説明

ダイボンダ

【課題】
本発明は、コレットやダイ(ワーク)などの帯電により静電発会を防止する。ダイ(ワーク)などを対象物(基板やトレイなど)にプレース場合、静電気によるプレースミスを防止できるダイボンダを提供することである。
【解決手段】
本発明のダイボンダは、グランドに接地されてダイを保持および開放するコレットを有するボンディングヘッドと、前記コレットの電位を計測する電位計と、前記電位計の結果に基づいて、前記コレットが前記グランドに接地されているか否かを判断する接地判断手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイボンダに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にダイボンダは、ゴム材で成形されたコレットでダイ(ワークともいう)を吸着して移動させ、電子回路を作り込んだ基板上にボンディングするものである。このコレットはボンディングヘッドの一部であり、一方が真空ポンプと繋げられた複数の吸着穴が縦方向に設けられている。真空ポンプの動作によってこの吸着穴から空気が吸引されてダイがコレットに吸着し、吸着した状態でダイが基板まで移動して基板にボンディングされるものである。
【0003】
このようなコレットを備えたダイボンダの従来技術としては特許文献1が挙げられる。
この特許文献1は、ワイヤボンディングツールに導電性付与剤を含有させ表面抵抗値を10〜10Ω・cmにし、ワイヤボンディングツールが適度な速度で移動している間に、静電気を逃がすことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−135544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、近年ダイボンダは多くの種類の半導体に対応するダイをボンディングすることが多くなってきた。そのため、ダイを基板に直接粘着するよりもダイを一旦トレイに収納(供給)し、その後トレイからダイを取り出してから基板に実装するダイボンダを採用することが多くなっている。これはより多くの機種(基板)に対応させるためである。
【0006】
ところが、このトレイへの供給方式を採用したことで新たな問題が発生した。
つまり、コレットの材質は主にゴム(ゴムは通常、電気抵抗率が大きく、1010Ω・cm以上となっている)であり、ゴムは静電気がたまりやすい。特にダイをコレットで吸着させ、ウエハテープから剥がす時静電気が発生し、この静電気がコレットに溜まってしまう。
【0007】
上述したようにダイを基板に直接搬送してボンディングする方式であった場合、コレットが静電気を帯びていたとしてもダイを基板に直接粘着するため静電気による実装障害は問題とならなかった。
【0008】
ところがコレットに吸着させたダイをトレイまで搬送してトレイ内にプレースさせようとすると、静電気を溜まったコレットにダイが吸着してしまいプレースできないという問題が発生した。
【0009】
例えば、ダイの面全体がコレットに吸着してしまう場合や、ダイの片側辺はダイから離れても一方の辺が離れない、宙づり状態となってしまう等の障害である。したがって、コレットやダイの除電は重要な課題となっている。
【0010】
これに対して、上述した特許文献1ではワイヤボンディングツールの先端部に導電性付与剤を含有させ、かつ先端部の電気抵抗率値を10〜109Ω・cmとすることが記載されている。しかしながら、この引用文献1はGNDが適正に設置されていないと除電の効果がない。つまり、GNDが確実に接続されていなと、実装状態での総合的な絶縁電気抵抗率が適正であるかを判断することができないのである。
【0011】
本発明の目的は、コレットやダイ(ワーク)などの帯電により静電破壊を防止する。ダイ(ワーク)などを対象物(基板やトレイなど)にプレース場合、静電気によるプレースミスを防止できるダイボンダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために、
ダイボンダは、グランドに接地されてダイを保持および開放するコレットを有するボンディングヘッドと、前記コレットの電位を計測する電位計と、前記電位計の結果に基づいて、前記コレットが前記グランドに接地されているか否かを判断する接地判断手段と、
を有する。
【0013】
ダイボンダは、前記電位計で測定された電位を電気抵抗率に変換する電気抵抗率変更手段をさらに有する。
【0014】
