説明

ダイナミックダンパー

【課題】ダイナミックダンパーの固有振動数を調整するために該ダイナミックダンパーに予め余分な調整機構を取り付けておくことなく、調整が必要なときに振動数調整部材を適宜着脱可能に装着し得るダイナミックダンパーを提供する。
【解決手段】建物構造体に固定されるフレーム3と、該フレーム3に対して振動可能に支持された重錘5とを有するダイナミックダンパー6であって、重錘5の固有振動数を調整するための第1振動数調整部材となる付加重錘20或いはコイルバネ8を、該重錘5の中央下部の1箇所の第1取付空間24aに下方から着脱可能に装着すると共に、第1振動数調整部材の両側位置に第2振動数調整部材となる付加重錘20或いはコイルバネ8を着脱可能に装着し得る第2取付空間24bを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物構造体に固定されるフレームと、該フレームに対して振動可能に支持された重錘と、を有するダイナミックダンパーの該重錘の固有振動数を調整することができるダイナミックダンパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では中低層の住宅に対して、強風による風振動や道路を走行する自動車等による交通振動等の環境振動が問題視されている。日常的に発生する環境振動については、非常に微少な振幅の振動ではあるが、居住者に対しては日常生活において大きな影響を与えることがある。特に鉄骨3階建て住宅は、高い耐震性とプラン自由度がある反面、交通振動により発生する振動や、内部の人の動きにより発生する振動と建物の固有振動数が比較的近いために、これらの振動の影響を受け易い。これらの振動を効果的に低減させるために近年では建物にダイナミックダンパー(TMD;Tuened Mass Damper;同調振動系型ダンパー)を設置するケースが増えている。
【0003】
ダイナミックダンパーを用いて建物の振動を低減させるためには、建物の固有振動数とダイナミックダンパーの重錘の固有振動数を正確に一致させる必要があり、そのため、建物が完成した後にダイナミックダンパーの調整がほとんどの場合必要となる。このため、通常は後調整の有無に拘わらずダイナミックダンパーに対して予め調整機構をもたせておく。
【0004】
従来、上記環境振動に対応した制振装置の重錘の固有振動数を微調整する方法としてバネを剛性の異なるものに取り替えたり、バネの本数を調整したり、或いは、特開2001−254775号公報(特許文献1)に記載されたように、フレームと重錘間に、該重錘の振動方向と同一方向にバネをとりつけ、そのバネ全体のバネ定数を変化させることにより、重錘の固有振動数を変化させて微調整する方法がある。
【0005】
また一方で、ダイナミックダンパーは建物の上部に設置されるため、天井裏内に設置されることが多く、重錘の固有振動数の調整作業は脚立に立って不安定な姿勢で、天井に設けられた点検口をのぞき込みながら作業される。
【0006】
例えば、特開2003−166365号公報(特許文献2)及び特開2005−54360号公報(特許文献3)には、1つの重錘に対して複数個のダンパー調整用ユニットを予め設けたことが記載されている。
【0007】
また、特開2001−124136号公報(特許文献4)には制振装置に振動系の固有振動数を調節する振動数調節機構が設けられ、ウエイト部材(重錘)は複数のプレートを積層して4隅を上下に貫通するボルトによりメインフレーム上に一体的に固定してあり、プレートの枚数を変えることにより重量を変更して振動系の固有振動数を調節出来ることが記載されている。
【0008】
また、特開2001−193312号公報(特許文献5)にはマス部材(重錘)に調節用空所を形成し、該調節用空所に付加マス部材を収容可能とし、付加マス部材を増減させることで制振装置におけるマス部材の質量を調節してチューニング周波数の設定を行うことが記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−254775号公報
【特許文献2】特開2003−166365号公報
【特許文献3】特開2005−054360号公報
【特許文献4】特開2001−124136号公報
