説明

タンパク質キナーゼ阻害剤としての化合物および組成物

本発明は、新規クラスの化合物、このような化合物を含む医薬組成物および、異常なまたは脱制御されたキナーゼ活性と関連する疾患または障害、特にAbl、BCR−Abl、PDGF−R、lck、SAPK2α、p38、TGFβ、KDR、c−Kit、b−RAF、c−RAF、FLT1およびFLT4キナーゼの異常な活性化が関与する疾患または障害の処置または予防のためのこのような化合物の使用法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C.§119(e)の下、2003年10月2日出願の米国仮出願60/508,450の優先権の利益を主張する。該優先権主張出願の記載は、引用により、その全体として、かつ全ての目的に関して、本出願に包含される。
【0002】
技術分野
本発明は、新規クラスの化合物、このような化合物を含む医薬組成物および異常なまたは脱制御されたキナーゼ活性と関連する疾患または障害、Abl、BCR−Abl、lck、SAPK2α、PDGF−R、p38、TGFβ、KDR、c−Kit、b−RAF、c−RAF、FLT1およびFLT4キナーゼの異常な活性化が関与する疾患または障害の処置または予防におけるこのような化合物の使用法を提供する。
【0003】
背景技術
タンパク質キナーゼは、広範囲の細胞過程の制御ならびに細胞機能の制御の維持に中心的役割を有する、タンパク質の大きなファミリーを代表する。これらのキナーゼの部分的、非限定的リストは下記を含む:受容体チロシンキナーゼ、例えば血小板由来増殖因子受容体キナーゼ(PDGF−R)、TGFβ、VEGF−受容体キナーゼ(例えばKDR、Flt−1およびFlt−4)、幹細胞因子のための受容体キナーゼ、c−kit;非受容体チロシンキナーゼ、例えばAblおよび融合キナーゼBCR−Abl;およびセリン/スレオニンキナーゼ、例えばp38、b−RAFおよびc−RAF。異常なキナーゼ活性が良性および悪性増殖性障害ならびに不適切な免疫系および神経系の活性化に由来する疾患を含む、多くの疾患状態で観察されている。
【0004】
本発明の新規化合物は、1種またはそれ以上のタンパク質キナーゼを阻害し、故に、キナーゼ−関連疾患の処置に有用であると期待される。
【0005】
発明の概要
第一の局面において、本発明は、式I:
【化1】

〔式中、
およびRは、独立して水素、−XR、−XC(O)R、−XSR、−XS(O)R、−XS(O)、−XOR、−XNC(O)NHRおよび−XOC(O)NRから選択され;ここで、Xは結合またはC1−4アルキレンであり;Rは水素およびC1−6アルキルから選択され;RはC6−10アリール、C5−10ヘテロアリール、C3−12シクロアルキルおよびC3−8ヘテロシクロアルキルから選択され;ここで、Rの全てのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、所望によりヒドロキシ、ハロ、ニトロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−置換−C1−6アルキル、ハロ−置換−C1−6アルコキシ、−XC(O)ORおよび−NRから選択される1個から3個のラジカルで置換されていてよく;ここで、Xは結合またはC1−4アルキレンであり、そしてRおよびRは、独立して水素およびC1−6アルキルから選択され;ここで、ピリジニル環Aは、−N=で置換された−C=基を3個まで有し得て;ここで、ナフチル環B−N=で置換された−C=基を4個まで有し得る。〕
の化合物およびそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、被保護誘導体、個々の異性体および異性体の混合物;およびこのような化合物の薬学的に許容される塩および溶媒和物(例えば水和物)を提供する。
【0006】
第二の局面において、本発明は、式Iの化合物またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体および異性体の混合物;またはその薬学的に許容される塩を1種またはそれ以上の適当な賦形剤との混合物として含む、医薬組成物を提供する。
【0007】
第三の局面において、本発明は、治療的有効量の式Iの化合物またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体および異性体の混合物、またはその薬学的に許容される塩を動物に投与することを含む、動物における、キナーゼ活性、特にAbl、BCR−Abl、PDGF−R、lck、SAPK2α、p38、TGFβ、KDR、c−Kit、b−RAF、c−RAF、FLT1およびFLT4の阻害がその疾患の病状および/または総体症状を予防、阻止または軽減できるものである疾患を処置する方法を提供する。
【0008】
第四の局面において、本発明は、キナーゼ活性、特にAbl、BCR−Abl、PDGF−R、lck、SAPK2α、p38、TGFβ、KDR、c−Kit、b−RAF、c−RAF、FLT1およびFLT4活性がその疾患の病状および/または総体症状に関与するものである、動物における疾患の処置用医薬の製造における、式Iの化合物の使用を提供する。
【0009】
第五の局面において、本発明は、式Iの化合物およびそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、被保護誘導体、個々の異性体および異性体の混合物、およびその薬学的に許容される塩の製造法を提供する。
【0010】
発明の詳細な説明
定義
基または他の基、例えばハロ−置換−アルキルおよびアルコキシの構造要素としての“アルキル”は、直鎖または分枝鎖であり得る。C1−4−アルコキシは、メトキシ、エトキシなどを含む。ハロ−置換アルキルは、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルなどを含む。
【0011】
“アリール”は、6個から10個の環炭素原子を含む、単環式または縮合二環式芳香環集合体を意味する。例えば、アリールは、フェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルであり得る。アリール基由来の“アリーレン”は、2価ラジカルである。“ヘテロアリール”は、環員の1個またはそれ以上がヘテロ原子である、上記で定義のアリールである。例えばヘテロアリールは、ピリジル、インドリル、インダゾリル、キノキサリニル、キノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソール、イミダゾリル、ベンゾ−イミダゾリル、ピリミジニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、チエニルなどを含む。
【0012】
“シクロアルキル”は、指示された炭素原子数を含む、飽和または部分的不飽和の、単環式、縮合二環式または架橋された多環式環集合体を意味する。例えば、C3−10シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。“ヘテロシクロアルキル”は、1個またはそれ以上の示される環炭素が−O−、−N=、−NR−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−S(O)−(ここで、Rは水素、C1−4アルキルまたは窒素保護基である)から選択されから選択される部分で置換されている、本明細書で定義の通りのシクロアルキルである。例えば、本発明の化合物を述べるために本明細書で使用するC3−8ヘテロシクロアルキルは、モルホリノ、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリジニロン、1,4−ジオキサ−8−アザ−スピロ[4.5]デク−8−イルなどを含む。
【0013】
“ハロゲン”(またはハロ)は、好ましくはクロロまたはフルオロを意味するが、またブロモまたはヨードでもあり得る。
【0014】
“処置”、“処置し”および“処置する”は、疾患および/または附随する症状を軽減するまたは無くす方法を意味する。
【0015】
好ましい態様の記載
本発明は、キナーゼ関連疾患、特にAbl、BCR−Abl、PDGF−R、lck、SAPK2α、p38、TGFβ、KDR、c−Kit、b−RAF、c−RAF、FLT1およびFLT4キナーゼ関連疾患の処置のための、化合物、組成物および方法を提供する。例えば、BCR−Ablに関連する白血病および他の増殖性障害は、野生型および変異型のBcr−Ablの阻害により処置できる。
【0016】
