説明

ダビガトラン経口製剤の製造方法

本発明は、メタンスルホン酸塩の形態である式Iの有効成分ダビガトランエテキシラートを含む新規な医薬製剤の改良された製造方法と、そのような新規な医薬製剤に関する。
【化1】


I

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、医薬的に許容できる塩の形態であってもよい、一般式(I):
【0002】
【化1】

I
【0003】
で表わされる有効成分ダビガトランエテキシラートの新規医薬製剤の改良された製造方法、及び、そのような新規な医薬製剤に関する。
(発明の背景)
式(I)の化合物は従来技術より公知であり、最初の開示はWO98/37075である。これは、例えば、深部静脈血栓症の術後予防、脳卒中予防に、とりわけ、心房細動を有する患者の脳卒中の予防に使用できる効果的なトロンビン阻害剤である。WO03/074056には、ダビガトランエテキシラートのメタンスルホン酸付加塩(即ち、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩)が特に有用であることが開示されている。
前記化合物は通常経口投与される。なかでも、例えばWO03/074056に開示のごとく、いわゆるペレット製剤が用いられる。この製剤は、実質的に球状であるコア物質に有効成分層が塗工された組成物である。有効成分層は結着剤を含有し、更に分離剤(separating agent)を含んでいてもよく、コア物質を取り巻く。コア物質は医薬的に許容できる有機酸からなるか、又は、有機酸を含有する。コア層及び有効成分層は、いわゆる分離層(isolating layer)によって互いに分離される。この種の有効成分製剤の概略的構造がWO03/074056の図1に示されている。
本発明は、ダビガトランを含有する有効成分ペレット剤の調製に工業規模で使用できる方法に関するもので、本発明により該製剤を大規模に製造することができる。本発明の更なる目的は、再現性をもって該製剤の製造が可能な方法を提供することである。
WO05/028468によると、ダビガトランエテキシラートのメタンスルホン酸付加塩は異なる複数の結晶形で存在する。そこで本発明のもう一つの目的は、有効成分ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩がある一種のみの結晶形の状態で含まれる医薬製剤の製造を可能にする製造方法を提供することである。
(発明の詳細な説明)
【0004】
WO05/028468によると、ダビガトランエテキシラートのメタンスルホン酸付加塩は異なる複数の結晶形で存在する。驚くべきことに、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩の結晶形Iは、その結晶特性に関して結晶形IIに比べて有用であることがわかった。結晶形Iの方が、有効成分の製造工程中及び製造工程後の分離及び処理が容易になる。そこで、本発明では結晶形(polymorph)Iが好適な結晶形である。
概ね、同じ物質でも結晶形が異なれば特性が異なるという特徴を有することがある(特性には安定性、効果、製造工程における加工特性等が含まれるが、これらに限定されるものではない)。そこで、原則としては、実質的に唯一の結晶形のみを含む医薬組成物を製造することが推奨される。
したがって、本発明は、有効成分ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩の結晶形Iを実質的に含有する医薬組成物を製造することができる製造方法に関する。
本発明の方法は、部分的な工程をつなぎ合わせたことに特徴づけられる。まず最初に、コア1を医薬的に許容できる有機酸から製造する。本発明の範囲においては、酒石酸を使ってコア1を調製する。こうして得られたコア物質1を分離用懸濁液(isolating suspension)2の噴霧により、いわゆる分離層付き酒石酸コア(isolated tartaric acid cores)3にする。その後調製したダビガトラン懸濁液4を前記被覆コア3に塗布方法を用いて1回以上の工程で噴霧する。こうして得られた有効成分ペレット5を最終的には適切なカプセルに充填する。
【0005】
分離層付き酒石酸コア3は、均一でほぼ球形の形状であるとよい。更に、分離層付き酒石酸コア3は、分離においてサテライトが原因となる潜在的な重大な欠陥がないことが望ましい。このサテライトとは、これがなければ球状であるペレットの外側に付着したり、ほぼ球体のペレットから離脱する小さな粒子である。例えばダビガトランエテキシラートのように酸に反応しやすい物質の場合、理想的な球状を呈し、表面粗さが低いことが特に重要である。このような物質においては、離脱したサテライト又は酒石酸粉末の粒子が大きすぎることによる過度な表面粗さによって起きる分離での欠陥が、保存安定性を著しく損ね、完成品の耐久性を低下させることになる。このような理由から、酸に反応しやすい有効成分の場合は、再現性が高く、常に高品質を有する分離層を設けることが必須である。
コア1は、粒径0.2〜0.8mm、好ましくは0.3〜0.7mm、特に好ましくは0.4〜0.6mm(エアジェット篩分けにより求める)の酒石酸粒子に、酒石酸と結着剤とを含む溶液を噴霧して調製する。以下の方法を用いて溶液を調製する。最初に、好適な結着剤、好ましくはアカシア樹脂(アラビアゴム)と共に、昇温下、好ましくは30〜70℃、特に好ましくは40〜60℃で、酒石酸を水に溶解する。投入する1kgの酒石酸に対して好ましくは0.1〜0.3kg、さらに好ましくは0.15〜0.25kg、特に好ましくはおよそ0.2kgのアカシア樹脂を使用する。水の量は、投入する1kgの酒石酸に対して好ましくは0.6〜1.0kg、さらに好ましくは0.7〜0.9kg、特に好ましくは約0.8kgである。
本発明によると、アカシア樹脂の透明な水溶液を前記温度で先に調製することが好ましい。この水溶液が得られたら、次に、撹拌を続けながら好ましくは一定の温度で酒石酸を添加する。添加終了後、混合物を少なくとも1時間、好ましくは3〜10時間、更に好ましくは4〜8時間、特に好ましくは5〜6時間撹拌する。
