説明

ターンバックル

【課題】量産に適しており、しかも、ネジロッドを進退させるためのパイプ部材の回動作業を容易としたターンバックルを提供する。
【解決手段】
両端にロッド(3a)(3b)を螺合する雌ネジ(9a,9b)を形成したパイプ部材(2)を備えるターンバックルにおいて、パイプ部材(2)は、アルミニウムの押出成形より該押出方向に向けて延びる貫通孔(6)の内周面に溝(7)を形成し、外周面に断面形状が多角形となる係合面(8)を形成した長尺体(2A)を原材料として、該長尺体を長手方向に関して所定の長さL1に切断することにより形成した切断パイプ体(2B)から構成され、前記溝(7)の深さD1を雌ネジ(9a,9b)のネジ深さD2に対してD1>D2に形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建物の外壁から屋外方向に片持ち状に取付けられた庇パネルを外壁から吊下状に支持するためのターンバックル、その他のターンバックルに関する。
【背景技術】
【0002】
ターンバックルは、種々の分野で種々のタイプのものが提供されているが、例えば、建築分野において、建物の外壁から屋外方向に片持ち状に取付けられた庇パネルを外壁から吊下状に支持するためのターンバックルが提供されている。
【0003】
このような庇パネルを吊持するためのターンバックルは、両端部に相互に逆ネジとなる雌ネジを形成したパイプ部材と、前記雌ネジに進退自在に螺合する雄ネジを形成した一対のロッドと、該ロッドの基端部に固着された連結部材と、該連結部材に対して回動自在に連結されたブラケット部材とから構成され、一方のブラケット部材を庇パネルの上部に固着し、他方のブラケット部材を外壁の上方個所に固着することにより、庇パネルを吊持する。ターンバックルを取付固着した状態で、パイプ部材は正逆回転可能であり、例えば、パイプ部材を正方向に回転すると一対のロッドが螺進することにより相互に引き寄せられ、パイプ部材を逆方向に回転すると一対のロッドが螺退することにより相互に離反するので、これにより一対のブラケット部材の間隔距離が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−328755号公報
【特許文献2】特開2006−307424号公報
【特許文献3】特開平9−119415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の場合、ターンバックルを構成するパイプ部材は、例えば、原材料とされたステンレス鋼管を長手方向に関して所定の長さに切断することにより切断パイプ体を形成し、該切断パイプ体の両端部に絞り加工を施すと共に、該両端部にナットを嵌入し又は溶接固着することにより形成される。
【0006】
従って、製造が煩雑であり、コスト低減に限界がある。しかも、パイプ部材は、中央の胴部に比して両端部を縮径した形状のものに形成されるので、美的外観に関しても意匠的に好ましくない。
【0007】
特に、従来のターンバックルにおけるパイプ部材は、全長にわたり、外周面の断面形状が真円形に形成されており、スパナ等の工具を係合することができないので、パイプ部材の正逆回転を容易とするためには、スパナ等の工具を係合可能とする係合部を形成する必要がある。このため、前記両端部における絞り加工部分の外周面の断面形状を六角形として工具の係合部を形成し、あるいは、両端部に溶接固着されたナットの外周面により工具の係合部を形成し、更には、特許文献3のようにパイプ部材の長手方向中央部を断面形状が多角形となるように冷間加工することにより工具の係合部を形成している。
【0008】
しかしながら、パイプ部材の冷間加工等により工具の係合部を形成する場合は、パイプ部材の製造が更に煩雑となり、コスト高を招来する。しかも、このようにして工具係合部を形成したとしても、係合部がパイプ部材の全長のうちの限定された特定個所にのみ設けられるので、ターンバックルの使用に際してユーザがパイプ部材を正逆回転させる際に、スパナ等の工具を特定個所の係合部に差し向けて係合させなければならず、使い勝手が良くない。
【0009】
