説明

タンパク質等溶液ろ過処理方法およびその装置

【課題】高分子量のタンパク質について分離等の処理を簡単、安価かつ確実に行うことができるタンパク質等溶液ろ過処理方法およびその装置を提供することを目的とする。
【解決手段】2種類以上の気体の中から指定した気体の吸引吐出が可能な吸引吐出部によって吸引吐出された気体が通過可能な1または複数連のノズルに直接的または間接的に装着可能な装着用開口部を有する装着可能容器と、装着可能容器内に封入され、装着用開口部側においてノズルに装着された状態で液体が貯留可能なように仕切り、液体の通過によって所定物質を分離可能なフィルタとを有するフィルタ封入容器に、装着用開口部を通して、所定物質を含有する溶液を導入する導入工程と、溶液が導入されたフィルタ封入容器をノズルに装着する装着工程と、装着されたフィルタ封入容器に対して、ノズルから気体を吐出して所定物質を分離する加圧ろ過工程とを有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質等溶液ろ過処理方法およびその装置(質量分析用血漿または血清サンプルの前処理自動化装置およびその方法)に係り、特に、ヒト等の生体由来の血漿または血清試料等の高分子タンパク質を質量分析計にかけるために、その前処理として、質量分析を妨害する可能性のある所定のタンパク質を除去または分離する前処理を自動化するタンパク質等溶液ろ過処理方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポストゲノムの時代において、生体内で機能するタンパク質の総体(プロテオ−ム)の構造や機能の研究(プロテオミクス)が世界的規模で盛んになってきている。特に、ヒトの血漿(プラズマ)プロテオームは、疾病の診断や治療の監視に有用な臨床マーカーを発見する研究手法として重要であると考えられてきている。血漿は主要な診断試料であり、ヒト臨床プロテオーム解析の対象として、質量分析計を用いた精力的な臨床マーカーの探索が行われている。血漿には、様々な「血漿タンパク質」が含まれるが、その濃度は血漿タンパク質の種類による幅広い分布を示す。血液中に最も多量に含まれるのは、1mLの血液中に30〜50mg含まれる血清アルブミンである。また、血液中には、多数の異なる免疫グロブリン(IgM,IgG,IgA,IgE,IgD)が含まれている。血漿中の微量タンパク質を解析する場合、アルブミンのように多量に含まれるタンパク質は、微量タンパク質の検出・定量を妨害することになるので、解析を行う場合には、これらのメジャータンパク質を何らかの方法で除去する必要がある。このようなヒト血漿を試料として、新規臨床マーカーを探索する質量分析計を用いた解析手法への期待が高まっている(非特許文献1,2,3)。
【0003】
現在このようなヒト血漿解析に有効な方法として、質量分析計による解析が主としてなされており、質量分析を妨害する血漿中のアルブミン・IgG(免疫グロブリン)などのメジャータンパク質を市販の抗体カラム等を用いて除去した後、通過画分を質量分析計で解析する手法が用いられている(特許文献5)。
【0004】
ところで、抗体カラム等のカラム法ではキャリーオーバーによるコンタミネーションのおそれや、分析量および分析数(スループット)の拡大が困難であるという問題点があった。さらに、ヒト血漿を扱う臨床領域では、キャリーオーバーの問題や、バイオハザード対応などは深刻な問題となり、カラム法が必ずしも適当な方法ではないという問題点を有していた。
【0005】
一方、この改善策として、前記アルブミンおよびIgGを除去するために、前記ヒト血漿試料を収容した容器を回転(遠心分離)させ、または振盪させることで処理を行うものがあった。この場合には、装置構造または装置構造が複雑化し、自動化装置の製作が困難であることや設備費用または運用費用がかかるおそれがあるという問題点を有していた。
【0006】
また、本願発明者の一人は、既に、フィルタを封入したチップをノズルに装着した分注チップに嵌合させて装着させたものを用いて、または、フィルタを封入したチップを分注チップを介さずにノズルに装着して分離を行う技術について、出願し、または特許を受けている(特許文献1,2,3,4)。しかしながら、これらの方法は、分注チップに嵌合させて、大気を吸引吐出することで、分注しかつろ過するものであるため、生体等の分離には適しているが、タンパク質分子のような微細な物質の分離については適当でない場合がある。これは、タンパク質分子のような微細な物質については、ポア径の小さいフィルタを用いる必要があるため、液が該フィルタを通過可能とするためには大きな圧力を必要とし、そのためには、大きな体積をもつシリンダ内の気体を小さい体積にまで圧縮可能とする必要がある。しかし、シリンダの容量を大きくすると、微小量の液体の吸引吐出を正確な定量性をもたせて行うことが困難になるおそれがあるという問題点を有していた。また、種々の気体中でまたは同種の気体についての種々の条件の下で処理を行う必要性があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、以上の問題点を解決する為になされたものであり、本発明の第1の目的は、簡単な装置で、安価にかつ確実に、アルブミン、免疫グロブリン等の高分子量のタンパク質等を分離または除去等の処理を含む種々の処理を行うことができる多様性または汎用性があるタンパク質等溶液ろ過処理方法およびその装置を提供することである。また、第2の目的は、アルブミン、免疫グロブリン等の高分子量のタンパク質等の分離または除去等の処理を一貫して自動化することができる手間のかからない、また信頼性・再現性の高いタンパク質等溶液ろ過処理方法およびその装置を提供するである。さらに、第3の目的は、アルブミン、免疫グロプリン等の高分子料のタンパク質等の分離または除去等の処理を、正確かつ効率的に行うことができるタンパク質等溶液ろ過処理方法およびその装置を提供することである。
【0008】
【特許文献1】特許第3630493号
【特許文献2】WO96/29602
【特許文献3】特願2005−144728
【特許文献4】特願2005−3251
【特許文献5】米国特許第6660149号
【非特許文献1】ベックマン・コウルタ社(Beckman Coulter, Inc.)のカタログ(PROTEOMELAB IGY, PROTEOME PARTITIONING SOLUTIONS, (BR-9976A))、米国、発行2005年
【非特許文献2】生命科学のための最新マススペクトロメトリー 講談社 原田健一等著、発行2002年
【非特許文献3】ポストゲノム・マススペクトロメトリー 化学同人 丹羽利充著 発行2002年
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、2種類以上の気体の中から指定した気体の吸引または吐出が可能な吸引吐出部によって吸引または吐出された気体が通過可能な1または複数連のノズルに直接的または間接的に装着可能な装着用開口部を有する装着可能容器内に封入され、前記装着用開口部側において前記ノズルに装着された状態で液体が貯留可能なように前記容器内を仕切り、該液体の通過によって所定物質を分離可能なフィルタとを有するフィルタ封入容器に、前記装着用開口部を通して、前記所定物質を含有する溶液を導入する導入工程と、該溶液が導入された前記フィルタ封入容器を前記ノズルに直接的または間接的に装着する装着工程と、装着された該フィルタ封入容器に対して、前記ノズルから前記気体を吐出して前記所定物質を分離する加圧ろ過工程とを有するタンパク質等溶液ろ過処理方法である。
【0010】
ここで、「2種類以上の気体」には、例えば、大気、窒素、二酸化炭素、酸素、アルゴン、またはこれらの中から選択した2以上の気体を種々の割合で混合した気体がある。また、これらの気体について成分が同一種類でもその圧力、温度等が異なれば異なる種類の気体に属するものである。例えば、同一気体についての圧縮ガスと希薄ガスのような場合である。