【0006】
こうして得られた溶液を、粒径0.2〜0.8mm、好ましくは0.3〜0.7mm、特に好ましくは0.4〜0.6mmの酒石酸粒子に噴霧する。前記粒径を有する粒子の割合は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも97%である。このために、酒石酸粒子を適切な容器に入れる。容器はパンが好ましく、パンの回転で粒子が混合移動するパンが好ましい。パンの様々な設計については当該分野では公知であり、ドラムコーターを参照してもよい。この点については、例えば、EP80199、WO83/03052、WO95/19713又はWO06/134133の開示を参照する。本発明の範囲においては、本発明の方法で使用できるパンは、水平パンとしても知られている。
本願明細書前述の方法で調製した酸ゴム溶液は、回転により動き続ける粒子に噴霧される。
本発明の範囲において噴霧に提供される材料のことをペレット床(pellet bed)と呼ぶこともある。本発明の範囲において、ペレットという用語は、粒子又はコアと同等とみなされる。
本発明によると、供給される酒石酸粒子1kgに対して、好ましくは0.8〜1.6kg、さらに好ましくは1.0〜1.4kg、特に好ましくは1.2kgの前記酸ゴム溶液が噴霧される。
【0007】
本発明の方法において、空気供給量はバッチサイズによって変わる。本発明で供給される酒石酸コア1kgに対して、空気供給基準量は0.5〜2(m3/時)/kgが好ましく、更には0.75〜1.5(m3/時)/kg、とりわけ好ましくは0.9〜1.1(m3/時)/kgの範囲である。空気供給量とは、回転しているペレット床中に導入される乾燥空気の1時間当たりの量を指す。
例えば、1回分のバッチに1000kgの酒石酸コアが含まれている場合、空気供給基準量1.0(m3/時)/kgは、実際には1000 m3/時の空気供給量に相当する。本発明による乾燥に装入される空気の温度は、好ましくは90℃未満、80℃未満が特に好ましい。理想的には、供給空気の温度は35〜75℃の範囲がよい。
本発明によるところのペレット温度(形成したペレット床の温度)は、30〜50℃が好ましく、36〜44℃が特に好ましく、理想的には38〜42℃である。
差圧は1〜3mbarが好ましく、1.5〜2.5mbarが更に好ましく、1.8〜2.2mbarが特に好ましい。差圧とは、パンの圧力と周囲圧力との圧力差である。酸性塵が逃げないようにパンは減圧状態であるとよい。
噴霧は一定の噴霧速度で行う。噴霧速度とは、回転するペレット床に噴霧される酸ゴム溶液の1時間当たりの量を意味する。噴霧速度は本発明の方法におけるバッチサイズによって変わる。本発明で基準噴霧速度は、提供された酒石酸結晶1キログラムに対し、好ましくは0.2〜0.4(kg/時)/kg、更に好ましくは0.25〜0.35(kg/時)/kg、特に好ましくは0.28〜0.32(kg/時)/kgである。例えば、1回のバッチに1000kgの酒石酸結晶が含まれている場合、基準噴霧速度が0.3(kg/時)/kg であれば、実際の噴霧速度は300kg/時となる。
【0008】
第1回分の酸ゴム溶液を粒径0.2〜0.8mmの酒石酸粒子に噴霧し、パンの回転により溶液が分散した後、湿った酒石酸粒子上に酒石酸微粉を撒く。この酒石酸微粉は、粒径が100μm未満、好ましくは75μm未満、特に好ましくは50μm未満(エアージェット篩分けにより求める)の酒石酸の微細な粉からなる。前記粒径の粒子の比率は少なくとも85%であるとよく、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも94%であるとよい。本発明によると、供給した酒石酸粒子1kgに対して、酒石酸微粉は好ましくは0.4〜1.2kg、更に好ましくは0.6〜1.0kg、特に好ましくは0.8kg使用するとよい。前記酒石酸微粉の散布後、製品温度が約30〜50℃、好ましくは約40℃になるまで乾燥を行う。その後、酸ゴム溶液を再度噴霧する。
球形粒子が均一に形成されるよう、酸ゴム溶液の噴霧と酒石酸微粉の散布を交互に行う。酸ゴム溶液と酒石酸微粉はそれぞれの総量を少なくとも100回、好ましくは150〜350回、特に好ましくは200〜300回、特には約250回に分けて、同様のバッチサイズで供給され、その回数に対応して、本願明細書前記の工程が繰り返される。
このプロセスの終了後、得られたコア1を乾燥する。乾燥は温度50〜70℃で、好ましくは55〜65℃で、24〜72時間、好ましくは36〜60時間かけて行う。
酒石酸コア1を調製した後、このコア材料をいわゆる分離させることが必要である。酒石酸コアの周りに分離層を設けて、このあとの製品中で有効成分と酒石酸コアとが相互作用しないようにする。
【0009】
前記のプロセスによって得られた酒石酸コア1上に、分離用懸濁液2を噴霧することにより、コア材料を分離させる。分離用懸濁液2の調製は、エタノールをバッチ容器に入れ、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとジメチルポリシロキサンとを加えて撹拌しながら溶解させた後、タルクを添加して懸濁させる。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースとタルクとの使用は、例えば、アラビアゴムとタルクの使用よりも優位であることが分かった。ヒドロキシプロピルメチルセルロースをタルクと一緒に使用することにより、一定した品質の分離層を再現性のある方法で作製することが可能である。この品質と再現性については工業規模で試験を行った。
分離用懸濁液2を調製するには、エタノール1kgに対して好ましくは0.04〜0.06kg、特に好ましくは0.046〜0.05kgのヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用する。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの使用に加え、ジメチルポリシロキサンを分離用懸濁液2に添加することが、泡立ちを防ぐのに特に好ましいことが本発明では明らかになった。分離用懸濁液2を調製するのに撹拌しながら添加するジメチルポリシロキサンの量は、エタノール1kgに対して0.6〜1.2gが好ましく、0.8〜0.9gが特に好ましい。最後にタルクを添加して撹拌しながら懸濁させる。タルクは、エタノール1kgに対して0.04〜0.06kgが好ましく、0.046〜0.05kgの使用が特に好ましい。
