説明

タンク

【課題】津波到達によるタンク本体の変形及びタンクの移動を抑止する。
【解決手段】タンク本体2を全周に亘って囲み、タンク本体2の側面とタンク本体2が載置される床板3とに固定される防波部材4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、海に面して設置されるタンクに対しては、津波対策が施されている。
例えば、特許文献1には、タンク本体の周囲に鉄鋼矢板を突出させて配置し、タンク本体に漂流物が接触することを防止する構成が開示されている。
また、特許文献2には、タンク本体の周囲に津波防護柵を設置する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−231768号公報
【特許文献2】特開2007−302281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、津波によって流された漂流物に限らず、津波そのものが大きなエネルギを有している。このため、従来想定されていない津波がタンク本体に到達すると、漂流物が接触しなくともタンク本体に対しては大きな外圧が作用することとなる。基本的に、タンク本体は、内部に液体等を貯留することから、内部からの圧力に耐えうるように設計されているが、外部からの圧力に耐えうるように設計はされていない。このため、外部から大きな圧力がタンク本体に作用すると、タンク本体が変形する恐れがある。
実際に、津波がタンク本体に到達した場合に、タンク本体が座屈して変形する場合があることが確認されている。
このため、例えば、特許文献1のように、タンク本体の周囲に離散的に鋼鉄矢板を設置したとしても、津波自体がタンクに到達することを防止することはできず、タンク本体の変形を防止することはできない。
【0005】
また、津波がタンク本体に到達した場合には、タンク本体と当該タンク本体が載置される底板との間に水が入り込み、タンク本体を浮かせる浮力が発生する場合がある。
このような場合には、タンク本体が位置ずれし、タンク本体に取り付けられたノズル等が破損する恐れがある。
例えば、特許文献2に開示された発明では、津波防護柵とタンク本体との間の空間の上方が開放されているため、津波防護柵とタンク本体との間の空間に水が入り込み、タンク本体が移動される可能性がある。
また、特許文献1に開示された発明では、容易に水がタンク本体と底板との間に入り込み、タンク本体が移動される可能性がある。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、津波到達によるタンク本体の変形及びタンクの移動を抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、海に面して設置されるタンクであって、液体を貯留するタンク本体と、上記タンク本体を全周に亘って囲み、上記タンク本体の側面と上記タンク本体が載置される床板とに固定される防波部材とを備えるという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、平面視における上記防波部材の全体形状が、流線形に形状設定されているという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記平面視における上記防波部材の全体形状が、長軸を上記海の方向に向けた楕円形状に形状設定されているという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記防波部材と上記タンク本体の側面との間に充填される充填部材を備えるという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第1〜第4いずれかの発明において、上記防波部材が、上記床板に向けて末広がる傾斜板からなるという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、上記タンク本体の側面に設置される箍を備え、上記防波部材が上記箍を介して上記タンク本体に固定されているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、防波部材が、タンク本体を全周に亘って囲み、タンク本体の側面とタンク本体が載置される床板とに固定されている。
このような本発明によれば、防波部材によって津波がタンク本体に直接接触することを防ぐことができ、タンク本体が変形することを抑止することができる。
【0015】
つまり、本発明においては、防波部材とタンク本体との間の空間が密閉された状態とされている。
このため、防波部材とタンク本体との間に水が入り込むことを抑止することができ、タンク本体が移動されることを抑止することができる。
【0016】
さらに、防波部材が床板に固定されることから、防波部材がない場合と比較してタンク本体をより強固に床板に対して固定することができる。このため、津波の影響で本体タンクが持ち上げられることを抑止し、本体タンクと床板との間に水が入ることをより確実に抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態におけるタンクの概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第2実施形態におけるタンクの概略構成を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の第3実施形態におけるタンクの概略構成を示す模式図である。
【図4】本発明の変形例におけるタンクの要部断面図を模式的に示す模式図である。
【図5】本発明の変形例におけるタンクの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係るタンクの一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のタンク1の概略構成を示す模式図である。なお、図1において(a)が平面図であり、(b)が断面図である。
