説明

タンパク質合成の調節

非腫瘍細胞と比較して、腫瘍細胞の増殖を阻害するための組成物および方法について開示する。タンパク質のキャップ非依存性翻訳と比較して、キャップ依存性翻訳を阻害する組成物についてスクリーニングする方法もまた記載される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府によって資金援助された研究に関する言及
本発明は、米国国立衛生研究所(the National Institutes of Health)によって授与された補助金番号U19-CA87427およびRO1-CA68262によって部分的に米国政府によって資金援助された。政府は本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
背景
翻訳開始のレベルにおけるタンパク質合成の調節は、細胞の成長、増殖、およびアポトーシスの制御において鍵となる役割を果たしている。開始因子eIF4EとeIF4Gとの相互作用はこのプロセスの主要な成分である。eIF4Eは、大部分のメッセンジャーRNAの5'末端において見い出される7-メチルグアノシンキャップ構造に結合する。その結合パートナーeIF4Gは、骨格タンパク質であり、RNAヘリカーゼeIF4Aを含む他の開始因子についてのドッキング部位を提供する。集合的に、eIF4E、eIF4G、およびeIF4Aは、eIF4Fと呼ばれる三成分複合体を形成する。一旦集合すると、この複合体は、eIF3のeIF4Gとの相互作用の結果として、mRNA分子の5'末端に40Sリボソームサブユニットを補充し、続いて、60Sサブユニットと一緒になる開始コドンまで、40Sサブユニットをスキャンする。このプロセスはeIF4Aによって容易にされ、そのヘリカーゼ活性の必要性は、スキャニングが起こるために融解されなければならない5'UTRにおける二次構造の量に直接的に比例する。
【0003】
多くの成長促進タンパク質の生合成は翻訳開始レベルで抑制され、いくつかの型の癌は不均衡な翻訳開始機構を示す。翻訳の阻害剤が存在するが、すべてではないとしても大部分がすべての翻訳に対して非特異的に働く。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
本発明は、成長因子およびオンコジーン産物の合成を選択的に抑制する翻訳開始の阻害剤を特徴とする。本発明は、真核生物翻訳開始因子eIF4EとeIF4Gとの間のタンパク質-タンパク質相互作用の多数の小分子阻害剤を含む。阻害化合物の分子量は600ダルトンまたはそれ未満、例えば、500ダルトン、400ダルトン、300ダルトン、200ダルトン、100ダルトンである。好ましくは、阻害剤は、天然でペプチドまたはタンパク質性ではない。
【0005】
例えば、本発明の化合物は、eIF4E/eIF4G相互作用を調節するものを含み、化学式

を有し、ここで
-R1は構造

のヒドラゾンチアゾール部分、または構造

のバルビツール酸部分(もしくはその誘導体)であり;
-R2は、それが結合する環上の1つ、2つ、または3つの位置に存在する水素、ヒドロキシル、CN、CF3、CO2H、SO3H、PO3H2、SO2R、SO2NHR、SONH2、CONH2、CONHRおよびNHCOR、またはニトロ基であり、ここでRは1〜4炭素のアルキルまたはアリールであり;
-R3は、環上の1つ、2つ、または3つの位置に個別に存在する基であり、ここで、この基はハロ、CN、CF3、CO2H、SO3H、PO3H2、SO2R、SO2NHR、SONH2、-N=NR、CONH2、CONHRおよびNHCOR、水素、結合体化されているかもしくは結合体化されていないアリールもしくはヘテロアリール、脂環式、複素環式、もしくは多環式基であってもよく、またはR3は、それが結合される環とともに結合体化環構造、例えば、ナフタレン、ベンゾジオキシン、またはベンゾジオキセピン環を形成し;ここでRは低級アルキル、例えば、C1〜C4またはアリールであり;
-R4は水素、ヒドロキシル、または低級ヒドロキシアルキル、カルボキシル、低級アルキルエステル、例えば、

、または酸素(この場合、破線の結合が存在し、すなわち、カルボニル基を形成する);テトラゾール、SO3H、またはPO3H2であり;
-R5はN(この場合、破線の結合が存在する)、NH、またはカルボニルであり;かつ -R6はNHまたはカルボニルである。
【0006】
化学式IIにおいて、R4は、望ましくは、カルボン酸基またはその薬学的に許容される塩であり;R5は望ましくはNであり;およびR6は望ましくはNHである。複数の態様において、R5およびR6は、望ましくは、それぞれ、カルボニルおよびCH2;CH2およびカルボニル;NHおよびCH2;またはCH2およびNHであってもよい。
【0007】
本発明の化合物の例には以下が含まれる:






【0008】
望ましくは、この化合物はEGI-1であり、本明細書では化合物154300、ICCB化合物1、またはICCB-15644とも呼ばれる。EGI-1の化学構造は以下に示す。

【0009】
本発明はまた、細胞を上記の1つまたは複数の化合物と接触させることによって細胞中のキャップ依存性タンパク質合成を阻害する方法を特徴とする。この阻害は、次にはアポトーシスを引き起こし、これは、成長促進タンパク質のダウンレギュレーション、ならびにアポトーシス促進タンパク質およびIRES-依存性タンパク質(例えば、Apaf-1、c-myc、XIAP、およびDAP5)のアップレギュレーションから生じる。本明細書に記載される化合物は、ヒトeIF4E(SEQ ID NO:1)のポリペプチドセグメント68〜84および120〜140によって形成されるeIF4Eの疎水性溝に結合する。これらの化合物は、eIF4E上のeIF4G結合部位をブロックすることによって、競合的結合によってeIF4EからeIF4Gを置き換え、またはその両方によって、eIF4EへのeIF4Gの結合を阻害する。調査した異なる化合物は、セグメント37〜39、68〜84、および120〜140によって形成される溝の中の、わずかに異なるが隣接する位置において結合する。EGI-1(化合物154300)は、例えば、残基L81、S82およびS83の近くに結合するのに対して、化合物600628は、残基V69、F72、W73およびY76の近くの隣接部位において結合する。隣接する結合部位はまた、H37、P38、L39、D127、L131、L135およびL138を含む。これらの残基は、以下のヒトeIF4Eの配列における太字体である。

【0010】
アポトーシスの間、4E-BP1は、その最初の24アミノ酸のカスパーゼ依存性切断を受ける。除去されるN末端セグメントは、リン酸化を開始するために必要とされるRAIPモチーフを含む。従って、短縮型の4E-BP1はeIF4Eに強固に結合するが、効率的にリン酸化はされない。eIF4Eの異所性発現は細胞をアポトーシスから保護するのに対して、4E-BP1の過剰発現は形質転換された細胞においてアポトーシスを誘導することができる。ペネトラチン(penetratin)配列に融合されたeIF4E-結合モチーフを含む合成ペプチドを用いる培養細胞の処理は、アポトーシスを誘導することが示されている。
【0011】
「に隣接する」とは、参照配列における参照アミノ酸の上流(NH2)または下流(COOH)の1つ、2つ、3つ、4つ、または5つの位置の中にあることを意味する。
【0012】
本発明はさらに、タンパク質合成を減少する組成物を同定する方法を特徴とする。この方法は、eIF4Eポリペプチドを候補化合物およびeIF4Gポリペプチドと接触させる工程、ならびにこの化合物の非存在下と比較してこの化合物の存在下でのeIF4E/eIF4g相互作用のレベルの減少を検出する工程を含む。eIF4E/eIF4g相互作用の減少は、この化合物がタンパク質合成を減少することを示す。任意に、eIF4EポリペプチドはSEQ ID NO:1の残基68〜84;SEQ ID NO:1の残基120〜140;SEQ ID NO:1の残基37〜39;またはSEQ ID NO:1の残基37〜39、68〜84および120〜140を含む。eIF4Eポリペプチドはまた、このポリペプチドが以下の残基:SEQ ID NO:1の残基37、38、39、69、72、73、76、81、82、83、127、131、135および138の少なくとも1つを含むように、SEQ ID NO:1の少なくとも6個の連続する残基を含むことができる。eIF4Eポリペプチドはマウスまたはヒトである。IF4EポリペプチドはまたY(X)4LΦモチーフを含むことができ、ここでXは任意のアミノ酸であり、Φは疎水性アミノ酸である。代替的には、この方法は、eIF4Eポリペプチド単独またはeIF4gポリペプチド単独に対する候補化合物の結合を検出することによって実行される。後者の方法は、流体相中で、または固体支持体上に固定化された開始因子もしくは候補化合物のいずれかを用いて実行される。
【0013】
この方法は、本明細書に記載される任意の化合物と細胞を接触させる工程を含む、腫瘍細胞増殖を優先的に阻害する組成物を同定する方法を特徴とする。この化合物の存在下での非腫瘍細胞と比較してこの化合物の存在下での腫瘍細胞の増殖のレベルの減少の検出は、この化合物が腫瘍細胞増殖を優先的に阻害することを示す。腫瘍細胞増殖は、好ましくは、非腫瘍細胞と比較して少なくとも10%多く、所望される場合、この化合物は2-チアゾリルヒドラゾンである。
【0014】
本明細書に記載される化合物は、タンパク質合成を阻害し、それによって腫瘍細胞または異常細胞(良性または悪性の細胞)などの細胞の増殖を阻害するために有用である。異常細胞は、正常な非癌性細胞と比較して、増加した増殖指標、減少したアポトーシス指標、またはその両方を有する細胞である。例えば、これらの化合物は、正常な細胞増殖と比較して、腫瘍細胞増殖を優先的にまたは選択的に阻害する。例えば、タンパク質合成および/または細胞増殖は、非腫瘍細胞と比較して、腫瘍細胞中で、少なくとも10%、25%、50%、75%、100%、および5倍、10倍以上まで阻害される。この方法は、阻害化合物を含む薬学的組成物を、その必要がある患者に投与することによって実行される。治療される患者または動物は、正常な非腫瘍細胞におけるレベルと比較して、増加したレベルのキャップ依存性翻訳開始因子を含む腫瘍細胞を有するものとして同定される。例えば、患者は、正常な非腫瘍細胞におけるレベルと比較して、増加した量のキャップ依存性翻訳因子によって特徴付けられる、腫瘍細胞または異常増殖細胞を有するとして診断される。例えば、腫瘍細胞は、異常に高い量のeIF4Eおよび/またはeIF4Gを含む。このような腫瘍型には、肺、乳房、皮膚、骨、頭部(脳および脊髄などの神経組織)、頸部、膀胱、結腸、前立腺、卵巣、子宮、子宮頸部、喉頭、胆嚢、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、腎臓、気管支、肝臓、胃腸管の腫瘍、リンパ腫、および神経芽細胞腫が含まれる。
【0015】
本明細書において使用されるように、「アリール」という用語には、0個から4個までのヘテロ原子を含んでもよい、5員および6員の「非結合体化」、または単環式の芳香族基、ならびに少なくとも1つの芳香環を有する「結合体化」、または多環式系の芳香族基を含む、芳香族性を有する基が含まれる。アリール基の例には、ベンゼン、フェニル、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどが含まれる。さらに、「アリール」という用語は、多環式アリール基、例えば、三環式、二環式、例えば、ナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナプチリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、またはインドリジンが含まれる。環構造中のヘテロ原子を有するこれらのアリール基はまた、「アリール複素環」、「複素環」、「ヘテロアリール」、または「複素環式芳香族」と呼ばれてもよい。芳香族環は、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(例えば、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(例えば、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分もしくは複素環式芳香族部分で、1つまたは複数の環の位置で置換することができる。アリール基はまた、芳香族ではない脂環または複素環で縮合または架橋され、多環系(例えば、テトラリンおよびメチレンジオキシフェニル)を形成することができる。
【0016】
「ヘテロシクリル」または「複素環式基」という用語は、閉環構造、例えば、1個または複数のヘテロ原子を含む3〜10員環、または4〜7員環を含む。ヘテロシクリル基は飽和または不飽和であり得、ピロリジン、オキソラン、チオラン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、ラクタム、例えば、アゼチジノンおよびピロリジノン、スルタム、スルトンなどを含む。複素環は、1つまたは複数の位置において、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、または芳香族部分もしくは複素環式芳香族部分で置換することができる。
【0017】
「エーテル」という用語は、2つの異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合された酸素を含む化合物または部分を含む。例えば、この用語は、別のアルキル基に共有結合されている酸素原子に共有結合されたアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基をいう、「アルコキシアルキル」を含む。
【0018】
「エステル」という用語は、カルボニル基の炭素に結合されている酸素原子に結合された炭素またはヘテロ原子を含む、化合物および部分を含む。「エステル」という用語は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニルなどのようなアルコキシカルボキシル基を含む。アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基は上記のように定義される。
【0019】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」という用語は、-OHまたは-O-を有する基を含む。
【0020】
「カルボキシル」または「カルボキシ」という用語は、-CO2Hまたは-CO2を有する基を含む。
【0021】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素などを含む。「ペルハロゲン化」という用語は、一般的には、すべての水素がハロゲン原子によって置き換えられている部分をいう。
【0022】
「ヘテロ原子」は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を含む。ヘテロ原子の例には、窒素、酸素、硫黄、およびリンが含まれる。
【0023】
本発明のある化合物の構造は不斉炭素原子を含む。従って、このような不斉性から生じる異性体(例えば、すべてのエナンチオマーおよびジアステレオマー)は、他に示されない限り、本発明の範囲内に含まれることが理解される。このような異性体は、古典的な分離技術によって、および立体化学的に制御された合成によって実質的に純粋な型で得られる。さらに、本願において議論される構造および他の化合物および部分はまた、そのすべての互変異性体を含む。アルケンおよびイミンは、適切な場合、E-またはZ-ジオメトリーのいずれかを含むことができる。
【0024】
組み合わせ治療(または「同時治療」)は、本発明のモジュレーター化合物および意図される特定の治療レジメンの一部としての少なくとも第2の薬剤の投与を含み、これらの治療薬剤の同時作用からの有益な効果を提供する。組み合わせの有益な効果には、治療薬剤の組み合わせから生じる薬物動態学的または薬力学的同時作用が含まれるがこれに限定されない。組み合わせにおけるこれらの治療薬剤の投与は、典型的には、所定の時間の期間(通常、選択された組み合わせに依存して、数分間、数時間、数日間、または数週間)にわたって実行される。「組み合わせ治療」は、一般的には、本発明の組み合わせを偶発的におよび任意に生じる別個の単独療法レジメンの一部として2種以上のこれらの治療剤の投与を包含することが意図されてもよいが、しかし一般的にそのことは意図されない。「組み合わせ治療」は、逐次的な様式、すなわち、各治療剤が異なる時点で投与される様式でのこれらの治療剤の投与、ならびに実質的に同時の様式でのこれらの治療剤または少なくとも2種の治療剤の投与を包含することが意図される。実質的に同時の投与は、例えば、固定された比率の各治療剤を有する単一のカプセルを被験体に投与することによって、または各々の治療剤についての複数の単一のカプセル中で達成することができる。各治療剤の逐次的または実質的に当時の投与は、吸入、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、皮下、直腸、腹腔内、非経口、経皮、胃腸、および粘膜組織を通しての直接的吸収を含むがこれらに限定されない、任意の適切な経路によってもたらすことができる。治療剤は、同じ経路によってまたは異なる経路によって投与することができる。例えば、選択された組み合わせの第1の治療剤は静脈内注射によって投与されてもよいのに対して、他の組み合わせの治療剤は経口的に投与されてもよい。または、治療剤は、経口的にまたは静脈内注射によって投与されてもよい。治療剤が投与される順番は厳密に決定的であるわけではない。「組み合わせ治療」はまた、他の生物学的に活性な成分とのさらなる組み合わせにおける上記の治療剤の投与および非薬物治療(例えば、外科手術または放射線治療)を包含することができる。組み合わせ治療が非薬物治療をさらに含む場合、治療剤および非薬物治療の組み合わせの同時作用からの有益な効果が達成される限り、非薬物治療は任意の適切な時点で行うことができる。例えば、適切な場合、有益な効果は、非薬物治療が、おそらく数日間または数週間さえ、治療剤の投与から一時的に取り除かれる場合になお達成される。
【0025】
特定の他の例に従って、本発明で提供される例示的な化合物は、癌などの細胞増殖障害の治療において使用することができる。細胞増殖障害の治療は、迅速な増殖を含む増殖の阻害を含むことが意図される。本明細書で使用される場合、「細胞増殖障害」という用語は、多細胞生物における細胞の1つまたは複数のサブセットの所望されないまたは不適切な増殖によって特徴付けられる障害を含む。「癌」という用語は、種々の型の悪性新生物をいい、その大部分は周辺の組織に侵入することができ、異なる部位に転移する可能性がある(例えば、PDR Medical Dictionary 1st edition (1995)を参照されたい)。「新生物」および「腫瘍」という用語は、正常よりも迅速な細胞増殖によって増殖し、かつ増殖を開始した刺激が除去された後でも増殖を継続する異常組織をいう(例えば、PDR Medical Dictionary 1st edition (1995)を参照されたい)。このような異常な組織は、構造的な組織化、および良性(すなわち、良性腫瘍)または悪性(すなわち、悪性腫瘍)のいずれかであり得る正常組織との機能的な協調の部分的または完全な欠如を示す。異常な細胞増殖によって特徴付けられる障害を治療することは、被験体における新生物の増殖の妨害、または被験体において以前に存在している新生物の増殖の減少を含むことが意図される。このような阻害はまた、1つの部位から別の部位までの新生物の転移の阻害を含む。新生物は、好ましくは、本明細書に開示される例示的な化合物、および/またはインターフェロンに対して感受性である。新生物の型の例には、乳房、皮膚、骨、前立腺、卵巣、子宮、子宮頸部、肝臓、肺、脳、喉頭、胆嚢、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、免疫系、神経組織、頭頸部、結腸、胃、気管支、腎臓の癌に関連する新生物が含まれるがこれらに限定されない。
【0026】
別の例に従って、本発明で提供される特定の例示的な化合物は、ウイルス感染の治療において使用することができる。ウイルス感染の治療は、ウイルスタンパク質合成の開始を妨害、または実質的に阻害するために、本明細書に開示される化合物の使用を含むことが意図される。ウイルス感染の治療はまた、ウイルスタンパク質合成の開始を阻害し、ウイルスタンパク合成の伸長を阻害し、初期のウイルスRNA転写を阻害し、ウイルス感染性を減少し、ならびにビリオンの出芽および放出を減少するために、インターフェロンおよび本明細書に開示される新規な化合物の組み合わせの使用を含むことが意図される。「ウイルス感染」という用語は、本明細書で使用される場合、ウイルス、好ましくは、DNAウイルスまたはRNAウイルスに感染している1つまたは複数の細胞をいう。本明細書で使用される場合、RNAウイルスには、ピコナウイルス科(例えば、ポリオウイルス)、レオウイルス科(例えば、ロタウイルス)、トガウイルス科(例えば、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、風疹ウイルス)、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス)、ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルス)、コロナウイルス科、ブンヤウイルス科、フラビウイルス科、フィロウイルス科、アレナウイルス科、ブンヤウイルス科、およびレトロウイルス科(例えば、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV))などのウイルスファミリーが含まれるがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、DNAウイルスには、パポバウイルス科(例えば、パピローマウイルス)、アデノウイルス科(例えば、アデノウイルス)、ヘルペスウイルス科(例えば、単純ヘルペスウイルス)、およびポックスウイルス科(例えば、痘瘡ウイルス)などのウイルスファミリーが含まれるがこれらに限定されない。少なくともいくつかの例においては、ウイルス感染は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、および/またはHIVによって引き起こされる。他の適切なRNAウイルスおよびDNAウイルスは、本開示の恩典が与えられると、当業者によって容易に選択される。
【0027】
さらなる例に従って、本明細書に開示される化合物は、異常な翻訳開始と関連する、非増殖性変性障害の治療において使用することができる。非増殖性変性疾患の治療は、翻訳開始を阻害するための低分子の使用を含むことが意図される。本明細書において使用される場合、「非増殖性変性障害」という用語は、異常な翻訳開始に起因する、細胞、組織、および/または器官の機能の喪失によって特徴付けられる疾患を含むことが意図される。非増殖性変性障害には、アルツハイマー病およびインスリン抵抗性などの障害が含まれるがこれらに限定されない。他の非増殖性変性障害は、本開示の恩典が与えられると、当業者によって容易に選択される。
【0028】
「アニオン基」とは、本明細書で使用される場合、生理学的pHで負に荷電する基をいう。好ましいアニオン基には、カルボン酸、硫酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルファミン酸、テトラゾリル、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、またはホスホロチオネート、またはその機能的等価物が含まれる。アニオン基の「機能的等価物」とは、生物学的等配体、カルボン酸基の生物学的等配体を含むことが意図される。生物学的等配体には、古典的な生物学的等配体と、古典的でない等配体の両方が包含される。古典的な等配体および古典的でない等配体は当技術分野において公知である(例えば、Silverman, R. B. The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action, Academic Press, Inc. San Diego, Calif., 1992, pp.19-23を参照されたい)。特に好ましいアニオン基はカルボン酸である。
【0029】
本発明の化合物および他の薬理学的に活性な薬剤は、同時に、連続的に、または組み合わせて患者に投与されてもよい。本発明の組み合わせを使用する場合、本発明の化合物および他の薬理学的に活性な薬剤は、同じ薬学的に許容されるキャリア中にあってもよく、それゆえに同時に投与されてもよい。これらは、同時に接種される従来的な経口投薬型などの別々の薬学的キャリア中にあってもよい。「組み合わせ」という用語は、さらに、化合物が別々の投薬型で提供され、連続的に投与される場合をいう。
【0030】
化学式I:

