説明

タービンハウジング

【課題】出口側フランジに連結された下流側排気系部品からの外力による影響を受けてタービンハウジングが変形し易い状況にあったとしても、ウェイストゲート弁の開弁開始圧力をほぼ正確に維持することが可能なタービンハウジングを提供する。
【解決手段】ハウジング本体10は、出口ポート13、ウェイストゲートポート(ウェイストゲート弁34の下)及びブッシュ取付部を有する。ハウジング本体10には、ブッシュ31、シャフト、ウェイストゲート弁34及びリンク部材35からなるウェイストゲート機構30が装着されている。ハウジング本体10の排気ガス出口側に設けられた出口側フランジ23を正面視したときに、リンク部材35における過給圧制御アクチュエータとの連結部中心Pが出口ポート13の中心とウェイストゲートポートの中心とを通る仮想線L上に位置するように、ブッシュ31がハウジング本体10に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャーの排気タービン側の一構成要素であるタービンハウジングに関する。特に、ウェイストゲート弁を含むウェイストゲート機構が装着されるタービンハウジングの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車エンジン用のターボチャージャーは、同軸連結された排気タービン及びコンプレッサ、並びに、コンプレッサによる過給圧が設定圧を超えるのを防止するための過給圧制御機構を備えている。過給圧制御機構は、コンプレッサ側の圧力変化に応答するダイアフラム及び過給圧設定バネを内蔵した過給圧制御アクチュエータ、並びに、そのアクチュエータにロッドを介して作動連結された排気タービン側のウェイストゲート機構から構成される。例えば図10に示すように、ウェイストゲート機構30は、排気タービンのタービンハウジングに設けられたウェイストゲートポートを開閉するウェイストゲート弁34、タービンハウジングに取り付けられるブッシュ31、そのブッシュに支持されたシャフト及びそのシャフトと前記ロッドとを連結するリンク部材35から構成される。そして、過給圧が設定圧を超えそうになると、過給圧制御アクチュエータがロッド、リンク部材35及びシャフトを介してウェイストゲート弁34を開動作することにより、排気タービンに向かう排気ガスがウェイストゲートポートからタービンハウジングの出口側にバイパスされ、その結果、排気タービンのオーバーランが未然防止される仕組みになっている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
従来のタービンハウジングは比較的厚肉で機械的剛性が非常に高かった。このため、タービンハウジングの出口側に設けられた出口側フランジに連結された下流側排気系部品(例えばエルボやマニバータ)が熱変形等したとしても、その影響を受けてタービンハウジングが変形等することはなかった。いわんや、タービンハウジングに連結された下流側排気系部品の熱変形等がウェイストゲート機構に悪影響を及ぼすことなどなかった。
【0004】
ところが近年、自動車用エンジンの低温始動時における排気ガス浄化触媒の早期活性化実現のために、排気系部品の低熱容量化が重要な技術的課題とされるようになり、タービンハウジングも薄肉化が図られるようになった(例えば特許文献3参照)。しかし、タービンハウジングの薄肉化は同時に機械的剛性の低下をもたらし、そのマイナス面として、タービンハウジングの出口側フランジに連結された下流側排気系部品の熱変形等の影響を受けてタービンハウジングまでもが変形するという困った事態を招いた。特に、ターボチャージャーの作動中にタービンハウジングが変形すると、ウェイストゲート弁の開弁開始圧力が不本意にも初期設定からずれてしまい、設計通りの過給圧制御ができないという問題に直面した。より具体的には、外力によってタービンハウジングに予期せぬ捩れが生ずると、ハウジング本体に取り付けられたブッシュが本来あるべき位置からずれ、その影響でブッシュに支持されているシャフトもあらぬ位置にずれてしまう。その結果、過給圧制御アクチュエータの動作をウェイストゲート弁に伝達するリンク経路(つまりロッド、リンク部材及びシャフト)に機械的連結の乱れや動作不良が生じ、ウェイストゲート弁の開弁開始圧力が狂ってしまう。本発明はかかる事情に鑑みてなされたものである。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−117322号公報
