説明

ターゲット材およびその製造方法

【課題】ターゲット材、特に無機EL素子形成用ターゲット材としての硫化亜鉛成型体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】硫化亜鉛または硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む硫化物とを含む複合硫化物からなり、一方の面と他方の面の硫黄/亜鉛の比が0.9以上であって、これら硫黄/亜鉛の比の差が±0.05以下であるターゲット材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲット材、特に無機EL素子形成用ターゲット材としての硫化亜鉛成型体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでEL素子の発光層の形成には、スパッタリング法や電子ビーム蒸着法といった製膜技術が一般的に使用されてきた。そしてこれらの製膜技術によって発光層を形成する際のターゲット材となる硫化亜鉛成型体の製造方法として、硫化亜鉛粉末に発光性元素を混合した硫化亜鉛粉末をホットプレス法にて成型する方法、または冷間プレス法にて成型した後、焼成炉によって焼結させる方法などが開発されてきた。しかしながら、硫化亜鉛粉末は、結晶性が悪く、相対密度(実測密度と理論密度との比)を高めることが難しい。例えば単純にホットプレス法で成型するだけの場合や、冷間プレスで予備成型し、単純に焼結するだけの成型方法では、相対密度が60〜70%程度にしかならない。電子ビーム蒸着などの方法で製膜する場合、硫化亜鉛成型体からガスが放出し、真空度の低下のみならず、発光層を構築できないなどの問題があった。
【0003】
そこで、硫化亜鉛と酸化ケイ素を混合し、ホットプレスすることで充填密度を向上させる方法(特許文献1参照)や、バリウム成分を添加した硫化亜鉛粉末を用いて冷間プレスにより成型し、硫化水素ガス中で焼成成型する方法(特許文献2参照)が改良法として提案されている。更に、冷間プレスした成型体をホットプレスする方法(特許文献3参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、多量の酸化ケイ素を入れて成型するために、相対密度は向上するが、珪素が成膜時に混入する。また、特許文献2においては、バリウムが混入するという問題が生じる。更に、特許文献2では、硫化水素中で焼成成型するために特殊な装置が必要になるという問題も生じる。また、特許文献3では特殊な材質の装置等は必要ないが、2つの装置を使用せねばならず、工程数も多く煩雑であるという問題点は解決できていない。
【0005】
本発明者らの研究によれば、硫化亜鉛を主成分とするターゲット材の一方の面と他方の面とで硫黄/亜鉛の比が大きく異なると成膜物の電子伝導性が低くなり、膜抵抗が増加し、更にアニールなどの熱処理を施しても結晶化度が向上せず、結果的に電子伝導度がより低下するという問題がある。また、ターゲット材の一方の面と他方の面とで硫黄/亜鉛の比が大きく異なるとターゲットの使用時間により得られる成膜物の物性が異なり成膜品質が安定しないという問題がある。
【0006】
このように、得られる成型体の相対密度(実測密度と理論密度との比)に関して開示している文献はあるが、その成型体を構成する硫黄/亜鉛の比を制御すべきことを積極的に開示、問題点を明らかとしたものは無い。
【0007】
更に、ターゲット材の任意の部位の間でに銅などのドープ金属の存在量に差(偏差)がある場合、そのようなターゲット材を成膜などに使用すると、ターゲット材の使用時間によって得られる膜中のドープ金属の組成が変わり、得られる膜の性質がターゲット材の使用時間によって異なるという問題がある。しかし、このような問題に着目し、ターゲット材中のドープ金属の分布を制御することが必要であることを開示し、その解決策を提案する文献は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−324968号公報
【特許文献2】特開平2−59463号公報
【特許文献3】特開平5−310467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、特殊な装置や複雑な工程を必要とせず、従来の装置を使用して工業的規模で製造できる、1に近い硫黄/亜鉛比を有し、相対密度(実測密度と理論密度との比)が高く、成型体内での組成分布の少ない、硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む複合硫化物からなるターゲット材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
[1] 硫化亜鉛または硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む硫化物とを含む複合硫化物からなり、一方の面と他方の面の硫黄/亜鉛の比(原子比)が0.9以上であって、これら硫黄/亜鉛の比の差が±0.05以下であるターゲット材。
[2] 相対密度が0.85である硫化亜鉛または硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む硫化物とを含む複合硫化物からなる[1]記載のターゲット材。
[3] 下記式:
{[ターゲット材の任意の部位における銅の存在量(ppm)−ターゲット材の成型に使用した複合硫化物粉末中の銅の存在量(ppm)]/ターゲット材の成型に使用した複合硫化物粉末中の銅の存在量(ppm)}×100
で表されるターゲット材の任意の部位における銅の存在量の偏差が5%以下である、[1]および[2]記載のターゲット材。
[4] 硫化亜鉛粒子または硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む硫化物とを含む複合硫化物粒子を加圧成型する工程を含む、[1]から[3]のいずれかに記載のターゲット材の製造方法。
[5] 硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む硫化物とを含む複合硫化物からなるターゲット材であって、下記式:
{[ターゲット材の任意の部位における銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素の存在量(ppm)−ターゲット材の成型に使用した複合硫化物粉末中の銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素の存在量(ppm)]/ターゲット材の成型に使用した複合硫化物粉末中の銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素の存在量(ppm)}×100
で表されるターゲット材の任意の部位における銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素の存在量の偏差が5%以内である、ターゲット材。
[6] 硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む硫化物とを含む複合硫化物粒子を加圧成型する工程を含む、[5]に記載のターゲット材の製造方法であって、
前記複合硫化物粒子における銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素の含有量が50〜2000ppmの範囲であるとき、前記加圧成型を1℃/min〜20℃/minの範囲の昇温速度で行い、