の化合物を合成する方法は、チオカルバジドを化学式II:

のα-ブロモケトンと反応させて化学式III:

の化合物を生じる工程;および化学式IIIの化合物を化学式IV:

の化合物と反応させて、化学式Iの化合物を生じる工程を含み、ここで、------は

を形成するための単結合、または

を形成するための二重結合を表し;
R1は水素、C1〜C6アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、および置換ベンジルから選択され;
R2はメチル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、および置換ベンジルから選択され;またはR1およびR2は一緒にフェニル環を形成し;
R3およびR4の少なくとも1つは水素、COOH、COORa、CH2OH、およびCONH2から選択され、R3およびR4の他方はC1〜C6アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、および置換ベンジルから選択され、さらにここで、
RaはC1〜C6アルキルであり、
置換ベンジルおよび置換フェニルは、少なくとも1つの水素がF、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択される置換基で置き換えられている、それぞれベンジル部分およびフェニル部分である。
【0031】
所望される場合、------は二重結合を表し、R1は水素であり、R2はフェニルまたは置換フェニルであり、R3またはR4の1つはCOOHであり、R3またはR4の1つはCH2OHであり、またはR4はベンジルである。任意に、COOHは反応されてCOOCH3またはCH2OHを産生する。
【0032】
化学式V:

の化合物を合成する方法は、
チオセミカルバジドを化学式II:

のα-ブロモケトンと反応させて、化学式III:

の化合物を生じる工程;
化学式IIIの化合物を化学式VI:

の化合物と反応させて、化学式Vの化合物を生じる工程を含み、ここで、
R1は水素、C1〜C6アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、および置換ベンジルから選択され;
R2はフェニル、置換フェニル、ベンジル、および置換ベンジルから選択され;またはR1およびR2は一緒にフェニル環を形成し;
R3はC1〜C6アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、および置換ベンジルから選択され、さらにここで、
置換ベンジルおよび置換フェニルは、少なくとも1つの水素がF、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択される置換基の任意の1つで置き換えられている、それぞれベンジル部分およびフェニル部分であり、ここでRaはC1〜C6アルキルである。
【0033】
任意に、R3はベンジルであり、またはR2はフェニルである。
【0034】
化学式B:

の化合物を合成する方法は、
化学式B1:

の化合物を塩酸と反応させて、化学式B2:

の化合物を形成する工程;化学式B2の化合物をヒドラジン水和物と反応させて、化学式B3:

の化合物を形成する工程;化学式B3の化合物を化学式B4:

の化合物と反応させて、化学式Bの化合物を形成する工程を含み、ここで、
nは0または1であり、
Xは、nが0の場合にXがSになるように、SまたはCであり;ならびに
RbおよびRcは、独立して、H、C1〜C6アルキル、F、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択され、ここでRaはC1〜C6アルキルである。
【0035】
任意に、nは0でありかつXがSであり、またはnは1でありかつXはCである。所望される場合、RbおよびRcは各々Hである。
【0036】
化学式C

の化合物を合成する方法は、2-ブロモ-1-フェニルエタノンを化学式C1:

のカルバモイルカルバメートと反応させて、化学式C2:

の化合物を生じる工程;化学式C2の化合物を塩基と反応させて、化学式C3:

の化合物を生じる工程;化学式C3の化合物を1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩およびフェニルアラニンメチルエステルと反応させて、化学式Cの化合物を生じる工程を含み、ここで、
R1はC1〜C6アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、および置換ベンジルから選択され;
R2はOHおよびORaから選択され、ここでRaはC1〜C6アルキルであり;ならびに
R3はフェニル、置換フェニル、ベンジル、置換ベンジル、およびC1〜C6アルキルから選択され、さらにここで、
置換ベンジルおよび置換フェニルは、少なくとも1つの水素がF、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択される置換基で置き換えられている、それぞれベンジル部分およびフェニル部分である。
【0037】
任意に、R2はOHまたはORaである。所望される場合、Raはメチルであり、R3はベンジルである。R1はエチルであってもよい。
【0038】
化学式D:

の化合物を合成する方法は、
化学式:

を有する化合物をエタノール性塩基と反応させて、化学式:

を有する化合物を形成する工程;
化学式:

を有する化合物を、化学式:

を有する化合物および1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩と反応させて、化学式D1:

の化合物を形成する工程;ならびに
化学式D1の化合物を塩基と反応させて化学式Dの化合物を形成する工程を含み;ここで、RbおよびRcは、独立して、H、C1〜C6アルキル、F、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択され、ここでRaはC1〜C6アルキルである。
【0039】
任意に、RbおよびRcは各々Hである。
【0040】
化学式E:

の化合物を合成する方法は、
化学式:

を有する化合物を、水素化ホウ素ナトリウム中で化学式:

を有する化合物と反応させ、それによって、化学式Eの化合物を生じる工程を含み、ここで、RbおよびRcは、独立して、H、C1〜C6アルキル、F、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択され、ここでRaはC1〜C6アルキルである。
【0041】
任意に、RbおよびRcは各々Hである。
【0042】
化学式F:

の化合物を合成する方法であって、
化学式F1:

の化合物を、N-メチルモルホリンおよびイソブチルクロロホルメートと反応させ、化学式Fの化合物を生じる工程を含み、ここで、RbおよびRcは、独立して、H、C1〜C6アルキル、F、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択され、ここでRaはC1〜C6アルキルである。
【0043】
任意に、RbおよびRcは各々Hである。
【0044】
化学式G:

の化合物を合成する方法であって、
化学式G1:

を有する化合物を塩基と反応させて、化学式G2:

を有する化合物を形成する工程;
化学式G2の化合物を、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート、ジイソプロピルエチルアミン、およびN,O-ジメチルヒドロキシアミン塩酸塩と反応させて、化学式G3:

の化合物を形成する工程;
化学式G3の化合物を水素化アルミニウムリチウムと反応させて化合物G4

を形成する工程;
化学式G4の化合物を化学式G5:

の化合物と反応させて化合物G6

を形成する工程;ならびに
化学式G6の化合物を塩基と反応させて化学式Gの化合物を形成する工程を含み;ここで、RbおよびRcは、独立して、H、C1〜C6アルキル、F、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択され、ここでRaはC1〜C6アルキルである。
【0045】
任意に、RbおよびRcは各々Hである。
【0046】
本発明の他の特徴および利点は、以下の好ましい態様の説明から、および特許請求の範囲から明らかである。
【0047】
詳細な説明
多くの型の腫瘍細胞は、異常なタンパク質翻訳開始メカニズム、例えば、特定の翻訳開始因子の会合または結合によって特徴付けられる。例えば、mRNAキャップ、骨格タンパク質eIF4G、および調節性4E-BPとのキャップ結合タンパク質eIF4Eの相互作用は細胞形質転換に関与している。eIF4E/eIF4G相互作用の小分子阻害剤が同定されており、抗腫瘍活性を有することが見い出されている。
【0048】
小リボソームサブユニットへのmRNAのキャップ付き5'末端の補充は、真核生物の翻訳開始における主要な律速段階であると考えられている。このプロセスは強固に調節され、翻訳開始因子eIF4E、eIF4G、およびeIF4Aから構成される三量体複合体eIF4Fの周囲に集まる大きな複数タンパク質複合体の段階的アセンブリーを必要とする。キャップ結合eIF4Fは、60Sサブユニットと連結する場所である開始コドンまでのスキャニングを開始するeIF4GとのeIF3の相互作用を通して、40Sリボソームサブユニットを補充する。このプロセスはeIF4Aによって容易にされ、スキャニングが起こるためには融解しなくてはならない5'UTRの二次構造の量に直接的に比例して、そのヘリカーゼ活性の要求性を有する。すべてのeIF4Gタンパク質は配列Y(X)4LΦのモチーフを通してeIF4Eを結合し、ここで、Xは変動性であり、Φは疎水性である。このモチーフは、eIF4Eの背側の疎水性残基の保存性表面に結合するヘリックスペプチド構造を形成する。
【0049】
細胞mRNAは、効率的な翻訳のためのそれらの要求性において、および5'UTRの組成において大きく異なる。成長および増殖に関連するタンパク質の大部分は、比較的短くかつ構造化されていない5'UTRを含む「強い」mRNAよりも、より低い翻訳効率を有する長い高度に構造化された5'UTRを含む「弱い」mRNAによってコードされている。弱いmRNAの翻訳は高度にeIF4F依存性であり、eIF4F複合体のレベルがeIF4E過剰発現によって増加されるときに優先的に増強される。複合体形成のために利用可能であるeIF4Eの量は、Y(X)4LΦモチーフを含み、かつeIF4Gと同じ表面に結合する4E-BPと呼ばれる小タンパク質のクラスによって制御されている。栄養および成長因子などの刺激に応答して、4E-BPは、一連の階層的なリン酸化事象を受ける。過剰リン酸化型の4E-BPは、低リン酸化型よりもはるかに低くeIF4Eを結合し、従って、4E-BPリン酸化は、eIF4Fのレベルおよびキャップ依存性翻訳をアップレギュレートするためのスイッチとして作用する。eIF4EおよびeIF4F複合体の他の成分の過剰発現に起因するキャップ依存性翻訳の誤った調節は、多くの型の癌の発生において重要な役割を果たすと考えられている。培養哺乳動物細胞において、eIF4EまたはeIF4Gの過剰発現は悪性形質転換を誘導するのに対して、4E-BP1の過剰発現はeIF4Eによる形質転換を部分的に逆転すると考えられている。加えて、4E-BP1のリン酸化可能でない型の異所性(etpic)発現は、癌細胞株において増殖を阻害し、および/またはアポトーシスを誘導することができる。eIF4F複合体の阻害は癌治療のために有用である。
【0050】
このタンパク質相互作用の種々の小分子阻害剤が、蛍光偏光スクリーニングアッセイを使用して発見された。本明細書に記載される阻害剤は、成長因子およびオンコジーン産物の合成を選択的に抑制する。これらの分子は、eIF4Gにおける保存性ヘリックスペプチドモチーフによって認識されるeIF4Eの表面上の疎水性残基の保存性領域に特異的に結合し、従って、これらの2つのタンパク質の相互作用をブロックする。非特異的に作用する伝統的な翻訳の阻害剤(例えば、シクロヘキシミド)とは対照的に、これらの分子は、キャップ依存性翻訳の選択的阻害剤であり、タンパク質合成の既存の一般的な阻害剤を超えた顕著な改善である。
【0051】
本明細書に記載される化合物は、ChemBridgeライブラリー(16,000個の化合物)をスクリーニングすることによって同定され、蛍光偏光アッセイ法におけるeIF4Eへの蛍光標識されたeIF4G誘導ペプチドの結合をブロックする。3つの候補化合物が10μM以上のkD値を有すると見積もられている:ICCB-5582(10μM)、EGI-1またはICCB-15644(2μM)、およびICCB-6737(1μM)。NMR滴定実験は、eIF4Gの保存性ペプチドモチーフと相互作用するeIF4Eの表面領域へのEGI-1の競合結合を実証する。この化合物は、eIF4Eからの全長eIF4Gを置き換え、eIF4Eへの4E-BP1の結合の増加を引き起こし、およびキャップ依存性翻訳を特異的に阻害する。培養細胞において、EGI-1は、高度に構造化された5'UTRを含むmRNAを用いて、悪性関連タンパク質の産生を特異的に阻害するようである。これらの化合物のすべてが、ウサギ網状赤血球溶解物系中でインビトロでキャップ依存性翻訳を阻害した。化合物ICCB-5582およびICCB-15644は、培養A549細胞(肺癌細胞株)の増殖を阻害し、両方ともおよそ6μMのIC50値であった。EGI-1はヒトジャーカットリンパ腫細胞株においてアポトーシスを誘導し、A549肺癌細胞株およびHT29結腸癌細胞株の増殖を阻害する。EGI-1の同定は、翻訳的に調節される細胞プロセスの研究のための新規なツールおよびより強力な阻害剤の開発のための潜在的な出発点を提供する。
【0052】
小分子の同定
本発明者らは、eIF4EとeIF4Gとの間の相互作用を同定することによってeIF4F複合体を選択的に標的とする小分子を同定するためにリバース化学遺伝学スクリーニングを企てた。本発明者らは、eIF4EのY(X)4LΦモチーフを含むフルオレセインタグ化ペプチドの結合を測定するための蛍光偏光(FP)アッセイ法を開発した。eIF4Eを用いるこのペプチドの滴定は、標識の蛍光異方性がほぼ3倍に増加することを引き起こした(図1A)。標識されたペプチド/eIF4E複合体への未標識コンペティターeIF4GIIペプチドの付加は、異方性を遊離の標識されたペプチドのレベルまで減少することを引き起こし(図1B)、阻害剤の同定のための方法としてこのアッセイ法を確証した。本発明者らは、このアッセイ法をマイクロウェルプレート形式に適合させ、16,000個の化合物のChembridge DiverSet Eライブラリーをスクリーニングするためにこれを使用した。このスクリーニングからのヒット化合物(EGI-1と呼ばれる)は、ペプチド結合(図1D)および薬物様構造(図1C)の比較的強力な阻害に基づいてさらなる特徴付けについて選択される。このアッセイ法における競合的平衡を説明する式に異方性データを適合させることによって、eIF4EについてのEGI-1の結合親和性24.5±9.6μMよりも低いと見積もられた。
【0053】
EGI-1はeIF4EへのeIF4Gの結合を競合的に阻害する
NMRスペクトル分析が、eIF4EとのEGI-1の相互作用を特徴付けするために利用された。eIF4GペプチドとのマウスeIF4Eの複合体についてのバックボーン化学シフトの割り当てが決定されているが、非結合型のeIF4Eについての割り当てを次に決定した。マウスeIF4Eは、構造的かつ機能的に重要でない位置におけるD174E置換を例外として、その構造化部分におけるヒトタンパク質と同一である。マウスeIF4Eは、三重共鳴NMR実験のために必要とされる濃度レベルにおいて不安定であるので、溶解性増強タグ(SET)である、プロチンGの56残基GB1ドメインをeIL4Eのアミノ末端に融合させることによって、より溶解性型のタンパク質を開発した。この融合タンパク質は、顕著に増強した溶解性を示し、ネイティブタンパク質およびタグ化タンパク質のHSQCスペクトルの分析は、このタグがeIF4Eの構造に対して影響を有さなかったことを確証した。この構築物を使用して、複合体ではないマウスeIF4Eについてのバックボーン化学シフトの割り当ての大部分は、標準的なNMR法を使用して決定した。タンパク質は、EGI-1またはeIF4GIIからの保存性ペプチドを用いて滴定し、生じる15N HSQCスペクトルの変化を分析した。EGI-1を用いるGB1-elF4Eの滴定は、GB1共鳴に対して効果を有さなかったが、HSQCスペクトル中のeIF4Eピークのサブセットの選択的な線幅拡大を引き起こした。このことは、低マイクロモル濃度の親和性で結合するリガンドに典型的である、NMRの時間スケールに対する中間体の化学物質の交換を示す。EGI-1結合によって最も強く影響を受けるピーク(図1F)と、eIF4GIIペプチド結合の際に位置がシフトするピーク(図1E)との間に有意な重複が存在した。このことは、化合物がeIF4Eの同じ表面と相互作用することによってペプチドの結合を阻害することを示す。
【0054】
EGF-1はeIF4F複合体形成およびキャップ依存性翻訳を阻害する
哺乳動物翻訳のためのモデル系であるウサギ網状赤血球溶解物中のEGI-1の効果を次に試験した。キャップ依存性翻訳およびキャップ非依存性翻訳に対する化合物の相対的評価を決定するために、本発明者らは、キャップの制御下にあるレニラ(Renilla)ルシフェラーゼについての遺伝子およびコオロギ麻痺ウイルスの制御下にあるホタルルシフェラーゼについてのメッセージを含む二シストロン性mRNA構築物を利用した(図2A)。このIRESによって駆動されるタンパク質の翻訳は開始因子を必要としない。キャップ依存性メッセージのインビボ翻訳はEGI-1によって用量依存的な様式で阻害されるのに対して(図2B)、キャップ非依存性翻訳は阻害されず、実際、有意に増強される(おそらく、キャップ依存性翻訳が中断するにつれて、リボソームの利用可能性の増加に起因する)(図2C)。これが網状赤血球溶解物中のeIF4F複合体の破壊に起因するか否かを決定するために、本発明者らは、m7GTPセファロースプルダウンアッセイを使用して、その結合パートナーとのeIF4Eの会合の状態を測定した(図2D)。これは、4E-BP1の結合の増加を引き起こしながら、EGI-1がeIF4Eからの全長eIF4Gを置き換えることを示す。これらの結果は、4E-BP1が、化合物結合によって破壊されないさらなる分子間接触に起因して、なおeIF4Eに結合可能であり、従って、eIF4E/eIF4G複合体の解離は、4E-BP1/eIF4E複合体の形成の増加を可能にすることを示す。
【0055】
EGF-1は、細胞中で、eIF4F複合体形成および高度に構造化された5'UTRを有するmRNAによってコードされるタンパク質の発現を阻害する
EGI-1の活性をインビトロで特徴付けしたので、生きている細胞中でのこの化合物の効果を次に試験した。この阻害剤は、ヒトジャーカットT細胞中でeIF4F複合体を破壊する:化合物を用いる処理の6時間後、eIF4GはeIF4Eから置き換えられたのに対し、4E-BP1の結合は増加し、インビトロの効果と類似する(図3A)。eIF4Gまたは4E-BP1の全体のレベルは、化合物処理によって有意に影響されない。EGI-1は、おそらく、高度に構造化された5'UTRを有する弱いmRNAによってコードされるタンパク質の産生を優先的な様式で阻害し(例えば、Bcl-xLおよびc-myc)、一方、β-アクチンなどの強力なmRNAに対してはほとんど効果を有さないか、または全く効果を有さない。化合物を用いて8時間処理したジャーカット細胞からの抽出物の分析は、この事例を示す(図3B)。重要なことには、リアルタイムPCRによる細胞質中のmRNAの豊富さの分析は、EGI-1がこれらのmRNAの転写レベル、輸送、または安定性に影響を与えないことを示し、このことは、これらのタンパク質の産生が翻訳のレベルで阻害されることを示す(図3C)。
【0056】
EGI-1は癌細胞株に対する活性を示す
ジャーカット細胞中でのEGI-1細胞のさらなる特徴付けは、本発明の化合物がプロ-アポトーシス活性を有することを示した。24時間後、本発明の化合物で処理した細胞は、細胞ATPレベルによって測定されるような、細胞生存度の用量依存的な喪失を示す(図4A)。細胞DNA含量のフローサイトメトリー分析は、G1下画分の大量の増加(断片化DNAに対応する)を引き起こし(図4B)、これは、広いスペクトルのカスパーゼ阻害剤zVAD-FMKとの同時処理によって抑制することができる。さらに、処理した細胞は、アポトーシスの特徴である断片化された核の形態を示す(図4C)。EGI-1はまた、他の癌細胞株に対して活性を示す。本発明の化合物は、SRBアッセイ法によって測定されるように、A549肺癌細胞の増殖を阻害し、およそ6μMのIC50であった(図4D)。加えて、EGI-1は、9μMのIC50でHT29結腸癌細胞の増殖を阻害する。このような結果は、これらの細胞株中でプロ-アポトーシス性および/または抗増殖性活性から生じる可能性がある。
【0057】
要約すると、本発明者らは、eIF4E/eIF4G相互作用の小分子阻害剤を同定するためにリバース化学遺伝学スクリーニングを開発し、1つのこのような阻害剤として、化合物EGI-1を首尾よく同定した。この化合物は、eIF4Eへの保存性eIF4G認識ペプチドの結合の阻害剤の競合的阻害剤であり、インビトロと細胞中の両方でこのタンパク質複合体を破壊する。EGI-1はキャップ依存性翻訳の阻害剤であり、高度に構造化されている5'UTRを有するmRNAによってコードされるタンパク質の発現を選択的にダウンレギュレートし、それらの多くは悪性腫瘍において鍵となる役割を有している。本発明の化合物は、ジャーカットリンパ腫細胞中のアポトーシスを誘導することができ、他のヒト癌細胞株に対する活性を示す。EGI-1の同定は、翻訳制御に依存する多数の生物学的プロセスの研究において使用することができるeIF4F複合体を標的化するための新規なツールを提供する。これはまた、より強力な阻害剤の開発のための出発点を提供する。
【0058】
2-チアゾリルヒドラゾンIの合成
2-チアゾリルヒドラゾンの合成に対する一般的合成アプローチはスキーム1に記載される。置換2-チアゾリルヒドラジン(2)は、室温においてジオキサン中で適切なブロモアセトン(1)を用いるチオセミカルバジドのHantzsch型の環脱水によって調製した。5%酢酸の存在下で適切なケトンまたはα-ケト酸(3)を用いる2-チアゾリルヒドラジン(2)間の縮合反応は、置換2-チアゾリルヒドラゾン(4)を生じた。
【0059】
スキーム1

