説明

ダブルコルチン様キナーゼ遺伝子の新規なmRNAスプライシング変異体及び神経外肺葉起源の癌の診断及び治療におけるその使用

本発明は、新規の核酸及びタンパク質分子、並びに癌の治療及び診断におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なダブルコルチン様(DCL,doublecortin like)タンパク質及び該タンパク質をコードする新規なmRNAスプライシング変異体に関する。新規なDCLタンパク質をコードするマウス及びヒトの核酸配列(RNA及びDNA)、並びにマウス及びヒトのタンパク質それ自体、並びに治療及び診断用途に適切な様々な核酸の断片及び変異体を提供する。本発明はさらに、癌治療、特に神経芽細胞腫治療におけるDCLタンパク質レベルの調節方法、診断方法及び診断キットに関する。
【背景技術】
【0002】
小児における最も一般的な固形腫瘍として、神経芽細胞腫が全ての小児の癌の8〜10%を占める(Lee et al., 2003, Urol. Clin. N. Am. 30, 881-890再検討されたれたし)。年間発生率は、カナダ、ドイツ及び日本において実施したスクリーニングに基づく数によれば、小児100000人に10〜15人程度である。神経芽細胞腫は異質な疾患であり、40%が予後の非常に順調な1歳未満の小児、残りは先進的な医療及び外科処置にもかかわらず予後の不良な、1歳より年長の小児及び若年層に診断される。中程度からハイリスクな患者に共通な治療は、化学療法及びその後の外科的切除である。しかし、神経芽細胞腫細胞の完全な根絶は殆ど達成されない。したがって、これらの患者の多くは再発を起こし、再発した多くの場合に従来の治療に耐性があり、急速に重篤になる。したがって、一次治療によって一見回復した後に、少数の生存細胞を完全に根絶し、再発を防ぐための新規な治療戦略が必要である(Lee et al., 2003, 上記)。
【0003】
脳の発達には、神経芽細胞の細胞分裂、移動及び分化の組織的で正確なパターンが必要である(Noctor et al., 2001, Nature 409, 714-720; Noctor et al., 2004, Nat. Neuroscience 7, 136-144)。これらの過程の両方においてカギとなる事象は、微小管と微小管結合タンパク質(MAP, microtubule-associated proteins)とを含む細胞骨格の(再)構成及び(不)安定化である。神経細胞の移動が可能になる前に、微小管といくつかのMAPとの、慎重に組織化された相互作用が必要である(Feng and Walsh, 2001, Nat. Rev. Neurosci. 2, 408-416において再検討された)。しかし、神経細胞の移動に関与する因子は十分確立されているが、有糸分裂及び神経芽細胞増殖などの、早期過程を調節する遺伝子については比較的知られていない。このような因子は、微小管及び細胞骨格の要素の動的制御にもまた深く関与すると思われる(Haydar et al., 2003, Proc. Natl. Acad. Sci. 100, 2890-2895; Kaltschmidt et al., 2000, Nat. Cell Biol. 2, 7-12; Knoblich, 2001, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2, 11-20)。
【0004】
近年、細胞骨格の再構成に関与するいくつかの遺伝子が特定され、該遺伝子は、分裂又は変異した場合に神経細胞の移動の障害を起こす(Feng and Walsh, 2001, 上記において再検討された)。これらの遺伝子の1つはダブルコルチン(DCX,doublecortin)であり、ダブルコルチンは新生皮質神経細胞の移動に重要な365AAタンパク質をコードする(国際公開番号WO99/27089号を参照されたし)。ヒト及びげっ歯類のゲノムにおいて、ダブルコルチン様キナーゼ(DCLK,doublecortin-like kinase)と呼ばれる、DCX遺伝子との実質的配列同一性を有する関連遺伝子が存在する。ヒトのDCLK遺伝子は、250kbより多く、広範囲に及ぶ選択的スプライシングに供され、異なるタンパク質をコードする多数の転写産物を産生する(Matsumoto et al., 1999, Genomics 56, 179-183)。主要な転写産物の1つであるDCLX−ロングは、Ca++/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ(CaMK,Ca++/Calmodulin dependent protein kinase)ファミリーのメンバーとのアミノ酸相同性を有するキナーゼ様ドメインに融合された、DCXドメインをコードする。別の転写産物であるDCLK−ショートは、主に成人の脳で発現し、DCXドメインを欠いており、CaMK様特性を有するキナーゼをコードする(Engels et al., 1999, Brain Res. 835, 365-368; Engels et al., 2004, Brain Res. 120, 103-114; Omori et al., 1998, J. Hum. Genet. 43, 169-177; Vreugdenhil et al., 2001, Brain Res. Mol. Brain Res. 94, 67-74)。最近の研究では、カルシウム依存性の神経可塑性及び神経変性においてDCLK遺伝子が果たす重要な役割が提唱された(Burgess and Reiner, 2001, J. Biol. Chem. 276, 36397-36403; Kruidering et al., 2001, J. Biol. Chem. 276, 38417-38425)。DCLK−ロングは早期発達において発現し(Omori et al, 1998, 上記)、DCXのように微小管を重合できる(Lin et al., 2000, J. Neurosci. 20, 9152-9161)。しかし、神経系の発達におけるDCLK遺伝子の正確な役割は未知である。
【0005】
様々な代替のDCLKのスプライシング変異体が記載され、これらのうちの2種は異なった形で発現し、異なるキナーゼ活性を有することが発見されている(Burgess and Reiner 2002, J Biol. Chem. 277, 17696-17705)。本発明者らは本明細書中で、ダブルコルチン様(DCL)と称するDCLKの遺伝子の新規なスプライシング変異体をクローン化し、機能的に特徴付け、DCLが、神経芽細胞分裂の紡錘体に関与する細胞骨格遺伝子であることを示した。さらに、本発明者らは癌の治療及び診断、特に神経芽細胞腫の治療及び診断の新規な方法を発明した。
【0006】
近年、神経芽細胞腫の治療に関する、2種の異なる癌遺伝子を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を含む新規な研究が公表されている(Pagnan et al., 2000, J. Natl. Cancer Inst. Vol 92, 253-261; Brignole et al. 2003, Cancer Lett. 197, 231-235; Burkhart et al., 2003, J. Natl. Cancer Inst. 95, 1394-1403)。第一の研究は、c−Myb癌遺伝子を対象とした(Pagnan et al., 2000, 上記)。c−Myb遺伝子の発現は、細胞の増殖及び分化と関連があるいくつかの異なる胚起源の固形腫瘍(神経芽細胞腫を含む)において報告されている。ヒトc−Myb mRNAのコドン2〜9に相補的な、ホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドが、インビトロで神経芽細胞腫細胞の成長を阻害したことが示された。神経外肺葉抗原のジシアロガングリオシドGDに特異的なモノクロナール抗体(mAb,monoclonal antibody)により被覆された、立体的に安定化されたリポソーム内の細胞に送達された場合に、その阻害効果は最大であった(Pagnan et al., 2000, 上記)。しかし、抗GD標的リポソームの静脈注射後の薬物動態学的研究及び生体内分布研究が実施されたが(Brignole et al., 2003, 上記)、今のところインビボ神経芽細胞腫モデルにおける効果は示されていない。c−Mybタンパク質は正常細胞の増殖において基本的な役割を果たし、c−Mybアンチセンスオリゴヌクレオチドが、インビトロでヒトの正常な血液生成を阻害することがすでに示されている(Gewirtz and Calabretta, 1988, Science 242, 1303-1306)ので、c−Mybアンチセンスオリゴヌクレオチドの中毒性副作用の可能性もまた考慮しなければならない。
【0007】
別のアンチセンス研究は、MYCN(N−myc)癌遺伝子を対象としていた(Burkhart et al., 2003, 上記)。MYCN遺伝子の増幅は神経芽細胞腫のわずか25〜30%において起こるが、疾患の進行期に随伴するもので、腫瘍の進行は早く、生存率は15%未満である。ヒトMYCN mRNAの最初の5個のコドンに相補的なホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドの効果が、神経芽細胞腫のネズミモデルにおいてインビボで試験された。皮下に埋め込んだ微小浸透圧ポンプを介して、6週間オリゴヌクレオチドを連続的に送達することにより、埋め込みポンプの部位における腫瘍の発生及び腫瘍の質量を減少させられることが示された(Burkhart et al., 2003, 上記)。この研究は非常に局所的であるが、全身送達の後の正常細胞に対する中毒性副作用の可能性に加えて、離れた臓器部位への転移に関するオリゴヌクレオチドの全身効果が、確立されるべきままである。また、すでに確立された腫瘍についてのオリゴヌクレオチドの効果も示されていない。
【特許文献1】国際公開番号WO99/27089号
【非特許文献1】Lee et al., 2003, Urol. Clin. N. Am. 30, 881-890
【非特許文献2】Noctor et al., 2001, Nature 409, 714-720;
【非特許文献3】Noctor et al., 2004, Nat. Neuroscience 7, 136-144
【非特許文献4】Feng and Walsh, 2001, Nat. Rev. Neurosci. 2, 408-416
【非特許文献5】Haydar et al., 2003, Proc. Natl. Acad. Sci. 100, 2890-2895
【非特許文献6】Kaltschmidt et al., 2000, Nat. Cell Biol. 2, 7-12
【非特許文献7】Knoblich, 2001, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2, 11-20
【非特許文献8】Matsumoto et al., 1999, Genomics 56, 179-183