前記複合硫化物粒子における銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素の含有量が2000〜500,000ppmの範囲であるとき、前記加圧成型を20℃/min〜100℃/minの範囲の昇温速度で行う、方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、1に近い硫黄/亜鉛比を有し、且つ、ターゲット材の上部と下部、特に、一方の面と他方の面で硫黄/亜鉛比の変化が小さく、相対密度(実測密度と理論密度との比)が高い、不純物含量の少ない硫化亜鉛または硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む複合硫化物からなるターゲット材を高効率で製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のターゲット材は、例えば、特定の比表面積を有し、特定の結晶化度を有する硫化亜鉛粒子または硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む硫化物とを含む複合硫化物粒子を特定の条件で加圧成形する手法を用いることで製造することができる。
【0013】
本発明で使用する硫化亜鉛または硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む複合硫化物としては、好ましくは、水溶液下で調製された硫化亜鉛または硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む複合硫化物、または、水溶液下に調製された硫化亜鉛に銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む硫化物を混合して得られる複合硫化物などが挙げられる。
【0014】
水溶液下での調製方法としては、特に制限されるものではなく、亜鉛を含有する塩と硫化剤を反応させる方法であれば、塩基性、酸性何れの条件で作製されたものでも構わない。例えば、硝酸亜鉛の水溶液と硫化ナトリウム水溶液を室温下で混合することによって調製することもできるし、硝酸亜鉛の水溶液にチオアセトアミドを添加して、100℃程度の温度下に反応させて調製することもできる。
【0015】
液相下調製に使用する亜鉛を含有する塩としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛などのハロゲン化物、硫酸亜鉛、亜硫酸亜鉛、りん酸亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛などの鉱酸塩、または、ギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛などの有機酸塩を使用することができる。これらは、無水塩であっても含水塩であっても構わない。これらは、単一で使用しても混合して使用しても差し支えない。使用する塩の純度としては、特に制限されるものではなく高いほど好ましいが、特に鉄、ニッケル、コバルト、クロム、タングステンなどの金属不純物を含まないものを使用することが、得られる成型体を蛍光体の製造に使用する場合に好ましい。
【0016】
液相下に複合硫化物を調製する場合、銀、銅、マンガンおよび希土類元素の塩を少なくとも1種、亜鉛を含有する塩に添加して、複合硫化物を調製する。必要に応じて、アクセプターとしての銀、銅、マンガンおよび希土類元素に対して、ドナーとして作用する、アルミニウム、ガリウム、インジウム、塩素、臭素などの元素を液中に存在させて、このようなドナー元素が、複合硫化物中に取り込まれるようにする。銀、銅、マンガンおよび希土類元素の塩ならびにドナー元素の塩としては、上述のハロゲン塩、鉱酸塩、有機酸塩を使用することができ、これらは、無水塩であっても含水塩であっても構わない。これらは、単一で使用しても混合して使用しても差し支えない。使用する塩の純度としては、特に制限されるものではなく高いほど好ましいが、特に鉄、ニッケル、コバルト、クロム、タングステンなどの金属不純物を含まないものを使用することが、得られる成型体を蛍光体の製造に使用する場合に好ましい。
【0017】
複合硫化物中に含まれる銀、銅、マンガンおよび希土類元素並びにアクセプターとしての銀、銅、マンガンおよび希土類元素に対してドナーとして作用する元素の量としては、特に制限されるものではないが、多すぎる量は、励起子同士の相互作用により蛍光収率を低下させるため好ましくなく、少なすぎる量は、取り出せる蛍光量が低下するため好ましくない。従って、50〜500,000ppm、好ましくは、100〜400,000ppm、より好ましくは、300〜300,000ppmの範囲で含有することが好ましい。
【0018】
本発明において使用される硫化剤としては、硫化水素、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、などのアルカリ金属硫化物、チオホルムアミド、チオアセトアミドなどのチオアミド類、チオ尿素などを使用することができる。これらの硫化剤の使用量としては、その適用方法によって異なることは言うまでもないが、通常、使用する亜鉛塩に対して、0.1〜5当量の範囲、硫化物の生成効率、経済性を考慮して、0.5〜3当量、より好ましくは、0.8〜2当量を使用することが好ましい。
【0019】
本発明の液相調製は、水中で実施される。得られた硫化物を蛍光体として使用するためには、必要とする金属以外を含まないことが好ましい。従って、使用する水は、イオン交換水を使用することが好ましく、鉄、ニッケル、コバルトなどの重金属は各々50ppm以下、好ましくは10ppm以下、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの典型金属は各々500ppm以下、好ましくは100ppm以下のものを使用する。
【0020】
液相調製の際に、溶液中に硫酸マグネシウムなどの粒径調整剤(電解質による凝集効果を利用)として使用する金属塩を存在させることができる。このような金属は、洗浄などによって、最終的には、硫化物中には取り込まれないようにする。
【0021】
本発明の液相調製としては、反応温度は使用する硫化剤によって異なるが、低すぎる温度では、反応の進行が著しく遅く好ましくなく、高すぎる温度では、発生する硫化水素の液中濃度が低下し、硫化剤効率が低下するため好ましくない。通常、5℃から140℃、より好ましくは、10℃〜120℃の範囲で実施される。反応の方式も特に限定されるものではなく、バッチ式、連続式何れの方法を採用しても構わない。
【0022】
液相調製において得られた硫化物は、デカンテーションや遠心分離などの方法で水と分離しながら、イオン交換水による洗浄を繰り返し、水洗層のpHが5〜8になるまで洗浄する。
【0023】
洗浄された硫化物は、真空乾燥または120℃以下の熱風乾燥などの方法で水を除去、乾燥することができる。乾燥時間としては、含んでいる水の量に依存することは言うまでもないが、通常、1時間から50時間、乾燥の効率を考慮して、1.5時間から20時間の範囲で実施される。
【0024】