一つの態様において、式Iの化合物に関して、RおよびRが、独立して水素、−XRおよび−XOC(O)NRから選択され;ここで、Xが結合またはC1−4アルキレンであり;Rが水素およびC1−6アルキルから選択され;RがC6−10アリール、C5−10ヘテロアリールおよびC3−8ヘテロシクロアルキルから選択され;ここで、Rの全てのアリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルが所望によりハロ、ニトロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−置換−C1−6アルキル、−XC(O)ORおよび−NRから選択される1個から3個のラジカルで置換されていてよく;ここで、Xが結合またはC1−4アルキレンであり、そしてRおよびRが、独立してから選択され水素およびC1−6アルキルである。
【0017】
他の態様において、Rが水素およびフェニルから選択され;ここで、該フェニルgあ所望によりトリフルオロメチル、ジメチルアミノ、メトキシ、ハロ、エトキシおよびニトロから選択される1個から3個のラジカルで置換されていてよい。
【0018】
さらなる態様において、Rは水素、−OHおよび−OC(O)NHRから選択され;ここで、Rはフェニルおよびベンゾ[1,3]ジオキソル−5−イルから選択され;ここで、Rの該フェニルが、所望により−C(O)OCHおよびジメチルアミノから選択される1個から3個のラジカルで置換されていてよい。
【0019】
好ましい式Iの化合物は:フェニル−カルバミン酸8−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−3H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステル;4−(5−ナフタレン−1−イル−2−フェニル−3H−イミダゾル−4−イル)−ピリジン;4−[2−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−5−ナフタレン−1−イル−3H−イミダゾル−4−イル]−ピリジン;ジメチル−[4−(4−ナフタレン−1−イル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−2−イル)−フェニル]−アミン;4−[5−ナフタレン−1−イル−2−(2,4,6−トリメトキシ−フェニル)−3H−イミダゾル−4−イル]−ピリジン;4−[2−(2−フルオロ−フェニル)−5−ナフタレン−1−イル−3H−イミダゾル−4−イル]−ピリジン;4−[2−(2−エトキシ−フェニル)−5−ナフタレン−1−イル−3H−イミダゾル−4−イル]−ピリジン;4−[5−ナフタレン−1−イル−2−(3−ニトロ−フェニル)−3H−イミダゾル−4−イル]−ピリジン;4−(5−ナフタレン−1−イル−3H−イミダゾル−4−イル)−ピリジン;フェニル−カルバミン酸6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステル;6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−オール;4−[6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルオキシカルボニルアミノ]−安息香酸メチルエステル;ベンゾ[1,3]ジオキソル−5−イル−カルバミン酸6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステル;5−[6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルオキシカルボニルアミノ]−イソフタル酸ジメチルエステル;(4−ジメチルアミノ−フェニル)−カルバミン酸6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステル;ベンゾ[1,3]ジオキソル−5−イル−カルバミン酸8−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステル;5−[8−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルオキシカルボニルアミノ]−イソフタル酸ジメチルエステル;および(4−ジメチルアミノ−フェニル)−カルバミン酸8−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステルから選択される。
【0020】
さらに好ましい式Iの化合物は、下記実施例および表Iに詳述する。
【0021】
薬理学および有用性
本発明の化合物は、タンパク質チロシンキナーゼの活性を調節でき、それ自体、タンパク質チロシンキナーゼ、特にAbl、BCR−Abl、PDGF−R、lck、SAPK2α、p38、TGFβ、KDR、c−Kit、b−RAF、c−RAF、FLT1およびFLT4キナーゼがその疾患の病状および/または総体症状に関与する疾患または障害の処置に有用である。
【0022】
アベルソンチロシンキナーゼ(すなわちAbl、c−Abl)は、細胞サイクルの制御、遺伝毒性ストレスに対する細胞応答、およびインテグリンシグナル伝達を介した細胞環境についての情報伝達に関与する。全体として、Ablタンパク質は、様々な細胞外および細胞内供給源からのシグナルを統合し、細胞サイクルおよびアポトーシスに関する決定に影響を与える、細胞性モジュールとして複雑な役割を果たしているように見える。アベルソンチロシンキナーゼは、脱制御されたチロシンキナーゼ活性を伴うキメラ融合体(オンコプロテイン)BCR−Ablまたはv−Ablのようなサブタイプ誘導体を含む。BCR−Ablは、95%の慢性骨髄性(myelogenous)白血病(CML)および10%の急性リンパ性白血病の病因において重要である。STI571(Gleevec)は発癌性BCR−Ablチロシンキナーゼの阻害剤であり、慢性骨髄性(myeloid)白血病(CML)の処置に使用されている。しかしながら、CMLの急性転化期にある患者の幾分かは、BCR−Ablキナーゼの変異により、STI−571に耐性である。22を超える変異が今日までに報告されており、最も一般的なのはG250E、E255V、T315I、F317LおよびM351Tである。
【0023】
本発明の化合物は、ablキナーゼ、とりわけv−ablキナーゼを阻害する。本発明の化合物はまた野生型BCR−AblキナーゼおよびBCR−Ablキナーゼの変異を阻害し、故に、白血病(とりわけアポトーシス作用の機構が見られるとき、とりわけ慢性骨髄性(myeloid)白血病および急性リンパ芽球性白血病)のようなBcr−abl−陽性癌および腫瘍疾患の処置に適当であり、また、白血病性幹細胞のサブグループにおける効果を示し、ならびにこれらの細胞を、該細胞を摘出(例えば、骨髄摘出)した後、インビトロで精製し、それらが癌細胞から浄化された後細胞を再移植する(例えば、精製骨髄細胞の再移植)可能性がある。
【0024】
PDGF(血小板由来増殖因子)は非常に一般的に存在する増殖因子であり、発癌および血管の平滑筋細胞の疾患、例えばアテローム性動脈硬化症および血栓症に見られるように、正常増殖およびまた病的細胞増殖の両方において重要な役割を演ずる。本発明の化合物は、PDGF受容体(PDGFR)活性を阻害でき、従って、神経膠腫、肉腫、前立腺腫瘍、および結腸、乳房および卵巣の腫瘍のような腫瘍疾患の処置に適当である。
【0025】
本発明の化合物は、例えば小細胞肺癌における腫瘍阻害物質としてだけでなく、またアテローム性動脈硬化症、血栓症、乾癬、強皮症および線維症のような非悪性増殖性障害にも、ならびに幹細胞を、例えば、5−フルオロウラシルのような化学療法剤の血液毒性作用と戦うために保護するために、および喘息において使用できる。本発明の化合物は、とりわけPDGF受容体キナーゼの阻害に応答する疾患の処置に有用である。
【0026】
本発明の化合物は、移植、例えば、異種移植に起因する障害、とりわけ閉塞性細気管支炎(OB)、すなわち異種肺移植の慢性拒絶のような、とりわけ組織拒絶反応の処置に有効である。OBのない患者と比較して、OBを有する者は、しばしば気管支肺胞洗浄液中のPDGF濃度の上昇を示す。
【0027】
本発明の化合物はまた再狭窄およびアテローム性動脈硬化症のような、血管平滑筋細胞移動および増殖(PDGFおよびPDGF−Rがしばしば役割を有する場所である)が関連する疾患に有用である。血管平滑筋細胞インビトロおよびインビボにおけるこれらの効果および増殖または移動にに対するそれらの結果は、本発明の化合物の投与により、またインビボでの血管内膜の機械的損傷後の肥厚に対する影響の試験により証明し得る。
【0028】