【非特許文献9】Engels et al., 1999, Brain Res. 835, 365-368
【非特許文献10】Engels et al., 2004, Brain Res. 120, 103-114
【非特許文献11】Omori et al., 1998, J. Hum. Genet. 43, 169-177
【非特許文献12】Vreugdenhil et al., 2001, Brain Res. Mol. Brain Res. 94, 67-74
【非特許文献13】Burgess and Reiner, 2001, J. Biol. Chem. 276, 36397-36403
【非特許文献14】Kruidering et al., 2001, J. Biol. Chem. 276, 38417-38425
【非特許文献15】Lin et al., 2000, J. Neurosci. 20, 9152-9161
【非特許文献16】Burgess and Reiner 2002, J Biol. Chem. 277, 17696-17705
【非特許文献17】Pagnan et al., 2000, J. Natl. Cancer Inst. Vol 92, 253-261
【非特許文献18】Brignole et al. 2003, Cancer Lett. 197, 231-235
【非特許文献19】Burkhart et al., 2003, J. Natl. Cancer Inst. 95, 1394-1403
【非特許文献20】Gewirtz and Calabretta, 1988, Science 242, 1303-1306
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
標的遺伝子の選択は、有効な神経芽細胞腫の治療及び診断の開発にとって重要である。上記のように、本発明者らは新規なDCLタンパク質をコードするDCLK遺伝子の新規なmRNAスプライシング変異体をクローン化し、このスプライシング変異体を機能的に特徴付けた。驚いたことに、このスプライシング変異体は神経芽細胞腫において排他的に発現し、健康な組織及び検査した細胞系では検出されなかったことが発見された。この発見を新規な治療法及び診断法の発明に使用した。
【0009】
定義
本明細書中で「遺伝子サイレンシング」は、細胞内での標的タンパク質産生の減少(下方制御)又は完全な停止を指す。遺伝子サイレンシングは標的遺伝子の転写及び/又は翻訳の減少の結果と思われる。「標的遺伝子」は、サイレンシングされる遺伝子である。標的遺伝子は普通内在性遺伝子であるが、ある特定の状況では導入遺伝子であってもよい。方法は、遺伝子ファミリーの全て又はいくつかのメンバーのサイレンシングに使用できるので、「標的遺伝子」という用語はサイレンシングされる遺伝子ファミリーもまた指すことができる。
【0010】
「遺伝子」という用語は、転写制御配列、エンハンサー、5’リーダー配列、コード領域及び3’非翻訳配列などの、転写に必要な様々な配列要素に、動作可能に連結されたmRNA分子に転写される核酸配列(「転写領域」)を指す。内在性遺伝子は、細胞内に天然に見出される遺伝子である。
【0011】
「センス」は、二本鎖DNA分子又はmRNA転写分子のコード鎖などの核酸分子のコード鎖を指す。「アンチセンス」は、センス鎖の逆相補鎖を指す。アンチセンス分子はアンチセンスDNA又はアンチセンスRNA(即ちアンチセンスDNAと同一核酸配列を有し、違いはT(チミン)がU(ウラシル)で置換されたことである)であってもよい。
【0012】
「含む(comprising)」という用語は、提示した部分、ステップ又は要素の存在を明記するが、1種又は複数の追加の部分、ステップ又は要素の存在を排除するものではないと解釈するべきである。したがって、領域Xを含む核酸配列は、追加の領域を含み得る、即ち領域Xはより大きな核酸領域に組み込まれていてもよい。
【0013】
「実質的に同一(substantially identical)」、「実質的同一性(substantial identity)」或いは「本質的に類似(essentially similar)」又は「本質的類似性(essential similarity)」という用語は、最適なアラインメントを行った場合、2つのペプチド配列又は2つのヌクレオチド配列が、デフォルトパラメータを使用するGAP又はBESTFITのプログラムなどにより、少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約80%の配列同一性、好ましくは少なくとも約85又は90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%、97%、98%の配列同一性又はそれを超える(例えば99%の配列同一性)を共有することを意味する。GAPはNeedlemanとWunschのグローバルアラインメントアルゴリズムを使用し、2つの配列を、その全長にわたってアラインメントし、マッチする数を最大化し、ギャップの数を最小化する。通常、ギャップ挿入ペナルティ(gap creation penalty )=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)及びギャップ伸長ペナルティ(gap extension penalty )=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)で、GAPデフォルトパラメータを使用する。ヌクレオチドに関して使用したデフォルトスコア行列はnwsgapdnaであり、タンパク質に関しては、デフォルトスコア行列はBlosum62である(Henikoff & Henikoff, 1992, Proc. Natl. Acad. Science 89, 915-919)。RNA配列がDNA配列と本質的に類似である、又はある程度の配列同一性を有すると言われる場合、DNA配列中のチミン(T)がRNA配列中のウラシル(U)に相当すると考えられることは明らかである。「同一な」配列は、アラインメントを行った場合、核酸配列又はアミノ酸配列が100%の同一性を有する。またこの場合、RNA配列とDNA配列との違いが、RNA配列が同じ位置のTの代わりにUを含んでいることだけであるならば、RNA配列はDNA配列と100%同一である。配列アラインメント及び配列同一性の割合のスコアは、Accelrys Inc., 9685 Scranton Road, San Diego, CA 92121-3752 USA社製GCG Wisconsin Package, Version 10.3などのコンピュータプログラムを使用して決定できる。或いは、類似性又は同一性のパーセントは、FASTA、BLASTなどのデータベースを検索することによって決定できる。
【0014】
本明細書中で「配列」又は「配列断片」を指す場合、ヌクレオチド(DNA又はRNA)又はアミノ酸のある配列を有する分子を指すと理解される。
【0015】
ストリンジェントなハイブリッド形成条件」は、所与のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列を特定するためにもまた使用できる。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、状況が異なると違ってくる。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度及びpHにおいて特定の配列に関する融点温度(Tm)より約5℃低く選択される。Tmは、(規定されたイオン強度及びpHの下で)標的配列の50%がハイブリッドを形成し、プローブと完全にマッチする温度である。通常は、ストリンジェントな条件は塩濃度がpH7において約0.02モル、温度は少なくとも60℃に選択される。塩濃度の低下及び/又は温度の増加によりストリンジェントが増す。RNA−DNAのハイブリッド形成に関するストリンジェントな条件(例えば、100ntのプローブを使用したノーザンブロット)は、例えば63℃において20分間、0.2×SSCで少なくとも1回洗浄することを含む条件、又は同等の条件である。DNA−DNAのハイブリッド形成に関するストリンジェントな条件(例えば、100ntのプローブを使用したサザンブロット)は、例えば少なくとも50℃、通常約55℃の温度において20分間、0.2×SSCで少なくとも1回(通常は2回)洗浄することを含む条件、又は同等の条件である。
【0016】
「対象」は、本明細書中では哺乳動物対象、特にヒト又は動物の対象を指す。
【0017】
「標的細胞」は、本明細書中ではDCLタンパク質レベルが修正される(特に減少される)細胞を指し、DCLタンパク質が正常に産生される任意の癌細胞、具体的には神経外肺葉起源の癌細胞、特に神経芽細胞腫細胞を含む。標的細胞におけるDCLの存在は、本明細書の他の場所に記載したように決定できる。以下では神経芽細胞腫のみの治療及び診断を指しているが、神経芽細胞腫細胞に対して述べたいずれの事柄も、他の型の癌標的細胞、具体的には神経外肺葉起源の癌標的細胞に同じように適用でき、このような方法、使用及びキットは本明細書に包含されると理解される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、神経芽細胞腫の治療及び診断方法に使用するための新規な核酸及びタンパク質配列を提供する。DCLタンパク質は、今までのところ検査した全ての神経芽細胞腫細胞系(ヒト及びマウスの細胞系)において細胞特異的に発現することが発見された。DCLは、微小管を重合し安定化することが見出され、内因性DCLと分裂神経芽細胞腫細胞における紡錘体との共局在により、分裂細胞における紡錘体の正しい形成に関するDCLの役割が示唆される。神経芽細胞腫細胞系におけるDCL遺伝子サイレンシングは、紡錘体の劇的な変形又はさらには不在、及び微小管の分解をもたらす。
【0019】
神経芽細胞腫細胞は、神経外肺葉起源である。脊椎動物において、胚神経管(神経外肺葉)の多能性幹細胞は、中枢神経系(CNS,central nervous system)及び末梢神経系(PNS,peripheral nervous system)の主要な細胞型を生み出す。このような細胞型は、神経外肺葉由来の細胞又は言い換えると神経外肺葉起源として規定される。神経外肺葉起源の腫瘍は、神経芽細胞腫、髄芽細胞腫、グリア芽腫、希突起膠腫、希突起星細胞腫、星状細胞腫、神経線維腫、上衣腫、MPNST(悪性末梢神経鞘腫,malignant peripheral nerve sheath tumors)、神経節細胞腫又は神経鞘腫などのCNS及びPNSの全ての腫瘍を含む。さらに神経外肺葉起源の腫瘍は、横紋筋肉腫、網膜芽腫、小細胞肺癌、副腎髄質褐色細胞腫、未分化PNET(末梢性神経外肺葉性腫瘍,peripheral neuroectodermal tumor)、ユーイング肉腫及び黒色腫である。これらの腫瘍は全て神経芽細胞腫細胞に共通の胚起源を共有するので、これらの場合にDCLが治療及び診断の標的となるであろう。
【0020】