更に、従来のターンバックルにおける連結部材及びブラケット部材は、鋼板を所定形状に裁断した切断板に所望の穿孔を行った後、該切断板に折曲加工を施すことにより形成されており、このため、量産に適しておらず、コスト低減に限界がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決したターンバックルを提供するものであり、その手段として構成したところは、X軸方向に延びると共に両端部に相互に逆ネジとされる雌ネジを形成したパイプ部材と、前記雌ネジのそれぞれに進退自在に螺合する雄ネジを形成した一対のロッドと、該ロッドの基端部に固着された連結部材と、該連結部材に対して前記X軸方向と交差するY軸方向の軸回りに回動自在に連結されたブラケット部材とから構成されたターンバックルにおいて、前記パイプ部材は、アルミニウムの押出成形より該押出方向に向けて延びる貫通孔の内周面に溝を形成し、外周面に断面形状が多角形となる係合面を形成した長尺体を原材料として、該長尺体を長手方向に関して所定の長さL1に切断することにより形成した切断パイプ体から構成されており、該切断パイプ体の両端から貫通孔の内周面に前記雌ネジを形成しており、該雌ネジのネジ深さD2に対して前記溝の深さD1を、D1>D2に形成して成る点にある。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、前記連結部材は、Y軸方向に配置されるベース板部と、該ベース板部の両端からX軸方向に延びる翼板部を一体に備え、前記ブラケット部材は、前記連結部材の一対の翼板部の間に嵌入される軸受部と、該軸受部から延設された舌片部を一体に備え、前記連結部材の翼板部と前記ブラケット部材の軸受部に支軸を挿通させることにより、該支軸を介して連結部材とブラケット部材を回動自在に連結するように構成されており、前記連結部材は、アルミニウムの押出成形により該押出方向に向けて前記ベース板部を構成する帯状壁部と前記翼板部を構成する耳状壁部を延設した長尺体を原材料として、該長尺体を長手方向に関して所定の長さL2に切断することにより形成した切断ピース体により構成されており、該連結部材の前記翼板部に前記支軸を挿通させる軸支孔を穿設している。
【0012】
本発明の更に好ましい実施形態において、前記連結部材は、Y軸方向に配置されるベース板部と、該ベース板部の両端からX軸方向に延びる翼板部を一体に備え、前記ブラケット部材は、前記連結部材の一対の翼板部の間に嵌入される軸受部と、該軸受部から延設された舌片部を一体に備え、前記連結部材の翼板部と前記ブラケット部材の軸受部に支軸を挿通させることにより、該支軸を介して連結部材とブラケット部材を回動自在に連結するように構成されており、前記ブラケット部材は、アルミニウムの押出成形により該押出方向に向けて前記軸受部を構成する軸受孔を貫設した管状部と前記舌片部を構成する板状壁部を延設した長尺体を原材料として、該長尺体を長手方向に関して所定の長さL3に切断することにより形成した切断ピース体により構成されており、該ブラケット部材の前記舌片部に固着孔を穿設している。
【発明の効果】
【0013】
従来のターンバックルは、ステンレス鋼管の冷間加工によりパイプ部材を形成しているので、製造が煩雑で量産に不向きであるのに対して、請求項1に記載の本発明によれば、アルミニウムの押出成形により形成した長尺体2Aを原材料として、該長尺体2Aを所定長さL1に切断した切断パイプ体2Bの両端に雌ネジ9a、9bを形成するという簡単な方法でパイプ部材2を提供することができ、製造が簡単容易で、量産に適するという効果がある。
【0014】
そして、アルミニウムの押出成形によるものであるから、外周面の断面形状を多角形に形成することにより、係合面8をパイプ部材2の全長にわたり形成することができ、ターンバックル1の長さ調節作業に際して、作業者は、パイプ部材2の任意の個所にスパナ等の工具を差し向けるだけで、係合面8の自由な個所に工具を係合させ、パイプ部材2を回転することが可能となり、作業が極めて容易となる。
【0015】
ところで、アルミ素材により形成されたパイプ部材2(切断パイプ体2B)の内周面の必要十分な所定領域Sに雌ネジ9a、9bをタップ形成する場合、切削されたアルミ素材の切粉がタップ工具に付着し、タップ加工を困難にするおそれがある。この点に関して、請求項1に記載の本発明によれば、原材料としての長尺体2Aを押出成形する際に溝7が形成されており、該溝7の深さD1を雌ネジ9a、9bのネジ深さD2に対して、D1>D2に構成しているので、タップ時に切削されるアルミ素材の切粉を該溝7から外部に好適に排出させ、タップ作業を容易にする。
【0016】