本発明の化合物はまた、SCF受容体(kit)自己リン酸化およびMAPKキナーゼ(マイトージェン−活性タンパク質キナーゼ)のSCF刺激活性化の阻害のように、幹細胞因子(SCF、c−kitリガンドまたはスチール因子としても既知)が関与する細胞過程を阻害する。MO7e細胞は、増殖をSCFに依存するヒト前巨核球性(Promegakaryocytic)白血病細胞系である。本発明の化合物は、SCF受容体の自己リン酸化を阻害できる。
【0029】
Ras−Raf−MEK−ERKシグナル伝達経路は、増殖シグナルに対する細胞応答を介在する。Rasは、ヒト癌の〜15%で発癌性形に変異している。Rafファミリーはセリン/スレオニンタンパク質キナーゼに属し、それは3種のメンバー、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf(またはRaf−1)を含む。薬剤標的としてのRafの焦点は、Rasの下流因子エフェクターとしてのRafの関係に絞られている。しかしながら、近年のデータは、B−Rafが、Ras対立遺伝子の活性化を必要としないある種の腫瘍において顕著な役割を有し得ることを示唆する(Nature 417, 949 - 954(01 Jul 2002)。特に、B−Raf変異は、悪性黒色腫の高い割合で検出されている。
【0030】
黒色腫の既存の薬物処置は、その効果が限定されており、とりわけ後期黒色腫で限定されている。本発明の化合物はまたb−Rafキナーゼが関与する細胞過程も阻害し、ヒト癌、とりわけ黒色腫の処置の新しい治療の機会を提供する。
【0031】
本発明の化合物はまたc−Rafキナーゼが関与する細胞過程を阻害する。c−Rafはras癌遺伝子により活性化され、これは多くのヒト癌で変異している。故に、c−Rafのキナーゼ活性の阻害は、ras介在腫瘍増殖を予防する方法を提供する[Campbell, S. L., Oncogene, 17, 1395(1998)]。
【0032】
本発明の化合物はまたKDR、Flt−1およびFlt−4が関与する細胞過程を阻害する。脱制御された血管形成と関連する多くの疾患、例えば眼血管新生が原因の疾患、とりわけ網膜症(糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症);乾癬;“イチゴ状血管腫”(=血管腫)のような血管芽腫;関節炎、とりわけリウマチ性関節炎、アテローム性動脈硬化症および移植後に起こるアテローム性動脈硬化症、子宮内膜症または慢性喘息のような種々の炎症性疾患;および、とりわけ、腫瘍疾患(固形腫瘍だけでなく、また多くの初生血液細胞および白血病細胞がc−kit、KDR、Flt−1およびFlt−4を発現するため、多くの白血病および他の液性腫瘍も)が既知である。Flt−4は、発育中のリンパ管で発現される。成人組織においてリンパ性内皮および幾分かの高内皮細静脈のみがFlt4 mRNAを発現し、転移リンパ節およびリンパ管腫におけるリンパ性洞で増加した発現が起こる。KDR−介在機能的効果のKDRの触媒活性を阻害することによる阻害は、癌を含む血管形成性(angiogenized)疾患状態の処置における重要な治療的戦略であると考えられる。
【0033】
別々の遺伝子によりそれぞれコードされるp38MAPK(α、β、γ、δ)の多くの形は、浸透圧ストレス、UV光およびサイトカイン介在事象を含む様々な刺激に対する細胞の応答に関与するキナーゼカスケードの一部を形成する。p38のこれら4つのイソ型は、細胞内シグナル伝達の異なる態様を制御すると考えられる。その活性化は、TNFαのような前炎症性サイトカインの合成および酸性に至るシグナル伝達事象のカスケードの一部である。P38は、他のキナーゼおよび転写因子を含む、下流基質のリン酸化により機能する。p38キナーゼを阻害する薬剤は、TNFα、IL−6、IL−8およびIL−1βを含むが、これらに限定されないサイトカインの酸性を遮断することが示されている。末梢血単球(PBMC)は、インビトロでリポポリサッカライド(LPS)で刺激されたとき、前炎症性サイトカインを発現および分泌することが示されている。P38阻害剤は、PBMCを、LPSでの刺激前にこのような化合物で前処置したときに、この作用を有効に遮断する。P38阻害剤は、炎症性疾患の動物モデルにおいて有用である。多くの疾患状態の破壊的影響は、前炎症性サイトカインの過剰発現が原因である。p38阻害剤がこの過剰発現を制御する能力により、それらは疾患修飾剤として有効である。
【0034】
p38の機能を遮断する分子は、骨再吸収、炎症、ならびに他の免疫および炎症が基本の病態の阻害に有効であることが示されている。故に、安全で有効なp38阻害剤が、p38シグナル伝達、例えば、RAの調節により制御できる疾患を軽減するための処置の手段を提供するであろう。故に、p38活性を阻害する本発明の化合物は、炎症、骨関節症、リウマチ性関節炎、癌、自己免疫性疾患の処置に、および他のサイトカイン介在疾患の処置に有用である。
【0035】
トランスフォーミング増殖因子−ベータ(TGFβ)は、例えば、TGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3を含む、タンパク質のスーパーファミリーを示し、これらは細胞増殖および分化、胚および骨発育、細胞外マトリックス形成、造血、免疫および炎症性応答の多面的(pleotropic)調節剤である。TGFβファミリーのメンバーは、細胞内シグナル伝達経路を開始して、最終的に細胞サイクルを制御する遺伝子の発現、増殖性応答の制御に至るか、またはアウトサイド−イン細胞シグナル伝達、細胞接着、移動および細胞間コミュニケーションを介在する細胞外マトリックスタンパク質に関する。結果として、TGFβ細胞内シグナル伝達経路の阻害剤である本発明の化合物は、制御されていないTGFβ活性と関連する腎臓障害ならびに、糸球体腎炎(GN)、例えばメサンギウム増殖性GN、免疫性GN、および半月状GNを含む過剰な線維症を含む、線維増殖性疾患の処置に有用である。他の腎臓状態は、糖尿病性腎症、腎臓間質性線維症、シクロスポリンを投与されている移植患者の腎臓線維症、およびHIV関連ネフロパシーを含む。コラーゲン血管障害は、進行性全身性硬化症、多発性筋炎、強皮症、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、モルヘア、またはレイノー病の発生と関連するこれらのものを含む。過剰なTGFβ活性が原因の肺線維症は、成人呼吸窮迫症候群、COPD、特発性肺線維症、およびしばしば自己免疫性障害と関連する間質性肺線維症、例えば全身性エリテマトーデスおよび強皮症、化学物質接触、またはアレルギーを含む。線維増殖性特性と関連する他の自己免疫性障害は、リウマチ性関節炎である。線維増殖性状態は、外科的眼科工程と関連し得る。このような工程は、増殖性硝子体網膜症、眼内レンズ移植を伴う白内障摘出、および緑内障後ドレナージ手術を含む。
【0036】
前記によって、本発明は、さらに、処置を必要とする対象における、上記のいずれかの疾患または障害を処置する方法であり、該対象に治療的有効量(下記“投与および医薬組成物”参照)の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することをを含む、方法を提供する。上記の全ての使用に関して、必要な投与量は投与形態、処置すべき特定の状態および所望の効果に依存して変化するであろう。
【0037】
投与および医薬組成物
一般に、本発明の化合物は、治療的有効量で、当分野で既知の通常のかつ許容されるいずれかの形態を介して、単独でまたは1種もしくはそれ以上の他の治療剤と共に、投与されるであろう。治療的有効量は、疾患の重症度、対象の年齢および関連する健康状態、使用する化合物の効果および他の因子に依存して広範囲に変化し得る。一般に、全身的に十分な結果が、約0.03から2.5mg/体重kgの投与により得られることが指示される。大型哺乳類、例えばヒトにおける指示される一日投与量は、約0.5mgから約100mgであり、簡便には、例えば1日4回までの分割用量で、または遅延形で投与する。経口投与用の適当な単位投与形は、約1から50mg活性成分を含む。
【0038】
