説明

ダイボンダ及びボンディング方法

【課題】
本発明は、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供することである。
【解決手段】
本発明は、複数のダイを粘着しているダイシングテープを吸着保持し、前記ダイの寸法に対して設けられた凹部を備える支持ステージと、前記凹部の低部を摺動する剥離ステージとを備え、前記ダイを吸着し、前記ダイを吸着した状態で前記剥離ステージを前記ダイから離れる方向に摺動させ、摺動前に前記離れる方向とは反対側の前記剥離ステージの端部側において前記ダイシングテープを線状に突き上げ、前記ダイを前記ダイシングテープから剥離し、前記ダイをワークに装着し、前記剥離した後に、前記剥離ステージを元の位置に戻すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイボンダ及びボンディング方法に係わり、特に信頼性の高いダイボンダ及びボンディング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイ(半導体チップ)(以下、単にダイという)を配線基板やリードフレームなどの基板に搭載してパッケージを組み立てる工程の一部に、半導体ウエハ(以下、単にウエハという)からダイを分割する工程と、分割したダイを基板上に搭載するダイボンディング工程とがある。
【0003】
ボンディング工程の中にはウエハから分割されたダイを剥離する剥離工程がある。剥離工程では、これらダイをピックアップ装置に保持されたダイシングテープから1個ずつ剥離し、コレットと呼ばれる吸着治具を使って基板上に搬送する。
【0004】
剥離工程を実施する従来技術としては、例えば、特許文献1がある。特許文献1では、ダイを真空吸着した状態で、吸着したダイに対応したダイテープ(ダイシングテープ)を支持するテープ剥離ステージを、上昇させ、ダイからは離れる方向に水平移動させて、ピックアップすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−270542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体装置の高密度実装を推進する目的で、パッケージの薄型化が進められている。特に、メモリカードの配線基板上に複数枚のダイを三次元的に実装する積層パッケージが実用化されている。このような積層パッケージを組み立てるに際しては、パッケージ厚の増加を防ぐために、ダイの厚さを20μm以下まで薄くすることが要求される。
【0007】
ダイが薄くなると、ダイシングテープの粘着力に比べてダイの剛性が極めて低くなる。特許文献1に開示された技術では、一気にダイを押し上げるために、ダイに余計な力がかかり、ダイにダメージを与える虞がある。
【0008】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたもので、本発明の目的は、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の目的を達成するために、少なくとも下記の特徴を有する。
本発明は、複数のダイを粘着しているダイシングテープを吸着保持し、前記ダイの寸法に対して設けられた凹部を備える支持ステージと、前記凹部の低部を摺動する剥離ステージと、前記剥離ステージをピックアップする前記ダイから離れる方向に前後に摺動させる第1の駆動手段と、前記離れる方向とは反対側の前記剥離ステージの端部側に設けられた回転軸に回転可能に設けられ前記ダイシングテープを線状に突き上げる突き上げ部材と、前記突き上げ部材を前記ダイシングテープに突き上げる第2の駆動手段とを備える突き上げユニットと、前記ダイを吸着する吸着部材と、前記吸着部材で吸着され前記突き上げられた前記ダイを前記ダイシングテープから剥離して基板に装着するボンディングヘッドと、を有することを第1の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、複数のダイを粘着しているダイシングテープを吸着保持し、前記ダイの寸法に対して設けられた凹部を備える支持ステージと、前記凹部の低部を摺動する剥離ステージとを備え、前記ダイを吸着する吸着ステップと、前記ダイを吸着した状態で前記剥離ステージを前記ダイから離れる方向に摺動させる摺動ステップと、前記離れる方向とは反対側の前記剥離ステージの端部側において前記ダイシングテープを線状に突き上げる突き上げステップと、前記ダイを前記ダイシングテープから剥離する剥離ステップと、
前記剥離した後に、前記剥離ステージを元の位置に戻す戻しステップと、前記ダイをワークに装着するステップと、を有することを第2の特徴とする。