【0020】
図1に示すタンク1は、油やLNG(Liquefied Natural Gas)等の液体を貯留するためのものであり、海に面した箇所に設置されるものである。
そして、タンク1は、図1に示すように、タンク本体2と、床板3と、スカート4(防波部材)と、充填コンクリート5(充填部材)とを備えている。
【0021】
タンク本体2は、油やLNG等の液体を直接貯留する容器であり、略円筒形に形状設定されている。
なお、図1に示すように、本実施形態においてはタンク本体2として、金属製の一重殻タンクを用いている。ただし、タンク本体2として、金属製の内装と金属製あるいはコンクリート製の外槽とを備える二重殻タンク等を用いることもできる。
なお、タンク本体2の下部には、タンク本体2の内部から外部に連通し、タンク本体2の内部に貯留された液体を外部に導出するためのノズル6が設けられている。
【0022】
なお、本実施形態においては、ノズル6を囲う中空の保護容器7がタンク本体2の側面に取り付けられている。
そして、ノズル6は、タンク本体2の外部から保護容器7を貫通してタンク本体2に接続されている。
【0023】
床板3は、タンク本体2が載置され、載置されたタンク本体2を支持するものである。この床板3は、例えば、コンクリートによって形成されており、タンク本体2の平面視形状よりも一回り半径が大きな円板形状とされている。
【0024】
そして、図1(b)に示すように、タンク本体2は、側面に突出して設けられたフランジ2aがアンカーボルト8によって床板3と接続されることで、床板3に対して固定されている。
なお、本実施形態においては、杭等を用いずにタンク本体2が床板3上に載置されているが、例えば、杭打ち等によってタンク本体2を強固に床板3に対して固定しても良い。
【0025】
スカート4は、津波が到来した際に、津波が直接タンク本体2に衝突することを抑止するためのものである。
このスカート4は、図1(a)に示すようにタンク本体2を全周に亘って囲み、図1(b)に示すように、タンク本体2の側面と床板3とに固定される。なお、本実施形態において、スカート4は、図1(b)に示すように、床板3に向けて末広がる傾斜板から成っている。
【0026】
また、スカート4は、例えば、カーボンスチールによって形成することができる。そして、本実施形態においては、スカート4の上端が溶接によってタンク本体2に固定され、スカート4の下端が埋設されることによって床板3に固定されている。
つまり、本実施形態においてスカート4は、上端がタンク本体2の全周に亘って当該タンク本体2の側面に対して固定されており、下端がタンク本体2の全周に亘って当該床板3に固定されている。
【0027】
また、スカート4の高さは、到来することが予測される津波の高さ以上であることが好ましい。ただし、到来することが予測される津波の高さを想定することが難しい場合には、スカート4が存在しない場合にタンク本体2が座屈する高さを見積もり、この座屈する高さ以上にスカート4の高さを設定することが好ましい。
【0028】
このようなスカート4によって、スカート4とタンク本体2の側面との間に、略密閉された空間が形成される。
なお、図1に示すように、スカート4の一部には開口が設けられており、当該開口からノズル6の保護容器7の一部がスカート4の外部に突出されている。
【0029】
充填コンクリート5は、スカート4とタンク本体2の側面との間に形成された空間に充填されるコンクリートである。
なお、この充填コンクリート5は、例えば、スカート4の一部に開口部を形成し、当該開口からスカート4とタンク本体2の側面との間に形成された空間に生コンクリートを充填し乾燥させることによって形成することができる。
【0030】
この充填コンクリート5は、スカート4とタンク本体2の側面との間に形成された空間を埋めることによって、スカート4が変形することを抑止するためのものである。
なお、充填コンクリート5に換えて、密度の高いウレタンウォームや、海岸等で容易に調達できる砂等を充填部材とすることも可能である。
【0031】
このような構成を有する本実施形態のタンク1によれば、津波が到来した際及び津波が去る際に、スカート4によって津波がタンク本体2に直接衝突することを抑止される。
このため、本実施形態のタンク1によれば、津波によってタンク本体が変形することを抑止することができる。
【0032】
また、本実施形態のタンク1によれば、スカート4が、タンク本体2を全周に亘って囲み、タンク本体2の側面と床板3とに固定されている。
このため、スカート4とタンク本体2との間の空間が密閉された状態とされ、スカート4とタンク本体2との間に水が入り込むことを抑止することができる。
したがって、本実施形態のタンク1によれば、津波によってタンク本体が移動されることを抑止することができる。
【0033】
さらに、本実施形態のタンク1によれば、スカート4が床板3に固定されることから、スカート4がない場合と比較してタンク本体2をより強固に床板3に対して固定することができる。このため、津波の影響でタンク本体2が持ち上げられることを抑止し、タンク本体2と床板3との間に水が入ることをより確実に抑止することができる。
【0034】
また、本実施形態のタンク1においては、スカート4とタンク本体2の側面との間に充填される充填コンクリート5を備えている。
このため、津波によってスカート4が変形することを抑止することができ、津波に対してより強固な構造とすることが可能となる。
【0035】
また、本実施形態のタンク1においては、スカート4が床板3に向けて末広がる傾斜板とされている。
このため、スカート4に津波が衝突する際の衝撃を緩和することができ、津波によるスカート4の変形を抑止することが可能となる。
【0036】