【0011】
「フィルタ」は所定のサイズ(ポア径または平均的な空隙の径または長さ)を持つ多数の貫通性の孔または空隙によって液体を通過させて、液体中の所定の物質を分離して、捕獲または除去するための貫通性多孔質の固体である。その形状は、例えば、ブロック状、薄膜状、薄板状、膜状、板状である。フィルタの材料としては、ゴム、シリコーン、セルロース(再生セルロースを含む)、ナイロン、ポリエーテルスルホン等の繊維物質や樹脂、金属、セラミックス等で形成された、ゲル、多孔質体、貫通性多孔質、含水性のものがある。薄膜状担体としては、例えば、タンパク質の限外ろ過を行う限外ろ過膜等がある。ここで、「ブロック状」には、円柱状、角柱状、球状等を含む。
【0012】
ここで、「所定物質」とは、前記フィルタの前記孔または空隙の所定のサイズによって分離され得るサイズの分子量(例えば、該フィルタの孔または空隙のサイズの約2倍前後が適当である)をもつ物質であって、例えば、核酸等の遺伝物質、タンパク質、糖、糖鎖、ペプチド、色素等の生体高分子または低分子を含む生体物質、または、生体物質として、細胞、ウィルス、プラスミド等を含む。タンパク質の場合には、例えば、1000個のアミノ酸分子からなる場合には、前記フィルタの孔または空隙のサイズは、例えば、数nmから数10nmである。
【0013】
または、所定物質は前記物質を吸着可能な所定粒子であっても良い。ここで、「所定粒子」とは、マイクロサイズの大きさ、例えば、1μmから数100μmをもち、ナノサイズ、例えば、1nmから数10nmのサイズの所定物質を吸着することで保持可能な担体であり、これによって、例えば、0.1μmから数100μm程度のポア径をもつフィルタを用いて、前記所定粒子が懸濁する溶液としての懸濁液を通過させることで、前記所定粒子を分離して、懸濁液をろ過することができる。
【0014】
「ノズルに直接的または間接的に装着可能」とは、前記装着用開口部とノズルとを嵌合、または螺合等によって直接接続して装着させ、または、通気性をもちノズルに装着されるノズル装着部材、例えばチップまたはアダプタ等、を介して装着用開口部にノズルを間接的に装着する場合がある。「チップ」とは、太径管及び該太径管と連通し前記太径管よりも細く形成された細径管を有し、太径管には、ノズルに装着され又は装着可能な装着用開口部を有し、細径管には、気体の吸引吐出によって液体の流入および流出が可能な口部を有するもので、例えば、分注チップを含む。なお、ノズルへの装着は、例えば、前記ノズルを上部から前記装着用開口部内へ挿入してノズルを前記装着用開口部へ嵌合させることによって行う。
【0015】
「装着可能容器」とは、少なくとも、前記吸引吐出に用いられる部材に装着され又は装着可能な装着用開口部を有し、内部に液体を貯留可能である容器をいう。装着可能容器にはチップ状容器を含む。「チップ状容器」とは、装着可能容器であって、前記装着用開口部の他に前記気体の吸引または吐出によって液体の入出が可能な口部を有する容器である。「フィルタ封入容器」は、前記装着可能容器内にフィルタが封入された容器であって、前記フィルタは、前記装着用開口部側において前記ノズルに装着された状態で液体が貯留可能なように前記容器内を仕切るように設けられている。
【0016】
前記装着可能容器がチップ状容器の場合には、前記フィルタ封入容器はフィルタ封入チップと呼ぶ。前記フィルタは、前記装着用開口部と前記口部との間を、前記装着用開口部側において前記ノズルに装着された状態で液体が貯留可能なように仕切り、液体の通過によって所定物質を分離可能である。前記チップ状容器は、太径管および細径管のような典型的なチップ形状をもつ場合に限られない。さらに、前記フィルタは、例えば、チップ状容器が太管および細管を有する場合には、例えば、前記太管に相当する部分または太管と細管との間の移行部に相当する部分に収容される。前記チップ状容器の容積は、例えば、数μlから数100μl程度以上の液体を扱うことが可能であるのが好ましい。また、装着可能容器は、一体的に形成する場合と、2つまたは3つに分割可能に形成するようにしても良い。なお、前記口部は、必ずしも1の場合に限られず、複数の口部があっても良い。また、細管が複数あっても良い。細管は、容器と嵌合できるように外径は太管と同じ径をもたせ、内径のみ、太管よりも細く形成するようにしても良い。この場合、細管を複数穿設するようにしても良い。
【0017】
装着可能容器の材料は、光学的観測を可能にするために透光性の素材が好ましい。装着可能容器の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル等の樹脂、ガラス、金属、金属化合物等がある。サイズは、例えば、細管において数マイクロリットルから数ミリリットルの液体を収容可能な大きさである。なお、加圧工程の際に、前記口部は、外部に設けた容器の上方に位置しまたは容器内に挿入した状態で行うのが好ましい。
【0018】
「導入」には、例えば、吸引吐出が可能なノズルに分注チップを装着して、容器から液体を吸引し、前記フィルタ封入容器の収容位置にまで液体を移送し、前記装着用開口部内に前記液体を吐出させることによって行う。
【0019】
なお、前記フィルタが封入された装着可能容器の内、液体を収容可能な空間の容積は、例えば、数マイクロリットルから数ミリリットル程度である。この例の場合には、前記フィルタ封入容器外に設けた前記液収容部は、前記数マイクロリットルから数ミリリットルの液体を、前記細管の口部を通して前記細管内に吸引可能となるように収容可能でなければならない。
【0020】
また、前記導入工程で導入される溶液は、例えば、血漿を有し、該溶液に懸濁する所定粒子としては、例えば、表面において、アルブミン、免疫グロブリン、α2−マクログロブリン、α1−リポプロテインまたはα1酸性糖タンパク等の血漿・血清中に含まれるメジャータンパク質を吸着して保持可能である。
【0021】
ここで、血漿とは、血液中から固体成分、すなわち細胞である血球を除いた液状部分をいう。この血漿中には、分子量が大きいものから小さいものまで多種類のタンパク質が含有されている。タンパク質血漿中に含まれるタンパク質には、免疫グロブリン、アルブミン(分子量66,000Da)、α1−MG(分子量33,000Da)、β2−MG(分子量11,800Da)がある。さらに、前記免疫グロブリンには、IgM(分子量90万Da)、IgG(分子量16万Da)、IgA(分子量15万Da)等がある。ここで、「Da」は、原子質量単位のダルトンを表し、約1.660×10-27kgである。
【0022】
第2の発明は、前記加圧ろ過工程の後、前記ノズルから前記フィルタ封入容器を脱着する脱着工程と、前記フィルタ封入容器に封入されたフィルタと異なる種類のフィルタを有する他のフィルタ封入容器に、その装着用開口部を通して、前記加圧ろ過工程においてろ過された溶液を導入する再導入工程と、前記溶液が導入された該フィルタ封入容器を前記ノズルに直接的または間接的に装着する装着工程と、装着された該フィルタ封入容器に対して、前記ノズルから前記気体を吐出する加圧ろ過工程とを有するタンパク質等溶液ろ過処理方法である。
【0023】
第3の発明は、前記導入工程または前記再導入工程において、前記溶液中の前記所定物質は、前記溶液中の前記所定物質は、タンパク質または該タンパク質を吸着しまたは吸着可能な所定粒子であって、前記フィルタは、該所定物質のサイズよりも小さいポア径を持つ孔または空隙を有するタンパク質等溶液ろ過処理方法である。
【0024】
前記再導入工程における前記フィルタは、例えば、タンパク質を分離可能な限外ろ過膜または前記所定粒子を分離可能な精密ろ過膜であるタンパク質等溶液ろ過処理方法である。
【0025】
ここで、「限外ろ過膜」とは、ポア径が、1nmから100nmの範囲の多孔質膜をいう。「精密ろ過膜」は、0.01μmから数μm程度の溶質または粒子をろ過するために用いる膜である。「所定粒子」については、第1の発明で説明した通りである。