【特許文献2】実開昭63−100635号公報及びその全文明細書
【特許文献3】特開2003−56354号公報(要約、第0003段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、出口側フランジに連結された下流側排気系部品からの外力による影響を受けてタービンハウジングが変形し易い状況にあったとしても、外力による変形の影響を受けることなくウェイストゲート弁の開弁開始圧力をほぼ正確に維持することが可能なタービンハウジングを提供することにある。
【0007】
また、出口側フランジに連結された下流側排気系部品からの外力による影響を受けてタービンハウジングが変形し易い状況にあったとしても、外力による変形の影響を緩和してウェイストゲート弁の開弁開始圧力のずれを比較的小さくとどめることが可能なタービンハウジングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、実車搭載時に、タービンハウジングの出口側フランジに連結された下流側排気系部品(例えばエルボやマニバータ)が熱膨張等による変形に基づいてタービンハウジングに及ぼす外力と、その外力の影響を受けてタービンハウジングがどのように変形するかを入念に解析した。その結果、タービンハウジングの出口側フランジが、タービン室の排気ガス出口である出口ポートを区画しているハウジング本体の第1柱状部及びタービン室の上流側をタービン室の出口側に連通させるウェイストゲートポートを区画しているハウジング本体の第2柱状部を介して、タービン室を区画しているハウジング本体の主要部に一体化されているために、出口側フランジを正面とする方向から視たときに上記第1柱状部の中心と第2柱状部の中心とを通る直線として把握されるところの仮想線(L)を中心軸として、下流側排気系部品に連結されたタービンハウジングを傾かせようとする力(即ちタービンハウジングに捩れを生じさせようとする力)が働くことを見い出した。本発明は、かかる新規な技術的知見に基づくものである。
【0009】
本発明(請求項1、2及び3)は、タービン室、タービン室の排気ガス出口である出口ポート、タービン室の上流側をタービン室の出口側に連通させるウェイストゲートポート及びそのウェイストゲートポートの近傍に設けられたブッシュ取付部を有するハウジング本体と、前記ハウジング本体に対し下流側排気系部品を連結させるためにハウジング本体の出口側に設けられた出口側フランジと、前記ブッシュ取付部に取り付けられるブッシュ、該ブッシュに支持されたシャフト、該シャフトの一端に設けられた前記ウェイストゲートポートを開閉するウェイストゲート弁及び該シャフトの他端に設けられたリンク部材を有するウェイストゲート機構とを備えてなるタービンハウジングに関するものである。
【0010】
請求項1のタービンハウジングでは、前記ウェイストゲート機構を構成するリンク部材における過給圧制御アクチュエータとの連結部(P)が、前記出口側フランジを正面とする方向から視たときに、出口ポートの中心とウェイストゲートポートの中心とを通る仮想線(L)上に位置するか又は当該仮想線(L)に極力近づくように、前記ウェイストゲート機構のブッシュが前記ハウジング本体のブッシュ取付部に取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項1によれば、リンク部材における過給圧制御アクチュエータとの連結部(P)が、出口側フランジを正面視したときの出口ポート中心とウェイストゲートポート中心とを通る仮想線(L)上に位置するか又は当該仮想線(L)に極力近くなるように位置設定されている(図5参照)。それ故、仮に出口側フランジに連結された下流側排気系部品が熱膨張等による変形に基づきタービンハウジングに外力を及ぼしたとしても、当該外力に起因するハウジング捩れの中心軸である上記仮想線(L)上又はその極近傍にリンク部材における過給圧制御アクチュエータとの連結部(P)が位置するため、当該連結部(P)は本質的に位置ずれしにくい。つまり、下流側排気系部品が熱膨張等による変形を起こす前と後とで、リンク部材における過給圧制御アクチュエータとの連結部(P)の絶対位置はあまり変化しない。このように、タービンハウジングに装着されたウェイストゲート機構のリンク部材と過給圧制御アクチュエータとの間の機械的連結関係は常に一定に保たれるので、下流側排気系部品からの外力によりタービンハウジングに捩れが生じたとしても、ウェイストゲート弁の開弁開始圧力に大きな狂いが生ずることが防止される。