硫化亜鉛中に、銀、銅、マンガンおよび希土類元素塩を少なくとも1種の金属を添加して、混合硫化物を調製する場合には、各々の金属硫化物を使用することができる。これらは、単一で使用しても混合して使用しても差し支えない。使用する硫化物の純度としては、特に制限されるものではなく高ければ高いほど好ましいが、特に鉄、ニッケル、コバルト、クロム、タングステンなどの金属不純物を含まないものを使用することが、蛍光体として使用する場合に好ましい。
【0025】
本発明において、得られた硫化物は、必要に応じて、加熱焼成される。この焼成によって、複合硫化物中に含まれる水分の除去や、硫酸イオンの分解を促進することができる。一方で、硫化物の結晶化度が向上するが、必要以上に向上させると、比表面積が著しく低下し、結晶化を促すため加圧成形できなくなるため留意が必要である。また、余りに低いと、加熱の効果を得ることができず、工程が複雑化するだけである。加熱の温度は、液相調製時の方法にもよるため特定されないことは言うまでもないが、通常200℃〜600℃の範囲、好ましくは、300℃〜500℃の範囲で実施する。
【0026】
焼成の時間も特に制限されるものではなく、目的に応じて変化するが、通常0.5〜10時間の範囲、装置の加熱、冷却能力を考慮して、1〜8時間の範囲で実施される。通常、焼成は、不活性雰囲気下または還元雰囲気下で実施されることは言うまでもない。方法としても、バッチ式、連続式何れの方法を採用しても構わない。
【0027】
本発明では、焼成の雰囲気としては、特に限定されるものではないが、酸素の存在は、複合硫化物の表面酸化を起こすために好ましくなく、不活性雰囲気下、または還元雰囲気下で実施する。還元雰囲気下としては、硫化水素存在下、複合硫化物中に硫黄を添加して焼成することができる。焼成炉の構造にもよるが、安全性を考慮して、硫黄を複合硫化物中に添加して焼成することが好ましい。これにより、複合硫化物中に含まれる水分や、硫酸イオンの除去効率を更に向上させることができる。
【0028】
焼成時の硫黄添加量としては特に限定されるものではないが、通常、複合硫化物に対して、0.1〜20重量%、操作性、機器安定性を考慮して、0.2〜15重量%、より好ましくは、0.3〜10重量%を添加することができる。添加の方法としては、固体同士を混合してもかまわないし、硫黄を二硫化炭素などの溶媒に溶解して、複合硫化物と混合し、乾燥させたものでも構わない。
【0029】
更に、本発明では、焼成を真空下に実施しても構わない。真空下に付する温度としては、特に限定されないが、高すぎる温度では、添加した硫黄の気散や、複合硫化物の表面硫黄の欠損を助長するため好ましくなく、通常100〜400℃の範囲、より好ましくは、100℃〜300℃の範囲で実施することができる。これにより、複合硫化物に付着した酸素、水分を除去することが可能となり、焼成中の酸化による硫酸イオン増加を抑止することができる。減圧度としては、特に限定されるものではないが、通常、1〜60KPaの範囲で実施する。
【0030】
得られた焼成物は、必要に応じて、破砕分級し、成型に使用するが、必要に応じて、酸、イオン交換水などで洗浄し、表面に生成した酸化物を除去することができる。このような洗浄を附した場合には、あらためて、真空、熱風などの方法で乾燥される。
【0031】
本発明において、成型する前に、硫化物は予め成型時の流動性、圧縮性を向上するために粉体にされる。粉体の粒度としては、成型時の流動性を維持できる範囲であれば良く、通常50μm以下、より好ましくは30μm以下、成型機への負荷を考慮すると20μm以下であることが好ましい。粉砕の方法としては特に限定されるものではなく、乳鉢による粉砕、ボールミル、ターボミル、サイクロンミルなどの方法を用いても構わない。
【0032】
加圧成型に供される粉体の粒子は、例えば、焼成条件を調整することにより、0.2〜50m/gの比表面積を有することが好ましい。比表面積が小さすぎると、成型時に融着するに十分な硫黄蒸気圧を発生することができず、粒子が結着し難い。この場合、粒子の結着を行うために高い温度または長時間の加圧成型を必要とするが、高温または長時間の加圧成型によって硫黄成分の欠落が起こるために好ましくない。比表面積が大きすぎると、成型時の温度上昇と共に著しく硫黄蒸気圧が上がる一方で粒子が結着できる温度に達していないために硫黄の欠損が起こるために好ましくない。
【0033】
加圧成型に供される粉体の粒子はまた、例えば、焼成条件を調整することにより、X線結晶解析において、2θ=33°の回折ピークの半値幅が0.2〜1.5°に相当する結晶化度を有することが好ましい。結晶化度が高すぎると加熱・加圧成型での成型性が低下するため好ましくない。結晶化度が低すぎると焼結時に分解などを併発するため好ましくない。
【0034】
本発明において、加熱、加圧成型の方法としては、ホットプレス法、放電焼結法などいずれの方法を用いても構わない。
本発明において、得られた硫化物は、ホットプレス成形型(モールド)に入れ、圧力と温度を掛けて成型する。このホットプレスの成形型の材質としては、カーボンやアルミナ、サイアロンを使用することができる。特に、硫化物との反応が顕著な場合には、サイアロン、カーボンの表面をガラスなどの非反応物でコーティングしたものを用いても構わない。
【0035】
本発明においては、硫化亜鉛または硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む硫化物とを含む複合硫化物の硫黄/亜鉛の比が0.9以上、より好ましくは、0.95以上である。硫黄/亜鉛比率が異なると、スパッタターゲットなどとして使用した場合、生成膜の硫黄/亜鉛比率が一定しないだけでなく、蒸気圧が変動し、膜厚などに大きな影響を与え、安定しない。更に、一方の面と他方の面の硫黄/亜鉛の比の差が±0.05以下である。これにより、成型体の使用に当たって、使用時間による組成差が小さく、安定した使用を可能とする。
【0036】
本発明によればまた、ターゲット材におけるアクセプター金属の分布を制御したターゲット材およびそのようなターゲット材の製造方法も提供される。
そのようなターゲット材においては、下記式:
{[ターゲット材の任意の部位におけるアクセプターの存在量(ppm)−ターゲット材の成型に使用した複合硫化物粉末中のアクセプターの存在量(ppm)]/ターゲット材の成型に使用した複合硫化物粉末中のアクセプターの存在量(ppm)}×100
で表されるターゲット材の任意の部位におけるアクセプターの存在量の偏差(ずれ)が5%以内であることが好ましい。ターゲット材内での差は、ターゲット材の一方の面と他方の面が最も大きくなる傾向にあるため、双方を複合硫化物粉末中のアクセプターの存在量を平均値として比べることができる。成型体内での差が大きいと、使用時間により、蒸着に使用されるそのときそのときで、アクセプター量が異なるため好ましくない。5%以内であることにより、安定な使用を可能とする。
【0037】
本発明において、複合硫化物中に含まれる銀、銅、マンガンおよび希土類元素並びにアクセプターとしての銀、銅、マンガンおよび希土類元素に対してドナーとして作用する元素の量によって、成型条件を変えることが好ましい。
【0038】
すなわち、硫化亜鉛粒子(アクセプター量が0ppm)または複合硫化物粒子のアクセプター量として、2000ppm以下、特に50〜2000ppm、好ましくは50〜1000ppmの範囲では、成型するために加熱する温度としては、600℃〜1000℃の範囲で実施することが好ましい。低すぎる温度では、粒子の結着が起こらないため好ましくなく、高すぎる温度では、粒子の結晶化が大きく、成形体内のボイドの発生が多くなるため好ましくない。加圧成型時の昇温の速度としては、1℃/min〜20℃/minの範囲が好ましく、5℃/min〜15℃/minの範囲がより好ましい。早すぎる昇温速度では、粒子の結晶化速度が速すぎ、粒子間にボイドが生成するなどして、成型密度が向上しないため好ましくなく、遅すぎる速度では、生産性が低く、更に、金属硫化物が分解し、硫黄/亜鉛比率が著しく小さくなるため好ましくない。昇温速度としては、必要に応じて、多段階で変化させることも可能である。
