説明

ターボ機械圧縮機ホイール部材

【課題】ターボ機械に関する。
【解決手段】本ターボ機械は、ホイール部材を備えたロータ組立体(12)を含む。ホイール部材は、中間部分(25)を通って第2の部分(24)まで延びる第1の部分(23)を含む。中間部分(25)は、第1のホイールスペース(26)及び第2のホイールスペース(27)を部分的に形成する。ホイール部材はさらに、第2の部分(24)に配置されたロータ慣性ベルト部材(30)を含む。ロータ慣性ベルト部材(30)は、抽出空気空洞(38)を含む。抽出空気空洞(38)は、入口(54)と、入口セクション(63)及び第1のホイールスペース(26)内に至る出口セクション(64)を各々が備えた第1の複数の抽出空気通路(57)と、入口部分(70)及び第2のホイールスペース(27)内に至る出口部分(71)を各々が備えた第2の複数の抽出空気通路(58)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械の技術に関し、より具体的には、ターボ機械圧縮機ホイール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来型のターボ機械では、圧縮機から空気を抽出して、例えばタービンブレード及びノズルのようなより高温の構成要素を冷却する。空気は一般的に、圧縮機の入口に可能な限り近接した箇所から抽出して、依然として供給源とシンク圧力との間で十分な逆流マージンを維持した状態にする。抽出の軸方向位置が後方に移動するにつれて、ターボ機械効率が低下する。つまり、抽出が一層後方になればなるほど、より多くの仕事量が抽出空気内に持込まれる。この仕事量は利用されないので、ターボ機械の全体効率が低下する。
【0003】
一部のケースでは、ステータケーシングを通して半径方向外向きによりもロータの中心線に向けて半径方向内向きに空気を抽出することが望ましい。半径方向内向きに空気を抽出する場合には、空気は、ロータの慣性ベルト部分を通過しなければならない。慣性ベルトは、ロータの断面積であり、この断面積は、重力及び内部軸方向応力によるサグを支持する能力に影響を与える。抽出空気流量を増加させるためには、抽出箇所の寸法は、拡大しなければならない。抽出箇所の寸法を拡大することは、ロータの周辺部から付加的に材料を除去することを必要とする。この材料喪失により慣性ベルトが減少し、このことが次に、重力サグ及び応力を増大させる。その目的のために、ロータの構造的完全性を損なわずに抽出することができる空気の量には、限界があることになる。流れ面積を増大させる1つの方法は、孔の1つのアレイではなく軸方向に間隔を置いて配置した孔の2つ又はそれ以上のアレイを有することである。しかしながら、この構成は、ロータ及びステータの両方の製造コストを増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7017349号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様によると、ターボ機械は、少なくとも1つのホイール部材を有するロータ組立体を含む。少なくとも1つのホイール部材は、中間部分を通って第2の部分まで延びる第1の部分を含む。中間部分は、第1のホイールスペース及び第2のホイールスペースを部分的に形成する。少なくとも1つのホイール部材はさらに、第2の部分に配置されたロータ慣性ベルト部材を含む。ロータ慣性ベルト部材は、抽出空気空洞を含む。抽出空気空洞は、入口と、入口に流体連結された入口セクション及び第1のホイールスペース内に至る出口セクションを各々が備えた第1の複数の抽出空気通路と、入口に流体連結された入口部分及び第2のホイールスペース内に至る出口部分を各々が備えた第2の複数の抽出空気通路とを含む。
【0006】
本発明の別の態様によると、ターボ機械から空気を抽出する方法は、ロータ慣性ベルト部材内に形成された抽出空気空洞内に空気流を導くステップと、空気流の第1の部分をロータ慣性ベルト部材内に形成された第1の複数の抽出空気通路を通して流すステップとを含む。第1の複数の抽出空気通路は、抽出空気空洞と第1のホイールスペースとの間で延びている。本方法はさらに、空気流の第2の部分をロータ慣性ベルト部材内に形成された第2の複数の抽出空気通路を通して流すステップを含む。第2の複数の抽出空気通路は、抽出空気空洞と第2のホイールスペースとの間で延びている。
【0007】
これらの及びその他の利点並びに特徴は、図面と関連させて行った以下の説明から一層明らかになるであろう。
【0008】
本発明は、本明細書と共に提出した特許請求の範囲において具体的に指摘しかつ明確に特許請求している。本発明の前述の及びその他の特徴並びに利点は、添付図面と関連させて行った以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】例示的な実施形態による複数の圧縮機ホイール部材を備えたターボ機械の部分断面図。
