説明

ターンシグナルスイッチ装置

【課題】ハンドルの右回転操作時と左回転操作時とで、第1のレバー部材がキャンセル突起の外周面から外れて回転軌跡内に進出するときの角度(リリース角度)を同じ角度に設定できるターンシグナルスイッチ装置を提供する。
【解決手段】トーションばね6の巻回部6aから直線的に延びる第1の腕部6bの自由端側にキャンセル突起23の回転軌跡に向けて折れ曲がる屈曲部6dを形成し、キャンセル突起23の回転に引きずられて第1のレバー部材4の先端がトーションばね6の巻回部6aから遠ざかる方向へ回転するとき、第1のレバー部材4に対して屈曲部6dから弾発力が付与されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリングコラム等に付設されて方向指示器として用いられるターンシグナルスイッチ装置に係り、特に、該ターンシグナルスイッチ装置に備えられる操作レバーを中立位置に自動復帰させるためのキャンセル機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のターンシグナルスイッチ装置は、ステアリングコラム等に一体化されたハウジングに操作レバーの基端側を回動可能に支持し、この操作レバーの先端側を中立位置から左右いずれかの方向指示位置へ回転操作することにより、左折または右折用のランプを点滅動作するようになっている。このようなターンシグナルスイッチ装置では、操作レバーを左右の方向指示位置と中立位置の3位置に保持するために、ハウジング側の内面にカム面を設けると共に、操作レバー側にこのカム面に係合する駆動体がスプリングを介して設けられており、また、操作レバーを左右いずれかの方向指示位置に回転操作した状態で、ハンドルが指示方向とは逆方向に回転操作された時に、操作レバーを中立位置に自動復帰させるためのキャンセル機構が付設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7はこの種のキャンセル機構を備えた従来のターンシグナルスイッチ装置の概略構成を示す横断面図、図8は該キャンセル機構の平面図、図9は該キャンセル機構の動作説明図である。
【0004】
これらの図において符号100はハウジングであり、このハウジング100はステアリング装置のステータ部材である図示せぬコラムカバーやコンビスイッチ等に固定されている。ハウジング100の内底面にガイド軸101と支軸102が所定間隔を存して立設されており、ガイド軸101に第1のレバー部材103の第1の長孔103aが嵌合され、支軸102に第2のレバー部材104が回転自在に軸支されている。第1のレバー部材103は第2の長孔103bを有し、第2の長孔103bは第2のレバー部材104に立設された連結ピン104aに嵌合されている。また、第1のレバー部材103の前後両端に当接部103cとカム部103dが立設されており、カム部103dの横断面形状は半円形に形成されている。第1のレバー部材103にトーションばね(捩じりコイルばね)105の一方の腕部105aが掛合されており、このトーションばね105によって第1のレバー部材103は両長孔103a,103bの長手方向に弾性付勢されている。トーションばね105の巻回部105bはハウジング100の内底面に立設されたボス106に挿入されており、他方の腕部105cはハウジング100の側壁に掛止されている。また、第2のレバー部材104は第1の開口104bと第2の開口104cを有し、これら両開口104b,104cは支軸102を介して対向する位置にある。
【0005】
ハウジング100に操作レバー107が一対の支軸108を中心に回動可能に支持されており、ハウジング100の内部に左右両側に一対のロック部109aを有するV字状のカム面109が形成されている。操作レバー107にホルダ110が取付けられており、操作レバー107とホルダ110は両支軸108を結ぶ直線を回転軸として水平方向へ一体的に回転する。このホルダ110の先端部に駆動体111がスライド可能に保持されており、この駆動体111の先端は図示省略したスプリングによってカム面109に常時圧接している。また、ホルダ110に一体的に設けられた図示せぬ部材にはカム部112と受部113が垂設されており、カム部112は第1のレバー部材103のカム部103dと対向し、受部113は第2のレバー部材104の第2の開口104c内に達している。
【0006】