【0039】
アクセプター量として、2000〜500,000ppmの範囲では、成型するために加熱する温度としては、600℃〜900℃の範囲で実施することが好ましい。低すぎる温度では、粒子の結着が起こらないため好ましくなく、高すぎる温度では、粒子の結晶化が大きく、成形体内のボイドの発生が多くなるため好ましくない。加圧成型時の昇温の速度としては、20℃/min〜100℃/minの範囲が好ましく、25℃/min〜80℃/minの範囲がより好ましい。早すぎる昇温速度では、粒子の結晶化速度が速すぎ、粒子間にボイドが生成するなどして、成型密度が向上しないため好ましくなく、遅すぎる速度では、生産性が低く、更に、金属硫化物が分解し、硫黄/亜鉛比率が著しく小さくなるため好ましくない。昇温速度としては、必要に応じて、多段階で変化させることも可能である。
【0040】
アクセプター量2000ppmを境界として加圧成型時の昇温の速度を変えることによりターゲット材におけるアクセプターの分布を制御することができる。この知見は後述する実施例からわかるように本発明者らによって実験的に見出された新規な知見であって、結晶化速度と焼結速度(加圧成型時の昇温速度)の関係によるものと考えられる。即ち、アクセプターの存在量によって結晶化速度が変化することが予想され、この結晶化速度の変化に対応して焼結速度を変化させることがアクセプターの分布を制御するために有効であると考えられる。
【0041】
本発明において、加圧する圧力としては、特に限定されないが、相対密度向上のため、好ましくは50Kg/cm2〜500Kg/cm2で加圧してターゲット材に適した成型体、例えば柱状成型体を構築する。低すぎる圧力は、相対密度が向上しないため、好ましくなく、高すぎる圧力は、粒子強度を損なうため好ましくない。
【0042】
本発明において、成形の手順としては、特に制限されるものではない。例えば、モールドに硫化物複合体、必要に応じて硫黄を添加して入れ、成形冶具を装着し、一旦、140Pa程度に減圧する。減圧をアルゴンで開放し、この操作を繰り返し、硫化物複合体内および表面に付着の酸素、水分を除去する。次に、減圧中に加圧を開始し、所定の圧力になったところで、1分〜1時間程度保持する。そこで、減圧をアルゴンで開放し、昇温を開始する。所定の温度で、1分〜1時間保持した後、降温を開始し、室温に戻った段階で、加圧を解除して、目的の成型体を得ることもできるし、昇温後に減圧を解除する方法、降温時に加圧を解除して冷却する方法を採用しても構わない。
【0043】
得られた成型体は、モールドから取り外した後、必要に応じて、研磨などの処置を施すことで、容易にターゲット材、例えば、スパッタ用ターゲット、電子ビーム蒸着用ターゲットなどとして使用できる。
【0044】
本発明で得られる成型体に含有する水分量は50ppm以下であることが好ましい。水分量が多いと、スパッタリング法などに用いた場合、金属硫化物が酸化されるため好ましくない。よって、好ましくは1〜30ppm、より好ましくは、1〜20ppmである。そのため、乾燥終了時の硫化物粉末中の水分は、1ppm〜2000ppmの範囲、より好ましくは、10〜1000ppmである。
【0045】
本発明で得られる成型体が含有する硫酸イオン濃度としては、500ppm以下であることが好ましい。硫酸イオンが多いと、スパッタリング法などに用いた場合、金属硫化物が酸化されたり、薄膜中に混入し、腐食や分解の原因になるため好ましくない。よって、成型体中の硫酸イオン濃度としては1〜200ppmの範囲、より好ましくは、1〜100ppmの範囲である。そのため、洗浄、乾燥終了時の硫化物粉末中の硫酸イオン濃度としては、1ppmから2000ppmの範囲が好ましく、安定して硫酸イオン濃度を目的の範囲とするためには、1〜600ppmの範囲にあることがより好ましい。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例を挙げ本発明を詳細に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
酢酸亜鉛2水和物65.9g、硝酸銅0.05g(銅700ppm相当)、硝酸ガリウム8水和物0.008g(ガリウム50ppm相当)、チオアセトアミド45.0g、酢酸5gをイオン交換水500gに溶解した。2L三つ口フラスコに、ジーンスターク、還流管、温度計、攪拌器を装着し、o―キシレン800mlを取り、系内を窒素置換した。オイル浴の内温を150℃に調整し、反応器内のキシレンを130℃に昇温したのち、酢酸亜鉛を含有する溶液を毎時100mlで加えながら、流出する水をジーンスタークで除去しながら反応を進めた。約6時間で全ての水溶液をフィードし、更に30分間系内の水分を除去した。室温に冷却後、析出した硫化物を沈殿させ、有機溶剤を除去して、目的物を回収し、真空乾燥機にて、100℃12時間乾燥した。硫化物の回収量は、28.9gであり、理論量の98%、銅の含有量は、ICP発光分析により600ppmであった。本反応を4回繰り返し、硫化物の粉末115gを得た。得られた硫化物の粉末の比表面積は40.4平方メートル/gであり、X線回折により求めた2θ=33°の半値幅は1.273であった。なお、比表面積は、BET法で測定装置:日本ベル株式会社製BELSORP18を使用して測定し、X線回折データは、粉末X線結晶回折装置(株式会社リガク製 RINT2400 Ru-H2R)にかけて、回折ピーク強度を測定して求めた。
【0047】
3インチφのモールドに、得られた硫化物の粉末112gを入れ、プラズマ焼結機に充填した。モールド内を130Paまで減圧し、10分間保持、アルゴンにて常圧に解放した。この操作を3回実施し、硫化物複合体内の酸素、水分を除去した。その後、モールド内を140Paまで減圧し、123kg/cm2の圧力を印加し、700℃まで10℃/minで昇温し、モールド温度が700℃に到達した後、モールド内部にアルゴンを導入し、減圧を解除した。その後、アルゴン雰囲気下で5℃/minで850℃まで昇温し、10分間保持した後、圧力を開放し、室温まで冷却した。モールドから成型体をはずし、3インチφのスパッタ用ターゲットを得た。ターゲットの厚さは6.30mmであった。得られた成型体の嵩密度は得られたターゲット材の体積と重量から計算して3.90g/cmであり、相対密度(嵩密度/理論密度(4.01)から計算)は0.973であった。得られたスパッタ用ターゲットの一部を取り、1N塩酸で溶解、EDTA溶液で滴定し、金属含量を定量した。定量した結果、ターゲットの一方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.96、他方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.95であり、両原子比の差は0.01であった。銅の存在量をICP発光分析によって測定したところ、一方の面が602ppmであり、他方の面が607ppmであり、成型に使用した硫化物粉末中の銅の存在量を平均値としてこの平均値からそれぞれ0.3%、1.2%のずれであった。成型体の水分率の測定は、カールフィッシャー水分計(三菱化成株式会社製:型式VA-06)を用いて実施し、水分量は41ppmであった。また、硫酸イオン量の分析は、イオンクロマトグラフ分析装置(島津製作所製:型式HIC-SP)を用いて実施し、硫酸イオン量は22ppmであった。