本発明による核酸配列及びアミノ酸配列
本発明は、配列番号1(マウスdcl mRNA及びcDNA)及び配列番号2(ヒトdcl mRNA及びcDNA)の新規な核酸配列を提供し、これらは配列番号3(マウスDCL)及び配列番号4(ヒトDCL)のタンパク質をコードする。配列番号1及び2のdcl mRNA配列は、マウス及びヒトのDCLK遺伝子の新規なスプライシング変異体である。該スプライシング変異体は、エクソン1〜エクソン8(部分的には終止コドンまで)を含み、エクソン1は非コードである。両方の配列において、DCLK遺伝子のエクソン6は欠損している。マウスのmRNA配列において、翻訳開始コドンがヌクレオチド189〜191に見出され、一方翻訳終止コドンはヌクレオチド1275〜1277に見出される。エクソン2はnt169から始まり、エクソン3はnt565から始まり、エクソン4はnt912から始まり、エクソン5はnt1012から始まり、エクソン7はnt1129から始まり、エクソン8はnt1224から始まる。ヒトmRNA配列において、翻訳開始コドンはヌクレオチド213〜215に見出され、一方翻訳終止コドンはヌクレオチド1302〜1304に見出される。エクソン2はnt194から始まり、エクソン3はnt589から始まり、エクソン4はnt936から始まり、エクソン5はnt1036から始まり、エクソン7はnt1153から始まり、エクソン8はnt1248から始まる。マウス及びヒトのDCLタンパク質は、アミノ酸配列が非常に類似しており、両方とも約40kDaの分子量を有する。マウスのDCLタンパク質は362個のアミノ酸を含み、一方ヒトのDCLタンパク質は363個のアミノ酸を含む。アミノ酸配列の同一性は約98%であり、4個のアミノ酸だけが異なる。これらはアミノ酸172位(マウスの配列ではGであり、ヒトの配列ではSである)、290位(マウスの配列ではAであるのに対してヒトの配列ではSである)、294位(マウスの配列ではGであるのに対してヒトの配列ではSである)及びヒトの配列の359位のVがマウスの配列では欠損している。cDNA/mRNAレベルにおいても配列は高度に類似しているため(コード領域では約90%)、どちらの核酸配列(配列番号1又は2)又はこれらの断片若しくは変異体も、標的細胞、特にヒトの神経外肺葉起源の癌細胞の遺伝子サイレンシング研究に使用できる。配列表はDNA配列を表しているが、本明細書中でRNA又はmRNA分子について言及している場合、RNA分子は、T(チミン)がU(ウラシル)に置き換わった点が異なるが、DNA配列と同一であると解釈される。
【0021】
dclの完全核酸配列(配列番号1及び2)とは別に、標的遺伝子としてdclを有する、遺伝子サイレンシング法への使用に適切な配列番号1及び2のセンス及び/又はアンチセンス断片を提供する。したがって、以下に記載の遺伝子サイレンシング法のいずれか1つに使用する場合、断片は機能的でなければならず、具体的には神経外肺葉起源の癌細胞に存在する場合、配列番号3又は4のDCLタンパク質の産生を有意に減少させる。「配列番号3及び4の産生を有意に減少させる」とは、配列番号1及び/又は2のセンス及び/又はアンチセンス断片を導入していない神経外肺葉起源の癌細胞において見出されるDCLタンパク質レベルと比較して、配列番号1及び/又は2のセンス及び/又はアンチセンス断片を含む、神経外肺葉起源の癌細胞において少なくとも50%、60%、70%、好ましくは少なくとも80%、90%又は100%のDCLタンパク質を減少させることを指す。さらに、配列番号1及び/又は2のセンス及び/又はアンチセンス断片の導入により、細胞でのDCLタンパク質の産生が有意に減少又は停止することによって、表現型の変化が細胞に起こる。具体的には、微小管の分解及び紡錘体の変形が起き、神経外肺葉起源の癌細胞、例えば神経芽細胞腫細胞の増殖が有意に減少する。「神経外肺葉起源の癌細胞の増殖、例えば神経芽細胞腫細胞の増殖の有意な減少」とは、例えば配列番号1及び/又は2のセンス及び/又はアンチセンス断片を含む神経芽細胞腫細胞の成長(細胞分裂)の減少又は完全な阻害を指す。当業者は、本明細書に記載の方法を使用して、配列番号1及び/又は2のセンス及び/又はアンチセンス断片が所望の効果を起こす能力を有するかどうかを容易に検査できる。このことを検査する最も容易な方法は、センス及び/又はアンチセンス断片を例えばインビトロで培養した神経芽細胞腫細胞系に導入し、対照細胞と比較して、それらの細胞におけるdcl mRNA及び/又はDCLタンパク質のレベル及び/又は表現型の変化及び/又は神経芽細胞腫細胞の増殖を分析することである。インビトロ効果は、センス及び/又はアンチセンス断片を、例えば神経芽細胞腫の治療用組成物の製造に使用することの適切性を反映する。
【0022】
原則として、配列番号1及び/又は2の(センス及び/又はアンチセンス)断片は、少なくとも10、12、14、16、18、20、22、25、30、50、100、200、500、1000又はそれを上回る、配列番号1又は2の連続したヌクレオチドを含む、配列番号1若しくは2の任意の部分、又はその相補体若しくはその逆相補体であってよい。センス及び/又はアンチセンス断片は、RNA断片又はDNA断片であってよい。さらに、断片は一本鎖又は二本鎖(二重鎖)であってよい。核酸断片はまた、配列番号1又は2の非コード領域(例えば配列番号1のヌクレオチド1〜188又は配列番号2のヌクレオチド1〜212の領域)部分、又はコード領域(配列番号のヌクレオチド189〜1274又は配列番号2のヌクレオチド213〜1301)部分、又は1部分は非コードであり1部分はコードである領域(イントロン−エクソンの境界又はエクソン1など)と100%同一であってもよい。核酸断片は、例えばApplied Biosystems Inc.(Fosters, CA, USA)社製のオリゴヌクレオチドシンセサイザーを使用して、化学合成により新たに作製してもよく、又はSambrook et al.(1989)及びSambrook and Russell(2001)に記載のように標準的な分子生物学的方法を使用してクローン化してもよい。本発明による核酸断片は、PCRのプライマーとして、核酸のハイブリッド形成用プローブとして、標的細胞に送達されるべきDNA又はRNAのオリゴヌクレオチドとして、或いは標的細胞に送達されるべき又は標的細胞で発現されるべきsiRNA(低分子干渉RNA,small interfering RNAs)としてなどの様々な目的に使用できる。異なる遺伝子サイレンシング方法は、異なるセンス及び/又はアンチセンス核酸断片を使用するので、これらは、本発明の範囲を限定するものではないが、以下に詳細に記載する。
【0023】
さらに、上記の配列番号1及び2の変異体、それらの相補体又は逆相補体を提供する。「変異体」は、核酸配列が配列番号1又は2(又はそれらの相補体若しくは逆相補体)と100%同一ではないが、それらの核酸配列は「本質的に類似」である。「配列番号1又は2の変異体」は、遺伝コードの縮重により、さらに配列番号3若しくは4のアミノ酸をコードする核酸配列又はこれらの断片を含む。配列番号1又は2の変異体は、それらの相補体、逆相補体は、1個又は複数個のヌクレオチドの置換(substitution)、欠失及び/又は置き換え(replacement)を介して、配列番号1又は2とは異なる配列番号1又は2もまた包含する。配列番号1及び2の変異体はさらに、PNA(Peptide Nucleic Acid,ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid,ロックされた核酸)などのヌクレオチドの模倣体を含む又はからなる配列、又はモルホリノ、2’−O−メチルRNA若しくは2’−O−アリルRNAを含む配列を含む。
【0024】
変異体核酸配列は、例えば化学合成により新たに作製しても、突然変異生成又は遺伝子シャッフリング法によって発生させても、或いは、例えばPCR技術又は核酸のハイブリッド形成を使用して天然供給源から単離してもよい。配列番号1又は2の変異体は、さらに配列番号1又は2に「本質的に類似」(上に規定)している核酸配列、それらの相補体又は逆相補体として規定できる。特に、配列の全長にわたって配列番号1又は2と少なくとも75%、80%、85%、90%又は95%以上の配列同一性を有する変異体は、本発明に包含される。本発明の一実施形態において、配列番号1又は2と本質的に類似な核酸配列のセンス及び/又はアンチセンス断片を提供する。配列番号1又は2の断片に関して記載したように、神経外肺葉起源の癌細胞、例えば神経芽細胞腫細胞に、適切な量で導入した場合、配列番号1又は2の変異体の断片はDCLタンパク質の細胞レベルを有意に減少させる能力を有する。したがって、これらの変異体断片は、記載したセンス及び/又はアンチセンス断片と機能的に同等でなければならず、当業者はこのような断片の機能性を記載と同じ方法で検査できる。
【0025】
配列番号3及び配列番号4の単離タンパク質並びにそれらの断片及び変異体をさらに提供する。本発明によるDCLタンパク質(或いはそれらの断片又は変異体)は、例えばモノクロナール抗体又はポリクロナール抗体などの抗体を産生するために使用でき、該抗体はその時様々なDCL検出方法、診断若しくは治療方法又はキットに使用できる。或いは、免疫応答を誘発するエピトープをタンパク質内に特定できる。DCLタンパク質、それらの断片又は変異体は、合成的に作製でき、天然の供給源から精製でき、組み換えの細胞又は細胞培養物内に発現できる。DCLタンパク質断片は、20、50、100又は200以上の連続したアミノ酸を含む、配列番号3又は4の相当する部分と同一又は本質的に類似の、配列番号3又は配列番号4の任意の断片であってよい。DCLタンパク質変異体は、配列番号3又は4との実質的配列同一性を有するアミノ酸配列、例えば1、2、3、4又は5個以上のアミノ酸の置換、欠失又は挿入により、配列番号3又は4と異なるアミノ酸配列を含む。変異体は、ペプチド骨格の修飾又は非タンパク質アミノ酸(例えば、β−、γ−、σ−アミノ酸、β−、γ−、σ−イミノ酸)又はL−α−アミノ酸の誘導体などのアミノ酸の模倣体を含むタンパク質を含む。多くの適切なアミノ酸模倣体が当業者には公知であり、シクロヘキシルアラニン、3−シクロヘキシルプロピオン酸、L−アダマンチルアラニン、アダマンチル酢酸などが挙げられる。本発明のペプチドに適切なペプチド模倣体は、Morgan and Gainor,(1989)Ann. Repts. Med. Chem. 24:243-252により論じられている。
【0026】
本発明による方法
一実施形態において本発明は、標的細胞又は標的組織、具体的には神経外肺葉起源の癌細胞、特に神経芽細胞腫細胞においてdcl遺伝子をサイレンシングする方法を提供する。これらの方法では共通して、1種又は複数の、配列番号1若しくは2のセンス及び/若しくはアンチセンス核酸断片又は配列番号1若しくは2の変異体の断片(上記)が標的細胞(神経芽細胞腫細胞)に送達され、標的細胞に導入され、その結果標的細胞への導入により内在性dcl遺伝子(標的遺伝子)のサイレンシングが起こり、具体的にはDCLタンパク質及び神経外肺葉起源の癌細胞の増殖、例えば神経芽細胞腫細胞の増殖が有意に減少する。
【0027】