【0012】
請求項2のタービンハウジングでは、前記ウェイストゲート機構を構成するリンク部材における前記シャフトとの連結部(Q)が、前記出口側フランジを正面とする方向から視たときに、出口ポートの中心とウェイストゲートポートの中心とを通る仮想線(L)上に位置するか又は当該仮想線(L)に極力近づくように、前記ウェイストゲート機構のブッシュが前記ハウジング本体のブッシュ取付部に取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項2によれば、リンク部材におけ前記シャフトとの連結部(Q)が、出口側フランジを正面視したときの出口ポート中心とウェイストゲートポート中心とを通る仮想線(L)上に位置するか又は当該仮想線(L)に極力近くなるように位置設定されている(図7,8参照)。それ故、仮に出口側フランジに連結された下流側排気系部品が熱膨張等による変形に基づきタービンハウジングに外力を及ぼしたとしても、当該外力に起因するハウジング捩れの中心軸である上記仮想線(L)上又はその極近傍にリンク部材におけるシャフトとの連結部(Q)が位置するため、当該連結部(Q)は本質的に位置ずれしにくい。つまり、下流側排気系部品が熱膨張等による変形を起こす前と後とで、リンク部材におけるシャフトとの連結部(Q)の絶対位置はあまり変化しない。このように、タービンハウジングに装着されたウェイストゲート機構のシャフトと、リンク部材を介した過給圧制御アクチュエータとの間の機械的連結関係は常に一定に保たれるので、下流側排気系部品からの外力によりタービンハウジングに捩れが生じたとしても、ウェイストゲート弁の開弁開始圧力に大きな狂いが生ずることが防止される。
【0014】
請求項3のタービンハウジングでは、前記ウェイストゲート機構を構成するリンク部材における過給圧制御アクチュエータとの連結部(P)と前記シャフトとの連結部(Q)との間にあるリンク部材の中間部が、前記出口側フランジを正面とする方向から視たときに、出口ポートの中心とウェイストゲートポートの中心とを通る仮想線(L)上に位置するように、前記ウェイストゲート機構のブッシュが前記ハウジング本体のブッシュ取付部に取り付けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項3によれば、出口側フランジを正面視したときの出口ポート中心及びウェイストゲートポート中心を通る仮想線(L)が、ウェイストゲート機構を構成するリンク部材における過給圧制御アクチュエータとの連結部(P)とシャフトとの連結部(Q)との間を通っている(図9参照)。請求項3の構成は、請求項1の構成と請求項2の構成との中間状態の構成と言える。この構成によれば、出口側フランジに連結された下流側排気系部品が熱膨張等による変形に基づきタービンハウジングに外力を及ぼした場合、当該外力に起因するハウジング捩れの中心軸である上記仮想線(L)上にリンク部材における過給圧制御アクチュエータとの連結部(P)もシャフトとの連結部(Q)も位置しないことから、これらの連結部(P,Q)はいずれも、下流側排気系部品が熱膨張等による変形を起こす前と後とで明らかに位置ずれを起こす。但し、これら両連結部の間を上記仮想線(L)が通過するという構造を採用したことで、両連結部の位置ずれの程度は比較的小さく抑制される。従って、下流側排気系部品からの外力によりタービンハウジングに捩れが生じたとしても、ウェイストゲート弁の開弁開始圧力の変化は小さくとどめられる。
【0016】
[付記]本発明の更に好ましい態様や追加的構成要件を以下に列挙する。
・請求項1、2又は3において、前記仮想線(L)は、前記出口側フランジを正面とする方向から視たときに出口ポートの中心とウェイストゲートポートの中心とを通る直線として把握されるところの仮想線(L)であること。また、仮想線(L)は、ハウジング捩れの中心軸となる仮想線(L)であること。
・請求項1、2又は3において、前記出口ポート及びウェイストゲートポートは、前記出口側フランジによって囲まれた出口側空間(S)に開口していること。