そして、連結部材に関して、従来のターンバックルは、鋼板の裁断と折曲加工により連結部材を形成しているので、製造が煩雑で量産に不向きであるのに対して、請求項2に記載の本発明によれば、連結部材4a、4bは、アルミニウムの押出成形により形成した長尺体4Aを原材料として、該長尺体4Aを所定長さL2に切断した切断ピース体4Bを形成し、該切断ピース体4Bに軸支孔15、15を穿設するという簡単な方法で提供することができ、製造が簡単容易で、量産に適するという効果がある。
【0017】
更に、ブラケット部材に関して、従来のターンバックルは、鋼板の裁断と折曲加工によりブラケット部材を形成しているので、製造が煩雑で量産に不向きであるのに対して、請求項3に記載の本発明によれば、ブラケット部材5a、5bは、アルミニウムの押出成形により形成した長尺体5Aを原材料として、該長尺体5Aを所定長さL3に切断した切断ピース体5Bを形成し、該切断ピース体5Bに固着孔22を穿設するという簡単な方法で提供することができ、製造が簡単容易で、量産に適するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のターンバックルの1実施形態に関してパイプ部材の両端部を破断した状態で示す斜視図である。
【図2】本発明の1実施形態を使用することにより庇パネルを外壁から吊下状に支持した状態を示す側面図である。
【図3】本発明のターンバックルを構成するパイプ部材の実施形態を示し、(A)は原材料としての長尺体を示す斜視図、(B)は長尺体を切断することにより形成した切断パイプ体を示す斜視図、(C)はパイプ部材の長手方向の断面図、(D)はパイプ部材の幅方向の断面拡大図である。
【図4】本発明のターンバックルを構成する連結部材の実施形態を示し、(A)は原材料としての長尺体を示す斜視図、(B)は長尺体を切断することにより形成した切断ピース体を示す斜視図、(C)は切断ピース体に軸支孔を穿設することにより完成した連結部材を示す斜視図、(D)は軸支孔に挿通した頭付きボルトの頭部と連結部材の関係を示す断面図、(E)は(D)に示した連結部材を下方から示す底面図である。
【図5】本発明のターンバックルを構成する第1ブラケット部材の実施形態を示し、(A)は原材料としての長尺体を示す斜視図、(B)は長尺体を切断することにより形成した切断ピース体を示す斜視図、(C)は切断ピース体に固着孔を穿設することにより完成した第1ブラケット部材を示す斜視図、(D)は第1ブラケット部材の側面図、(E)は第1ブラケット部材の正面図、(F)は第1ブラケット部材の断面図である。
【図6】本発明のターンバックルを構成する第2ブラケット部材の実施形態を示し、(A)は原材料としての長尺体を示す斜視図、(B)は長尺体を切断することにより形成した切断ピース体を示す斜視図、(C)は切断ピース体に固着孔を穿設することにより完成した第2ブラケット部材を示す斜視図、(D)は第2ブラケット部材の側面図、(E)は第2ブラケット部材の正面図、(F)は第2ブラケット部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0020】
図1に示すように、ターンバックル1は、X軸方向に延びるパイプ部材2と、該パイプ部材2の両端部に設けられた一対のロッド3a、3bと、該ロッド3a、3bの基端部に固着された連結部材4a、4bと、該連結部材4a、4bのそれぞれに対して前記X軸方向と交差するY軸方向の枢軸回りに回動自在に連結された第1ブラケット部材5a及び第2ブラケット部材5bとから構成されている。
【0021】
前記パイプ部材2は、中心部を貫通する貫通孔6と、該貫通孔6の内周面に形成された溝7と、外周面の断面形状を多角形(図例の場合は六角形)に形成することにより構成された係合面8を、全長にわたり設けており、両端部に位置して相互に逆ネジとされる雌ネジ9a、9bを貫通孔6の内周面に形成している。
【0022】
前記一対のロッド3a、3bは、それぞれ前記雌ネジ9a、9bに螺合するように相互に逆ネジとされる雄ネジ10a、10bを形成した頭付きボルト11a、11bにより構成されている。
【0023】
前記連結部材4a、4bは、同一構成のものとされ、前記Y軸方向に配置されるベース板部12と、該ベース板部12の両端から前記X軸方向に延びる翼板部13、13を一体に備えており、前記ベース板部12に通孔14を開設すると共に、前記翼板部13、13に軸支孔15、15を開設している(図4(C)参照)。
【0024】