本発明の化合物は、医薬組成物として、任意の慣用の経路で、特に経腸的、例えば、経口的に、例えば、錠剤またはカプセルの形で、または非経腸的に、例えば、注射可能溶液または懸濁液の形で、局所的に、例えば、ローション、ゲル、軟膏またはクリームの形で、または経鼻または坐薬形で投与できる。遊離形または薬学的に許容される塩形の本発明の化合物を、少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む医薬組成物は、混合、造粒またはコーティング法による慣用の方法で製造できる。例えば、経口組成物は、活性成分をa)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)滑剤、例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウムまたはカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;錠剤についてはまたc)結合剤、例えば、マグネシウムアルミニウムシリケート、デンプンペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドン;望むならばd)崩壊剤、例えば、デンプン、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩、または起沸性混合物;および/またはe)吸収剤、着色剤、香味剤および甘味剤と共に含む、錠剤またはゼラチンカプセルである。注射可能組成物は、水性等張溶液または懸濁液であり、坐薬は脂肪エマルジョンまたは懸濁液から製造できる。本組成物は滅菌できおよび/またはアジュバント、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調整用塩および/または緩衝剤を含んでよい。加えて、それらは他の治療的に価値のある物質も含み得る。経皮的投与のための適当な製剤は、有効量の本発明の化合物と担体を含む。担体は、宿主の皮膚を介した通過を助けるための吸収可能な薬理学的に許容される溶媒を含む。例えば、経皮デバイスは、裏打ち部材、化合物を所望により担体と含む貯蔵部、所望により、化合物の宿主の皮膚への送達を制御されかつ予定された速度で長時間送達するための速度制御バリアおよび、皮膚にデバイスを固定するための手段を含む、バンデージの形である。マトリックス経皮製剤も使用し得る。例えば皮膚および眼への、局所適用のための適当な製剤は、好ましくは当分野で既知の水性溶液、軟膏、クリームまたはゲルを含む。これらは可溶化剤、安定化剤、張性増強剤(tonicity enhancing agent)、緩衝剤および防腐剤を含み得る。
【0039】
本発明の化合物は、1種またはそれ以上の治療剤との組み合わせで、治療的有効量で投与できる(医薬的組み合わせ)。例えば、相乗効果は、他の免疫調節性または抗炎症性物質、例えばシクロスポリン、ラパマイシン、またはアスコマイシンもしくはそれらの免疫抑制性類似体、例えばシクロスポリンA(CsA)、シクロスポリンG、FK−506、ラパマイシン、または同等な化合物、コルチコステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキサート、ブレキナール、レフルノミド、ミゾルビン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、15−デオキシスペルグアリン、免疫抑制性抗体、とりわけ白血球受容体、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD25、CD28、B7、CD45、CD58またはそれらのリガンドに対するモノクローナル抗体、または他の免疫調節性化合物、例えばCTLA41gと組み合わせたとき、起こり得る。本発明の化合物を他の治療剤と共に投与するとき、併用投与する化合物の投与量は、もちろん、用いる併用剤のタイプ、用いる具体的薬剤、処置すべき状態などに依存して変化するであろう。
【0040】
本発明はまた、a)本明細書に記載の通りの、遊離形または薬学的に許容される塩形の本発明の化合物である第一剤、およびb)少なくとも1種の併用剤を含む、医薬的組み合わせ、例えばキットを提供する。該キットはその投与のための指示書を含み得る。
【0041】
本明細書で利用する“併用投与”または“組み合わせ投与”などの用語は、選択した複数の治療剤の単独の患者への投与を包含することを意味し、薬剤を必ずしも同じ投与経路でまたは同時に投与するものではない処置レジメンを含むことを意図する。
【0042】
本明細書で使用する“医薬的組み合わせ”なる用語は、1種以上の活性成分の混合または組み合わせに由来する製品を意味し、活性成分の固定されたまたは固定されていない組み合わせの両方を含む。“固定された組み合わせ”は、活性成分、例えば式Iの化合物および併用剤を、両方とも患者に同時に1つの物または投与量として投与することを意味する。“固定されていない組み合わせ”は、活性成分、例えば式Iの化合物および併用剤を、患者に、別々の物として、同時に、一緒にまたは具体的時間制限なしに連続して投与し、ここで、このような投与が患者の体内で2種の化合物の治療的有効レベルを提供することを意味する。後者はまたカクテル療法、例えば、3種またはそれ以上の活性成分の投与にも適用できる。
【0043】
本発明の化合物の製造法
本発明はまた本発明の化合物の製造法を含む。記載の反応において、反応性官能基、例えばヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基を、これらが最終産物で望まれるとき、反応へのそれらの望ましくない参加を避けるために、保護する必要があり得る。慣用の保護基を、標準的技法に従い行うことができ、例えば、T.W. Greene and P. G. M. Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry”, John Wiley and Sons, 1991を参照のこと。
【0044】
式Iの化合物は、下記反応スキームIの通りに進行して製造できる:
【化2】

(式中、A、B、RおよびRは、発明の概要において式Iについて定義した通りである)。
【0045】
本発明の化合物(式I)は、式2の化合物と式3の化合物を、適当な反応物(例えば、酢酸アンモニウムなど)および適当な溶媒(例えば、酢酸など)の存在下で反応させることにより製造できる。反応は、100から140℃の範囲の温度で行い、終了まで24時間かかり得る。式Iの化合物の合成は、下記実施例に詳述する。
【0046】
本発明の化合物を製造するための付加的方法
本発明の化合物は、遊離塩基形の化合物と、薬学的に許容される無機または有機酸の反応により、薬学的に許容される酸付加塩として製造できる。あるいは、本発明の化合物の薬学的に許容される塩基付加塩を、遊離酸形の化合物と、薬学的に許容される無機または有機塩基の反応により製造できる。あるいは、塩形の本発明の化合物を、塩の出発物質または中間体を使用して製造できる。
【0047】
本発明の化合物の遊離酸または遊離塩基形は、対応する塩基付加塩または酸付加塩形から各々製造できる。例えば酸付加塩形の本発明の化合物は、対応する遊離塩基に、適当な塩基(例えば、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウムなど)で処理することにより変換できる。塩基付加塩形の本発明の化合物は、対応する遊離酸に、適当な酸(例えば、塩酸など)で処理することにより変換できる。
【0048】
酸化されていない形の本発明の化合物を、本発明の化合物のN−オキシドから、還元剤(例えば、硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、リチウムボロハイドライド、水素化ホウ素ナトリウム、リントリクロライド、トリブロマイドなど)で、適当な不活性有機溶媒(例えばアセトニトリル、エタノール、水性ジオキサンなど)中、0から80℃で処理することにより製造できる。
【0049】
本発明の化合物のプロドラッグ誘導体を、当業者に既知の方法により製造できる(例えば、さらなる詳細はSaulnier et al., (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985参照)。例えば、適切なプロドラッグは、誘導体化していない本発明の化合物と、適当なカルバミル化剤(例えば、1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロリデート、パラ−ニトロフェニルカーボネートなど)を反応させることにより製造できる。
【0050】
本発明の化合物の被保護誘導体は、当業者に既知の手段により製造できる。保護基の創成およびそれらの除去に適用できる技術の詳述は、“Protecting Groups in Organic Chemistry”, 3rd edition, John Wiley and Sons, Inc., 1999に見ることができる。
【0051】
本発明の化合物は、溶媒和物(例えば、水和物)として簡便に製造でき、または本発明の工程中に形成される。本発明の化合物の水和物は、ジオキシン、テトラヒドロフランまたはメタノールのような有機溶媒を使用する、水性/有機溶媒混合物からの再結晶により簡便に製造できる。
【0052】