【0026】
第4の発明は、前記導入工程、再導入工程または加圧ろ過工程には、前記フィルタ封入容器に導入した液量を検知する検知工程を有するタンパク質等溶液ろ過処理方法である。
【0027】
第5の発明は、前記2種類以上の気体の内1の種類は、大気であり、前記導入工程は、大気の吸引および吐出を前記ノズルに装着した分注チップを用いて行うことで、前記フィルタ封入容器内に液体を導入し、前記装着工程は、前記ノズルから該分注チップを脱着した後に、前記フィルタ封入容器を装着し、前記加圧ろ過工程は、前記大気以外の気体を、大気と切り換えて前記ノズルを介して前記フィルタ封入部に吐出することによって行うタンパク質等溶液ろ過処理方法である。
【0028】
ここで、「分注チップ」とは、チップ状容器であって前記所定物質を分離可能なフィルタが封入されていないものであって、液体を分注チップ内に吸引し吐出可能なものであって液体の分注、移送に用いられるものである。
【0029】
第6の発明は、前記大気以外の気体は、圧縮窒素ガスであるタンパク質等溶液ろ過処理方法である。
【0030】
ここで、前記窒素ガス圧縮貯蔵器内の窒素ガスの圧力は、例えば、10kgf/cm2であり、減圧して前記ノズルを通して前記フィルタに加える圧力は、例えば、0.1kgf/cm2〜数kgf/cm2である。ここで、「kgf」は、重量キログラムを表す。
【0031】
また、この圧力値は、圧力調節器を設けることによって、変動可能にするのが好ましい。また、減圧弁を設けるのが好ましい。このようにすれば、所定物質として、所定粒子を分離する場合と、直接タンパク質を分離する場合等の処理目的またはフィルタ封入容器の構造等に基づいて、圧力値を変更することができるので、最適な処理を行うことができる。
【0032】
第7の発明は、前記加圧ろ過工程、導入工程または再導入工程において、前記ノズル内に残留する気体を他の気体と置換する置換工程を有するタンパク質等溶液ろ過処理方法である。ここで、置換を行うには、例えば、残留気体を有するノズルに対して、新たな気体をノズルに供給し、または吸引吐出を繰り返すことによって行う。
【0033】
第8の発明は、2種類以上の気体の中から指定した気体についての吸引または吐出が可能な吸引吐出部と、該吸引吐出部によって吸引または吐出された気体が通過可能な1または複数連のノズルと、該ノズルに直接的または間接的に装着可能な装着用開口部を有する装着可能容器、および該装着可能容器内に封入され、前記装着用開口部側において前記ノズルに装着された状態で液体が貯留可能なように前記容器内を仕切り、該液体の通過によって所定物質を分離可能なフィルタを有するフィルタ封入容器と、前記ノズルに装着可能な部材、溶液、検体、または試薬を収容可能な複数の容器を有する容器群と、前記ノズルヘッドを前記容器群に対して相対的に移動可能とする移動部とを有するタンパク質等溶液ろ過処理装置である。
【0034】
ここで、「2種類以上の気体の中から指定した気体についての吸引または吐出」は、前記ノズルへの気体の供給を弁による切換部によって切り換えることによって行う。「ノズルに装着可能な部材」とは、例えば、前記装着用開口部をもつ装着可能容器、フィルタ封入容器(フィルタ封入チップを含む)、分注チップ、アダプタ等である。
【0035】
第9の発明は、前記ノズルからの吸引もしくは吐出について、その気体の種類、量もしくは圧力、回数、時間または位置を、前記ノズルもしくはノズルに装着可能な部材の構造、処理すべき溶液もしくはそこに含まれる物質の種類、その濃度、その量または該溶液の収容位置を含む座標位置からなる物質条件、および、該溶液に対する処理内容に基づいて制御する制御部を有するタンパク質等溶液ろ過処理装置である。
【0036】
ここで、物質の種類には、その物質の性質、サイズをも含む。また、前記液体の量とは、前記フィルタ封入容器もしくは前記分注チップ内の液量、または容器内の液量であって、例えば、後述する液量検知手段によって検知される。この制御部によって、例えば、前記フィルタ封入容器内に貯留されているろ過前の溶液、混合液または懸濁液の量を検知すれば、その量に応じて、溶液、混合液または懸濁液の希望する濃縮化が可能である。
【0037】
第10の発明は、前記吸引吐出部は、前記ノズルを介しての大気の吸引および吐出が可能な大気吸引吐出部と、大気以外の種類の気体を供給する気体供給部と、前記気体供給部と前記大気吸引吐出部とを切り換えて前記ノズルと接続させる切換部とを有するタンパク質等溶液ろ過処理装置である。なお、前記大気吸引吐出部は、一方向系の機構によって駆動されるのが好ましい。ここで、「一方向系の機構」とは、正方向の動作は小さな力で容易に行うことができるが、逆方向の動作は大きな力を必要として、その実行が困難となる機構をいう。例えば、ボール螺子またはすべり螺子を用いて回転駆動を、ボール螺子またはすべり螺子に螺合するナット部の直線運動に変更する機構がある。
【0038】
さらに具体的には、前記大気吸引吐出部として、例えば、シリンダと、該シリンダ内に該シリンダの軸方向に沿って摺動可能に内蔵されたプランジャとを有し、該プランジャは、前記シリンダと平行な軸方向をもつボール螺子またはすべり螺子に螺合するナット部に連結して、前記ボール螺子またはすべり螺子の正逆両方向の回転駆動によって、シリンダ内を軸方向に沿って往復運動をする。この場合、前記プランジャに前記圧縮窒素ガスによる圧力がかかったとしても、前記ナット部と連結されているプランジャは、前記圧力によって軸方向に沿ってほとんど動かないので前記圧縮窒素ガスの導入による影響を防止することができる。
【0039】
また、前記ノズルは、その下端に気体が流入流出する入出口を有し、その上端で前記大気吸引吐出部と連通し、その側面において前記気体供給部と連通する少なくとも1の気体流入口を有するように形成する。これによって、装置全体の構造を簡単化でき、さらに、前記流入口からの気体の流入によっても、前記プランジャは、その気体の圧力によって軸方向に沿ってほとんど動かず、高い圧力を維持したまま導入することができる。
【0040】
第11の発明は、前記大気以外の種類の気体は圧縮窒素ガスであり、前記気体供給部は、窒素ガス圧縮貯蔵器であるタンパク質等溶液ろ過処理装置である。
【0041】
第12の発明は、前記所定物質は、前記溶液中の前記所定物質は、タンパク質または該タンパク質を吸着しまたは吸着可能な所定粒子であって、前記フィルタは、該所定物質のサイズよりも小さいポア径を持つ孔または空隙を有するタンパク質等溶液ろ過処理装置である。ここで、「タンパク質」は、前述したように、例えば、血漿中のアルブミン、免疫グロブリン、α1−MGまたはβ2−MG等である。
【0042】
第13の発明は、前記ノズルヘッドの前記ノズルに装着した部材を該ノズルから除去する脱着部を設けたタンパク質等溶液ろ過処理装置である。
【0043】
ここで、前記ノズルに装着した部材とは、ノズルに装着した「ノズルに装着可能な部材」をいい、例えば、ノズルに装着された前記装着可能容器、フィルタ封入容器または分注チップ、アダプタ等をいう。
【0044】
第14の発明は、前記フィルタ封入容器内または容器内の液量を検知する液量検知手段を設けたタンパク質等溶液ろ過処理装置である。
【0045】
第15の発明は、前記制御部による、前記ノズルからの吸引もしくは吐出について、その気体の種類、量もしくは圧力、回数、時間または位置の制御は、所定タンパク質の分離もしくは除去、または、タンパク質溶液の濃縮もしくはバッファ置換のいずれかの前記処理内容に基づいて行われるタンパク質等溶液ろ過処理装置である。
【発明の効果】
【0046】
第1の発明または第8の発明によれば、2種類以上の気体の中から指定した気体の吸引または吐出が可能な吸引吐出部を設け、所定物質を含有した液体を、前記吸引吐出部によって大気を吸引吐出することによってノズルを介して前記フィルタ封入部に導入し、該フィルタ封入部を前記ノズルに装着して、再度前記吸引吐出部によって気体を吐出して加圧し、前記フィルタを用いてろ過することで前記所定物質を分離することができる。