【0048】
実施例2
酢酸亜鉛2水和物65.9g、硝酸銅0.10g(銅1400ppm相当)、硝酸ガリウム8水和物0.017g(ガリウム100ppm相当)、チオアセトアミド45.0g、酢酸5gをイオン交換水500gに溶解した。2L三つ口フラスコに、ジーンスターク、還流管、温度計、攪拌器を装着し、o―キシレン800mlを取り、系内を窒素置換した。オイル浴の内温を150℃に調整し、反応器内のキシレンを130℃に昇温したのち、酢酸亜鉛を含有する溶液を毎時100mlで加えながら、流出する水をジーンスタークで除去しながら反応を進めた。約6時間で全ての水溶液をフィードし、更に30分間系内の水分を除去した。室温に冷却後、析出した硫化物を沈殿させ、有機溶剤を除去して、目的物を回収し、真空乾燥機にて、100℃12時間乾燥した。硫化物の回収量は、28.3gであり、理論量の98%、銅の含有量は、ICP発光分析により1100ppmであった。本反応を4回繰り返し、硫化物の粉末115gを得た。得られた硫化物の粉末の比表面積は38.3平方メートル/gであり、X線回折により求めた2θ=33°の半値幅は1.415であった。
【0049】
3インチφのモールドに、得られた硫化物の粉末112gを入れ、プラズマ焼結機に充填した。モールド内を130Paまで減圧し、10分間保持、アルゴンにて常圧に解放した。この操作を3回実施し、硫化物複合体内の酸素、水分を除去した。その後、モールド内を140Paまで減圧し、125kg/cm2の圧力を印加し、700℃まで12℃/minで昇温し、モールド温度が700℃に到達した後、モールド内部にアルゴンを導入し、減圧を解除した。その後、アルゴン雰囲気下で6℃/minで850℃まで昇温し、10分間保持した後、圧力を開放し、室温まで冷却した。モールドから成型体をはずし、3インチφのスパッタ用ターゲットを得た。ターゲットの厚さは6.33mmであった。得られた成型体の嵩密度は3.88g/cmであり、相対密度(実測密度と理論密度との比)は0.968であった。得られたスパッタ用ターゲットの一部を取り、1N塩酸で溶解、EDTA溶液で滴定し、金属含量を定量した。定量した結果、ターゲットの一方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.95、他方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.94であり、両原子比の差は0.01であった。銅の存在量をICP発光分析によって測定したところ、一方の面が1089ppmであり、他方の面が1112ppmであり、成型に使用した硫化物粉末中の銅の存在量を平均値としてこの平均値からそれぞれ1.0%、1.1%のずれであった。成型体の水分率の測定は、カールフィッシャー水分計(三菱化成株式会社製:型式VA-06)を用いて実施し、水分量は40ppmであった。また、硫酸イオン量の分析は、イオンクロマトグラフ分析装置(島津製作所製:型式HIC-SP)を用いて実施し、硫酸イオン量は19ppmであった。
【0050】
実施例3
酢酸亜鉛2水和物65.9g、硝酸銅0.75g(銅10500ppm相当)、硝酸ガリウム8水和物0.120g(ガリウム750ppm相当)、チオアセトアミド45.0g、酢酸5gをイオン交換水500gに溶解した。2L三つ口フラスコに、ジーンスターク、還流管、温度計、攪拌器を装着し、o―キシレン800mlを取り、系内を窒素置換した。オイル浴の内温を150℃に調整し、反応器内のキシレンを130℃に昇温したのち、酢酸亜鉛を含有する溶液を毎時100mlで加えながら、流出する水をジーンスタークで除去しながら反応を進めた。約6時間で全ての水溶液をフィードし、更に30分間系内の水分を除去した。室温に冷却後、析出した硫化物を沈殿させ、有機溶剤を除去して、目的物を回収し、真空乾燥機にて、100℃12時間乾燥した。硫化物の回収量は、29.1gであり、理論量の99%、銅の含有量は、ICP発光分析により10300ppmであった。本反応を4回繰り返し、硫化物の粉末115gを得た。得られた硫化物の粉末の比表面積は41.1平方メートル/gであり、X線回折により求めた2θ=33°の半値幅は1.222であった。
【0051】
3インチφのモールドに、得られた硫化物の粉末112gを入れ、プラズマ焼結機に充填した。モールド内を130Paまで減圧し、10分間保持、アルゴンにて常圧に解放した。この操作を3回実施し、硫化物複合体内の酸素、水分を除去した。その後、モールド内を140Paまで減圧し、123kg/cm2の圧力を印加し、700℃まで50℃/minで昇温し、モールド温度が700℃に到達した後、モールド内部にアルゴンを導入し、減圧を解除した。その後、アルゴン雰囲気下で15℃/minで850℃まで昇温し、10分間保持した後、圧力を開放し、室温まで冷却した。モールドから成型体をはずし、3インチφのスパッタ用ターゲットを得た。ターゲットの厚さは6.31mmであった。得られた成型体の嵩密度は3.89g/cmであり、相対密度(実測密度と理論密度との比)は0.970であった。得られたスパッタ用ターゲットの一部を取り、1N塩酸で溶解、EDTA溶液で滴定し、金属含量を定量した。定量した結果、ターゲットの一方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.96、他方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.94であり、両原子比の差は0.02であった。銅の存在量をICP発光分析によって測定したところ、一方の面が10120ppmであり、他方の面が10810ppmであり、成型に使用した硫化物粉末中の銅の存在量を平均値としてこの平均値からそれぞれ1.7%、5.0%のずれであった。成型体の水分率の測定は、カールフィッシャー水分計(三菱化成株式会社製:型式VA-06)を用いて実施し、水分量は33ppmであった。また、硫酸イオン量の分析は、イオンクロマトグラフ分析装置(島津製作所製:型式HIC-SP)を用いて実施し、硫酸イオン量は25ppmであった。
【0052】
実施例4
酢酸亜鉛2水和物65.9g、硝酸銅0.55g(銅7700ppm相当)、硝酸ガリウム8水和物0.088g(ガリウム550ppm相当)、チオアセトアミド45.0g、酢酸5gをイオン交換水500gに溶解した。2L三つ口フラスコに、ジーンスターク、還流管、温度計、攪拌器を装着し、o―キシレン800mlを取り、系内を窒素置換した。オイル浴の内温を150℃に調整し、反応器内のキシレンを130℃に昇温したのち、酢酸亜鉛を含有する溶液を毎時100mlで加えながら、流出する水をジーンスタークで除去しながら反応を進めた。約6時間で全ての水溶液をフィードし、更に30分間系内の水分を除去した。室温に冷却後、析出した硫化物を沈殿させ、有機溶剤を除去して、目的物を回収し、真空乾燥機にて、100℃12時間乾燥した。硫化物の回収量は、29.0gであり、理論量の98%、銅の含有量は、ICP発光分析により6200ppmであった。本反応を4回繰り返し、硫化物の粉末115gを得た。得られた硫化物の粉末の比表面積は40.9平方メートル/gであり、X線回折により求めた2θ=33°の半値幅は1.371であった。