【図2】図1の複数の圧縮機ホイール部材の1つの下方左側斜視図。
【図3】図2の圧縮機ホイール部材の部分断面図。
【図4】別の例示的な実施形態により構成された圧縮機ホイール部材の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明は、図面を参照しながら実施例によって、本発明の実施形態をその利点及び特徴と共に説明する。
【0011】
図1を参照すると、本発明の例示的な実施形態により構成したターボ機械は、その全体を参照符号2で示している。ターボ機械2は、圧縮機4と燃焼器組立体5とを有し、燃焼器組立体5は、噴射ノズル組立体ハウジング8とタービン10につながった燃焼チャンバ9とを備えた少なくとも1つの燃焼器6を有する。ターボ機械2はまた、空気流路21に沿って配置された、その1つを参照符号20で示した複数のロータ又はホイール部材を備えたロータ組立体12を含む。この図示した例示的な実施形態では、ホイール部材20は、少なくとも1つの軸方向ボルト22によって連結される。当然ながら、ホイール部材20はまた、溶接法又はその他の構成要素結合法によっても連結することができることを理解されたい。ホイール部材は、圧縮機4の様々な段(別個には参照符号を付さず)を形成する。
【0012】
作動時に、空気は、圧縮機4を通って流れ、加圧されかつ燃焼器に流れる。同時に、燃焼器6に燃料を流して加圧空気と混合して、可燃混合気を形成する。可燃混合気は、燃焼チャンバ9に送られかつ点火されて燃焼ガスを形成する。燃焼ガスは次に、タービン10に送られる。燃焼ガスからの熱エネルギーが、ロータ組立体に対して使用する機械的回転エネルギーに変換される。上記の説明は、完全を期すためにかつホイール部材20の具体的な構造及び作動に関する例示的な実施形態の一層明瞭な理解を可能にするために提示したものである。
【0013】
図2〜図3で最も良く分かるように、ホイール部材20は、中間部分25を通って第2の部分24まで延びる第1の部分23を含む。第1の部分23は、ホイール部材20の圧縮機/タービンシャフトとの間の接合部を構成したハブ(別個には参照符号を付さず)を形成する。中間部分25は、第1のホイールスペース26及び第2のホイールスペース27の一部を形成する。より具体的には、圧縮機4は、複数のホイール部材20の隣り合うホイール部材間に配置された複数のホイールスペース領域を含む。加えて、ホイール部材20は、中間部分25内に設けられた通路28を含む。通路28は、第1のホイールスペース26を第2のホイールスペース27と流体連結する。
【0014】
ホイール部材20はまた、第2の部分24に配置されたロータ慣性ベルト部材30を含むものとして示している。ロータ慣性ベルト部材30は、中央セクション34を通って第2の直径セクション33まで延びる第1の直径セクション32を含む。ロータ慣性ベルト部材30はさらに、中央セクション34内に配置された抽出空気空洞38を含む。加えて、ロータ慣性ベルト部材30は、抽出空気空洞38の両側に配置された第1のグルーブ/チャネル41及び第2のグルーブ/チャネル42を含む。各グルーブ/チャネル41、42は、圧縮機ブレード(別個には参照符号を付さず)を受けるように構成される。
【0015】
図3で最も良く分かるように、抽出空気空洞38は、ロータ慣性ベルト部材30の中央横平面55に沿って配置された入口54を含む。入口54は、抽出空気空洞38及びホイールスペース26間で延びる第1の複数の抽出空気通路57と、抽出空気空洞38及びホイールスペース27間で延びる第2の複数の抽出空気通路58とつながっている。第1の複数の抽出空気通路57の各々は、導管セクション66を通って出口セクション64まで延びる入口セクション63を含む。導管セクション66は、中央横平面55に対して第1の角度αで配置される。同様に、第2の複数の抽出空気通路58の各々は、導管部分73を通って出口部分71まで延びる入口部分70を含む。導管部分73は、中央横平面55に対して第2の角度βで配置される。この図示した例示的な実施形態では、第1の角度α及び第2の角度βは、ほぼ等しい。
【0016】