【発明の効果】
【0017】
請求項1及び2に記載のタービンハウジングによれば、出口側フランジに連結された下流側排気系部品からの外力による影響を受けてタービンハウジングが変形し易い状況にあったとしても、外力による変形の影響を受けることなくウェイストゲート弁の開弁開始圧力をほぼ正確に維持することができる。また、その結果として、タービンハウジングの薄肉化を図ることが極めて容易になる。
【0018】
請求項3に記載のタービンハウジングによれば、出口側フランジに連結された下流側排気系部品からの外力による影響を受けてタービンハウジングが変形し易い状況にあったとしても、外力による変形の影響を緩和してウェイストゲート弁の開弁開始圧力のずれを比較的小さくとどめることができる。また、その結果として、タービンハウジングの薄肉化を図ることが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のいくつかの実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1〜図4は第1実施形態のタービンハウジング(単体)を示し、図5及び図6はそれにウェイストゲート機構を装着したタービンハウジングを示す。尚、図1及び図5は出口側フランジ23を正面とする方向からタービンハウジングを視たときの正面図である。
【0021】
図1〜図4に示すように、タービンハウジングは、内部にタービン室(図示略)を区画形成するスクロール部11と、その正面側に設けられた出口ケース部12とを有する。スクロール部11と出口ケース部12とは、タービン室の排気ガス出口である出口ポート13を区画する第1柱状部14及びタービン室の上流側をタービン室の出口側に連通させるウェイストゲートポート15を区画する第2柱状部16を介して連結されており、出口ケース部12の正面側には、出口ポート13及びウェイストゲートポート15がそれぞれ開口している。出口ケース部12の正面側に開口したウェイストゲートポート15の周縁には、ウェイストゲート弁34(図5参照)を着座させるためのバルブ座面17が環状に形成されている。また、出口ケース部12にはウェイストゲートポート15の近傍において、ブッシュ31(図5参照)を装着するための穴18aが貫通形成されたブッシュ取付部18が設けられている。スクロール部11、出口ケース部12、第1柱状部14、第2柱状部16及びブッシュ取付部18により、ハウジング本体10が構成されている。
【0022】
スクロール部11の底部には、ハウジング本体10に対し上流側排気系部品(例えば排気マニホルド)を連結するための入口側フランジ21が設けられている(図3参照)。入口側フランジ21のほぼ中央には、エンジンからの排気ガスをタービン室に導入するための入口ポート22が形成されている。なお、入口ポート22に進入した排気ガスは通常、タービン室を経由して前記出口ポート13に向かうが、ウェイストゲートポート15が開いている場合、排気ガスの一部がウェイストゲートポート15を介してタービン室の出口側にバイパスされる。
【0023】
出口ケース部12の正面には、ハウジング本体10に対し下流側排気系部品(例えばエルボやマニバータ)を連結するための出口側フランジ23が設けられている。出口側フランジ23には、下流側排気系部品側のフランジと接合するための接合面23aが形成されている。出口ケース部12及びブッシュ取付部18に一体化された出口側フランジ23は、それによって囲まれた内側領域に出口側空間Sを区画形成しており、前記出口ポート13及びウェイストゲートポート15は当該出口側空間Sに開口している。そして本実施形態では、図1のように出口側フランジ23を正面視したときに、出口側フランジ23によって囲まれた出口側空間Sに開口した出口ポート13及びウェイストゲートポート15の各々の中心を真っ直ぐに通る仮想線Lを想定することができる。この仮想線Lは、出口側フランジ23に連結された下流側排気系部品が熱膨張等による変形に基づきタービンハウジングに外力を及ぼしたときに、当該外力に起因するハウジング捩れの中心軸となるものである。
【0024】