前記連結部材4a、4bとロッド3a、3bは、相互に組み付け一体化される。図例の場合、それぞれの連結部材4a、4bのベース板部12に開設された通孔14に前記ロッド3a、3bが挿通され、頭付きボルトの頭部16と固着ナット17の間にベース板部12を挟着することにより堅固に固着されている。この際、後述する図4(D)(E)に示すように、ベース板部12の両側に嵌合部13a、13aを形成し、ロッド3a、3bを構成する頭付きボルト11a、11bの頭部16を回動不能に嵌合させるように構成することが好ましい。しかしながら、本発明は、連結部材4a、4bとロッド3a、3bの固着構造を限定するものではない。尚、ロッド3a、3bの先端近傍にはロックナット18が螺着されている。
【0025】
前記第1ブラケット部材5a及び第2ブラケット部材5bは、相互に形状を若干相違するが、基本的には同一構成とされており、前記Y軸方向に貫通する軸受孔19(図5(C)及び図6(C)参照)を備えた軸受部20と、該軸受部20から延設された舌片部21を一体に備えており、前記舌片部21に固着孔22を開設している。尚、前記軸受部20には、軸受孔19と平行な中空部23が形成されている。
【0026】
前記第1ブラケット部材5a及び第2ブラケット部材5bと連結部材4a、4bは、相互にY軸方向の軸回りに回動自在となるように連結される。図例の場合、軸受部20を翼板部13、13の間に嵌入し、軸受孔19を軸支孔15、15に合致させた状態で、頭付きの枢支ボルト24が挿通され、該枢支ボルト24の挿出端にナット25が固着される。
【0027】
上記のようにロッド3a、3bに連結部材4a、4bを組み付けた状態で、該ロッド3a、3bは、パイプ部材2の両端に設けられた雌ネジ9a、9bのそれぞれに進退自在に螺入され、これにより、ターンバックル1が構成される。この際、該ターンバックル1は、前記連結部材4a、4bに第1ブラケット部材5a及び第2ブラケット部材5bが回動自在に連結されている。
【0028】
本発明は、ターンバックル1の利用分野及び用途を限定するものではないが、図示実施形態のターンバックル1は、図2に示すように、建物の外壁26から屋外方向に片持ち状に取付けられた庇パネル27を吊下状に支持するために使用される。第1ブラケット部材5aの舌片部21は、固着孔22を介して庇パネル27の上部の所定個所P1に固着され、第2ブラケット部材5bの舌片部21は、固着孔22を介して外壁26の上方位置の所定個所P2に固着され、これにより庇パネル27を吊持する。図例の場合、第1ブラケット部材5aは、軸受部20と舌片部21を傾斜角度θ1で屈折し(図5(C)参照)、第2ブラケット部材5bは、軸受部20と舌片部21を傾斜角度θ2で屈折している(図6(C)参照)。
【0029】
そこで、ブラケット部材5a、5bを所定個所P1、P2に取付けるに際し、ターンバックル1は、長さを調節が行われる。パイプ部材2を正転方向(又は逆転方向)に回転すると一対のロッド3a、3bが螺進することにより相互に引き寄せられ、反対に、パイプ部材2を逆転方向(又は正転方向)に回転すると一対のロッド3a、3bが螺退することにより相互に離反するので、これにより一対のブラケット部材5a、5bの間隔距離が調節される。前述のようにロッド3a、3bを構成する頭付きボルト11a、11bは、頭部16を嵌合部13a、13aに回動不能に嵌合しているので、パイプ部材2を回転したときにロッド3a、3bが連れ回りすることはない。パイプ部材2は、全長にわたり係合面8を形成しているので、作業者は、パイプ部材2の任意の個所にスパナ等の工具を差し向けることにより、係合面8の自由な個所に工具を係合させ、パイプ部材2を回転することができる。この際、連結部材4a、4bとブラケット部材5a、5bは、相互に枢支ボルト24を支軸として回動自在とされているので、ブラケット部材5a、5bの舌片部21を所望の姿勢で庇パネル27及び外壁26に固着される。尚、長さ調節の後、ロックナット18をパイプ部材2の両端面に圧着させることにより、パイプ部材2とロッド3a、3bが相互に回転不能に固定される。
【0030】
(パイプ部材の生産に関する特徴的構成)
パイプ部材2の形成工程を図3に示している。パイプ部材2は、図3(A)に示すような長尺体2Aを原材料としている。長尺体2Aは、アルミニウムの押出成形により形成されており、該押出方向に向けて延びる貫通孔6の内周面に溝7を形成し、外周面の断面形状を多角形(図例の場合は六角形)に形成されている。
【0031】
そこで、図3(B)に示すように、前記長尺体2Aを長手方向に関して所定の長さL1に切断することにより、切断パイプ体2Bが形成される。従って、1本の長尺体2Aから複数本(好ましくは多数本)の切断パイプ体2Bが得られる。