さらに、本発明は、前記突き上げは、前記剥離ステージの端部側に設けられた回転軸に回転可能に設けられ、前記ダイシングテープを線状に突き上げる突き上げ部材を突き上げることを第3の特徴とする
また、本発明は、前記突き上げ部材の傾斜角度を予め調整し、前記傾斜角度に設定する
ことを第4の特徴とする。
さらに、本発明は、前記剥離ステージを前記ダイから離れる方向に摺動させる間は、前記剥離ステージ、前記ダイシングテープ及び支持ステージが形成する剥離補助空間を真空にすることを第5の特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記剥離ステージを元に位置に戻し中は、前記剥離ステージ、前記ダイシングテープ及び支持ステージが形成する剥離補助空間の真空を解除することを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態であるダイボンダを上から見た概念図である。
【図2】本発明の一実施形態であるピックアップ装置の外観斜視図を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態であるピックアップ装置の主要部を示す概略断面図である。
【図4】本実施形態における突き上げユニットの第1の実施例の概略構成を示した側面図である。
【図5】図4に示した突き上げユニットの上面を模式的に示した図である。
【図6】実施例1において、回転軸の回転によって、剥離ステージが図4に示す矢印J方向に移動する原理を示した図である。
【図7】本実施形態の突き上げユニットの第1の実施例におけるダイのピックアップフローを示す図である。
【図8】図7に示す主要ステップにおけるステージ部及び突き上げ部の状態を示す図である。
【図9】本実施形態における突き上げユニットの第2の実施例を示し、ステージ部と突き上げ部のみの概略構成を示す側面図である。
【図10】本実施形態における突き上げユニットの第3の実施例を示し、ステージ部と突き上げ部のみの概略構成を示す側面図である。
【図11】本実施形態における突き上げユニットの第4の実施例の概略構成を示した側面図である。
【図12】実施例4において、回転軸の回転によって、剥離ステージが図4に示す矢印J方向に移動する原理を示した図である。
【図13】本実施形態における突き上げユニットの第5の実施例を示し、ステージ部と突き上げ部のみの概略構成を示す側面図である。
【図14】本実施形態における突き上げユニットの第6の実施例を示し、ステージ部と突き上げ部のみの概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態であるダイボンダ10を上から見た概念図である。ダイボンダは大別してウエハ供給部1と、ワーク供給・搬送部2と、ダイボンディング部3とを有する。
【0015】
ワーク供給・搬送部2はスタックローダ21と、フレームフィーダ22と、アンローダ23とを有する。スタックローダ21によりフレームフィーダ22に供給されたワーク(リードフレーム又は基板等)は、フレームフィーダ22上の2箇所の処理位置を介してアンローダ23に搬送される。
ダイボンディング部3はプリフォーム部31とボンディングヘッド部32とを有する。プリフォーム部31はフレームフィーダ22により搬送されてきたワークにダイ接着剤を塗布する。ボンディングヘッド部32は、ピックアップ装置12からダイをピックアップして上昇し、ダイを平行移動してフレームフィーダ22上のボンディングポイントまで移動させる。そして、ボンディングヘッド部32はダイを下降させダイ接着剤が塗布されたワーク上にボンディングする。
【0016】
ウエハ供給部1はウエハカセットリフタ11とピックアップ装置12とを有する。ウエハカセットリフタ11はウエハリングが充填されたウエハカセット(図示せず)を有し,順次ウエハリングをピックアップ装置12に供給する。
【0017】
次に、図2および図3を用いてピックアップ装置12の構成を説明する。図2はピックアップ装置12の外観斜視図を示す図である。図3はピックアップ装置12の主要部を示す概略断面図である。図2、図3に示すように、ピックアップ装置12はウエハリング14を保持するエキスパンドリング15と、ウエハリング14に保持され複数のダイ(チップ)4が粘着されたダイシングテープ16を水平に位置決めする支持リング17と、支持リング17の内側に配置されダイ4を上方に突き上げるための突き上げユニット50とを有する。突き上げユニット50は、図示しない駆動機構によって、上下方向に移動するようになっており、水平方向にはピックアップ装置12が移動するようになっている。