【0010】
本発明の態様の1つは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、好ましくは前記の量で含まれるエタノール系分離用懸濁液2に関する。本発明の別の態様は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのほかにジメチルポリシロキサンが、好ましくは前記の量で含まれるエタノール系分離用懸濁液2に関する。本発明の別の態様は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びジメチルポリシロキサンに加え、さらにタルクが好ましくは前記の量で含まれるエタノール系分離用懸濁液2に関する。また、本発明の別の態様は、本願明細書前記の方法で得ることができるエタノール系分離用懸濁液2に関する。
本発明の別の態様は、酒石酸コア1を分離するためのエタノール系分離用懸濁液2の使用に関する。本発明の別の態様は、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩を含む医薬製剤を調製するための、エタノール系分離用懸濁液2の出発物質としての使用に関する。
従来の水平式コーターで、前記調製された分離用懸濁液2を、既に調製済みの酒石酸ペレット1に連続式噴霧方法で噴霧する。供給した1kgの酒石酸コア1に対して、0.5〜0.8kg、好ましくは0.55〜0.75kg、特に好ましくは0.6 〜0.7kgの分離用懸濁液を噴霧する。
噴霧はある一定の噴霧速度で行う。この噴霧速度とは、ペレット1に噴霧する分離用懸濁液2の1時間あたりの量を指す。本発明のこのプロセスにおける噴霧速度は、バッチサイズによって変わる。本発明での基準噴霧速度は、酒石酸ペレット1の供給量1kgに対して好ましくは0.01〜0.1(kg/時)/kg、更に好ましくは0.02〜0.04(kg/時)/kg、特に好ましくは0.025〜0.035(kg/時)/kgである。例えば、1回分のバッチが1200kgの酒石酸コアの場合、基準となる噴霧速度0.027(kg/時)/kgは、実際は32kg/時に相応する。例えば1回のバッチが600kgの酒石酸コアである場合、基準噴霧速度0.035(kg/時)/kgは実際のところ21kg/時に対応する。
【0011】
この連続的なプロセスの間、温度は70℃まで、好ましくは25〜70℃の空気を供給しながら連続的にコアを乾燥させる。
空気供給量とは、回転するペレット床に導入する乾燥空気の1時間当たりの量を意味する。本発明による該プロセスにおける空気の供給量は、バッチサイズによって異なる。本発明での基準となる空気供給量は、最初に供給した酒石酸コア2の1kgに対して、好ましくは1.0〜2.5(m3/時)/kg、更に好ましくは1.2〜2.0(m3/時)/kg、特に好ましくは1.40〜1.85(m3/時)/kgである。
例えば、1回分のバッチに600kgの酒石酸コア2が含まれている場合、基準となる空気供給量1.83(m3/時)/kgは、実際には1100 m3/時の空気供給量に相当する。例えば、1回分のバッチに1200kgの酒石酸コア3が含まれている場合、基準空気供給量1.42 (m3/時)/kgは、実際、空気供給量1700 m3/時に相当する。
本発明の別の態様は、前記方法により得られた分離層付き酒石酸コア3に関する。
本発明により得ることができる分離層付き酒石酸コア3は均一でほぼ球形の形状であるため、更なる処理が著しく簡便になる。更に、本発明によるペレット3は、分離中のいわゆるサテライトが原因となる潜在的な重大な欠陥がない。このサテライトとは、これがなければ球形であるペレットの外側に付着したり、ほぼ球形のペレットから離脱する小さな粒子である。酸に反応しやすい有効成分、即ち、分離中のサテライトが原因となる欠陥、又は、酒石酸粉末の粒子が大きすぎて過度に表面が粗くなるために起こる欠陥が保存安定性を著しく損ね、最終製品の耐久性をダメにしかねない場合、ペレット3が理想的な球形で表面粗さが低いことが特に重要である。
【0012】
有効成分を含むペレット5は、本願明細書前記の方法で得られた分離層付き酒石酸コア3に、有効成分含有懸濁液4を噴霧することにより調製する。有効成分含有懸濁液4の調製が本発明ではとりわけ重要である。有効成分含有懸濁液4は、結晶形Iの状態であるダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩を使って作製する。結晶形Iは、融点Tmp.=180±3℃(DSCにより求め、最大ピークを用いて測定し、加熱速度は10℃/分)であることを大きな特徴とする。目的の結晶形Iは、例えばWO05/028468(特に実施例1参照)に記載の方法を使って作製することができる。本発明の範囲において有効成分という用語が使用されている箇所は、特に記載のない限り、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩の結晶形Iに言及するものと解釈される。
有効成分懸濁液4を調製するには、イソプロパノールを導入し、ヒドロキシプロピルセルロースと撹拌しながら混合する。撹拌は従来からの撹拌機、例えばプロペラ撹拌機を使って行われる。撹拌機速度は、通常、100〜1000rpm、好ましくは200〜800rpm、更に好ましくは300〜700rpm、特に好ましくは400〜600rpmである。イソプロパノールは実質的に無水物(99.5%)の状態での使用が好ましい。ヒドロキシプロピルセルロースが完全に溶解するまで撹拌する。溶液が透明になったところで有効成分を添加し、撹拌を10〜60分、好ましくは20〜30分間続ける。その後、撹拌速度を一定にしてタルクを加える。再度撹拌を10〜60分、好ましくは10〜15分間行う。