この構成では、抽出空気空洞38内に流れる抽出空気は、入口54を通って第1及び第2の複数の抽出空気通路57及び58に流れる。空気流は、各入口セクション63及び入口部分70内に分岐し、各導管セクション66及び各導管部分73を通ってそれぞれ第1及び第2のホイールスペース26及び27に向かって流れる。第1及び第2の複数の抽出空気通路を空気流路21から離れるように配置すること並びにロータ慣性ベルトを半径方向内向きに移動させることによって、ホイール部材20の寸法の対応する増大を必要とせずに全抽出空気量を増大させることができる。加えて、通路28の存在により、隣り合うホイールスペース間で抽出空気が自由に流れることができる。このようにして、この例示的な実施形態では、抽出面積を増大させるシステムが得られ、このシステムによると、圧縮機4から半径方向内向きに流れる抽出空気ボリュームの増加が可能になる。さらに、この抽出空気ボリュームの増加は、ホイール部材20の構造的完全性を犠牲にして成り立つものではない。いずれにしても、面積の増大は、高いマッハ数に関連する圧縮機4内での効率損失を低下させ、かつより低い供給源圧力及び/又はより少ない流量を使用することを可能にする。
【0017】
次に、別の例示的な実施形態により構成したホイール部材90を説明するのに、図4を参照する。図示するように、ホイール部材90は、中間部分94を通って第2の部分93まで延びる第1の部分(図示せず)を含む。上記したのと同様に、中間部分94には、通路(図示せず)を設けることができる。上記したのとこれもまた同様に、中間部分94は、第1のホイールスペース96及び第2のホイールスペース97の少なくとも一部を形成する。ホイール部材90はさらに、中央セクション108を通って第2の直径セクション107まで延びる第1の直径セクション106を有するロータ慣性ベルト部材104含む。ロータ慣性ベルト部材104は、中央セクション108内に形成された抽出空気空洞118を含む。この図示した例示的な実施形態では、抽出空気空洞118は、ロータ慣性ベルト部材104の中央横平面119からオフセットしている。これもまた図示するように、ロータ慣性ベルト部材104は、第1のグルーブ/チャネル121及び第2のグルーブ/チャネル122を含む。第1及び第2のグルーブ/チャネルは、圧縮機ブレード(別個には参照符号を付さず)のための取付け箇所を形成する。
【0018】
さらにこの図示した例示的な実施形態によると、抽出空気空洞118は、中央セクション108の中央横平面119からオフセットした入口128を含む。入口128は、抽出空気空洞118及び第1のホイールスペース96間で延びる第1の複数の抽出空気通路135と、抽出空気空洞118及び第2のホイールスペース97間で延びる第2の複数の抽出空気通路136とつながっている。図示するように、第1の複数の抽出空気通路135の各々は、導管セクション142を通って出口セクション140まで延びる入口セクション139を含む。導管セクション142は、中央横平面119に対して第1の角度Δで延びる。同様に、第2の複数の抽出空気通路136の各々は、中央軸線119に対して第2の角度πで配置された導管部分149を通って出口部分147まで延びる入口部分146を含む。図示するように、第1の角度Δは、第2の角度πよりも小さくて、第1の複数の抽出空気通路135は第2の複数の抽出空気通路136に対して非対称になる。
【0019】
抽出空気空洞118、入口128並びに抽出空気通路135及び136により形成された非対称性により、ホイール部材90から半径方向内向きの抽出流の自由な渦流発生が可能になり、それによって圧力損失を低減する。加えて、第1及び第2の複数の抽出空気通路を設けることによって、第1及び第2のホイールスペース96及び97内への抽出空気流量が増加する。最終的に、抽出空気通路の特有の位置及び配向により、中間部分94からの材料の除去を減少させ、それによって重力サグ及び関連する応力に対する影響を低下させるように、ホイール部材90を構成することが可能になる。
【0020】
この点において、本発明は、圧縮機ホイール部材の全体寸法及び耐久性に悪影響を与えずに、圧縮機内での抽出空気流量を増大させるシステムを提供することを理解されたい。加えて、抽出空気通路間に非対称性を構成することによって、圧縮機4のホイールスペース領域内における圧力損失を減少させ、それによって全体圧縮機効率を高める。加えて、これらの実施形態は、1つのタイプのターボ機械への実施に限定されるものではなく、広範囲なターボ機械モデルにおいて使用することができることを理解されたい。
【0021】
限られた数の実施形態に関してのみ本発明を詳細に説明してきたが、本発明がそのような開示した実施形態に限定されるものではないことは、容易に理解される筈である。むしろ、本発明は、これまで説明していないが本発明の技術思想及び技術的範囲に相応するあらゆる数の変形、変更、置換え又は均等な構成を組込むように改良することができる。さらに、本発明の様々な実施形態について説明してきたが、本発明の態様は説明した実施形態の一部のみを含むことができることを理解されたい。従って、本発明は、上記の説明によって限定されるものと見なすべきではなく、本発明は、特許請求の範囲の技術的範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0022】
2 ターボ機械
4 圧縮機