当分野では、様々な遺伝子サイレンシングの方法が公知である。一般的には、内在性標的遺伝子に相同なRNA又はDNA配列を、内在性標的遺伝子の転写及び/又は翻訳に干渉を目的として細胞に導入する。標的タンパク質の産生は、その結果有意に減少又は好ましくは完全に停止される。公知の遺伝子サイレンシング法には、アンチセンスRNAの発現(例えば欧州特許第140308B1号を参照のこと)、共抑制(センスRNAの発現、例えば欧州特許第0465572B1号を参照されたし)、低分子干渉RNA(siRNA)の細胞への送達又は細胞での発現(国際公開番号WO03/070969号、Fire et al. 1998, Nature 391, 806-811、国際公開番号WO03/099298号、欧州特許第1068311号、Zamore et al. 2000, Cell 101: 25-33、Elbashir et al. 2001, Genes and Development 15:188-200、Sioud 2004, Trends Pharmacol. Sci. 25:22-28を参照されたし)及びアンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞への送達(例えば、国際公開番号WO03/008543号、Pagnan et al. 2000 上記、Burkhard et al. 2003, 上記)が挙げられる。さらに遺伝子サイレンシング研究の再検討に関して、Yen and Gerwitz(2000, Stem Cells 18:307-319)もまた参照されたし。
【0028】
さらに、(陽イオン性)リポソーム送達(Pagnan et al. 2000, 上記)、陽イオン性ポルフィリン、融合ペプチド(Gait, 2003, Cell. Mol. Life Sci. 60: 844-853)、又は人工ビロソーム(再検討のためにはLysik and Wu-Pong, 2003, J. Pharm. Sci. 92:1559-1573; Seksek and Bolard, 2004, Methods Mol. Biol. 252: 545-568を参照されたし)などの、標的細胞に核酸分子を送達する様々な方法があり、本発明において使用できる。
【0029】
マウス及びヒトのDCLスプライシング変異体のクローン化及び特徴付けにより、インビトロ(培養細胞又は培養組織において)又はインビボで、マウス又はヒトの神経外肺葉起源の癌細胞において、DCLタンパク質のレベルを有意に減少させる(又はDCLタンパク質の産生を完全に停止させる)、公知の遺伝子サイレンシング法のいずれかの使用が可能になる。特に、DCLサイレンシングの表現型効果が、分裂する神経外肺葉起源の癌細胞、例えば神経芽細胞腫細胞における紡錘体の変形、及び/又は神経外肺葉起源の癌細胞、例えば神経芽細胞腫細胞の増殖の有意な減少又は完全な阻害として、インビボ又はインビトロで、観察される。
【0030】
一実施形態において、神経外肺葉起源の癌細胞におけるDCLタンパク質レベルを有意に減少させ、及び神経芽細胞腫、髄芽細胞腫、グリア芽腫、希突起膠腫、希突起星細胞腫、星状細胞腫、神経線維腫、上衣腫、MPNST(悪性末梢神経鞘腫)、神経節細胞腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、網膜芽腫、小細胞肺癌、副腎髄質褐色細胞腫、未分化PNET(末梢性神経外肺葉性腫瘍)、ユーイング肉腫及び黒色腫を治療するための組成物の調製のための、1種又は複数の、配列番号1又は2のセンス及び/又はアンチセンス核酸断片或いは配列番号1又は2の変異体断片の使用を提供する。具体的には、適切な量で、適切な頻度で該組成物を投与することにより、神経外肺葉起源の癌細胞の増殖を減少又は完全に阻害する。
【0031】
別の実施形態において、神経外肺葉起源の癌細胞のインビトロの治療方法を提供する。この方法は、核酸断片及びこれらを含む組成物の機能性を検査するために使用できる。該方法は、a)神経外肺葉起源の癌細胞系の細胞培養物の確立、b)本発明による核酸断片又は核酸断片を含む組成物を用いた細胞の処理、c)対照細胞と比較した、神経外肺葉起源の癌細胞の表現型の変化(視覚的評価、顕微鏡などを使用する細胞増殖、微小管の変形など)の分析及び/又は細胞の分子分析(例えばPCR、ハイブリッド形成、化学発光法検出方法などを使用する、dcl転写レベル、DCLタンパク質レベルなどの分析)を含む。
【0032】
dcl遺伝子サイレンシングに適切な、配列番号1及び/又は2に配列同一性又は本質的配列類似性を有するセンス及び/又はアンチセンスDNA又はRNA分子の限定されない例は、以下の通りである。
【0033】
1.低分子干渉RNA(siRNA)
低分子干渉RNAは、18、19、20、21、22、23、24、25、30個又はそれを上回る、配列番号1又は2の連続したヌクレオチドの二本鎖RNA(dsRNA)からなる。このようなdsRNA分子は、所望の配列の短い一本鎖RNAオリゴヌクレオチドを合成し、その後これらをアニーリングすることによって、容易に合成的に作製できる(実施例を参照されたし)。好ましくは、追加の1、2、又は3個のヌクレオチド、最も好ましくは2個のチミンヌクレオチド又はチミジンデオキシヌクレオチドが3’突出末端(3’末端TT)として存在する。これらのdsRNAは、センス及びアンチセンスRNAの両方を含む。限定されない例は以下である:
(siDCL−2)
5'- CAAGAAGACGGCUCACUCCTT -3'(配列番号5)
3'- TTGUUCUUCUGCCGAGUGAGG -5'(配列番号6)
(hu−siDCL−2)
5'- CAAGAAAACGGCUCAUUCCTT -3'(配列番号7)
3'- TTGUUCUUUUGCCGAGUAAGG -5'(配列番号8)
(siDCL−3)
5'- GAAAGCCAAGAAGGUUCGATT -3'(配列番号9)
3'- TTCUUUCGGUUCUUCCAAGCT -5'(配列番号10)
(hu−siDCL−3)
5'- GAAGGCCAAGAAAGUUCGUTT -3'(配列番号11)
3'- TTCUUCCGGUUCUUUCAAGCA -5'(配列番号12)
【0034】
上記のように、配列番号1又は2の任意の他の断片、或いは配列番号1又は2の変異体の任意の断片は、siRNAを構築するために適切に使用できる。siRNA分子は、さらに蛍光標識又は放射性標識などの標識を、観察及び検出のために含むことができる。
【0035】
都合の良いことに、siRNAはDNAベクターからもまた発現できる。このようなDNAベクターは、センス断片とアンチセンス断片の間に追加のヌクレオチドを含むことができ、RNA転写産物のフォールディングに続いてステムループ構造をもたらす。siRNAを神経芽細胞腫細胞に送達及び導入する代わりに、siRNAを標的細胞内に転写できるように、このようなDNAベクターを標的細胞に一時的に又は安定して導入できる。例えば、遺伝子送達のためのベクター、例えば遺伝子治療用に開発されたベクターは、神経芽細胞腫細胞にDNAを送達するために使用でき、そこから配列番号1若しくは2のセンス及び/若しくはアンチセンス断片又は配列番号1若しくは2の変異体のセンス及び/若しくはアンチセンス断片が転写される。例としては、Hirata et al., 2000(J. of Virology 74:4612-4620), Pan et al.(J. of Virology 1999, Vol 73, 4: 3410-3417), Ghivizanni et al.(2000, Drug Discov. Today 6:259-267)又は国際公開番号WO99/61601号に記載のように、組み換えアデノ随伴ウィルスベクター(adeno-associated viral vector,AAV)がある。
【0036】
当業者は、siRNA分子がdcl遺伝子サイレンシングに適切であるか、及び有効であるかどうかを、例えば該分子を神経芽細胞腫細胞系に送達し、その後siRNA分子を含む細胞によって産生されたdcl mRNA 及び/又はDCL タンパク質のレベルをRT−PCR、ノーザンブロット、ヌクレアーゼプロテクションアッセイ、ウェスタンブロット、ELISA検査などの公知の方法を使用して評価することによって、容易に検査できる。適切な神経芽細胞腫細胞系は、例えばヒトSHSY5、マウスN1E−115、マウスNS20Y又はマウス神経芽細胞腫/ラット神経膠腫ハイブリッドNG108系などである。或いは、紡錘体の変形などのdcl遺伝子サイレンシングの表現型効果は実施例に記載したように、例えば免疫細胞化学的染色又は免疫蛍光法を使用して評価できる。抗DCL抗体は、当業者によって例えば実施例に記載したように生成でき、又は本発明においてDCLに対して高度な特異性を有することが発見された既存の抗体(Kruidering et al. 2001, 上記)も使用できる。
【0037】
DCLタンパク質のレベルは、siRNA分子を神経芽細胞腫細胞に導入した後で、siRNA分子を有さない細胞と比較して、又は実施例において記載したsiDCL−1などの陰性対照siRNA分子を含む細胞と比較して、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少することが好ましい。
【0038】
2)アンチセンスRNAオリゴヌクレオチド
アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドは、配列番号1又は2の逆相補体配列の約12、14、16、18、20、22、25、30個又はそれを上回る連続したヌクレオチドからなる。このようなRNAオリゴヌクレオチドは、合成的に容易に作製又はDNAベクターから容易に転写できる。
【0039】
ホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドの使用のような骨格の修飾は、オリゴヌクレオチドの安定性を増すために使用できる。2’糖部位の、例えばO−メチル、フルオロ、O−プロピル、O−アリル又は他の基による他の修飾もまた安定性を改善する。
【0040】
適切なアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドの限定されない例は、以下である:
(DCLex2C)(2’O−メチルRNAホスホロチオエート)
5'- GCUGGGCAGGCCAUUCACAC -3'(配列番号13)
(hu-DCLex2C)(2’O−メチルRNAホスホロチオエート)
5'- GCUCGGCAGGCCGUUCACCC -3'(配列番号14)
(DCLex2D)(2’O−メチルRNAホスホロチオエート)
5'- CUUCUCGGAGCUGAGUGUCU -3'(配列番号15)
(hu-DCLex2D)(2’O−メチルRNAホスホロチオエート)
5'- CUUCUCGGAGCUGAGCGUCU -3'(配列番号16)
【0041】