【特許文献5】特開2001−193312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述の特許文献1の技術では、制振用のバネを直接調整するため重錘の固有振動数を微調整する構造が複雑になるという問題が有り、特許文献2、3の技術では、1つの重錘に対して複数個のダンパー調整用ユニットを予め再調整可能に設置しなければならず、調整時にも複数個のダンパー調整用ユニットを個別に調整しなければならないという問題がある。
【0011】
また、特許文献4の技術では、1つの重錘に対して1つの振動数調節機構を用意したものであるものの、構造が複雑であるため一旦設置した後で再調節する場合には天井等の点検口から振動数調節機構のみを容易に取り外して調整することが出来ないという問題があった。
【0012】
また、特許文献5の技術では、マス部材(重錘)に予め調節用空所を形成し別の調整用マスを予め増減可能に取り付けた構成であるため設置後に再調整を行うためには予め調整用のマスを取り付けておく必要があり、ダイナミックダンパー自体が大型化し、コストアップの要因となるという問題がある。
【0013】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、ダイナミックダンパーの重錘の固有振動数を調整するために該ダイナミックダンパーに対して予め余分な調整機構を取り付けておくことなく、重錘の中央下部とその両側対称位置に第1、第2の振動数調整部材を着脱可能に装着し得る第1、第2取付空間を用意しておき、調整が必要なときに該第1、第2取付空間を利用して第1、第2の振動数調整部材を適宜着脱可能に装着し得るダイナミックダンパーを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するための本発明に係るダイナミックダンパーの第1の構成は、建物構造体に固定されるフレームと、該フレームに対して振動可能に支持された重錘と、を有するダイナミックダンパーであって、前記重錘の固有振動数を調整するための第1振動数調整部材を、該重錘の中央下部の1箇所の第1取付空間に下方から着脱可能に装着すると共に、該重錘の中央下部に取り付けられる前記第1振動数調整部材の両側位置に、前記重錘の固有振動数を調整するための第2振動数調整部材を着脱可能に装着し得る第2取付空間を設けたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るダイナミックダンパーの第2の構成は、前記第1の構成において、前記第2取付空間は前記重錘の底面部に形成された凹溝により構成され、該凹溝と前記フレームとの間に前記第2振動数調整部材の取付手段を設けたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るダイナミックダンパーの第3の構成は、前記第1、第2の構成において、前記第2振動数調整部材は、前記重錘の重量を補足して該重錘の固有振動数を下げるための付加重錘、或いは前記重錘の振動方向の固有振動数を上げるためのコイルバネの何れか一方、若しくは両方からなることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るダイナミックダンパーの第4の構成は、前記第1〜第3の構成において、前記第2振動数調整部材が前記重錘の振動方向の固有振動数を上げるためのコイルバネで構成され、該第2振動数調整部材の取付手段は該重錘の任意の振動方向における固有振動数を調整し得る構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るダイナミックダンパーの第1の構成によれば、重錘の固有振動数を調整する必要が生じたときに、重錘の中央下部に設けた第1取付空間に第1振動数調整部材を取り付けて重錘の固有振動数を調整することが出来、更に追加的な調整が必要となる場合には、第1取付空間に取り付けた第1振動数調整部材の両側位置に設けた第2取付空間に第2振動数調整部材を取り付けて重錘の固有振動数を調整することが出来る。
【0019】
即ち、建物設計時に、建物の構造要素と、帳壁等の非構造部材の水平剛性と建物重量から建物の固有振動数を推定すると共に、本装置の据付時にその取り付けられる建物の固有振動数に対応するように設計されたダイナミックダンパーを設置しておく。そして、建物完成後、該建物の固有振動数が設計時の予測からズレが生じた場合のみに、重錘の中央下部に設けた第1取付空間に第1振動数調整部材を取り付けて重錘の固有振動数を調整することが出来る。また、該建物の固有振動数の調整において、第1取付空間に第1振動数調整部材を取り付けるだけでは十分な対応が出来ない場合には第1取付空間に取り付けた第1振動数調整部材の両側位置に設けた第2取付空間に第2振動数調整部材を取り付けて重錘の固有振動数を調整することが出来る。