塊が形成されている場合は、適切な分散機(disperser)により均一化して分解する。本発明では、回転速度が8000から20000rpmまでの当該分野で公知の分散機がこの目的には好ましく使用される。均一化は0.5〜5時間、好ましくは0.5〜4時間、更に好ましくは1〜3時間かけて行う。懸濁液4が均質であること、塊がないことを定期的に、好ましくは毎時ごとに点検する。
【0013】
懸濁液4を調製するには、導入するイソプロパノール1kgにつき、0.05〜0.5kg、好ましくは0.1〜0.3kg、特に好ましくは0.15〜0.25kgの有効成分を使用する。使用するヒドロキシプロピルセルロースの量は、導入するイソプロパノール1kgにつき0.01〜0.1kg、好ましくは0.02〜0.07kg、特に好ましくは0.03〜0.05kgである。使用するタルクの量は、導入するイソプロパノール1kgにつき、0.005〜0.07kg、好ましくは0.01〜0.05kg、更に好ましくは0.02〜0.04kgである。
本発明の有効成分懸濁液における2つの構成成分の質量に関して、有効成分:ヒドロキシプロピルセルロースの比は好ましくは3:1〜7:1、更に好ましくは4:1〜6:1、特に好ましくはおよそ5:1である。本発明の有効成分懸濁液における2つの構成成分の質量に関して、有効成分:タルクの比は好ましくは4:1〜8:1、更に好ましくは5:1〜7:1、特に好ましくは6:1〜6.5:1である。
本発明の有効成分懸濁液において、有効成分の濃度は好ましくは10〜25%(w/w)、更に好ましくは11〜20%(w/w)、特に好ましくは12〜19%(w/w)である。本発明の有効成分懸濁液において、有効成分、ヒドロキシプロピルセルロース及びタルクの総濃度は好ましくは14〜40%(w/w)、更に好ましくは15〜30%(w/w)、特に好ましくは16〜25%(w/w)である。
本発明の範囲において、特に記載のない限り濃度は常に重量%又は質量%で示される。
驚くべきことに、懸濁液4を調製するのに選択した温度が最終製品の特性に決定的な影響を及ぼすことがわかった。当該製造方法が再現性をもって特定の結晶形の有効成分を含む製品の製造を保証するには、全製造工程を通して温度を30℃未満に維持することが最も好ましいことが分かった。懸濁液4の製造又は保存も温度が高すぎると、有効成分の結晶形に変化がおきることがある。製造工程中の温度は0〜30℃が特に好ましく、更に5〜30℃が好ましい。
【0014】
有効成分懸濁液4は、析出が起こらないように次の処理を行うまで撹拌する。懸濁液を30℃未満で保存する場合、次の処理は48時間以内に行うことが好ましい。懸濁液を例えば22℃で調製及び保存する場合、60時間以内に次の処理を行うことが好ましい。
本発明の1つの態様は、結晶形Iのダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩を含むイソプロパノール懸濁液4の製造方法に関するもので、懸濁液の製造中及び保存中の温度が常に30℃未満、好ましくは0〜30℃、特に好ましくは5〜30℃の範囲であることを特徴とする製造方法である。
別の本発明の態様は、結晶形Iのダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩を含むイソプロパノール懸濁液4であって、前記製造方法により得ることができる懸濁液4に関する。
本発明の別の態様は、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩の医薬製剤を調製するための、結晶形Iのダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩を含むイソプロパノール懸濁液4の出発物質としての使用に関する。
本発明の別の態様は、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩の医薬製剤を調製するための、本発明の有効成分懸濁液4の出発物質としての使用に関するもので、該懸濁液は保存温度30℃未満で48時間以内に反応させたものである。
本発明の別の態様は、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩の医薬製剤を調製するための、本発明の有効成分懸濁液4の出発物質としての使用に関するもので、該懸濁液は保存温度22℃未満で60時間以内に反応させたものである。
【0015】
有効成分の最終製剤5を調製するには、上述の方法で得られた有効成分懸濁液4を本願明細書記載の分離層付き酒石酸コア3上に噴霧する。
本発明の別の態様は、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩5の医薬製剤の製造方法に関するもので、本発明の有効成分懸濁液4を分離層付き酒石酸コア3上に噴霧することを特徴とする。
本発明の別の態様は、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩5の医薬製剤であって、本発明の有効成分懸濁液4を分離層付き酒石酸コア3上に噴霧することによって得られる医薬製剤に関する。
有効成分ペレット5を製造するには、分離層付き酒石酸ペレット3を適当なパンに投入する。パンは、パンの回転により内部の粒子が混合移動する水平パンが好ましい。様々な設計のパンが当該分野では公知である。この点については、例えばEP80199、WO83/03052、WO95/19713又はWO06/134133の開示が参照される。
本発明によると、無孔パン付きコーター(coater with an unperforated pan)の使用が好ましい。流動層被覆方法とは異なり、「トップスプレー」法により回転するパン中のペレット流動床に懸濁液を噴霧する。例えば、WO2006/134133(図3a及び図3b参照)に記載のように、いわゆるイマージョンブレード(immersion blade)を使ってペレット床内に乾燥した空気を送り込み、コーター背面の開口部から前記空気を排出することが特に好ましい。
【0016】