このように構成されたターンシグナルスイッチ装置において、操作レバー107が中立位置にある場合、図7に示すように、駆動体111の先端はカム面109の中央の谷部と当接しており、駆動体111は図示せぬスプリングの弾性によって当該位置に安定的に保持されている。この時、図8に示すように、操作レバー107側のカム部112と第1のレバー部材103のカム部103dとはそれぞれの頂点で当接しており、第1のレバー部材103はトーションばね105の付勢力に抗して後退している。したがって、第1のレバー部材103の当接部103cはハンドルに連動して回転するキャンセル突起114の回転軌跡外に位置しており、この状態でハンドルを回転しても、キャンセル突起114は第1のレバー部材103の当接部103cに当接せず、操作レバー107は中立位置に維持される。
【0007】
操作レバー107をこの中立位置から図7の矢印AまたはBのいずれかの方向に回動すると、駆動体111の先端はカム面109の斜面を乗り越えてロック部109aに係止され、これらロック部109aによって当該位置に安定的に保持される。例えば、操作レバー107を図7の矢印B方向に回動すると、それに連動してカム部112と受部113が図8から図9(a−1)に示す位置に変位するため、操作レバー107側のカム部112が第1のレバー部材103のカム部103dの頂点から外れる。その結果、第1のレバー部材103がトーションばね105の腕部105aからの弾発力を受けて両長孔103a,103bの長手方向へ前進し、第1のレバー部材103の当接部103cがキャンセル突起114の外周面に当接する。また、操作レバー107の矢印B方向への回動に伴い、図示省略した接点の切換え動作が行われ、右折用のランプが点滅動作する。
【0008】
図9(a−1)に示す操作レバー107の右折回動状態からハンドルが右折方向へ回転操作されると、キャンセル突起114が第1のレバー部材103の当接部103cに摺接しながら矢印B方向へ回動し、図9(a−2)に示すように、キャンセル突起114が所定角度θ1回動した時点で、第1のレバー部材103の当接部103cがキャンセル突起114の外周面から外れて回転軌跡内に進出する。しかる後、図9(a−3)に示すように、ハンドルが逆方向(矢印A方向)に回転操作されると、そのリターン動作中にキャンセル突起114が第1のレバー部材103の当接部103cに突き当る。その結果、第1のレバー部材103がガイド軸101を中心に同図の時計回り方向に回転し、その回転力が第2の長孔103bから連結ピン104aを介して第2のレバー部材104に伝達され、第2のレバー部材104が支軸102を中心に時計回り方向に回転するため、第2のレバー部材104の第2の開口104cは同図の上方へ回動変位する。これにより、第2の開口104cの周縁が受部113を上方へ押圧するため、駆動体111がカム面109のロック部109aから外れて中央の谷部へ移行し、操作レバー107と第1および第2のレバー部材103,104は図8に示す中立位置に自動復帰する。
【0009】
一方、操作レバー107を中立位置から図7の矢印A方向に回動すると、それに連動してカム部112と受部113が図8から図9(b−1)へ示す位置に変位するため、操作レバー107側のカム部112が第1のレバー部材103のカム部103dの頂点から外れる。その結果、第1のレバー部材103がトーションばね105の腕部105aからの弾発力を受けて両長孔103a,103bの長手方向へ前進し、第1のレバー部材103の当接部103cがキャンセル突起114の外周面に当接する。また、操作レバー107の矢印A方向への回動に伴い、図示省略した接点の切換え動作が行われ、左折用のランプが点滅動作する。
【0010】
そして、図9(b−1)に示す操作レバー107の左折回動状態からハンドルが左折方向へ回転操作されると、キャンセル突起114が第1のレバー部材103の当接部103cに摺接しながら矢印A方向へ回動し、図9(b−2)に示すように、キャンセル突起114が所定角度θ2回動した時点で、第1のレバー部材103の当接部103cがキャンセル突起114の外周面から外れて回転軌跡内に進出する。しかる後、図9(b−3)に示すように、ハンドルが逆方向(矢印B方向)に回転操作されると、そのリターン動作中にキャンセル突起114が第1のレバー部材103の当接部103cに突き当る。その結果、第1のレバー部材103がガイド軸101を中心に同図の反時計回り方向に回転し、その回転力が第2の長孔103bから連結ピン104aを介して第2のレバー部材104に伝達され、第2のレバー部材104が支軸102を中心に反時計回り方向に回転するため、第2のレバー部材104の第2の開口104cは同図の下方へ回動変位する。これにより、第2の開口104cの周縁が受部113を下方へ押圧するため、駆動体111がカム面109のロック部109aから外れて中央の谷部へ移行し、操作レバー107と第1および第2のレバー部材103,104は図8に示す中立位置に自動復帰する。