【0053】
3インチφのモールドに、得られた硫化物の粉末112gを入れ、プラズマ焼結機に充填した。モールド内を130Paまで減圧し、10分間保持、アルゴンにて常圧に解放した。この操作を3回実施し、硫化物複合体内の酸素、水分を除去した。その後、モールド内を140Paまで減圧し、120kg/cm2の圧力を印加し、700℃まで30℃/minで昇温し、モールド温度が700℃に到達した後、モールド内部にアルゴンを導入し、減圧を解除した。その後、アルゴン雰囲気下で30℃/minで850℃まで昇温し、10分間保持した後、圧力を開放し、室温まで冷却した。モールドから成型体をはずし、3インチφのスパッタ用ターゲットを得た。ターゲットの厚さは6.33mmであった。得られた成型体の嵩密度は3.88g/cmであり、相対密度(実測密度と理論密度との比)は0.968であった。得られたスパッタ用ターゲットの一部を取り、1N塩酸で溶解、EDTA溶液で滴定し、金属含量を定量した。定量した結果、ターゲットの一方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.95、他方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.92であり、両原子比の差は0.03であった。銅の存在量をICP発光分析によって測定したところ、一方の面が5990ppmであり、他方の面が6512ppmであり、成型に使用した硫化物粉末中の銅の存在量を平均値としてこの平均値からそれぞれ3.4%、5.0%のずれであった。成型体の水分率の測定は、カールフィッシャー水分計(三菱化成株式会社製:型式VA-06)を用いて実施し、水分量は41ppmであった。また、硫酸イオン量の分析は、イオンクロマトグラフ分析装置(島津製作所製:型式HIC-SP)を用いて実施し、硫酸イオン量は22ppmであった。
【0054】
実施例5
酢酸亜鉛2水和物65.9g、硝酸銅0.15g(銅2100ppm相当)、硝酸ガリウム8水和物0.024g(ガリウム150ppm相当)、チオアセトアミド45.0g、酢酸5gをイオン交換水500gに溶解した。2L三つ口フラスコに、ジーンスターク、還流管、温度計、攪拌器を装着し、オクタン800mlを取り、系内を窒素置換した。オイル浴の内温を150℃に調整し、反応器内のオクタンを130℃に昇温した後、酢酸亜鉛を含有する溶液を毎時100mlで加えながら、流出する水をジーンスタークで除去しながら反応を進めた。約6時間で全ての水溶液をフィードし、更に30分間系内の水分を除去した。室温に冷却後、析出した硫化物を沈殿させ、有機溶剤を除去して、目的物を回収し、真空乾燥機にて、100℃12時間乾燥した。硫化物の回収量は、28.6gであり、理論量の98%、銅の含有量は、ICP発光分析により2000ppmであった。本反応を4回繰り返し、硫化物の粉末116gを得た。得られた硫化物の粉末の比表面積は39.4平方メートル/gであり、X線回折により求めた2θ=33°の半値幅は1.265であった。
【0055】
3インチφのモールドに、得られた硫化物の粉末112gを入れ、プラズマ焼結機に充填した。モールド内を130Paまで減圧し、10分間保持、アルゴンにて常圧に解放した。この操作を3回実施し、硫化物複合体内の酸素、水分を除去した。その後、モールド内を140Paまで減圧し、123kg/cm2の圧力を印加し、700℃まで20℃/minで昇温し、モールド温度が700℃に到達した後、モールド内部にアルゴンを導入し、減圧を解除した。その後、アルゴン雰囲気下で5℃/minで850℃まで昇温し、10分間保持した後、圧力を開放し、室温まで冷却した。モールドから成型体をはずし、3インチφのスパッタ用ターゲットを得た。ターゲットの厚さは6.32mmであった。得られた成型体の嵩密度は3.92g/cmであり、相対密度(嵩密度/理論密度(4.01)から計算)は0.977であった。得られたスパッタ用ターゲットの一部を取り、1N塩酸で溶解、EDTA溶液で滴定し、金属含量を定量した。定量した結果、ターゲットの一方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.95、他方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.96であり、両原子比の差は0.01であった。銅の存在量をICP発光分析によって測定したところ、一方の面が1928ppmであり、他方の面が2094ppmであり、成型に使用した硫化物粉末中の銅の存在量を平均値としてこの平均値からそれぞれ3.6%、4.7%のずれであった。成型体の水分率の測定は、カールフィッシャー水分計(三菱化成株式会社製:型式VA-06)を用いて実施し、水分量は43ppmであった。また、硫酸イオン量の分析は、イオンクロマトグラフ分析装置(島津製作所製:型式HIC-SP)を用いて実施し、硫酸イオン量は22ppmであった。
【0056】
実施例6
実施例1で得られた銅を含有した硫化亜鉛116gを坩堝に入れ、雰囲気調整炉にて、窒素下、600℃で焼成した。得られた硫化物粉末の比表面積は0.36平方メートル/gであり、X線回折により求めた2θ=33°の半値幅は0.525であった。
【0057】
3インチφのモールドに、得られた硫化物の粉末112gを入れ、プラズマ焼結機に充填した。モールド内を130Paまで減圧し、10分間保持、アルゴンにて常圧に解放した。この操作を3回実施し、硫化物複合体内の酸素、水分を除去した。その後、モールド内を140Paまで減圧し、123kg/cm2の圧力を印加し、700℃まで10℃/minで昇温し、モールド温度が700℃に到達した後、モールド内部にアルゴンを導入し、減圧を解除した。その後、アルゴン雰囲気下で5℃/minで850℃まで昇温し、10分間保持した後、圧力を開放し、室温まで冷却した。モールドから成型体をはずし、3インチφのスパッタ用ターゲットを得た。ターゲットの厚さは6.31mmであった。得られた成型体の嵩密度は3.96g/cmであり、相対密度(嵩密度/理論密度(4.01)から計算)は0.987であった。得られたスパッタ用ターゲットの一部を取り、1N塩酸で溶解、EDTA溶液で滴定し、金属含量を定量した。定量した結果、ターゲットの一方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.96、他方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.96であり、両原子比の差は0であった。銅の存在量をICP発光分析によって測定したところ、一方の面が587.1ppmであり、他方の面が617.3ppmであり、成型に使用した硫化物粉末中の銅の存在量を平均値としてこの平均値からそれぞれ2.2%、2.9%のずれであった。成型体の水分率の測定は、カールフィッシャー水分計(三菱化成株式会社製:型式VA-06)を用いて実施し、水分量は33ppmであった。また、硫酸イオン量の分析は、イオンクロマトグラフ分析装置(島津製作所製:型式HIC-SP)を用いて実施し、硫酸イオン量は19ppmであった。
【0058】
実施例7