得られた有効成分ペレット5の均質性及び均一性という観点で良い結果を得るには、製品温度、噴霧圧、噴霧速度及び空気供給量をとりわけ規定の範囲内に保つことが好ましい。また、本発明によるこれらのパラメータを監視することにより、有効成分の分解を制限したり、ペレット5中の有効成分の含有量を再現可能に確保したり、関連した噴霧損失を低減し、複合体(multiples)(ペレット数個による塊)の形成を抑えることもできる。複合体の形成の削減は収量に直接影響する。なぜなら、有効成分ペレット5の最終的な篩分けで塊は分取されるからである。
製品温度とは、ペレット床中のダイpにおける温度を指す。
水平パンに、まず最初に本願明細書前記記載の分離層付き酒石酸ペレット3を充填し、分離層付き酒石酸ペレット3を加熱する。ペレットは温度30〜50℃、好ましくは35〜46℃、特に好ましくは40〜45℃に加熱するとよい。この温度に到達したら、前記有効成分懸濁液4を噴霧する。通常、水平パンはペレット床3を3〜12rpm、好ましくは4〜10rpm、特に好ましくは6〜8rpmの回転速度で動かし続ける。
噴霧圧とは、有効成分懸濁液4を噴霧するノズルにおける噴霧に使用する圧縮空気の圧力を意味する。噴霧圧は本発明の方法においてはバッチサイズに左右されない。本発明では、噴霧圧は0.5〜1.5barが好ましく、0.7〜1.0barが更に好ましく、0.8〜1.0barが特に好ましい。
噴霧速度とは、ペレット流動床に噴霧する有効成分懸濁液4の1時間当たりの量を指す。噴霧速度は本発明の方法においてはバッチサイズにより変わる。分離層付き酒石酸ペレット3の供給量1kgに対して、本発明の基準噴霧速度は好ましくは0.05〜0.15(kg/時)/kg、更に好ましくは0.06〜0.09(kg/時)/kg、特に好ましくは0.062〜0.081(kg/時)/kgの範囲である。
例えば、1バッチが320kgの酒石酸ペレット3の場合、基準噴霧速度0.062(kg/時)/kgは、実際には噴霧速度20kg/時に相当する。例えば、1バッチが32kgの酒石酸コア3である場合、基準噴霧速度0.062(kg/時)/kgは2kg/時の噴霧速度に実際は相当する。
【0017】
空気供給量とは、ペレット流動床に導入される乾燥空気の1時間当たりの量を指す。空気供給量は、本発明の方法においてはバッチサイズによって変わる。本発明の分離層付き酒石酸ペレット3の供給量1kgに対して、基準となる空気供給量は好ましくは4.5〜8.0(m3/時)/kgである。更に好ましくは5.0〜7.3(m3/時)/kg、特に好ましくは5.5〜6.3(m3/時)/kgである。
例えば、1バッチが320kgの酒石酸ペレット3を含む場合、空気供給基準量5.5(m3/時)/kgは、実際は1760m3/時の空気供給量に相当する。例えば、32kgの酒石酸コアが1バッチに含まれている場合、空気供給基準量7.2(m3/時)/kgは、実際の空気供給量1760 m3/時になる。
本発明によると、供給する空気の温度は90℃未満が好ましく、更には80℃未満が好ましい。理想的には、供給空気の温度は40〜75℃の範囲が好ましい。
噴霧工程が終了したら、引き続き、回転速度1〜10rpm、好ましくは2〜8rpm、特に好ましくは4〜6rpmで回転する水平パン中、供給する空気の温度を少なくとも20℃、好ましくは少なくとも25℃、特に好ましくは30〜50℃にして、有効成分ペレット5の乾燥を行う。乾燥行程中の空気供給基準量は、本発明により分離層形成した酒石酸ペレット3の1kgに対し、1.0〜4.0(m3/時)/kg、好ましくは1.2 〜3.5(m3/時)/kg、特に好ましくは1.5〜3.2(m3/時)/kgである。本発明による水平パンでの乾燥時間は、好ましくは30分〜5時間、更に好ましくは45分〜4時間である。工業生産単位の場合、及び、バッチサイズが100kgを超える(使用した分離層付き酒石酸ペレット3を基準として)場合は特に、1〜2時間の乾燥時間がとりわけ好適である。
こうした効果的な条件のもとで噴霧される有効成分懸濁液4の量は、懸濁液4中の有効成分の濃度だけでなく、提供した分離層付き酒石酸ペレット3のバッチサイズや最終的な有効成分ペレット1個当たりの所望の有効成分量(いわゆる装填量)によっても異なる。 1個の有効成分ペレット5に対する有効成分装填量は15〜50%(w/w)が特に好ましい。本発明によるとりわけ好適な有効成分ペレット5の有効成分装填量は、20〜45%(w/w)、とりわけ好ましくは36〜42%(w/w)である。
【0018】
バッチが小さければ、有効成分の所望量が実質的にいかなるものであっても、1回の工程で分離層付き酒石酸ペレット3に 充填することができる。有効成分濃度が約15%(w/w)であり、かつ、構成成分である有効成分、ヒドロキシプロピルセルロース及びタルクの総濃度が約20%(w/w)である本発明で特に好ましい有効成分懸濁液4を使用する場合、分離層付き酒石酸ペレット3を1kg供給したら、有効成分ペレット(5)1個当たりの所望の有効成分装填量が例えば24%で、本発明の有効成分懸濁液4を約2.45kg使う必要がある。噴霧損失の場合の埋め合わせをするために、有効成分懸濁液4は15%まで過剰にして使用することが有意義である。そのような場合は、所望の装填量24%を得るには、上記5を2.45kgではなく2.81kgにすることが推奨される。同じ懸濁液を使って装填量40%を所望する場合、およそ6.03kgの懸濁液4を1kgの分離層付き酒石酸ペレット3に噴霧しなければならない。この場合も、噴霧損失した場合の補填をするために、有効成分懸濁液4を15%まで過剰にして使用することが推奨される。
分離層付き酒石酸ペレット5への装填量が多くなると、有効成分懸濁液4の噴霧中、バッチの総質量、とりわけ、この場合は体積が当然のことながら一定して増加する。例えば、分離層付き酒石酸ペレット3に有効成分の装填量40%とする場合、噴霧材料5は、全質量がおおよそ2倍になり、嵩密度は約1.3倍増加することになる(即ち、質量に対して体積の増加が更に大きい)。噴霧材料5の質量、及び、特には体積の急激な増加は、大量の工業用バッチでの噴霧工程に悪影響を与える可能性がある。例えば、噴霧材料5の均一な乾燥が容易にはできなくなったり、複雑な技術手順で行わなければならないこともある。
【0019】
