説明

タンク内洗浄装置

【課題】 化学工業、食品工業などにおける重合タンクや反応タンク、食品工業における発酵槽等の内部を洗浄するタンク洗浄装置において、タンクの上部にあるマンホールまでの昇降が容易なタンク洗浄装置を提供する。
【解決手段】 本発明のタンク洗浄装置10は、タンク20に設けられた円形の開口を塞ぐ曲面を備えた蓋状治具16と、該蓋状治具に貫通突設された中空管17と、該中空管内に挿通される高圧ホース14と、前記高圧ホース14をその軸線を中心として回転させるために床上に設けられたホース回転装置12と、該高圧ホースの先端に設けられたノズル15と、前記ホース回転装置と前記蓋状治具との間の床上にあって、前記高圧ホースを前進又は後退させるホース進退装置13と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学工業、における重合タンクや反応タンク、食品工業などにおける発酵槽等の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学工業、食品工業などにおける重合タンクや反応タンク、食品工業における発酵槽等の内部を洗浄するものとして、特許文献1に記載のものが知られている。これは、タンク内のインペラーシャフトの上部に回転アーム、ホースガイド、エアーモータ等を設け、回転アームで公転させると同時に、ホースを自転させ、ホースの先端に設けたノズルから高圧水を噴射してタンク内壁を洗浄するものである。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載のタンク内洗浄装置は、洗浄の際に、タンク内に回転アーム、ホースガイド、エアーモータ等を取り付ける必要があり、取り付けに要する作業が大きな負担となる。
【0004】
タンク内に回転アームなどの機器類を設けないものとして、自動又は手動のスライドランスを使用する方法がある。これは、スライドランスの挿入部をタンクのマンホールからタンク内に差し込んで、先端のノズルから高圧水を噴射してタンク内壁を洗浄するものである。ノズルは、伸縮する管の先端に設けられているので、伸縮することで、タンクの内面全体に圧力水を噴射することが可能である。また、ノズルの噴射により、ノズルに回転を与えるようになっている。自動のものに比べて手動のものは、軽量で安価に製造されている。
【特許文献1】特開2002−361194
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、軽量の手動のスライドランスでも、100〜200Kgとかなり重量のあるものである。また、タンクのマンホールも通常は、5〜10mの高さのタンクの頂部近くにあり、重いスライドランスをタンクの上のマンホールまで上げ下げしたり、据え付けたりするのは、洗浄作業者にとって、大きな負担となっている。さらに、据え付けるための基台をタンクに設けておかなければならない。
【0006】
本発明は、このような事実から考えられたもので、タンクに基台を設ける必要がなく、タンクの上部にあるマンホールまでの昇降が容易なタンク洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明の請求項1のタンク洗浄装置は、タンクに設けられたマンホールの開口を塞ぐ曲面を備えた蓋状治具と、該蓋状治具に貫通突設された中空管と、該中空管内に挿通される高圧ホースと、前記高圧ホースをその軸線を中心として回転させるために床上に設けられたホース回転装置と、該高圧ホースの先端に設けられたノズルと、前記ホース回転装置と前記蓋状治具との間の床上にあって、前記高圧ホースを前進又は後退させるホース進退装置と、を有することを特徴としている。
【0008】
請求項2のタンク内洗浄装置は、前記蓋状治具の曲面が、球面であることを特徴としている。
【0009】
請求項3のタンク内洗浄装置は、前記中空の管路が、太さの異なる複数の管路から構成され、太い管に細い管が順次挿入可能となっていて、管路全体が伸縮自在なことを特徴としている。
【0010】
請求項4のタンク内洗浄装置は、前記中空管が、前記蓋状治具の外側に延設されていることを特徴としている。
【0011】
請求項5のタンク内洗浄装置は、前記ノズルが複数の開口を有し、各開口から噴射する噴射圧が、ノズルの左右方向で非対称となっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタンク内洗浄装置は、タンクの上のマンホールには、蓋状治具と中空管とが一体になったものを持って行けばよく、これらは、軽量に製造することができるので、持ち運びが容易にできる。また、タンクには基台が無くてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の管洗浄装置の全体構成を示す図である。本発明のタンク洗浄装置10は、高圧流体の供給源11と、ホース回転装置12と、ホース進退装置13と、高圧ホース14と、その先端に取り付けられたノズル15と、高圧ホース14の先端部とノズルが挿通される蓋状治具16とこの蓋状治具16に貫通して取り付けられる伸縮自在な中空管17とから構成される。