【0018】
ピックアップ装置12は、ダイ4の突き上げ時に、ウエハリング14を保持しているエキスパンドリング15を下降させる。その結果、ウエハリング14に保持されているダイシングテープ16が引き伸ばされ、ダイ4の間隔が広げ、突き上げユニット50によりダイ下方よりダイ4を突き上げる。ダイ4の間隔の広がりによって、ダイ4のピックアップ性が向上する。なお、薄型化に伴い接着剤は液状からフィルム状となり、ウエハとダイシングテープ16との間にダイアタッチフィルム18と呼ばれるフィルム状の接着材料を貼り付けている。ダイアタッチフィルム18を有するウエハでは、ダイシングはウエハとダイアタッチフィルム18に対して行なわれる。従って、剥離工程では、ウエハとダイアタッチフィルム18をダイシングテープ16から剥離する。
【0019】
図4は、本実施形態における突き上げユニット50の第1の実施例の概略構成を示した側面図である。図5は図4に示した突き上げユニット50の上面を模式的に示した図である。
突き上げユニット50は、ダイ4を有するダイシングテープ16を支持するステージ部60と、ダイシングテープを突き上げる突き上げ部70と、突き上げ部を駆動する駆動部80と、真空室55、ユニット筐体51とを有する。なお、40はダイ4を吸着する吸着手段であるコレットで、35はコレットで吸着したダイ4をワークに装着するボンディングヘッドである。
【0020】
ステージ部60は、ダイシングテープ16を支持し支持ステージ64と、支持ステージ64に形成され後述する剥離ステージ71が摺動するコの字状の凹部61と、凹部61の底部61a(以下、凹部底部という)に設けられ、凹部61の周囲に複数列設けられた多数の吸着孔63とを有する。
【0021】
突き上げ部70は、ステージ部60に設けられた凹部61を摺動する剥離ステージ71と、剥離ステージ71に設けられた回転軸72aを中心に回転可能な奥行き方向に細長い突き上げ板72と、突き上げ板72を突き上げる中間部品91と、中間部品91を突上げる突き上げピン73とを有する。剥離ステージ71は、上面にダイ4の面積より広い平坦部71aと、突き上げ板72と反対側が傾斜部71bとを有する。また、剥離ステージ71の底面は、凹部底部61aと摺動し易いに様に、互いに滑り易い部材で構成されている。
【0022】
中間部品91は、底部に突き上げピン73が往復し、突き上げピン73の回転運動を直動に変える回転直動変換溝78がある。また、中間部品91の上部は、突き上げ板72に挿入される挿入部92がある。挿入部92には左右に2本の軸93が両外側に延びている。軸93は、突き上げ板72の端部72eに設けた貫通穴72dに回転可能に保持される。なお、突き上げ板72は、中間部品91の挿入部92が挿入できるように、その一部を削ってある(図6参照)。また、凹部底部61aは剥離ステージ71が両側部分と、中間部品91又は挿入部92が移動できるように空間部を有する。
【0023】
ステージ部60の凹部61は、図5に示すように、剥離ステージ71が紙面上下に振れないような幅と、上部と突き上げピン73の反対側の側部に開放部61bを有する。溝62は、後述する吸引室に連通し、剥離ステージ71の移動によってできる凹部底部61aとの空間を真空にした剥離補助空間75(図8の(iv)参照)を形成する。剥離補助空間75が真空になると、ダイシングテープ16が凹部底部側に吸引され、ダイシングテープが剥離又は剥離され易い状態になる。吸着孔63は凹部61以外の領域にあるダイシングテープ16をステージ部60の上面に固定する。
【0024】
駆動部80は、スプライン軸を中心に回転させる回転軸81と、回転軸81を含め全体を昇降させる昇降軸86とを有する。
回転軸81は、突き上げピン73を周囲に設けた回転板82と、回転板82に固定され回転板82を矢印H方向に回転させるスプライン83と、ベルト84を介してスプライン83を回転させる回転用モータと85と有する。スプライン83は、回転板82に固定されたスプライン軸83aと、スプライン軸を回転させるスプライン歯車83bと、スプライン軸を回転可能に支持する軸受け83cと、を有する。
一方、昇降軸86は、回転軸81を支持し回転軸を昇降する昇降板87、昇降板に設けられたナット88nと、ナット88nを矢印Iの方向に昇降させるボールジョイント88bと、ボールジョイントを駆動し、ユニット筐体51に固定された昇降用モータ89とを有する。
【0025】