【0020】
ダイナミックダンパーの重錘の固有振動数を上げたい場合は、第1、第2振動数調整部材としてコイルバネを装着する。
【0021】
ダイナミックダンパーの重錘の固有振動数を下げたい場合は、第1、第2振動数調整部材として付加重錘を装着する。
【0022】
また、本発明に係るダイナミックダンパーの第2の構成によれば、重錘の底面部に形成された凹溝からなる第2取付空間内に第2振動数調整部材を収容することで、重錘の底面部から突出する第2振動数調整部材の嵩を小さくすることが出来、ダイナミックダンパーをコンパクトに出来る。
【0023】
また、本発明に係るダイナミックダンパーの第3の構成によれば、第2振動数調整部材を付加重錘とすれば重錘の重量を補足して該重錘の固有振動数を下げることが出来、第2振動数調整部材をコイルバネとすれば、重錘の任意の振動方向の固有振動数を上げることが出来る。
【0024】
また、本発明に係るダイナミックダンパーの第4の構成によれば、第2振動数調整部材をコイルバネで構成し、該第2振動数調整部材の取付手段は重錘の任意の振動方向における固有振動数を調整し得る構成とすることが出来る。その取付手段の具体的構成は、重錘に取り付けられたコ字形状の係止部材の3辺と、建物構造体に固定されるフレームに取り付けられた方形状の係止部材の3辺との間でコイルバネを任意の方向に張設して重錘の任意の振動方向における固有振動数を調整し得る構成とすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図により本発明に係るダイナミックダンパーの一実施形態を具体的に説明する。図1及び図2は本発明に係るダイナミックダンパーの構成を示す平面図及び断面図、図3は本発明に係るダイナミックダンパーの構成を示す分解図、図4〜図6は各種の振動数調整部材を装着したダイナミックダンパーの構成を示す平面図である。
【0026】
図1〜図6において、建物構造体となる梁材1の上フランジ1a上にダイナミックダンパー6のフレーム3が固定されている。フレーム3の底面部3b上には重錘支持体となる積層ゴム17とバネ4により方形状で構成された重錘5が振動可能に支持されている。フレーム3の起立した側辺部3aと重錘5との間にはバネ4が取り付け固定される。なお、このバネ4は装置据付後に通常調整されることがない。
【0027】
フレーム3の底面部3bには第1、第2振動数調整部材となる付加重錘20やコイルバネ8を着脱するための開口部3b1が形成されている。また、開口部3b1に直交して底板27が設けられており、該底板27には付加重錘20やコイルバネ8を着脱するための開口部27aが形成されている。
【0028】
尚、重錘支持体としては積層ゴム17の代わりに球体を介して振動可能に支持する構成でも良いし、バネ4の代わりにゴム等の弾性部材によって重錘5を振動可能に支持することでも良い。
【0029】
重錘5の底面部5aには凹溝5cが設けられおり、この凹溝5cにより重錘5の中央下部の1箇所の第1取付空間24aと、該第1取付空間24aの両側対称位置に第2取付空間24bが形成されている。
【0030】
重錘5の中央下部の第1取付空間24aには、底板27の開口部27a及びフレーム3の底面部3bの開口部3b1を介して下方から重錘5の固有振動数を調整するための第1振動数調整部材となる付加重錘20或いはコイルバネ8を着脱可能に装着し得るように構成されており、第1振動数調整部材の両側対称位置に配置される第2取付空間24bには重錘5の固有振動数を調整するための第2振動数調整部材となる付加重錘20或いはコイルバネ8を着脱可能に装着し得るように構成されている。付加重錘20は重錘5の重量を補足して該重錘5の固有振動数を下げる作用を有し、コイルバネ8は重錘5の振動方向の固有振動数を上げる作用を有するものである。
【0031】
本実施形態の付加重錘20は複数枚の方形板状の付加重錘が積層されて必要数を調整して使用される。第1取付空間24aに取付けられる付加重錘20には十字状に4箇所、第2取付空間24bに取り付けられる付加重錘20には4隅に4箇所の貫通孔20aが形成されている。