本発明の化合物は、該化合物のラセミ混合物と、光学活性分割剤を反応させ、ジアステレオ異性体化合物のペアを形成され、ジアステレオマーを分離し、光学的に純粋なエナンチオマーを回収することにより、それらの個々の立体異性体として製造できる。エナンチオマーの分離は本発明の化合物の共有結合的ジアステレオ誘導体を使用して行うことができるが、分離可能な複合体(例えば、結晶性ジアステレオマー塩)が好ましい。ジアステレオマーは、異なる物理特性(例えば、融点、沸点、溶解度、反応性など)を有し、これらの差異を利用して容易に分割できる。ジアステレオマーは、クロマトグラフィー、または好ましくは、溶解度の差異を利用した分離/分割法により分離できる。光学的に純粋なエナンチオマーを、次いで、ラセミ体化をもたらさない任意の実際的手段により、分割剤と共に回収する。化合物の立体異性体それらのラセミ混合物からの分離に適用可能な技術のより詳細な記載は、Jean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolution”, John Wiley and Sons, Inc., 1981に見ることができる。
【0053】
要約すると、式Iの化合物は、下記を含む方法により製造できる:
(a)反応スキームIのもの;および
(b)所望により、本発明の化合物の薬学的に許容される塩への変換;
(c)所望により、塩形の本発明の化合物の非塩形への変換;
(d)所望により、酸化されていない本発明の化合物の薬学的に許容されるN−オキシドの変換;
(e)所望により、本発明の化合物のN−オキシド形の、その酸化されていない形への変換;
(f)所望により、異性体の混合物からの本発明の化合物の個々の異性体への分割;
(g)所望により、誘導体化されていない本発明の化合物の、薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体への変換;および
(h)所望により、本発明の化合物のプロドラッグ誘導体の、その誘導体化されていない形への変換。
【0054】
出発物質の製造法が具体的に記載されていない限り、該化合物は既知であるか、当分野で既知の方法に準じて製造できるか、または、後記の実施例に記載の通りに製造できる。
【0055】
当業者には、上記の変換が本発明の化合物の製造法の代表的な方法であるだけであり、他の既知の方法を同様に使用できることは明白であろう。
【0056】
実施例
本発明を、本発明の式Iの化合物の製造法を説明する下記実施例によりさらに例示するが、限定するものではない。
実施例1
フェニル−カルバミン酸8−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−3H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステル
【化3】

【0057】
8−アミノ−2−ナフトール(14.63g、91.9mmol)およびジ−tert−ブチルジカーボネート(21.0g、96.2mmol)の混合物の塩化メチレン(200mL)およびテトラヒドロフラン(200mL)中の溶液を、還流条件下、24時間撹拌する。混合物を次いで環境温度に冷却し、濾過し、濾液を濃縮乾固する。シリカゲルクロマトグラフィー(CHCl/EtOEt=5/95から10/90)により、(7−ヒドロキシ−ナフタレン−1−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(21.50g、90%収率)を得る;MS m/z(M+Na+) 282.05。
【0058】
(7−ヒドロキシ−ナフタレン−1−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(5.11g、19.7mmol)および炭酸カリウム(3.26g、23.6mmol)の混合物のN、N−ジメチルホルムアミド溶液に、臭化ベンジル(3mL、4.31g、25.2mmol)をゆっくり添加する。混合物を次いで室温で一晩撹拌し、氷水(150mL)に注ぐ。得られた混合物を酢酸エチル(4×100mL)で抽出し、有機部分を合わせ、水および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc=15/1)で精製して、(7−ベンジルオキシ−ナフタレン−1−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(5.93g、86.3%)を得る;1H NMR 400 Hz(CDCl3) δ1.60(s, 9H), 5.22(s, 2H), 6.63(br, 1H), 7.27(m, 2H), 7.38(m, 2H), 7.45(m, 2H), 7.44(d, J=7.44 Hz, 2H), 7.61(d, J=8.11 Hz, 1H), 7.80(m, 2H);MS m/z(M+Na+) 372.10。
【0059】
(7−ベンジルオキシ−ナフタレン−1−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(9.89g、28.3mmol)の塩化メチレン(200mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(50mL、73g、649mmol)を添加し、混合物を室温で30分撹拌する。溶媒および過剰のトリフルオロ酢酸を減圧下蒸発させ、粗生成物を高真空で一晩乾燥させ、得られた7−ベンジルオキシ−ナフタレン−1−イルアミン(6.98g、99%)をさらに精製することなく次工程に使用した。
【0060】
7−ベンジルオキシ−ナフタレン−1−イルアミン(6.98g、28.02mmol)の濃塩化水素(30mL)、水(30mL)およびテトラヒドロフラン(30mL)中の溶液を、氷−塩(塩化ナトリウム)浴中で冷却する。亜硝酸ナトリウム(2.32g、33.6mmol)の水(20mL)溶液を次いで15分かけて滴下し、反応温度を5℃以下に維持する。混合物をさらに30分撹拌し、その後ヨウ化カリウム(9.3g、56.04mmol)の水(30mL)溶液を添加する。得られた混合物を3時間、室温で撹拌し、その後酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/CHCl=25/1−20/1)で精製して、7−ベンジルオキシ−1−ヨード−ナフタレン(6.26g、61%)を得る;MS m/z(M+Na+) 361.00。
【0061】
7−ベンジルオキシ−1−ヨード−ナフタレン(4.60g、12.77mmol)のエーテル(120mL)溶液に、1.7M tert−ブチル−リチウムのペンタン(8.26mL、14.0mmol)溶液を、−78℃で窒素雰囲気下添加し、得られた混合物を1時間撹拌し、その間に5℃まで温まる。混合物を再び−78℃に冷却し、その後テトラメチルエチレン−ジアミン(1.93mL、1.49g、12.79mmol)を添加する。混合物を10分撹拌し、その後N,N−ジメチルホルムアミド(0.99mL、0.93g、12.78mmol)を添加する。混合物を徐々に室温まで温め、一晩撹拌する。酢酸エチルを反応混合物に添加し、飽和塩化アンモニウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc=20/1)で精製して、7−ベンジルオキシ−ナフタレン−1−カルボアルデヒド(1.95g、58.3%収率)を得る;1H NMR 400 Hz(CDCl3) δ 5.27(s, 2H), 7.33(m, 2H), 7.42(m, 2H), 7.52(m, 3H), 7.83(d, J=8.98 Hz, 1H), 7.95(d, J=7.11 Hz, 1H), 8.03(d, J=8.10 Hz, 1H), 10.32(s, 1H);MS m/z(M+H+) 263.05。
【0062】
4−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシメチル)−ピリジン(1.59g、7.09mmol)のテトラヒドロフラン(40mL)溶液に、2M リチウムジイソプロピルアミドのヘキサン溶液(3.55mL、7.11mmol)を5分にわたり、−50℃で窒素雰囲気下添加する。混合物を−40℃で1時間撹拌し、7−ベンジルオキシ−ナフタレン−1−カルボアルデヒド(1.69g、6.45mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液を10分にわたり添加する。反応物を徐々に室温まで温め、その温度で一晩撹拌し、その後飽和重炭酸ナトリウムでクエンチし、酢酸エチルで抽出する。有機層を合わせ、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮する。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc=2/1−1/1)により、1−(7−ベンジルオキシ−ナフタレン−1−イル)−2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−2−ピリジン−4−イル−エタノール(3.85g、89%収率)を得る;MS m/z(M+H+) 486.20。