真空室55は、後述する凹部底部61aに設けられた溝62に連通し、剥離補助空間75を形成する吸引室56と、吸着孔63が連通する吸着室57とを有する。吸引室56と吸着室57は、それぞれ接続部56a、57aなど接続ラインを介して図示しない真空装置に接続されている。従って、吸着室57(吸着孔63)によるピックアップするダイの周辺のダイシングテープ16の吸着と、吸引室56(剥離補助空間75)によるダイシングテープ16の吸引とは別々に制御できる。また、吸引室56は、駆動部80を有するユニット筐体51の内部との真空分離し、突き上げピン73を昇降可能にする蛇腹構造を備えるシール部56bを有する。一方、吸着室57は、吸引室56と干渉しないように設けている。
【0026】
なお、図4は、駆動部80の昇降軸86によって突き上げピン73が矢印I方向に上昇し、中間部品91が突き上げ板72を突き上げ、奥行き方向に細長い突き上げ板72がダイシングテープ16と線状に接し押し上げている状態を示している。
【0027】
次に、回転軸81の回転によって、剥離ステージ71が図4に示す矢印J方向に移動する原理について図6を用いて説明する。図6は図の煩雑さ避けるために回転板82を凹部底部61aから離間して示している。
図6に示すように、中間部品91の底部には、回転軸81の回転に伴い、突き上げピン73が回転しながら移動し、突き上げピン73の回転運動を直動に変える回転直動変換溝78が設けられている。突き上げピン73の力は、中間部品91に伝達される。中間部品91は、突き上げ板72と回転可能に保持されているので、上方に加わる力は突き上げ板72を押し上げ、回転力は突き上げ板72をJ方向に移動させる。
また、剥離ステージ71には、突き上げ板72と接触する段差部があって、この段差部が突き上げ板72からJ方向に加わる力を受けて、剥離ステージ71がJ方向に移動する。
【0028】
なお、回転直動変換溝78は、回転板82の回転によって突き上げピン73が移動できるような溝、例えば長方形であってもよい。
この結果、剥離ステージ71は、凹部61の移動方向Jの両側側部に沿って、中間部品91を介して突き上げピン73によって押されながら矢印J方向に移動できる。
【0029】
次に、本実施形態におけるダイのピックアップ方法について図7、図8を用いて説明する。図7は、ダイのピックアップフローを示し、図8は、図7に示す主要ステップにおけるステージ部60及び突き上げ部70の状態を示す図である。
【0030】
まず、ピックアップ装置12によりピックアップするダイ4pを突き上げユニット50のピックアップ位置に移動させる。その後、吸着室57を真空にし、吸着孔63によりダイシングテープ16をステージ部60の上面に吸着保持する(Step1、図8の(i))。本実施例でのピックアップ位置は、剥離ステージ71及び突き上げ板72が形成するエリアとなる。
【0031】
次に、コレット40をダイ4pに着地させ、ダイ4pを吸着する(Step2、図8の(ii))。その後、所定の時間で突き上げピン73を図4に示すように上昇させ、突き上げ板72の傾斜角度を設定する(Step3、図8の(iii))。傾斜角度は突き上げピン73の上昇位置によって調節でき、予め定められた適切な傾斜角度に設定可能である。その後、剥離ステージ71が移動する剥離補助空間75を吸引室56、溝62を経て真空にする(Step4)。剥離補助空間75を真空するための吸引はStep1から実施してもよい。
【0032】
次に、突き上げ板72の傾斜角度を維持しながら、図5に示すように、所定時間回転軸81により突き上げピン73を回転させ、剥離ステージ71を凹部61の開放側61b(図8の(iii)参照)に、即ち矢印J方向にスライドさせる(Step5、図8の(iv))。このとき、ダイシングテープ16との接触部は突き上げ板72の一部分であり、剥離ステージ71の移動の負荷にはならない。従って、剥離ステージ71は、滑らかな面を有する凹部底部61aをスムーズに移動できる。また、剥離ステージ71が移動した後には、前述したように凹部底部61aとダイシングテープ16との間の剥離補助空間75に真空が形成され、ダイシングテープが剥離または剥離し易い状態になる。
【0033】
次に、ダイシングテープが剥離または剥離し易い状態で、コレット40を上昇させ、ダイ4pをダイシングテープ16から完全に剥離させ、ピックアップする(Step6、図8の(v))。一定時間後、剥離補助空間75の真空を解除し(Step7)、回転軸81をStep3とは逆方向に回転させ、剥離ステージ71を元の位置にスライドさせる(Step8、図8の(vi))。このとき、剥離補助空間75が真空であるとダイシングテープ16が凹部底部61a側に吸い込まれ、剥離ステージ71に移動の負荷のとなり、戻り難くなる。
【0034】
次に、吸着室57の真空を解除し、ダイシングテープ16のステージ部60の上面における吸着保持を解除する(Step9)。所定数、ダイ4のピックアップ処理をしたかを判断し(Step10)、所定数に達していなければStep1に行き処理を繰り返す。所定数に達していれば処理を終了する。