また、本実施形態のタンク1においては、保護容器7によってノズル6の配置領域に充填コンクリート5が入り込むことが防止されている。このため、ノズル6のメンテナンス等を容易に行うことが可能となる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本実施形態において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
図2は、本実施形態のタンク1Aの概略構成を模式的に示す平面図である。
【0038】
この図に示すように、本実施形態のタンク1Aが備えるスカート4Aは、平面視における全体形状が、長軸を海の方向に向けた楕円形状に形状設定されている。
なお、スカート4Aの長軸と短軸との比は、任意であるが、長軸と短軸との比を大きくすれば、海に向かってより尖った形状とすることができる。
【0039】
このような構成を採用する本実施形態のタンク1Aによれば、海側から到来する津波及び海に戻る津波を、タンク本体2を避けるように誘導することができ、津波による衝撃をより緩和することが可能となる。
【0040】
なお、本実施形態においては、スカート4Aの全体形状を長軸が海の方向に向けられた楕円形状とすることによって、スカート4Aの平面視形状を流線形としている。
ただし、必ずしもスカート4Aを楕円形状とする必要はなく、船舶の側面形状にスカート4Aを形状設定することによって、スカート4Aの平面視形状を流線形としても良い。
【0041】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明省略あるいは簡略化する。
図3は、本実施形態のタンク1Bの概略構成を示す模式図である。なお、図3において(a)が平面図であり、(b)が断面図である。
【0042】
この図に示すように、本実施形態のタンク1Bは、タンク本体2の側面に設置される箍9を備えている。
この箍9は、タンク本体2を全周に亘って囲っており、タンク本体2を補強するものである。
そして、本実施形態においてスカート4の上端は、タンク本体2に直接固定されるのはなく、箍9に対して溶接されることによって固定されている。
【0043】
このような構成を採用する本実施形態のタンク1Bによれば、箍9によってタンク本体2が補強されるため、津波によるタンク本体2の変形をより抑止することが可能となる。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態においては、スカート4が傾斜板である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図4に示すように、スカート4が屈曲して一部が垂直とされた構成を採用することも可能である。
【0046】
また、上記実施形態においては、スカート4の下端を床板3に埋設することによってスカート4を床板3に固定する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、床板3上にタンク本体2を囲うようにリングプレート10を配設し、リングプレート10をアンカーボルト11で床板3に対して固定し、スカート4の下端をリングプレート10に溶接により固定しても良い。なお、図5において(a)が平面図であり、(b)が断面図である。
このような構成を採用することによって、既設のタンクに対して、本実施形態のタンク1とする改造を容易に行うことが可能となる。
【0047】
なお、上記実施形態においては、タンク本体2が床板3に載置された構成を採用した。しかしながら、タンク本体2の全周あるいは一部においてタンク本体2の側板を床板3に埋設し、タンク本体2を床板3に対して強固に固定することもできる。
このような構成を採用する場合には、スカート4がなくともタンク本体2と床板3との間に水が浸入することを抑止することができ、タンク本体2の移動を抑止することが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1,1A,1B……タンク、2……タンク本体、3……床板、4……スカート(防波部材)、5……充填コンクリート(充填部材)、6……ノズル、7……保護容器、8……アンカーボルト、9……箍、10……リングプレート、11……アンカーボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海に面して設置されるタンクであって、
液体を貯留するタンク本体と、
前記タンク本体を全周に亘って囲み、前記タンク本体の側面と前記タンク本体が載置される床板とに固定される防波部材と
を備えることを特徴とするタンク。
【請求項2】
平面視における前記防波部材の全体形状が、流線形に形状設定されていることを特徴とする請求項1記載のタンク。
【請求項3】
前記平面視における前記防波部材の全体形状が、長軸を前記海の方向に向けた楕円形状に形状設定されていることを特徴とする請求項2記載のタンク。
【請求項4】
前記防波部材と前記タンク本体の側面との間に充填される充填部材を備えることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のタンク。
【請求項5】
前記防波部材は、前記床板に向けて末広がる傾斜板からなることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のタンク。
【請求項6】
前記タンク本体の側面に設置される箍を備え、前記防波部材が前記箍を介して前記タンク本体に固定されていることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載のタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−24007(P2013−24007A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163122(P2011−163122)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】