【0014】
高圧流体の供給源11としては、高圧洗浄車が使用されている。この高圧洗浄車は、100MPa程度の高圧水を120〜180l/min、程度で吐出する能力を有するものである。
【0015】
ホース回転装置12は、高圧流体の供給源11から接続ホース18で高圧水を受け、高圧ホース14に供給するが、同時に、公知の構成によって高圧ホース14にその中心軸14a回りの回転を与えるものである。このホース回転装置12は、車輪12aを有し、高圧ホース14が中空管17内を進退するのに連れて矢印方向に進退できるようになっている。さらに、高圧ホース14が後退する場合、これは、主としてタンク内壁の洗浄を終えて出てくるときであるが、その後退移動を速めるために、ウィンチ19を必要に応じて付加している。
【0016】
図2は、蓋状治具16と中空管17の斜視図である。蓋状治具16は、マンホール21の穴に進入する凸状の球面16aを有し、中央に孔16bが開いている。この孔16bに、第1の中空管17aが固着され、第1の中空管17aに第2の中空管17bが進退自在に取り付けられている。第1の中空管17aと第2の中空管17bとで、伸縮自在な中空管17を構成している。そして、高圧ホース14が、蓋状治具16の孔16bから入り、中空管17を貫通して先端のノズル15を中空管17の先端から突出させている。
【0017】
図3は、ホース進退装置13の要部構成を示す斜視図である。ホース進退装置13には、2つのゴム製の支持車輪13a,13bと1つの送り車輪13cとが設けられ、これらの間に回転する高圧ホース14が挿通される。各車輪は、ホース進退装置13の図示しないフレームに支持されている。
【0018】
3つの車輪13a,13b,13cはすべて高圧ホース14に適当な圧力で接触しているが、そのうち、下側の2つの支持車輪13aと13bは、回転軸が高圧ホース14の中心軸14aと平行であり、高圧ホース14を下から支えるもので、高圧ホース14は、2つの車輪間の窪みに入り、安定して保持される。一方、上方にある送り車輪13cは、高圧ホース14と斜めに接触するようになっている。また、この送り車輪13cを支持する軸13dは回動可能で、送り車輪13cは図4(a)に示すような接触角が鋭角になる位置から、図4(b)に示す接触角が鈍角になる位置との間で適当な接触角に設定できるようになっている。
【0019】
送り車輪13cが図4(a)に示す<90゜の角度で高圧ホース14に接触すると、高圧ホース14は、図の左から右に向かって移動する。送り車輪13cが図4(b)に示す>90゜の角度で高圧ホース14に接触すると、高圧ホース14は今度は逆に図の右から左に向かって移動する。すなわち、高圧ホース14の回転方向を変更することなく送り車輪13cの高圧ホース14に対する接触角を変更するだけで、高圧ホース14を右に送ったり、左に送ったりすることができるのである。また、接触角を増減することによって、前進・後退の速度を増減することができることになる。
【0020】
なお、送り車輪13c自身は、動力により回転するものではなく、回転している高圧ホース14に接触することで回転するようになっている。
【0021】
本発明のタンク洗浄装置10は、重量のある高圧流体の供給源11、ホース回転装置12とホース進退装置13とを地上又は床上に設置している。そして、マンホール21まで持ち上げるのは、蓋状治具16と中空管17とが一体になったものであるが、これは、数Kg程度と軽量に製造することができる。また、高圧ホース14やノズル15も重いものではなく、蓋状治具16や中空管17とは別にして運ぶこともができる。
【0022】
洗浄の対象としてのタンク20は、内部点検などの目的でマンホール21を有するが、このマンホール21は、タンク20の頂部近傍に設けられることが多い。本発明のタンク洗浄装置10では、マンホール21の蓋を開け、ここに蓋状治具16と中空管17とが一体になったものを置く。蓋状治具16の径はマンホール21の穴径より大きく、蓋状治具16がマンホール21からタンク20内に落下することはない。蓋状治具16とマンホール21とは固定せず、単に、置くだけでよく、蓋状治具16を手で動かせるようにする。高圧ホース14を中空管17に挿通し、先端のノズル15がタンク20内突出するようにする。
【0023】
ノズル15は、高圧ホース14の先端に接続されているが、図1に示すように、複数の開口を有する。後ろ向きの開口から高圧水の噴射aがされる。ほぼ横向きの開口から高圧水の噴射bがされ、先端にある開口から高圧水の噴射cがされる。
【0024】