本明細書及び図面では、ハウジング捩れの中心軸としての仮想線Lを、図1のような出口側フランジ23を正面視する正面図の紙面上に投影した直線として描くと共に、そのような二次元的紙面に投影された状態の直線として把握している。本来、個々の具体的なタービンハウジングでは、ハウジング捩れの中心軸たる仮想線Lの三次元空間内での絶対座標は一義的に定まるものであるが、一般に仮想線Lの三次元座標は、第1及び第2柱状部14,16の長さや太さ、あるいは入口側フランジ21と出口側フランジ23との相対位置関係などの様々な要因によって影響を受けるため、仮想線Lの三次元絶対座標は個々のタービンハウジングごとに異なるのが実情である。但し、第1及び第2柱状部の長さや太さ、出口側フランジと入口側フランジとの相対位置関係などといった要因が仮想線Lの三次元絶対座標に影響を及ぼすものであるとしても、少なくとも、出口側フランジ23を正面とする方向からこれを正面視するというときには(つまり二次元紙面上への投影状態では)、ハウジング捩れの中心軸たる仮想線Lは出口ポート13及びウェイストゲートポート15の各々の中心を真っ直ぐに通る直線であるという条件を満たす、というのが本発明の前提となる技術的知見である。本発明を理解するにあたっては、この点を十分念頭に置く必要がある(後記第2及び第3実施形態においても同じ)。
【0025】
図1〜図4に示す単体のタービンハウジングに対しては、図5及び図6に示すように、ウェイストゲート機構30が装着される。ウェイストゲート機構30は、筒状の軸受け部材であるブッシュ31、そのブッシュ31に支持されたシャフト32(図6にシャフト32の端面を図示)、弁腕33、皿型弁であるウェイストゲート弁34及び短いレバー状のリンク部材35から構成されている。
【0026】
ブッシュ31は前記ブッシュ取付部の穴18aに圧入装着され、シャフト32を回動可能に支持する。ブッシュ31と共にシャフト32は出口ケース部12を貫通しており、シャフト32の一端は出口側空間S内に配置され、他端はタービンハウジングの外に配置されている。出口側空間S内に進入したシャフト32の一端部には、弁腕33を介してウェイストゲート弁34が取り付けられている。また、タービンハウジングの外に突出したシャフト32の他端部には、短いレバー状のリンク部材35の一端部が固着されている。シャフト32と一体化したリンク部材35は、シャフト32の中心軸線Cに対して直交する方向に延びている。なお、短いレバー状のリンク部材35にあってシャフト32に連結された端部とは反対側の端部には、当該リンク部材35と過給圧制御アクチュエータ36とを作動連結するアクチュエータロッド37の先端部が連結される(図6参照)。
【0027】
そして本実施形態では、前記ウェイストゲートポート15を縁取っているバルブ座面17に着座したときのウェイストゲート弁34の中心が、ウェイストゲートポート15の中心にほぼ重なるように弁腕33の長さが設定されている。また、出口側フランジ23を正面視したときに、リンク部材35におけるアクチュエータロッド37との連結部中心Pが、前記出口ポート13の中心とウェイストゲートポート15の中心とを通る仮想線L上に位置するように、ブッシュ取付部18の穴18aの位置及び向き並びにリンク部材35の長さが設定されている。
【0028】
第1実施形態では、リンク部材35におけるアクチュエータロッド37との連結部中心Pが、出口側フランジ23を正面視したときの出口ポート13の中心及びウェイストゲートポート15の中心を通る仮想線L上に位置するように、ウェイストゲート機構30がハウジング本体10に装着されている。このため、出口側フランジ23に連結された下流側排気系部品が熱膨張等による変形に基づきタービンハウジングに外力を及ぼしたとしても、当該外力に起因するハウジング捩れの中心軸である仮想線L上に上記連結部中心Pが位置するため、当該連結部中心Pは本質的に位置ずれしない。従って、下流側排気系部品からの外力によりタービンハウジングに捩れが生じたとしても、ウェイストゲート弁34の開弁開始圧力が変化することはない。
【0029】
[第2実施形態]
図7及び図8は、第2実施形態のタービンハウジング(ウェイストゲート機構30装着済み)を示し、いずれの図面も出口側フランジ23を正面視したときの正面図である。図7の例と図8の例とではウェイストゲート機構30の装着態様が一見異なるが、以下に説明するようにウェイストゲート機構30の装着に関する基本的な考え方は両者で共通しており、その意味で同じ範疇の実施形態として分類される。
【0030】