【0063】
1−(7−ベンジルオキシ−ナフタレン−1−イル)−2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−2−ピリジン−4−イル−エタノール(3.75g、7.72mmol)のテトラヒドロフラン(60mL)溶液に、1.0M テトラブチルアンモニウムフルオリドのテトラヒドロフラン溶液(10mL、10mmol)を添加し、混合物を室温で1時間撹拌する。混合物を濃縮し、酢酸エチルを残渣に添加する。溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮し、高真空で乾燥させる。得られたジオールをさらに精製することなく下記の酸化に使用する。
【0064】
ジメチルスルホキシド(1.64mL、1.81g、23.1mmol)および無水塩化メチレン(100mL)の混合物を−70℃に冷却し、塩化オキサリル(2.0mL、2.94g、23.1mmol)を滴下する。混合物を15分その温度で撹拌し、上記ジオールの塩化メチレン溶液(40mL)およびジメチルスルホキシド(10mL)を滴下する。混合物を−60℃で2時間撹拌し、その後トリエチルアミン(6.45mL、4.68g、46.3mmol)を添加する。反応混合物を徐々に室温まで温め、一晩撹拌する。水を次いで混合物に添加し、有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAC=3/1−2/1)で精製して、1−(7−ベンジルオキシ−ナフタレン−1−イル)−2−ピリジン−4−イル−エタン−1,2−ジオン(2.26g、79.7%収率)を得る;1H NMR 400 Hz(CDCl3) δ5.31(s, 2H), 7.40(m, 5H), 7.55(d, J=7.30 Hz, 2H), 7.81(dd, J=1.66, 4.42 Hz, 2H), 7.87(m, 2H), 8.10(d, J=8.08 Hz, 1H), 8.89(dd, J=1.55, 4.48 Hz, 2H), 8.93(d, J=2.48 Hz, 1H);MS m/z(M+H+) 368.20。
【0065】
1−(7−ベンジルオキシ−ナフタレン−1−イル)−2−ピリジン−4−イル−エタン−1,2−ジオン(576mg、1.57mmol)、ベンズアルデヒド(0.2mL、0.21g、1.98mmol)および酢酸アンモニウム(1.21g、15.7mmol)の混合物の酢酸(15mL)溶液を、120℃で一晩撹拌する。反応混合物を次いで室温に冷却し、氷冷水酸化アンモニウム溶液に注ぎ、酢酸エチル(3×100mL)で抽出する。有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮する。粗生成物のシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl/EtOAc=2/1)により、4−[5−(7−ベンジルオキシ−ナフタレン−1−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾル−4−イル]−ピリジン(700mg、98%収率)を得る;1H NMR 400 Hz(DMSO) δ 3.30(s, 2H), 6.99(s, 1H), 7.21(m, 5H), 7.24(m, 3H), 7.43(t, J=7.31 Hz, 1H), 7.52(t, J=7.37 Hz, 3H), 7.66(m, 1H), 8.00(m, 2H), 8.13(d, J=7.30 Hz, 2H), 8.32(d, J=4.43 Hz, 2H);MS m/z(M+H+) 454.20。
【0066】
4−[5−(7−ベンジルオキシ−ナフタレン−1−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾル−4−イル]−ピリジン(810mg、1.79mmol)のメタノール(50mL)およびテトラヒドロフラン(10mL)の溶液に、10%Pd/C(100mg)を添加し、混合物を3時間、水素雰囲気(1atm)下撹拌する。触媒を濾過し、酢酸エチルで洗浄する。濾液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(CHCl/EtOAc=1/1)により、8−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−3H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−オール(520mg、80%収率)をシロップとして得る;1H NMR 400 Hz(CD3OD) δ 6.89(d, J=2.32 Hz, 1H), 7.17(dd, J=2.38, 8.89 Hz, 1H), 7.48(dd, J=7.15, 8.21 Hz, 1H), 7.55(m, 3H), 7.66(dd, J=1.09, 7.04 Hz, 1H), 7.91(d, J=8.93 Hz, 1H), 7.95(d, J=7.03 Hz, 3H), 8.04(d, J=8.24 Hz, 1H), 8.10(m, 2H), 8.47(d, J=7.02 Hz, 2H);MS m/z(M+H+) 364.20。
【0067】
8−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−3H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−オール(31mg、0.085mmol)、フェニルイソシアネート(11mg、0.094mmol)およびトリエチルアミン(17.8μL、12.9mg、0.128mmol)の混合物のN,N−ジメチルホルムアミド(1.5mL)溶液を2時間、室温で撹拌する。分取LCMSにより、フェニル−カルバミン酸8−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−3H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステル(17mg、41%収率)を得る;1H NMR 400 Hz(CD3OD) δ 7.01(m, 2H), 7.25(m, 4H), 7.39(m, 5H), 7.45(dd, J=2.28, 8.86 Hz, 1H), 7.53(m, 3H), 7.72(dd, J=7.14, 8.23 Hz, 1H), 7.83(d, J=6.02 Hz, 1H), 7.90(d, J=6.99 Hz, 2H), 8.10(m, 3H), 8.19(d, J=8.29 Hz, 1H), 8.43(d, J=7.00 Hz, 2H);MS m/z(M+H+) 483.20。
【0068】
上記の実施例に記載の方法を繰り返し、適当な出発物質を使用して、表1に示す通りの下記の式Iの化合物を得る。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0069】
アッセイ
本発明の化合物を、それらがBCR−Ablを発現する32D細胞(32D−p210)の細胞増殖を、親32D細胞と比較して選択的に阻害する能力についてアッセイする。これらのBCR−Ablで形質転換した細胞の増殖を選択的に阻害する化合物を、Bcr−ablの野生型または変異型のいずれかを発現するBa/F3細胞の増殖性活性について試験する。加えて、化合物をそれらがb−Rafを阻害する能力についてアッセイする。
【0070】
細胞性BCR−Abl依存性増殖の阻害(ハイスループット法)
使用するマウス細胞系は、BCR−Abl cDNA(32D−p210)で形質転換した32D造血先祖細胞系である。これらの細胞を、ペニシリン50μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mLおよびL−グルタミン200mMを添加したRPMI/10%胎児ウシ血清(RPMI/FCS)に維持する。形質転換されていない32D細胞を、IL3の供給源として15%のWEHIを添加された馴化培地で同様に維持する。
【0071】
