説明

ダイヤフラム弁

【課題】流体回路内に流体を移動させることなく弁体を開閉作動し得るようにする。
【解決手段】このダイヤフラム弁は、2つの流路14a,15aを連通させる状態と連通を遮断させる状態とに開閉動作するために使用される。連通流路32aが形成された中空弁体32の一端部には第1のダイヤフラム34が設けられ、他端部には第2のダイヤフラム36が設けられており、中空弁体32を弁座ブロック22の弁座部42に当接させると連通流路32aは閉じられる。弁座ブロック22には連通流路32aに内に突出する第1の突起44と、流路14a内に突出する第2の突起45が設けられ、それぞれは円錐形となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤフラムが設けられた弁体を有し、流路を開閉作動するダイヤフラム弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流れ方向を制御する方向制御弁としての開閉制御弁には、流体回路に流体を供給したり供給を停止したりするための流路切換弁つまり二方弁や、一方向だけに流体の流れを許容して逆方向には流れを阻止する逆止弁つまりチェック弁がある。これらの開閉制御弁にはダイヤフラムが弁体として設けられたダイヤフラム式がある。ダイヤフラム式の開閉制御弁としては、例えば、特許文献1および特許文献2に記載されるものがあり、ダイヤフラム式の逆止弁としては、例えば、特許文献3に記載されるものがある。
【0003】
ダイヤフラム式の弁体を有する開閉制御弁を流体回路に用いると、液体回路内を流れる流体と、弁体を駆動するための駆動部とを分離することができる。これらを分離することができると、例えば、フォトレジスト液等の薬液をノズルから吐出するための液体回路においては、薬液内に駆動部からの異物が流入することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−217843号公報
【特許文献2】特許第4146535号公報
【特許文献3】特開2001−41333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
開閉制御弁の弁体を作動させると、弁体は連通流路内を移動することになるので、弁体の作動時に連通流路内の流体を移動させることになり、例えば、弁体を弁座に向けて移動させて連通流路を閉じるときには流体は逆流することになる。そこで、特許文献1に記載される二方弁においては、ダイヤフラムをその中央部分を変形させる開閉用押圧部材と、ダイヤフラムの周辺部を変形させる補助押圧部材とをバルブハウジングに設け、ダイヤフラムにより弁口を開閉するときに連通流路内の容積変化の発生を防止するようにしている。しかしながら、ダイヤフラムにより弁口の開閉時にダイヤフラムを開閉用押圧部材と補助押圧部材とで相違した部分を変形させるには、それぞれを駆動するために2つのピストンをバルブハウジングに組み込む必要がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載された流体制御器においては、連通通路が形成された筒体の一端部に対向するダイヤフラム式の弁体と、他端部に対向するダイヤフラム式の容積調整体とを相互に分離して配置し、弁体が作動したときには容積調整体をバルブハウジングの外側に配置された連結部材により駆動するようにしている。これにより、弁体の作動時に弁室の容積変化が容積調整室により補われ、流体回路内に流体が逆流することを防止するようにしている。しかしながら、弁体と容積調整体とを分離させて別々に作動させるには、連結部材をバルブハウジングの外側を覆うように配置する必要があり、流体制御器の大型化が避けられない。また、連通流路が複雑化すると、流体の圧力損失が増大してしまうことになる。
【0007】
本発明の目的は、ダイヤフラム弁が作動しても流体回路内に流体を移動させることなく弁体を開閉作動し得るようにすることにある。
【0008】
本発明の他の目的は、ダイヤフラム弁を小型化し得るようにすることにある。
【0009】