蓋状治具16は、凸状の球面16aをマンホール21の開口に当接させているので、人手によって、図1に示すように左右方向に振ると、中空管17は、17’から17”までのように、その角度を自由に変えることができる。また、中空管17の長さも自在に変えることができ、さらに、高圧ホース14はホースの軸を中心に回転しているので、タンク20の内壁の隅々まで高圧水を吹き付けて洗浄することができる。
【0025】
ノズルの回転を高圧水を開口から噴射する圧力で回転させる方式のものや、ノズルの進行を同じく噴射圧で行うものがあるが、この場合、水圧の一部を回転や進行に使用するので、その分洗浄能力が低下する。これに対し、本発明の高圧ホース14は、ホース回転装置12で回転を与えられ、ホース進退装置13で進退されるので、ノズル15の噴射圧を全て洗浄に使用することができる。
【0026】
図5は、タンク20の下部を洗浄する状態を示す図である。中空管17の長さをタンクの上から底面近くまで調整できるようにするのは、タンク20の大きさから難しい。そこで、タンク20の上部は、図1に示すようにして洗浄する。そして、中間部から下部及び底面にかけては、高圧ホース14をタンク20内に長く突出させて洗浄する。噴射a,b,cの噴射圧が、左右アンバランスになっていると、ノズル15は、噴射圧の差によって、タンク20の内壁に近づく、そして、高圧ホース14の回転に伴い、タンク20の内壁面に沿って周回するようになる。これによって、タンク20の中間部から下部に掛けての内壁面を洗浄することができる。また、噴射cがあることから、タンク20の底面も洗浄することができる。
【0027】
図6は、本発明のタンク洗浄装置の第2実施例の要部を示す図である。この実施例では、蓋状治具16の外側に中空管17cを突出させている。中空管17cは、中空管17bと別個にしてもよく、一体のものとしてもよい。このような構成にすることで、中空管17cを取手として使用でき、これを手で掴んで動かすことで、中空管17を容易に所望の方向に向けることができる。
【0028】
また、蓋状治具16を透明な合成樹脂製にすることで、タンク20内を見ながら、中空管17の向きを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の管洗浄装置の全体構成を示す図である。
【図2】蓋状治具と中空管の斜視図である。
【図3】ホース進退装置の要部構成を示す斜視図である。
【図4】(a)、(b)は、ホース進退装置で高圧ホースを進退させる状態を示す図である。
【図5】タンクの下部を洗浄する状態を示す図である。
【図6】本発明のタンク洗浄装置の第2実施例の要部を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
10 タンク洗浄装置
11 供給源
12 ホース回転装置
13 ホース進退装置
14 高圧ホース
15 ノズル
16 蓋状治具
16a 球面
17 中空管
20 タンク
21 マンホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクに設けられたマンホールの開口を塞ぐ曲面を備えた蓋状治具と、該蓋状治具に貫通突設された中空管と、該中空管内に挿通される高圧ホースと、前記高圧ホースをその軸線を中心として回転させるために床上に設けられたホース回転装置と、該高圧ホースの先端に設けられたノズルと、前記ホース回転装置と前記蓋状治具との間の床上にあって、前記高圧ホースを前進又は後退させるホース進退装置と、を有することを特徴とするタンク内洗浄装置。
【請求項2】
前記蓋状治具の曲面が、球面であることを特徴とする請求項1に記載のタンク内洗浄装置。
【請求項3】
前記中空の管路が、太さの異なる複数の管路から構成され、太い管に細い管が順次挿入可能となっていて、管路全体が伸縮自在なことを特徴とする請求項1又は2に記載のタンク内洗浄装置。
【請求項4】
前記中空管が、前記蓋状治具の外側に延設されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のタンク内洗浄装置。
【請求項5】
前記ノズルが複数の開口を有し、各開口から噴射する噴射圧が、ノズルの左右方向で非対称となっていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のタンク内洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−302341(P2008−302341A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154038(P2007−154038)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(505475194)カムテック株式会社 (4)
【Fターム(参考)】