siRNA分子に関して、当業者は他の適切なアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを容易に作製でき、それらのdcl遺伝子サイレンシングの有効性を上記のように検査できる。配列番号1又は2の逆相補体に100%マッチする連続する区間を使用する代わりに、配列番号1又は2の逆相補体に本質的に類似する配列を、例えば1、2又は3個のヌクレオチドを、追加、置き換え又は欠失することで使用できる。
【0042】
DNA分子、具体的にはRNA転写産物又は転写産物の一部としてのアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを産生することができるDNAベクターもまた包含する。このようなベクターは、ベクターが適切な細胞系内に存在する場合に、アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドの産生のために使用できる。さらに、DNAベクター(例えば、AAVベクター、上記を参照されたし)を、内在性dcl遺伝子発現をサイレンシングするために、インビボで神経芽細胞腫細胞に送達できる。したがって、アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを送達する代わりに、DNAベクターを神経芽細胞腫細胞に送達し、神経芽細胞腫細胞の増殖を防止する、又は減少させることができる。
【0043】
DCLタンパク質のレベルは、アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを神経芽細胞腫細胞に導入した後で、アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドを有さない細胞と比較して、又は陰性対照アンチセンスRNAオリゴヌクレオチド(即ち、DCLタンパク質のレベルに効果がない)を含む細胞と比較して、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少することが好ましい。
【0044】
3)アンチセンスDNAオリゴヌクレオチド
アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドは、配列番号1又は2の逆相補体配列の約12、14、16、18、20、22、25、30個又はそれを上回る連続したヌクレオチドからなる。このようなDNAオリゴヌクレオチドは、容易に合成的に作製できる。
【0045】
ホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドの使用のような骨格の修飾は、オリゴヌクレオチドの安定性を増すために使用できる。2’糖部位の、例えばO−メチル、フルオロ、O−プロピル、O−アリル又は他の基による他の修飾もまた安定性を改善する。
【0046】
適切なアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドの限定されない例は、以下である:
(DCLex2A)(DNAホスホロチオエート)
5'- GCTGGGCAGGCCATTCACAC -3'(配列番号17)
(hu−DCLex2A)(DNAホスホロチオエート)
5'- GCTCGGCAGGCCGTTCACCC -3'(配列番号18)
(DCLex2B)(DNAホスホロチオエート)
5'- CTTCTCGGAGCTGAGTGTCT -3'(配列番号19)
(hu−DCLex2B)(DNAホスホロチオエート)
5'- CTTCTCGGAGCTGAGCGTCT -3'(配列番号20)
【0047】
siRNA分子及びアンチセンスRNAオリゴヌクレオチドに関して、当業者は他の適切なアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドを容易に作製でき、それらのdcl遺伝子サイレンシングの有効性を上記のように検査できる。
【0048】
配列番号1又は2の逆相補体に100%マッチする、連続する区間を使用する代わりに、配列番号1又は2の逆相補体に本質的に類似する配列を、例えば1、2、3個又はそれを上回るヌクレオチドを、追加、置き換え又は欠失することで使用できる。
【0049】
DCLタンパク質のレベルは、アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドを神経芽細胞腫細胞に導入した後で、アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドを有さない細胞と比較して、又は陰性対照アンチセンスDNAオリゴヌクレオチド(即ち、DCLタンパク質のレベルに効果がない)を含む細胞と比較して、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%又は100%減少することが好ましい。
【0050】
siRNA分子、アンチセンスRNAオリゴヌクレオチド及び/又はアンチセンスDNAオリゴヌクレオチドの混合物の送達を、dcl特異的サイレンシングにもまた使用できると理解される。
【0051】
したがって、本発明による組成物は、配列番号1若しくは2のセンス及び/若しくはアンチセンス断片又は配列番号1若しくは2に本質的に類似のセンス及び/若しくはアンチセンス断片の適当量と、生理学的に許容される担体とを含む。該組成物をインビトロで神経芽細胞腫細胞の培養物に導入するために使用する場合、組成物は標的化合物をさらに含み得るが、標的化合物は必ずしも必要ではなく、例えば市販の形質移入キット(例えばスーパーフェクト(Superfect)、Qiagen社製, Velancia, CA)、エレクトロポレーション、リポソーム仲介形質移入などを使用する形質移入によって、分子を容易に導入できる。「標的化合物(targeting compound)」は、インビボで核酸断片を標的神経芽細胞腫細胞に運搬できる、即ち細胞標的化能を有する、化合物又は分子を指す。
【0052】
「適当量」又は「治療的有効量」は、神経芽細胞腫細胞に存在する場合、DCLタンパク質のレベルを有意に減少させる又は停止させる、及び神経芽細胞腫細胞の増殖を有意に減少させる又は完全に阻害することができる量を指す。適当量は、過度の実験をしなくても上記のように、当業者により容易に決定できる。センス及び/又はアンチセンス分子(siRNA、アンチセンスRNA又はDNAオリゴヌクレオチド)の適当量は、例えば0.05〜5μmol/mlの範囲で、1〜100ml/kg体重を注入する。
【0053】
神経芽細胞腫細胞培養物ではなく、対象に投与する組成物は、治療的有効量の本発明の核酸分子と、さらに1種又は複数の標的化化合物を含む。このような標的化化合物は、例えばPagnan et al.(2000, 上記)又はPatorino et al.(Clin Cancer Res. 2003, 9(12):4595-605)により記載されたような免疫リポソームであってもよい。免疫リポソームは、それらの外部に細胞表面指向性抗体を含む。例えば、ジシアロガングリオシドGD抗原などの、神経芽細胞腫細胞の抗原に対して産生されるモノクロナール抗体を使用して、神経芽細胞腫細胞を標的としてリポソームをそれに送り込むことができる。明らかに、他の神経芽細胞腫細胞抗原は、細胞特異的抗体を産生させるために使用できる。核酸分子を、公知の方法を使用して免疫リポソーム内にカプセル化し、モノクロナール抗体をリポソームの外部に共有結合させる(例えば、p254 of Pagnan et al. 2000, 上記を参照のこと)。リポソームの神経芽細胞腫細胞への結合、及び神経芽細胞腫細胞による核酸分子の摂取は、Pagnan et al.(2000)に記載のように公知の方法を使用してインビトロで評価できる。同様に、核酸が細胞内に存在することによる表現型効果及び/又は分子効果も評価できる。
【0054】
他の標的化化合物は、例えば核酸分子に結合した神経芽細胞腫細胞表面抗原に対して産生されたモノクロナール抗体などの抗体であってよい。例えば、マウスにおいて神経芽細胞腫腫瘍細胞を標的としてサイトカインをそれに送り込むことが示された、キメララット/マウスモノクロナール抗体ch17217などの、抗トランスフェリン受容体抗体が使用できる(Dreier et al., 1998, Bioconj. Chem. 9: 482-489)。このような方法は当分野において周知であり、例えばGuillemard and Saragovi(Oncogene, Advanced online publication, published 22 March 2004, Prodrug chemotherapeutics bypass p-glycoprotein resistance and kill tumors in vivo with high efficacy and target-dependent selectivity)を参照されたい。
【0055】
同様に、本発明による核酸分子は、天然又は合成のリガンド或いはリガンド模倣体に結合でき、これらは標的細胞表面受容体(例えば、神経芽細胞腫細胞表面受容体)に結合し、核酸分子のエンドサイトーシスをもたらす。このようなリガンドの例は、例えばトランスフェリンである。トランスフェリン−PEG−PEI/DNA複合体の静脈注射は、マウスにおいて皮下のNeuro2a神経芽細胞腫腫瘍への遺伝子導入をもたらすことが示されている(Ogris et al., 2003, J. Controlled Release 91: 173-181)。
【0056】
治療用組成物は、限定するものではないが水、生理食塩水、グリセロール又はエタノールなどの様々な他の成分を、さらに含んでもよい。追加の薬学的に許容される補助剤、例えば乳化剤、湿潤剤、バッファー、等張調整剤、安定化剤など、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート及びオレイン酸トリエタノールアミンが存在してもよい。他の生物学的有効分子、例えば他の遺伝子標的をサイレンシングするヌクレオチド分子(例えばc−Myb)、マーカー又はマーカー遺伝子(例えばルシフェラーゼ)、リガンド、抗体、薬剤などが存在してもよい。
【0057】
治療用組成物は、局所的、例えば注射、好ましくは標的組織に、又は全身的、例えば輸液の点滴又は皮下持続放出装置によって投与できる。
【0058】
注入送達系は、溶液、懸濁液、ゲル、ミクロスフェア、及びポリマー注入物質を含み、溶解性改変剤(例えば、エタノール、プロピレングリコール及びショ糖)及びポリマー(例えば、ポリカプリラクトン及びPLGA)などの賦形剤を含み得る。投与の様々な型に適切な製剤に関する更なる手引きは、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Company, Philadelphia, PA, 17th ed.(1985)に見出すことができる。
【0059】
一実施形態において、本発明による組成物は、他の神経芽細胞腫治療、例えば化学療法、放射線治療、外科手術及び/又は骨髄移植を補完するために使用する。したがって、1種又は複数の従来の治療の事前、同時、及び/又は直後のいずれかに、組成物を対象に、好ましくは毎週、より好ましくは毎月、有効量で投与する。他の治療で効果的に除去又は根絶されない任意の神経芽細胞腫細胞は、それ故dclサイレンシングによって増殖を防止される。この治療は、神経芽細胞腫細胞が体の他の部分に広がる(転移の形成)危険性を減少させ、再発、即ち(一次)神経芽細胞腫の再帰を防止又は少なくとも遅らせる。DCLサイレンシングは、正常な組織に対して毒性が低く、神経芽細胞腫細胞に高度の特異性を有するという、化学療法又は外科手術を上回る利点を有する。したがって望ましくない副作用は存在しない、又は最小限であると思われる。