前記接地判断手段は、電気抵抗率が10Ω・cm以上かつ109Ω・cmより以下であるかないかを判断する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コレットやダイ(ワーク)などの帯電により静電破壊を防止する。ダイ(ワーク)などを対象物(基板やトレイなど)にプレース場合、静電気によるプレースミスを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係るダイボンダを上から見た概念図である。
【図2】本発明の実施例1に係るダイボンダを上から見た概念図である。
【図3】本発明の実施例1に係る突き上げユニットの概略断面図である。
【図4】本発明の実施例1に係るコレットの概略構成図である。
【図5】本発明の実施例1に係るコレットとトレイの概略構成図である。
【図6】本発明の実施例1に係るコレットとトレイの概略斜視図である。
【図7】本発明の実施例1に係るコレットとGNDの概略構成図である。
【図8】本発明の実施例1の動作を示すフロー図である。
【図9】本発明の実施例2の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の実施例1に係るダイボンダを上から見た概念図である。
図1において、ダイボンダは大別するとウエハ供給部1と、基板供給・搬送部2と、ダイボンディング部3とを有する。基板供給・搬送部2はスタックローダ21と、基板フィーダ22と、アンローダ23とを有する。スタックローダ21によりフレームフィーダ22に供給された基板は、基板フィーダ22上の2箇所の処理位置を介してアンローダ23に搬送される。
【0019】
ダイボンディング部3は、プリフォーム部31とボンディングヘッド部32とを有する。このダイボンディング部3の前工程となるプリフォーム部31は、基板フィーダ22により搬送されてきた基板にダイ粘着剤を塗布する部分である。ボンディングヘッド部32は、ピックアップ装置12からダイをピックアップして上昇し、ダイを平行移動して基板フィーダ22上のボンディングポイントまで移動させる。そして、ボンディングヘッド部32は、ダイを下降させてダイ粘着剤が塗布された基板上にボンディングする。
【0020】
ウエハ供給部1は、ウエハカセットリフタ11とピックアップ装置12とを有する。ウエハカセットリフタ11は、ウエハリングが充填されたウエハカセット(図示せず)を有し、順次ウエハリングをピックアップ装置12に供給する。
【0021】
図1ではダイを基板に直接ボンディングする構成を説明したが、図2ではダイを一旦トレイにプレースするようにしたダイボンダについて説明する。
【0022】
図2は本発明に係るダイボンダの上面図である。なお、図1と同じ番号は同一物を示すので、その説明は省略する。
図2において、ウエハテーブル13上にはウエハ24が搭載されている。このウエハ24のピックアップ部28部分からダイ(詳細は後述する)がピックアップされ、ピックアップされたダイを基板(図示せず)上にボンディングするものである。ダイをウエハ24から剥離する場合にコレット25が用いられる。
【0023】
ダイは突き上げユニット26(詳細は図3で説明する)によって確実に剥離されるようになっている。この剥離動作を照明ユニット29によって照らされ、安全かつ正確な作業ができるようになっている。
【0024】
コレット25はボンディングヘッド33の先端に取り付けられている。このコレット25には複数の吸着穴25a(詳細は図3で説明する)が取り付けられ、真空ポンプ(図示せず)につながっている。ダイは突き上げユンット26の動作と吸着穴25aの吸引力によって吸着される。コレット25によって吸引されたダイはトレイ30に入れられて収納される。
【0025】
図3はコレットと突き上げユニットの断面図である。
図3において、ボンディングヘッド33に取り付けられたコレット25には複数の吸着穴25aが設けられており、この吸着穴25aの一端は真空ポンプ(図示せず)と連通しているため真空ポンプの働きによりダイ34は吸着穴25aに吸着する。ダイ34がコレット25の吸着穴25aに吸着されると、ウエハテープ24aからダイ34が剥がされる。この剥がし作業をより確実に行うため、ウエハテープ24aの下方には突き上げユニット26が設けられている。
【0026】
この突き上げユニット26はダイ34の四隅を突き上げる突き上げ針26aとダイ34の中央部を突き上げる中央突き上げ部26bが備えられている。
【0027】
図4はピックアップ部の拡大図である。
図4において、本図ではトレイ30が搬送シュート30a上に搭載された状態を示している。このトレイ30は矢印方向に進行し、コレット25によって吸着されたダイ34をトレイ30に入れるものである。ボンディングヘッド33とコレット25は点線で示すようにウエハテーブル13上にあるウエハ24のピックアップ部28に移動してダイ34を吸着したのちトレイ30上に移動するようになっている。