【0047】
したがって、前記ノズル、吸引吐出部を用いることで、微小量の液体の処理と、高い圧力を必要とする処理とを同じ装置を用いて実行可能とすることで、溶液中の所定物質のフィルタを用いた処理を一貫して自動化することができる。したがって、この処理を人手を介さずに行うことができるので信頼性の高い処理を行うことができる。さらに、所定物質の種類に応じた適切な気体、フィルタおよび条件を選択することができるので、所定物質に応じた最適な条件で処理を行うことができる。
【0048】
第2の発明または第13の発明によれば、目的の所定物質を分離した後、そこで用いたフィルタ封入容器を除去し、新たなフィルタ封入容器に、前記ろ過液を再導入し、装着して加圧ろ過を行うものである。したがって、例えば、血漿中の希少な有用タンパク質の分離処理を行う場合には、一旦、所定物質として、アルブミン等の高分子量のタンパク質を分離した後に、該物質とは異なる種類の目的の前記希少なタンパク質を分離することができる。また、例えば、一旦、所定粒子に吸着させた目的物質を含む物質を、所定粒子ごと分離した後、該所定粒子から前記物質を解離した後に、さらに目的物質を分離するような、複雑で、多様な処理を自動的に行うことができる。
【0049】
第3の発明または第12の発明によると、所定物質として、タンパク質を吸着可能な所定粒子およびタンパク質とし、これらを分離可能なフィルタを用いている。したがって、一旦、例えば、マイクロサイズの所定粒子に吸着させた上で、液体は通すが該所定粒子を通過させないフィルタを用いて分離するようにすれば、比較的低い圧力で加圧して目的のタンパク質を分離することができる。これによって、簡単に、安価にかつ確実にタンパク質を分離することができる。また、複雑な処理を一貫して自動化することができる。
【0050】
第4の発明または第14の発明によれば、フィルタ封入容器内に導入した液量を検知することによって、例えば、フィルタ封入容器内に導入する液量、ろ過後のフィルタ封入容器内の液量を検知することによりその液量の濃度を知ることができ、処理の信頼性を高めることができる。
【0051】
第5の発明または第10の発明によれば、大気と大気以外の気体とを切り換えて吸引吐または吐出を行うことで、ノズルに装着した分注チップに対する液体の吸引、移送、吐出に利用することができるのみならず、ノズルに装着したフィルタ封入容器への、より高圧の気体を用いた加圧ろ過をも行うことができる。したがって、目的物質が含有する液体の前記フィルタ封入容器への導入から加圧ろ過までのフィルタ処理を一貫して人が触れることなく処理することが可能であり、信頼性が高い。
【0052】
第6の発明または第11の発明によると、前記気体として、大気と、圧縮窒素ガスを用いている。したがって、容器内への溶液の導入に適切な気体と、加圧ろ過に適した気体とを使い分けることで、簡単な構造で処理を効率的かつ安価に行うことができる。また、窒素ガスは化学的に安定しており、かつ、安価で容易に入手することができる。
【0053】
第9の発明または第15の発明によれば、前記ノズルからの吸引もしくは吐出について、その気体の種類、量、もしくは圧力、回数、時間または位置を、前記ノズルの構造等の物質条件および処理内容に基づいて制御するようにしている。したがって、ノズル等の構造、および処理内容にあった適切な条件で加圧ろ過を行うことができる。また、所定タンパク質の分離もしくは除去、または、タンパク質溶液の濃縮もしくはバッファ置換の処理内容に応じたノズルの吸引もしくは吐出に関する制御を行うことで、タンパク質溶液についての適切な処理を行うことができる。
【0054】
第7の発明によれば、比重の異なる気体を順次ノズルに通過または導入する場合に、ノズル内に残留する気体があると、新たな気体をノズル内に導入しにくくする場合がある。そこで、新たな気体で処理を開始する前に、残留気体の除去を行うことによって処理を円滑に進めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
続いて、図面に基づいて、本発明の実施の形態に係るタンパク質溶液ろ過処理装置について説明する。
図1(a)には、本実施の形態に係るタンパク質溶液ろ過処理装置10の全体外観斜視図を示す。該装置10は、本体部11と、窒素ガスを圧縮して貯蔵する窒素ガス圧縮貯蔵器12と、前記本体部11に設けた後述するノズルと前記窒素ガス圧縮貯蔵器12とを接続する管路13とを有する。該本体部11は、略直方体状の筐体14を有し、該筐体14の2側面は、一部切り取られるとともに、そこに透明板で形成された蓋体14aが嵌められて外部より内部のろ過処理部15が透視可能となっている。該蓋体14aには、取手14bが取り付けられている。
【0056】
また、筐体14の側面には、使用者が、指示を与え、各種データを入力し、また必要な表示がされる操作用のキーボード14cが設けられている。ただし、該本体部11はこの形態に限られるものではなく、例えば、前記本体部11の筐体14を設けずに、冷蔵施設内で設置した状態で用いても良い。
【0057】
図1(b)は、前記本体部11の前記筐体14から前記蓋体14aを外した状態を示すものである。
【0058】
図2、図3、および図4は各々前記ろ過処理部15を模式的に示す斜視図、平面図および側面図である。
該ろ過処理部15は、要するに、内部を摺動可能なプランジャ17を内蔵し、大気の吸引または吐出を行ない、図上X方向に配列された複数連(この例では8連)のシリンダ18と、該シリンダ18の下側には、該シリンダ18と各々連通する8本のノズル19とを有するノズルヘッド16と、該ノズル19に装着可能な部材(後述するフィルタ封入チップを含む)、各種溶液、検体、または試薬を収容可能な複数の容器を有する容器群22と、前記ノズルヘッド16を前記容器群22に対し図上Y方向およびZ方向に移動可能とする移動部(図6、図7に示す)とを有している。この移動部によって、前記ノズルヘッド16は、前記容器群22の全域を覆うように該容器群22の各容器に前記ノズル19が移動可能である。
【0059】
前記各ノズル19の上端の開口部は、前記シリンダ18と連通し、ノズル19の下端は、気体の流入流出が可能な入出口を有し、ノズル19の側面のやや上側には、前記管路13および弁34を介して前記窒素ガス圧縮貯蔵器12と連通する8本の分岐管路35が各々接続する気体流入口を有している。該分岐管路35または管路13を、可撓性のあるゴム管等で形成することで、前記ノズルヘッド16の移動に伴って変形することで前記ノズルヘッド16の移動に伴う影響を吸収する。
【0060】
前記弁34は、前記切換部に相当し、例えば、電磁弁、止め弁、仕切り弁、逆止弁またはコックである。これによって、前記大気を吸引吐出する場合には、その影響を前記管路13に与えないようにする。弁34として電磁弁を用いた場合には、図示しない制御部によって、接続遮断の指示を与え、また、圧力センサ21の検知結果に基づいて、接続または遮断の指示を行うようにしても良い。
【0061】
該ノズルヘッド16に設けられた8本のノズル19は、前記チップ状容器が装着可能に形成されている。前記各ノズル19は前記シリンダ18および前述した窒素ガス圧縮貯蔵器12と、前記管路13および弁34および分岐管路35を介して流体力学的に接続している。前記弁34は、前記切換部に相当するものであって、前記窒素ガス圧縮貯蔵器12との間の接続を切り換えるものである。なお、前記弁34、管路13、および前記窒素ガス圧縮貯蔵器12は、前記ノズルヘッド16と別個に設け、該ノズルヘッド16と一体に移動可能ではない。
【0062】
前記ノズル19の前記分岐管路35との接続部分の下側には、前記ノズル19が貫通する複数個(この例では、8個)の貫通孔が設けられた細長いプレート状の脱着部20が前記ノズルヘッド16に対して上下動可能に該ノズルヘッド16とともに移動可能に設けられている。前記貫通孔の内径は、貫通する前記ノズル19よりも少し大きいが該ノズル19が嵌合する前記チップ状容器の上端開口部の外径よりも小さな内径をもつように形成されている。