【0060】
1H NMRスペクトルは、溶媒としてd-DMSO中で、Varian VX500上で500MHzで、またはVarian VX400上で400MHzで記録した。TLC分析は、EMD chemicals, Inc.から購入したKieselgel 60 F254シリカゲルプレート上で、254nmのUV照射を用いて実施した。カラムクロマトグラフィーは、Baker 7024フラッシュシリカゲル上で実施した。融点はMel-Temp「Electronthermal」装置中のPyrexキャピラリー管中で測定し、補正は行っていない。LC-MSは、XTerra C8 30×100mmを用いてWaters LC-MS (APCIモード)中で実施した。元素分析は最終生成物についてのみ入手し、Robertson Laboratories, Madison, NJによって実施され、そして±0.4%の理論値の範囲内にあった。すべての出発物質は市販のものを購入し、さらなる精製なしで使用した。
【0061】
2-{[4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラゾノ}-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロピオン酸の合成のための手順
段階1
4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル-ヒドラジン
ジオキサン(20mL)中のチオセミカルバジド(10mmol、0.91g)および3,4-ジクロロフェニルアセチルブロミド(10mmol、2.68g)の溶液を室温で16時間攪拌した。臭化水素酸塩の沈殿物を濾過し、ジオキサン(3×10mL)で洗浄し、2N Na2CO3(20mL)で塩基性化した。生成物を濾過し、水で洗浄し、そして乾燥させた(2.08g、80%)。この生成物は、一般的には、さらなる反応のために満足なものであった。

【0062】
段階2
2-{[4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラゾノ}-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロピオン酸
5%酢酸(2mL)中の3-(2-ニトロ-フェニル)-2-オキソ-プロピオン酸(1.0mmol、209mg)を、エタノール(4mL)中の4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル-ヒドラジン(1.0mmol、259mg)の溶液に加えた。この反応混液を90℃で1時間攪拌し、0℃まで冷却した;オレンジ色の固形物を沈殿させ、濾過し、そして水によって洗浄した。MeOH-H2Oからの再結晶は、黄色粉末として最終生成物を与える(600mg、66.7%)。mp;Z/E異性体は、20分間の勾配溶出溶媒:アセトニトリル50%中0.05%HPAc:水50%中0.05%HOAc〜アセトニトリル75%中0.05%HOAc:水25%中0.05%HOAcを使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。

Z-異性体:

【0063】
2-[(4-フェニル)-チアゾール-2-イル)-ヒドラゾノ]-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロピオン酸(4a)
Z/E異性体は、水中0.05% HOAcにおけるアセトニトリル50%中0.05% HOAcの50〜75%の30分間の直線状勾配を使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。勾配溶出溶媒は、30分間のアセトニトリル中0.05% NH4OAc 50%:水中0.05% NH4OAc 50%〜アセトニトリル中0.05% NH4OAc 75%:水中0.05% NH4OAc 25%を含んだ。

【0064】
2-[(4-ビフェニル-4-イル-チアゾリル-2-イル)-ヒドラゾノ]-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロピオン酸(4f)
E異性体を、水中0.05% HOAcにおけるアセトニトリル50%中0.05% HOAcの50〜75%の30分間の直線状勾配を使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。勾配溶出溶媒は以下を含んだ。勾配溶出溶媒は、30分間のアセトニトリル中0.05% NH4OAc 50%:水中0.05% NH4OAc 50%〜アセトニトリル中0.05% NH4OAc 75%:水中0.05% NH4OAc 25%を含んだ。

【0065】
2-[(4-ナフタレン-2-イル-チアゾリル-2-イル)-ヒドラゾノ]-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロピオン酸(4c)
E異性体を、30分間の勾配溶出溶媒:アセトニトリル中0.05% NH4OAc 50%:水中0.05% NH4OAc 50%〜アセトニトリル中0.05% NH4OAc 75%:水中0.05% NH4OAc 25%を使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。

【0066】
3-(2-ニトロ-フェニル)-2-{[4-(4-フェニルアゾ-フェニル)-チアゾール-2-イル]}-ヒドラゾノ}-プロピオン酸(4j)
E異性体を、30分間の勾配溶出溶媒:アセトニトリル中0.05% NH4OAc 50%:水中0.05% NH4OAc 50%〜アセトニトリル中0.05% NH4OAc 75%:水中0.05% NH4OAc 25%を使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。

【0067】
2-チアゾリルヒドラゾンIIの合成
2-チアゾリルヒドラゾンの合成までの一般的合成アプローチはスキーム3に記載される。置換2-チアゾリルヒドラジン(2)は、室温においてジオキサン中で適切なブロモアセトン(1)を用いるチオセミカルバジドのHantzsch型の環脱水によって調製した。5%酢酸の存在下で適切なケトンまたはα-ケト酸(3)を用いる2-チアゾリルヒドラジン(2)環の縮合反応は、置換2-チアゾリルヒドラゾン(4)を生じた。
【0068】
2-フェニル-5-ヒドラジネオ-1,3,4-チアジアゾール(2k)は、銅触媒を用いる塩酸中の2-アミノ-5-フェニル-1,3,4-チアジアゾールのジアゾ化、続いてヒドラジン水和物を用いる処理によって得た。最終生成物(4k)は、α-ケト酸との縮合によって合成した。3-フェニル-2-[(6-フェニル-ピリダジン-3-イル)-ヒドラゾノ]-プロピオン酸(4l)は類似の様式で合成した。
スキーム2

【0069】
Z異性体およびE異性体の割り当て
高分解能1H NMRスペクトル分析は、E異性体およびZ異性体の混合物としてDMSO-d6中に存在した縮合生成物が炭素-窒素二重結合の立体化学と関連することを明らかにした。大部分の場合において(4m以外)、純粋なE異性体またはZ異性体は、C18逆相カラムを用いる調製用HPLCを使用することによって分離することができる。立体化学の割り当ては、E異性体において、C=Nに結合したNH基およびCH2(Z-4c、δH=3.75ppmが近接しており、Z異性体の化学シフト(E-4c、δH=4.04ppmと比較して高磁場シフトを生じ、このシフトは既知のγ-立体的影響に起因する。この場合(4c)Eは所定の異性体である。異性体の割当量の変動は、異なるサイズのR3基およびR4基に起因する可能性がある。この結果は、DimmockおよびRezessyによる報告と一致している。しかし、彼らはまた両方とも、純粋なE異性体が、溶液中への放置後にEからZへの異性体化を受けたことを報告した。純粋な異性体の安定性をチェックして、生理学的条件下でZ/E混合物への転換が存在するか否かを決定するために、溶液を、重水素で置換したeIF4E緩衝液中で調製し、スペクトルを、純粋な単離した異性体の解離後、ならびに1時間後、1日後、高解像度1H NMRによって記録した。興味深いことに、この試験は、これらが立体配置的に安定であることを明らかにした。
【0070】
2-[(4-フェニル)-チアゾール-2-イル)-ヒドラゾノ]-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロピオン酸
Z/E異性体を、30分間の勾配溶出溶媒:アセトニトリル中0.05% NH4OAc 50%:水中0.05% NH4OAc 50%〜アセトニトリル中0.05% NH4OAc 75%:水中0.05% NH4OAc 25%を使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。E異性体:

Z異性体:

【0071】
2-{[4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラゾノ}-3-フェニル--プロピオン酸
Z/E異性体を、30分間の勾配溶出溶媒:アセトニトリル中0.05% NH4OAc 50%:水中0.05% NH4OAc 50%〜アセトニトリル中0.05% NH4OAc 75%:水中0.05% NH4OAc 25%を使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。E異性体:

Z異性体:

【0072】
治療用製剤を投与する処方および方法
eIF4E、F、またはGが上昇している状態(例えば、腫瘍)を有するか、またはその状態を発症するリスクがあると診断された被験体は、本明細書に記載される化合物を使用して治療される。例示的な状態には、例えば、肺、乳房、頭部(脳および脊髄などの神経組織)、頸部、膀胱、結腸、前立腺、肝臓、肺の腫瘍、リンパ腫、および神経芽細胞腫が含まれる。これらの化合物を用いる治療はまた、他の翻訳開始を過剰発現する他の癌、または血管技術拒絶および再狭窄などの非癌性増殖障害、ならびに非増殖性変性障害、異常なアポトーシスと関連する障害、およびヒトおよび他の哺乳動物におけるウイルスおよび細菌の感染と関連する障害のために有益であり得る。
【0073】
治療レジメンは、癌または転移または他の増殖性障害、非増殖性変性障害、ならびにウイルスおよび細菌の感染と関連する障害に罹患している(またはそれを発症するリスクがある)哺乳動物、例えば、ヒト患者を標準的な方法によって同定することによって実行される。例えば、阻害化合物が、癌を有すると診断された個体に投与される。
【0074】
化合物は、好ましくは、静脈内にまたは経口的に投与される。例えば、EGI-1または化合物154300は、その溶解性および吸収性を増強するために塩に製剤化され、化合物600628は、経口投与のために乳化剤とともに製剤化され、または静脈内投与のために薬学的に許容される溶媒とともに製剤化される。
【0075】
経口投与のために、化合物は、活性化合物を薬学的に許容されるキャリアと合わせることによって製剤化され、このキャリアは、本開示の恩典が与えられると、当業者によって容易に選択される。このようなキャリアは、例示的な本明細書に開示される化合物が、治療される患者による経口摂取のために錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、リキッド、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化されることを可能にする。経口使用のための薬学的調製物は、所望される場合、錠剤または糖衣錠コアを得るために、適切な補助剤を加えた後で、任意に得られる混合物を粉砕しそして顆粒の混合物を加工して、固形賦形剤とともに製剤化される。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物である。所望される場合、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えば、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤が加えられる。特定の例において、糖衣錠コアには適切なコーティングが提供される。この目的のために、濃縮糖溶液を使用することができ、これは、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合液を任意に含んでもよい。染料および色素は、活性化合物用量の異なる組み合わせの同定、またはそれを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えられてもよい。
【0076】
他の例に従って、経口投与のための薬学的調製物には、ゼラチン製押し込み型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤、例えば、グリセロールまたはソルビトール製のソフト密封カプセルが含まれる。押し込み型カプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに任意に、安定剤と混合して、活性成分を含むことができる。ソフトカプセル中では、活性成分は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解または懸濁されてもよい。加えて、安定剤が加えられてもよい。経口投与のためのすべての製剤は、このような投与のために適切な投薬量であるべきである。口腔投与のために、本発明の組成物は、従来的な様式で製剤化された錠剤またはロゼンジの型を取ってもよい。吸入による投与のために、化合物は、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレー提示の型で便利に送達することができ、適切な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切なガスの使用を伴う。加圧エアロゾルの場合において、投薬単位は、定量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定されてもよい。例えば、吸入器または注入器における使用のために、化合物の粉末混合物およびラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤を含む、ゼラチンのカプセルおよびカートリッジを製剤化することができる。この化合物は、注射、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために製剤化されてもよい。注射のための製剤は、加えた保存剤とともに、単位剤形、例えば、アンプルまたは複数用量容器中で提示されてもよい。本発明の組成物は、油性または水性の媒体中で、懸濁液、溶液またはエマルジョンのような型を取ってもよく、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの処方剤を含んでもよい。
【0077】
特定の他の例に従って、非経口投与のための薬学的製剤には、水溶性型の活性化合物の水溶液が含まれる。加えて、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性の溶媒または媒体には、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘性を増加させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランを含むことができる。任意に、懸濁液はまた、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増加させる、適切な安定剤または薬剤を含むことができる。または、活性成分は、使用前に、適切な媒体、例えば、発熱物質を含まない滅菌水との構成のための粉末型であり得る。化合物はまた、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドなどの従来的な坐剤ベースを含む、坐剤または貯留浣腸剤などの直腸組成物中で製剤化することができる。
【0078】
なお他の例において、または上記の製剤に加えて、化合物はまた、デポー調製物として製剤化することができる。このような長時間作用する製剤は、移植もしくは経皮的送達(例えば、皮下または筋肉内)、筋肉内注射、または経皮パッチによって投与することができる。例えば、化合物は、適切なポリマー性もしくは疎水性材料(例えば、受容可能な油中のエマルジョンとして)もしくはイオン交換樹脂とともに、または溶けにくい誘導体、例えば、溶けにくい塩として製剤化することができる。薬学的組成物はまた、適切な固体またはゲル相のキャリアまたは賦形剤を含むことができる。このようなキャリアまたは賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが含まれるがこれらに限定されない。
【0079】
他の例に従って、注射可能な用途のために適切な薬学的組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射可能溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与のために、適切なキャリアには、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, N.J.)、またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合において、組成物は、好ましくは滅菌されており、シリンジに引き出され、および/またはシリンジを使用して送達されてもよい。このような組成物は、好ましくは、製造および保存の条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物の夾雑作用に対抗して保存される。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、および適切なその混合物を含む溶媒または分散液であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合においては必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合において、組成物中に、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の延長吸収は、吸収を遅延させる剤、例えば、ステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0080】
特定の他の例において、化合物は、経口組成物として調製される。経口組成物は、一般的に、不活性希釈剤または可食性キャリアを含む。これらは、ゼラチンカプセル中に封入することができ、または錠剤に圧縮することができる。経口治療用投与の目的のために、活性化合物は、賦形剤とともに組み入れることができ、錠剤、トローチ、またはカプセルの型で使用することができる。経口組成物はまた、マウスウォッシュとしての使用のための液体キャリアを使用して調製することができ、ここで、液体キャリア中の化合物は経口的に適用され、口内洗浄し(swished)、そして吐出されるかまたは飲み込まれる。薬学的に適合可能な結合剤、および/またはアジュバント材料は、組成物の一部として含めることができる。錠剤、カプセル、トローチなどは、以下の類似の性質の成分または化合物のいずれか:微結晶セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステローテス(Sterotes)などの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料などの香料を含むことができる。
【0081】
他の態様において、活性化合物は、身体からの迅速な除去に対して化合物を保護するキャリア、例えば、移植物およびマイクロカプセル化送達系を含む、制御放出製剤とともに調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生物分解可能な生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製のための方法は当業者に明らかである。材料はまた、Alza Corporation and Nova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手できる。リポソーム懸濁物(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて、感染細胞に標的化されるリポソームを含む)もまた、薬学的に許容されるキャリアとして使用することができる。これらの材料は、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるような、当業者に公知の方法に従って調製されてもよい。
【0082】
適切な投薬量レベルは、一般的に、1日あたり約0.001〜50mg/患者の体重kgであり、これは、単回用量または複数用量で投与されてもよい。経口的に与えられる場合、投薬量レベルは、1日あたり約0.01〜約30mg/kg、例えば、1日あたり0.01〜約1、3、5、7、10、15、20、25、または30mg/kgであってもよい。静脈内に与えられる場合、投薬量レベルはいくぶん低く、例えば、1日あたり0.01〜約0.3、1、3、5、7、または10mg/kgであってもよい。例えば、中枢神経系の障害の治療または予防において、適切な投薬量レベルは、1日あたり約0.01〜約30mg/kg、例えば、1日あたり0.01〜約1、3、5、7、10、15、20、25、または30mg/kgであってもよい。化合物は、1日あたり1〜4回、好ましくは、1日あたり1回または2回のレジメンに対して投与されてもよい。
【0083】
任意の治療における使用のために必要とされる本発明の化合物の量は、選択された特定の化合物または組成物に伴ってのみならず、投与の経路、治療される状態の性質、ならびに患者の年齢および状態にも伴って変化し、最終的には、担当医の裁量にあることが認識される。
【0084】
本発明の組成物および組み合わせ治療は、本明細書に記載される安定剤、キャリア、および/またはカプセル化製剤を含む、種々の薬学的賦形剤との組み合わせで投与されてもよい。
【0085】
本発明の水性組成物は、薬学的に許容されるキャリアまたは水性媒体中に溶解または分散された、有効量の本発明の化合物を含む。
【0086】
「薬学的にまたは薬理学的に許容される」は、動物またはヒトに適切に投与されたときに、有害な、アレルギー性の、または他の望ましくない反応を生じない、分子的実体および組成物を含む。「薬学的に許容されるキャリア」は、任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来的な媒体または薬剤が活性成分と適合性でない場合以外は、治療組成物中でのその使用が意図される。補助的な活性成分もまた、組成物に組み入れることができる。ヒト投与のために、調製物は、生物製剤標準のFDA事務局によって要求されるような無菌性、発熱性、一般的安全性、および純度の標準に合致する。
【0087】
本発明の組成物および組み合わせ治療は、一般的に、非経口投与のために製剤化され、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、病巣内、または腹腔内さえの経路を介する注射のために製剤化される。本発明の組成物または活性な要素もしくは成分を含む水性組成物の調製は、本開示に鑑みて当業者には公知である。典型的には、このような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとしての注射液として調製され;注射の前に液体の付加の際に溶液または懸濁液を調製するために使用するための適切な固体型もまた調製することができ;そして調製物はまた乳化することもできる。他の製剤には、軟膏、ペースト、スプレー、パッチ、クリーム、ゲル、吸収性スポンジ、またはフォームが含まれる。このような製剤は、当技術分野において周知である方法を使用して製造される。
【0088】
ある場合において、化合物は局所的に投与される。例えば、膀胱癌を治療するために、化合物は、当技術分野において周知である方法を使用して、例えば、化合物を含む溶液で膀胱を膨らませるためにカテーテルを使用して、膀胱に投与される。皮膚の悪性腫瘍の治療のために、クリームまたは軟膏が、腫瘍によって影響を受けた皮膚の領域に適用される。肝臓中の腫瘍細胞は、化合物を含む溶液を肝臓の血管系に注入することによって治療される。または、化合物は、被験体の組織に隣接しているか、またはそれを取り囲む組織に化合物をゆっくりと放出する固体または吸収可能なマトリックスを移植すること(肝臓などの器官に直接的に、または皮下的にのいずれか)によって投与される。CNSの癌の治療のために、化合物は全身的に投与されるか、またはCNS組織に直接的に局所的に投与される。化合物は、静脈内にまたはくも膜下腔内に(すなわち、脳脊髄液への直接的注入によって)投与される。局所的投与のために、化合物で満たしたウェハースまたは吸収性スポンジは、CNS組織と直接的に接触させて配置される。または、化合物は、公知の方法を使用して、脳または脳脊髄液に注入される。
【0089】
注射用使用のために適切な薬学的型は、滅菌水溶液または懸濁液;ゴマ油、ピーナッツ油または水性プロピレングリコールを含む製剤;および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。組織への注射による投与のために、剤形は滅菌性であり、かつ容易なシリンジ通過性が存在する程度まで流動性である。これは、製造および保存の条件下で安定なままであり、細菌および真菌などの微生物の夾雑作用に対抗して保存されなければならない。
【0090】
遊離の塩または薬学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製される。分散液もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物中で、ならびに油中で調製することができる。貯蔵および使用の通常の条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を妨害するために保存剤を含む。
【0091】
本発明の治療用組成物または薬学的組成物は、一般的に、薬学的に許容される媒体中に溶解または分散された、有効量の組み合わせ治療の成分を含む。薬学的に許容される媒体またはキャリアは、任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。補助的な活性成分もまた、本発明の治療組成物に組み入れることができる。
【0092】
薬学的または薬理学的組成物の調製は、本開示に鑑みて当業者には公知である。典型的には、このような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして;注射の前に液体中の溶液または懸濁液のために使用するための適切な固体型;経口投与のための錠剤もしくは他の固体として;時限放出カプセルとして;またはクリーム、ローション、マウスウォッシュ、吸入剤などを含む、現在使用されている任意の他の型で、注射液として調製されてもよい。
【0093】
滅菌注射溶液は、上記に列挙された種々の他の成分とともに、適切な溶媒中に必要量の活性化合物を組み入れること、続いて必要に応じて、濾過滅菌によって調製される。一般的に、分散液は、基礎分散媒体および上記に列挙されたものからの必要とされる他の成分を含む滅菌媒体に、種々の滅菌活性成分を組み入れることによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合において、調製の好ましい方法は、真空乾燥および凍結乾燥の技術であり、これらは、事前に濾過滅菌した活性成分および任意のさらなる所望される成分の溶液から、その粉末を生じる。
【0094】
筋肉内注射のための、より濃縮した、または高度に濃縮した溶液の調製もまた意図される。これに関して、溶媒としてのDMSOの使用が好ましい。なぜなら、これは極度に迅速な浸透を生じ、高濃度の活性化合物または薬剤を小さな面積に送達するからである。
【0095】
手術領域における特定の範囲を浄化するための、外科医、内科医または医療従事者による生理食塩水ベースの洗浄などの滅菌製剤の使用もまた、特に有用であり得る。本発明に従う治療製剤はまた、マウスウォッシュの型で、または抗真菌試薬とともに再構築されてもよい。吸入剤型もまた想定される。本発明の治療製剤はまた、クリームまたはローションにおけるような、局所的投与のために適切な型で調製されてもよい。
【0096】
このような溶液中での使用のために適切な保存剤には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノール、チメロサールなどが含まれる。適切な緩衝剤には、pH 6からpH 8の間、好ましくはpH 7からpH 7.5の間のpHを維持するために十分な量のホウ酸、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが含まれる。適切な等張剤は、点眼液の塩化ナトリウム等価量が0.9プラスマイナス0.2%の範囲内にあるような、デキストラン40、デキストラン70、デキストロース、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウムなどである。適切な抗酸化剤および安定剤には、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ亜硫酸ナトリウム、チオウレアなどが含まれる。適切な湿潤剤および清澄剤には、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー282、およびチロキサポールが含まれる。適切な粘性増加剤には、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ペトロラタム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなどが含まれる。
【0097】
製剤化に際し、治療剤は、投薬量製剤と適合可能な様式で、かつ薬理学的に有効であるような量で投与される。製剤は、種々の剤形、例えば、上記の注射溶液の型で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなどもまた利用することができる。
【0098】
この状況において、活性成分の量および投与される組成物の体積は、治療される宿主動物に依存する。投与のために必要とされる活性化合物の正確な量は、実務者の判断に依存し、各個体に特有である。
【0099】
活性化合物を分散させるために必要とされる組成物の最小量が典型的には利用される。投与のために適切なレジメンもまた変動性であるが、典型的には、最初に化合物を投与し、および結果をモニターし、次いでさらなる間隔でさらなる制用量を与える。例えば、非経口投与のために、適切に緩衝化され、かつ必要な場合、等張性の水溶液が、静脈内、筋肉内、皮下、または腹腔内投与のために調製されかつ使用される。例示的な投薬量は、等張性の1mlのNaCl溶液中に溶解され、そして1000mlの皮下注入液に加えられるか、または注入の計画部位に注射されるかのいずれかである(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 15th Edition, 1035-1038頁および1570-1580頁を参照されたい)。
【0100】
特定の態様において、活性化合物は経口的に投与される。これは、消化酵素によるタンパク質分解に対して、一般的に耐性であるか、または耐性にされている薬剤について意図される。このような化合物は、化学的に設計または修飾された薬剤;右旋性ペプチド;ならびにペプチダーゼおよびリパーゼ分解を回避するための時限放出カプセル中のペプチドおよびリポソーム製剤を含むことが意図される。
【0101】
薬学的に受容される塩は酸付加塩を含み、これは、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸とともに形成される。遊離のカルボキシル基とともに形成される塩はまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムもしくは水酸化第二鉄などの無機塩、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から誘導することができる。
【0102】
キャリアは、任意に、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、適切なその混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒体である。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合においては必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合において、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の延長吸収は、吸収を遅延させる剤、例えば、ステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物中での使用によってもたらすことができる。
【0103】
滅菌注射溶液は、上記に列挙された種々の他の成分とともに、適切な溶媒中に必要量の活性化合物を組み入れること、続いて必要に応じて、濾過滅菌によって調製される。一般的に、分散液は、基礎分散媒体および上記に列挙されたものからの必要とされる他の成分を含む滅菌媒体に、種々の滅菌活性成分を組み入れることによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合において、調製の好ましい方法は、真空乾燥および凍結乾燥の技術であり、これらは、事前に濾過滅菌した活性成分および任意のさらなる所望される成分の溶液から、その粉末を生じる。
【0104】
直接注射のための、より濃縮した、または高度に濃縮した溶液の調製もまた意図され、ここでは、溶媒としてのDMSOの使用が、極度に迅速な浸透を生じ、高濃度の活性化合物または薬剤を小さな面積に送達するために想定される。
【0105】
他の投与の様式のために適切なさらなる製剤には坐剤が含まれる。坐剤のために、伝統的な結合剤およびキャリアは、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含んでもよく;このような坐剤は、0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲の活性成分を含む混合物から形成されてもよい。
【0106】
経口製剤は、このような通常利用される賦形剤、例えば、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、持続放出製剤、または散剤の型を取る。
【0107】
特定の所定の態様において、経口薬学的組成物は、不活性希釈剤または同化可能な可食性キャリアを含み、またはこれらは、ハードもしくはソフトゼラチンカプセル中に封入されてもよく、またはこれらは錠剤に圧縮されてもよく、またはこれらは食事の食物とともに直接的に取り込まれてもよい。経口治療剤投与のために、活性化合物は、賦形剤とともに組み入れられ、摂取可能な錠剤、口腔錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハースなどの型で使用されてもよい。このような組成物および調製物は、少なくとも0.1%の活性化合物を含むべきである。組成物および調製物のパーセンテージは、当然、変動されてもよく、重量の単位の約2〜75%の間、好ましくは25〜60%の間に便利にあり得る。このような治療的に有用な組成物中の活性化合物の量は、適切な投薬量が得られるような量である。
【0108】
錠剤、トローチ、丸薬、カプセルなどはまた以下を含んでもよい:トラガカントガム、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチンのような結合剤;リン酸二カリウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;およびスクロース、ラクトース、もしくはサッカリンなどの甘味料;またはペパーミント、ウィンターグリーンのオイル、もしくはチェリー香料などの香料が加えられてもよい。単位剤形がカプセルである場合、これは、上記の型の材料に加えて、液体キャリアを含むことができる。種々の他の材料が、コーティングとして、または投薬量単位の物理型を他に修飾するために存在してもよい。例えば、錠剤、丸薬、またはカプセルは、シェラック、糖、または両方でコートされてもよい。エリキシルのシロップは、活性化合物、甘味料としてのスクロース、メチルおよびプロピルパラベン、色素ならびに香料、例えば、チェリーまたはオレンジ香料を含んでもよい。
【0109】
本発明の化合物が経口的または注射による投与のために組み入れられる液体剤形には、水溶液、適切に香りを付与したシロップ、水性または油性懸濁液、および、綿実油、ゴマ油、ココナッツ油、もしくはピーナッツ油などの許容される油とのエマルジョンまたは静脈内使用のために適切な溶解剤もしくは乳化剤とのエマルジョン、ならびにエリキシルおよび類似の薬学的媒体が含まれる。水性懸濁液のために適切な分散剤または懸濁剤には、合成または天然のガム、例えば、トラガカントガム、アカシア、アルギン酸、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはゼラチンが含まれる。
【0110】
吸入または注入のための組成物には、薬学的に受容可能な水性溶媒または有機溶媒中の溶液および懸濁液、またはその混合物、ならびに粉末が含まれる。液体または固体組成物は、上記に示すような適切な薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。このましくは、この組成物は、局所的または全身的な効果のために、経口または鼻呼吸経路によって投与される。好ましい滅菌された薬学的に許容される溶媒中の組成物は、不活性ガスの使用によって噴霧されてもよい。噴霧溶液は噴霧デバイスから直接的に吹き付けられてもよく、または噴霧デバイスは、フェースマスク、テント、もしくは断続的陽圧吹き付け機械に装着されてもよい。溶液、懸濁液または粉末組成物は、製剤を送達するデバイスから、適切な様式で、好ましくは経口的にまたは鼻に投与されてもよい。
【0111】
上記に記される臨床状態および疾患を治療するために、本発明の化合物は、従来的な非毒性の薬学的に許容されるキャリア、アジュバント、および媒体を含む投薬単位製剤中で、経口的に、局所的に、非経口的に、吸入スプレーによって、または直腸に投与される。非経口という用語は、本明細書で使用される場合、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内の注射または注入の技術を含む。
【0112】
翻訳開始因子およびタンパク質翻訳の効率
成長タンパク質および増殖タンパク質の大部分は、長い高度に構造化された5'UTRを含む「弱い」mRNAによってコードされ:静止細胞において、これらは、比較的短くかつ構造化されていない5'UTRを含む「強い」mRNAよりもはるかに低い効率で翻訳される。これらの弱いmRNAの翻訳は、eIF4Fに対してはるかに大きな依存性を有し、eIF4F複合体のレベルがeIF4E過剰発現によって増加されるときに、優先的に増強される。細胞中の利用可能であるeIF4Eのレベルは、4E-BPと呼ばれる小タンパク質のクラスによって制御されている。すべてのeIF4Gタンパク質は配列Y(X)4LΦの保存性モチーフを含み、ここでXは変動性であり、Φは疎水性である。このモチーフは、eIF4Eの背側の疎水性残基の保存性表面に結合するヘリックスを形成する(図5A)。4E-BPもまたこのモチーフを含み、利用可能なeIF4EについてeIF4Gと競合する。4E-BPの階層的なリン酸化がこれらの活性を制御する:低リン酸化型は完全な親和性でeIF4Eに結合するのに対して、過剰リン酸化状態は非常に減少した親和性を有する。従って、このリン酸化のレベルは、栄養および成長因子などの細胞外刺激に応答して、翻訳的に活性なeIF4F複合体を形成するために利用可能なeIF4Eのレベルを増加させるスイッチとして作用する。これらのシグナルは、直接的に、およびおそらく顆粒のmTOR依存性キナーゼの作用を通して間接的にの両方で4E-BPをリン酸化する、キナーゼmTORを活性化するために、PI3K/Akt経路を通して主として伝達される。
【0113】
eIF4E/eIF4G相互作用および腫瘍発生
eIF4F複合体の上昇レベルによる適切な翻訳調節の破壊は、発癌における重要な因子である。広範な種々の腫瘍が、異常に上昇したeIF4Eレベルを有することが見い出されており、eIF4Gはいくつかの肺癌において増幅される。培養細胞中でのeIF4Eの過剰発現は、悪性に形質転換した表現型:急速な増殖、接触阻害の喪失、および足場非依存性の増殖を示すことを引き起こすことができる。この形質転換は、これらの細胞中の4E-BP1がこれらの悪性特性を部分的に逆転することができるので、eIF4Gを結合するeIF4Eの能力に依存する。上昇したeIF4Eレベルは、乳房、頭部、頸部、膀胱、結腸、前立腺、胃腸管および肺の癌、ホジキンリンパ腫、ならびに神経芽細胞腫において検出される。乳癌患者において、癌の再発および癌関連の死亡のリスクは、eIF4E過剰発現のレベルと相関する。eIF4Fの他の成分は特定の型の癌で:eIF4Gは扁平上皮肺癌で、ならびにeIF4Aは黒色腫および原発性肝細胞癌で過剰発現される。
【0114】
eIF4E-eIF4G相互作用の適切な調節の喪失は、多くの癌の発生において重要な役割を果たす。eIF4EとeIF4Gとのタンパク質-タンパク質相互作用は、キャップ依存性翻訳開始における本質的な段階である。細胞の成長および増殖に関与する大部分のタンパク質をコードしているmRNAの翻訳は高度にキャップ依存性であり、eIF4EとeIF4Gとの複合体形成のレベルの調節は、これらのプロセスの制御において重要な役割を果たす。これらのタンパク質の間の相互作用は4E結合タンパク質(4E-BP)によって阻害され、これは、eIF4E上の同じ表面への結合についてeIF4Gと競合する。成長および増殖シグナルに応答した4E-BP上の特定の部位のリン酸化は、eIF4Eを結合するそれらの能力を阻害する。
【0115】
eIF4E/eIF4G複合体形成のレベルはまた、アポトーシスの制御において役割を果たす。4E-BP1は、それがリン酸化を受けるために必要であるモチーフを除去する、そのN末端のカスパーゼ切断を受けることが見い出されており、eIF4Eへの4E-BP1の結合、およびキャップ依存性翻訳の阻害をもたらす。この阻害は、アポトーシスを優勢にするように、プロアポトーシスタンパク質および抗アポトーシスタンパク質のレベルのシフトを引き起こす。培養細胞中での実験は、ペネトラチン配列に融合されたeIF4GのeIF4E認識モチーフを含むペプチドがアポトーシスを誘導することができることを示した。
【0116】
翻訳因子のタンパク質-タンパク質相互作用の阻害剤の同定
化学ライブラリー合成および蛍光アッセイ技術は、大量の数の化合物をスクリーニングすることによって、タンパク質-タンパク質相互作用の小分子阻害剤を同定するために使用された。これらの化合物は、「リバース化学遺伝学」のためにツールを提供し、ここでは、タンパク質の活性を選択的に調節する小分子が、生物学的プロセスにおけるその役割を説明する(elucideat)ために使用される。eIF4E/eIF4G相互作用の化学阻害剤はキャップ依存性翻訳を特異的に阻害し、eIF4EまたはeIF4G過剰発現によって特徴付けられる腫瘍型における腫瘍の成長および進行を阻害する。
【0117】
以下の試薬および方法を、小分子阻害剤を同定するために使用した。
【0118】
タンパク質のクローニング、発現および精製
融合タンパク質GB1-meIF4Eは、BamHI部位およびEcoRI部位を使用して、マウスeIF4Eの全長コード配列をGB1発現ベクターにクローニングすることによって構築した。タグ化したものとネイティブの両方のeIF4Eを、標準的な方法を使用してE. coli中で発現し、m7GDPまたはm7GTPアガロース樹脂上のアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製した。
【0119】
蛍光偏光アッセイ法
C末端フルオレセイン標識ペプチドは配列KYTYDELFQLK(SEQ ID NO:2)を有し、標準的な方法を使用してResearch Geneticsによって合成された。この配列は、Y(X)4LΦモチーフを含み、溶解性およびeIF4Eへの結合のために最適化された。未標識コンペティターeIF4GIIペプチドは配列KKQYDREFLLDFQFMPA(SEQ ID NO:3)を有し、標準的な方法を使用してTufts University Core Facilityによって合成された。スクリーニングおよび引き続くペプチド結合アッセイ法のために、蛍光偏光の測定は、LJL Analystプレートリーダーを使用して行った。スクリーニングアッセイ法のために、50mMリン酸ナトリウムおよび50mM塩化カリウムから構成されるpH 6.5の緩衝液中に約5μM meIF4E、60μM標識ペプチド、0.05%ウシγ-グロブリン、および2mM DTTを含む溶液を使用した。約17nMフルオレセイン-eIF4Gペプチドをアッセイ法において使用した。曲線フィッティングにおいて使用するための蛍光偏光の測定のために、標識ペプチド濃度は1μMまで増加し、γ-グロブリンは除外した。結合常数の見積もりのための曲線フィッティングは、Roehrl et al.22によって誘導された等式を使用した。蛍光偏光および異方性の測定は、Analystプレートリーダー(LJL Biosystems)を使用して、黒色384ウェルプレート(Corning)中で行った。化合物は、ハーバード大学医学部(Harvard Medical School)の化学および細胞生物学研究所(the Institute for Chemistry and Cell Biology)(ICCB)におけるカスタム製造のSeikoピン移動ロボットを使用するスクリーニングの間にプレートに移した。
【0120】
NMRスペクトル測定
NMRのためのすべてのタンパク質試料は、50mMリン酸ナトリウム、50mM塩化カリウム、および2mM DTTから構成されるpH 6.5の緩衝液中であった。高濃度タンパク質試料については、DTT濃度は20mMまで増加した。バックボーン割り当て実験については、15N、13C、および85%または90%の重水素置換GB1-meIF4Eを使用した。標準的な3対の三重共鳴実験:HNCA/HN(CO)CA、HNC0/HN(CA)C0、およびHNCACB/HN(CO)CACBを記録した。HNCA/HN(CO)CAデータセットは、より良好な感度を得るために、より高いタンパク質濃度およびTROSYバージョンの実験を使用して再収集した。加えて、15N-HSQC-NOESY実験、GB1-meIF4Eの特異的15N Lys、Ile、Leu、およびVal標識試料のHSQC、ならびにリバースArg標識試料のHSQCを、バックボーン割り当てを容易にするために記録した。滴定実験のために、300μM GB1-melF4Eを300μM EGI-1と混合し、または100μMタンパク質を70μM eIF4GIIペプチド(FPアッセイ法において使用したものと同じ配列)と混合した。
【0121】
コンピュータによるドッキング
プログラムTreeDock (Fahmy et al., 2002, J. Am. Chem. Soc. 124(7): p. 1241-50、参照により本明細書に組み入れられる)をコンピュータによるドッキングのために使用した。
【0122】
インビトロ翻訳
5'UTRの後ろにレニラ レニフォルミス(Renilla reniformis)ルシフェラーゼ配列を、続いてCrPV IRESおよびホタルルシフェラーゼ配列を含む二シストロン性レポーター構築物を、レポーター構築物プラスミドを構築するために使用した。レポーター構築物プラスミドは、BamHIで線状化し、mMessage Machine T7 Ultraキット(Ambion)を使用してARCAキャップとともにインビトロで転写した。インビトロ翻訳反応は、Red Nova網状赤血球溶解物(Novagen)を使用して、2mM酢酸マグネシウムおよび153mm酢酸カリウムを用いて実行し、30℃で90分間インキュベートした。レポーター遺伝子の翻訳は、Wallac Victor2プレートリーダー中で、Dual-Gloルシフェラーゼアッセイ法(Promega)を使用して測定した。
【0123】
Alamar Blueアッセイ法
接着性のヒト固形腫瘍細胞をプレートし、増加濃度の化合物の存在下で3日間維持し、細胞増殖をalamar Blueアッセイ法によって測定し、ここで、10%の市販の溶液を細胞培地に加え、530nmの励起波長および590nmの発光波長で、96ウェルプレート中で蛍光を測定する。データの計算は以前に記載したように実行した。
【0124】
m7GTPプルダウンアッセイ法
アッセイ法のインビトロバージョンのために、翻訳反応におけるものと同じ塩および緩衝液の濃度を有するRed Nova網状赤血球溶解物を、化合物または200μM m7GDPとともに、37℃で1時間インキュベートした。インキュベート後、溶解物はm7GTP-セファロースビーズとともに4℃で1時間インキュベートした。広範な洗浄後、結合タンパクは遊離のm7GTPとともに溶出し、SDS-PAGEによって分離し、ならびに4E-BP1に対するポリクローナル抗体(Cell Signaling Technology)、およびeIF4EおよびeIF4Gに対するモノクローナル抗体(Transduction Laboratories)を使用するウェスタンブロッティングに供した。アッセイ法の細胞ベースバージョンのために、ジャーカット細胞を化合物の存在下で6時間増殖させ、遠心分離によって収集し、および複数の凍結-融解サイクルによって溶解した。この方法によって調製した抽出物は、網状赤血球溶解物を用いるのと同じプルダウンプロトコールを使用して分析した。
【0125】
細胞培養実験
細胞のタンパク質およびmRNAのレベルの分析のために、ジャーカット細胞は、化合物の存在下で8時間増殖させた。ウェスタンブロッティングのための抽出物は、複数の凍結-融解サイクルによって細胞の半分から調製した。β-アクチン、Bcl-xL、およびc-mycは、ポリクローナル抗体(Cell Signaling)を使用して検出した。残存している細胞については、PARISキット(Ambion)を使用して、総核および総細胞質のRNA画分を単離した。分画の完全性は、アガロースゲル電気泳動によって(Ambionによって指示されるように)確認した。夾雑DNAはDNA-フリーキット(Ambion)を使用して除去し、cDNAはMMLV逆転写酵素(Promega)を使用して調製した。β-アクチンと比較した、c-mycおよびBcl-xLメッセージの相対的豊富さは、Applied Biosystemsからのサーモサイクラーを使用して、確証したQuantiTecプローブおよびQuantiTec SYBR Greenキット(Qiagen)を用いるリアルタイムPCRによって決定した。
【0126】
細胞の生存度は、24時間化合物を用いるジャーカット細胞の処理、およびCellTiterGloアッセイ法(Promega)を使用する細胞内ATPの決定によって測定した。アポトーシス性DNA断片化の測定のために、細胞は、100μM zVAD-FMKの存在下または非存在下で、60μM EGI-1または6.65μMカンプトテシンと24時間処理した。固定およびPIを用いる染色後、細胞DNA含量は、FACSCalibur機械(Beckton Dickinson)中でのFACS分析によって決定した。EGI-I処理の24時間後の核の形態は、Hoechst 33342色素および蛍光顕微鏡を用いる細胞の染色によって可視化した。
【0127】
肺癌細胞株A549は、当技術分野において公知である増殖アッセイ法、例えば、Fan et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 14: 2547-50, 2004において使用された。細胞毒性アッセイ法は、16時間の化合物の存在下でプレートした細胞をインキュベートすること、およびCellTiter-Glo発光細胞アッセイ法(Promega)を使用して細胞生存度を決定することによって実行した。A549肺癌細胞については、EGI-1の存在下における細胞増殖は、以前に記載されたSRB染色法を使用して決定した。HT29結腸癌細胞については、細胞増殖は、Alamar Blueアッセイ法を使用して決定した。
【0128】
阻害組成物のスクリーニングおよび構造の特徴付け
蛍光偏光(FP)アッセイ法は、保存性eIF4E結合モチーフを含むパプチドのeIF4Eへの結合を測定するために開発した。ペプチドは、そのカルボキシ末端においてフルオレセインに結合体化され、精製したeIF4Eを用いて滴定したときに、その蛍光偏光は、結合した標識ペプチドの画分が増加するにつれて、ほぼ3倍増加する。コンペティターの未標識eIF4Gペプチドが標識ペプチドおよびeIF4Eの混合物に加えられるときに、FPは、遊離のペプチドを用いて観察される基礎レベルまで低下する(図5B)。従って、この系は、コンセンサスペプチドと同じ保存性疎水性表面に競合的に結合することによって、eIF4EとeIF4Gとのタンパク質-タンパク質相互作用を破壊することができる小分子を検出するための単純かつ高感度のアッセイ法を提供した。
【0129】
このアッセイ法は、マイクロウェルプレート形式に適合され、潜在的なeIF4E/eIF4G相互作用阻害剤についての小分子ライブラリーから構成される多数のライブラリーをスクリーニングするために使用された。タンパク質-タンパク質相互作用の阻害剤についてのスクリーニングは、典型的には、非常に低いヒット率を有するので(.01〜.l%の桁)、取られたストラテジーは、ChemBridge Diverset Eライブラリー(16,000個の化合物)、Bionetライブラリー(4,800個の化合物)、Maybridgeライブラリー(8,800個の化合物)、Peakdaleライブラリー(2,816個の化合物)、および全体で42,416個の化合物についてのChembridge Microformatライブラリーの一部を含む大きな最初のスクリーニングを実行することであった。薬物様構造を有する2つのヒット化合物が、さらなる特徴付けのためにこのスクリーニングから選択された:EGI-1(化合物154300)および6006288(図5C)である。図1Dは、これらの2つの化合物について標識ペプチド結合の阻害を示す:既知の結合親和性のeIF4Gペプチドのそれに対する阻害の強度の比較によって、これらの化合物の親和性は、EGI-1(化合物154300)について1μM、および6006288について10μMで見積もられる。
【0130】
NMRスペクトル測定によって、eIF4Eとこれらの化合物の相互作用を構造的に特徴付けるために、非結合型の哺乳動物eIF4EについてのバックボーンNおよびH化学シフトの割り当てを決定した。バックボーンの割り当ては、eIF4Gペプチドとの哺乳動物eIF4Eの複合体について決定されていたが(Miura et al., 2003, J. Biomol. NMR 27(3): p. 279-80.30)、遊離のタンパク質についての割り当てを、ペプチド結合表面に結合する化合物とのその相互作用を特徴付けるために決定した。遊離のeIF4Eの乏しい溶解性は、これを多次元NMR分析のために不適切にするので、溶解性を、プロテインGの56残基GB1ドメインとのこのタンパク質の融合物を構築することによって改善した。このドメインは、これが融合する異種タンパク質にとっての溶解性増強タグとして働くことが見い出された。この構築物は、溶解性および安定性を劇的に改善し、ネイティブタンパク質および融合タンパク質のHSQCスペクトルの検査は、このタグの存在がeIF4Eのネイティブ構造に対していかなる効果も有さないことを示す。
【0131】
GB1-meIF4E構築物を使用して、バックボーンの割り当ての90%は、標準的な多次元NMR法を使用して決定した。HSQC滴定実験は、eIF4Eへの化合物の結合を確証し、化合物結合の位置を精密に記し、および化合物結合の特異性を評価するために実行した。EGI-1(化合物154300)を用いるeIF4Eの滴定(図6A)は、NMR時間スケールに対するリガンド結合状態のタンパク質と遊離状態のタンパク質の間の中間体交換に起因するスペクトル中のピークの数の拡大を誘導した。これは比較的強固な結合と一致する。最も強い拡大は、eIF4Eのペプチド結合部位に隣接している、Ser82およびSer 83に対応するピークのそれである。有意な数のピークがスペクトル中で拡大されるので、コンホメーションの変化がこの化合物の結合に付随する可能性がある。化合物6006288を用いる滴定(図6B)は、eIF4Eのペプチド結合部位の中心にあるTrp73の側鎖インドールNHピークの位置のシフトを誘導する。スペクトルに対する他の有意な効果は観察されなかった。このシフトは、NMR時間スケールに対する速い化学的交換を示した。これは、この化合物のより弱い結合と一致する。
【0132】
NMRによって獲得された化合物の結合の部位に関する情報は、コンピュータ方法を使用してeIF4Eへのこれらの分子の結合をモデル化するために基礎を提供する。プログラムTreeDock (A. Fahmy, G. Wagner: TreeDock: A Tool for Protein Docking Based on Minimizing van der Waals Energies, J. Am. Chem. Soc, 124, 1241-1250 (2002))は、すべての可能な方向でリガンドを徹底的にドッキングすること、および自由エネルギーを評価するためにLennard-Jonesポテンシャルの計算を使用することによって、リガンドに結合したタンパク質の好ましいコンホメーションを予測する。EGI-1(化合物154300)の結合は、Ser82およびSer83に対して近位であるように制限されている化合物を用いてTreeDock計算を実行することによってモデル化した。これは、この化合物が、eIF4Gペプチドを結合からブロックするコンホメーションにあるeIF4Eの表面に結合できることを予測する。代表的な低エネルギー構造を図7Cに示す。
【0133】
本発明者らのヒット化合物の結合を構造的に特徴付けることに加えて、化合物の生物学的活性を評価した。前述のモデル化に基づいて、eIF4E/4G相互作用の特異的阻害剤が、mRNAのキャップ依存性翻訳を阻害するが、IRESからなどのキャップ依存性翻訳に対して影響を有するはずがないことを予想した。この仮説をインビトロで試験するために、ウサギ網状赤血球溶解物中の翻訳アッセイ法を実行した。キャップ依存性レニラルシフェラーゼおよびコオロギ麻痺ウイルスIRES駆動ホタルルシフェラーゼを含む二シストロン性レポーター構築物を、両方の翻訳メカニズムに対する化合物の相対的影響を測定するために利用した。アッセイ法を確証するために、エメチンが両方のメッセージの翻訳を等しく良好に阻害すること(図7A)、およびm7GDPがキャップ依存性メッセージを特異的に阻害すること(図7B)が実証された。このアッセイ法におけるEGI-1(化合物154300)の滴定は、キャップ依存性ルシフェラーゼの翻訳を阻害したが、CrPV IRESからの翻訳を実際に増強した(図7C)。従って、本明細書に記載される化合物は、キャップ依存性翻訳を選択的に阻害するが、IRES依存性翻訳を阻害しない。この増強は、利用可能なリボソームについて、レポーターおよび内因性mRNAのキャップ付き5'末端との、IRESの競合に起因した。
【0134】
EGI-1(化合物154300)はインビトロでキャップ依存性翻訳の特異的阻害剤であることが決定されたので、生きている細胞中での生物学的活性を評価した。腫瘍の増殖および進行のために認識されているモデルであるA549肺癌細胞を用いる増殖アッセイにおいて化合物を試験した。化合物は、約6μMのIC50で抗増殖活性を有することが見い出された(図8A)。これが単純に毒性に起因するか否かを決定するために、化合物処理後の細胞生存度を、発光アッセイ法を使用して決定した(図8B)。EGI-1(化合物154300)が抗増殖活性を有する濃度の範囲内では、有意な細胞毒性は観察されない。これらのデータは、この化合物が腫瘍細胞の成長および増殖を阻害することを示す。
【0135】
さらなる化合物もまた試験した。蛍光偏光データを以下に表1において示す。
【0136】
(表1) ZおよびE-異性体の生物学的結果