【0035】
以上説明した突き上げユニット50の第1の実施例を有する実施形態によれば、突き上げ板72の角部のみをダイシングテープ16と摺動させることで、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
【0036】
また、以上説明した突き上げユニット50の第1の実施例を有する実施形態によれば、突き上げ板72の傾斜角度を適切な角度に設定でき、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
【0037】
図9は、本実施形態における突き上げユニット50の第2の実施例を示し、ステージ部60Aと突き上げ部70Aのみの概略構成を示す側面図である。
【0038】
第2の実施例の第1の実施例との異なる点は、突き上げ板72Aa、72Abを、バカ穴を有する回転軸75cの両側に設け、回転軸72cを中間部品91で突き上げる構造としている点である。そのために、第2の実施例は、剥離ステージも71の他に、突き上げ板72を回転させる回転軸72aを有する剥離ステージ71Aを設け、剥離ステージ71、71Aを一体に移動する構造を有している。その他の点は第1の実施例と同じである。
【0039】
以上説明した第2の実施例によれば、回転軸72cのみをダイシングテープ16と摺動させることで、第1の実施例同様に、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
【0040】
また、以上説明した突き上げユニット50の第1の実施例を有する実施形態によれば、突き上げ板72の傾斜角度を適切な角度に設定でき、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
【0041】
なお、第2の実施例において、突き上げ板72Abのみ設け、即ち、図4に示す第1の実施例と左右対称となる構造としてもよい。
【0042】
図10は、本実施形態における突き上げユニット50の第3の実施例を示し、ステージ部60Bと突き上げ部70Bのみの概略構成を示す側面図である。
【0043】
第3の実施例は、第1の実施例とは異なり、突き上げピン73を突き上げる昇降軸86を不要とする例である。第3の実施例は、凹部底部61aの右端側に傾斜している傾斜部61dと、先端が丸みを帯びた断面が三角形状の細長い突起部76を回転軸72aから離間した側に設けた突き上げ板72Bとを有している。また、第1の実施例では、回転を直線の動きに変える回転直動変換を中間部品91を介した突き上げピン73で行っていた。第3の実施例では、この回転直動変換を突き上げピン73と同様に回転運動する回転直動変換棒77を中間部品91の有する回転直動変換溝78を移動させて行う。また、第3の実施例では、中間部品91に凸部95を設け、剥離ステージ71Bに凸部95に対応した断面形状を有する溝79を有する。
【0044】
このような構成において、第3の実施例では、突き上げ板72Bは、剥離ステージ71が移動する前は、実線で示すように、傾斜部61d上に傾斜した状態で横たわっている。そこで、回転板82を回転させると、回転直動変換棒77は回転直動変換溝78を移動し、中間部品91に設けた凸部95の先端部が溝79と係合し、剥離ステージ71を矢印J方向に移動させる。剥離ステージ71が移動すると、破線で示すように突き上げ板72Bは起き上がり、中間部品91がダイシングテープ16を突き上げる。そして、突き上げた状態を維持して矢印J方向に移動する。
【0045】
以上説明した第3の実施例によれば突起部76のみをダイシングテープ16と摺動させることで、第1の実施例同様に、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
図11は、本実施形態における突き上げユニット50の第4の実施例の概略構成を示した側面図である。
突き上げユニット50は、ダイ4を有するダイシングテープ16を支持するステージ部60と、ダイシングテープを突き上げる突き上げ部70と、突き上げ部を駆動する駆動部80と、真空室55、ユニット筐体51とを有する。なお、40はダイ4を吸着する吸着手段であるコレットで、35はコレットで吸着したダイ4をワークに装着するボンディングヘッドである。
【0046】
ステージ部60は、ダイシングテープ16を支持し支持ステージ64と、支持ステージ64に形成され後述する剥離ステージ71が摺動するコの字状の凹部61と、凹部61の底部61a(以下、凹部底部という)に設けられ、後述する突き上げピン73が移動する溝62(図12参照)と、凹部61の周囲に複数列設けられた多数の吸着孔63とを有する。