【0032】
重錘5の底面部5aの凹溝5c内には第1、第2振動数調整部材の取付手段となる複数のネジ孔5bが設けられている。本実施形態のネジ孔5bは重錘5の底面部5aに凹溝5cにより構成される第1、第2取付空間24a,24bに着脱可能に装着される付加重錘20に形成された貫通孔20aに対応して適宜設けられており、このネジ孔5bを利用してコイルバネ8で構成される第2振動数調整部材の取付手段となるバネ係止部材28,29が重錘5の底面部5aの凹溝5c内にボルト14により着脱可能に装着される。
【0033】
一方、底板27には取付手段となる複数のネジ孔27bが設けられている。本実施形態では、このネジ孔27bを利用してコイルバネ8で構成される第2振動数調整部材の取付手段となるバネ係止部材30,31,32が底板27の下面側(或いは上面側)にボルト14により着脱可能に装着される。
【0034】
図1は第1、第2取付空間24a,24bに付加重錘20が設けられ、更に第1取付空間24aに付加重錘20の下面に取り付けられた断面ハット型のバネ係止部材29と、底板27に取り付けられた断面Z字形状のバネ係止部材32との間にコイルバネ8が係止されて張設された一例である。図2は図1において、第2取付空間24bの付加重錘20が除去された場合の一例を示す。図3(a),(b)はそれぞれ図1、図2の分解説明図である。本実施形態ではコイルバネ8の伸張方向が図1〜図3の左右方向に配置されたものである。
【0035】
図4(a)は第1取付空間24aに付加重錘20を取り付けた場合の一例を示し、図4(b)は第1、第2取付空間24a,24bにそれぞれ付加重錘20を取り付けた場合の一例を示す。図5(a)は第1取付空間24aに付加重錘20を取り付け、第2取付空間24bに重錘5の底面部5aの凹溝5cに取り付けられた断面Z字形状のバネ係止部材28と、底板27に取り付けられた断面Z字形状のバネ係止部材32との間にコイルバネ8が係止されて張設された一例である。本実施形態ではコイルバネ8の伸張方向が図5の左右方向に配置されたものである。
【0036】
図5(b)は第1取付空間24aに重錘5の底面部5aの凹溝5cに取り付けられた断面ハット型のバネ係止部材29と、底板27に取り付けられた断面Z字形状のバネ係止部材31との間にコイルバネ8が係止されて張設された一例である。本実施形態ではコイルバネ8の伸張方向が図5の上下方向に配置されたものである。
【0037】
図5(c)は第1取付空間24aに重錘5の底面部5aの凹溝5cに取り付けられた断面ハット型のバネ係止部材29と、底板27に取り付けられた断面Z字形状のバネ係止部材31との間にコイルバネ8が係止されて張設され、第2取付空間24bに重錘5の底面部5aの凹溝5cに取り付けられた断面Z字形状のバネ係止部材28と、底板27に取り付けられた断面Z字形状のバネ係止部材32との間にコイルバネ8が係止されて張設された一例である。本実施形態では第1取付空間24aに設けられるコイルバネ8の伸張方向が図5の上下方向に配置され、第2取付空間24bに設けられるコイルバネ8の伸張方向が図5の左右方向に配置されたものである。
【0038】
図6は重錘5の底面部5aに着脱可能に装着される取付手段となるバネ係止部材33と、底板27の下面側(或いは上面側)に着脱可能に装着される取付手段となるバネ係止部材30とにより構成される第2振動数調整部材となるコイルバネ8の取付手段が重錘5の任意の振動方向における固有振動数を調整し得る構成としたものである。即ち、重錘5の底面部5aに取り付けられた外形コ字形状のバネ係止部材33の3辺と、建物構造体に固定されるフレーム3の底面部3bに固定された底板27に取り付けられた方形状のバネ係止部材30の該コ字形状のバネ係止部材28の3辺に対向する3辺との間でコイルバネ8を任意の方向に張設して重錘5の任意の振動方向における固有振動数を調整し得る構成としている。
【0039】
図6では、第1取付空間24aに重錘5の底面部5aの凹溝5cに取り付けられた断面ハット型のバネ係止部材29と、底板27に取り付けられた断面Z字形状のバネ係止部材31との間にコイルバネ8が係止されて張設され、第2取付空間24bに重錘5の底面部5aの凹溝5cに取り付けられた外形コの字形状で断面J字形状のバネ係止部材33と、底板27に取り付けられた外形方形状で断面Z字形状のバネ係止部材30との間にコイルバネ8が係止されて張設された一例である。本実施形態では第1取付空間24aに設けられるコイルバネ8の伸張方向が図6の上下方向に配置され、第2取付空間24bに設けられるコイルバネ8の伸張方向は図6の上下左右方向或いは斜め方向に適宜配置される。
