説明

タービンノズルセクタ

【課題】外部プラットフォームセグメントに近接して位置する後縁空洞のゾーンがほとんど高温腐食にさらされないタービンノズルセクタを提案すること。
【解決手段】外側プラットフォームセグメント(102)と内側プラットフォームセグメント(104)とを備え、そこで1つまたは複数の中空羽根(106)が延在するタービンノズルセクタ(110)を提供する。各羽根は、冷却空気を供給し羽根の後縁に沿って配設された複数の排気口(118)と連通するための後縁空洞(116)を含む。これらの排気口は、冷却空気の一部を排気する働きをする。上記空洞(116)は、外側プラットフォーム(102)と同じ高さに位置し、わずかな冷却空気が排気されるのを可能にする空気出口孔(130)と連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンノズルセクタと、複数のこのタイプのセクタを組み立てた結果形成されるノズルを有するタービンを備えたターボ機械と、セクタなどを製造する方法とに関する。
【0002】
本発明は任意のタイプのタービンおよび任意のタイプの地上または航空のターボ機械に適用される。特に、本発明は飛行機のターボジェットのタービンに適用される。
【0003】
本出願において、用語「上流側」および「下流側」は、タービンを通る流体の通常の流れ方向に対して定義される。さらに、軸方向はタービンロータの回転軸方向に相当し、半径方向は上記回転軸に垂直な方向である。結局、その逆に指定しない限り、形容詞「内側の」および「外側の」は、要素の内側(すなわち、半径方向内側)部分または表面が、同要素の外側(すなわち、半径方向外側)部分または表面より上記回転軸に近いというように、半径方向に対して使用される。
【0004】
飛行機のターボジェットタービンは、固定要素(ステータ)と可動要素(ロータ)とを有する。可動要素はブレードを有する可動ホイールであり、これらの可動ホイールをノズルとしても知られている固定羽根のグリッド間に介装される。ノズルと可動ホイールを備える一対は、タービンの一段を構成する。タービンの組み立てをより簡単にするために、少なくとも2つのノズルセクタを組み立てることによりノズルが形成される。
【0005】
タービンを通るガスの温度を考えると、特定のノズルの羽根はこれらのノズルを冷却できるように中空である。これは、2スプールのターボジェットでは、一般的に最も上流側に位置し、第1段ノズルとも呼ばれるノズルの羽根に適用される。
【0006】
より正確には、本発明は、外側プラットフォームセグメントと内側プラットフォームセグメントとを備え、その間に1つまたは複数の中空羽根が延在するタイプのタービンノズルセクタに関する。各中空羽根は冷却空気を供給し羽根の後縁に沿って配設された複数の排気口と連通する後縁空洞を含み、これらの排気口は冷却空気の一部を排気する働きをする。
【背景技術】
【0007】
上述のタイプのセクタの知られている例を、図1および図2に示す。
【0008】
図1はこの知られている例のセクタ10の斜視図であり、図2は図1の面II−IIにおける半径方向断面図である。セクタ10は、外側プラットフォームセグメント2と内側プラットフォームセグメント4とを備え、その間に、隣接可動ホイール(図示せず)を駆動するのに好適な方向に空気流を導く羽根6が延在する。複数のセクタを組み立てて、ノズルを構成する。組み立てると、セグメント2はノズルの環状内側プラットフォームを形成し、セグメント4はノズルの環状外側プラットフォームを形成する。
【0009】
羽根6は冷却空気を通過させることができるように中空である。各羽根の内部には、3つの空洞が存在する(図2を参照)。この3つの空洞は、後縁空洞16(羽根の後縁脇に位置する)、前縁空洞12(羽根の前縁部脇に位置する)および中央空洞14(上述した2つの空洞の間に位置する)である。作動時に、これらの3つの空洞12、14、および16は冷却空気を供給される。この冷却空気は、一般に、高圧タービン内からのターボジェットの一次気流から取り込まれる。冷却空気の流路は、矢印Fで象徴的に表す。
【0010】
後縁空洞16は、中央空洞14および2つの空洞14、16間にある連通オリフィス15(図2に示される)を経由して冷却空気を供給される。後縁空洞16は、複数の排気口18(すなわち出口チャネル)と連通する。この排気口18は、羽根の後縁に沿って、羽根の正圧側壁19を貫通して配設される。図2において、排気口18は点線で示されている。これら排気口により冷却空気の一部を矢印fに沿って排気することが可能になる。排出された空気は正圧側壁19に沿って空気の膜を形成し、この空気の膜がタービンを通過する高温ガスから羽根の後縁を保護し、後縁を冷却する。