【0047】
突き上げ部70は、ステージ部60に設けられた凹部61を摺動する剥離ステージ71と、剥離ステージ71に設けられた回転軸72aを中心に回転可能な奥行き方向に細長い突き上げ板72と、突き上げ板72を突き上げる突き上げピン73とを有する。剥離ステージ71は、上面にダイ4の面積より広い平坦部71aと、突き上げ板72と反対側が傾斜部71bとを有する。平坦部71aには、突き上げピン73を貫通させ、紙面奥行き方向に移動させる回転直動変換溝78Aを有する(図12参照)。後述するように、回転直動変換溝78Aによって、突き上げピン73の回転運動を、剥離ステージ71をJ方方向に移動させる直線運動に変えることができる。また、剥離ステージ71の底面は、凹部底部61aと摺動し易いに様に、互いに滑り易い部材で構成されている。
【0048】
ステージ部60の凹部61は、図5に示すように、剥離ステージ71が紙面上下に振れないような幅と、上部と突き上げピン73の反対側の側部に開放部61bを有する。溝62は、後述する吸引室に連通し、剥離ステージ71の移動によってできる凹部底部61aとの空間を真空にした剥離補助空間75(図8の(iv)参照)を形成する。剥離補助空間75が真空になると、ダイシングテープ16が凹部底部側に吸引され、ダイシングテープが剥離又は剥離され易い状態になる。吸着孔63は凹部61以外の領域にあるダイシングテープ16をステージ部60の上面に固定する。
【0049】
駆動部80は、スプライン軸を中心に回転させる回転軸81と、回転軸81を含め全体を昇降させる昇降軸86とを有する。
回転軸81は、突き上げピン73を周囲に設けた回転板82と、回転板82に固定され回転板82を矢印H方向に回転させるスプライン83と、ベルト84を介してスプライン83を回転させる回転用モータと85と有する。スプライン83は、回転板82に固定されたスプライン軸83aと、スプライン軸を回転させるスプライン歯車83bと、スプライン軸を回転可能に支持する軸受け83cと、を有する。
一方、昇降軸86は、回転軸81を支持し回転軸を昇降する昇降板87、昇降板に設けられたナット88nと、ナット88nを矢印Iの方向に昇降させるボールジョイント88bと、ボールジョイントを駆動し、ユニット筐体51に固定された昇降用モータ89とを有する。
【0050】
真空室55は、後述する凹部底部61aに設けられた溝62に連通し、剥離補助空間75を形成する吸引室56と、吸着孔63が連通する吸着室57とを有する。吸引室56と吸着室57は、それぞれ接続部56a、57aなど接続ラインを介して図示しない真空装置に接続されている。従って、吸着室57(吸着孔63)によるピックアップするダイの周辺のダイシングテープ16の吸着と、吸引室56(剥離補助空間75)によるダイシングテープ16の吸引とは別々に制御できる。また、吸引室56は、駆動部80を有するユニット筐体51の内部との真空分離し、突き上げピン73を昇降可能にする蛇腹構造を備えるシール部56bを有する。一方、吸着室57は、吸引室56と干渉しないように設けている。
【0051】
なお、図11は、駆動部80の昇降軸86によって突き上げピン73が矢印I方向に上昇し、突き上げ板72を突き上げ、奥行き方向に細長い突き上げ板72がダイシングテープ16と線状に接し押し上げている状態を示している。
【0052】
次に、回転軸81の回転によって、剥離ステージ71が図4に示す矢印J方向に移動する原理について図12を用いて説明する。図12は図の煩雑さ避けるために回転板82を凹部底部61aから離間して示している。
図12に示すように、凹部底部61aには、回転軸81の回転に伴い、突き上げピン73が回転しながら移動する半円形状の溝62が設けられている。また、剥離ステージ71には、突き上げピン73の回転運動を、剥離ステージ71をJ方向に移動させる直線運動に変える上下に貫通した回転直動変換溝78Aが設けられている。回転直動変換溝78AはJ方向に対して直交方向であるK方向に平行に設けられている。
【0053】
これ等構成によって、棒状の突き上げピン73は半円形状の溝62を移動しながら、回転直動変換溝78Aに沿ってK方向に前後に移動し、剥離ステージ71を押して矢印J方向に移動させる。このとき、突き上げピン73は剥離ステージ71と一体に移動する突き上げ板72(図5では煩雑さを避ける為図示せず)の下面を摺動しながら矢印Kの方向に直線状に前後する。
【0054】
なお、溝62は必ずしも半円形状に必要ではなく、回転板82の回転によって突き上げピン73が移動できるような溝、例えば長方形であってもよい。