【特許文献1】特開平10−269901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述した従来のターンシグナルスイッチ装置では、操作レバー107を右折または左折位置に回動操作した状態からハンドルが操作レバー107の回動方向と同じ方向に回転操作される際に、第1のレバー部材103がキャンセル突起114の外周面から外れて回転軌跡内に進出するときの角度(リリース角度)θ1,θ2がハンドルの回転方向によって異なってしまうという不具合があった。これは第1のレバー部材103とトーションばね105の腕部105aとの接触箇所が第1のレバー部材103の回転方向によって異なり、それに伴って第1のレバー部材103を前進方向へ押圧するトーションばね105の弾発力に差が生じるからである。
【0012】
すなわち、操作レバー107の右折回動状態からハンドルが操作レバー107の回動方向と同じ方向に回転操作されると、キャンセル突起114が図9(a−1)から図9(a−2)に示す位置へと変位して、第1のレバー部材103がキャンセル突起114の外周面から外れて回転軌跡内に進出するが、その過程で当接部103cがトーションばね105の巻回部105bに近付くように第1のレバー部材103が回転するとき、第1のレバー部材103のばね受部とトーションばね105の腕部105aとの接触箇所が巻回部105bに向かって移動して、トーションばね105が撓み量を増すように変形するため、トーションばね105は比較的大きな弾発力で第1のレバー部材103を両長孔103a,103bの長手方向に沿って前進方向へ付勢する。
【0013】
これに対して、操作レバー107の左折回動状態からハンドルが操作レバー107の回動方向と同じ方向に回転操作されると、キャンセル突起114が図9(b−1)から図9(b−2)に示す位置へと変位して、第1のレバー部材103がキャンセル突起114の外周面から外れて回転軌跡内に進出するが、その過程で当接部103cがトーションばね105の巻回部105bから遠ざかる方向へ第1のレバー部材103が回転するとき、第1のレバー部材103のばね受部とトーションばね105の腕部105aとの接触箇所が腕部105aの先端側に向かって移動して、トーションばね105が撓み量を減ずるように変形するため、トーションばね105は比較的小さな弾発力で第1のレバー部材103を両長孔103a,103bの長手方向に沿って前進方向へ付勢する。
【0014】
その結果、キャンセル突起114が矢印B方向へ回動すると、トーションばね105が第1のレバー部材103を前進方向へ押し出す力が大きくなって、第1のレバー部材103がキャンセル突起114の外周面から外れて回転軌跡内に進出するとき、当接部103cがキャンセル突起114の外周面から外れやすくなるが、キャンセル突起114が矢印A方向へ回動すると、トーションばね105が第1のレバー部材103を前進方向へ押し出す力が小さくなって、リリースされるべき角度になっても第1のレバー部材103がキャンセル突起114の外周面から外れ難くなり、第1のレバー部材103の先端がキャンセル突起114に引きずられて会同してしまうため、図9(a−2)と図9(b−2)に示すように、キャンセル突起114が矢印B方向へ回動するときの第1のレバー部材103のリリース角度θ1(約26度)に比べて、キャンセル突起114が矢印A方向へ回動するときの第1のレバー部材103のリリース角度θ2(約35度)が大きくなってしまう。
