斜めの方向に長い錐状(ないしはラッパ状)に広がるようになっている。尚、溶出液Lの各広がりは、タッチユニット原盤120の外面上において重ならないようになっている。タッチユニット原盤120の外面上で溶出液Lの各広がりが重なると、溶出液Lが散乱し、乱流のような不規則な流れが生じやすく、この結果、平坦性の良い研磨がしづらい。このため、重ならないようにする。重ならないようにするには、噴射孔41の寸法、ノズル4とタッチユニット原盤120の距離、噴射圧力等を適宜選定すれば良い。ただし、溶出液Lの各広がりが外面上で重なっても平坦性の良い研磨ができる場合があり、そのようにする場合もあり得る。
【0048】
図10の中ほどに、一つのノズル4の各噴射孔41から噴射される溶出液Lを示す。図10の右側には、タッチユニット原盤120の高さ方向で見た各噴射孔41からの溶出液Lの噴射量の分布を示す。両側のノズル4の間をタッチユニット原盤120が通過する際、タッチユニット原盤120の外面の各点は、いずれかの噴射孔41から噴射された溶出液Lの供給を受ける。この際、上下に隣り合う二つの噴射孔41の丁度中間の位置を臨むようにして通過する外面上の点Pは、その隣り合う二つの噴射孔41から溶出液Lの供給を受けることになる。この場合、この点Pは、推状の溶出液Lの広がりの端部に位置するので、図10の右側に示すように、一つの噴射孔41から受け取る溶出液Lの量は、他の点の1/2程度であり、上下両隣の噴射孔41で一つの噴射孔41分の溶出液Lの供給を受ける。従って、タッチユニット原盤120の高さ方向において、外面の各点での溶出液Lの供給量は均一である。尚、図9に示すような断面形状に溶出液Lが広がる場合だけではなく、楕円状、円状、方形状(正方形、長方形)、菱形状、平行四辺形状等の断面形状で溶出液Lが広がる場合もあり得る。
【0049】
次に、上記ガラス研磨機の動作について説明する。
上述したような電極形成工程及び貼り合わせ工程を経て出来上がったタッチユニット原盤120は、処理チャンバー2外にて原盤保持具3に搭載される。搭載動作は、ロボットにより行われる場合もあるし、作業員の手により行われる場合もある。原盤保持具3への搭載に先立ち、マスキングテープによるマスキングが行われる場合もある。
【0050】
搬送機構30が動作し、搬入口21の封鎖ゲート23が開けられて、原盤保持具3が搬入口21を通って処理チャンバー2内に移動する。原盤保持具3は、両側のノズル4の間の所定の位置にタッチユニット原盤120が位置した時点で停止する。搬入口21の封鎖ゲート23は閉じられる。この状態で、溶出液供給系5のバルブ53が開けられ、送液ポンプ54が所定の圧力で溶出液Lを各ノズル4に送る。この結果、各ノズル4の各噴射孔41から溶出液Lが噴射され、所定の圧力でタッチユニット原盤120の外面を衝撃する。これにより、タッチユニット原盤120の外面が節減される。外面の材料が溶け込んだ溶出液Lは、落下して排出孔24から排出される。
【0051】
溶出液Lの噴射を所定時間行った後、送液ポンプ54を止め、バルブ53を閉める。そして、搬送機構30が動作し、原盤保持具3を移動させ、搬出口22の封鎖ゲート23を開けてタッチユニット原盤120を処理チャンバー2外に搬出する。搬出されたタッチユニット原盤120は、純水等の洗浄液による洗浄やマスキングテープの除去などの作業が行われる。
【0052】
上記ガラス研磨機の動作において、溶出液Lの噴射中に必要に応じてタッチユニット原盤120を変位させることがある。タッチユニット原盤120の外面上の各点のうち、各ノズル4の各噴射孔41に対して最短距離にある点において衝撃圧力が高くなり過ぎる場合、溶出液Lの噴射中にタッチユニット原盤120を前後に移動させることで、時間平均した各点での衝撃圧力を均一にできる。これにより、機械研磨後の外面の平坦性をさらに高めることができる。タッチユニット原盤120の移動は、上下方向に行うこともある。
ガラス研磨機は、全体を制御する不図示の制御部を備える。制御部は、各部をシーケンス制御する機能を含んでおり、上記動作の制御や、衝撃均一化のための原盤保持具3の移動等の制御は、制御部が行うシーケンス制御で達成される。
【0053】