【0040】
このように、重錘5の底面部5aの凹溝5cにより形成された第2取付空間24bを利用して、該凹溝5cとフレーム3に固定された底板27との間に第2振動数調整部材となるコイルバネ8の取付手段として、バネ係止部材28,30,32,33が重錘5の底面部5aの凹溝5c或いは底板27の下面側(或いは上面側)に適宜選択的に着脱可能に装着し得る構成としている。
【0041】
コイルバネ8の両端部はバネ係止部材28〜33の各係止片28b〜33bに設けられた孔、爪、アーム等の種々の係止手段により着脱可能に係止されている。
【0042】
図1〜図6に示すように、ダイナミックダンパー6は、必要に応じて付加重錘20と、複数のコイルバネ8との何れか一方、若しくは両方を重錘5の底面部5aに形成された凹溝5cからなる第1、第2取付空間24a,24bを利用して選択的に着脱可能に装着し得るように構成されている。
【0043】
ここで、共通の第1、第2取付空間24a,24bとは、天井板12に設けられた点検口13、フレーム3の底面部3bの開口部3b1、底板27の開口部27a及び重錘5の底面部5aに形成された凹溝5cにより形成された取付空間(取付開口部)をいう。
【0044】
梁材1の下フランジ1bの下面側に配置された天井板12には第1、第2取付空間24a,24bを形成する凹溝5cの真下に対応する位置で該凹溝5cの外形に対応する大きさを有する点検口13が設けられており、扉12aを開放して点検口13から第1、第2取付空間24a,24bを形成する凹溝5cに付加重錘20或いはコイルバネ8を取り付け、或いは取り外し作業が出来るように構成されている。
【0045】
フレーム3の底面部3b及び底板27には付加重錘20、コイルバネ8及びバネ係止部材28〜33が挿通し得る方形状の開口部3b1及び開口部27aが形成されており、図4に示すように、重錘5の底面部5aの凹溝5c内に形成したネジ孔5bに付加重錘20のみを取り付ける場合には、先ず、点検口13側から該開口部3b1及び開口部27aを介して付加重錘20を挿入して重錘5の底面部5aに形成されたネジ孔5bにボルト14を付加重錘20の貫通孔20aに挿通して螺合締結する。
【0046】
図1〜図3、図5(b),(c)及び図6に示すように、第1取付空間24aにコイルバネ8を取り付ける場合には、点検口13側から該開口部3b1及び開口部27aを介して断面ハット形状のバネ係止部材29を挿入して重錘5の底面部5aに形成されたネジ孔5bにボルト14をバネ係止部材29の固定片29aに形成した貫通孔に挿通して螺合締結し固定する。次に底板27の下面側(或いは上面側)に断面J字形状のバネ係止部材31,32の固定片31a,32aを底板27のネジ孔27bを利用してボルト止めして固定する。そして、点検口13側から該開口部3b1及び開口部27aを介してコイルバネ8を挿入してバネ係止部材29の係止片29bとバネ係止部材31,32の係止片31b,32bとの間に該コイルバネ8の両端部を係止する。このとき、コイルバネ8は重錘5と底板27との間に配置される。
【0047】
図5(a),(c)及び図6に示すように、第2取付空間24bにコイルバネ8を取付ける場合には、点検口13側から該開口部3b1及び開口部27aを介して断面Z形状のバネ係止部材28,33を挿入して重錘5の底面部5aの凹溝5c内に形成されたネジ孔5bにボルト14をバネ係止部材28,33の固定片28a,33aに形成した貫通孔に挿通して螺合締結し固定する。次に底板27の下面側(或いは上面側)に断面Z字形状のバネ係止部材30,32の固定片30a,32aに設けられた貫通孔にボルト14を挿通し底板27のネジ孔27bに螺合締結して固定する。そして、点検口13側から該開口部3b1及び開口部27aを介してコイルバネ8を挿入してバネ係止部材28,33の係止片28b,33bとバネ係止部材30,32の係止片30b,32bとの間に該コイルバネ8の両端部を係止する。
【0048】
ここで、コイルバネ8のバネ定数を調整する方法としては、コイルバネ8の本数を変更するか、コイルバネ8の太さを変更してバネ定数を変更するか、コイルバネ8の可変位長を変更する等によりコイルバネ8のバネ定数を調整することが出来る。