【0063】
前記ノズルヘッド16の1側面には、各ノズル19の内部の圧力を検知するための圧力センサ21が8個、各ノズル19に対応する位置に、隣接するノズル19間の間隔と同一の間隔で設けられている。また、該ノズルヘッド16は、後述するように、該ノズルヘッド16の他方の側面において図示しない前記移動部の前記各アームと結合することによって、本体部11に支持されている。
【0064】
前記容器群22は、8本の前記フィルタ封入チップとして、限外ろ過フィルターユニット(Sartorius社製 Vivspin2)23と、該フィルターユニット23の下方に設けられフィルターユニット23からの液体を受け入れるドレイン槽24と、種々の試薬、例えば重炭酸アンモニウムバッファおよび予備の分注用の2列に配列された分注チップ25と、例えば、50mM重炭酸アンモニウムバッファ液を収容する容器26と、別種類の前記フィルタ封入チップとしての限外ろ過フィルターユニット(Sartorius 社製 Vivaspin6)27と、該フィルターユニット27に対する加圧用のアダプタキャップ28と、前記所定粒子として、アルブミンおよびIgG吸着用のレジン、および、PBSバッファ液の懸濁液を収容する容器29と、例えば、70μl以上の血漿液を収容するサンプル用容器30と、2列に配列された攪拌用または非吸着分移送用分注チップ31と、血漿分注用および予備の2列に配列された分注チップ32とを、図4に示す処理ステージ33上に、前記ノズルヘッド16の各ノズル19に対応して各々8行ずつ、計12列×8行のマトリクス状に配列したものである。
【0065】
また、該容器群22には、図2のX軸方向に沿って移動可能で前記限外ろ過フィルターユニット23、限外ろ過フィルターユニット27内の液面を検知する前記液量検知手段としてのCCD撮像素子を備えた液面センシング部36を有している。
【0066】
図4に示すように、前記限外ろ過フィルターユニット23は、装着可能容器としてのチップ状容器38およびチップ状容器38の内部に封入されたフィルタ39とを有するものである。該チップ状容器38は、太管42と、該太管42の下側に設けられ該太管42の内径よりも細い内径をもつ細管41が1または複数本形成されている。該太管42と細管41との間の移行部に段差を有し、前記フィルタ39は段差の上側に設けられている。前記太管42の上端は、前記ノズル19に加圧用アダプタ40を介して間接的に装着可能な装着用開口部42aを有し、前記細管41の先端には、前記窒素ガスの吐出によって液体の流出が可能な口部41aを有している。前記フィルタ39は、前記装着用開口部42aと前記口部41aとの間を、前記装着用開口部42a側において前記ノズル19に装着された状態で液体が貯留可能なように仕切られている。なお、符号43は、前記細管41が穿設され、前記太管42と略同一の外径をもつ円柱状部材である。
【0067】
図4に示すように、限外ろ過フィルターユニット27は、チップ状容器45およびチップ状容器45の内部に封入されたフィルタ46とを有するものである。該チップ状容器45は、太管47と、該太管47の下側に設けられ該太管47の内径よりも細く形成された1または2以上の細管48と、該太管47と細管48との間の移行部に段差を有し、前記フィルタ46は段差の上側に設けられている。前記太管47の上端は、前記ノズル19に加圧用アダプタキャップ28を介して間接的に装着可能な装着用開口部47aを有し、前記細管48の先端には、前記窒素ガスの吐出によって液体の流出が可能な口部48aを有している。前記フィルタ46は、前記装着用開口部47aと前記口部48aとの間を、前記装着用開口部47a側において前記ノズル19に装着された状態で液体が貯留可能なように仕切られている。
【0068】
なお、符号50は、前記細管48が穿設されている円柱状部材であり、前記太管47の外径と略同一の大きさをもつ。また、符号49は、その上端部が前記円柱状部材50に嵌合可能な容器であって、前記細管48から吐出される液体を受け止めるものである。
【0069】
また、図4中、符号51,52,53,54,55,56は、前記処理ステージ33に設けられた各分注チップを収容する容器である。
【0070】
図5は、そのノズル19に限外ろ過フィルターユニット27、限外ろ過フィルターユニット23が装着された前記ノズル19と前記窒素ガス圧縮貯蔵器12の給気口57との間を接続する空圧経路概念図を示すものである。該管路13は、途中、ガス量を調節することで、最大圧力2.7kgf/cm2となるように圧力を調節する圧力レギュレータ58と、減圧弁59、圧力計60とを有している。前記管路13は、弁34を介して分岐管路35と接続し、分岐管路35は、分注機能をもつ空気の吸引吐出機構であるシリンダ18および前記フィルターユニット27と接続する。
【0071】
なお、本実施の形態に係るタンパク質溶液ろ過処理装置10には、図示しないCPU、各種メモリ、キーボード、各種スイッチ、マウス等の入力手段、表示手段等を有する情報処理部を有しまたは情報処理部と接続可能に設ける。該情報処理部には、前記ノズルの吐出の量、圧力、回数、時間または位置を、前記ノズル、ノズルに装着される部材もしくはフィルタ封入チップの構造、処理すべき溶液もしくは該溶液中に含まれる物質の種類、濃度もしくは量、またはその収容位置を含む座標位置からなる物質条件、および、該液体に対する処理内容に基づいて制御する制御部が設けられている。
【0072】
続いて、図6および図7において、前記本体部11の機構を詳細に説明する。
該本体部11は、前述したように、ノズルヘッド16と、下方に設けた容器群22とを有する。
【0073】
該ノズルヘッド16には、8本の前記ノズル19および該ノズル19に各々連通する8連のシリンダ18を有し(図6および図7には示されていない)、前記シリンダ18には、その内部を摺動可能なプランジャ17が設けられている。8本の前記プランジャ17はその上端部でプランジャ駆動板69に取付けられている。該プランジャ駆動板69は、ボール螺子65に螺合するナット部64と連結し、前記ボール螺子65の回転に伴って上下動するナット部64と連動して、8本の前記プランジャ17を一斉に上下動させる。
【0074】
該ボール螺子65は、前記ノズルヘッド16が取り付けられたヘッド取付板70に取り付けられた逆L字状のボール螺子支持部材68により軸支されている。該ボール螺子支持部材68の水平板上には、位置センサ96が設けられ、前記プランジャ駆動板69に上方に突出するように設けられたロッド95が前記位置センサ96の発光素子および受光素子間を遮ることによって、前記プランジャ17の位置を検知している。
【0075】
該ボール螺子65は、前記ヘッド取付板70にやはり取り付けられたモータ62のモータ軸63と前記ボール螺子65の上端部66に掛け渡されたタイミングベルト(図示せず)によって回転駆動される。
【0076】
前記脱着部20の上側の前記ノズル19には、図7(a)に示すように、孔21aが穿設され、ゴムチューブ21bを介して前記圧力センサ21と連通させて、ノズル19内の圧力を測定可能としている。また、前記孔21aが設けられた側と反対側のノズル19の部分には、前記圧縮窒素ガスを導入するための前記分岐管路35と接続する連結部35aが設けられている。
【0077】