本発明の他の目的は、ダイヤフラム弁の連通流路における圧力損失や乱流等の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のダイヤフラム弁は、ダイヤフラムを有する弁体が弁ハウジングに組み込まれ、第1の流路とこれに連通する第2の流路とを連通させる状態と連通を遮断する状態とに開閉するダイヤフラム弁であって、前記弁ハウジング内に軸方向に往復動自在に配置され、前記第1の流路と前記第2の流路とを連通させる連通流路が形成された中空弁体と、前記中空弁体の一端部に設けられた第1のダイヤフラムと、前記中空弁体の他端部に設けられ、前記中空弁体を介して前記第1のダイヤフラムと連動する第2のダイヤフラムと、前記弁ハウジングに設けられ、前記中空弁体が当接する弁座部を有する弁座ブロックと、前記弁座ブロックに設けられ、前記連通流路内に突出する円錐形の第1の突起と、前記弁座ブロックに設けられ、前記第1の流路内に突出する円錐形の第2の突起と、を有するダイヤフラム弁である。
【0011】
本発明のダイヤフラム弁は、ダイヤフラムを有する弁体が弁ハウジングに組み込まれ、第1の流路とこれに連通する第2の流路とを連通させる状態と連通を遮断する状態とに開閉するダイヤフラム弁であって、前記弁ハウジング内に軸方向に往復動自在に配置され、前記第1の流路と前記第2の流路とを連通させる連通流路が形成された中空弁体と、前記中空弁体の一端部に設けられた第1のダイヤフラムと、前記中空弁体の他端部に設けられ、前記中空弁体を介して前記第1のダイヤフラムと連動する第2のダイヤフラムと、前記弁座部、前記連通流路内に突出する円錐形の第1の突起および前記第1の流路内に突出する第2の突起を有し、前記弁ハウジングに設けられる弁座ブロックと、前記中空弁体に取り付けられるガイド部材と、前記弁ハウジング内に設けられ、前記ガイド部材の移動を案内することで前記中空弁体が軸方向に移動するときの移動を案内する収納ケーシングと、を有し、前記第2のダイヤフラムの外径を前記第1のダイヤフラムの外径よりも大きく設定し、前記第1のダイヤフラムに加わる前記第1の流路内の流体による開放方向の推力が前記第2のダイヤフラムに加わる前記第2の流路内の流体による閉鎖方向の推力よりも大きいときには前記中空弁体が前記弁座部から離れて前記連通流路を開放し、前記開放方向の推力が前記閉鎖方向の推力よりも小さいときには前記中空弁体が前記弁座部に当接して前記連通流路を閉じるダイヤフラム弁である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、弁座ブロックには連通流路内に突出する円錐形の第1の突起と、第1の流路内に突出する円錐形の第2の突起とが設けられているので、第1の流路から第2の流路へ連通流路を介して流れる液体は、円滑に流れて滞留することが防止される。これにより、連通流路における圧力損失や乱流等の発生を抑制することができる。
【0013】
中空弁体が連通流路を開閉する際には、中空弁体の両端部に設けられたダイヤフラムが同期して弾性変形するので、ダイヤフラム弁内においては中空弁体の開閉移動に起因して流体が容積変化することがなくなる。これにより、ダイヤフラム弁が設けられた流体回路に中空弁体の開閉移動に起因した流体移動の発生を防止することができる。連通流路は中空弁体により直線的な通路となるので、流体の圧力損失や乱流の発生を防止することができる。
【0014】
中空弁体の両端部にダイヤフラムが設けられており、両方のダイヤフラムが中空弁体に連動して弾性変形するので、ダイヤフラム弁は中空弁体により直接駆動される。これにより、ダイヤフラム弁を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態であるダイヤフラム弁を示す断面図であり、(A)は流路が閉じられた状態を示し、(B)は流路が開かれた状態を示す。
【図2】図1(A)における2−2線断面図である。
【図3】図2における矢印3方向からみた側面図である。
【図4】図1(A)における4−4線断面図である。
【図5】図1における5−5線断面図である。
【図6】(A)は図1に示されたダイヤフラムユニットを収容する収納ケーシングを示す斜視図であり、(B)は(A)における6B−6B線断面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態であるダイヤフラム弁を示す断面図である。
【図8】(A)は本発明の他の実施の形態であるダイヤフラム弁を示す縦断面図であり、(B)は(A)における8B−8B線横断面図である。
【図9】(A)は本発明の他の実施の形態であるダイヤフラム弁を示す断面図であり、(B)は(A)における9B−9B線断面図である。