50μlの32Dまたは32D−p210細胞懸濁液を、Greiner 384ウェルマイクロプレート(黒色)に、5000細胞/ウェルの密度で播種する。50nlの試験化合物(DMSO貯蔵溶液中1mMを)を各ウェルに添加する(STI571を陽性対照として包含する)。細胞を72時間、37℃で、5%COでインキュベートする。10μlの60%Alamar Blue溶液(Tek diagnostics)を各ウェルに添加し、細胞をさらに24時間インキュベートする。蛍光強度(励起530nm、発光580nm)を、AcquestTMシステム(Molecular Devices)を使用して定量する。
【0072】
細胞性BCR−Abl依存性増殖の阻害
32D−p210細胞を96ウェルTCプレートに15,000細胞/ウェルの密度で播種する。50μLの試験化合物の2倍連続希釈(Cmaxは40μM)を各ウェルに添加する(STI571を陽性対照として包含する)。細胞を48時間、37℃、5%COでインキュベート後、15μLのMTT(Promega)を各ウェルに添加し、細胞をさらに5時間インキュベートする。570nmの光学密度を分光測光により定量し、IC50値、すなわち50%阻害に必要な化合物の濃度を用量応答曲線から決定する。
【0073】
細胞サイクル分布に対する効果
32Dおよび32D−p210細胞を6ウェルTCプレートに、5mlの培地中2.5×10細胞/ウェルで播種し、1または10μMの試験化合物を添加する(STI571を対照として包含する)。細胞を次いで24時間または48時間、37℃、5%COでインキュベートする。2mlの細胞懸濁液をPBSで洗浄し、70%EtOHに1時間固定し、PBS/EDTA/RNase Aで30分処置する。ヨウ化プロピジウム(Cf=10μg/ml)を添加し、蛍光強度をFACScaliburTMシステム(BD Biosciences)でのフローサイトメトリーにより定量する。本発明の試験化合物は、32D−p210細胞に対してアポトーシス作用を証明するが、32D親細胞ではアポトーシスを誘発しない。
【0074】
細胞性BCR−Abl自己リン酸化に対する効果
BCR−Abl自己リン酸化を、c−abl特異的捕捉抗体および抗ホスホチロシン抗体を使用した、捕捉Elisaで定量する。32D−p210細胞を96ウェルTCプレートに、50μLの培地中2×10細胞/ウェルで播種する。50μLの試験化合物の2倍連続希釈(Cmaxは10μM)を各ウェルに添加する(STI571を陽性対照として包含する)。細胞を、90分、37℃、5%COでインキュベートする。次いで、細胞を1時間、氷上でプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含む150μLの融解緩衝液(50mM Tris HCl、pH7.4、150mM NaCl、5mM EDTA、1mM EGTAおよび1%NP−40)で処理する。50μLの細胞融解物を、予め抗abl特異的抗体でコーティングし、ブロックした96ウェルoptiplateに添加する。プレートを、4時間、4℃でインキュベートする。TBS−Tween 20緩衝液で洗浄後、50μLのアルカリホスファターゼ結合抗ホスホチロシン抗体を添加し、プレートをさらに一晩4℃でインキュベートする。TBS−Tween 20緩衝液で洗浄後、90μLの発光基質を添加し、発光をAcquestTMシステム(Molecular Devices)を使用して定量する。BCR−Abl発現細胞の増殖を阻害する本発明の試験化合物は、細胞性BCR−Abl自己リン酸化を用量依存的方法で阻害する。
【0075】
Bcr−ablの変異型を発現する細胞の増殖に対する効果
本発明の化合物を、BCR−Ablの野生型または、STI571に対する耐性を付与するか感受性を低下させる変異型(G250E、E255V、T315I、F317L、M351T)のいずれかを発現するBa/F3細胞に対するそれらの抗増殖効果を試験する。変異体BCR−Abl発現細胞および非形質転換細胞に対するこれらの化合物の抗増殖性効果を、上記の通り10、3.3、1.1および0.37μMで試験した(IL3を欠く培地中)。非形質転換細胞に対して毒性がない化合物のIC50値を、上記の通りに得た用量応答曲線から決定した。
【0076】
b−Raf
本発明の化合物を、それらのb−Rafを阻害する能力について試験する。アッセイを、黒色壁かつ透明底の384ウェルMaxiSorpプレート(NUNC)で行う。基質、IκBαをDPBS(1:750)で希釈し、15μlを各ウェルに添加する。プレートを4℃で一晩インキュベートし、EMBLAプレート洗浄機を使用して、3回TBST(25mM Tris、pH8.0、150mM NaClおよび0.05%Tween−20)で洗浄する。プレートをSuperblock(15μl/ウェル)で3時間、室温でブロックし、TBSTで3回洗浄し、軽く叩いて乾燥させる。20μM ATP(10μl)含有アッセイ緩衝液、続いて100nlまたは500nlの化合物を各ウェルに添加する。B−Rafをアッセイ緩衝液で希釈し(25μl中に1μl)、10μlの希釈したb−Rafを各ウェルに添加する(0.4μg/ウェル)。プレートを室温で2.5時間インキュベートする。キナーゼ反応を、プレートを6回TBSTで洗浄することにより停止させる。Phosph−IκBα(Ser32/36)抗体をSuperblock中で希釈し(1:10,000)、15μlを各ウェルに添加する。プレートを4℃で一晩インキュベートし、TBSTで6回洗浄する。AP結合ヤギ抗マウスIgGをSuperblockで希釈し(1:1,500)、15μlを各ウェルに添加する。プレートを室温で1時間インキュベートし、TBSTで6回洗浄する。15μlのAttophos AP基質を各ウェルに添加し、プレートを室温で15分インキュベートする。プレートをAcquestまたはAnalyst GTで、Fluorescence Intensity Nanxin BBT anion(505二色性ミラー)を使用して読み取る。
【0077】
Upstate KinaseProfilerTM−放射酵素的フィルター結合アッセイ
本発明の化合物を、一連のキナーゼの個々のメンバーを阻害する能力についてアッセイする(キナーゼの部分的、非限定的リストは下記を含む:Abl、BCR−Abl、EGF−R、c−erbB2キナーゼ(HER−2)、PDGF−R、lck、SAPK2α、p38、TGFβ、KDR、c−Kit、b−RAF、c−RAF、FLT1およびFLT4)。化合物を、10μMの最終濃度でデュプリケートで、この一般的プロトコールに従い試験する。キナーゼ緩衝液組成および基質は、“Upstate KinaseProfilerTM”パネルに含まれる異なるキナーゼについて変わることは注意すべきである。キナーゼ緩衝液(2.5μL、10×−必要であればMnCl含有)、キナーゼ緩衝液中の活性キナーゼ(0.001−0.01単位;2.5μL)、特異的またはポリ(Glu4−Tyr)ペプチド(5−500μMまたは.01mg/ml)およびキナーゼ緩衝液(50μM;5μL)を、氷上でエッペンドルフで混合する。Mg/ATPミックス(10μL;67.5(または33.75)mM MgCl、450(または225)μM ATPおよび1μCi/μl [γ−32P]−ATP(3000Ci/mmol))を添加し、反応物を約30℃で約10分インキュベートする。反応混合物を2cm×2cm P81(ホスホセルロース、正に荷電したペプチド基質のため)またはWhatman No. 1(ポリ(Glu4−Tyr)ペプチド基質のため)試験紙升目にスポット(20μL)する。アッセイ升目を4回、各5分、0.75%リン酸で、そして1回アセトンで5分洗浄する。アッセイ升目をシンチレーションバイアルに移し、5mlシンチレーションカクテルを添加し、基質への32P取り込み(cpm)をBeckmanシンチレーションカウンターで計数する。各反応について阻害パーセントを計算する。
【0078】
遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物は、例えば、本願に記載のインビトロ試験法により示される通り、価値のある薬理学的特性を示す。例えば、式Iの化合物は、好ましくは1×10−10から1×10−5MのIC50を示し、好ましくは野生型BCR−Ablおよびb−Rafに対しては500nMより少ない。例えば、例えば、6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−オール(化合物11)および(4−ジメチルアミノ−フェニル)−カルバミン酸6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステル(化合物15)は、b−Rafに対して各々300nMおよび879nMのIC50を有する。
【0079】