この結果、剥離ステージ71は、凹部61の移動方向Jの両側側部に沿って、突き上げピン73によって押されながら矢印J方向に移動できる。
【0055】
図13は、本実施形態における突き上げユニット50の第5の実施例を示し、ステージ部60Aと突き上げ部70Aのみの概略構成を示す側面図である。
【0056】
第5の実施例の第4の実施例との異なる点は、突き上げ板72Aa、72Abを、バカ穴を有する回転軸75cの両側に設け、回転軸72cを突き上げピン73で突き上げる構造としている点である。そのために、第5の実施例は、剥離ステージも71の他に、突き上げ板72を回転させる回転軸72aを有する剥離ステージ71Aを設け、剥離ステージ71、71Aを一体に移動する構造を有している。その他の点は第4の実施例と同じである。
【0057】
以上説明した第5の実施例によれば、回転軸72cのみをダイシングテープ16と摺動させることで、第4の実施例同様に、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
【0058】
また、以上説明した突き上げユニット50の第1の実施例を有する実施形態によれば、突き上げ板72の傾斜角度を適切な角度に設定でき、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
【0059】
なお、第5の実施例において、突き上げ板72Abのみ設け、即ち、図11に示す第4の実施例と左右対称となる構造としてもよい。
【0060】
図14は、本実施形態における突き上げユニット50の第6の実施例を示し、ステージ部60Bと突き上げ部70Bのみの概略構成を示す側面図である。
【0061】
第6の実施例は、第4の実施例とは異なり、突き上げピン73を突き上げる昇降軸86を不要とする例である。第3の実施例は、凹部底部61aの右端側に傾斜している傾斜部61dと、先端が丸みを帯びた断面が三角形状の細長い突起部76を回転軸72aから離間した側に設けた突き上げ板72Bとを有している。また、第4の実施例では、回転を直線の動きに変える回転直動変換を突き上げピン73で行っていた。第6の実施例では、回転直動変換を、剥離ステージ71Bに紙面垂直方向(剥離ステージの移動方向とは直交方向)に設けられた回転直動変換溝78Bと、先端が回転直動変換溝78Bを移動する回転直動変換棒77とで行う。
【0062】
このような構成において、第6の実施例では、突き上げ板72Bは、剥離ステージ71が移動する前は、実線で示すように、傾斜部61d上に傾斜した状態で横たわっている。そこで、回転板82を回転させると、回転直動変換棒77は溝62を移動しながら、回転直動変換溝78Bを移動し、剥離ステージ71を矢印J方向に移動させる。剥離ステージ71が移動すると、破線で示すように突き上げ板72Bは起き上がり、突き上げピン73Bがダイシングテープ16を突き上げる。そして、突き上げた状態を維持して矢印J方向に移動する。
【0063】
以上説明した第6の実施例によれば突起部76のみをダイシングテープ16と摺動させることで、第4の実施例同様に、ダイに余計な力を与えることなく、確実にダイを剥離できるダイボンダ又はボンディング方法を提供できる。
【0064】
なお、第4、第5の実施例でも第6の実施例で示した回転直動変換溝78B、回転直動変換棒77からなる回転直動変換機構を設け、突き上げピン73を突き上げ板突き上げ専用とすることも可能である。
【0065】
また、剥離ステージの水平移動や突き上げピンやの昇降の駆動方法は様々の方法で実現できる。例えば、剥離ステージの水平移動をモータ等で直接直線移動させてもよい。また突き上げピンの昇降も直接モータやエアシリンダで昇降させてもよい。
【0066】
以上のように本発明の実施形態について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0067】
1:ウエハ供給部 2:ワーク供給・搬送部
3:ダイボンディング部 4:ダイ(半導体チップ)
10:ダイボンダ 12:ピックアップ装置
16:ダイシングテープ 32:ボンディングヘッド部
35:ボンディングヘッド 40:コレット
50:突き上げユニット 51:ユニット筐体
55:真空室 56:吸引室
57:吸着室 60、60A、60B:ステージ部
61:支持ステージの凹部 61a:凹部の底部(凹部底部)
62:突き上げピンが移動する溝 63:吸着孔
64:支持ステージ 70、70A、70B:突き上げ部
71、71A、71B:剥離ステージ
72、72Aa、72Ab、72B:突き上げ板
72a:突き上げ板の回転軸 73:突き上げピン
75:剥離補助空間 76:突起部