【図10】本発明のさらに他の実施の形態であるダイヤフラム弁を示す断面図であり、(A)は流路が閉じられた状態を示し、(B)は流路が開かれた状態を示し、(C)は(A)における10C−10C線断面図である。
【図11】本発明のさらに他の実施の形態であるダイヤフラム弁を示す断面図であり、(A)は流路が閉じられた状態を示し、(B)は流路が開かれた状態を示し、(C)は(A)における11C−11C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。それぞれの実施の形態においては、共通する部材には同一の符号が付されている。
【0017】
図1〜図4に示すダイヤフラム弁10aは、第1のハウジング体11とこれに取り付けられる第2のハウジング体12とを有している。2つのハウジング体11,12をそれぞれの突き当て面で突き当てた状態のもとでねじ部材により締結することによって2つのハウジング体11,12により弁ハウジング13が構成される。第1のハウジング体11には流路14aを有する第1の配管14が取り付けられ、第2のハウジング体12には流路15aを有する第2の配管15が取り付けられるようになっている。これらの配管14,15は、それぞれの流路14a,15aが対向するように同軸状態となってそれぞれのハウジング体11,12に取り付けられる。
【0018】
第1のハウジング体11には、突き当て面側に収納凹部16が形成されるとともに収納凹部16に連なって大径の取付孔17とこれと同軸上の小径の取付孔18とが形成されている。第1の配管14の端部には取付孔17,18に挿入されるフランジ部21が設けられ、フランジ部21は大径の取付孔17と小径の取付孔18との間の突き当て面19に突き当てられた状態でハウジング体11に装着される。フランジ部21の内面は、第2のハウジング体12に向けて内径が大きくなったテーパ面21aとなっている。ハウジング体11の取付孔17には弁座ブロック22が装着されるようになっており、弁座ブロック22は第1のジョイント部材23を構成するフランジ部21に隣り合っている。
【0019】
第2のハウジング体12には、その突き当て面側に大径の取付孔24が形成され、突き当て面に対して反対側に小径の取付孔25が形成されている。さらに、第2のハウジング体12には、両方の取付孔24,25の間に位置させて突き当て面26aと、これに連続するテーパ孔26bとが形成されている。第2の配管15の端部には大径の取付孔24に挿入されるフランジ部27と、テーパ孔26bに対応するテーパ部28とが設けられており、フランジ部27は突き当て面26aに突き当てられた状態でハウジング体12に装着される。フランジ部27とテーパ部28とにより第2のジョイント部材29が形成されている。
【0020】
弁ハウジング13内にはダイヤフラムユニット31が着脱自在に配置されている。ダイヤフラムユニット31は第1の流路14aと第2の流路15aとを連通させる連通流路32aが形成された中空弁体32を有しており、中空弁体32は、円筒形状の部材つまりスリーブ形状の部材により形成されている。中空弁体32の一端部には、環状の第1の装着部33が外周部に設けられた第1のダイヤフラム34が一体に設けられている。中空弁体32の他端部には、環状の第2の装着部35が外周部に設けられた第2のダイヤフラム36が一体に設けられている。第1のダイヤフラム34の装着部33は弁座ブロック22を介して弁ハウジング13に固定され、第2のダイヤフラム36の装着部はフランジ部27を介して弁ハウジング13に固定されるようになっている。
【0021】
それぞれのダイヤフラム34,36は湾曲しており、中空弁体32が軸方向に移動すると、中空弁体32に同期して弾性変形する。このように、中空弁体32はその両端部に一体に設けられたダイヤフラム34,36により弁ハウジング13に移動自在に吊り下げられて保持された状態となっている。さらに、それぞれのダイヤフラム34,36は、凹面側が中空弁体32の軸方向外方となるように、相互に凹凸関係が逆向きとなっている。
【0022】
ダイヤフラムユニット31は収納ケーシング37内に収納されている。収納ケーシング37は、図6(A)に示されるように、2つのケーシング体37a,37bを有し、これらを突き合わせることにより形成されている。図6(B)に示されるように、それぞれのケーシング体37a,37bには第1の装着部33の外周面に形成された環状溝に係合する係合爪38が設けられるとともに、第2の装着部35の外周面に形成された環状溝に係合する係合爪39が設けられている。それぞれのケーシング体37a,37bの対向面には、図6に示すように、開口部40が形成されている。