第2実施形態のタービンハウジングは、前記第1実施形態と同様、スクロール部11、出口ケース部12、第1柱状部14、第2柱状部16及びブッシュ取付部18から構成されるハウジング本体10、並びに、ブッシュ31、シャフト32、弁腕33、皿型弁としてのウェイストゲート弁34及び短いレバー状のリンク部材35から構成されるウェイストゲート機構30を備えている。また、出口側フランジ23を正面視したときに、出口側フランジ23によって囲まれた出口側空間Sに開口した出口ポート13及びウェイストゲートポート15の各々の中心を真っ直ぐに通るところの、ハウジング捩れの中心軸としての仮想線Lを想定することができる点も、前記第1実施形態と同様である。
【0031】
第2実施形態のタービンハウジングは、次の点で前記第1実施形態とは異なる。即ち、出口側フランジ23を正面視したときに、シャフト32(図中、Cは該シャフトの中心軸線)の外端位置にあるところの、リンク部材35におけるシャフト32との連結部中心Qが、出口ポート13の中心とウェイストゲートポート15(ウェイストゲート弁34の下に隠れている)の中心とを通る仮想線L上に位置するように、ブッシュ取付部18の穴18aの位置及び向きが設定されている。なお、かかる事情は図7と図8とで全く同じであり、両者の違いは、図7の例ではブッシュ31及びブッシュ取付部18が仮想線Lよりも上に配置されているのに対し、図8の例ではブッシュ31及びブッシュ取付部18が仮想線Lよりも下に配置されているという点にあるに過ぎない。
【0032】
図7及び図8の第2実施形態では、リンク部材35におけるシャフト32との連結部中心Qが、出口側フランジ23を正面視したときの出口ポート13の中心及びウェイストゲートポート15の中心を通る仮想線L上に位置するように、ウェイストゲート機構30がハウジング本体10に装着されている。このため、出口側フランジ23に連結された下流側排気系部品が熱膨張等による変形に基づきタービンハウジングに外力を及ぼしたとしても、当該外力に起因するハウジング捩れの中心軸である仮想線L上に上記連結部中心Qが位置するため、当該連結部中心Qは本質的に位置ずれしない。従って、下流側排気系部品からの外力によりタービンハウジングに捩れが生じたとしても、ウェイストゲート弁34の開弁開始圧力が変化することはない。
【0033】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態のタービンハウジング(ウェイストゲート機構30装着済み)を示し、出口側フランジ23を正面視したときの正面図である。なお、上記第1及び第2実施形態は本発明のベストモードであるとの位置付けに対し、この第3実施形態は本発明のベターモードと位置付けられる。
【0034】
第3実施形態のタービンハウジングは、前記第1実施形態と同様、スクロール部11、出口ケース部12、第1柱状部14、第2柱状部16及びブッシュ取付部18から構成されるハウジング本体10、並びに、ブッシュ31、シャフト32、弁腕33、皿型弁としてのウェイストゲート弁34及び短いレバー状のリンク部材35から構成されるウェイストゲート機構30を備えている。また、出口側フランジ23を正面視したときに、出口側フランジ23によって囲まれた出口側空間Sに開口した出口ポート13及びウェイストゲートポート15の各々の中心を真っ直ぐに通るところの、ハウジング捩れの中心軸としての仮想線Lを想定することができる点も、前記第1実施形態と同様である。
【0035】
第3実施形態のタービンハウジングは、次の点で前記第1実施形態とは異なる。即ち、出口側フランジ23を正面視したときに、リンク部材35におけるアクチュエータロッド37との連結部中心Pとシャフト32との連結部中心Qとの間にあるリンク部材35の中間部が、出口ポート13の中心とウェイストゲートポート15(ウェイストゲート弁34の下に隠れている)の中心とを通る仮想線L上に位置するように、ブッシュ取付部18の穴18aの位置及び向き並びにリンク部材35の長さが設定されている。つまり図9において、出口ポート中心とウェイストゲートポート中心とを結ぶ仮想線Lが過給圧制御アクチュエータ36との連結部中心Pとシャフト32との連結部中心Qとの間を通るように、ブッシュ31が取り付けられている。この第3実施形態の構成は、第1実施形態と第2実施形態との中間的構成とみることもできる。