前記ノズルヘッド16を取り付けているヘッド取付板70は、図7(b)の側面図に示すように、その両縁部近傍には2個のガイド部材71a,72aが設けられ、各々2本の上下方向に伸びるガイド柱73,74と係合して上下方向に摺動可能に設けられている。また、該ヘッド取付板70は、ばね75,76を介してヘッド上下駆動板77と連結している。前記ノズル19の下端が容器の底等と接触すると、前記ヘッド取付板70とヘッド上下駆動板77との間隔が狭まり、センサ(図示せず)によって検知可能であり、かつ、接触の際の反力を吸収可能である。前記ヘッド上下駆動板77は、その両縁部近傍に2個のガイド部材71b、72bが設けられ、各々2本の上下方向に伸びるガイド柱73,74と係合して上下方向に摺動可能に支持されている。また、前記ヘッド上下駆動板77は、その中央部において、上下方向に伸びるボール螺子78と螺合するナット部79に取付けられている。該ボール螺子78は、モータ80によって、連結器81を介して回転駆動される。該モータ80は、ラック82上に設けられ、該ラック82は、枠体83上に設けられている。前記ガイド柱73,74および前記ボール螺子78、したがって、前記ノズルヘッド16は、全体として図6の図面上、前記容器群22または前記筐体14に対して、左右方向(Y方向)に移動可能な枠体83に設けられている。
【0078】
また、前記Y方向に沿いかつ前記枠体83と離間して、軌道支持用の大垂直板86および小垂直板89が前記枠体83を挟むようにして前記筐体14に固定して設けられている。図6、図7に示すように、該大垂直板86には、前記Y軸方向に沿って、レール87,88が設けられ、前記枠体83の前記大垂直板86に向かい合う壁部83bの外側の対応する位置に駒84,85が設けられて前記レール87,88と摺動可能に係合している。また、前記小垂直板89には、前記Y軸方向に沿って、レール90が設けられ、前記枠体83の前記小垂直板89に向い合う壁部83aの内側の対応する位置に駒91が設けられて前記レール90と摺動可能に係合している。
【0079】
また、前記大垂直板86には、Y軸方向へ伸びるボール螺子93が設けられ、該ボール螺子93には、ナット部94が螺合し、前記枠体83は、前記ナット部94と連結している。また、図7(a)に示すように、該ボール螺子93は、モータ92によって回転駆動される。
【0080】
続いて、図8に基づいて、前記タンパク質溶液ろ過処理装置10の動作について説明する。
ステップS1で、該処理を行うに際して、予め、血漿を−80℃(タンパク質濃度60−80mg/ml)、500μlで保存していたものを室温融解する。
【0081】
次に、ステップS2で、該血漿を、例えば、前記ノズルに装着した分注チップを用い、ポア径が0.22μmのフィルタ(例えば、Millipore Millex GV0.22μmシリンジフィルタ)をチップに封入した、フィルタ封入チップ(図示せず)を前記ノズル19に装着して前記シリンダ18を用いて吸引吐出すること等によって加圧ろ過し、そのろ過液100-400μlを前記容器群22のサンプル用容器30内に収容しておく。また、容器29には、アルブミンおよびIgG吸着用レジン(Amersham Biosciences社製)およびPBSバッファ液を収容し、50mM重炭酸アンモニウムバッファ液を約9〜10mlを各レーンの容器26に収容しておく。
【0082】
ステップS3において、前記ノズルヘッド16の各ノズル19を1ml用の前記分注チップ32の位置にまで、Y軸方向に移動させた後、Z軸方向に移動させて、該分注チップ32の上端開口部に該ノズル19を挿入させ、押し付けるようにして装着させる。次に、該分注チップ32を装着したノズルヘッド16を、前記容器30の位置にまで移動させて、前記弁34を用いて前記分岐管路35と前記ノズル19とを接続させた状態で、前記シリンダ18を用いて該容器30から70μlの血漿液を吸引する。該血漿液を吸引した状態で、該ノズルヘッド16を前記アルブミンおよびIgG吸着用レジンおよびPBS液が収容されている容器29にまでY軸方向に沿って移動し、Z軸方向に移動させて、前記シリンダ18を用いて該血漿を該容器29に吐出させて混合する。ここで、該容器29内には、予め前記アルブミン・IgG吸着レジン1.2mlがPBS液2.8mlで懸濁されている。
【0083】
なお、前記容器29に収容されている前記アルブミン・IgG吸着用レジンは、1.2mlのアルブミン・IgG吸着レジン(Amersham製、スラリー量は4ml)に、予め別の前記フィルターユニット27内で、2.8mlPBS液を添加して、例えば、遠心ろ過(1000g)を5回行い、または、前記フィルターユニット27を前記ノズル19に装着させて、前記窒素ガス圧縮貯蔵器12を用いて、加圧ろ過を行うことによってレジンの洗浄とPBSに対する平衡化を予め行っておいたものである。
【0084】
ステップS4で、前記容器29内に収容した血漿、アルブミン・IgG吸着レジンおよびPBS液が収容され、前記分注チップ32が各ノズル19に装着された前記ノズルヘッド16は、前記分注チップ32の元の収容位置である容器51の位置にまでY軸方向に移動し、その収容位置において、前記分注チップ32は前記脱着部20を下方向に動かすことによって脱着される。該分注チップ32が脱着した前記ノズルヘッド16は、4mlの容量をもつ分注チップ31の位置にまでY軸方向に移動し、Z軸方向に前記ノズル19を該分注チップ31の上端部に挿入しさらに押し下げることで該分注チップ31を装着する。
【0085】
次に、ノズルヘッド16は、前記容器29にまで移動し、さらに、該分注チップ31を前記容器29内にZ方向に移動して挿入させる。この状態で、室温(20〜25℃)で、前記分注チップ31によって、前記弁34によって分岐管路35を介して前記シリンダ18を前記ノズル19と接続させて、吸引吐出を繰り返すことによって攪拌する。これによって、前記レジンに、血漿中のアルブミンおよびIgGを吸着させる。
【0086】
ステップS5において、前記容器29に収容され、血漿中のアルブミンおよびIgGを吸着したレジンが懸濁する懸濁液を4ml分、前記分注チップ31によって前記シリンダ18を用いて吸引し、Y軸方向に移送して、前記限外ろ過フィルターユニット27に位置させ、該限外ろ過フィルターユニット27内に吐出させる。次に、ノズルヘッド16を前記分注チップ31を収容する容器54,53の位置にまでY軸に沿って移動させ、そこで前記脱着部20によって分注チップ31を脱着する。
【0087】
次に、ノズルヘッド16を前記限外ろ過フィルターユニット27の加圧用アダプタキャップ28の位置にまで移動させて、Z軸方向に該ノズルヘッド16を下降させて、該アダプタキャップ28をノズル19に装着させる。次に、該ノズルヘッド16を前記限外ろ過フィルターユニット27の位置にまで移動させ、Z軸に沿って該ノズルヘッド16を下降させて、該ノズル19を前記アダプタキャップ28を介して、前記懸濁液が収容された前記限外ろ過フィルターユニット27の上端部で装着させる。
【0088】
次に、前記弁34を切り換えて、前記ノズル19と前記気体吸引吐出部である前記シリンダ18との接続を解除して、前記窒素ガス圧縮貯蔵器12と管路13を介して接続する。ここで、前記圧力レギュレータ58を調節し、かつ減圧弁59を用いることによって、前記限外ろ過フィルターユニット27内の懸濁液を加圧ろ過(0.1kgf/cm2)を3分間行い、前記アルブミン、およびIgGの吸着したレジンとPBSをフィルタ46で分離する。これらの時間または吐出量は前記制御部によって指示される。ここで、分離したレジンからIgG溶出画分の2.8mlを保存する。なお、ノズルヘッド16のノズル19に、アダプタキャップ28および限外ろ過フィルターユニット27を装着する前に、前記弁34を切り換えて、前記窒素ガス圧縮貯蔵器12と管路13とを接続して、窒素ガスをノズル19内に供給してノズル内の大気を窒素ガスと置換させるようにするのが好ましい。
【0089】