そのため、高装填量にするには、バッチサイズが大きい場合は噴霧工程を多数回行うことが有益となる場合があり、各回ごとに噴霧用に供給した材料の量に匹敵して異なる装填量となる。本発明において、噴霧工程は好ましくは5回まで、更に好ましくは4回まで、特に好ましくは3回までの回数でおこなうとよい。いずれの場合も、各回の最後に得られた噴霧材料の一部は、その後の噴霧工程にまわされる。有効成分を含有する十分な量の噴霧材料が、前の回で得られた噴霧材料から回収され、噴霧工程の次の回に導入されて、噴霧工程の各回の最初に供給される噴霧材料の質量が常におよそ同じになるようにする。有効成分の装填量は噴霧回数ごとに増加する。本発明では、噴霧工程を通してすべての回で同じ有効成分懸濁液を使用することがとりわけ好適である。
本発明によると、二段階工程で行うことが特に好ましい。第1段階の工程では、約10〜35%(w/w)、好ましくは約15〜30%(w/w)、特に好ましくは約20〜25%(w/w)の装填量で有効成分を含むペレット5を調製する。 次に、こうして得られた有効成分ペレット5のバッチの50〜80%(w/w)、好ましくは約55〜75%(w/w)、特に好ましくは約65〜70%(w/w)を分取し、噴霧用材料として新たな噴霧工程に投入する。既に有効成分を含有したこのペレット5に、前述の噴霧条件のもと、新たな噴霧工程で有効成分懸濁液4を噴霧する。この第2段階の噴霧工程終了後、本発明による特に好ましい有効成分ペレット5に有効成分が35〜45%(w/w)、特に好ましくは38〜42%(w/w)装填されていることが好ましい。
本発明の別の態様は、本発明の有効成分懸濁液4を、本願明細書で記載した方法により分離層付き酒石酸コア3に噴霧することにより得られる、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩5の医薬製剤に関する。
【0020】
形成されてしまった塊を除去するには、上記のようにして得られた有効成分ペレットを決められたメッシュサイズで篩分けする。当然のことながら、選択するメッシュサイズはそれぞれの有効成分ペレットの装填量によって変わる。装填量が低いほど、密なメッシュの篩を使用すればよい。この点については、下記の実験セクションに一例として説明した内容が参照できる。
最後に、得られた有効成分ペレットを市販のカプセル、好ましくは市販のHPMCカプセルに充填する。
以下の実施例は本発明を詳細に説明するものである。

エアージェット篩分けによる酒石酸の粒径測定:
測定装置及び設定:
測定装置:エアージェット式篩(例えば、Alpine社製 A200LS)
篩:必要に応じたもの
提供する重量:10g/篩
測定時間:1分間の篩分け後、それぞれ最大質量損失が0.1gになるまで1分間。
試料の調製/製品の提供:
材料を乳鉢に移し、存在している塊は集中的にすりつぶして塊を壊しておく。ゴムシールとカバーとが付いた篩を秤の上に設置し、ゼロに設定して潰した物質10.0gを篩上で秤量する。
内容物、ゴムシール及びカバーとともに篩を装置に設置する。タイマーを1分に設定し、ここでは材料をエアージェット式篩分けで処理する。その後、残渣を秤量し記録する。エアージェット式篩分け後の残渣質量の減少分が0.1gより少なくなるまで上記操作を繰り返す。
【0021】
実施例1 出発用ペレットの調製
端部が反った(dished end)撹拌機付きの従来の混合容器内で、480kgの水を50℃に加熱し、120kgのアカシア樹脂(アラビアゴム) を撹拌しながら添加する。透明溶液になるまで一定温度で撹拌を続ける。透明溶液になったら(通常1〜2時間後)、600kgの 酒石酸を撹拌しながら添加する。酒石酸の添加は一定温度で撹拌を続けながら行う。添加終了後、混合物をさらに約5〜6時間撹拌する。
噴霧及び粉体塗工ユニット付き無孔水平パン(例えばDriamat 2000/2.5)をゆっくり回転させ(3rpm)、そこに1000kgの酒石酸を加える。噴霧を開始する前に、酸の試料は篩分け分析にかけておく。該当する酸は、粒径0.4〜0.6mmの酒石酸粒子である。
こうして得られた酒石酸粒子に前記で得た酸とゴムとを含む溶液を噴霧する。噴霧中、空気の供給量は1000m/時、温度は35〜75℃に調整する。差圧は2mbar、パンの回転速度は9rpmである。ノズルは填材から350〜450mm離して配置されている。
下記の工程を交互に行うことにより、酸とゴムとを含む溶液を噴霧する。酸ゴム溶液約4.8kgを粒径0.4〜0.6mmの酒石酸粒子に噴霧し、溶液を分散させた後、湿った酒石酸粒子に3.2kgの酒石酸粉末を撒く。該当の酒石酸粉末は、粒径が50μm未満の微細な酒石酸粒子からなる。合計で800kgの酒石酸粉体が必要である。前記酒石酸粉末を散布、分散したら、製品温度が約40℃になるまで噴霧材料を乾燥する。酸ゴム溶液の噴霧の後に順番で行う。
このサイクルを繰り返して酸ゴム溶液を使い切る。この工程が終了したら、パンの中で240分間、回転速度3rpmで酸ペレットの乾燥を行う。乾燥終了後のケーキングを防ぐために、断続的プログラムを毎時3分間3rpmでおこなう。ここでは、1時間ごとにパンを3rpmで3分間回転させたのち、静置することとする。その後、酸ペレットを乾燥機に移動する。酸ペレットは48時間かけて60℃で乾燥する。最後に、粒径分布を篩分けにより分析して求める。粒径0.6〜0.8mmのものが製品として該当する。この画分が>85%を占めるとよい。
【0022】
実施例2 出発用ペレットの分離層
分離用懸濁液を調製するのに、666.1(347.5)kgのエタノールを混合容器に投入し、回転速度約600rpmで撹拌しながらヒドロキシプロピルメチルセルロース(33.1(17.3)kg)を添加し、溶解させる。同じ条件下で0.6(0.3)kgのジメチコンを加える。使用の直前に、再度撹拌しながらタルク(33.1(17.3)kg)を加えて懸濁させる。
酸ペレット1200(600)kgを塗工装置(例えばGS-Coater Mod. 600/Mod. 1200)に投入し、回転パンの中で数時間にわたり連続的に前記分離用懸濁液を噴霧する。混合物が1200kgの場合は噴霧量を32kg/時とし、600kgの混合物の場合は21kg/時とする。温度70℃までの空気を供給してペレットを連続的に乾燥させる。