実施例5の原料を使用して3インチφのモールドに、得られた硫化物の粉末112gを入れ、プラズマ焼結機に充填した。モールド内を130Paまで減圧し、10分間保持、アルゴンにて常圧に解放した。この操作を3回実施し、硫化物複合体内の酸素、水分を除去した。 その後、モールド内を140Paまで減圧し、123kg/cm2の圧力を印加し、700℃まで50℃/minで昇温し、モールド温度が700℃に到達した後、モールド内部にアルゴンを導入し、減圧を解除した。その後、5℃/minで850℃まで昇温し、10分間保持した後、圧力を開放し、室温まで冷却した。モールドから成型体をはずし、3インチφのスパッタ用ターゲットを得た。ターゲットの厚さは6.32mmであった。得られた成型体の嵩密度は3.92g/cm3であり、相対密度(実測密度と理論密度との比)は0.977であった。得られたスパッタ用ターゲットの一部を取り、1N塩酸で溶解、EDTA溶液で滴定し、金属含量を定量した。定量した結果、一方の硫黄/亜鉛=0.94、他方面が0.97であり、比差は0.03であった。銅の存在量をICP発光分析によって測定したところ、一方面が1930.0ppm、他方面が2072.1ppmであり、使用した原料の平均組成に対し、夫々、3.5%、3.6%のずれであった。成型体の水分率の測定は、カールフィッシャー水分計(三菱化成株式会社製:型式VA-06)を用いた実施し、水分量は45ppmであった。また、硫酸イオン量の分析は、イオンクロマトグラフ分析装置(島津製作所製:型式HIC-SP)を用いて実施し、硫酸イオン量は30ppmであった。
【0059】
比較例1
実施例1において、減圧下での昇温速度を10℃/minから25℃/minに変えた以外は、実施例1と同様に行った。得られた硫化物の粉末の比表面積は40.4平方メートル/gであり、X線回折により求めた2θ=33°の半値幅は0.183であった。
【0060】
ターゲットの厚さは6.46mmであった。得られた成型体の嵩密度は3.80g/cmであり、相対密度(実測密度と理論密度との比)は0.948であった。得られたスパッタ用ターゲットの一部を取り、1N塩酸で溶解、EDTA溶液で滴定し、金属含量を定量した。定量した結果、ターゲットの一方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.89、他方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.86であり、両原子比の差は0.03であった。銅の存在量をICP発光分析によって測定したところ、一方の面が588ppmであり、他方の面が631ppmであり、成型に使用した硫化物粉末中の銅の存在量を平均値としてこの平均値からそれぞれ2.0%、5.2%のずれであった。成型体の水分率の測定は、カールフィッシャー水分計(三菱化成株式会社製:型式VA-06)を用いて実施し、水分量は39ppmであった。また、硫酸イオン量の分析は、イオンクロマトグラフ分析装置(島津製作所製:型式HIC-SP)を用いて実施し、硫酸イオン量は18ppmであった。
【0061】
比較例2
実施例3において、減圧下での昇温速度を50℃/minから10℃/minに変えた以外は、実施例3と同様に行った。得られた硫化物の粉末の比表面積は41.1平方メートル/gであり、X線回折により求めた2θ=33°の半値幅は1.222であった。
【0062】
ターゲットの厚さは6.28mmであった。得られた成型体の嵩密度は3.91g/cmであり、相対密度(実測密度と理論密度との比)は0.975であった。得られたスパッタ用ターゲットの一部を取り、1N塩酸で溶解、EDTA溶液で滴定し、金属含量を定量した。定量した結果、ターゲットの一方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.90、他方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.82であり、両原子比の差は0.08であった。銅の存在量をICP発光分析によって測定したところ、一方の面が9220ppmであり、他方の面が11800ppmであり、成型に使用した硫化物粉末中の銅の存在量を平均値としてこの平均値からそれぞれ10.5%、14.6%のずれであった。成型体の水分率の測定は、カールフィッシャー水分計(三菱化成株式会社製:型式VA-06)を用いて実施し、水分量は36ppmであった。また、硫酸イオン量の分析は、イオンクロマトグラフ分析装置(島津製作所製:型式HIC-SP)を用いて実施し、硫酸イオン量は27ppmであった。
【0063】
比較例3
実施例1で得られた銅を含有した硫化亜鉛116gを坩堝に入れ、雰囲気調整炉にて、窒素下、800℃で焼成した。得られた硫化物の粉末の比表面積は0.09平方メートル/gであり、X線回折により求めた2θ=33°の半値幅は0.130であった。
【0064】
3インチφのモールドに、得られた硫化物の粉末112gを入れ、プラズマ焼結機に充填した。モールド内を130Paまで減圧し、10分間保持、アルゴンにて常圧に解放した。この操作を3回実施し、硫化物複合体内の酸素、水分を除去した。その後、モールド内を140Paまで減圧し、123kg/cm2の圧力を印加し、700℃まで10℃/minで昇温し、モールド温度が700℃に到達した後、モールド内部にアルゴンを導入し、減圧を解除した。その後、アルゴン雰囲気下で5℃/minで850℃まで昇温し、10分間保持した後、圧力を開放し、室温まで冷却した。モールドから成型体をはずし、3インチφのスパッタ用ターゲットを得た。ターゲットの厚さは7.02mmであった。得られた成型体の嵩密度は3.56g/cmであり、相対密度(嵩密度/理論密度(4.01)から計算)は0.887であった。得られたスパッタ用ターゲットの一部を取り、1N塩酸で溶解、EDTA溶液で滴定し、金属含量を定量した。定量した結果、ターゲットの一方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.89、他方の面の硫黄/亜鉛の原子比は0.83であり、両原子比の差は0.06であった。銅の存在量をICP発光分析によって測定したところ、一方の面が585.2ppmであり、他方の面が619.0ppmであり、成型に使用した硫化物粉末中の銅の存在量を平均値としてこの平均値からそれぞれ2.5%、3.2%のずれであった。成型体の水分率の測定は、カールフィッシャー水分計(三菱化成株式会社製:型式VA-06)を用いて実施し、水分量は21ppmであった。また、硫酸イオン量の分析は、イオンクロマトグラフ分析装置(島津製作所製:型式HIC-SP)を用いて実施し、硫酸イオン量は9ppmであった。
【0065】
比較例4
実施例1の原料を使用して3インチφのモールドに、得られた硫化物の粉末112gを入れ、プラズマ焼結機に充填した。モールド内を130Paまで減圧し、10分間保持、アルゴンにて常圧に解放した。この操作を3回実施し、硫化物複合体内の酸素、水分を除去した。 その後、モールド内を140Paまで減圧し、123kg/cm2の圧力を印加し、700℃まで50℃/minで昇温し、モールド温度が700℃に到達した後、モールド内部にアルゴンを導入し、減圧を解除した。その後、5℃/minで850℃まで昇温し、10分間保持した後、圧力を開放し、室温まで冷却した。モールドから成型体をはずし、3インチφのスパッタ用ターゲットを得た。ターゲットの厚さは6.62mmであった。得られた成型体の嵩密度は3.73g/cm3であり、相対密度(実測密度と理論密度との比)は0.932であった。得られたスパッタ用ターゲットの一部を取り、1N塩酸で溶解、EDTA溶液で滴定し、金属含量を定量した。定量した結果、一方の硫黄/亜鉛=0.92、他方面が0.84であり、比差は0.08であった。銅の存在量をICP発光分析によって測定したところ、一方面が571.6ppm、他方面が633.4ppmであり、使用した原料の平均組成に対し、夫々、4.7%、5.6%のずれであった。成型体の水分率の測定は、カールフィッシャー水分計(三菱化成株式会社製:型式VA-06)を用いた実施し、水分量は45ppmであった。また、硫酸イオン量の分析は、イオンクロマトグラフ分析装置(島津製作所製:型式HIC-SP)を用いて実施し、硫酸イオン量は23ppmであった。