【0060】
別の実施形態において対象の治療方法を提供し、それによってその他の神経芽細胞腫治療(例えば化学療法、外科手術など)を実施しない。該方法は、a)神経芽細胞腫の診断の確立と、b)本発明による組成物の適当量の投与と、c)様々な間隔での観察(フォローアップ治療)とを含む。
【0061】
ステップa)の診断は、例えば下記の診断方法及び診断キットを使用して確立できる。或いは、神経芽細胞腫の診断は従来の方法、例えばCT又はCATスキャン、MRIスキャン、mIBGスキャン(メタヨードベンジルグアニジン)、X線、カテコールアミン或いは尿又は血清試料中のそれらの代謝産物(例えば、ドーパミン、ホモバニリン酸、バニリルマンデル酸)の生検又は分析などを使用して確立できる。ステップb)は、本明細書中の他の場所に記載する。ステップc)は、以下の診断検査、血液又は尿検査、CTスキャン、MRIスキャンなどの様々なフォローアップ検査を含み得る。フォローアップ観察の目的は、腫瘍細胞が完全に根絶され、再発しないことを確実に観察するためである。そうでない場合、新たな治療を開始する必要がある。
【0062】
更なる実施形態において、診断方法及び診断キットを提供し、これらは対象における神経芽細胞腫発生の初期段階を選択的にスクリーニングするために有用である。対象は、1種又は複数の他の神経芽細胞腫検査においてすでに陽性と判定されていてもよく、この場合本検査により初期診断を確認できる。或いは、対象はまだ神経芽細胞腫の診断をされていなくてもよいが、神経芽細胞腫によって起こり得る症状を示してよい。腫瘍の位置によって症状は、食欲の減退、疲労、呼吸又は嚥下の困難、腹部膨満、便秘、下肢の衰弱/不安定など大きく変わり得る。或いは、未だどのような症状も示さないハイリスクの対象を、本発明による診断方法を使用して、通常の間隔で予防的検査をして、初期診断を確認してもよく、それにより神経芽細胞腫細胞を根絶する機会が大幅に増加する。エクスビボの診断方法は、対象から採血し、血清中の遊離の神経芽細胞腫細胞の有無を検出することを含む。或いは、エクスビボの診断方法は、(推定)腫瘍組織の生検試料に関して実施してもよい。DCLタンパク質及びdcl mRNAは、神経芽細胞腫細胞に特異的なので、試料中のdcl mRNA及び/又はDCLタンパク質の存在を分析することによって、細胞の存在を検出でき、定量化してもよい。これは当分野で公知の方法、dcl特異的又は縮重プライマーを使用する(定量的)RT−PCR、例えばdcl遺伝子領域の特異的増幅のような他のPCR法、DNAアレイ、ハイブリッド形成のためのDNAプローブ又はDCLタンパク質を検出する方法、例えばDCL特異的抗体(例えば、モノクロナール又はポリクロナール抗体)を使用する酵素免疫測定法(ELISA)又はウェスタンブロットを使用して実行できる。一実施形態において、本発明による診断方法及びキットは、モノクロナール抗体の抗DCLK(Kruidering et al. 2001, 上記では抗CaMLKとも称される)を含み、これは、本発明によるヒト及び/又はマウスのDCLタンパク質(約40kDaの分子量を有するとして検出可能)を認識し、結合する。抗DCLKは、DCLK−ショート(即ちcpg16)及びCARPなどの他のスプライシング変異体をさらに認識するが、cpg16及びCARPの発現からDCLの時空間分離及び分子量の違いを使用して、偽陽性を容易に最小化/回避できる。明らかに他のDCL特異的モノクロナール抗体を産生し使用できる。
【0063】
さらに、エクソン8RNAに特異的なプライマー又はプローブ(DCL RNAに存在するが、DCLK−ショートRNAには存在しない)をRNAの検出法に使用できる。対照として、例えばDCL RNAには存在しない、DCLK−ショート(即ちcpg16)及びCARPのエクソン6RNA、又はDCLKのエクソン9〜20に結合する(ハイブリッドを形成する)プライマー又はプローブを使用できる。
【0064】
以下の標準的テキストブックを参照すると見出されるように、配列番号2のRNA若しくはDNA又は配列番号4のタンパク質を、特異的に検出する(例えば、配列特異的増幅、配列特異的ハイブリッド形成又は特異的結合によって)プライマー対、プローブ及び抗体は、当業者によって標準的分子生物学的方法を使用して作製できる。プライマー対及びプローブは配列番号2に基づいて作製できる。DCLタンパク質に特異的なモノクロナール抗体又はポリクロナール抗体は、当分野で公知のように産生できる。
【0065】
診断方法は、a)対象の血液試料を、配列番号2のRNA又はDNAの有無、及び/又は配列番号4のDCLタンパク質の有無に関して分析するステップと、b)存在する配列番号2及び/又は配列番号4の量を定量化してもよいステップと、を含む。定量化は、存在する神経芽細胞腫細胞の数に直接相関させることができ、それらは順に神経芽細胞腫の進行及び拡大の重篤性を示すことができる。
【0066】
上記の方法を実施するためのエクスビボの診断キットをさらに提供する。したがって、診断キットは、dcl遺伝子、dcl mRNA及び/又はDCLタンパク質の検出、及び定量化をしてもよい、適切な、プライマー、プローブ及び/又は抗体、並びに他の試薬(バッファー、標識など)を含む。さらにキットは、試薬(例えば、免疫検出試薬)の使用法の取扱説明書及び手順書及び対照試料、例えば単離したDCLタンパク質又はdclDNAを含む。
【0067】
以下の限定されない例は、新規なDCLスプライシング変異体の特定、単離及び特徴付けを例示する。特に明記しない限り、本発明の実践は、分子生物学、ウィルス学、微生物学又は生化学の標準的な従来の方法を用いるつもりである。このような技術は、Sambrook and Russell(2001)Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, in Volumes 1 and 2 of Ausubel et al.(1994)Current Protocols in Molecular Biology, Current Protocols, USA and in Volumes I and II of Brown(1998)Molecular Biology LabFax, Second Edition, Academic Press(UK), Oligonucleotide Synthesis(N. Gait editor), Nucleic Acid Hybridization(Hames and Higgins, eds.), "Enzyme immunohistochemistry" in Practice and Theory of Enzyme Immunoassays, P. Tijssen(Elsevier 1985)に記載されている。PCRに関する標準的材料及び方法は、Dieffenbach and Dveksler(1995)PCR Primer: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Labroatory Press, 及びMcPherson et al(2000)PCR Basics: From Background to Bench, first edition, Springer Verlag Germanyに見出すことができる。モノクロナール抗体又はポリクロナール抗体の作製方法は、例えばHarlow and Lane, Using Antibodies: A laboratory Manual, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1998, and in Leddell and Cryer “A Practical Guide to Monoclonal Antibodies”, Wiley and Sons 1991に記載されている。上記の参考文献は全て参照により本明細書に組み込まれている。
【0068】
説明及び実施例を介して、以下の配列に関して述べる。
配列番号1:マウスdclのcDNA配列
配列番号2:ヒトdclのcDNA配列
配列番号3:マウスDCLのアミノ酸配列
配列番号4:ヒトDCLのアミノ酸配列
配列番号5:siDCL−2センスRNAオリゴヌクレオチド(siRNA鎖)
配列番号6:siDCL−2アンチセンスRNAオリゴヌクレオチド(siRNA鎖)
配列番号7:hu−siDCL−2センスRNAオリゴヌクレオチド(siRNA鎖)
配列番号8:hu−siDCL−2アンチセンスRNAオリゴヌクレオチド(siRNA鎖)
配列番号9:siDCL−3センスRNAオリゴヌクレオチド(siRNA鎖)
配列番号10:siDCL−3アンチセンスRNAオリゴヌクレオチド(siRNA鎖)
配列番号11:hu−siDCL−3センスRNAオリゴヌクレオチド(siRNA鎖)
配列番号12:hu−siDCL−3アンチセンスRNAオリゴヌクレオチド(siRNA鎖)
配列番号13:DCLex2CアンチセンスRNAオリゴヌクレオチド
配列番号14:hu−DCLex2CアンチセンスRNAオリゴヌクレオチド
配列番号15:DCLex2DアンチセンスRNAオリゴヌクレオチド
配列番号16:hu−DCLex2DアンチセンスRNAオリゴヌクレオチド
配列番号17:DCLex2AアンチセンスDNAオリゴヌクレオチド
配列番号18:hu−DCLex2AアンチセンスDNAオリゴヌクレオチド
配列番号19:DCLex2BアンチセンスDNAオリゴヌクレオチド
配列番号20:hu−DCLex2BアンチセンスDNAオリゴヌクレオチド
[実施例]
【実施例1】
【0069】
マウス及びヒト由来のDCLのクローン化
マウス由来のDCL cDNAクローンのDNA配列(配列番号1)の分析により、予測分子量が40kDa(図1B)で両方のタンパク質の全長にわたって、マウスのDCXとアミノ酸同一性が73%(類似性が81%)である362アミノ酸のオープンリーディングフレーム(配列番号3)が明らかになった。2つの予測DCX反復とマウスのDCXとのアラインメント(Taylor et al., 2000, 上記)により、DCXのドメインIに関して81%のより高いアミノ酸同一性(類似性が89%)、及びDCXのドメインIIに関して90%のアミノ酸同一性(類似性が99%)が明らかになり、この後者のドメインは両方のタンパク質において類似の機能を有することを強く示唆している。CARPと大きく一致するセリン/プロリン(SP)に富むC末端(Vreugdenhil et al., 1999, Neurobiology 39, 41-50)は、63%の低いアミノ酸同一性(類似性78%)を示す。このSPに富むドメインはDCX及びDCLの両方に存在する。このようなSPに富むドメインは有力なMAPキナーゼモチーフであり(Sturgill et al., 1988, Nature 334, 715-718)、C末端がMAPキナーゼの基質であることを示唆している。興味深いことに、DCXのこの領域におけるYLPLモチーフは、AP−1及びAP−2と相互に作用することが示されており、タンパク質の選別及び小胞の輸送に関与している(Friocourt et al., 2001, Mol. Cell Neurosc. 18, 307-319)。しかし、DCLにおいて一致するモチーフは、疎水性ロイシンが塩基性アルギニン残基に置き換えられたYRPLであり、DCLがAP−1及びAP−2と相互に作用しているとは思えないことを示唆している。