GS-Coaterが空になったら、分離層付き出発用ペレットを篩にかけて画分にわける。直径が1.0mm以下の製品画分を保存し、後の使用に供する。
実施例3 ダビガトランエテキシラート懸濁液の調製
容量1200リットルのプロペラ撹拌器付き混合容器中、26.5kgのヒドロキシプロピルセルロースを720kgのイソプロパノールに添加する。完全に溶解されるまで混合物を撹拌する(約12〜60時間、おおよそ500rpm)。溶液が透明になったら、132.3kgのダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(結晶形I)を撹拌しながら(400rpm)添加し、更に混合物を約20〜30分間撹拌する。その後、一定の撹拌速度で21.15kgのタルクを添加し、更に撹拌を上記と同じ速度で約10〜15分間続ける。上記の工程は窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
塊が形成されていたら、撹拌器UltraTurraxで均質化することにより(約60〜200分間)崩す。懸濁液温度は全製造工程を通して30℃を超えないようにする。
析出が起こらないようにするために、次の処理の準備ができるまで懸濁液は撹拌する(おおよそ400rpm)。
懸濁液の保存温度が30℃未満の場合、長くても48時間以内に次の処理をするとよい。例えば、懸濁液を22℃で作製及び保存する場合、60時間以内に次の処理をするとよい。懸濁液の保存温度が例えば35℃の場合、長くても24時間以内に次の処理をするとよい。
【0023】
実施例4 ダビガトランエテキシラート有効成分ペレットの調製
無孔容器付き水平パン(GS Coater Mod. 600)を使用する。流動床法とは異なり、「トップスプレー」法により回転パン中のペレット流動床に懸濁液を噴霧する。直径1.4mmのノズルで噴霧する。いわゆるイマージョンブレードからペレット床に乾燥空気を導入して、塗工機の背面にある開口部から抜く。
実施例2で得た320kgの酒石酸ペレットを水平パンに装入し、ペレット床を加熱する。製品温度が43℃に達したら、噴霧を開始する。実施例3により既に調製した900kgの懸濁液を、最初の2時間は噴霧量20kg/時で噴霧し、その後は24kg/時で噴霧圧0.8barで噴霧する。懸濁液は常に撹拌する。供給する空気の温度は最高で75℃である。空気の供給量は約1900m3/時である。
その後、水平パン(回転速度5rpm)中、空気流入温度30℃〜50℃、空気流入量500m3/時でおよそ1〜2時間かけてペレットの乾燥を行う。
こうして得られた325kgのペレットを再度水平パンに装填し、43℃に加熱する。実施例3で既に調製した懸濁液900kgを、最初の2時間は噴霧量20kg/時、その後24kg/時で噴霧圧0.8barで噴霧する。懸濁液は常に撹拌する。供給する空気の温度は最高で75℃である。空気の供給量は約1900m3/時である。
その後、水平パン(回転速度5rpm)中、空気流入温度30℃〜50℃、空気流入量500m3/時でおよそ1〜2時間かけてペレットの乾燥を行う。
乾燥後ペレットをメッシュサイズ1.6mmの振動篩にかけ、次の処理に必要となるまで乾燥剤入りの容器に保存する。
実施例5 製剤例
下記製剤例は、実施例4で得た有効成分ペレットをヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルに充填することにより得られる。
【0024】
【表1】

(1) 有効成分遊離塩基75mgに相当
(2) 有効成分遊離塩基110mgに相当
(3) カプセルサイズの質量は約60mg
(4) カプセルサイズの質量は約70mg
【0025】
本発明の別の態様は、このような前記医薬製剤の1種に関する。
本発明の別の態様は、式Iのダビガトランエテキシラートを60〜90mg、好ましくは70〜80mg、特に好ましくは約75mg含有する医薬製剤に関する。本発明の別の態様は、式Iのダビガトランエテキシラートを90〜130mg、好ましくは100〜120mg、更に好ましくは105〜115mg、特に好ましくは約110mg含有する医薬製剤に関する。
本発明の別の態様は、式Iのダビガトランエテキシラートがメタンスルホン酸塩の結晶形Iの形態で60〜90mg、好ましくは70〜80mg、特に好ましくは約75mg含有する医薬製剤に関する。本発明の別の態様は、式Iのダビガトランエテキシラートがメタンスルホン塩の結晶形Iの形態で90〜130mg、好ましくは100〜120mg、更に好ましくは105〜115mg、特に好ましくは約110mg含有する医薬製剤に関する。
本発明の別の態様は、メタンスルホン酸塩の結晶形Iの形態である式Iのダビガトランエテキシラートに加えて、ヒドロキシメチルプロピルセルロースも含有する医薬製剤に関する。
本発明の別の態様は、メタンスルホン酸塩の結晶形Iの形態である式Iのダビガトランエテキシラートに加えて、ジメチルポリシロキサンも含有する医薬製剤に関する。
本発明の別の態様は、メタンスルホン酸塩の結晶形Iの形態である式Iのダビガトランエテキシラートに加えて、構成成分としてアラビアゴム、酒石酸、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ジメチルポリシロキサン、タルクをヒドロプロピルセルロースとともに含む医薬製剤に関する。
【0026】
本発明の別の態様は、メタンスルホン酸塩の結晶形Iの形態である式Iのダビガトランエテキシラートに加えて、構成成分としてアラビアゴム、酒石酸、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ジメチルポリシロキサン、タルク、ヒドロプロピルセルロースのみを含む医薬製剤に関する。