【0066】
比較例5
実施例2の原料を使用して3インチφのモールドに、得られた硫化物の粉末112gを入れ、プラズマ焼結機に充填した。モールド内を130Paまで減圧し、10分間保持、アルゴンにて常圧に解放した。この操作を3回実施し、硫化物複合体内の酸素、水分を除去した。 その後、モールド内を140Paまで減圧し、123kg/cm2の圧力を印加し、700℃まで40℃/minで昇温し、モールド温度が700℃に到達した後、モールド内部にアルゴンを導入し、減圧を解除した。その後、5℃/minで850℃まで昇温し、10分間保持した後、圧力を開放し、室温まで冷却した。モールドから成型体をはずし、3インチφのスパッタ用ターゲットを得た。ターゲットの厚さは6.67mmであった。得られた成型体の嵩密度は3.71g/cm3であり、相対密度(実測密度と理論密度との比)は0.925であった。得られたスパッタ用ターゲットの一部を取り、1N塩酸で溶解、EDTA溶液で滴定し、金属含量を定量した。定量した結果、一方の硫黄/亜鉛=0.95、他方面が0.89であり、比差は0.06であった。銅の存在量をICP発光分析によって測定したところ、一方面が1065.6ppm、他方面が1157.2ppmであり、使用した原料の平均組成に対し、夫々、3.1%、5.2%のずれであった。成型体の水分率の測定は、カールフィッシャー水分計(三菱化成株式会社製:型式VA-06)を用いた実施し、水分量は42ppmであった。また、硫酸イオン量の分析は、イオンクロマトグラフ分析装置(島津製作所製:型式HIC-SP)を用いて実施し、硫酸イオン量は27ppmであった。
【0067】
比較例6
実施例3の原料を使用して3インチφのモールドに、得られた硫化物の粉末112gを入れ、プラズマ焼結機に充填した。モールド内を130Paまで減圧し、10分間保持、アルゴンにて常圧に解放した。この操作を3回実施し、硫化物複合体内の酸素、水分を除去した。 その後、モールド内を140Paまで減圧し、123kg/cm2の圧力を印加し、700℃まで10℃/minで昇温し、モールド温度が700℃に到達した後、モールド内部にアルゴンを導入し、減圧を解除した。その後、5℃/minで850℃まで昇温し、10分間保持した後、圧力を開放し、室温まで冷却した。モールドから成型体をはずし、3インチφのスパッタ用ターゲットを得た。ターゲットの厚さは6.57mmであった。得られた成型体の嵩密度は3.76g/cm3であり、相対密度(実測密度と理論密度との比)は0.938であった。得られたスパッタ用ターゲットの一部を取り、1N塩酸で溶解、EDTA溶液で滴定し、金属含量を定量した。定量した結果、一方の硫黄/亜鉛=0.92、他方面が0.85であり、比差は0.07であった。銅の存在量をICP発光分析によって測定したところ、一方面が9877.7ppm、他方面が11247.6ppmであり、使用した原料の平均組成に対し、夫々、4.1%、9.2%のずれであった。成型体の水分率の測定は、カールフィッシャー水分計(三菱化成株式会社製:型式VA-06)を用いた実施し、水分量は42ppmであった。また、硫酸イオン量の分析は、イオンクロマトグラフ分析装置(島津製作所製:型式HIC-SP)を用いて実施し、硫酸イオン量は27ppmであった。
【0068】
以上の結果を表1に示す。
【0069】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化亜鉛または硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む硫化物とを含む複合硫化物からなり、一方の面と他方の面の硫黄/亜鉛の比が0.9以上であって、これら硫黄/亜鉛の比の差が±0.05以下であるターゲット材。
【請求項2】
相対密度が0.85以上である硫化亜鉛または硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む硫化物とを含む複合硫化物からなる請求項1記載のターゲット材。
【請求項3】
下記式:
{[ターゲット材の任意の部位における銅の存在量(ppm)−ターゲット材の成型に使用した複合硫化物粉末中の銅の存在量(ppm)]/ターゲット材の成型に使用した複合硫化物粉末中の銅の存在量(ppm)}×100
で表されるターゲット材の任意の部位における銅の存在量の偏差が5%以下である、請求項1または2記載のターゲット材。
【請求項4】
硫化亜鉛粒子または硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む硫化物とを含む複合硫化物粒子を加圧成型する工程を含む、請求項1から3のいずれかに記載のターゲット材の製造方法。
【請求項5】
硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む硫化物とを含む複合硫化物からなるターゲット材であって、下記式:
{[ターゲット材の任意の部位における銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素の存在量(ppm)−ターゲット材の成型に使用した複合硫化物粉末中の銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素の存在量(ppm)]/ターゲット材の成型に使用した複合硫化物粉末中の銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素の存在量(ppm)}×100
で表されるターゲット材の任意の部位における銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素の存在量の偏差が5%以内である、ターゲット材。
【請求項6】
硫化亜鉛と銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素を含む硫化物とを含む複合硫化物粒子を加圧成型する工程を含む、請求項5に記載のターゲット材の製造方法であって、
前記複合硫化物粒子における銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素の含有量が50〜2000ppmの範囲であるとき、前記加圧成型を1℃/min〜20℃/minの範囲の昇温速度で行い、
前記複合硫化物粒子における銀、銅、マンガンおよび希土類元素の少なくとも1種の元素の含有量が2000〜500,000ppmの範囲であるとき、前記加圧成型を20℃/min〜100℃/minの範囲の昇温速度で行う、方法。

【公開番号】特開2010−174316(P2010−174316A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17160(P2009−17160)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】