【0070】
ヒトdcl cDNA/mRNA(配列番号2)及びタンパク質(配列番号4)の配列は、ヒト神経芽細胞腫細胞系(SHSY5)から、マウスの配列を使用して得られ、本明細書中の他の場所に記載したように、ネズミの配列に非常によく似ていることを見出した。
【実施例2】
【0071】
DCLはMAP(微小管結合タンパク質)であり、細胞骨格を安定化する。
DCX及びDCLKロングの2つのDCXドメインは相互に作用し、微小管構造を安定化することが示されている(Francis et al., 1999, 上記; Gleeson et al., 1999 上記; Kim et al., 2003, Struct. Biol. 10, 324-333; Lin et al., 2000, 上記)。DCLは、DCLKロングと同一であるDCXドメインを含むので、微小管に関する同様の安定化及び重合化効果がDCLに関して期待された。このことを確認するために、3種の実験を実施した:第1にCOS−1細胞におけるDCLの過剰発現が、α−チューブリン抗体との共局在によって示されるように(図2.I B及びC)、微小管の分布と重複する体細胞における線維状染色パターンをもたらした(図2.I A)。第2に、検査のためにDCL含有微小管束がDCX及び他のMAPに関して公知であるように、解重合に対して同様の耐性を示す場合、DCL形質移入細胞を10μgのコルヒチン、解重合した化合物、崩壊したチューブリン微小管に曝した。未処理細胞は、微小管細胞骨格の明らかな解重合を示したが、一方DCLを形質移入した全ての細胞の微小管細胞骨格は、特に濃縮した微小管/DCL束において、コルヒチン処理に1時間耐えた(図2.I D〜F)。これにより、DCLKロング及びDCXに類似のDCLが微小管を安定化できることが示された。第三に、インビトロの重合試験においてDCLの微小管重合特性を、異なる濃度の、組み換え、タグなしのDCLを精製チューブリンと共にインキュベートすることによって検査した。タクソールを、陽性対照として使用し、これは微小管重合化合物として周知である。微小管重合の分光光度観察により、DCLが微小管を用量依存性手段において重合化することが明らかになった(図2.II)。それと共に、これらのデータは、DCLKロング及びDCXなどのDCLが微小管を直接重合化及び安定化できることを示す。
【実施例3】
【0072】
DCL認識抗体の特徴付け
近年、抗CaMKLKと呼ばれるCARPに対する抗体の産生が記載され(Kruidering et al., 2001, 上記)、この抗体はDCLKショート(cpg16(Silverman et al., 1999, J. Biol. Chem. 274, 2631-2636)又はCaMLKとしても公知である)を含む、DCLK遺伝子の他のスプライシング変異体もまた認識する。CARPは、55アミノ酸(そのうち43がDCLのC末端と同一である)の低分子タンパク質であり、ヒトDCXと70%のアミノ酸相同性を共有する(Vreugdenhil et al., 1999)。抗CaMLKの特異性を扱うために、DCX及びDCLをCOS−1細胞において過剰発現させ、ウェスタンブロット分析により交差反応性の可能性を分析した。抗CaMLKは、DCLを強く認識し(図3A、レーン4〜6)、一方DCXには交差反応性は多少観察されるだけである(図3A、レーン2及び3)。他方では、本明細書中で使用する、DCXのC末端の17アミノ酸に対して産生されるDCX抗体は、DCXを強く認識するが(図3A、レーン2及び3)、DCLは認識しない(図3A、レーン4〜6)。したがって抗CaMLKは、DCLKショート及びDCLを含むDCLK遺伝子の多くのスプライシング変異体を強く認識し、それ故抗CaMLKは本明細書中では「抗DCLK」と称する。さらに、抗DCLKとDCXのいくらかの交差反応性が起こり得る一方で、DCX抗体はDCX単体に関して特異的であるがDCLに関しては特異的でない。
【実施例4】
【0073】
DCLは、脳の発達の初期段階において高度に発現する。
胚脳ホモジネートのウェスタンブロット分析により、抗DCLKに関して免疫陽性である40kDaのタンパク質の存在が明らかになった。タンパク質の大きさは、COS−1細胞において過剰発現した組み換えDCLタンパク質の大きさに相当する(図3B)。他の免疫反応性のバンドが観察されなかったので、抗DCLKは発達中のマウスの脳においてDCLのみを認識する(図3B、レーン8〜18)。ED10においてシグナルはすでに存在したが、最も高いレベルの免疫反応性DCLタンパク質はED12及びED14において見出された。ED14の後、DCLタンパク質のレベルは下降し、成熟脳においても弱いが明確な40kDaのバンドがなお存在した。ここで、53kDaの追加のバンドが非常に顕著であった(図3B)。53kDaの分子量が一致することから、このバンドはDCLKショートを表すと思われ、これは成熟脳においてのみ豊富に発現し、発達脳においては発現しない(Vreugdenhil et al, 2001; Omori et al., 1998)。成熟脳内では、DCLタンパク質は嗅球において最も高いレベルで、海馬及び大脳皮質においては低レベル、及び小脳、脳幹及び視床下部において非常に低いレベルで発見された(図3C)。
【0074】
DCXは、選択された領域において非常に少量で発現し続けるにもかかわらず(Nacher et al., 2001, Eur J Neurosci 14, 629-644)、DCXは、発達期に特異的に発現し、成熟脳においては検出レベルより下に落ちることが報告された(Francis et al., 1999 上記; Gleeson et al., 1999 上記)。DCLの発見と比較するために、タンパク質溶解物を、C末端を認識するDCX特異的抗体を用いてさらに分析した。他の研究(Francis et al., 1999; Gleeson et al., 1999)と一致して、DCXの最も高い濃度はED12において見出され、その後下降した(図3B)。
【0075】
DCLに反して、さらに長期曝露した後でもDCXタンパク質の発現はED8及びED10の胚の頭部又は成熟脳において全く検出できなかった。しかし、神経細胞の移動におけるDCXの役割と一致して、DCXの免疫反応性が成熟嗅球において観察された(図3C、レーン7)が、他の脳構造においては観察されず(図3C、レーン2〜6)、全脳溶解物においてDCXが検出レベルより希薄であることを示唆している。
【0076】
DCX及びDCLの発現の領域的違いをより詳細に分析するために、初期胚発生におけるDCLの時空的発現をインサイツのハイブリッド形成を使用して研究した。ED8において神経上皮(後期発達段階において、中枢神経系及び層をなす皮質を生じる運命にある)の長さに沿って、低レベルのDCL mRNAの発現が観察された(図4.I A)。ED10において、大規模な分裂が開始され顕著になった場合、実質的な発現が、特に初期の間脳、終脳及び中脳において見出された(図4.I B)。RT−PCR及びウェスタンブロット実験に一致して、ED12におけるDCLの発現の強度は、ED8及び10と比較して増殖脳室帯において高レベルで著しく増加した(図4.I C)。
【0077】
DCLタンパク質の時空的分布を研究するために、免疫組織化学を8、9、10及び11日齢のマウスの胚由来の切片について、これらの日齢において限定的にDCLを認識するDCLK抗体(抗DCLK)を使用して、実施した(上記及び図3Bを参照されたし)。ED8においてDCLの染色は全く観察されなかった(データ非掲載)。しかし、ED9において、DCXタンパク質の発現がない時期が見出され(図4.II B)、DCLシグナルは脳室壁及び大規模な有糸分裂及び神経発生の特定の範囲である、主要な神経上皮において顕著である(図4.II C及びJ)。ED10及び11において、DCLタンパク質は一般的にインサイツのハイブリッド形成パターンに続き、終脳、間脳、側部神経節隆起、神経管の神経上皮、並びに例えば後根及び交感神経節を含む中枢神経系及び末梢神経系の増殖領域において高レベルであったが、一方、例えば骨又は腸などの非神経組織は、どのようなシグナルも欠いていた(図4.II A及びD)。初期新皮質の高度拡大により、DCLが皮質板の上層だけでなく内部脳室帯においても発現し、中間帯においては明らかに低レベルで発現することが明らかになった(図4.II F及びH)。
【0078】
特に顕著な観察は、有糸分裂細胞、例えば脳室帯及び上皮壁におけるDCLの免疫反応性(図4.II C〜F、H、J〜Nの例)であり、一方DCL陽性の有糸分裂細胞が神経管の神経上皮(図4.II D)及び皮質神経上皮の中間体(図4.II F)において発見され、全体としてより孤立して発生し、頻度は低かった。同じ切片の上皮のDCL染色パターンに加えて、明らかな免疫陽性ダブレットが観察された(図4.II D及びF)。さらに、細胞周期の特定の段階における有糸分裂細胞が認識でき(図4.II J〜N)、染色体及び免疫陽性の中心体様構造の間の激しい免疫反応性(図4.II L)を明らかに見ることができる。
【0079】
統合すれば、データは、ED8からすでに始まるDCXの発現及びED9以降に始まるDCLタンパク質の発現に先行して、DCL mRNAの発現が存在することを明らかに示した。DCL mRNA及びDCLタンパク質の発現は、それぞれED12及びED14に最も高いことが見出されたが、DCXに反して、さらにDCLの転写産物及びタンパク質発現体が成熟脳からウェスタンブロットで発見された。初期発生におけるタンパク質の分布は、同じ時のDCXの分布と異なるだけでなく、位置も異なる、即ちDCLは皮質板単独だけでなく、脳室帯及び皮質板において発見された(図4.II C、F〜H)。最も目立ったことには、DCLの免疫反応性が神経上皮の有糸分裂細胞に、時として中間帯に定期的に見出された。
【実施例5】
【0080】
DCLは神経芽細胞腫細胞において内因性の発現をする。