a)IC50は蛍光偏光アッセイ法によって測定した。値は、ceIF4E/EIF4G相互作用の50%を阻害するために必要とされる平均濃度を示す。実験は3連で行い、SD<±10%であり、陽性対照および陰性対照としてそれぞれeIE4GIIペプチドおよびDMSOを使用した。
b)GI50はスルホローダミンBアッセイ法を使用して測定した。値は、細胞増殖の50%を阻害するために必要とされる平均濃度を示す。実験は3連で行い、SD<±10%であり、陽性対照および陰性対照としてそれぞれCLTおよびDMSOを使用した。
【0137】
キャップ依存性翻訳の選択的阻害剤は腫瘍細胞の増殖を阻害する
特定のクラスまたは型の腫瘍は、eIF4eの過剰発現またはeIF4Gの過剰発現の過剰発現によって特徴付けられる。キャップ非依存性翻訳と比較して、キャップ依存性翻訳を優先的に翻訳する阻害化合物は、eIF4eまたはeIF4Gが過剰発現されている(同じ組織型の非癌性細胞と比較して)クラスまたは腫瘍型の増殖および進行を阻害するために有用である。
【0138】
eIF4E/eIF4G相互作用の小分子阻害剤は、上記のように同定した。上記のスクリーニングにおいて同定されている化合物の1つの例、EGI-1(化合物154300)は、さらに試験され、キャップ依存性翻訳を特異的に阻害し、かつ強力な抗増殖活性を有することが見い出された。本明細書に記載されるデータは、上記の化合物が、eIF4EまたはeIF4Gが過剰発現されている腫瘍の増殖を阻害するために治療的に有用であることを意味する。
【0139】
本発明の前には、薬理学的薬剤を用いてキャップ依存性翻訳を特異的に阻害することは不可能であった。既存の方法/組成物、例えば、シクロヘキシミドは、すべてのタンパク質合成を阻害し、または他の潜在的に有害な下流の効果に導く4E-BPリン酸化の上流のシグナル伝達分子標的とする。上記のこれらのスクリーニングストラテジーはまた、eIF4E-eIF4G結合を阻害する化合物を同定するために有用である。
【0140】
eIF4Eのより低いレベルに対するアンチセンスRNAの使用は、頭頸部扁平上皮癌細胞株の腫瘍化特性および血管形成特性を抑制することた示された。mTORキナーゼを阻害することによって作用する、4E-BPリン酸化を減少し、従って、遊離のeIF4Eの量を減少するラパマイシンのアナログが試験されてきた。
【0141】
他の態様は、本発明の範囲および技術思想の範囲にある。上記の説明は本発明に言及しているが、この説明は、1つより多くの発明を含み得る。
【0142】
実施例:
実施例1:NMRから導き出される構造に基づく設計および合成 eIF4E/eIF4G相互作用の阻害剤としての2-チアゾリルヒドラゾン
真核生物開始因子4E(eIF4E)は、高度に保存された25kDaキャップ結合タンパク質である。eIF4Eは、mRNA-キャップのeIF4G両方の5'末端に結合し、それによって、2つの分子を一緒にする1。eIF4Gは大きなマスター骨格タンパク質であり、これは、eIF4E、およびeIF4A、5'非翻訳領域の二次構造を巻き戻すためのヘリカーゼとしても作用するRNA依存性ATPアーゼと直接的に相互作用して、eIF4F複合体を形成する。低リン酸化eIF4E結合タンパク質(4E-BP)は、eIF4Eへの結合についてeIF4Gと競合し、それによって、eIF4F複合体の形成を制限するeIF4E/eIF4G相互作用の生理学的阻害剤として作用する。4E-BPのリン酸化はeIF4Eを遊離させ、翻訳開始の鍵となるレギュレーターであるeIF4F複合体の形成を可能にする。
【0143】
翻訳開始は、細胞増殖、悪性形質転換、および形質転換表現型の維持の制御における決定的な役割を果たす。これは、多くのオンコジーンタンパク質および成長因子をコードするmRNAが、それらの翻訳をeIF4F複合体のヘリカーゼ活性に高度に依存性にする、高度に構造化された5'UTRを有するからである。一貫して、正常培養細胞中のeIF4Eの過剰発現は悪性形質転換を引き起こすのに対して、eIF4E発現またはeIF4E/eIF4G相互作用のいずれかの阻害は、インビトロおよびインビボで悪性表現型を逆転させる。これらの理由のために、eIF4F複合体の形成を妨害する際に4E-BPを模倣する翻訳開始の小分子阻害剤は、新規な標的特異的癌治療の開発のための有望な候補である。
【0144】
N末端短縮型のヒトおよびマウスのeIF4Eの高分解能構造はX線結晶学によって分解され、ビール酵母菌(S.cerevisiae)eIF4Eの構造はNMRスペクトル分析を使用して決定した。加えて、eIG4GIIおよび4E-BPから誘導された短いペプチドを有するN末端短縮型ヒトeIF4Eの結晶構造が報告されている。保存性モチーフYxxxxLΦモチーフを含む結合ペプチドは、eIF4Eのセグメント37〜39、68〜84および120〜140によって形成される溝の背側の疎水性表面に結合するL形状構造を採る。V69、W73、Y76、L131、L135およびI138から構成される疎水性パッチは、eIF4Gおよび4E-BPにおける疎水性表面を結合する相補性eIF4Eと相互作用するためのホットスポットとして働くことができる(図32)。
【0145】
本発明者らは、eIF4E/eIF4G相互作用の潜在的阻害剤を同定するための高スループット蛍光偏光(FP)アッセイ法を開発した。このアッセイ法は、eIF4Gの保存性eIF4E結合モチーフから誘導されたフルオレセインタグ化ペプチドの結合を阻害する化合物を同定する。このアッセイ法を用いるChembridgeライブラリーのスクリーニングは、そのより高い効力のために、ヒットからリードの開発のために選択された2-チアゾリルヒドラゾン誘導体(以下に示す、化合物1)を含む数個のヒットの同定を生じた。本研究の全体的な目的は、eIF4E/eIF4G相互作用を阻害し、従って、潜在的な抗癌薬物として働く、より活性な小分子を生成することであった。
化合物1

【0146】
NMRマッピングおよびドッキング実験によって、eIF4Eに対するヒット化合物1の結合部位をモデル化すること
eIF4Eに対するリード化合物1の結合部位を、小分子阻害剤の非存在下および存在下で、eIF4Eの15N-1H HSQC分析を使用する化学シフトマッピングから同定した。そのシグナルが大部分シフトした残基I81、S82およびS83を、阻害剤とeIF4Eタンパク質の間の主要な相互作用部位を含むとして同定した。これらの残基は、eIF4G誘導ペプチドを結合する推定のホットスポットに隣接している。この情報は、eIF4E/阻害剤複合体の構造のコンピュータによるモデル化における制限として使用した。TreeDockソフトウェアをドッキング実験のために使用した。このプログラムは、タンパク質表面における阻害剤および相互作用部位のすべての可能なドッキングコンホメーションを徹底的に検索し、Lennard-Jonesおよび水素結合ポテンシャルに基づいて結合エネルギーを評価し、および最もエネルギー的に好ましく、かつ化学シフトマッピングデータと一致する配置を同定した。結果は、阻害剤1が、eIF4Gについての結合部位と部分的に重複することを示す(図33A)。eIF4Eにおける阻害剤と特定のアミノ酸残基の間のシミュレートした相互作用は図33Bに示す。このモデルは、eIF4Eに対する阻害剤の結合方向が、阻害剤のカルボキシル部分とH78のイミダゾールNHの間の塩橋形成(4.3Å)、およびD77との水素結合を通して決定されることを示唆する。3,4-ジクロロフェニル環は、eIF4E/eIF4G結合相互作用のために必須であると報告されている推定のホットスポットの中心に位置しているW73残基のインドール部分とのπ-π相互作用を形成するように配置される。
【0147】
しかし、阻害剤-eIF4E相互作用モデルにおいて、強固な構造としてのドッキングプロセスの間のeIF4Eの提示は、リガンド誘導性のコンホメーション変化の形成を可能にしない。eIF4Gに結合するために決定的であるeIF4E残基の同定は、それにも関わらず、ヒットからリードの最適化のために重要な洞察を提供する。
【0148】
複合体1-eIF4E界面の試験は、ホットスポットとの疎水性相互作用が、2-チアゾリル環上の4位を置換する疎水性部分のサイズを増加させることによって最適化することができることを示唆した。この仮定は、マウスeIF4EにおいてTrp73→Alaに変化させることが、4E-BP1またはeIF4GI9のいずれかとの相互作用を妨害することを示す部位特異的変異誘発研究と一致している。ここで、本発明者らは、サイズ、疎水性、および形状が変化している置換基によって、チアゾリル環の4位において置換された2-チアゾリルヒドラゾンの合成およびその生物学的活性を報告する。
【0149】
2-チアゾリルヒドラゾンの合成に対する一般的アプローチは、すぐ下に示すスキームに記載される。4-置換2-チアゾリルヒドラジン(2)は、室温においてジオキサン中で適切なブロモアセトフェノン(1)を用いるチオセミカルバジドのHantzsch型の環脱水、続いて遊離のヒドラジン212を生成するための中和によって調製した。DMSO-d6溶液中で測定した生成物の1H NMRスペクトルは、予想された3個のヒドラジノプロトンを8.67(1H)および4.91(2H)ppmにおける2個のブロードなシングレットとして、およびチアゾリル上の特徴的な5位のプロトンをシングレットとして7.31ppmにおいて示した。5%酢酸の存在下での2-ニトロフェニルピルビン酸(3)との4-置換-2-チアゾリルヒドラジン(2)の間の縮合反応は、置換2-チアゾリルヒドラゾン(4)13を生じた。すべての生成物はHPLCによって精製し、無細胞アッセイ法および細胞ベースのアッセイ法において、それぞれ、それらの競合結合および増殖阻害活性について試験した。