【0036】
第3実施形態では、出口側フランジ23に連結された下流側排気系部品が熱膨張等による変形に基づきタービンハウジングに外力を及ぼした場合、当該外力に起因するハウジング捩れの中心軸である仮想線L上にリンク部材35の上記連結部中心PもQも位置しないため、これら連結部中心P,Qはいずれも、下流側排気系部品が熱膨張等による変形を起こす前と後とで位置ずれを起こすことは避けられない。但し、両連結部中心P,Q間を仮想線Lが通るという次善策的構造を採用したことで、両連結部中心P,Qの位置ずれの程度は比較的小さく抑制される。従って、下流側排気系部品からの外力によりタービンハウジングに捩れが生じたとしても、ウェイストゲート弁34の開弁開始圧力の変化が小さくとどめられる。
【0037】
[従来例]
図10は、本発明の範疇の外にある従来型のタービンハウジングを示し、出口側フランジ23を正面視したときの正面図である。この従来例にあっても、出口側フランジ23を正面視したときに、出口側フランジ23によって囲まれた出口側空間Sに開口した出口ポート13及びウェイストゲートポート15(ウェイストゲート弁34の下に隠れている)の各々の中心を真っ直ぐに通るところの、ハウジング捩れの中心軸としての仮想線Lを想定することができる点は、前記第1〜第3実施形態と同様である。但し図10に示すように、従来例にあっては、ブッシュ31及びブッシュ取付部18が上記仮想線Lから離れた位置に設けられており、その結果、上記仮想線Lは、リンク部材35におけるアクチュエータロッド37との連結部中心Pもシャフト32との連結部中心Qも通っておらず、又、連結部中心Pと連結部中心Qとの間も通っていない。
【0038】
図10の従来例によれば、出口側フランジ23に連結された下流側排気系部品が熱膨張等による変形に基づきタービンハウジングに外力を及ぼした場合、当該外力に起因するハウジング捩れの中心軸である仮想線Lからかなり離れた位置にリンク部材35の上記連結部中心P及びQが位置するため、これら連結部中心P,Qは、下流側排気系部品が熱膨張等による変形を起こす前と後とでかなり大きな位置ずれを起こす。その位置ずれの程度は上記第3実施形態の場合よりもはるかに大きい。従って、図10のタービンハウジングには本質的に、下流側排気系部品からの外力によりタービンハウジングに捩れが生じたとき、ウェイストゲート弁34の開弁開始圧力が大きく変化するという問題がある。
【0039】
[変更例]:上記第1〜第3実施形態ではリンク部材35を短いレバー状の部材としたが、リンク部材35はレバー状の部材に限定されない。例えば、過給圧制御アクチュエータ36からシャフト32への動作伝達構造を、短いレバー状のリンク部材35とアクチュエータロッド37との組合せに代えてラックアンドピニオンで構成した場合には、シャフト32の端部に取り付けられるピニオンギアがリンク部材に相当することになる。
【0040】
[変更例]:上記第1〜第3実施形態では、仮想線Lは出口側フランジの接合面23aよりもスクロール部11寄りに位置していたが、仮想線Lが、出口側フランジの接合面23aと面一な平面内に含まれる直線であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1実施形態のタービンハウジング(単体)の正面図。
【図2】第1実施形態のタービンハウジング(単体)の右側面図。
【図3】第1実施形態のタービンハウジング(単体)の底面図。
【図4】第1実施形態のタービンハウジング(単体)の背面図。
【図5】第1実施形態のウェイストゲート機構付きタービンハウジングの正面図。
【図6】第1実施形態のウェイストゲート機構付きタービンハウジングの右側面図。
【図7】第2実施形態のウェイストゲート機構付きタービンハウジングの正面図。
【図8】第2実施形態のウェイストゲート機構付きタービンハウジングの正面図。
【図9】第3実施形態のウェイストゲート機構付きタービンハウジングの正面図。
【図10】従来例のウェイストゲート機構付きタービンハウジングの正面図。
【符号の説明】
【0042】