【0023】
ダイヤフラムユニット31は、2つのケーシング体37a,37bを突き合わせることにより収納ケーシング37内に収容される。ダイヤフラムユニット31は、弁座ブロック22に一端部を嵌合させ、他端部をフランジ部27に嵌合させることによって弁ハウジング13内にフローティング状態となって装着される。このように、ダイヤフラムユニット31は弁座ブロック22とフランジ部27を介して弁ハウジング13に装着されるようになっているが、弁ハウジング13に直接装着するようにしても良い。また、ダイヤフラムユニット31を交換する際には、収納ケーシング37を弁ハウジング13から取り外すことにより容易に交換することができる。
【0024】
弁座ブロック22は、図1に示されるように、取付孔17に嵌合される円形の基部41を有し、基部41の内面側には中空弁体32の端面が当接する弁座部42が設けられている。弁座部42の径方向外方には、図5に示されるように、基部41を貫通する複数の貫通孔43が形成されており、貫通孔43を介して流路14aと連通流路32aが連通するようになっている。図5に示されるように、それぞれの貫通孔43は円弧状に伸びている。弁座ブロック22の径方向中心部には、中空弁体32の連通流路32a内に突出する円錐形の突起44が設けられ、この突起44の反対側にはフランジ部21内に向けて突出する円錐形の突起45が設けられている。
【0025】
図1(A)に示すように、中空弁体32の一端面が弁座部42に当接した状態となると、中空弁体32の連通流路32aは閉じられて、第1の流路14aと第2の流路15aが遮断された状態となる。これに対して、中空弁体32が軸方向に移動して、図1(B)に示すように、中空弁体32の一端面が弁座部42から離れると、連通流路32aを介して第1の流路14aと第2の流路15aが連通状態となる。
【0026】
図示するダイヤフラム弁10aにおける第1のジョイント部材23を流入側ジョイント部材とし、第2のジョイント部材29を流出側ジョイント部材とすると、流入側流路としての第1の流路14aから流出側流路としての第2の流路15aに対して、液体等の流体を供給する状態と、供給を停止する状態とに切り換えられる。第1の流路14aから第2の流路15aに流体を供給するときには、図1(B)に示すように中空弁体32は弁座部42から離される。一方、流体の供給を停止するときには、図1(A)に示すように中空弁体32は弁座部42に当接される。このように、ダイヤフラム弁10aは、流入側流路から流出側流路に流体を供給する状態と、供給を停止する状態とに作動する流路切換弁つまり二方向弁となっている。
【0027】
このダイヤフラム弁10aが、例えば、フォトレジスト液等の薬液をノズルから吐出するための液体回路に使用される場合には、それぞれのジョイント部材23,29、ダイヤフラムユニット31、および弁座ブロック22等のように薬液と接触する部位の素材としてはフッ素樹脂が用いられる。これにより、薬液に接触する部位が薬液により腐食することが防止される。それぞれのジョイント部材23,29にはテーパ面21aが設けられ、弁座ブロック22の両側には円錐形の突起44,45が設けられているので、第1の流路14aから第2の流路15aへ連通流路32aを介して流れる薬液等の液体は、滞留することなく、円滑に流れることになる。なお、流路内を流れる液体の種類によっては、液体が触れる部材としてフッ素樹脂以外の他の樹脂や金属を用いることができる。
【0028】
中空弁体32が軸方向に移動して図1(A)に示すように流路を閉じた状態と、図1(B)に示すように流路を解放した状態とに切り換えられるときには、2つのダイヤフラム34,36が中空弁体32に一体となっているので、中空弁体32の移動が両方のジョイント部材23,29の間における液体の容積を変化させることがない。つまり、中空弁体32が閉じた状態から解放状態に移動する際には、2つのダイヤフラム34,36によりつり下げられてフローティング状態となった中空弁体32は連通流路32a内の液体に沿うように移動し、第2のダイヤフラム36の収縮変形により押し出される液体は、膨張変形する第1のダイヤフラム34の内側に回り込むことになるので、両方のジョイント部材23,29の間における液体の容積が変化することがない。中空弁体32が解放状態から閉鎖状態つまり閉塞状態に移動する際にも同様に液体の容積が変化することがない。これにより、中空弁体32の開閉移動によって、ダイヤフラム弁10aが設けられた流体回路内に流体の移動を発生させることを防止することができる。