【0150】
バイオアッセイ法
蛍光偏光(FP)アッセイ法は、保存性eIF4E結合モチーフ(KRYDREFLLGF)を含む蛍光発生性eIF4G誘導ペプチドと競合することによって、eIF4Eへの結合を測定するために使用することができる。競合リガンドによる、Nα-フルオレセインタグ化eIF4G誘導ペプチドの置き換えは、蛍光偏光の大きな減少を引き起こす。同じeIF4G誘導ペプチドの非タグ化バージョンおよびDMSOは、陽性対照および陰性対照としてそれぞれ使用した。結果を、IC50(2-チアゾリルヒドラゾン)/IC50(非タグ化ペプチド、IC50=75μM)の比率として提示する。
【0151】
機能的無細胞アッセイ法は、キャップ依存性翻訳およびIRES依存性翻訳に対する化合物の相対的効果を決定した。このアッセイ法は、キャップ依存性であるレニラルシフェラーゼおよびキャップ非依存性様式でホタルルシフェラーゼをコードし、後者はコオロギ麻痺ウイルスIRESによって駆動される二シストロン性mRNAレポーター構築物のインビトロ翻訳を含んだ。翻訳活性の分析は、対照に対する相対的発光を決定するためにホタルルシフェラーゼ基質およびレニラルシフェラーゼ基質との引き続くインキュベーションを含んだ。m7GDPおよびエメチンを、キャップ依存性翻訳阻害および一般的な翻訳阻害のための陽性対照および陰性対照としてそれぞれ使用した。キャップ依存性mRNAのインビトロ翻訳はeIF4E/eIF4G相互作用の阻害剤によって阻害されたのに対して、IRESからの翻訳は、おそらくキャップ依存性翻訳が阻害されるにつれて、リボソームの利用可能性の増加に起因して、逆説的に増強された。
【0152】
化合物はさらに、ヒト肺癌細胞株(A549)および結腸細胞株(HT29)における細胞増殖阻害について試験した。細胞増殖の阻害を特異的に測定するAlamar Blueアッセイ法は、化合物のGI50を評価するために使用した。生物学的データは図34に要約する。
【0153】
置換2-チアゾリルヒドラゾンの合成もまた、最初にピルビン酸を用いるチオセミカルバジドの縮合、次いで置換ブロモアセトフェノンを用いる環化(cylozation)によって達成することができる。
【0154】
本発明者らは、チアゾリル環の4位に種々の置換フェニルを有するヒット2-チアゾリルヒドラゾン1のアナログを設計および合成した。チアゾリル環に非置換フェニルを有する参照化合物4aは、FPアッセイ法において、および両方の細胞株の増殖阻害において、ヒット化合物1と比較して劇的な減少を示した。それぞれ、2-ナフチル、4-ビフェニル、および4-シクロヘキシル-フェニルで置換した化合物4c、4f、および4gは、ヒット化合物1よりも2〜4倍高い結合親和性を示した。4fと比較した4gの2倍高い効力は、フェニル環の4位におけるシクロヘキシル部分の親油的なかさ高さが、同じ位置(positin)における芳香族性の平面フェニルよりも、ホットスポットにおける結合に、より好ましく寄与することを示唆する。まとめると、これらの知見は、チアゾリル環の4位における置換基のサイズおよび親油性を増加した本発明者らのモデルが、推定のホットスポットとの相互作用を最適化することを支持する。
【0155】
それぞれ、3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]ジオキセピン-7-イル、2,3-ジヒドロ-ベンゾ[1,4]ジオキシン-6-イル)-チアゾール-2-イル、4-モルホリン-4-イル-フェニル、4-ピロリジン-1-イルフェニル、および4-フェニルアゾ-フェニルで置換したアナログ4d、4e、4h、4i、および4jを用いて得られた結果の考察は、ヘテロ原子の存在および位置ならびにそれらを提示する部分の性質が、推定のホットスポットとの相互作用において役割を果たし得る、より複雑なモデルを示唆する。4eとの4dの比較は、FPアッセイによって測定されるように、より小さな[1,4]ジオキシン環が2倍より大きな効力の改善に導くのに対して、より大きな[1,4]ジオキセピン環がヒット化合物1と等しい効力のままであったことを示す。より小さくかつより強固な[1,4]ジオキシン環と比較して、より大きくかつより柔軟性のある[1,4]ジオキセピン環は、結合部位とのある程度の破壊的相互作用を提示する可能性がある。興味深いことに、4-ピロリジン-1-イル-フェニル4hおよび4-モルホリン-4-イル-フェニル4iを用いる修飾は、ヒット化合物1よりもFPアッセイ法において有意により低い活性であった。フェニル環のパラ位における三級環状アミンの導入は、電荷または水素結合の適合性の欠如に起因して、耐容性でないかもしれない。
【0156】
ヒット化合物1と比較して、4-フェニルアゾ-フェニルで置換した化合物4jのFPアッセイ法における効力のほぼ3倍の増強は、2-ナフチルおよび4-ビフェニルでそれぞれ置換した4cおよび4fについて観察された増強と一致している。この知見は、eIF4EのeIF4G結合表面上の利用可能な拡張した疎水性部位の、本発明者らのモデルに基づく予測と一貫している。
【0157】
一般的に、増殖阻害データは、FPアッセイ法において生成した結合競合データと一致している。5.3よりも高いIC50比率を有する、最も弱く結合しているアナログ、4a、4e、4hおよび4iは、両方の細胞株において>24μMのGI50を有する。3μM以下のIC50比率を有するすべての強力に結合するアナログ4c、4d、4f、4g、および4jは、少なくとも一方の細胞株において10μMより低いGI50を有する。唯一の例外は、4eと類似のIC50比率を有するが、HT29およびA549細胞株を阻害する際により強力である(それぞれ、GI50=9および5μM対45および24μM)、ヒット化合物1である。本発明者らは、結腸癌株または肺癌株のいずれかを阻害する際の2-チアゾリルヒドラゾンについての明確な優先度を同定することはできない。eIF4E/eIF4G結合競合FPアッセイ法のような無細胞の単離された標的アッセイ法と細胞ベースの増殖阻害アッセイ法の間の上記の相関は、非常に有望であり、翻訳開始の阻害が試験細胞における増殖阻害のための第一の原因であり得ることを示唆する。
【0158】
2-チアゾリルヒドラゾンによるeIF4E/eIF4G相互作用の阻害が、mRNAのIRES依存性翻訳と比較して、キャップ依存性翻訳の優先的な阻害を生じることのより直接的な実証は、ウサギ網状赤血球溶解物調製物中での二シストロン性mRNA二重ルシフェラーゼレポーター構築物のインビトロ翻訳の阻害から導き出された。本発明者らは、FPアッセイ法においてこのシリーズの最も強力な化合物である4gを選択し、これを、インビトロキャップ依存性翻訳を阻害するその能力について化合物1と比較した。両方の化合物は、レニラルシフェラーゼのキャップ依存性翻訳を用量依存的に阻害し、同時に、ホタルルシフェラーゼのIRES依存性翻訳を増強した(図35)。結合阻害FPアッセイと一致して、最も強力な化合物4gはまた、より強力でないヒット化合物1と比較して、キャップ依存性ルシフェラーゼのインビトロ翻訳を阻害する際により有効であった。
【0159】
要約すると、eIF4E-ヒット化合物1界面の分子モデルは、eIF4E-eIF4G阻害剤の構造ベースの設計のために利用した。このモデルは、eIF4Eの結合部位への小分子のドッキングを可能にするために、化学シフトマッピングによって生成した制約を組み入れた。
【0160】
本発明者らは、疎水性部分の多様性を有する、チアゾリジン環の5位において修飾された一連の新規な2-チアゾリルヒドラゾンアナログを、首尾よく設計および合成した。本発明者らの研究は分子モデルを確証し、親のヒット化合物1と比較して、eIF4Eに対する改善された結合親和性を有するアナログ、およびキャップ依存性翻訳の強力な阻害剤を生成した。本発明者らは、2-チアゾリルヒドラゾン骨格を、分子モデルを利用してeIF4E/eIF4Gの阻害のために最適化することを継続する。本発明者らが本発明者らの作業モデルの分解能を改善するにつれて、本発明者らは、eIF4E/eIF4G相互作用の最適な阻害剤を生成するための本発明者らの設計をより良好に手直しすることが可能である。
【0161】
1H NMRスペクトルは、溶媒としてd6-DMSO中で、Varian VX500上で500MHzで、またはVarian VX400上で400MHzで記録した。TLC分析は、Kieselgel 60 F254シリカゲルプレート(EMD chemicals, Inc.)上で実施した。カラムクロマトグラフィーは、Baker 7024フラッシュシリカゲル上で実施した。融点はMel-Temp「Electronthermal」装置中のPyrexキャピラリー管中で測定し、補正は行っていない。LC-MSは、XTerra C8 30×100mmカラムを用いてWaters LC-MS (APCIモード)中で実施した。元素分析は最終生成物についてのみ入手し、Robertson Laboratories, Madison, NJによって実施された。分析は±0.4%の理論値の範囲内にあった。すべての出発物質は業者から入手し、さらなる精製なしで使用した。
【0162】
2-{[4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラゾノ}-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロピオン酸の合成のための手順
段階1
4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル-ヒドラジン
ジオキサン(20mL)中のチオセミカルバジド(10mmol、0.91g)および3,4-ジクロロフェニルアセチルブロミド(10mmol、2.68g)の溶液を室温で16時間攪拌した。臭化水素酸塩の沈殿を濾過し、ジオキサン(3×10mL)で洗浄し、2N Na2CO3(20mL)で塩基性化した。生成物を濾過し、水で洗浄し、そして乾燥させた(2.08g、80%)。この生成物は、さらなる精製なしで引き続く段階において使用することができた。

【0163】
段階2
2-{[4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラゾノ}-3-(2-ニトロフェニル)-プロピオン酸
5%酢酸(2mL)中の3-(2-ニトロフェニル)-2-オキソ-プロピオン酸(1.0mmol、209mg)を、エタノール(4mL)中の4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル-ヒドラジン(1.0mmol、259mg)の溶液に加えた。この反応混液を90℃で1時間攪拌し、0℃まで冷却した;オレンジ色の沈殿を濾過し、そして水によって洗浄した。MeOH-H2Oからの再結晶は、黄色粉末として最終生成物を与えた(600mg、66.7%)。mp 184〜186℃;生成物は、水中0.05% HOAcにおけるアセトニトリル50%中0.05% HOAcの50〜75%の30分間の直線状勾配を使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。

【0164】
分子ドッキング研究
TreeDockモジュールは、単一のSGI R10kワークステーション上でC-プログラムとして実行した。TreeDockへの入力は分子についてのPDBファイルからなり、本発明者らが溶媒接近可能表面を同定したPDBファイル中の各原子の座標を利用する。TreeDockの出力は2つのファイルに保存される:1つは複合体の座標を含み、もう1つ(任意)は接近可能表面におけるすべての化学部分のLennard-Jonesエネルギー寄与を記録する。Lennard-JonesポテンシャルについてのパラメーターはX-PLORプログラムから得られた。
【0165】
2-{[4-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[1,4]ジオキシン-6-イル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラゾノ}-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロピオン酸(4d)
生成物は、水中0.05% HOAcにおけるアセトニトリル50%中0.05% HOAcの50〜75%の30分間の直線状勾配を使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。

【0166】
2-{[4-(3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][l,4]ジオキセピン-7-イル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラゾノ}-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロピオン酸 (4e)
生成物は、水中0.05% HOAcにおけるアセトニトリル50%中0.05% HOAcの50〜75%の30分間の直線状勾配を使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。

【0167】
2-{[4-(4-シクロヘキシル-フェニル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラゾノ}-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロピオン酸 (4g)
生成物は、水中0.05% HOAcにおけるアセトニトリル50%中0.05% HOAcの50〜75%の30分間の直線状勾配を使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。

【0168】
2-{[4-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラゾノ}-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロピオン酸 (4h)
生成物は、水中0.05% HOAcにおけるアセトニトリル50%中0.05% HOAcの50〜75%の30分間の直線状勾配を使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。

【0169】
3-(2-ニトロ-フェニル)-2-{[4-(4-ピロリジン-1-イル-フェニル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラゾノ}-プロピオン酸 (4i)
生成物は、水中0.05% HOAcにおけるアセトニトリル50%中0.05% HOAcの50〜75%の30分間の直線状勾配を使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。

【0170】
実施例2:eIF4E/eIF4G相互作用の阻害剤としての2-チアゾリルヒドラゾンのファーマコフォアの同定
RNAヘリカーゼeIF4A、ドッキングタンパク質eIF4G、およびキャップ結合タンパク質eIF4Eからなる翻訳開始複合体eIF4Fの形成は、eIF4Eの極度に低い豊富さのため、真核生物における開始プロセスの律速段階である。eIF4Fの一部として、eIF4Eは、eIF4E結合タンパク質(eIF4E-PB)による調節のための主要な標的である。eIF4Eは、インスリンおよび成長因子による刺激に応答して、低リン酸化の際に、4E-BPとの翻訳的に不活性な複合体から遊離される。eIF4E-BPは、eIF4Eとの複合体から解離し、これが活性翻訳開始複合体eIF4Fを形成することを可能にする。成長促進タンパク質およびオンコジーン生成物のmRNAは、しばしば、長い5'UTRを有し、それらの翻訳は、キャップ依存性様式でのeIF4E/eIF4Gの相互作用に決定的に依存する。他方、多くのハウスキーピングタンパク質およびプロアポトーシスタンパク質は、2aキャップ非依存性様式で、内部リボソームエントリー部位を通して(IRES依存的な様式で)翻訳される。eIF4E/eIF4G相互作用の阻害剤は、eIF4F複合体の形成を妨害し、腫瘍の増殖および生存に関与するmRNAの翻訳を優先的に阻害し、ならびに抗腫瘍活性を有する。
【0171】
本発明者らは、eIF4GおよびeIF4E-BPがeIF4Eの背側の表面上の同じ結合部位を共有し、両方がコンセンサス結合モチーフを含むという事実に基づいて、eIF4E/4G相互作用の阻害剤を同定するための高スループットスクリーニングのために適合された蛍光偏光アッセイ法を開発した。eIF4Gの保存性eIF4E認識モチーフおよび精製したeIF4Eに由来するフルオレセインタグ化ペプチドを、eIF4E/eIF4G相互作用を模倣するためのスクリーニングアッセイ法において使用した。Chembridgesライブラリーのスクリーニング後、いくつかの小分子を同定した;大部分の活性ヒット(1)は、さらなる医化学開発のためのヒットとして選択した。翻訳開始の強力な阻害剤としての一連の2-チアゾリルヒドラゾンの合成および生物学的評価は、活性ファーマコフォアを同定するために働く。

【0172】
化学
2-チアゾリルヒドラゾンの合成に対する一般的合成アプローチは、スキーム1として以下に示されるスキームに記載される。置換2-チアゾリルヒドラジン(2)は、室温においてジオキサン中で適切なブロモアセトン(1)を用いるチオセミカルバジドのHantzsch型の環脱水によって調製した。5%酢酸の存在下で適切なケトンまたはα-ケト酸(3)を用いる2-チアゾリルヒドラジン(2)間の縮合反応は、置換2-チアゾリルヒドラゾン(4)を生じた。
【0173】

【0174】
2-フェニル-5-ヒドラジネオ-1,3,4-チアジアゾール(2k)は、銅触媒を用いる塩酸中の2-アミノ-5-フェニル-1,3,4-チアジアゾールのジアゾ化、続いてヒドラジン水和物を用いる処理によって得た。最終生成物(4k)は、□-ケト酸との縮合によって合成した。3-フェニル-2-[(6-フェニル-ピリダジン-3-イル)-ヒドラゾノ]-プロピオン酸(4l)は類似の様式で合成した。


【0175】
Z異性体およびE異性体の割り当て
高分解能1H NMRスペクトル分析は、E異性体およびZ異性体の混合物としてDMSO-d6中に存在した縮合生成物が炭素-窒素二重結合の立体化学と関連することを明らかにした。大部分の場合において(4m以外)、純粋なE異性体またはZ異性体は、C18逆相カラムを用いる調製用HPLCを使用することによって分離することができる。立体化学の割り当ては、E異性体において、C=Nに結合したNH基およびCH2(Z-4c、δH=3.75ppm、δc=31.6ppm)が近接しており、Z異性体の化学シフト(E-4c、δH=4.04ppm、δc=35.6ppm)と比較して高磁場シフトを生じ、このシフトは既知のγ-立体的影響に起因する。この場合(4c)Eは所定の異性体である。異性体の割当量の変動は、異なるサイズのR3基およびR4基に起因する可能性がある。この結果は、DimmockおよびRezessyによる報告と一致している。しかし、彼らはまた両方とも、純粋なE異性体が、溶液中への放置後にEからZへの異性体化を受けたことを報告した。純粋な異性体の安定性をチェックして、生理学的条件下でZ/E混合物への転換が存在するか否かを決定するために、溶液を、重水素で置換したeIF4E緩衝液中で調製し、スペクトルを、純粋な単離した異性体の解離後、ならびに1時間後、1日後、高解像度1H NMRによって記録した。興味深いことに、この試験は、これらが立体配置的に安定であることを明らかにした。
【0176】
(表1)Z異性体およびE異性体のHPLC上でのパーセンテージ、保持時間、NMR化学シフトおよび生物学的結果)


a)IC50は蛍光偏光アッセイ法によって測定した。値は、ceIF4E/EIF4G相互作用の50%を阻害するために必要とされる平均濃度を示す。実験は3連で行い、SD<±10%であり、陽性対照および陰性対照としてそれぞれeIE4GIIペプチドおよびDMSOを使用した。
b)GI50はスルホローダミンBアッセイ法を使用して測定した。値は、細胞増殖の50%を阻害するために必要とされる平均濃度を示す。実験は3連で行い、SD<±10%であり、陽性対照および陰性対照としてそれぞれCLTおよびDMSOを使用した。
【0177】
ある場合において、立体配置異性体は生物学的活性が異なる(表1)。限定されたSAR研究において、Z-2-{[(4,5-ジフェニル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラゾノ}-3-フェニル)-プロピオン酸は、そのE異性体よりも2倍強力である。eIF4E/4Gアッセイ法において、この化合物は、最初のヒットよりも1オーダーの規模でより強力である(表1)。加えて、カルボキシル基およびイミン基になされた修飾は、これらが生物活性のために重要な特徴であることを示唆する。
【0178】
eIF4E/eIF4G相互作用は、リガンドの存在下および非存在下でのNMRスペクトルの予備的な比較を本発明者らが有する最初の分子標的を表す。これらのNMR研究から、本発明者らは、両方のリード化合物についての部分的に重複する相互作用を同定することが可能であった。
【0179】
1H NMRスペクトルは、溶媒としてd-DMSO中で、Varian VX500上で500MHzで、またはVarian VX400上で400MHzで記録した。TLC分析は、EMD chemicals, Inc.から購入したKieselgel 60 F254シリカゲルプレート上で、254nmのUV照射を用いて実施した。カラムクロマトグラフィーは、Baker 7024フラッシュシリカゲル上で実施した。融点はMel-Temp「Electronthermal」装置中のPyrexキャピラリー管中で測定し、補正は行っていない。LC-MSは、XTerra C8 30×100mmを用いてWaters LC-MS (APCIモード)中で実施した。元素分析は最終生成物についてのみ入手し、Robertson Laboratories, Madison, NJによって実施され、そして±0.4%の理論値の範囲内にあった。すべての出発物質は市販のものを購入し、さらなる精製なしで使用した。
【0180】
2-{[4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラゾノ}-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロピオン酸の合成のための手順(方法A)
4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル-ヒドラジン(1a、3a、14a)
ジオキサン(20mL)中のチオセミカルバジド(10mmol、0.91g)および3,4-ジクロロフェニルアセチルブロミド(10mmol、2.68g)の溶液を室温で16時間攪拌した。臭化水素酸塩の沈殿物を濾過し、ジオキサン(3×10mL)で洗浄し、次いで2N Na2CO3(20mL)で塩基性化した。生成物を濾過し、水で洗浄し、そして乾燥させた(2.08g、80%)。この生成物は、一般的には、さらなる反応のために満足なものであった。

【0181】
2-{[4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラゾノ}-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロピオン酸 (1b)
5%酢酸(2mL)中の3-(2-ニトロ-フェニル)-2-オキソ-プロピオン酸(1.0mmol、209mg)を、エタノール(4mL)中の4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル-ヒドラジン(1.0mmol、259mg)の溶液に加えた。この反応混液を90℃で1時間攪拌し、0℃まで冷却した;オレンジ色の固形物を沈殿させ、濾過し、そして水によって洗浄した。MeOH-H2Oからの再結晶は、黄色粉末として最終生成物を与える(600mg、66.7%)。mp;Z/E異性体は、20分間の勾配溶出溶媒:アセトニトリル50%中0.05%HOAc:水50%中0.05%HOAc〜アセトニトリル75%中0.05%HOAc:水25%中0.05%HOAcを使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。
E-異性体:

Z-異性体:

【0182】
2-[(4-フェニル)-チアゾール-2-イル)-ヒドラゾノ]-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロピオン酸 (2b)
Z/E異性体は、30分間の勾配溶出溶媒:アセトニトリル50%中0.05% NH4OAc:水50%中0.05% NH4OAc〜アセトニトリル75%中0.05% NH4OAc:水25%中0.05% NH4OAcを使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。
E-異性体:

Z-異性体:

【0183】
2-{[4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル}-ヒドラゾノ]-3-フェニル-プロピオン酸 (3b)
Z/E異性体は、30分間の勾配溶出溶媒:アセトニトリル50%中0.05% NH4OAc:水50%中0.05% NH4OAc〜アセトニトリル75%中0.05% NH4OAc:水25%中0.05% NH4OAcを使用して、HPLC-MSによってさらに分離した。
E-異性体:

Z-異性体:


【0184】
2-[(5-メチル-4-フェニル-チアゾール-2-イル)-ヒドラゾノ]-3-フェニル-プロピオン酸 (9b)
収率=92%。
E-異性体:

Z-異性体:

【0185】
2-[(4,5-ジフェニル-チアゾール-2-イル)-ヒドラゾノ]-3-フェニル-プロピオン酸 (10b)
収率=90%。
E-異性体:

Z-異性体:

【0186】
フェニル-[(4-フェニル-チアゾール-2-イル)-ヒドラゾノ]-酢酸 (6b)
収率=40%。
E-Z異性体:

【0187】
3-フェニル-2-[(4-フェニル-チアゾール-2-イル)-ヒドラゾノ]-プロピオン酸 (4b)
収率=65%。
E-異性体:

Z-異性体:

【0188】
N-フェネチリデン-N'-(4-フェニル-チアゾール-2-イル)-ヒドラジン (5b)
収率=73%。
E-異性体:

Z-異性体:

【0189】
2-[(4-フェニル-チアゾール-2-イル)-ヒドラゾノ]-プロピオン酸 (7b)
収率=99%。
E-異性体:

Z-異性体:

【0190】
(8b)
収率=75%。
E-Z異性体:

【0191】
2-(ベンゾチアゾール-2-イル-ヒドラゾノ)-3-フェニル-プロピオン酸 (11b)
収率=66%。
E-異性体:

Z-異性体:


【0192】
フェニル酢酸 N'-(4-フェニル-チアゾール-2-イル)-ヒドラジン (12b)
25℃のDMF(4 mL)中の(5-フェニル-チアゾール-2-イル)-ヒドラジン(96mg、0.5mmol)および1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.44mmol)懸濁液に、フェニル酢酸(55mg、0.4mmol)を加え、得られる混液を25℃で一晩攪拌し、真空中で濃縮し、残渣をCH2Cl2(20mL)に溶解し、5% NaHCO3で洗浄し、MgSO4で乾燥しそして、真空中で濃縮した。残渣をHPLCで精製した。生成物を白色結晶として155mg(51%)得た。


【0193】
3-フェニル-2-[(4-フェニル-チアゾール-2-イル)-ヒドラゾノ]-プロピオン酸メチルエステル (13c)
MeOH(2mL)中の4b(0.1mmol、34mg)の懸濁液に、チオニルクロライド(22μL、0.3mmol)を-30℃で滴下して加えた。次いで、この溶液を室温まで温めた。この反応混液を加熱して還流し、所望の生成物を与えるまで濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(EtOAc/MeOH 10/1)によって精製し、黄色固体として純粋な化合物を得た(11mg、32%)。
E-異性体:

Z-異性体:


【0194】
2-{N'-[4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラジノ}-3-(3-ニトロ-フェニル)-プロパン-1-オール (14e)
THF(2ml)中の1b(90mg、0.2 mmol)の溶液に、THF(2mmol、lO当量)中のBH3.SMe2 1Mを加えた。この溶液を室温で2時間攪拌した。次いで、水で反応をクエンチし、AcOEtで抽出した。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮して7bおよび8bの混合物を得る。各生成物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して(EtOAc/MeOH 10/1)、純粋な化合物14d(27mg、31%)および14e(11mg、13%)を得た。
【0195】
2-{[4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラゾノ}-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロパン-1-オール(14d)
(試験していない化合物)
E-異性体:

Z-異性体:

【0196】
2-{N'-[4-(3,4-ジクロロ-フェニル)-チアゾール-2-イル]-ヒドラジノ}-3-(2-ニトロ-フェニル)-プロパン-1-オール (14e)

【0197】
3-フェニル-2-[(4-フェニル-チアゾール-2-イル)-ヒドラゾノ]-プロパン-1-オール (15d)
出発物質として4b(200mg、0.6mmol)を用いる、上記と同じ実験条件;純粋な生成物が精製後に25%の収率(47mg)で得られる。
Z-異性体:




【0198】
2-クロロ-5-フェニル-[l,3,4]チアジアゾール(16f)
15℃の濃HCl(3mL)および氷酢酸(15mL)中の2-アミノチアジアゾール(885mg、5mmol)および銅の削りくず(4重量の0.1倍)の攪拌懸濁液に、水(1mL)中の亜硝酸ナトリウム(380mg、5.5 mmol)を、30分間にわたって滴下して加えた。この温度でさらに4時間攪拌した後、この混合物を水に注いだ。生成物をCHCl3に抽出した。有機相を分離し、NaHCO3溶液で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、そしてエバポレートして対応する2-クロロ-5-フェニル-[l,3,4]チアジアゾールを得た(729mg、68%)。

【0199】
2-フェニル-5-ヒドラジノ-1,3,4-チアジアゾール (16g)
iPrOH(10mL)中の2-クロロ-5-フェニル-[l,3,4]チアジアゾール(2mmol)およびヒドラジン水和物(6mmol、3当量)の溶液を還流で一晩加熱した。溶媒をエバポレートし、水を加え、そして生成物を濾過によって単離した(110mg、57%)。

【0200】
3-フェニル-2-[(5-フェニル-[l,3,4]チアジアゾール-2-イル)-ヒドラゾノ]-プロピオン酸 (16h)
5%酢酸中の2-オキソ-3-フェニル-プロピオン酸(1.0mmol、164mg)を、エタノール(4mL)中の2-フェニル-5-ヒドラジノ-1,3,4-チアジアゾール(1.0mmol、192mg)(2mL)の溶液に加えた。この反応溶液を90℃で2時間攪拌し、0℃まで冷却した;固形物を沈殿させ、濾過し、そして水で洗浄した。MeOH-H2Oからの再結晶は、粉末として最終生成物を与えた(278mg、82%)。
E-異性体:

Z-異性体:

【0201】
(6-フェニル-ピリダジン-3-イル)-ヒドラジン (17g) (市販の中間体17f)
収率=57%

【0202】
3-フェニル-2-[(6-フェニル-ピリダジン-3-イル)-ヒドラゾノ]-プロピオン酸 (17h)
収率=60%
E-異性体:

Z-異性体:


【0203】
4-フェニル-チアゾール-2-カルボン酸エチルエステル (18j)
ジオキサン(10 ml)中の2-ブロモ-1-フェニル-エタノン(597mg、3.0mmol)および2-チオ-オキサミド酸エチルエステル(399mg、3.0mmol)の溶液を、還流下で1.5時間加熱した。反応混液から溶媒をエバポレートした後、残渣を水で処理し、飽和炭酸ナトリウム水溶液で弱アルカリ(pH=8)にし、そして酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和生理食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして溶媒を蒸留した。残渣を展開溶媒(n-ヘキサン:酢酸エチル=8.2)に溶解し、シリカゲルカラムに適用した。最初の画分(不純物)を廃棄し、次の画分(無色溶液)をプールし、濃縮して粘性の生成物を得、これをn-ヘキサンを加えることによって結晶化した。この結晶を吸引を用いて濾過し、白色固体として、328mg(収率47%)の4-フェニル-チアゾール-2-カルボン酸エチルエステルを得た。

【0204】
4-フェニル-チアゾール-2-カルボン酸 (18k)
メタノール(10ml)に溶解した4-フェニル-チアゾール-2-カルボン酸エチルエステル(282mg、1.21mmol)の溶液に1N-KOH(3.63ml、3.63mmol)を加え、この混液を60℃で15分間反応させた。反応混液から溶媒をエバポレートした後、氷冷下で、水を加えることおよび2N-HClを用いて酸性化する(pH=2)ことによって残渣を溶解した。生じた沈殿を吸引を用いて濾過し、水で洗浄し、そしてメタノール-水から再結晶化して、白色固体として190mg(収率72%)の所望の4-フェニル-チアゾール-2-カルボン酸を得た。

【0205】
3-フェニル-2-[(4-フェニル-チアゾール-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオン酸メチルエステル (18l)
25℃のDMF(4mL)中の4-フェニル-チアゾール-2-カルボン酸(100mg、0.4mmol)および1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.44mmol)の懸濁液に、フェニルアラニンメチルエステル(72mg、0.4mmol)を加え、得られる混液を25℃で一晩攪拌し、真空中で乾燥させ、残渣をCH2Cl2(20 mL)に溶解し、5% NaHCO3で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、そして真空中で濃縮した。残渣をHPLCによって精製した。生成物は、白色沈殿として92mg(61%)得た。

【0206】
3-フェニル-2-[(4-フェニル-チアゾール-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオン酸 (18m)
エタノール(4 mL)に溶解した3-フェニル-2-[(4-フェニル-チアゾール-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオン酸メチルエステル(74mg、0.2mmol)の溶液に、1N-KOH(0.5mL、0.5mmol)を加え、この混液を室温で2時間攪拌した。溶媒を反応混液からエバポレートした後、氷冷下で、水を加えることおよび2N-HClを用いて酸性化する(pH=2)ことによって残渣を溶解した。生じた沈殿を吸引を用いて濾過し、水で洗浄して、白色固体として59mg(収率80%)の所望の3-フェニル-2-[(4-フェニル-チアゾール-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオン酸を得た。


【0207】
2-ベンジル-マロン酸モノエチルエステル (19n)
EtOH(10mL)中の2-ベンジルマロン酸ジエチルエステル2.5g(10mmol)の溶液に、EtOH(8.5mL)中の1N KOHを加えた。この溶液を室温で1時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、得られる液体を5% NaHCO3(30mL)に溶解し、EtOAc(3×10mL)で洗浄し、そして5% NaHCO3(50mL)で逆抽出した。合わせたNaHCO3溶液を、1N HClを用いてpH=3に酸性化し、EtOAcで抽出した。有機層をH2Oで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去して、最終生成物をオイル、1.4g(74%)として得た。

【0208】
2-ベンジル-N-(4-フェニル-チアゾール-2-イル)-マロン酸エチルエステル (19o)
25℃のDMF(4 mL)中の2-ベンジル-マロン酸モノエチルエステル(150mg、0.67mmol)および1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.74mmol)の懸濁液に、4-フェニル-チアゾール-2-イルアミン(119mg、0.67mmol)を加え、得られる混液を25℃で一晩攪拌し、真空中で濃縮し、残渣をCH2Cl2(20mL)に溶解し、5% NaHCO3で洗浄し、MgSO4で乾燥し、そして真空中で濃縮した。残渣をHPLCによって精製した。生成物を白色沈殿として170 mg(67%)得た。

【0209】
2-ベンジル-N-(4-フェニル-チアゾール-2-イル)-マロン酸 (19p)
エタノール(4 mL)中に溶解した3-フェニル-2-[(4-フェニル-チアゾール-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオン酸(74mg、0.2mmol)の溶液に、1N-KOH(0.5mL、0.5mmol)を加え、この混液を室温で2時間攪拌した。反応混液から溶媒をエバポレートした後、氷冷下で、水を加えることおよび2N-HClを用いて酸性化する(pH=2)ことによって残渣を溶解した。生じた沈殿を吸引を用いて濾過し、水で洗浄して、白色固体として59mg(収率80%)の所望の3-フェニル-2-[(4-フェニル-チアゾール-2-カルボニル)-アミノ]-プロピオン酸を得た。


【0210】
3-フェニル-2-[(4-フェニル-チアゾール-2-イルメチル)-アミノ]-プロピオン酸 (20)
MeOH(4mL)中の2-オキソ-3-フェニル-プロピオン酸(1.6mmol、264mg)および(4-フェニル-チアゾール-2-イル)-メチルアミン(1.0mmol、190mg)の溶液に、NaBH3CN(2.0mmol、THF中1N)を加えた。次いで、1M HCl水溶液を用いてpHを6に調整した。この混液を室温で3日間攪拌した。生成物をHPLCによって精製して、純粋な生成物(210mg、62%)を得た。



【0211】
3-フェニル-2-[(4-フェニル-チアゾール-2-イル)-ヒドラゾノ]-プロピオンアミド (21)
-15℃のDME(5 mL)中の3-フェニル-2-[(4-フェニル-チアゾール-2-イル)-ヒドラゾノ]-プロピオン酸(4b)(1.0 mmol、337mg)の溶液に、NMM(1.1mmol、121μL)を加え、次いでIBCF(1.1mmol、147μL)を加えた。次いで、濃NH4OH溶液を加え、この混液を20分間攪拌した。5mLの水を加え、沈殿物を濾過し、H2Oおよびヘキサンで洗浄して、所望の生成物を得た。
【0212】
生成物は、30分間の勾配溶出溶媒:アセトニトリル30%中0.05% NH4OAc:水70%中0.05% NH4OAc〜アセトニトリル60%中0.05% NH4OAc:水40%中0.05% NH4OAcを使用して、C8カラムを用いて、HPLC-MSによって精製した。
E-異性体:


【0213】
2-ベンジル-N-メトキシ-N-メチル-マロン酸エチルエステル4 (22q)
DCM中の2-ベンジル-マロン酸モノエチルエステル(19n)(5mmol、1.11g)の溶液に、pyBOP(5.5mmol、2.86g)、DIEA(15mmol、2.7ml)およびN,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(5.5mmol、536mg)を加え、反応物を2時間攪拌した。有機層を、NaHCO3の飽和溶液、1N KHSO4溶液、ブラインで連続的に洗浄し、Na2SO4上で乾燥させた。これを真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(AcOEt/ヘキサン:3/7)によって精製して、白色固体(950 mg、72%)を得た。
NMRなし。

【0214】
2-ベンジル-3-オキソ-プロピオン酸エチルエステル3
2-ベンジル-N-メトキシ-N-メチル-マロン酸エチルエステル(22q)(1mmol、265mg)を0℃で無水THFに溶解した。 LiAlH4(0.5mmol、19mg)を加え、反応物を15分間攪拌した。次いで、この混液を1N KHSO4溶液で加水分解し、化合物をジエチルエーテルで抽出した。有機層を、NaHCO3の飽和溶液、ブラインで連続的に洗浄し、Na2SO4上で乾燥させた。これを真空中で濃縮し、オイルを得た。
精製なし。

【0215】
2-ベンジル-3-(4-フェニル-チアゾール-2-イルアミノ)-プロピオン酸エチルエスエル5(22r)
無水CH2Cl2(3ml)中の 2-アミノ-4-フェニルチアゾール(0.55mmol、97mg)および2-ベンジル-3-オキソ-プロピオンエチルエステル(0.5mmol、103mg)の攪拌溶液に、TiCl(OiPr)3(1.1mmol、262μl)を加えた。この溶液を5分間攪拌し、その後、新鮮に粉末化したNaBH(OAc)3(2.5mmol、525mg)および3滴のAcOHの添加を行った。この反応混液を一晩攪拌し、次いで、飽和NaHCO3溶液に注ぎ、CH2Cl2で抽出した。合わせた抽出液をブラインで洗浄し、乾燥させ、そして真空中で濃縮した。

【0216】
生成物は、30分間の勾配溶出溶媒:アセトニトリル40%中0.1% AcOH:水60%中0.1% AcOH〜アセトニトリル70%中0.1% AcOH:水30%中0.1% AcOHを使用して、C8カラムを用いて、HPLC-MSによって精製した。

【0217】
2-ベンジル-3-(4-フェニル-チアゾール-2-イルアミノ)-プロピオン酸 (22s)
EtOH(2mL)および水(200μL)中の2-ベンジル-3-(4-フェニル-チアゾール-2-イルアミノ)-プロピオンエチルエステル(22r)(0.028mmol、10mg)の溶液に、KOH 1N溶液(224μL、8当量)を加える。5時間後、この溶液をKHSO4 1N溶液で中和し、精製の前に凍結乾燥する。
生成物は、30分間の勾配溶出溶媒:アセトニトリル30%中0.1% AcOH:水70%中0.1% AcOH〜アセトニトリル60%中0.1% AcOH:水40%中0.1% AcOHを使用して、C18カラムを用いて、HPLC-MSによって精製した。