【0011】
セクタ10は、一般に、可溶性中子を使用して空洞12、14、および16を配設されて鋳造により製造される。これらの可溶性中子を取り除くために、空洞12、14、および16は、最初にそれらの外側および内側の両端部(すなわち、図2においては上端部および下端部)は開口している。これらの中子を取り外した後、空洞の外側および内側の開口部は閉じられる。
【0012】
したがって、後縁空洞16の外側開口部16aおよび内側開口部16bは、各プレート20、22により閉じられる。したがって、作動時にプレート20、22を通って空気が排気されることはない。プレート20は、外側プラットフォームのセグメント2の外面に位置付けされて、その後昇温される予備焼結部から作られ、この予備焼結部は拡散溶接により、セグメント2に溶接する。
【0013】
セクタ10を酸化と高温腐食から保護するために、一般に、気体技術によりアルミニウムの保護皮膜をセクタに蒸着させる。これはアルミ化方法とも呼ばれる。この知られている方法は、アルミニウムを含むドナーを使用して、セクタ10の特定の部分(特に、羽根6の負圧面および正圧面)上にアルミニウムを蒸着させることにあり、アルミニウムは気相内で、ハロゲン化アルミニウムの形でドナーからセクタ10まで伝達される。このハロゲン化アルミニウムは、一般に「ベクトル」ガスと呼ばれるガスを使用して形成される。このガスは、ハロゲンイオンを放出する温度影響下で、昇華することができる。これらのイオンはドナーと反応して、揮発性ハロゲン化アルミニウムを生成する。ハロゲン化アルミニウムは、アルゴンなどの還元ガスまたは不活性ガスで希釈してもよい。
【0014】
後縁空洞16は、プレート20、22が皮膜に溶接できないため、保護皮膜を蒸着させる前にプレート20、22で閉じられる。したがって、皮膜を蒸着させるのに使用されるガス(すなわち、揮発性ハロゲン化アルミニウムおよび上述の例の不活性ガス)は、後縁空洞16の内部にほとんど、または全く浸透しない。場合によっては、いくらかのガスが排気口18の内部に浸透する可能性があるが、これらの排気口18は非常に小さいセクションであるため、この内部に浸透するガスはごくわずかの量であり、非常に短い間隔である。したがって、後縁空洞16の壁は、保護皮膜により覆われていないか、または排気口18の近傍でごくわずかに覆われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
いくつかの調査報告書により、外側プラットフォームセグメント2とプレート20とに近接して位置する後縁空洞16のゾーンCがひどく高温腐食にさらされることが明らかになった。図2において、このゾーンCは環に囲まれている部分である。残念なことに、このゾーンCの修理は非常に難しい。これは、どんな修理の場合も、外側プラットフォーム2に溶接されているプレート20を取り外す必要があるためである。このことは、そのような従来技術のノズルセクタの高い廃棄率につながる。
【0016】
本発明の目的は、外部プラットフォームセグメントに近接して位置する後縁空洞のゾーンがほとんど高温腐食にさらされない、上述の特定のタイプのタービンノズルセクタを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本目的は、後縁空洞が外側プラットフォームと同じ高さに位置する空気出口孔と連通し、空気出口孔が外部プラットフォームセグメントに固定される部品を貫通して配設される、上述の特定のタイプのタービンノズルセクタにより達成される。タービンの作動中、空気出口孔は冷却空気の一部を排気する働きをする。
【0018】
作動時に、空気出口孔により、確実に冷却空気が外側プラットフォームセグメントに近接して位置する後縁空洞のゾーン内に流れるのが可能になり、その結果、このゾーンは良好に冷却され、したがって、ほとんど高温腐食にさらされなくなる。
【0019】
さらに、有利には、セクタ上に保護皮膜を蒸着させるのに気体技術を使用し、その結果、蒸着に使用されるガスの一部が空気出口孔を通過し、この孔の近傍に位置する空洞の壁は保護皮膜によって覆われる。有利には、皮膜は腐食から保護し、壁が皮膜により保護されるので、さらに高温腐食にほとんどさらされなくなる。この利点は、任意のタイプの防食皮膜でも得られ、したがって、本発明はアルミニウムの皮膜を蒸着させることに限定されないことに留意されたい。