【0049】
図1〜図3では、重錘5の底面部5aの凹溝5c内の中央部に形成された第1取付空間24aに取り付けられるバネ係止部材29を長尺方向が図1〜図3の上下方向(縦方向)に配置して使用し、長尺方向が図1〜図3の上下方向(縦方向)に配置されたバネ係止部材32との間でコイルバネ8を係止して該コイルバネ8の伸張方向を図1〜図3の左右方向(横方向)に配置した場合の一例を示し、図5(a),(c)及び図6では、バネ係止部材29を長尺方向を図5(a),(c)及び図6の左右方向(横方向)に配置して使用し、長尺方向が図5(a),(c)及び図6の左右方向(横方向)に配置されたバネ係止部材31との間でコイルバネ8を係止して該コイルバネ8の伸張方向を図5(a),(c)及び図6の上下方向(縦方向)に配置した場合の一例を示す。
【0050】
上記構成によれば、重錘5の固有振動数を調整する必要が生じたときに、重錘5の中央下部に設けた第1取付空間24aに付加重錘20やコイルバネ8等の第1振動数調整部材を取り付けて重錘5の固有振動数を調整することが出来、更に追加的な調整が必要となる場合には、第1取付空間24aに取り付けた第1振動数調整部材の両側位置に設けた第2取付空間24bに付加重錘20やコイルバネ8等の第2振動数調整部材を取り付けて重錘の固有振動数を調整することが出来る。
【0051】
即ち、建物設計時に、建物の構造要素と、帳壁等の非構造部材の水平剛性と建物重量から建物の固有振動数を推定すると共に、本装置の据付時にその取り付けられる建物の固有振動数に対応するように設計されたダイナミックダンパー6を設置しておく。そして、建物完成後、該建物の固有振動数が設計時の予測からズレが生じた場合のみに、重錘5の中央下部に設けた第1取付空間24aに第1振動数調整部材を取り付けて重錘5の固有振動数を調整することが出来る。また、該建物の固有振動数の調整において、第1取付空間24aに第1振動数調整部材を取り付けるだけでは十分な対応が出来ない場合には第1取付空間24aに取り付けた第1振動数調整部材の両側位置に設けた第2取付空間24bに第2振動数調整部材を取り付けて重錘5の固有振動数を調整することが出来る。
【0052】
ダイナミックダンパー6の重錘5の固有振動数を上げたい場合は、第1、第2振動数調整部材としてコイルバネ8を装着し、ダイナミックダンパー6の重錘5の固有振動数を下げたい場合は、第1、第2振動数調整部材として付加重錘20を装着すれば良い。
【0053】
また、重錘5の底面部5aに形成された凹溝5cの第2取付空間24b内に第2振動数調整部材を収容することで、重錘5の底面部から突出する第2振動数調整部材の嵩を小さくすることが出来、ダイナミックダンパー6をコンパクトに出来る。
【0054】
また、第2振動数調整部材を付加重錘20とすれば重錘5の重量を補足して該重錘5の固有振動数を下げることが出来、第2振動数調整部材をコイルバネ8とすれば、重錘5の任意の振動方向の固有振動数を上げることが出来る。
【0055】
また、第2振動数調整部材をコイルバネ8で構成し、該第2振動数調整部材の取付手段は重錘5の任意の振動方向における固有振動数を調整し得る構成とすることが出来る。その取付手段の具体的構成は、図6に示すように、重錘5に取り付けられた外形コ字形状のバネ係止部材33の3辺と、建物構造体に固定されるフレーム3の底面部3bに固定された底板27に取り付けられた方形状のバネ係止部材30の3辺との間でコイルバネ8を任意の方向に張設して重錘5の任意の振動方向における固有振動数を調整し得る構成とすることが出来る。
【0056】
このように、ダイナミックダンパー6に設けられた重錘5の固有振動数を調整する必要が生じたときにのみ、該重錘5の底面部5aに形成された凹溝5c内に形成された複数のネジ孔5b、底板27に形成された複数のネジ孔27b、バネ係止部材28〜33を適宜利用して付加重錘20やコイルバネ8を第1取付空間24a及び第2取付空間24bに適宜選択的に装着或いは脱離することが出来る。
【0057】
通常は建物の設計時に推定した該建物の固有振動数に適応するダイナミックダンパー6を取り付けるのみであり、該ダイナミックダンパー6に対して予め余分な調整機構を設けない。そのため、装置全体がシンプルになり、製作コストも抑えることが出来る。そして、固有振動数の調整が必要なときにのみフレーム3の底面部3bに設けられた開口部3b1及び底板27の開口部27aから、必要な振動数調整部材として、付加重錘20、コイルバネ8の一方、或いは両方を適宜装着することが出来る。