5 燃焼器組立体
6 燃焼器
8 噴射ノズル組立体ハウジング
10 タービン
12 ロータ組立体
20 ホイール部材
21 流路
22 軸方向ボルト
23 第1の部分
24 第2の部分
25 中間部分
26 第1のホイールスペース
27 第2のホイールスペース
28 軸方向開口部/通路
30 ロータ慣性ベルト部材
32 第1の直径セクション
33 第2の直径セクション
34 中央セクション
38 抽出空気空洞
41 第1のグルーブ/チャネル
42 第2のグルーブ/チャネル
54 入口
57 第1の複数の抽出空気通路
58 第2の複数の抽出空気通路
63 入口セクション
64 出口セクション
66 導管セクション
67 第1の角度α
70 入口部分
71 出口部分
73 導管部分
74 第2の角度β
90 第1の部分
93 第2の部分
94 中間部分
97 第2のホイールスペース
104 ロータ慣性ベルト部材
106 第1のホイールスペース
107 第2のホイールスペース
108 中央セクション
118 抽出空気空洞
119 中央軸線
121 第1のグルーブ/チャネル
122 第2のグルーブ/チャネル
128 入口(オフセット)
135 第1の複数の抽出空気通路
136 第2の複数の抽出空気通路
139 入口セクション
140 出口セクション
142 導管セクション
143 第1の角度Δ
146 入口部分
147 出口部分
149 導管部分
150 第2の角度π

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械(2)であって、当該ターボ機械が、
少なくとも1つのホイール部材(20)を備えたロータ組立体(12)を
備えており、前記少なくとも1つのホイール部材(20)が、
第1のホイールスペース(26)及び第2のホイールスペース(27)を部分的に形成した中間部分(25)を通って第2の部分(24)まで延びる第1の部分(23)と、
該少なくとも1つのホイール部材(20)の第2の部分(24)に配置されたロータ慣性ベルト部材(30)と
を有していて、前記ロータ慣性ベルト部材(30)が抽出空気空洞(38)を含み、前記抽出空気空洞(38)が、入口(54)と、前記入口(54)に流体連結された入口セクション(63)及び前記第1のホイールスペース(26)内に至る出口セクション(64)を各々が備えた第1の複数の抽出空気通路(57)と、前記入口(54)に流体連結された入口部分(70)及び前記第2のホイールスペース(27)内に至る出口部分(71)を各々が備えた第2の複数の抽出空気通路(58)とを含んでいる、ターボ機械(2)。
【請求項2】
前記ロータ慣性ベルト部材(30)が、中央横平面(55)を有する中央セクション(34)を通って第2の直径セクション(33)まで延びる第1の直径セクション(32)を含み、前記入口(54)が、前記中央セクション(34)内に形成される、請求項1記載のターボ機械(2)。
【請求項3】
前記抽出空気空洞(38)が、前記ロータ慣性ベルト部材の中央横平面(55)に沿って配置される、請求項2記載のターボ機械(2)。
【請求項4】
前記抽出空気空洞(38)が、前記ロータ慣性ベルト部材の中央横平面(55)からオフセットしている、請求項2記載のターボ機械(2)。
【請求項5】
前記第1の複数の抽出空気通路(57)が、前記第2の複数の抽出空気通路(58)に対して非対称に配置される、請求項1記載のターボ機械(2)。
【請求項6】
前記第1の複数の抽出空気通路(57)が、第1の角度で配置され、また前記第2の複数の抽出空気通路(58)が、第2の角度で配置される、請求項1記載のターボ機械(2)。
【請求項7】
前記第1の角度が、前記第2の角度とは異なる、請求項6記載のターボ機械(2)。
【請求項8】
前記第1の角度が、前記第2の角度とほぼ同一である、請求項6記載のターボ機械(2)。
【請求項9】
前記第1のホイールスペース(26)が、前記第2のホイールスペース(27)と区別される、請求項1記載のターボ機械(2)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのホイール部材(20)の中間部分(25)内に形成された通路(28)をさらに含み、前記通路(28)が、前記第1のホイールスペース(26)を前記第2のホイールスペース(27)と流体連結する、請求項9記載のターボ機械(2)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−276022(P2010−276022A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119975(P2010−119975)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】