【0015】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、操作レバーを右折または左折位置に回動操作した状態からハンドルが操作レバーの回動方向と同じ方向に回転操作される際、ハンドルの回転方向が異なっても、第1のレバー部材がキャンセル突起の外周面から外れて回転軌跡内に進出するときのリリース角度を同じに設定できるターンシグナルスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明は、カム面を有するハウジングと、このハウジングに回動可能に支持された操作レバーと、前記カム面と協働して該操作レバーを第1および第2の動作位置と中立位置の3位置に保持する駆動体と、ハンドル側のキャンセル突起に当接して回転動作される第1のレバー部材と、この第1のレバー部材を前記キャンセル突起の回転軌跡に近づけるように弾性付勢するトーションばねと、前記第1のレバー部材の回転に連動して前記操作レバーを第1および第2の動作位置から中立位置に復帰させる第2のレバー部材とを備え、前記操作レバーが中立位置にあるとき、該操作レバーによって前記第1のレバー部材を前記トーションばねの弾性力に抗して前記キャンセル突起の回転軌跡外へ後退させ、前記操作レバーが第1および第2の動作位置にあるときに、前記第1のレバー部材を前記トーションばねの弾性力で前記キャンセル突起の回転軌跡内に進出させるターンシグナルスイッチ装置において、前記トーションばねの巻回部を前記第1のレバー部材の側方位置で前記ハウジングに支持すると共に、この巻回部を固定端として直線的に延びる腕部の自由端側に前記キャンセル突起の回転軌跡に向けて折れ曲がる屈曲部を形成し、前記第1のレバー部材が前記巻回部から遠ざかる方向へ回転するとき、前記トーションばねの弾性力が前記屈曲部から前記第1のレバー部材に付与されるように構成した。
【0017】
このように構成されたターンシグナルスイッチ装置では、キャンセル突起の回転に連動して第1のレバー部材がトーションばねの巻回部から遠ざかる方向へ回転するとき、第1のレバー部材はトーションばねの屈曲部からの弾発力を受けて前進方向へ付勢されるが、この屈曲部はトーションばねの巻回部から直線的に延びる腕部の自由端側に形成されてキャンセル突起の回転軌跡に向けて折れ曲がっているため、トーションばねの巻回部から直線的に突出する腕部は屈曲部のない場合に比べて、トーションばねが大きく撓み変形することになる。その結果、トーションばねが第1のレバー部材を前進方向へ押し出す力が大きくなり、リリース時に第1のレバー部材がキャンセル突起の外周面から外れ易くなるため、操作レバーを第1の動作位置または第2の動作位置へ回動操作したときに、操作レバーのリリース角度をそれぞれの回動方向で同じ角度になるように設定することができる。
【0018】
上記の構成において、操作レバーの中立位置でトーションばねの屈曲部と第1のレバー部材とは必ずしも接触していなくても良いが、第1のレバー部材にトーションばねと当接するばね受部を設け、操作レバーの中立位置でこのばね受部が屈曲部の一部に当接するように構成すると、第1のレバー部材の先端がトーションばねの巻回部から遠ざかる方向へ回転するとき、第1のレバー部材の回転に伴ってトーションばねの弾発力を次第に増加させることができて好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のターンシグナルスイッチ装置は、トーションばねの巻回部から直線的に延びる腕部の自由端側にキャンセル突起の回転軌跡に向けて折れ曲がる屈曲部を形成し、キャンセル突起の回転に連動して第1のレバー部材の先端がトーションばねの巻回部から遠ざかる方向へ回転するとき、第1のレバー部材に対してトーションばねの屈曲部から弾発力が付与されるようにしたので、操作レバーを第1の動作位置または第2の動作位置へ回動操作したときに、操作レバーのリリース角度をそれぞれの回動方向で同じ角度になるように設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係るターンシグナルスイッチ装置の分解斜視図、図2はターンシグナルスイッチ装置の縦断面図、図3はキャンセル機構の要部を示す斜視図、図4はキャンセル機構の平面図、図5キャンセル機構の動作説明図、図6はキャンセル機構に備えられる第1のレバー部材の動作説明図である。
【0021】
本実施形態例に係るターンシグナルスイッチ装置は、ハウジングをなす合成樹脂製の第1および第2ケース1,2と、これら両ケース1,2に回転可能に支持された操作レバー3と、第2ケース2の内底面に載置された第1および第2のレバー部材4,5と、この第1のレバー部材4を第2ケース2から突出する方向へ弾性付勢するトーションばね(捩じりコイルばね)6とから主に構成されており、後述するように、操作レバー3は作動部材7とホルダ8および可動部材9等を具備している。第1および第2ケース1,2はスナップ結合等の手段を用いて一体化され、図示せぬコラムカバーやコンビスイッチ等のステータ部材に固定されるようになっている。