【0029】
2つのダイヤフラム34,36が相互に逆向きとなって中空弁体32の両端部に設けられているので、中空弁体32の開閉移動に際しての液体の容積変化をなくすことができる。しかも、弁体を中空弁体32とし、その両端部にダイヤフラム34,36を設けて中空弁体32により2つのダイヤフラム34,36を直接同期させて連動させるようにしたので、ダイヤフラム弁10aを小型化させることができる。さらに、中空弁体32の連通流路32aは直線状となっており、連通流路32aにおける流体の圧力損失をなくすことができるとともに乱流の発生を防止することができる。
【0030】
中空弁体32を解放位置と閉鎖位置とに駆動するために、第2のハウジング体12には2つのシリンダ室51a,51bが形成され、それぞれのシリンダ室51a,51bにはピストン52a,52bが軸方向に往復動自在に装着されている。それぞれのピストン52a,52bには往復動部材としてのピストンロッド53a,53bが設けられている。一方のピストンロッド53aにねじ部材54により固定される連結部材55aの先端は、中空弁体32の外周面に形成された環状溝46の略半周部分に係合している。他方のピストンロッド53bにねじ部材54により固定される連結部材55bの先端は、環状溝46の残りの略半周部分に係合している。両方の連結部材55a,55bは、図4に示されるように、ねじ部材56により相互に連結されており、2つのピストン52a,52bの合力が中空弁体32の中心部に加えられるようになっている。ただし、1つのピストンにより中空弁体32を駆動することも可能である。
【0031】
上述したダイヤフラム弁10aにおいては、それぞれのピストン52a,52bは複動型であり、中空弁体32に軸方向の推力を加えるピストン52a,52bの前進移動と後退移動とをともに圧縮空気により行うようにしているが、ピストン52a,52bを単動型として、前進移動と後退移動の一方の移動のみを空気圧により行うようにし、他方の移動をばねにより行うようにしても良い。また、上述したダイヤフラム弁10aにおいては、第1の配管14を流入側とし、第2の配管15を流出側としているが、これらを逆としても良い。
【0032】
それぞれのピストン52a,52bを圧縮空気等の流体圧により往復動するために、後退用の圧力室57aには、図2および図3に示されるように、ハウジング体12に形成された給排ポート58が流路58aを介して連通されている。同様に、前進用の圧力室57bには、ハウジング体12に形成された給排ポート59が図示しない流路を介して連通されている。したがって、給排ポート59から圧縮空気を供給すると、ピストンロッド53a,53bがハウジング体11に突出するように前進移動して中空弁体32は弁座部42に向けて駆動される。一方、給排ポート58から圧縮空気を供給すると、ピストンロッド53a,53bが後退移動して中空弁体32は弁座部42から離れる方向に駆動される。ピストンロッド53a,53bが往復動する際には、収納凹部16内の空気は、ハウジング体12に設けられた息付き孔60を介して給排される。
【0033】
上述したダイヤフラム弁10aが、フォトレジスト液をノズルから吐出するための液体回路に使用される場合には、第1のジョイント部材23は液体の流入側になり、第2のジョイント部材29は流出側となる。図1(A)に示すように中空弁体32が弁座部42に当接して連通流路32aが遮断された状態から、図1(b)に示すように連通流路32aを解放した状態に切り換えるときには、後退用の圧力室57aに給排ポート58から圧縮空気が供給され、このときには前進側の圧力室57b内の空気は給排ポート59から排出される。一方、中空弁体32を解放状態から遮断状態に切り換えるときには、前進側の圧力室57bに給排ポート59から圧縮空気が供給され、後退側の圧力室57a内の空気は外部に排出される。
【0034】
ピストン52a,52bにより軸方向の推力つまりスラスト力が加えられて中空弁体32が軸方向に移動するときには、中空弁体32の両端部にダイヤフラム34,36が一体に設けられているので、中空弁体32が開閉移動する時に、ダイヤフラム弁10a内における液体の容積変化がなくなる。これにより、ダイヤフラム弁10aが設けられた液体回路に、中空弁体32の開閉移動に起因して液体が移動することがなくなるので、連通流路32aにおける圧力損失や乱流の発生を抑制することができる。例えば、ノズルから液体を吐出する場合には、高精度で液体を吐出させることができるとともに液体内の発泡も抑制することができる。