【0028】
図5はトレイとコレットの断面図である。
図5では、搬送シュート30a上のトレイ30の真上にコレット25が移動し、コレット25の吸着穴25aと連通する真空ポンプ遮断してダイ34がトレイ30内にプレースして収納された状態を示している。
【0029】
これによりダイ34は安全かつ確実に剥離し、搬送することができる。
【0030】
ところで、図2に示したコレットはダイをウエハテープから剥がしたときに発生する静電気を貯め込んでしまうという課題を持っている。この静電気は、コレットの電気抵抗率値が1010Ω・cm以上になる場合、生じた静電気がGNDへ逃がさなくなる。
【0031】
このように、生じさせる静電気を逃がす一手段として、引用文献1のようにワイヤボンディングツールに導電性付与剤を施したり、ツールの電気抵抗率値を10〜109Ω・cmにしたりすることが記載されている。しかしながら上述したように、ダイボンダにコレットの取り付け状態から電気抵抗率を10〜109Ω・cmにされているか、GNDが確実に接続されているかと電気が逃げず除電効果はあまり期待できない。
【0032】
そこで、本発明の発明者らはコレットの電位を測定することによってコレットの電気抵抗率値を常に検出し、その検出結果からコレットの交換時期とGNDの接続状態を監視することを種々検討した結果、以下のごとき実施例を得た。
【0033】
以下、本発明の一実施例を図6、図7にしたがって説明する。
図6は本発明の一実施例に係るコレットの斜視図である。
図7は本発明の一実施例に係るコレットの断面図である。
【0034】
図6において、トレイ30は図2に示した搬送シュート30aに沿って複数設けられ、図2の矢印で示した方向に移動する。このトレイ30の上方にはコレット25を取り付けたボンディングヘッド33が配置されている。このボンディングヘッド33はダイ34の剥離とトレイ30への排出のため白抜きの矢印のように移動する。コレット25の内部には上述したように複数の吸着穴25aが設けられている。この吸着穴25aの一方はコレット25のダイ34が吸着する面で開口し、他方は真空ポンプ(図示せず)と連結し、実線の矢印方向に空気が吸引されている。
【0035】
本図では、対象物(基板やトレイなど)30を示し、2個のトレイ30には既にダイ34が収納された状態を示した。ダイボンダ中には電位測定位置を指定して、電位計36が設置されている。コレットがボンドヘッドなどの部品に経由して接地されている。
なお、本図では電位計36として図示したが、設置場所等の問題があり、設置されない可能性がある。その場合は、ボンドヘッドに取り付けたコレット25が電位測定位置に移動し、その場で手動にてコレット25及びダイ(ワーク)の電位を測定しコレットの電位から電気抵抗率値を判断することも可能である。
【0036】
この電位計36は常にコレット25に向かって測定できる位置に配置されている。この電位計36の測定位置にコレット25が移動して電位を測定することになる。このコレット25は矢印A方向或いはB方向に移動(点線で示したコレット25のように移動)して第34をトレイ30方向に搬送することになる。
【0037】
測定された電位からコレット25の電気抵抗率値を検出するようになっている。ボンディングヘッド33に取り付けられたコレットホルダ25bにはアース線37aを介してGND37が設置されている(参考値であるが、コレットとGNDとの間の電気抵抗率値は約60KΩである)。
【0038】
このGNDはコレット25に生じた静電気を逃がすために取り付けられているが接続が悪いと逃がすことができない。そのため本実施例ではコレット25の電位を計測し、電気抵抗率値が10〜109Ω・cmの範囲であるかないかでGNDの異常を判断するものである。この電気抵抗率値はコレット25の電位を計測することによって算出することができる。この算出手段を図7で説明する。
【0039】
図7において、本図ではコレット25の電位を測定する電位計36とGND37との接続状態を示している。コレットホルダ25bに接地されたGND37の接続状態の良し悪しは電位計36によって計測されたコレット25の電位値によって判断することができる。電気抵抗率値は電位計36より得られた電位を電気抵抗率変換手段36aによって得るようになっている。
【0040】
このように本実施例によれば、簡単な構成でGNDの接地状態は判断するとともに、コレット25の電気抵抗率値からコレット25の異常を判断し、事前にコレット25の交換を行うことができるので、安全なダイボンタを得ることができる。
【0041】
図8は本実施例のフロー図である。
図8において、
(1)ウエハテープ上に貼り付けられたダイをコレットの吸引力で吸い付けることでダイを剥離させる(101)