【0022】
操作レバー3の突出方向と反対側に位置する第1ケース1の端部には止め板10が取り付けられており、この止め板10の内壁面にはV字状のカム面10aが形成されている。図示省略されているが、カム面10aは中央の谷部とその左右両側に位置する一対のロック部とを有している。図2に示すように、第1ケース1の底面にはプリント基板11が取付けられており、このプリント基板11上を摺動する一対の摺動子受体12,13が第1ケース1の内底面側に露出している。一方の摺動子受体12は操作レバー3の左折または右折方向への回動操作により駆動され、図示せぬ左折または右折用ランプの点滅動作を行う。他方の摺動子受体13は操作レバー3の上下方向への揺動操作により駆動され、図示せぬビーム用ランプの点燈動作を行う。
【0023】
第2ケース2の内底面にはガイド軸14と支軸15が所定間隔を存して同一線上に立設されており、第2ケース2の内底面の隅部には円筒状のボス16が立設されている。ガイド軸14は支軸15を介して操作レバー3の突出方向と反対側に位置する。第1のレバー部材4には長孔4aが形成されており、この長孔4aはガイド軸14に挿入されている。また、第1のレバー部材4にはトーションばね6を受けるばね受部としての第1および第2のばね受部4b,4cとカム部4dとが形成されており、第1および第2のばね受部4b,4cは長孔4aの長手方向と直交する方向において第1のレバー部材4の左右両側に離間させて形成されている。カム部4dは第1のレバー部材4の後端側に突設されており、その横断面形状は第1のレバー部材4の先端側、すなわちキャンセル突起23に当接する側が曲面をなす半円形に形成されている。一方、第2のレバー部材5には開口5aと切り欠き部5bが形成されており、これら開口5aと切り欠き部5bとの間には孔5cが形成されている。この孔5cは支軸16に挿入されており、第2のレバー部材5は支軸16を中心に回転自在となっている。また、第2のレバー部材5の先端側には連結ピン5dが立設されており、第1のレバー部材4の長孔4aはこの連結ピン5dにも挿入されている。なお、本実施形態例では、長孔4aの長手方向と直交する方向において離間させて形成されている第1および第2のばね受部4b,4cとしたが、これらばね受部4b,4cが同一平面上にあるような構成としても良い。
【0024】
トーションばね6は、ボス16に挿入された巻回部6aと、巻回部6aを固定端として片持ち梁状に直線的に延びる第1の腕部6bと、第2ケース2の内側壁に掛止された第2の腕部6cとを有しており、第1の腕部6bの自由端側である先端部分にはキャンセル突起23の回転軌跡または回転軸に向けて折れ曲がる屈曲部6dが形成されている。図4に示すように、第1のレバー部材4の先端が後述するキャンセル突起23の外周面に対向しているとき、第1の腕部6bと屈曲部6dは第1のレバー部材4の第1および第2のばね受部4b,4cにそれぞれ当接しており、第1のレバー部材4はトーションばね6の弾発力を受けて長孔4aの長手方向に沿って前方へ、すなわちキャンセル突起23の回転軌跡へ向けて付勢されている。
【0025】
前述したように、操作レバー3は作動部材7とホルダ8および可動部材9等を具備しており、作動部材7は操作レバー3の根元部分に一体化されている。図2に示すように、作動部材7の前端部にはスプリング17と第1の駆動体18がスライド可能に保持されており、第1の駆動体18はスプリング17の弾発力を受けて作動部材7から突出する方向へ付勢されている。また、作動部材7の下端に突起7aが形成されており、この突起7aは前述した摺動子受体13と係合している。作動部材7とホルダ8はピン19を介して回転可能に連結されており、第1の駆動体18の先端はホルダ8の内部に形成されたカム面8aに圧接されている。このホルダ8の上下両面は円弧状突起8bと円筒部8cが形成されており、これら円弧状突起8bと円筒部8cは第1および第2ケース1,2に設けられたガイド溝1aとボス2aにそれぞれ挿入されている。したがって、操作レバー3を右折または左折の指示位置へ回動操作した場合、操作レバー3とホルダ8はハウジング(両ケース1,2)に対してボス2aの中心を通る直線を回転軸として水平方向へ一体的に回転するが、操作レバー3を水平方向と直交する方向へ回動操作した場合、操作レバー3はハウジングとホルダ8に対してピン19を回転軸として垂直方向へ所定角度だけ回転する。また、ホルダ8の前端部にはスプリング20と第2の駆動体21がスライド可能に保持されており、第2の駆動体21の先端はスプリング20の弾発力を受けて止め板10のカム面10aに圧接されている。