【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1A】eIF4Eを用いるフルオレセイン標識eIF4Gペプチドの滴定が、ペプチドの結合を示す蛍光異方性の増加を引き起こすことを示すグラフである。このデータは、2状態結合モデルに適合されている。
【図1B】蛍光偏光の減少によって測定されるような、未標識eIF4GIIペプチドによるeIF4Eへの標識ペプチド結合の競合的阻害を示すグラフである。このデータは、3状態競合結合モデルに適合されている。
【図1C】EGI-1の化学構造を示す。
【図1D】蛍光偏光の減少によって測定されるような、化合物EGI-1によるeIF4Eへの標識ペプチド結合の競合的阻害を示すグラフである。このデータは、3状態競合結合モデルに適合されている。
【図1E】eIF4Gペプチド結合によって誘導されるeIF4Eの化学シフトの摂動を示す概略図である。eIF4GIIコンセンサスペプチド(丸印)との複合体である結晶構造マウスeIF4E(明るい領域)の表面提示構造を示す:eIF4GIIペプチドを用いる滴定上のHSQCピーク位置がシフトするeIF4E残基に影を付けている。
【図1F】EGI-1がeIF4EのeIF4G認識表面と相互作用することを示す模式図である。図1Eと同じ構造を示しており、EGI-1によって強く影響を受けた(ピーク位置のシフトまたは35%よりも大きいシグナルの減衰)eIF4Gペプチド結合領域中のeIF4E残基には標識し影を付けた。
【図2A】レニラ(Renilla)ルシフェラーゼ(キャップ依存性様式で翻訳される)およびホタルルシフェラーゼ(翻訳はコオロギ麻痺ウイルスIRESによって駆動される)を含む二重ルシフェラーゼmRNAレポーター構築物を示すダイアグラムである。
【図2B】EGI-1がレニラルシフェラーゼの合成によって測定されるようなウサギ網状赤血球溶解物におけるキャップ依存性翻訳を阻害することを示すグラフである。エラーバーは平均の標準誤差に対応する。
【図2C】EGI-1がホタルルシフェラーゼの合成によって測定されるようなウサギ網状赤血球溶解物におけるIRES駆動翻訳を阻害しないことを示すグラフである。エラーバーは平均の標準誤差に対応する。
【図2D】m7GTPセファロースプルダウンアッセイおよびウェスタンブロッティングによって決定されるような、ウサギ網状赤血球溶解物におけるeIF4Gおよび4E-BP1とのeIF4Eの結合に対するEGI-1の効果を示す一連のイムノブロットの写真である。A:未処理、B:200μm GDP、C:200μm EGI-1、D:100μm EGI-1、E:50μm EGI-1。
【図3A】m7GTPセファロースプルダウンアッセイおよびウェスタンブロッティングによって決定されるような、ジャーカット細胞におけるeIF4Gおよび4E-BP1とのeIF4Eの結合に対する6時間のEGI-1処理の効果を示す一連のイムノブロットの写真である。A:未処理、B:25μM EGI-1、C:50μM EGI-1、D:100μM EGI-1。EGI-1は、高度に構造化された5'UTRを有するmRNAによってコードされたタンパク質のeIF4F複合体形成および発現を細胞中で阻害する。
【図3B】ジャーカット細胞抽出物のウェスタンブロットによって測定されるような、タンパク質レベルに対する8時間にわたるEGI-1処理の効果を示す一連のイムノブロットの写真である。A:未処理、B:25μM EGI-1、C:50μM EGI-1、D:100μM EGI-1。
【図3C】EGI-1が、ジャーカット細胞におけるc-mycおよびBcl-xL mRNAの核原形質輸送または安定性に影響を与えないことを示すグラフである。細胞は8時間の間化合物で処理し、β-アクチンと比較した2つのmRNAの相対存在量を定量的リアルタイムPCRによって決定した。
【図4A】EGI-1が、細胞内ATPレベルの減少によって測定されるような、ジャーカット細胞の細胞生存度の喪失を誘導することを示すグラフである。バーは平均の標準誤差に対応する。
【図4B】EGI-1が、ジャーカット細胞のDNA断片化を誘導することを示す棒グラフである。ジャーカット細胞は、100μM zVAD-FMKありまたはなしで、24時間の間、60μM EGI-1または6.65μM カンプトテシンで処理した。G1下DNA含量を有する細胞のパーセンテージはFACS分析を介して決定した。バーは平均の標準誤差に対応する。
【図4C】EGI-1が、ジャーカット細胞における断片化核形態を誘導することを示す一連の写真である。細胞は、60μM EDI-1で24時間処理し、Hoechst 33342色素で染色し、および蛍光顕微鏡によって可視化した。
【図4D】EGI-1が、5日間の増殖期間後にSRBアッセイ法によって測定されるような、A549肺癌細胞の増殖を阻害することを示すグラフである。エラーバーは平均の標準誤差に対応する。
【図5A】elF4Gに結合したelF4Eの構造のダイアグラムである。
【図5B】未標識eIF4Gペプチドを用いる滴定に対するFPシグナルの喪失を示すドットプロットである。
【図5C】ヒット化合物、EDI-1(化合物154300)および6006288の化学構造のダイアグラムである。
【図5D】ヒット化合物による標識ペプチド結合の阻害を示すドットプロットである。
【図6A】多次元NMRを使用する、EGI-1(化合物154300)を用いる50μM eIF4Eの滴定からのデータを示す一連のグラフである。
【図6B】多次元NMRを使用する、化合物60062880を用いる50μM eIF4Eの滴定からのデータを示す一連のグラフである。
【図6C】eIF4Eに結合したEGI-1(化合物154300)のドッキングモデルのダイアグラムである。
【図7】図7A〜Cは、滴定濃度(μM)の化合物の存在下でのインビトロ翻訳アッセイ法の結果を示す一連のグラフである。図7Aはエメチンを用いる滴定を示すグラフであり、図7Bはm7GDPを用いる滴定を示すグラフであり;および図7CはEGI-1(化合物154300)を用いる滴定を示すグラフである。
【図8A】種々の濃度(μM)の化合物の存在下でA549細胞を使用する増殖アッセイ法の結果を示すグラフである。
【図8B】種々の濃度(μM)の化合物の存在下でA549細胞を使用する生存アッセイ法の結果を示すグラフである。
【図9】Bionet、PeakdaleおよびMaybridgeのライブラリーから同定された阻害化合物(化合物37629、21573、35197、21551、および29578)の化学構造を示す一連のダイアグラムである。
【図10】真核生物の翻訳開始を示すダイアグラムである。
【図11】43SリボソームサブユニットへのmRNAのキャップ依存性補充を示すダイアグラムである。
【図12】翻訳がキャップ非依存性のやり方で内部リボソームエントリー部位(IRES)を介して開始することもできることを示すダイアグラムである。eIF4Gなどのハウスキーピングタンパク質およびApaf-Iなどのあるプロ-アポトーシスタンパク質はIRES依存性開始を経由して合成される。
【図13】eIF4Eの構造を示すダイアグラムである。
【図14】eIF4GがeIF4EのN末端の周辺を包み、相互フォールディング事象を誘発することを示すダイアグラムである。
【図15】eIF4G(393〜490)のeIF4E結合界面を示すダイアグラムである。eIF4G(393〜490)は球状構造を形成しない。
【図16】真核生物の翻訳開始を示すダイアグラムである。
【図17】キャップ依存性滴定が4E-結合タンパク質(4EBP)によってダウンレギュレートされることを示すダイアグラムである。4EBPはeIF4G-結合部位をブロックすることによって43Sリボソームの補充を阻害する。4EBPはeIF4GとYxxxxLΦコンセンサス配列を共有した。
【図18】図18Aおよび18Bは、eIF4E-結合4EBP(mTORおよびPI3K)の過剰リン酸化が4EBPの解離および開始に導くことを示すダイアグラムである。
【図19】Hoechst 33342を用いる核染色を示す一連の写真である。4E/4G阻害剤の付加はジャーカット細胞中でアポトーシスを引き起こす。
【図20】NCI多様性ライブラリーからの活性化合物の化学構造を示すダイアグラムである。
【図21】図21A〜21Dは1H-15N HSQCマウスeIF4Eを示すグラフである。
【図22】標識ペプチドのFPが、非標識eIF4Gペプチドの付加の際に、ベースラインレベルまで減少することを示すグラフである。eIF4EへのeIF4G結合の潜在的な阻害剤は、蛍光偏光の喪失に基づいて同定される。
【図23】eIF4E/4E-BPホモロジーモデルを示すダイアグラムである。小化学物質はeIF4Eへの内因性4EBPの結合をブロックする。
【図24】蛍光偏光アッセイ法の設計を示すグラフである。蛍光標識を有する、結合モチーフを含むペプチド:KYTYDELFQLK(SEQ ID NO: 2)-フルオレセインが合成された。ペプチドへのeIF4Eの付加はFPの増加を引き起こす。
【図25】ICCB化合物によるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図26】ICCB化合物によるインビトロ翻訳の阻害を示すグラフである。
【図27】二シストロン性翻訳アッセイ法において使用されるレポーター遺伝子を示すダイアグラムである。
【図28】細胞増殖アッセイ法の結果を示すグラフである。ヒト肺癌細胞であるA549細胞は、5% FCSおよび化合物を含む培地中で5日間プレート中で増殖させる。細胞の数はスルホローダミンBを用いて染色することによって定量される。
【図29A】化合物ICCB-15644の結合部位の位置を示すダイアグラムである。
【図29B】ドットブロットである。
【図30】図30A〜Bは阻害剤結合部位を示すダイアグラムである。
【図31】NMR摂動データに基づいてTreeDockを用いてドッキングされた阻害剤を示すダイアグラムである。
【図32】eIF4GIIから誘導されたペプチドに結合されたマウスeIF4Eの結晶構造を示すダイアグラムである。eIF4Eは表面提示に示す(暗い影はO原子およびN原子を表す)。eIF4GIIはペプチドリボンで示す。鍵となる残基であるV69、W73、Y76、L131、L135およびI138は疎水性パッチ(明るい影で示す)を形成し、これは、eIF4GIIおよび4E-BPにおけるeIF4E結合ドメインを結合するための推定の「ホットスポット」を形成する。
【図33A】Treedockドッキングプログラムによって生成される予測結合モードを示すダイアグラムである。図解はプログラムInsight IIを用いて作製した。マウスeIF4Eタンパク質(暗い影はO原子およびN原子を表す)と、ヒット化合物1の間の接触表面を示す。アミノ酸残基V69、W73、Y76、L131、L135およびI138(明るい影)は、eIF4GペプチドとのeIF4E相互作用表面である。
【図33B】マウスeIF4Eアミノ酸残基Trp73、His78との阻害剤のシミュレートされた相互作用を示すダイアグラムである。
【図34】4位において置換フェニル部分で修飾されている2-チアゾリルヒドラゾンアナログの生物学的活性を示す表である。
【図35】図35A〜Bは、蛍光偏光(FP)アッセイ法を使用して測定されたIC50を示すグラフである。結果は、eIF4G-誘導ペプチドのIC50値(IC50(ペプチド))に対する、化合物のIC50値(IC50(化合物))の比率として提示される。eIF4G-誘導ペプチド(KRYDREFLLGF、IC50= 75μM)およびDMSOは、それぞれ陽性対照および陰性対照として働いた。実験は、3連で行い、SD<±10%であった。b)GI50はAlamar Blueアッセイ法を使用して測定した。値は、50%の細胞増殖を阻害するために必要とされる平均濃度を示す。実験は、クロトリマゾール(CLT)およびDMSOをそれぞれ陽性対照および陰性対照として使用して、3連で行い、SD<±10%であった。化合物4g(A)および4b(B)による、ウサギ網状赤血球溶解物におけるキャップ依存性翻訳の阻害。二重ルシフェラーゼレポーターmRNAは、増加濃度の化合物の存在下で、レッドノバ(RedNova)網状赤血球溶解物(Novagen)中で30℃で90分間翻訳させた。IRES-調節レニラルシフェラーゼ(青色)およびキャップ調節ホタルルシフェラーゼ(紫色)の活性は、未処理対照反応に対して測定および標準化した。m7GDPおよびエメチンをそれぞれ陽性対照および陰性対照として使用した。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ非依存性翻訳と比較してキャップ依存性翻訳を選択的に阻害する一定量のタンパク質翻訳阻害剤を含む薬学的組成物であって、該阻害剤は化学式

を含み、式中、
-R1は構造

のヒドラゾンチアゾール部分、または
構造

のバルビツール酸部分(またはその誘導体)であり
-R2は、それが結合する環上の1つ、2つ、または3つの位置に存在する水素、ヒドロキシル基、またはニトロ基であり;
-R3は、環上の1つ、2つ、または3つの位置に個別に存在する基であり、ここで該基はハロ、水素、結合体化されているかもしくは結合体化されていないアリールもしくはヘテロアリール、脂環式もしくは多環式基であってよく、またはR3はそれが結合する基と一緒になって、結合体化環構造、例えば、ナフタレン環を形成し;
-R4は、水素、カルボキシル、低級アルキルエステル、例えば、

またはカルボニル(この場合、点線の結合が存在する)であり;
-R5はN(この場合、点線の結合が存在する)、NH、またはカルボニルであり;および
-R6はNHまたはカルボニルである、
薬学的組成物。
【請求項2】
化合物

を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
化合物6006288を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
表1に列挙された化合物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
細胞を請求項1記載の化合物と接触させる工程を含む、細胞中で選択的にキャップ依存性タンパク質合成を阻害する方法。
【請求項6】
化合物が

である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
化合物が、天然に存在する4E-BP由来ポリペプチド、またはeIF4G由来ポリペプチド、またはコンセンサスYxxxxLΦモチーフを含むペプチドに置き換わり、Φが疎水性残基を表し、xが任意のアミノ酸である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
化合物がeIF4Eと全長eIF4Gとの間の結合を阻害する、請求項5記載の方法。
【請求項9】
化合物がeIF4EのV69、W73、Y76、Ser82、Ser83、L131、L135、またはI138において、またはそれに隣接して結合する、請求項5記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載の化合物を含む薬学的組成物をその必要がある患者に投与する工程を含む、腫瘍細胞または非癌性異常増殖細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項11】
化合物が

である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
患者が、正常非腫瘍細胞中のレベルと比較して増加したレベルのキャップ依存性翻訳因子を含む腫瘍細胞または非癌性異常増殖細胞を有すると同定されている、請求項10記載の方法。
【請求項13】
患者が、正常非腫瘍細胞中のレベルと比較して増加した量のキャップ依存性翻訳因子によって特徴付けられる腫瘍細胞または非癌性異常増殖細胞を有すると診断されている、請求項12記載の方法。
【請求項14】
翻訳因子がeIF4Eである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
患者が腫瘍を有するか、または腫瘍を有するリスクがあると同定されている、請求項10記載の方法。
【請求項16】
腫瘍が、肺、乳房、皮膚、骨、頭部、頸部、膀胱、結腸、前立腺、卵巣、子宮、子宮頸部、喉頭、胆嚢、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、腎臓、気管支、肝臓、または胃腸管の腫瘍である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
患者がリンパ腫または神経芽細胞腫を有するか、またはそれを有するリスクがあると同定されている、請求項10記載の方法。
【請求項18】
患者が細菌感染またはウイルス感染を有するか、またはそれを有するリスクがあると同定されている、請求項10記載の方法。
【請求項19】
eIF4Eポリペプチドを候補化合物およびeIF4Gポリペプチドと接触させる工程、ならびに該化合物の非存在下と比較して該化合物の存在下でのeIF4E/eIF4g相互作用のレベルの減少を検出し、該eIF4E/eIF4g相互作用の減少は該化合物がタンパク質合成を減少することを示す工程を含む、タンパク質合成を減少する組成物を同定する方法。
【請求項20】
eIF4EポリペプチドがSEQ ID NO:1の残基68〜84を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
eIF4EポリペプチドがSEQ ID NO:1の残基120〜140を含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
eIF4EポリペプチドがSEQ ID NO:1の残基37〜39を含む、請求項19記載の方法。
【請求項23】
eIF4EポリペプチドがSEQ ID NO:1の残基37〜39、68〜84および120〜140を含む、請求項19記載の方法。
【請求項24】
eIF4EポリペプチドがSEQ ID NO:1の少なくとも6個の連続する残基を含み、該ポリペプチドがSEQ ID NO:1の残基37、38、39、69、72、73、76、81、82、83、127、131、135および138からなる群より選択される少なくとも1つの残基を含む、請求項19記載の方法。
【請求項25】
eIF4Eポリペプチドがマウスまたはヒトである、請求項19記載の方法。
【請求項26】
eIF4EポリペプチドがY(X)4LΦモチーフを含み、ここでXが任意のアミノ酸であり、Φが疎水性アミノ酸である、請求項19記載の方法。
【請求項27】
細胞を請求項1記載の化合物と接触させる工程を含み、該化合物の存在下での非腫瘍細胞と比較して該化合物の存在下での腫瘍細胞の増殖のレベルの減少を検出することは、該化合物が腫瘍細胞増殖を選択的に阻害することを示す、腫瘍細胞増殖を選択的に阻害する組成物を同定する方法。
【請求項28】
腫瘍細胞増殖が非腫瘍細胞と比較して少なくとも10%多い、請求項27記載の方法。
【請求項29】
化合物が2-チアゾリルヒドラゾンである、請求項27記載の方法。
【請求項30】
化学式I:

の化合物を合成する方法であって、
チオセミカルバジドを化学式II:

のα-ブロモケトンと反応させて、化学式III:

の化合物を生じる工程;
化学式IIIの化合物を化学式IV:

の化合物と反応させて、化学式Iの化合物を生じる工程を含み、ここで、------は

を形成するための単結合、または

を形成するための二重結合を表し;
R1は水素、C1〜C6アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、および置換ベンジルから選択され;
R2はメチル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、および置換ベンジルから選択され;またはR1およびR2は一緒にフェニル環を形成し;
R3およびR4の少なくとも1つは水素、COOH、COORa、CH2OH、およびCONH2から選択され、R3およびR4の他方はC1〜C6アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、および置換ベンジルから選択され、さらにここで、
RaはC1〜C6アルキルであり、
置換ベンジルおよび置換フェニルは、少なくとも1つの水素がF、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択される置換基で置き換えられている、それぞれベンジル部分およびフェニル部分である、方法。
【請求項31】
------が二重結合を表す、請求項30記載の方法。
【請求項32】
R1が水素である、請求項30記載の方法。
【請求項33】
R2がフェニルまたは置換フェニルである、請求項30記載の方法。
【請求項34】
R3またはR4の1つがCOOHである、請求項30記載の方法。
【請求項35】
R3またはR4の1つがCH2OHである、請求項30記載の方法。
【請求項36】
R4がベンジルである、請求項30記載の方法。
【請求項37】
COOHを反応させてCOOCH3を生じる、請求項34記載の方法。
【請求項38】
COOHを反応させてCH2OHを生じる、請求項34記載の方法。
【請求項39】
化学式V:

の化合物を合成する方法であって、
チオセミカルバジドを化学式II:

のα-ブロモケトンと反応させて、化学式III:

の化合物を生じる工程;
化学式IIIの化合物を化学式VI:

の化合物と反応させて、化学式Vの化合物を生じる工程を含み、ここで、
R1は水素、C1〜C6アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、および置換ベンジルから選択され;
R2はフェニル、置換フェニル、ベンジル、および置換ベンジルから選択され;またはR1およびR2は一緒にフェニル環を形成し;
R3はC1〜C6アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、および置換ベンジルから選択され、さらにここで、
置換ベンジルおよび置換フェニルは、少なくとも1つの水素がF、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択される置換基で置き換えられている、それぞれベンジル部分およびフェニル部分であり、ここでRaはC1〜C6アルキルである、方法。
【請求項40】
R3がベンジルである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
R2がフェニルである、請求項39記載の方法。
【請求項42】
化学式B:

の化合物を合成する方法であって、
化学式B1:

の化合物を塩酸と反応させて、化学式B2:

の化合物を形成する工程;
化学式B2の化合物をヒドラジン水和物と反応させて、化学式B3:

の化合物を形成する工程;
化学式B3の化合物を化学式B4:

の化合物と反応させて、化学式Bの化合物を形成する工程を含み、ここで、
nは0または1であり、
Xは、nが0の場合にXがSになるように、SまたはCであり;かつ
RbおよびRcは、独立して、H、C1〜C6アルキル、F、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択され、ここでRaはC1〜C6アルキルである、方法。
【請求項43】
nが0であり、XがSである、請求項42記載の方法。
【請求項44】
nが1であり、XがCである、請求項42記載の方法。
【請求項45】
RbおよびRcが各々Hである、請求項42記載の方法。
【請求項46】
化学式C:

の化合物を合成する方法であって、
2-ブロモ-1-フェニルエタノンを化学式C1:

のカルバモイルカルバメートと反応させて、化学式C2:

の化合物を生じる工程;
化学式C2の化合物を塩基と反応させて、化学式C3:

の化合物を生じる工程;
化学式C3の化合物を1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩およびフェニルアラニンメチルエステルと反応させて、化学式Cの化合物を生じる工程を含み、ここで、
R1はC1〜C6アルキル、フェニル、置換フェニル、ベンジル、および置換ベンジルから選択され;
R2はOHおよびORaから選択され、ここでRaはC1〜C6アルキルであり;かつ
R3はフェニル、置換フェニル、ベンジル、置換ベンジル、およびC1〜C6アルキルから選択され、さらにここで、
置換ベンジルおよび置換フェニルは、少なくとも1つの水素がF、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択される置換基で置き換えられている、それぞれベンジル部分およびフェニル部分である、方法。
【請求項47】
R2がOHである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
R2がORaである、請求項46記載の方法。
【請求項49】
Raがメチルである、請求項46記載の方法。
【請求項50】
R3がベンジルである、請求項46記載の方法。
【請求項51】
R1がエチルである、請求項46記載の方法。
【請求項52】
化学式D:

の化合物を合成する方法であって、
化学式:

を有する化合物をエタノール性塩基と反応させて、化学式:

を有する化合物を形成する工程;
化学式:

を有する化合物を、化学式:

を有する化合物および1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩と反応させて、化学式D1:

の化合物を形成する工程;ならびに
化学式D1の化合物を塩基と反応させて化学式Dの化合物を形成する工程を含み;ここで、RbおよびRcは、独立して、H、C1〜C6アルキル、F、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択され、ここでRaはC1〜C6アルキルである、方法。
【請求項53】
RbおよびRcが各々Hである、請求項52記載の方法。
【請求項54】
化学式E:

の化合物を合成する方法であって、
化学式:

を有する化合物を、水素化ホウ素ナトリウム中で化学式:

を有する化合物と反応させ、それによって、化学式Eの化合物を生じる工程を含み、ここで、RbおよびRcは、独立して、H、C1〜C6アルキル、F、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択され、ここでRaはC1〜C6アルキルである、方法。
【請求項55】
RbおよびRcが各々Hである、請求項54記載の方法。
【請求項56】
化学式F:

の化合物を合成する方法であって、
化学式F1:

の化合物を、N-メチルモルホリンおよびイソブチルクロロホルメートと反応させ、化学式Fの化合物を生じる工程を含み、ここで、RbおよびRcは、独立して、H、C1〜C6アルキル、F、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択され、ここでRaはC1〜C6アルキルである、方法。
【請求項57】
RbおよびRcが各々Hである、請求項56記載の方法。
【請求項58】
化学式G:

の化合物を合成する方法であって、
化学式G1:

を有する化合物を塩基と反応させて、化学式G2:

を有する化合物を形成する工程;
化学式G2の化合物を、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジイソプロピルエチルアミン、およびN,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩と反応させて、化学式G3:

の化合物を形成する工程;
化学式G3の化合物を水素化アルミニウムリチウムと反応させて化合物G4

を形成する工程;
化学式G4の化合物を化学式G5:

の化合物と反応させて化学式G6

の化合物を形成する工程;ならびに
化学式G6の化合物を塩基と反応させて化学式Gの化合物を形成する工程を含み;ここで、RbおよびRcは、独立して、H、C1〜C6アルキル、F、Cl、Br、I、NO2、CN、CORa、COORa、COOH、およびC(O)Hから選択され、ここでRaはC1〜C6アルキルである、方法。
【請求項59】
RbおよびRcが各々Hである、請求項58記載の方法。

【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21−1】
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【図21−2】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公表番号】特表2008−528502(P2008−528502A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552297(P2007−552297)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/002093
【国際公開番号】WO2006/078942
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(507244910)プレジデント・アンド・フェロウズ・オブ・ハーバード・カレッジ (18)
【Fターム(参考)】