【0020】
一実施形態において、保護皮膜を蒸着させるのに使用されるガスの浸透を促進するために、空気出口孔の出口セクションの面積を2mm以上にする。
【0021】
一実施形態において、空気出口孔の出口セクションの面積を8mm以下にする。これは、出口孔を通って排気される冷却空気の量を制限する。出口孔を通過する冷却空気の排気が多すぎると、特に、排気口を通って空気が排気される率が低くなり、羽根の後縁を冷却するのに不利となる。
【0022】
一実施形態において、空気出口孔は、外側プラットフォームセクタに固定される部品を貫通させる。したがって、その部品を設置する前に、孔の出口セクションは貫通させられ、較正される。部品が使いやすいように選択されて、その結果、較正動作が簡単に、かつ高精度に行われ得る。一例として、部品は金属プレートであり、ろう付けにより固定することができる。
【0023】
空気出口孔は、上述した以外の何らかの方法で設けられ得ることに留意されたい。特に、外側プラットフォームセクタに固定される部品を貫通して配設されるのではなく、空気出口孔が直接外側プラットフォームセクタを貫通して設けられてもよい。例えば、セクタが鋳造成形される時に、セクタの成形時に空気出口孔を配設することができる。鋳造による製造の精度が不十分であると認められる場合は、孔を較正するための任意の機械加工工程を取り入れてもよい。他の代替形態においては、空気出口孔は、外側プラットフォームセクタにより部分的に、かつセクタに固定される部品により部分的に画定されてもよい。言い換えれば、その固定された部品は、後縁空洞からの外側開口部の一部を覆う。一例として、該部品は金属プレートまたは予備焼結プレートとしてもよい。
【0024】
本発明およびその利点は、限定されない例示による本発明の一実施形態の以下の詳細な説明を読むことで、より理解することができる。本記述は、添付図面を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1および図2は従来技術を示し、これらの図は上述している。
【0026】
図3および図4において、一例として示されるセクタ110は、外側プラットフォームの近傍に位置する後縁空洞ゾーンに関してのみ、図1および図2のセクタ10とは異なる。したがって、セクタ10の部分に類似しているセクタ110の部分は、同一の符号に100をプラスした形で識別され、これらについてはさらに説明しない。
【0027】
セクタ110は鋳造により製造され、最初に後縁空洞116は、その外端部に外側開口部116aを含み、この外側開口部116aは外側プラットフォームのセグメント102を貫通する。外側開口部116aは、羽根106の内部に空洞116を作るための成形時に使用された可溶性中子を抜くのに有用である。さらに、外側開口部116aのセクションは、中子をこの位置でどんな破損のリスクも避けるのに十分な厚さにできる大きさのサイズである。例えば、外側開口部116aのセクションは、一般に、長辺8mm×短辺2mmの長方形の形で、面積は16mmである。
【0028】
セクタ110が成形された後、気体技術を使用して、セクタ上に保護皮膜を蒸着させて、腐食および酸化から保護する。一例として、この保護皮膜はアルミニウムの皮膜である。アルミニウムの皮膜を蒸着させる方法は、知られており上述している。
【0029】
本発明によれば、後縁空洞の外側開口部116aは閉じられておらず、空洞116は、外側プラットフォーム102にある空気出口孔130と連通する。作動時、孔130により、冷却空気の一部が矢印f’に沿って排気される。したがって、外側プラットフォームセクタ102と同じ高さに位置するゾーンC内で空洞116の空気の流れが存在する。この冷却空気の流れにより、空洞116の壁がゾーンC内で冷却され、したがって、これらの壁はほとんど高温腐食にさらされることはない。
【0030】
さらに、気体技術による保護皮膜の蒸着時に、蒸着に使用されるガスの一部が、孔130を通過し、皮膜がゾーンCに位置する空洞116の壁に蒸着される。したがって、これらの壁は、皮膜により腐食から保護される。
【0031】