【0026】
可動部材9はホルダ8の先端部に回転可能に支持されており、その上面に一対のばね受け突起9aが形成されている。そして、可動部材9に巻回した捩じりコイルばね22の両腕部をばね受け突起9aとホルダ8とにそれぞれ掛止することにより、可動部材9はセンタ位置方向へ常時付勢されている。また、可動部材9の下端には横断面形状が第2ケース2の支軸15と対向する側を曲面となす三日月形のカム部9bが形成されており、このカム部9bの曲面は第1のレバー部材4のカム部4dの曲面と対向して当接している。さらに、可動部材9の下端には駆動部9cと突起9dが形成されており、駆動部9cは第2のレバー部材5の切り欠き部5bに達し、突起9dは前述した摺動子受体12と係合している。
【0027】
次に、上記の如く構成されたターンシグナルスイッチ装置の動作を主として図5に基づいて説明する。
【0028】
まず、操作レバー3が中立位置にある場合、第2の駆動体21の先端は止め板10のカム面10aの谷部と当接し、スプリング20の弾発力によって中立位置に安定的に保持されている。この時、図4に示すように、第1のレバー部材4のカム部4dと可動部材9のカム部9bとはそれぞれの曲面の頂点で当接しており、第1のレバー部材4はトーションばね6の付勢力に抗して後退している。したがって、第1のレバー部材4の先端はハンドルに連動して回転するキャンセル突起23の回転軌跡外に位置しており、この状態でハンドルを回転しても、キャンセル突起23は第1のレバー部材4に当接せず、操作レバー3は中立位置に維持される。
【0029】
操作レバー3をこの中立位置から右折または左折の指示位置のいずれか一方向に回動すると、第2の駆動体21の先端がカム面10aの斜面を乗り越えて図示しないロック部に係止されるため、操作レバー3はロック状態に安定的に保持される。例えば、操作レバー3を右折の指示位置(第1の動作位置)方向に回動すると、操作レバー3に連動してホルダ8と可動部材9も同方向へ回転し、それに伴ってカム部9bと駆動部9cが図4から図5(a−1)に示す位置へ変位するため、カム部9bの頂点がカム部4dから外れる。その結果、第1のレバー部材4はトーションばね6の弾性力を受けて長孔4aの長手方向に沿って前進し、第1のレバー部材4の先端部がキャンセル突起23の外周面に当接する。このとき、トーションばね6の第1の腕部6bとその先端側に折れ曲げ形成された屈曲部6dは、第1のレバー部材4の左右両側の第1および第2のばね受部4b,4cにそれぞれ当接している。また、操作レバー3の右折方向への回動に伴い、可動部材9の突起9dが一方の摺動子受体12を駆動するため、この摺動子受体12によって図示せぬ接点の切換えが行われ、右折用のランプが点滅動作する。
【0030】
そして、かかる操作レバー3の右折回動状態からハンドルが右折方向へ回転操作されると、キャンセル突起23が第1のレバー部材4の先端部に摺接しながら図5(a−1)の矢印B方向へ回動し、図5(a−2)に示すように、キャンセル突起23が所定角度θ1(約26度)回動した時点で、第1のレバー部材4の先端部がキャンセル突起23の外周面から外れて回転軌跡内に進出する。この場合、キャンセル突起23が図5(a−1)から図5(a−2)に示す位置へと変位して、第1のレバー部材4がキャンセル突起23の外周面から外れて回転軌跡内に進出するが、その過程で第1のレバー部材4の先端部はキャンセル突起23に引きずられてトーションばね6の巻回部6(固定端)に近付く方向へ回転するため、第1のレバー部材4の第1のばね受部4bが第1の腕部6bの固定端に向かって移動することにより、第1の腕部6bはトーションばね6が撓み量を増すように徐々に押し撓められ変形されて蓄力されていき、第2のばね受部4cは屈曲部6dから離反する。
【0031】
しかる後、図5(a−3)に示すように、ハンドルが逆方向(矢印A方向)に回転操作されると、そのリターン動作中にキャンセル突起23が第1のレバー部材4の先端部に突き当る。その結果、第1のレバー部材4がガイド軸14を中心に同図の時計回り方向に回転し、その回転力が長孔4aから連結ピン5dを介して第2のレバー部材5に伝達され、第2のレバー部材5が支軸15を中心に時計回り方向に回転するため、第2のレバー部材5の切り欠き部5bは同図の上方へ回動変位する。これにより、切り欠き部5bの周縁が駆動部9cを上方へ押圧するため、第2の駆動体21の先端がカム面10aのロック部から外れて中央の谷部へ移行し、操作レバー3と第1および第2のレバー部材4,5は図4に示す中立位置に自動復帰する。