【0032】
次いで、タップ工具等により、前記切断パイプ体2Bの両端から前記貫通孔6の内周面に相互に逆ネジとされた雌ネジを形成することにより、図3(C)に示すように、中心部を貫通する貫通孔6に雌ネジ9a、9bを備え、外周面に全長にわたる係合面8を備えたパイプ部材2が形成される。
【0033】
パイプ部材2は、素材をアルミニウムとするので、ロッド3a、3bの雄ネジ10a、10bと強固にネジ結合させるためには、雌ネジ9a、9bの軸方向長さ領域Sを十分に確保することが必要となる。ところで、アルミ製のパイプ部材2(切断パイプ体2B)の領域Sが長くなればなるほど、雌ネジ9a、9bをタップ形成する際に、切削されたアルミ素材の切粉がタップ工具に付着し、タップ加工を困難にするおそれがある。この点に関して、パイプ部材2(切断パイプ体2B)は、内周面に溝7を形成しており、図3(D)に示すように、該溝7の深さD1を雌ネジ9a、9bのネジ深さD2に対して、D1>D2に構成しているので、タップ時に切削されるアルミ素材の切粉が該溝7を介して好適に外部に排出され、タップ作業を容易にする。雌ネジ9a、9bのネジ山の連続性と前記切粉排出性の両者を過不足なく満足させるためには、図示のように、貫通孔6の直径方向に位置して2条の溝7、7を形成することが好ましいが、少なくとも1条以上の溝7を形成しておけば良い。
【0034】
(連結部材の生産に関する特徴的構成)
連結部材4a、4bの形成工程を図4に示している。連結部材4(4a、4b)は、図4(A)に示すような長尺体4Aを原材料としている。長尺体4Aは、アルミニウムの押出成形により形成されており、該押出方向に向けて前記ベース板部12を構成する帯状壁部12Aと前記翼板部13を構成する耳状壁部13Aを延設しており、上述した嵌合部13a、13aを内側に備えている。
【0035】
そこで、図4(B)に示すように、前記長尺体4Aを長手方向に関して所定の長さL2に切断することにより、ベース板部12と翼板部13、13を備えた切断ピース体4Bが形成される。従って、1本の長尺体4Aから複数個(好ましくは多数個)の切断ピース体4Bが得られる。
【0036】
次いで、図4(C)に示すように、前記切断ピース体4Bのベース板部12に通孔14を穿孔すると共に、翼板部13、13に軸支孔15、15を穿孔することにより、連結部材4(4a、4b)が形成され、このようにして連結部材4(4a、4b)が量産される。尚、必要に応じて、翼板部13、13のコーナ部分に面取り部28を形成する等の任意の加工を施しても良い。連結部材4(4a、4b)は、図4(D)(E)に示すように、ベース板部12に臨む翼板部13、13の内側に嵌合部13a、13aを形成しているので、頭付きボルト11a、11bを通孔14に挿通したとき、頭部16を該嵌合部13a、13bに対して回動不能に嵌合させるように構成されている。
【0037】
(ブラケット部材の生産に関する特徴的構成)
第1ブラケット部材5aの形成工程を図5に示し、第2ブラケット部材5bの形成工程を図6に示している。何れのブラケット部材5(5a、5b)も基本的な形成工程は同じであるから、あわせて同時に説明する。ブラケット部材5は、図5(A)及び図6(A)に示すような長尺体5Aを原材料としている。長尺体5Aは、アルミニウムの押出成形により形成されており、該押出方向に向けて、前記軸受部20を構成するための軸支孔19と中空部23を貫設した管状部20Aと、前記舌片部21を構成するための板状壁部21Aを延設している。
【0038】
そこで、図5(B)及び図6(B)に示すように、前記長尺体5Aを長手方向に関して所定の長さL3に切断することにより、軸受部20と舌片部21を備えた切断ピース体5Bが形成される。従って、1本の長尺体5Aから複数個(好ましくは多数個)の切断ピース体5Bが得られる。
【0039】
次いで、図5(C)及び図6(C)に示すように、前記切断ピース体5Bの舌片部21に固着孔22を穿孔することにより、ブラケット部材5(5a、5b)が形成され、このようにしてブラケット部材5(5a、5b)が量産される。
【符号の説明】
【0040】
1 ターンバックル
2 パイプ部材
2A 長尺体
2B 切断パイプ体
3a、3b ロッド
4a、4b 連結部材
4A 長尺体
5a、5b ブラケット部材
5A 長尺体
6 貫通孔
7 溝
8 係合面
9a、9b 雌ネジ
10a、10b 雄ネジ
11a、11b 頭付きボルト
12 ベース板部
13 翼板部
14 通孔