77:回転直動変換棒 78、78A、78B:回転直動変換溝
80:駆動部 81:回転軸
82:回転板 83:スプライン
84:ベルト 85:回転用モータ
86:昇降軸 87:昇降板
89:昇降用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のダイを粘着しているダイシングテープを吸着保持し、前記ダイの寸法に対して設けられた凹部を備える支持ステージと、前記凹部の低部を摺動する剥離ステージと、前記剥離ステージをピックアップする前記ダイから離れる方向に前後に摺動させる第1の駆動手段と、前記離れる方向とは反対側の前記剥離ステージの端部側に設けられた回転軸に回転可能に設けられ前記ダイシングテープを線状に突き上げる突き上げ部材と、前記突き上げ部材を前記ダイシングテープに突き上げる第2の駆動手段とを備える突き上げユニットと、
前記ダイを吸着する吸着部材と、
前記吸着部材で吸着され前記突き上げられた前記ダイを前記ダイシングテープから剥離して基板に装着するボンディングヘッドと、
を有するダイボンダ。
【請求項2】
前記突き上げ部材は細長い板であり、前記第2の駆動手段は、前記突き上げ部材の前記回転軸と反対側を突き上げる突き上げピンと、前記突き上げピンを昇降させる昇降手段とを有することを特徴とする請求項1に記載のダイボンダ。
【請求項3】
前記凹部は前記剥離ステージの前記離れる方向とは反対側に前記突き上げ部材を載置可能な傾斜部を有し、前記突き上げ部材は細長い板であり、前記第2の駆動手段は、前記回転軸から離間した位置に設けられた突起部と、前記第1の駆動手段とを有することを特徴とする請求項1に記載のダイボンダ。
【請求項4】
前記突き上げ部材の傾斜角度を予め調整し、前記傾斜角度に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のダイボンダ。
【請求項5】
前記剥離ステージ、前記ダイシングテープ及び支持ステージが形成する剥離補助空間を真空にする真空手段を有することを特徴とする請求項1に記載のダイボンダ。
【請求項6】
前記第1の駆動手段は、前記離れる方向と直交方向に設けられた溝と、前記溝と係合する棒状部材と、前記棒状部材を前記離れる方向に前後に移動させる手段とを有することを特徴とする請求項1に記載のダイボンダ。
【請求項7】
前記第1の駆動手段は、前記離れる方向と直交方向に設けられた溝と、前記溝と係合し、円板状部材の周囲に設けられた棒状の前記突き上げピンと、前記円板状部材を回転させ前記突き上げピンを前記離れる方向に前後に移動させる移動手段とを有し、前記第2の駆動手段は前記円板状部材を昇降させる手段であることを特徴とする請求項2に記載のダイボンダ。
【請求項8】
複数のダイを粘着しているダイシングテープを吸着保持し、前記ダイの寸法に対して設けられた凹部を備える支持ステージと、前記凹部の低部を摺動する剥離ステージとを備え、
前記ダイを吸着する吸着ステップと、
前記ダイを吸着した状態で前記剥離ステージを前記ダイから離れる方向に摺動させる摺動ステップと、
前記離れる方向とは反対側の前記剥離ステージの端部側において前記ダイシングテープを線状に突き上げる突き上げステップと、
前記ダイを前記ダイシングテープから剥離する剥離ステップと、
前記剥離した後に、前記剥離ステージを元の位置に戻す戻しステップと、
前記ダイをワークに装着するステップと、
を有することを特徴とするボンディング方法。
【請求項9】
前記突き上げステップは、前記剥離ステージの端部側に設けられた回転軸に回転可能に設けられ、前記ダイシングテープを線状に突き上げる突き上げ部材を突き上げることを特徴とする請求項8に記載のボンディング方法。
【請求項10】
前記突き上げ部材の傾斜角度を予め調整し、前記傾斜角度に設定することを特徴とする請求項9に記載のボンディング方法。
【請求項11】
前記摺動ステップ中は、前記剥離ステージ、前記ダイシングテープ及び支持ステージが形成する剥離補助空間を真空にすることを特徴とする請求項8に記載のボンディング方法。
【請求項12】
戻しステップ中は、前記剥離ステージ、前記ダイシングテープ及び支持ステージが形成する剥離補助空間の真空を解除することを特徴とする請求項8に記載のボンディング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−65712(P2013−65712A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203690(P2011−203690)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】