【0032】
これとは逆に操作レバー3を左折の指示位置(第2の動作位置)方向に回動すると、操作レバー3に連動してホルダ8と可動部材9も同方向へ回転し、それに伴ってカム部9bと駆動部9cが図4から図5(b−1)に示す位置へ変位するため、カム部9bの頂点がカム部4dから外れる。その結果、第1のレバー部材4はトーションばね6の弾性力を受けて長孔4aの長手方向に沿って前進し、第1のレバー部材4の先端部がキャンセル突起23の外周面に当接する。また、操作レバー3の左折方向への回動に伴い、可動部材9の突起9dが他方の摺動子受体13を駆動するため、この摺動子受体13によって図示せぬ接点の切換え動作が行われ、左折用のランプが点滅動作する。
【0033】
そして、かかる操作レバー3の左折回動状態からハンドルが左折方向へ回転操作されると、キャンセル突起23が第1のレバー部材4の先端部に摺接しながら図5(b−1)の矢印A方向へ回動し、図5(b−2)に示すように、キャンセル突起23が所定角度θ2回動した時点で、第1のレバー部材4の先端部がキャンセル突起23の外周面から外れて回転軌跡内に進出する。その過程で第1のレバー部材4がキャンセル突起23に引きずられることにより、第1のレバー部材4の先端部がトーションばね6の巻回部6から遠ざかる方向へ回転し、それに伴って第1のレバー部材4の第2のばね受部4cが屈曲部6dの先端に向かって移動するが、屈曲部6dは第1の腕部6bからキャンセル突起23の回転軌跡に向けて折れ曲がっているため、操作レバー3の右折時と同じように、第1の腕部6bはトーションばね6が撓み量を増すように徐々に押し撓められ変形されて蓄力されていく。図6はこの時の状態を示しており、比較例として屈曲部が形成されていない通常のトーションばねを2点鎖線で示している。同図から明らかなように、本実施形態例のように第1のレバー部材4の第2のばね受部4cが屈曲部6dを押し撓めるようになっていると、屈曲部を持たない通常のトーションばねに比べると第1の腕部6bが大きく変形して蓄力されることがわかる。その結果、トーションばね6が第1のレバー部材4を前進方向へ押し出す力が大きくなり、リリース時に第1のレバー部材4がキャンセル突起23の外周面から外れ易くなるため、第1のレバー部材4のリリース角度θ2,θ2を操作レバー3の右折時と左折時とで同じに設定することができる。
【0034】
しかる後、図5(b−3)に示すように、ハンドルが逆方向(矢印B方向)に回転操作されると、そのリターン動作中にキャンセル突起23が第1のレバー部材4の先端部に突き当る。その結果、第1のレバー部材4がガイド軸14を中心に同図の反時計回り方向に回転し、その回転力が長孔4aから連結ピン5dを介して第2のレバー部材5に伝達され、第2のレバー部材5が支軸15を中心に反時計回り方向に回転するため、第2のレバー部材5の切り欠き部5bは同図の下方へ回動変位する。これにより、切り欠き部5bの周縁が駆動部9cを下方へ押圧するため、第2の駆動体21の先端がカム面10aのロック部から外れて中央の谷部へ移行し、操作レバー3と第1および第2のレバー部材4,5は図4に示す中立位置に自動復帰する。
【0035】
なお、操作レバー3を指示位置と直交する方向に回動すると、前述したように、操作レバー3に一体化された作動部材7がハウジング(両ケース1,2)とホルダ8に対しピン19を回転軸として垂直方向へ所定角度だけ回転し、それに伴って第1の駆動体18の先端がホルダ8のカム面8a上を摺動する。また、かかる操作レバー3の回動に伴い、作動部材7の突起7aが他方の摺動子受体13を駆動するため、この摺動子受体13によって図示せぬ接点の切換えが行われ、ビーム切換えやパッシング動作が行われる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態例に係るターンシグナルスイッチ装置は、トーションばね6の巻回部6aから直線的に突出する第1の腕部6bの自由端側にキャンセル突起23の回転軌跡方向へ折れ曲がる屈曲部6dを形成し、キャンセル突起23の回転に引っ張られて第1のレバー部材4がトーションばね6の巻回部6aから遠ざかる方向へ回転するとき、第1のレバー部材4に対して屈曲部6dから弾発力が付与されるようにしたので、操作レバー3を右折の指示位置(第1の動作位置)または左折の指示位置(第2の動作位置)へ回動操作したときに、操作レバー3のリリース角度をそれぞれの回動方向で同じになるように設定することができる。