【0035】
図7は本発明の他の実施の形態であるダイヤフラム弁10bを示す断面図であり、このダイヤフラム弁10bの基本構造は上述したダイヤフラム弁10aと同一となっている。
【0036】
このダイヤフラム弁10bの中空弁体32には、ダイヤフラム弁10aにおける中空弁体32においては連結部材55a,55bの先端が係合する環状溝46が形成されているのに対し、環状の突起48が設けられている。それぞれの連結部材55a,55bの先端部には、環状の突起48が係合する凹部を有する円弧状の連結端部49が設けられている。このタイプのダイヤフラム弁10bにおいても、ダイヤフラムユニット31を着脱自在に弁ハウジング13に装着することができる。
【0037】
図8は本発明の他の実施の形態であるダイヤフラム弁10cを示す断面図である。このダイヤフラム弁10cは、中空弁体32に推力を加えるための駆動機構が上述したダイヤフラム弁10aと相違しているが、他の構造はダイヤフラム弁10aと同様である。
【0038】
このダイヤフラム弁10cにおいては、第2のハウジング体12が内側部61aとこの外側に装着される円筒形状の外側部61bとにより形成されており、これらの間に形成されたシリンダ室51には環状のピストン52が組み込まれている。環状のピストン52には円筒形状のピストンロッド53が往復動部材として設けられており、ピストンロッド53は連結部材55a,55bにより中空弁体32に連結されている。ハウジング体12に形成された後退用の圧力室57aは給排ポート58に連通され、前進用の圧力室57bは給排ポート59に連通されている。環状のピストン52は複動型となっているが、上述のように、単動型としても良い。
【0039】
図9は本発明の他の実施の形態であるダイヤフラム弁10dを示す断面図である。このダイヤフラム弁10dの弁ハウジング13は、第1のハウジング体11と第2のハウジング体12との間に配置されるジョイントブロック62とを有しており、ジョイントブロック62は第2のジョイント部材29を構成している。ジョイントブロック62には第2の配管15が一体に設けられており、第2の配管15は第1の配管14に対して直角となっている。ジョイント部材29としてのジョイントブロック62には、図9に示されるように、ダイヤフラムユニット31の第2の装着部35が固定されるようになっている。
【0040】
第2のハウジング体12には、中空弁体32と同軸状にシリンダ室51が形成され、このシリンダ室51はカバー47により覆われている。シリンダ室51内にはピストン52が軸方向に往復動自在に装着されている。ジョイントブロック62には2本の連結ロッド63が往復動部材として軸方向に往復動自在に装着されている。ピストン52に設けられたピストンロッド53には雄ねじ部64が設けられ、この雄ねじ部64にねじ結合するナット65により連結部材66がピストンロッド53に取り付けられている。連結部材66はそれぞれの連結ロッド63にねじ部材67により取り付けられている。シリンダ室51内にピストン52により区画される前進用と後退用の圧力室57a,57bには、それぞれ第2のハウジング体12に形成された給排ポート58,59から圧縮空気が供給されるようになっている。したがって、図9に示すダイヤフラム弁10dにおいては、1つのピストン52により連結ロッド63を介して中空弁体32には軸方向の推力が加えられ、第1の配管14の流路14aと第2の配管15の流路15aとが連通する状態と連通を遮断する状態とに切り換えられる。
【0041】
図10は本発明のさらに他の実施の形態であるダイヤフラム弁10eを示す断面図である。このダイヤフラム弁10eは、第1の配管14の流路14aから第2の配管15の流路15aへの流れを許容し、逆方向の流れを阻止するための逆止弁つまりチェック弁である。
【0042】