【0058】
また、ダイナミックダンパー6の調整時に一箇所の小さな点検口13からコイルバネ8を底板27及び重錘5から容易に取り外すことが出来、取り外した状態で、コイルバネ8のバネ定数を調整した後、再度、一箇所の小さな点検口13からコイルバネ8を底板27及び重錘5に容易に取り付けることが出来、簡単な操作で重錘5の固有振動数を容易に調整することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の活用例として、建物構造体に固定されるフレームと、該フレームに対して振動可能に支持された重錘と、を有するダイナミックダンパーの該重錘の固有振動数を調整するためのダイナミックダンパーに適用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るダイナミックダンパーの構成を示す平面図及び断面図である。
【図2】本発明に係るダイナミックダンパーの構成を示す平面図及び断面図である。
【図3】本発明に係るダイナミックダンパーの構成を示す分解図である。
【図4】各種の振動数調整部材を装着したダイナミックダンパーの構成を示す平面図である。
【図5】各種の振動数調整部材を装着したダイナミックダンパーの構成を示す平面図である。
【図6】各種の振動数調整部材を装着したダイナミックダンパーの構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0061】
1…梁材
1a,1b…上下フランジ
3…フレーム
3a…側辺部
3b…底面部
3b1…開口部
4…バネ
5…重錘
5a…底面部
5b…ネジ孔
5c…凹溝
6…ダイナミックダンパー
8…コイルバネ
12…天井板
12a…扉
13…点検口
14…ボルト
17…積層ゴム
20…付加重錘
20a…貫通孔
24a,24b…第1、第2取付空間
27…底板
27a…開口部
27b…ネジ孔
28〜33…バネ係止部材
28a〜33a…固定片
28b〜33b…係止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物構造体に固定されるフレームと、該フレームに対して振動可能に支持された重錘と、を有するダイナミックダンパーであって、
前記重錘の固有振動数を調整するための第1振動数調整部材を、該重錘の中央下部の1箇所の第1取付空間に下方から着脱可能に装着すると共に、該重錘の中央下部に取り付けられる前記第1振動数調整部材の両側位置に、前記重錘の固有振動数を調整するための第2振動数調整部材を着脱可能に装着し得る第2取付空間を設けたことを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項2】
前記第2取付空間は前記重錘の底面部に形成された凹溝により構成され、該凹溝と前記フレームとの間に前記第2振動数調整部材の取付手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のダイナミックダンパー。
【請求項3】
前記第2振動数調整部材は、前記重錘の重量を補足して該重錘の固有振動数を下げるための付加重錘、或いは前記重錘の振動方向の固有振動数を上げるためのコイルバネの何れか一方、若しくは両方からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダイナミックダンパー。
【請求項4】
前記第2振動数調整部材が前記重錘の振動方向の固有振動数を上げるためのコイルバネで構成され、該第2振動数調整部材の取付手段は該重錘の任意の振動方向における固有振動数を調整し得る構成であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のダイナミックダンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−41222(P2009−41222A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205421(P2007−205421)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】