15 軸支孔
16 頭部
17 固着ナット
18 ロックナット
19 軸受孔
20 軸受部
21 舌片部
22 固着孔
23 中空部
24 枢支ボルト
25 ナット
26 外壁
27 庇パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸方向に延びると共に両端部に相互に逆ネジとされる雌ネジ(9a,9b)を形成したパイプ部材(2)と、前記雌ネジのそれぞれに進退自在に螺合する雄ネジ(10a,10b)を形成した一対のロッド(3a)(3b)と、該ロッドの基端部に固着された連結部材(4a)(4b)と、該連結部材に対して前記X軸方向と交差するY軸方向の軸回りに回動自在に連結されたブラケット部材(5a)(5b)とから構成されたターンバックルにおいて、
前記パイプ部材(2)は、アルミニウムの押出成形より該押出方向に向けて延びる貫通孔(6)の内周面に溝(7)を形成し、外周面に断面形状が多角形となる係合面(8)を形成した長尺体(2A)を原材料として、該長尺体を長手方向に関して所定の長さL1に切断することにより形成した切断パイプ体(2B)から構成されており、
該切断パイプ体(2B)の両端から貫通孔(8)の内周面に前記雌ネジ(9a,9b)を形成しており、該雌ネジ(9a,9b)のネジ深さD2に対して前記溝(7)の深さD1を、D1>D2に形成して成ることを特徴とするターンバックル。
【請求項2】
前記連結部材(4a)(4b)は、Y軸方向に配置されるベース板部(12)と、該ベース板部の両端からX軸方向に延びる翼板部(13,13)を一体に備え、
前記ブラケット部材(5a)(5b)は、前記連結部材の一対の翼板部(13,13)の間に嵌入される軸受部(20)と、該軸受部から延設された舌片部(21)を一体に備え、
前記連結部材(4a)(4b)の翼板部(13,13)と前記ブラケット部材(5a)(5b)の軸受部(20)に支軸(24)を挿通させることにより、該支軸を介して連結部材(4a)(4b)とブラケット部材(5a)(5b)を回動自在に連結するように構成されており、
前記連結部材(4a)(4b)は、アルミニウムの押出成形により該押出方向に向けて前記ベース板部(12)を構成する帯状壁部(12A)と前記翼板部(13,13)を構成する耳状壁部(13A,13A)を延設した長尺体(4A)を原材料として、該長尺体(4A)を長手方向に関して所定の長さL2に切断することにより形成した切断ピース体(4B)により構成されており、
該連結部材(4a)(4b)の前記翼板部(13,13)に前記支軸(24)を挿通させる軸支孔(15,15)を穿設して成ることを特徴とする請求項1に記載のターンバックル。
【請求項3】
前記連結部材(4a)(4b)は、Y軸方向に配置されるベース板部(12)と、該ベース板部の両端からX軸方向に延びる翼板部(13,13)を一体に備え、
前記ブラケット部材(5a)(5b)は、前記連結部材の一対の翼板部(13,13)の間に嵌入される軸受部(20)と、該軸受部から延設された舌片部(21)を一体に備え、
前記連結部材(4a)(4b)の翼板部(13,13)と前記ブラケット部材(5a)(5b)の軸受部(20)に支軸(24)を挿通させることにより、該支軸を介して連結部材(4a)(4b)とブラケット部材(5a)(5b)を回動自在に連結するように構成されており、
前記ブラケット材(5a)(5b)は、アルミニウムの押出成形により該押出方向に向けて前記軸受部(20)を構成する軸受孔(19)を貫設した管状部(20A)と前記舌片部(21)を構成する板状壁部(21A)を延設した長尺体(5A)を原材料として、該長尺体(5A)を長手方向に関して所定の長さL3に切断することにより形成した切断ピース体(5B)により構成されており、
該ブラケット部材(5a)(5b)の前記舌片部(21)に固着孔(22)を穿設して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のターンバックル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−6840(P2011−6840A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148278(P2009−148278)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000133629)株式会社ツヅキ (10)
【Fターム(参考)】