空気出口孔130の出口セクションは、保護皮膜の蒸着時に十分な量のガスが通過でき、ガスが空洞116内部を十分に浸透できるように十分大きくする。しかし、この出口セクションは、作動時に、確実に冷却空気(矢印f’)の流量が多すぎることがないように十分に小さくする。したがって、例えば、孔130の出口セクションは、一般に、直径1.6mm、約面積2mmの円形である。
【0032】
空気出口孔130は、金属プレート140を貫通して配設される。このプレート140の形は、長方形または正方形である。プレート140は、ろう付けによって、外側プラットフォームセグメント102に固定される。プレート140は、十分に硬く、高温に耐えられる材料から作られるため、孔130の出口セクションの面積は一定のままで、作動時にもほとんど変化しないことが保証される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】タービンノズルセクタの従来技術の例の斜視図である。
【図2】図1の面II−IIにおける半径方向断面図である。
【図3】本発明のタービンノズルセクタの一例の斜視図である。
【図4】図3の面IV−IVにおける半径方向断面図である。
【符号の説明】
【0034】
2、102 外側プラットフォームセグメント
4、104 内側プラットフォームセグメント
6、106 羽根
10、110 タービンノズルセクタ
12、112 前縁空洞
14、114 中央空洞
15、115 連通オリフィス
16、116 後縁空洞
16a、116a 外側開口部
16b、116b 内側開口部
18、118 排気口
19、119 正圧側壁
20、22、122 プレート
130 空気出口孔
140 金属プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側プラットフォームセグメント(102)と内側プラットフォームセグメント(104)とを備え、そこで1つまたは複数の中空羽根(106)が延在し、各羽根が冷却空気を供給し前記羽根の後縁に沿って配設された複数の排気口(118)と連通する後縁空洞(116)を含み、これらの排気口が冷却空気の一部を排気する働きをする、タービンノズルセクタ(110)であって、
前記セクタは、前記空洞(116)が前記外側プラットフォーム(102)と同じ高さに位置し冷却空気の一部が排気されるのを可能にする前記空気出口孔(130)と連通し、前記空気出口孔(130)が前記外側プラットフォームセグメント(102)に固定される部品を貫通して配設されることを特徴とする、タービンノズルセクタ。
【請求項2】
前記空気出口孔(130)が面積2mm以上の出口セクションを含む、請求項1に記載のタービンノズルセクタ。
【請求項3】
前記空気出口孔(130)が面積8mm以下の出口セクションを含む、請求項1または2に記載のタービンノズルセクタ。
【請求項4】
前記部品が、ろう付けにより外側プラットフォームセグメント(102)に固定された金属プレート(140)である、請求項1から3のいずれか一項に記載のタービンノズルセクタ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかのタービンノズルセクタ(110)を備えるステップ、および
気体技術を使用して、前記セクタ上に保護皮膜を蒸着させるステップであって、その結果、蒸着に使用されたガスの一部が空気出口孔(130)を通過し、孔(130)の近傍に位置する空洞(106)の壁が保護皮膜で覆われるステップ
を備える製造方法。
【請求項6】
前記保護皮膜がアルミニウムの皮膜である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
ノズルを備える少なくとも1つのタービンを含むターボ機械であって、ノズルが請求項1から4のいずれか一項に記載の複数のノズルセクタ(110)を組み立てた結果形成されたものである、ターボ機械。
【請求項8】
ターボ機械が、高圧タービンおよび低圧タービンを有する2スプールのターボジェットであり、前記ノズルが、タービンを通過する空気流の通常の流れ方向の第1のノズルである低圧タービンのノズルである、請求項7に記載のターボ機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−41566(P2009−41566A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−201496(P2008−201496)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】