ステップS6において、前記レジン分離後、前記ノズルヘッド16から、前記脱着部20を用いて、前記限外ろ過フィルターユニット27を脱着した後、新たな分注チップ31の位置にまで該ノズルヘッド16を移動させ、Z軸方向に移動することによってノズルの先端部を該分注チップ31に押し込むようにして分注チップ31を装着させる。また、前記弁34を切り換えて、大気吸引吐出部である前記シリンダ18と前記ノズル19とを接続させる。該ノズルヘッド16を前記限外ろ過フィルターユニット27の下側に設けた容器49にまで移送し、ろ過液を2.8ml吸引して、前記限外ろ過フィルターユニット23位置にまで移送して、該限外ろ過フィルターユニット23内に収容する。該限外ろ過フィルターユニット23には、3kDaの限外ろ過膜からなるフィルタ39が封入されている。次に、前記弁34を再び切り換えて、前記ノズル19と前記窒素ガス圧縮貯蔵器12とを前記管路13を介して接続する。
【0090】
次に、ステップS7で、該限外ろ過フィルターユニット23を4℃の温度条件で、加圧(2.7kgf/cm2)により0.2mlまで濃縮する。その際、該限外ろ過フィルターユニット23に貯留されている前記液の液面を検知することで、その液量を前記液量検知手段によって検知し、その液量に応じて加圧し、前記濃縮を達成する。その後、前記容器26から50mM重炭酸アンモニウム溶液を2.6ml添加し、再び加圧ろ過を行う。この重炭酸アンモニウム溶液への濃縮バッファ交換作業の3回を含み、計4回の加圧を行う。これによって、液体クロマトグラフィー(LC)を用いた質量分析計(MS)による解析(LC−MS)に悪影響を与える溶媒中の不揮発性溶質が除去され揮発性の成分のみになる。また、トリプシン消化のためにpHを9程度にすることによって、次工程の酵素消化処理に必要なpHに調整されることになる。
【0091】
続いて、本発明の実施の形態に係るタンパク質溶液ろ過処理装置によって処理したヒト血漿中のタンパク質測定結果と、同様の処理を、前記フィルタ封入チップの遠心装置への設置等のための手作業が必ず伴う遠心装置を用いたろ過、すなわち遠心ろ過によって行った場合の測定結果とを対比することによって、遠心ろ過および手作業を行わなくても、安定性および繰返し再現性が高い処理を本処理装置によって行うことができることを以下に示す。
【0092】
図8のステップS5の工程、すなわち、ヒト血漿よりアルブミン、IgGを除去する工程を、遠心装置を用いた手作業と本発明の実施の形態に係る加圧ろ過工程によるものとで比較した。処理後の血漿はタンパク質分解酵素によりペプチド断片化し高速液体クロマトグラフィー(LC)質量分析計(MS)で測定した。
【0093】
本発明の実施の形態に係るタンパク質溶液ろ過処理装置を用いた血漿のろ過処理と、遠心ろ過およびそれに伴う手作業で行った際の処理結果の比較は、測定結果データの繰返し再現性(repeatability)を評価することで行った。すなわち、本発明の実施の形態に係るタンパク質溶液ろ過処理装置で処理された血漿中のタンパク質を、前述のLS−MS装置にて測定した3回の結果を、後述するアライメント法によって重ね合わせ、ピーク検出処理を行って得られた各シグナルピークに対して、3回の測定でどれだけ測定値が変動したかを相対標準偏差で示したものを指標とし、その結果を、同様の計算を遠心ろ過および手作業による処理で得られた6回の測定結果と比較検討した。
【0094】
3回の測定結果を重ね合わせる際には、測定の都度変動するLCの溶出時間を揃えるため、I−OPAL法(国際出願PCT/JP2004/004621)を用いて時間軸を揃えた上で、I−OPAL解析ツールのピーク検出プログラムによってシグナルピークを検出した(I−OPALアライメントプログラムで時間軸を揃える際のマーカーとして使用する標準物質は、あらかじめサンプル測定前に添加されたトリ卵白リゾチームと、ヒト血漿中に存在するα-1-antitrypsin由来のペプチド分子イオンシグナル3つを使用した。)。
【0095】
I−OPAL法による3つないし6つの測定結果を重ね合わせた際の一致度の指標となる相関係数(cosine correlation)は、本発明の実施の形態に係る装置を用いた3階の測定では、それぞれ0.9233、0.9251、0.9445であったのに対し、遠心ろ過および手作業による前処理を経た6回の測定結果では、0.8816から0.9489の間であり、平均は、0.9269であった。このことは、本発明の実施の形態に係る装置での測定結果は、測定データの重ね合わせ処理を行うのに十分な再現性があることを示している。
【0096】
また、重ね合わせ後、ピーク検出処理を行った結果、得られたシグナルピークの個数は、本発明の実施の形態に係る装置を用いた3回の測定からは25229個、手作業による前処理を経たものの6回の測定からは27475個であった。得られたシグナルピーク毎に、アライメントによって重ね合わせる前の測定ごとのピーク強度がどの程度変動しているかを相対標準偏差(RSD)で表すと、本発明の実施の形態に係るタンパク質溶液ろ過処理装置を用いた場合が15.8%、遠心ろ過および手作業によった場合が13.7%であった。また、RSDが20%を超過したシグナルピークの個数は、本発明の実施の形態に係る装置を用いた場合には、6292個、遠心ろ過および手作業によった場合には、5548個であり、何れも4分の1以下であった。
【0097】
以上の結果から、本発明の実施の形態に係る装置を用いてサンプルを処理した結果は、遠心ろ過および手作業によって処理されたものと略同程度の再現性を有するものと判断される。図9(a)および図9(b)は、それぞれ、本発明の実施の形態に係る装置を用いて処理した場合と、遠心ろ過および手作業で前処理を行った場合について、3回ないし6回の測定結果を重ね合わせて、シグナル強度の変動を相対標準偏差(RSD)で表した際に、RSD値の頻度分布を示したものである。横軸は、10%刻みで区切ったRSD値で、一番左が0から10%までの領域、また、一番右が50%を越える領域に相当する。縦軸はRSD値が該当範囲にあるシグナルピークの個数を表す。本発明の実施の形態に係る装置と遠心ろ過および手作業を用いたものとほぼ同数の分布形状が得られることがわかり、本発明の実施の形態に係る装置を用いれば、遠心ろ過および手作業を行うことなく処理可能であり、簡単な装置構造および規模で、ユーザの手間を除去または緩和できることが示された。
【0098】
以上の例は、タンパク質として、アルブミン、およびIgGの場合についてのみ説明したが、この例に限られるものではない。例えば、その他の免疫グロブリンであっても良い。また、フィルタ封入チップについても、図示した形状に限られず、前述した種々の形状のものがありうる。
【0099】
例えば、図2に示したように、各ノズル19に対応して、前記圧縮窒素ガス貯蔵器との接続および遮断を行う弁をのみ設けたが、前記分岐管路35の各支路毎に電磁弁を設けて、前記各シリンダに対応する各圧力センサの検知結果に基づいて、接続および遮断を制御するようにしても良い。これで、ノズル内の圧力に異常が検知された場合には、該当する支路の弁を遮断して、該ノズルへの圧縮ガスの供給を中止して、事故の未然防止または無駄な処理の中止を行うことができる。また、前記窒素ガス圧縮貯蔵器をノズルの本数用意して、各ノズルごとに接続して設けるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、タンパク質等溶液ろ過処理方法およびその装置に関する。本発明は、免疫系、血漿・血清中等の生体内タンパク質タンパク質の取扱いが要求される分野、例えば、工業分野、食品、農産、水産加工等の農業分野、製剤分野、衛生、保健、免疫、疾病、遺伝等の医療分野、化学もしくは生物学等の理学の分野等、あらゆる分野に関係するものである。本発明は、特に、多数の試薬や物質を用いた一連の処理を所定の順序に連続的に実行する場合に有効な方法である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態に係るタンパク質等溶液ろ過処理装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るタンパク質等溶液ろ過処理装置のろ過処理部を模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るタンパク質等溶液ろ過処理装置のろ過処理部を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るタンパク質等溶液ろ過処理装置のろ過処理部を模式的に示す側面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るタンパク質等溶液ろ過処理装置の空圧経路概念図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るタンパク質等溶液ろ過処理装置の本体部の機構を示す正面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るタンパク質等溶液ろ過処理装置の本体部の機構を示す側面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る処理の流れ図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るタンパク質等溶液ろ過処理装置を用いた処理と遠心ろ過および手作業による処理結果を示す相対標準偏差の頻度分布図である。