(2)剥離することによってダイが帯電(102)
(3)帯電したダイを吸着したことによってコレット自身も帯電(103)
(4)コレットの電気抵抗率測定回数が到達していることを確認(104)
(5)コレットの電位から電気抵抗率値を測定(105)
(6)コレット電気抵抗率値が10〜109Ω・cmであるかを判断(106)
(6)YESであればコレットのGNDは正常(107)
(7)NOであればコレットのGNDは異常(108)
(8)異常はコレットの交換を行う(109)
このように、本実施例ではコレット25やダイ(ワーク)などの電位状況からコレット自体の電気抵抗率値を判断して、異常値を得た場合、GNDの接地を調査することで、安全かつ迅速にコレットやダイ(ワーク)などから除電を行うことができるものである。したがって、コレットやダイ(ワーク)などの帯電によって静電破壊を防止することができる。また、静電気によってダイ(ワーク)などを対象物(基板やトレイなど)へのプレースミスを防止できる。
【0042】
なお、コレットの電位計測はダイを吸着するたびに行って良いが、所定の時間間隔で行っても良く、その時間間隔は限定されるものでなく任意の間隔で良い。
【実施例2】
【0043】
実施例1ではコレットの電位を計測し、得られた電位からコレットの電気抵抗率値を算出したが、実施例2ではダイの電位からコレットの電気抵抗率値を算出するものである。
【0044】
以下、実施例2を図9で説明する。
【0045】
図9において、
(1)ウエハテープ上に貼り付けられたダイをコレットの吸引力で吸い付けることでダイを剥離させる(201)
(2)剥離することによってダイが帯電(202)
(3)帯電したダイを吸着したことによってコレット自身も帯電(203)
(4)ダイの電位から電気抵抗率値を測定(204)
(5)ダイ電気抵抗率値が10〜109Ω・cmであるかを判断(205)
(6)YESであればコレットのGNDは正常(206)
(7)NOであればコレットのGNDは異常(207)
(8)異常はコレットの交換を行う(208)
このように、本実施例ではコレットやダイ(ワーク)などの電位状況からコレット自体の電気抵抗率値を判断して、異常値を得た場合、GNDの接地を調査することに安全かつ迅速にコレットやダイ(ワーク)などから除電を行うことができるものである。したがって、コレットやダイ(ワーク)などの帯電によって静電破壊を防止することができる。
また、静電気によってダイ(ワーク)などを対象物(基板やトレイなど)へのプレースミスを防止できる。
【符号の説明】
【0046】
1…ウエハ供給部、2…フレーム供給・搬送部、3…ダイボンディング部、11…ウエハカセットリフタ、12…ピックアップ装置、13…ウエハテーブル、21…スタックドーダ、22…フレームローダ、23…アンローダ、24…ウエハ、24a…ウエハテープ、25…コレット、25a…吸着穴、25b…コレットホルダ、26…突き上げユニット、26a…突き上げ針、26b…中央突き上げ部、28…ピックアップ部、30…トレイ、30a…搬送シュート、31…プリフォーム部、32…ボディングヘッド部、33…ボンディングヘッド、34…ダイ、36…電位計、36a…電気抵抗率変換手段、37…GND、37
a…アース線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハテープ上のダイ(ワーク)と、ボンディングヘッドに取り付けられ、GNDに接地されているコレットと、
グランドに接地されてダイを保持および開放するコレットを有するボンディングヘッドと、
前記コレットの電位を計測する電位計と、
前記電位計の結果に基づいて、前記コレットが前記グランドに接地されているか否かを判断する接地判断手段と、
を有することを特徴とするダイボンダ。
【請求項2】
請求項1記載のダイボンダにおいて、
前記電位計で測定された電位を電気抵抗率に変換する電気抵抗率変更手段を有することを特徴とするダイボンダ。
【請求項3】
請求項2に記載のダイボンダにおいて、
前記接地判断手段は、前記電気抵抗率が10Ω・cm以上かつ109Ω・cm以下であるかないかを判断することを特徴とするダイボンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−65733(P2013−65733A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203953(P2011−203953)
【出願日】平成23年9月19日(2011.9.19)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】