10…ハウジング本体、13…出口ポート、15…ウェイストゲートポート、18…ブッシュ取付部、21…入口側フランジ、23…出口側フランジ、30…ウェイストゲート機構、31…ブッシュ、32…シャフト、33…弁腕、34…ウェイストゲート弁、35…リンク部材、36…過給圧制御アクチュエータ、37…アクチュエータロッド、C…シャフトの中心軸線、L…出口ポート中心とウェイストゲートポート中心とを通る仮想線、P…リンク部材における過給圧制御アクチュエータとの連結部中心、Q…リンク部材におけるシャフトとの連結部中心、S…出口側空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン室、タービン室の排気ガス出口である出口ポート、タービン室の上流側をタービン室の出口側に連通させるウェイストゲートポート及びそのウェイストゲートポートの近傍に設けられたブッシュ取付部を有するハウジング本体と、
前記ハウジング本体に対し下流側排気系部品を連結させるためにハウジング本体の出口側に設けられた出口側フランジと、
前記ブッシュ取付部に取り付けられるブッシュ、該ブッシュに支持されたシャフト、該シャフトの一端に設けられた前記ウェイストゲートポートを開閉するウェイストゲート弁及び該シャフトの他端に設けられたリンク部材を有するウェイストゲート機構と
を備えてなるタービンハウジングにおいて、
前記ウェイストゲート機構を構成するリンク部材における過給圧制御アクチュエータとの連結部(P)が、前記出口側フランジを正面とする方向から視たときに、出口ポートの中心とウェイストゲートポートの中心とを通る仮想線(L)上に位置するか又は当該仮想線(L)に極力近づくように、前記ウェイストゲート機構のブッシュが前記ハウジング本体のブッシュ取付部に取り付けられていることを特徴とするタービンハウジング。
【請求項2】
タービン室、タービン室の排気ガス出口である出口ポート、タービン室の上流側をタービン室の出口側に連通させるウェイストゲートポート及びそのウェイストゲートポートの近傍に設けられたブッシュ取付部を有するハウジング本体と、
前記ハウジング本体に対し下流側排気系部品を連結させるためにハウジング本体の出口側に設けられた出口側フランジと、
前記ブッシュ取付部に取り付けられるブッシュ、該ブッシュに支持されたシャフト、該シャフトの一端に設けられた前記ウェイストゲートポートを開閉するウェイストゲート弁及び該シャフトの他端に設けられたリンク部材を有するウェイストゲート機構と
を備えてなるタービンハウジングにおいて、
前記ウェイストゲート機構を構成するリンク部材における前記シャフトとの連結部(Q)が、前記出口側フランジを正面とする方向から視たときに、出口ポートの中心とウェイストゲートポートの中心とを通る仮想線(L)上に位置するか又は当該仮想線(L)に極力近づくように、前記ウェイストゲート機構のブッシュが前記ハウジング本体のブッシュ取付部に取り付けられていることを特徴とするタービンハウジング。
【請求項3】
タービン室、タービン室の排気ガス出口である出口ポート、タービン室の上流側をタービン室の出口側に連通させるウェイストゲートポート及びそのウェイストゲートポートの近傍に設けられたブッシュ取付部を有するハウジング本体と、
前記ハウジング本体に対し下流側排気系部品を連結させるためにハウジング本体の出口側に設けられた出口側フランジと、
前記ブッシュ取付部に取り付けられるブッシュ、該ブッシュに支持されたシャフト、該シャフトの一端に設けられた前記ウェイストゲートポートを開閉するウェイストゲート弁及び該シャフトの他端に設けられたリンク部材を有するウェイストゲート機構と
を備えてなるタービンハウジングにおいて、
前記ウェイストゲート機構を構成するリンク部材における過給圧制御アクチュエータとの連結部(P)と前記シャフトとの連結部(Q)との間にあるリンク部材の中間部が、前記出口側フランジを正面とする方向から視たときに、出口ポートの中心とウェイストゲートポートの中心とを通る仮想線(L)上に位置するように、前記ウェイストゲート機構のブッシュが前記ハウジング本体のブッシュ取付部に取り付けられていることを特徴とするタービンハウジング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−56774(P2007−56774A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243522(P2005−243522)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】