また、上記ガラス研磨機の構成において、送液ポンプ54による送液圧力は、外面の溶出液Lによる衝撃圧力が0.5kg/cm〜3.5kg/cmの範囲になるように設定される。この際、各ノズル4の各噴射孔41と外面との距離(図7にdで示す)は重要な要素である。距離dがあまり大きくなると、送液ポンプ54による送液圧力をかなり高くしなければ、上記範囲内の圧力で外面を衝撃することができなくなってしまい、実用的に難しくなる。また、距離dが小さい場合、衝撃圧力を最適値に保つことは容易となるが、噴射孔41への最短点での衝撃圧力が高くなり過ぎ、均一性の点で問題が生じてくる。衝撃の均一性(即ち、研磨の平坦性)を確保しつつ実用的な構成とするためには、距離dは、5mm以上100mm以下とすることが好ましい。尚、溶出液Lによる研磨が進む過程で噴射孔41から外面までの距離は僅かに長くなるが、5mm以上100mm以下は、研磨を始める際の距離ということである。
【0054】
また、衝撃圧力が0.5kg/cmより小さいと、新鮮な溶出液Lの供給が少なくなるので充分な研磨が行えない他、物理的な作用も充分で無くなるので、ガラスの組成や結晶状態に不均一な箇所が充分研磨できず、平坦性が低下する問題がある。また、衝撃圧力が3.5kg/cmより大きいと、ノズル4の噴射孔41から最短点のみが多く研磨されてしまい、この点で平坦性が悪化する。よって、0.5kg/cm〜3.5kg/cmの範囲の衝撃圧力とすることが好ましい。
【0055】
次に、分断工程について説明する。
分割工程では、機械研磨されたタッチユニット原盤120をダイシング装置を使用して切断する。ダイシング装置としては、液晶ディスプレイの製造などで使用される装置、即ち一枚のガラス基板から複数の液晶ディスプレイを製造する際に使用される装置が転用できる。分断工程の後、テールと呼ばれるコネクタ線を取り付けると、タッチパネルユニットが完成する。
【0056】
尚、テールの取り付けは、貼り合わせ工程の際に行われることもある。即ち、一対のガラス基板の間にテールの先端を所定位置で挿入し、テールの先端を挟み込んだ状態で貼り合わせを行う。この点について、図11を使用して説明する。図11は、一対のガラス基板から四つのタッチパネルユニット11を製造する例について示した概略図である。この例のように、一対のガラス基板181,182を貼り合わせる際、図11に示すようにテール140の先端を所定位置で挟み込むようにする。この場合、テール140が取り付けられた状態で削減工程が行われるので、テール140に溶出液がかからないようにマスキングがされる。その後、分断工程を経て、四つのタッチパネルユニットが完成する。
【0057】
上述した製造方法では、例えば厚さ1mm程度のガラス基板181.182が用意され、貼り合わせの後の削減工程で、ガラス基板181,182の厚さは0.1〜0.2mm程度まで薄くされる。従って、出来上がったタッチパネルユニットは従来に比べて薄いものになり、携帯電話等のような薄型の電子機器に好適に搭載される。そして、タッチパネルユニットは、薄くなってもガラスパネルの表面にマイクロクラックが無いので、十分な強度が確保される。
【0058】
また、上述した製造方法では、タッチユニット原盤120の外面の材料を溶出させる溶出液Lを外面に向けて噴射することで自重による加速度より大きな加速度を付けて溶出液Lを外面に吹き付けて外面を衝撃し、溶出液Lによる衝撃という物理的作用を利用して外面を機械研磨しているので、新鮮な溶出液Lが次々に供給される他、外面の材料が溶け込んだ溶出液Lが衝撃により次々に流出していくので、効率よく且つ均一性よく機械研磨が行える。外面のガラスの組成や結晶状態に不均一な箇所があっても、物理的作用を併用しているため、充分均一に機械研磨が行える。このため、機械研磨後の外面の平坦性を高くでき、産出されるタッチパネルユニットの視認性も高いものとなる。
【0059】
また、上記ガラス研磨機によれば、溶出液Lの化学的な作用に加え衝撃という物理的な作用も利用して外面の研磨が行われるので平坦性の高い研磨が行える上、タッチユニット原盤120の搬送と機械研磨処理が自動化されているので、生産性も高い。
また、ノズル4の各噴射孔41が均等間隔をおいて設けられており、各噴射孔41から外面までの距離は一定であるので、噴射される溶出液Lによる衝撃圧力を均一させることが容易で、この点で平坦性の高い研磨処理に貢献できる。
【0060】
また、タッチユニット原盤120が垂直に保持された状態で溶出が行われる点は、外面での溶出液Lの置換を促進させる効果があり、外面機械研磨が充分に効率的に行えるようにする技術的意義がある。
さらに、ノズル4がタッチユニット原盤120の両側に設けられていて、両方の外面を同時に機械研磨できるので、タッチユニット原盤120の薄型化により貢献できる他、生産性も高い。
尚、タッチユニット原盤120の両側において、溶出液Lによる衝撃圧力が異なるようにする場合もある。すなわち、片側において噴射圧力を高くし、片側において噴射圧力を低くする場合があり得る。これは、タッチユニット原盤120の外面のうち片側の面での削減量を多くし、もう片方の側での削減量を少なくしたい場合にあり得る。