式Iの化合物は、10μMの濃度でAbl、BCR−Abl、PDGF−R、lck、SAPK2α、p38、TGFβ、KDR、c−Kit、b−RAF、c−RAF、FLT1および/またはFLT4キナーゼに対して、好ましくは50%より大きい、好ましくは約70%より大きい阻害パーセンテージを示す。例えば、6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−オール(化合物11))は、10μMの濃度で、下記キナーゼを括弧内に示すパーセンテージで阻害する(例えば、100%は完全な阻害、0%は阻害なしを意味する):Abl(98%);c−RAF(98%)、Lck(61%);およびSAPK2α(74%)。
【0080】
ここに記載の例および態様は、説明の目的のためのみであり、それに照らした様々な修飾または変化が当業者には示唆され、それらは本発明の精神および範囲の範囲内および添付の特許請求の範囲内に包含されることは理解されるべきである。本明細書で引用する全ての刊行物、特許および特許出願は全ての目的のために引用して本明細書に包含する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

〔式中、
およびRは、独立してから水素、−XR、−XC(O)R、−XSR、−XS(O)R、−XS(O)、−XOR、−XNC(O)NHRおよび−XOC(O)NR選択され;ここで、Xは結合またはC1−4アルキレンであり;Rはから選択され水素およびC1−6アルキル;RはC6−10アリール、C5−10ヘテロアリール、C3−12シクロアルキルおよびC3−8ヘテロシクロアルキルから選択され;ここで、Rの全てのアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、所望によりヒドロキシ、ハロ、ニトロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−置換−C1−6アルキル、ハロ−置換−C1−6アルコキシ、−XC(O)ORおよび−NRから選択される1個から3個のラジカルで置換されていてよく;ここで、Xは結合またはC1−4アルキレンであり、そしてRおよびRは、独立して水素およびC1−6アルキルから選択され;ここで、ピリジニル環は、A−N=で置換された−C=基を3個まで有し得て;ここで、ナフチル環は、B−N=で置換された−C=基を4個まで有し得る。〕
の化合物、およびその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物および異性体。
【請求項2】
およびRが、独立して水素、−XRおよび−XOC(O)NRから選択され;ここで、Xが結合またはC1−4アルキレンであり;Rが水素およびC1−6アルキルから選択され;RがC6−10アリール、C5−10ヘテロアリールおよびC3−8ヘテロシクロアルキルから選択され;ここで、Rの全てのアリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロアルキルが、所望によりハロ、ニトロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−置換−C1−6アルキル、−XC(O)ORおよび−NRから選択される1個から3個のラジカルで置換されていてよく;ここで、Xが結合またはC1−4アルキレンであり、そしてRおよびRは、独立して水素およびC1−6アルキルから選択される、
請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が水素およびフェニルから選択され;ここで、該フェニルが所望によりトリフルオロメチル、ジメチルアミノ、メトキシ、ハロ、エトキシおよびニトロから選択される1個から3個のラジカルで置換されていてよい、
請求項2記載の化合物。
【請求項4】
が水素、−OHおよび−OC(O)NHRから選択され;ここで、Rがフェニルおよびベンゾ[1,3]ジオキソル−5−イルから選択され;ここで、Rの該フェニルは、所望により−C(O)OCHおよびジメチルアミノから選択される1個から3個のラジカルで置換されていてよい、
請求項2記載の化合物。
【請求項5】
フェニル−カルバミン酸8−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−3H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステル;4−(5−ナフタレン−1−イル−2−フェニル−ピリジン3H−イミダゾル−4−イル)−ピリジン;4−[2−(3,5−ビス−トリフルオロメチル−フェニル)−5−ナフタレン−1−イル−3H−イミダゾル−4−イル]−ピリジン;ジメチル−[4−(4−ナフタレン−1−イル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−2−イル)−フェニル]−アミン;4−[5−ナフタレン−1−イル−2−(2,4,6−トリメトキシ−フェニル)−3H−イミダゾル−4−イル]−ピリジン;4−[2−(2−フルオロ−フェニル)−5−ナフタレン−1−イル−3H−イミダゾル−4−イル]−ピリジン;4−[2−(2−エトキシ−フェニル)−5−ナフタレン−1−イル−3H−イミダゾル−4−イル]−ピリジン;4−[5−ナフタレン−1−イル−2−(3−ニトロ−フェニル)−3H−イミダゾル−4−イル]−ピリジン;4−(5−ナフタレン−1−イル−3H−イミダゾル−4−イル)−ピリジン;フェニル−カルバミン酸6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステル;6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−オール;4−[6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルオキシカルボニルアミノ]−安息香酸メチルエステル;ベンゾ[1,3]ジオキソル−5−イル−カルバミン酸6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステル;5−[6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルオキシカルボニルアミノ]−イソフタル酸ジメチルエステル;(4−ジメチルアミノ−フェニル)−カルバミン酸6−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステル;ベンゾ[1,3]ジオキソル−5−イル−カルバミン酸8−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステル;5−[8−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルオキシカルボニルアミノ]−イソフタル酸ジメチルエステル;および(4−ジメチルアミノ−フェニル)−カルバミン酸8−(2−フェニル−5−ピリジン−4−イル−1H−イミダゾル−4−イル)−ナフタレン−2−イルエステルから選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
治療的有効量の請求項1記載の化合物を、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項7】
動物に治療的有効量の請求項1記載の化合物を投与することを含む、動物における、キナーゼ活性の阻害がその疾患の病状および/または総体症状を予防、阻止または軽減できるものである疾患を処置する方法。
【請求項8】
キナーゼがAbl、BCR−Abl、PDGF−R、lck、SAPK2α、p38、TGFβ、KDR、c−Kit、b−RAF、c−RAF、FLT1およびFLT4から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
Abl、BCR−Abl、PDGF−R、lck、SAPK2α、p38、TGFβ、KDR、c−Kit、b−RAF、c−RAF、FLT1および/またはFLT4のキナーゼ活性がその疾患の病状および/または総体症状に関与するものである、動物における疾患の処置用医薬の製造のための、請求項1記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2007−507540(P2007−507540A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534216(P2006−534216)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/032597
【国際公開番号】WO2005/030151
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】