収納ケーシング37とこの中に組み込まれるダイヤフラムユニット31の構造は、図1に示したものと同様であり、第2のハウジング体12には、図1に示した駆動機構は設けられていない。第1のハウジング体11に形成された収納凹部16内には、中空弁体32の外周面に形成された環状溝46の略半周部分に係合する連結部材71aと、環状溝46の残りの略半周部分に係合する連結部材71bとが組み込まれている。これらの連結部材71a,71bは、図10(C)に示すように、ねじ部材72により連結されるようになっている。それぞれの連結部材71a,71bには半円形の筒部73が一体に設けられており、両方の連結部材71a,71bをねじ部材72により締結することにより、筒部73によって円筒部が形成される。筒部73内にはばね部材である圧縮コイルばね74が付勢部材として装着されており、この圧縮コイルばね74によって中空弁体32には弁座部42に向かう方向の付勢力が加えられている。
【0043】
このように、中空弁体32には弁座部42に向かうばね力が加えられているので、中空弁体32にはダイヤフラム36に加わる流体の圧力による推力とばね力による推力との合計の閉鎖方向の推力が加わることになる。したがって、第1の流路14a内の流体によりダイヤフラム34に加わる開放方向の推力がダイヤフラム36に逆方向に加わる閉鎖方向の推力よりも大きくなると、中空弁体32は弁座部42から離れ、連通流路32aが流路14aと連通する開放状態となる。これに対し、開放方向の推力が閉鎖方向の推力よりも小さいときには中空弁体32が弁座部42に当接して連通流路32aは閉じられることになる。このように、図10に示すダイヤフラム弁10eは、流路14aから流路15aへの流れを許容し、逆方向の流れを阻止する逆止弁となっている。中空弁体32が弁座部42から離れるストロークは、筒部73が第2のハウジング体12の端面に突き当たることにより規制される。
【0044】
図11は本発明のさらに他の実施の形態であるダイヤフラム弁10fを示す断面図である。このダイヤフラム弁10fは、ダイヤフラム弁10eと同様に、第1の配管14の流路14aから第2の配管15の流路15aへの流れを許容し、逆方向の流れを阻止するための逆止弁であるが、このダイヤフラム弁10fにおいては、図10に示した圧縮コイルばね74は設けられておらず、中空弁体32には弁座部42に向かう閉鎖方向のばね力が加えられていない。
【0045】
図11に示すダイヤフラム弁10fにおいては、第1のダイヤフラム34の外径d1よりも第2のダイヤフラム36の外径d2の方が大きく設定されている。したがって、図11に示すダイヤフラム弁10fにおいては、流路14a内の流体の圧力が流路15a内の流体の圧力よりも高くなると、第1のダイヤフラム34に加わる流路14a内の流体による中空弁体32に対する開放方向の推力がダイヤフラム36に加わる流路15a内の流体による閉鎖方向の推力よりも大きくなるので、中空弁体32が弁座部42から離れて連通流路32aを開放する。これに対し、開放方向の推力が閉鎖方向の推力よりも小さいときには中空弁体32が弁座部42に当接して連通流路32aは閉じられる。このように、図11に示すダイヤフラム弁10fは、図10に示すダイヤフラム弁10eと同様に、流路14aから流路15aへの流れを許容し、逆方向の流れを阻止する逆止弁となっている。
【0046】
中空弁体32が弁座部42から離れるストロークを規制するとともに、中空弁体32が軸方向に移動するときの移動を案内するために、2つのガイド部材75a,75bが中空弁体32の環状溝46に係合して取り付けられており、それぞれのガイド部材75a,75bは収納ケーシング37の開口部40に沿って移動するようになっている。
【0047】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図示するダイヤフラム弁においては、配管14と一体に設けられたフランジ部21を第1のジョイント部材23としているが、配管14とは分離されたジョイント部材を弁ハウジング13に設けるようにしても良い。第2のジョイント部材29についても同様である。また、中空弁体32を軸方向に往復動するための駆動手段として、上述した実施の形態においてはピストンが用いられており、圧縮空気や加圧液体によりピストンを駆動するようにしているが、電動モータにより駆動するようにしても良く、手動により駆動するようにしても良い。
【符号の説明】
【0048】
10a〜10f ダイヤフラム弁
11 ハウジング体(第1のハウジング体)
12 ハウジング体(第2のハウジング体)
13 弁ハウジング
14 配管(第1の配管)
14a 流路(第1の流路)
15 配管(第2の配管)
15a 流路(第2の流路)
21 フランジ部
22 弁座ブロック
23 ジョイント部材(第1のジョイント部材)