【0037】
また、操作レバー3の中立位置で第1のレバー部材4の第2のばね受部4cとトーションばね6の屈曲部6dとを予め当接させておき、第1のレバー部材4の先端がトーションばね6の巻回部6aから遠ざかる方向へ回転するときに、この当接部位を始端として第2のばね受部4cが屈曲部6aの先端に向かって摺動するようにしたので、第1のレバー部材4の回転に伴ってトーションばね6の弾発力を次第に増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態例に係るターンシグナルスイッチ装置の分解斜視図である。
【図2】ターンシグナルスイッチ装置の縦断面図である。
【図3】キャンセル機構の要部を示す斜視図である。
【図4】キャンセル機構の平面図である。
【図5】キャンセル機構の動作説明図である。
【図6】キャンセル機構に備えられる第1のレバー部材の動作説明図である。
【図7】従来例に係るターンシグナルスイッチ装置の概略構成を示す横断面図である。
【図8】従来例に係るキャンセル機構の平面図である。
【図9】該キャンセル機構の動作説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 第1ケース
2 第2ケース
3 操作レバー
4 第1のレバー部材
4a 長孔
4b 第1のばね受部
4c 第2のばね受部
4d カム部
5 第2のレバー部材
5a 開口
5b 切り欠き部
5c 孔
5d 連結ピン
6 トーションばね
6a 巻回部
6b 第1の腕部
6c 第2の腕部
6d 屈曲部
7 作動部材
8 ホルダ
9 可動部材
9b カム部
9c 駆動部
9d 突起
10 止め板
10a カム面
14 ガイド軸
15 支軸
16 ボス
17 スプリング
18 第1の駆動体
19 ピン
20 スプリング
21 第2の駆動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カム面を有するハウジングと、このハウジングに回動可能に支持された操作レバーと、前記カム面と協働して該操作レバーを第1および第2の動作位置と中立位置の3位置に保持する駆動体と、ハンドル側のキャンセル突起に当接して回転動作される第1のレバー部材と、この第1のレバー部材を前記キャンセル突起の回転軌跡に近づけるように弾性付勢するトーションばねと、前記第1のレバー部材の回転に連動して前記操作レバーを第1および第2の動作位置から中立位置に復帰させる第2のレバー部材とを備え、前記操作レバーが中立位置にあるとき、該操作レバーによって前記第1のレバー部材を前記トーションばねの弾性力に抗して前記キャンセル突起の回転軌跡外へ後退させ、前記操作レバーが第1および第2の動作位置にあるときに、前記第1のレバー部材を前記トーションばねの弾性力で前記キャンセル突起の回転軌跡内に進出させるターンシグナルスイッチ装置であって、
前記トーションばねの巻回部を前記第1のレバー部材の側方位置で前記ハウジングに支持すると共に、この巻回部を固定端として直線的に延びる腕部の自由端側に前記キャンセル突起の回転軌跡に向けて折れ曲がる屈曲部を形成し、前記第1のレバー部材が前記巻回部から遠ざかる方向へ回転するとき、前記トーションばねの弾性力が前記屈曲部から前記第1のレバー部材に付与されるように構成したことを特徴とするターンシグナルスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記第1のレバー部材に前記トーションばねと当接するばね受部を設け、前記操作レバーの中立位置で前記ばね受部が前記屈曲部の一部に当接することを特徴とするターンシグナルスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−207660(P2008−207660A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45843(P2007−45843)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】