また、上述した溶出液Lを使用した機械研磨は、液晶ディスプレイのようなフラットパネルディスプレイを製造する場合にも応用することができる。即ち、貼り合わせたディスプレイ用のガラスパネルの外面を機械研磨して削減する場合も同様に行える。この際にも、両側の外面を同時に機械研磨して削減するとともに、互いに異なる噴射圧力で削減を行うようにすることがあり得る。
【0061】
上記各実施形態の構成において、溶出液Lによる外面の研磨は、溶出液による衝撃の物理的作用を利用するものであって、エッチング液に浸漬したりエッチング液を散布したりするだけのエッチングとは本質的に異なる。
また、上記実施形態の装置では、搬送機構30が移動機構に兼用されたが、搬送機構30とは別に移動機構を設けても良い。例えば、原盤保持具3を移動機構の一部として設け、搬送機構30で搬送されたタッチユニット原盤120を原盤保持具に移載して移動させるようにする場合もある。尚、「相対的に移動」とは、タッチユニット原盤120とノズル4の噴射孔41の位置関係が変化するよう移動するとの趣旨であり、上記実施形態のように静止したノズル4の噴射孔41に対してタッチユニット原盤120が移動してもよく、静止したタッチユニット原盤120に対して噴射孔41が移動しても良く、また両者が移動する場合もあり得る。
【0062】
上記実施形態では、抵抗膜式のタッチパネルユニットにおいて、スペーサ16の両側のパネル12,13が両者ともガラス製であったが、従来の技術で説明したような前面パネルがPETのようなプラスチック製で主パネルのみがガラス製であっても、同様に実施できる。この場合は、一枚の大きなプラスチック基板と、同様の大きさのガラス基板を使用して同様に機能層を形成する。そして、貼り合わせの後、ガラス基板についてのみ機械研磨を行う。機械研磨の際、溶出液がプラスチック基板にかかると問題であれば、マスキングを行う。
【0063】
上述した実施形態のタッチパネルユニット製造方法では、削減工程の後に分断工程を行ったが、分断工程の後、削減工程を行っても良い。この場合、分断された個々のタッチパネルユニットごとに削減工程を行うことになる。但し、これに比べると、タッチユニット原盤において一括して削減工程をする前記実施形態の方が生産性が高い。
また、上述したタッチパネルユニット製造方法の実施形態では、一対のガラスパネルを貼り合わせた後に削減工程を行ったが、貼り合わせる前に削減工程を行っても良い。この場合、ガラス基板を機械研磨して所定の厚さに削減してから電極格子の形成を行っても良いし、電極格子の形成後に削減工程を行っても良い。電極格子の形成後に削減工程を行う場合には、形成された電極格子に溶出液がかからないようマスキングされることが好ましい。
【0064】
また、上記実施形態のタッチパネルユニット製造方法の実施形態では、抵抗膜式のタッチパネルユニットを製造したが、静電容量式、表面弾性波式、光学式等、他の方式のタッチパネルユニットについても、表示ユニットを覆う少なくとも一枚のガラスパネルを備えるものである限り、同様に製造することができる。即ち、上述したガラス研磨機を使用してガラスパネルを研磨する工程を含むようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本願発明の実施形態に係るタッチパネル表示装置の断面概略図である。
【図2】図1に示すガラスパネル12,13を製作する際の加工方法について概略的に示した図である。
【図3】溶出液を使用した機械研磨の作用効果について示した図である。
【図4】抵抗膜式以外のタッチパネル表示装置の実施形態について示した概略図である。
【図5】実施形態に係るタッチパネルユニット製造方法の概略図である。
【図6】実施形態のガラス研磨機の正面断面概略図である。
【図7】図6に示すガラス研磨機の側面断面概略図である。
【図8】図6及び図7に示す装置における原盤保持具3の斜視概略図である。
【図9】図7に示すノズル4の形状を示した斜視概略図である。
【図10】各噴射孔41からタッチユニット原盤120の外面に対して溶出液Lが均一に噴射される点を示した概略図である。
【図11】一対のガラス基板から四つのタッチパネルユニットを製造する例について示した概略図である。
【図12】抵抗膜式である従来のタッチパネル表示装置の断面概略図である。
【符号の説明】
【0066】
1 表示ユニット
11 タッチパネルユニット
12 ガラスパネル
13 ガラスパネル
14 電極格子