27 フランジ部
29 ジョイント部材(第2のジョイント部材)
31 ダイヤフラムユニット
32 中空弁体
32a 連通流路
34 ダイヤフラム(第1のダイヤフラム)
36 ダイヤフラム(第2のダイヤフラム)
37 収納ケーシング
41 基部
42 弁座部
43 貫通孔
44 第1の突起
45 第2の突起
52,52a,52b ピストン
53,53a,53b ピストンロッド(往復動部材)
74 圧縮コイルばね(付勢部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤフラムを有する弁体が弁ハウジングに組み込まれ、第1の流路とこれに連通する第2の流路とを連通させる状態と連通を遮断する状態とに開閉するダイヤフラム弁であって、
前記弁ハウジング内に軸方向に往復動自在に配置され、前記第1の流路と前記第2の流路とを連通させる連通流路が形成された中空弁体と、
前記中空弁体の一端部に設けられた第1のダイヤフラムと、
前記中空弁体の他端部に設けられ、前記中空弁体を介して前記第1のダイヤフラムと連動する第2のダイヤフラムと、
前記弁ハウジングに設けられ、前記中空弁体が当接する弁座部を有する弁座ブロックと、
前記弁座ブロックに設けられ、前記連通流路内に突出する円錐形の第1の突起と、
前記弁座ブロックに設けられ、前記第1の流路内に突出する円錐形の第2の突起と、を有するダイヤフラム弁。
【請求項2】
請求項1記載のダイヤフラム弁において、前記中空弁体と前記第1および第2のダイヤフラムとからなるダイヤフラムユニットを有し、前記中空弁体に連結される往復動部材と当該往復動部材を軸方向に往復動する駆動手段が前記弁ハウジングに設けられているダイヤフラム弁。
【請求項3】
請求項2記載のダイヤフラム弁において、
前記駆動手段は、前記中空弁体に前記弁座部に向かう方向の付勢力を加える付勢部材を有し、前記第1の流路内の流体により前記第1のダイヤフラムに加わる開放方向の推力が、前記付勢部材の付勢力と前記第2の流路内の流体の圧力より前記第2のダイヤフラムに加わる推力との合計の閉鎖方向の推力よりも大きいときには、前記中空弁体が前記弁座部から離れて前記連通流路を開放し、前記開放方向の推力が前記閉鎖方向の推力よりも小さいときには、前記中空弁体が前記弁座部に当接して前記連通流路を閉じるダイヤフラム弁。
【請求項4】
ダイヤフラムを有する弁体が弁ハウジングに組み込まれ、第1の流路とこれに連通する第2の流路とを連通させる状態と連通を遮断する状態とに開閉するダイヤフラム弁であって、
前記弁ハウジング内に軸方向に往復動自在に配置され、前記第1の流路と前記第2の流路とを連通させる連通流路が形成された中空弁体と、
前記中空弁体の一端部に設けられた第1のダイヤフラムと、
前記中空弁体の他端部に設けられ、前記中空弁体を介して前記第1のダイヤフラムと連動する第2のダイヤフラムと、
前記弁座部、前記連通流路内に突出する円錐形の第1の突起および前記第1の流路内に突出する第2の突起を有し、前記弁ハウジングに設けられる弁座ブロックと、
前記中空弁体に取り付けられるガイド部材と、
前記弁ハウジング内に設けられ、前記ガイド部材の移動を案内することで前記中空弁体が軸方向に移動するときの移動を案内する収納ケーシングと、を有し、
前記第2のダイヤフラムの外径を前記第1のダイヤフラムの外径よりも大きく設定し、前記第1のダイヤフラムに加わる前記第1の流路内の流体による開放方向の推力が前記第2のダイヤフラムに加わる前記第2の流路内の流体による閉鎖方向の推力よりも大きいときには前記中空弁体が前記弁座部から離れて前記連通流路を開放し、前記開放方向の推力が前記閉鎖方向の推力よりも小さいときには前記中空弁体が前記弁座部に当接して前記連通流路を閉じるダイヤフラム弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−50215(P2013−50215A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−266467(P2012−266467)
【出願日】平成24年12月5日(2012.12.5)
【分割の表示】特願2009−189892(P2009−189892)の分割
【原出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000145611)株式会社コガネイ (142)
【Fターム(参考)】