【符号の説明】
【0102】
10 タンパク質等溶液ろ過処理装置
12 窒素ガス圧縮貯蔵器(窒素ガス供給部、吸引吐出部)
13,35 管路
15 フィルタ処理部
16 ノズルヘッド
18 シリンダ(大気吸引吐出部)
19 ノズル
22 容器群
23,27 限外ろ過フィルターユニット(フィルタ封入容器)
34 弁(切換部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の気体の中から指定した気体の吸引または吐出が可能な吸引吐出部によって吸引または吐出された気体が通過可能な1または複数連のノズルに直接的または間接的に装着可能な装着用開口部を有する装着可能容器と、該装着可能容器内に封入され、前記装着用開口部側において前記ノズルに装着された状態で液体が貯留可能なように前記容器内を仕切り、該液体の通過によって所定物質を分離可能なフィルタとを有するフィルタ封入容器に、前記装着用開口部を通して、前記所定物質を含有する溶液を導入する導入工程と、
該溶液が導入された前記フィルタ封入容器を前記ノズルに直接的または間接的に装着する装着工程と、
装着された該フィルタ封入容器に対して、前記ノズルから前記気体を吐出して前記所定物質を分離する加圧ろ過工程とを有するタンパク質等溶液ろ過処理方法。
【請求項2】
前記加圧ろ過工程の後、前記ノズルから前記フィルタ封入容器を脱着する脱着工程と、前記フィルタ封入容器に封入されたフィルタと異なる種類のフィルタを有する他のフィルタ封入容器に、その装着用開口部を通して、前記加圧ろ過工程においてろ過された溶液を導入する再導入工程と、前記溶液が導入された該フィルタ封入容器を前記ノズルに直接的または間接的に装着する装着工程と、装着された該フィルタ封入容器に対して、前記ノズルから前記気体を吐出する加圧ろ過工程とを有する請求項1に記載のタンパク質等溶液ろ過処理方法。
【請求項3】
前記導入工程または前記再導入工程において、前記溶液中の前記所定物質は、タンパク質および該タンパク質を吸着しまたは吸着可能な所定粒子であって、前記フィルタは、該所定物質のサイズよりも小さいポア径を持つ孔または空隙を有する請求項1又は請求項2のいずれかに記載のタンパク質等溶液ろ過処理方法。
【請求項4】
前記導入工程、再導入工程または加圧ろ過工程には、前記フィルタ封入容器に導入した液量を検知する検知工程を有する請求項1または請求項3のいずれかに記載のタンパク質等溶液ろ過処理方法。
【請求項5】
前記2種類以上の気体の内1の種類は大気であり、前記導入工程は、大気の吸引および吐出を前記ノズルに装着した分注チップを用いて行うことで、前記フィルタ封入容器内に液体を導入し、前記装着工程は、前記ノズルから該分注チップを脱着した後に、前記フィルタ封入容器を装着し、前記加圧ろ過工程は、前記大気以外の気体を、大気と切り換えて前記ノズルを介して前記フィルタ封入部に吐出することによって行う請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のタンパク質等溶液ろ過処理方法。
【請求項6】
前記大気以外の気体は、圧縮窒素ガスである請求項5に記載のタンパク質等溶液ろ過処理方法。
【請求項7】
前記加圧ろ過工程、導入工程または再導入工程において、前記ノズル内に残留する気体を他の気体と置換する置換工程を有する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のタンパク質等溶液ろ過処理方法。
【請求項8】
2種類以上の気体の中から指定した気体についての吸引または吐出が可能な吸引吐出部と、
該吸引吐出部によって吸引または吐出された気体が通過可能な1または複数連のノズルと、
該ノズルに直接的または間接的に装着可能な装着用開口部を有する装着可能容器、および該装着可能容器内に封入され、前記装着用開口部側において前記ノズルに装着された状態で液体が貯留可能なように前記容器内を仕切り、該液体の通過によって所定物質を分離可能なフィルタを有するフィルタ封入容器と、
前記ノズルに装着可能な部材、溶液、検体、または試薬を収容可能な複数の容器を有する容器群と、
前記ノズルヘッドを前記容器群に対して相対的に移動可能とする移動部とを有するタンパク質等溶液ろ過処理装置。
【請求項9】
前記ノズルからの吸引もしくは吐出について、その気体の種類、量もしくは圧力、回数、時間または位置を、前記ノズル、ノズルに装着可能な部材の構造、処理すべき溶液もしくはそこに含まれる物質の種類、その濃度、その量または該溶液の収容位置を含む座標位置からなる物質条件、および、該溶液に対する処理内容に基づいて制御する制御部を有する請求項8に記載のタンパク質等溶液ろ過処理装置。
【請求項10】
前記吸引吐出部は、前記ノズルを介しての大気の吸引および吐出が可能な大気吸引吐出部と、大気以外の種類の気体を供給する気体供給部と、前記気体供給部と前記大気吸引吐出部とを切り換えて前記ノズルと接続させる切換部とを有する請求項8または請求項9のいずれかに記載のタンパク質等溶液ろ過処理装置。
【請求項11】
前記大気以外の種類の気体は圧縮窒素ガスであり、前記気体供給部は、窒素ガス圧縮貯蔵器である請求項10に記載のタンパク質等溶液ろ過処理装置。
【請求項12】
前記所定物質は、前記溶液中の前記所定物質は、タンパク質および該タンパク質を吸着しまたは吸着可能な所定粒子であって、前記フィルタは、該所定物質のサイズよりも小さいポア径を持つ孔または空隙を有する請求項8に記載のタンパク質等溶液ろ過処理装置。
【請求項13】
前記ノズルヘッドの前記ノズルに装着した部材を該ノズルから除去する脱着部を設けた請求項8ないし請求項12のいずれかに記載のタンパク質等溶液ろ過処理装置。
【請求項14】
前記フィルタ封入容器内または容器内の液量を検知する液量検知手段を設けた請求項8ないし請求項13のいずれかに記載のタンパク質等溶液ろ過処理装置。
【請求項15】
前記制御部による、前記ノズルからの吸引もしくは吐出について、その気体の種類、量もしくは圧力、回数、時間または位置の制御は、所定タンパク質の分離もしくは除去、または、タンパク質溶液の濃縮もしくはバッファ置換のいずれかの前記処理内容に基づいて行われる請求項8に記載のタンパク質等溶液ろ過処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−232524(P2007−232524A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53539(P2006−53539)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(502338292)ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】