本発明の別の態様は、式Iのダビガトランエテキシラートを60〜90mg、好ましくは70〜80mg、特に好ましくは約75mg含有する医薬製剤であって、深部静脈血栓症の術後予防、脳卒中の予防、とりわけ心房細動を有する患者における脳卒中の予防のための医薬製剤に関する。本発明の別の態様は、式Iのダビガトランエテキシラートを90〜130mg、好ましくは100〜120mg、更に好ましくは105〜115mg、特に好ましくは約110mg含有する医薬製剤であって、深部静脈血栓症の術後予防、脳卒中の予防、とりわけ心房細動を有する患者における脳卒中の予防のための医薬製剤に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

I
で表わされるダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩の結晶形Iを含む懸濁液の製造方法であって、結晶形Iのダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩がヒドロキシプロピルセルロース含有イソプロパノール溶液にタルクとともに懸濁しており、
前記懸濁液の調製が30℃を超えない温度で行われる前記製造方法。
【請求項2】
最初にヒドロキシプロピルセルロースをイソプロパノールに溶解し、次に結晶形Iのダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩とタルクとを前記溶液に懸濁させることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
投入するイソプロパノール1kgに対し、0.05〜0.5kgのダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩を使用することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
投入するイソプロパノール1kgに対し、0.01〜0.1kgのヒドロキシプロピルセルロースを使用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
投入するイソプロパノール1kgに対し、0.005〜0.07kgのタルクを使用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の方法により得られる懸濁液4。
【請求項7】
有効成分濃度が10〜25%(w/w)であることを特徴とする、請求項6記載の懸濁液4。
【請求項8】
構成成分である有効成分、ヒドロキシプロピルセルロース及びタルクの総濃度が14〜40%(w/w)であることを特徴とする、請求項6又は7記載の懸濁液4。
【請求項9】
ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩ペレット5を製造するための、請求項6〜8のいずれか1項記載の懸濁液4の出発物質としての使用。
【請求項10】
請求項6〜8のいずれか1項記載の懸濁液4を分離層付き酒石酸コア3に噴霧することを特徴とする、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩ペレット5の製造方法。
【請求項11】
供給する前記ペレット3の製品温度を30〜50℃に調整することを特徴とする、請求項10記載のダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩ペレット5の製造方法。
【請求項12】
前記有効成分懸濁液4を前記酒石酸ペレット3に噴霧する際の基準噴霧速度が、使用した1kgの酒石酸ペレット3に対して、0.05〜0.15(kg/時)であることを特徴とする、請求項10又は11記載のダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩ペレット5の製造方法。
【請求項13】
本発明により基準となる空気供給量が好ましくは、使用した1kgの酒石酸ペレット3に対して4.5〜8.0(m3/時)であることを特徴とする、請求項10、11又は12記載のダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩ペレット5の製造方法。
【請求項14】
供給した前記酒石酸ペレット3が、分離用懸濁液2を酒石酸コア1に噴霧して得られ、前記分離用懸濁液2がヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するエタノール系懸濁液である、請求項10〜13のいずれか1項記載のダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩ペレット5の製造方法。
【請求項15】
前記酒石酸ペレット3の調製に使用する前記エタノール系分離用懸濁液2が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースに加えてタルクを含有することを特徴とする、請求項14記載のダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩ペレット5の製造方法。
【請求項16】
前記酒石酸ペレット3の調製に使用する前記エタノール系分離用懸濁液2が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びタルクに加えてジメチルポリシロキサンを含有することを特徴とする、請求項15記載のダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩ペレット5の製造方法。
【請求項17】
請求項10〜16のいずれか1項記載の方法により得られる、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩ペレット5。

【公表番号】特表2011−515439(P2011−515439A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501204(P2011−501204)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053469
【国際公開番号】WO2009/118322
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】