15 電極格子
16 スペーサ
17 接着材
181 ガラス基板
182 ガラス基板
2 処理チャンバー
3 基板保持具
30 搬送機構
4 ノズル
41 噴射孔
5 溶出液供給系
L 溶出液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面表示を行う表示ユニットと、表示ユニットの前側に設けられ、接触されることで情報の入力が行われるタッチパネルユニットとを備えたタッチパネル表示装置であって、
タッチパネルユニットは、表示ユニットの前面に全面塗布された透明接着剤により接着されており、
タッチパネルユニットは、表示ユニットを覆う状態の少なくとも一枚のガラスパネルを有しており、このガラスパネルは、溶出液を噴射して自重による加速度より大きな加速度で溶出液を吹き付けて衝撃されることで表面が機械研磨されており、厚さが0.5mm以下であって、表面の最大粗さが0.5μm以下である平坦性を有していることを特徴とするタッチパネル表示装置。
【請求項2】
接触されることで情報の入力が行われるタッチパネル表示装置に用いられ、画像表示を行う表示ユニットの前側に設けられるタッチパネルユニットの製造方法であって、
タッチパネルユニットは、表示ユニットを覆う状態となる少なくとも一枚のガラスパネルを備えるものであり、
溶出液をガラスパネルの表面に向けて噴射して自重による加速度より大きな加速度で溶出液を吹き付けて衝撃されることでガラスパネルの表面を機械研磨することで厚さを0.5mm以下に削減する削減工程を有しており、削減工程における機械研磨により、ガラスパネルの表面の最大粗さを0.5μm以下とすることを特徴とするタッチパネルユニット製造方法。
【請求項3】
前記溶出液による前記表面の衝撃の際の圧力は、0.5kg/cm〜3.5kg/cmの範囲であることを特徴とする請求項2記載のタッチパネルユニット製造方法。
【請求項4】
前記溶出液は、フッ酸であることを特徴とする請求項2又は3記載のタッチパネルユニット製造方法。
【請求項5】
研磨を始める際の前記ノズルの噴射孔から前記ガラスパネルの表面までの距離は、5mm以上100mm以下となっていることを特徴とする請求項2、3又は4に記載のタッチパネルユニット製造方法。
【請求項6】
前記ノズルの各噴射孔は、前記ガラスパネルの表面と平行な方向に並んで設けられており、
前記機械研磨において、前記複数の噴射孔から噴射された溶出液が、前記ガラスパネルの表面と平行な面で見た際、各噴射孔の並ぶ方向に対して斜めの方向に広がるようにして前記ガラスパネルの表面を衝撃し、前記ノズルの噴射孔に対して前記ガラスパネルを機械的に相対的に移動させ、隣接するノズルから噴射された溶出液の広がりの端部において前記ガラスパネルが重複して溶出液による衝撃を受けるようにすることで、前記ガラスパネルの表面の各点を均一に溶出液により衝撃して研磨を行うことを特徴とする請求項2乃至5いずれかに記載のタッチパネルユニット製造方法。
【請求項7】
請求項2記載のタッチパネルユニット製造方法に使用されるガラス研磨機であって、
内部で外面機械研磨処理が行われる処理チャンバーと、
処理チャンバー内の所定位置に前記ガラスパネルを垂直に保持する保持具と、
ガラスパネルの表面の材料を溶出させる溶出液を保持具に保持されたガラスパネルの当該表面に向けて噴射する噴射孔を有するノズルと、
ノズルに溶出液を供給する溶出液供給系と
を備えており、
前記溶出液供給系は、自重による加速度より大きな加速度を付けて溶出液を前記外面に吹き付けて前記外面を衝撃し、衝撃による物理的作用を利用して前記外面を研磨できる圧力で溶出液を前記ノズルに供給するものであり、
さらに、ノズルの噴射孔に対して保持具を機械的に相対的に移動させてガラスパネルの表面の各領域に溶出液が均一に供給されるようにする移動機構を備えていることを特徴とするガラス研磨機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−153138(P2008−153138A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341985(P2006−341985)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【特許番号】特許第4000178号(P4000178)
【特許公報発行日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(395016578)株式会社テスコム (12)
【Fターム(参考)】