神経増殖におけるDCLの役割の可能性を調査するために、いくつかの神経細胞系における内因性DCLの発現を分析した。およそ40kDaのDCL免疫反応性バンドが、4種の異なる神経芽細胞腫細胞系において観察され、このバンドは研究した非神経芽細胞腫細胞系のいずれにおいても不在であり(図5.I A)、神経線維様表現型の細胞におけるDCLの発現に特異的であることを示唆している。PC12細胞を含む、他の非神経芽細胞腫細胞系のスクリーニングでは、いずれのDCL陽性細胞系も特定できなかった(データ非掲載)。神経芽細胞腫細胞系N1E−115において、40kDaの免疫反応性ダブレットは、過剰発現DCLからもたらされたダブレットと共移動した(図5.I B)。RT−PCR実験及びウェスタンブロット分析の両方とも、DCX特異的プライマー及びDCX特異的抗体を使用してDCXシグナルを検出できなかった(データ非掲載)ので、この40kDaのバンドは、N115細胞におけるDCXの存在によっては説明できない。したがって、40kDaのDCLダブレットの上のバンドはDCLのホスホイソ型を表すと思われ、細胞溶解物をホスファターゼと共にインキュベートした場合に、この考えは内因性DCL並びに過剰発現DCLの両方の上のバンドが消失することによって確認された。これはDCXに類似したDCLが、少なくとも神経細胞系においてリンタンパク質であることをさらに実証する。
【実施例6】
【0081】
DCLは、N1E−115細胞において微小管の構造及び構成に影響を与える。
DCLの機能及び細胞内局在性を研究するために、中間期のN1E−115神経芽細胞腫細胞における低分子干渉(si)RNA技術を使用したDCL発現操作の後で、免疫細胞化学実験を、共焦点顕微鏡法を使用して、実施した。N115細胞により取り込まれたsiRNAを定着させるために、抗DCL合成siRNA分子をCy−5を用いて標識し、N115細胞中のそれらの有無を蛍光顕微鏡により観察した。これらの研究は、全N115細胞のおよそ95%に抗DCL siRNAが存在することを示唆した(データ非掲載)。DCLに対する3種の異なるsiRNA分子:siDCL−1、2及び3を構築した。ウェスタンブロット分析により、siDCL−1がDCLタンパク質をノックダウンできなかったことが示され(図5.II、レーン1)、この発見は、このアンチセンス鎖の3’末端においてTTの2つのヌクレオチドが欠けていることによって説明できた。siDCL−1を、それ以降siRNA手順の効果に関する陰性対照として使用した。未処理細胞及びsiDCL−1と比較して、siDCL−2及びsiDCL−3分子の形質移入は、ウェスタンブロット分析により決定したように、それぞれ80%及び90%のノックダウンを引き起こす(図5.II、レーン2及び3)。次の、抗−DCLK及びα−チューブリン又はγ−チューブリン抗体を使用した、siRNA処理N115細胞の免疫細胞化学分析により、中間期の細胞の微小管細胞骨格の構造に関する著しい効果を明らかにした。未処理細胞において、抗DCL染色は通常点状であり、体細胞の残余の至る所に存在する(図5.III A)。体細胞の辺縁及びさらに神経突起の先端に選択的に位置して出現する(Friocourt et al., 2003; Schaar et al., 2004)DCXに反して、DCLの免疫反応性は体細胞の辺縁で緩和され(図5.III A及びC)、多くの場合核の片面又は両面近くで強度が増すことを示し(図5.III A、C、D及びF)、DCLが特に中心体を囲む細胞骨格に沿って集中することを示唆する。この細胞内局在性は、中心体マーカーγチューブリンを用いた共染色によって確認した(図5.IV A〜Cを参照されたし)。
【0082】
ウェスタンブロット分析に一致して、siDCL−1の形質移入により内因性DCLの免疫細胞化学染色パターンは変化しなかった。DCLのノックダウンはsiDCL−3により誘導されたが、抗DCLK染色のほぼ完全な消失を誘導し(図5.III Gを参照されたし)、抗DCLK抗体が高度に特異的な方法でN115細胞内のDCLを認識することを強く示している。目立ったことには、siDCL−2を形質移入した細胞の40%及びsiDCL−3を形質移入した細胞の80%において、細胞骨格が崩壊し、そのことは、変化し、より分散したα−チューブリン染色パターン及び不規則な構成から明らかであった。siDCL−2及びsiDCL−3を形質移入したが、正常な細胞骨格を有するN115細胞は、異常な細胞骨格を有する細胞より、抗DCLKによりよく染色されたこともさらに示した。このことは、有効なDCLのノックダウンとそれに続く微小管の安定性の異常との間の因果関係をさらに裏付ける。未処理細胞における正常な微小管細胞骨格と比較して、DCLのノックダウンの後の異常なパターンは、より集中し、分散構造が少なくなり、明らかに分岐の少なくなった微小管束により特徴付けられる(図5.III H及びI)。これは、微小管細胞骨格の分岐及び安定化におけるDCLの役割を示した。
【0083】
DCLタンパク質の分布は中心体の周りで高度に集中して見出されたので、DCLのノックダウンは中心体タンパク質複合体、続く核の位置づけ、細胞骨格の連結性及び(再)構成に影響を与えることができる。この問題を扱うために、DCLのノックダウンを、γチューブリン染色と併用して実施した(図5.IV D〜Iを参照されたし)。N115細胞の正倍数性特性と一致して、細胞当たり複数の中心体が観察された。しかし、DCLの効果的なノックダウンにもかかわらず、中心体の数又は構造に明らかな変化は見られず、DCLが中心体の構造的構成のカギとなる因子ではないことが示されている。
【実施例7】
【0084】
DCLは、神経芽細胞腫細胞において紡錘体形成に必須である。
脳室帯におけるDCLの存在(図4)は、神経増殖及び前駆分裂におけるDCLの役割に一致する。したがって、分裂N1E−115細胞をsiRNAによるDCLのノックダウンの後で、共焦点顕微鏡を使用して分析した。強いDCLの免疫反応性が、中期又は後期の始まりの、全ての分裂N1E−115細胞において観察された(図6A及びD参照)。DCLの免疫反応性はα−チューブリンと大いに共局在し、紡錘体との関連を示している。しかし、免疫反応性勾配は分析した全ての細胞内のDCLに関して明らかであり、中心体の近くでは低レベルであり、紡錘体において及び動原体の近くでは高レベルであり、紡錘体の形成におけるDCLの役割を示唆している。この一致は、siDCL−2及びsiDCL−3によるDCLのノックダウンの劇的な効果であり、これは紡錘体の完全な変形及び時として欠如に関連する。(図6G〜L)。この紡錘体に関する効果は全分裂細胞(siDCL−2)の40%及びsiDCL−3を形質移入した全分裂細胞において観察された。siDCL−1による、無効なノックダウンは、DCLの紡錘体との共局在化を未変化のままにし、一方紡錘体の表現型の出現は未処理細胞の紡錘体の表現型の出現と類似している(図6D〜F)。したがって、明らかに、DCLは分裂神経芽細胞又は神経前駆細胞の紡錘体の正しい形成に必要である。
【実施例8】
【0085】
DCLの過剰発現が紡錘体の伸長を引き起こす。
普通はDCLタンパク質を発現しないCOS−1細胞におけるDCLの過剰発現により、機能獲得について研究した。分裂N115細胞における内因性DCL発現についての上記の発見に一致して、DCLの免疫反応性は分裂COS−1細胞において紡錘体と共局在する(図7を参照されたし)。2つの異なる表現型が観察された:第1に、分析した分裂COS−1細胞の20%(n=126)において、DCLの過剰発現はα−チューブリンと共局在し、分裂N1E−115細胞における内因性DCL発現パターンに類似し(図7 D〜F)、DCLは動原体及び紡錘体に局在する。しかし、N1E−115と違って、DCLもまた中心体及び星状糸に随伴して見出される。第2に、分裂COS−1細胞の大部分(80%)において、DCLの発現の正確な有糸分裂期とベクター形質移入細胞との比較が、DCLを発現した分裂細胞の全てが、紡錘体が伸長した異常な表現型を示すという事実によって妨げられた。
【0086】
最も目立ったことには、半分の紡錘体が観察され、DCLの過剰発現は中心体の分離及び紡錘体の配向性に影響を与えることを示している(図7A〜C、G〜I)。さらに、紡錘体は対照細胞の紡錘体よりだいぶ長く、多くの場合厚くなって出現した(例えば形質移入していない細胞の紡錘体の長さであるref挿入の図7Bと、図7Cとを比較されたし)。これらのDCL効果は異常なDNAの染色及び分布パターンと著しく関連があり、この場合染色体は完全に押しのけられ、体細胞に分散し、正常な配向パターンとは顕著に異なり、双極中心体位置に関して垂直である(ref挿入図7B)(図7Cと比較した参考の長さを参照されたし)。したがって、COS−1細胞におけるDCLの過剰発現は紡錘体の伸長及び半紡錘体の形成を引き起こし、DCLが紡錘体の形態及び長さに関して重要な役割を担うことを示唆している。
【実施例9】
【0087】
材料及び方法
9.1ネズミDCLのクローン化
本発明者らは、CARP特異的エクソンの終止コドン領域に相当する、アンチセンスプライマー1A:CTGGA ATTCT TACAC TGAGT CTCCT GAG(EcoR1部位に下線を引いた)、及びネズミのDCLK遺伝子のエクソン3に相当するセンスプライマー2S:GCAGG TTCTC ACTGA CATTA CCGを開発した。PCRの30周期で、457bp断片を、鋳型としてマウスの胚cDNA及びポリメラーゼPfuI(Stratagene社製)を使用して、増幅した。DNA配列分析により、DCLK特異的であるDNA配列を確認した。その後、完全なDCLタンパク質をコードするDCL cDNAを、CCAGGATCCACCATGTCGTTCGGCAGAGATATG(BamH1部位に下線を引いた)をセンスとして、アンチセンスプライマーとして1Aを使用して増幅し、BamH1及びEcoR1を用いて切断し、発現プラスミドpcDNA 3.1(InVitrogen社製, Groningen, The Netherlands)においてサブクローン化した。DCL−EGFPの構築体を、pEGFP-C1(Clontech社製;図1も参照されたし)のSmaI/KpnI部位において、pcDNA3.1.DCLからKpnI/EcoRV DCL断片をサブクローン化することによって産生した。
【0088】
9.2インサイツのハイブリッド形成
DCL mRNAは、CARPを除く他の大部分のDCLK転写産物には存在しないエクソン8(図1)を含む。CARPは、胚発生期には非常に低レベルで発現するため、エクソン8特異的配列に相補的な、40merのアンチセンスオリゴヌクレオチドを開発した(5' -TTTGC TGTTA GATGC TTGCT TAGGA AATGG GAAAC CTTGA-3')。陰性対照として6つのミスマッチ(下線を引いた)を含む、オリゴヌクレオチド5'-TTTGA TGTTA TATGC TTGAT TAGGA CATGG GACAC CTGGA-3'を使用した。両方のオリゴヌクレオチドをα−33P dATP(NEN Life Science Products社製, Hoofddorp, The Netherlands, 2000Ci/mmol, 10 mCi/ml)を用いて、製造業者の指示に従ってターミナルトランスフェラーゼ(Roche Molecular Biochemicals社製, Almere, The Netherlands)を使用して、末端を標識した。インサイツのハイブリッド形成及びシグナルの視覚化を前記のように実施した(Meijer et al., 2000, Endocrinology 141, 2192-2199)。
【0089】
9.3抗体
抗DCL抗体の産生を先に記載した(Kruidering et al., 2001, 上記)。マウスモノクロナール抗α−チューブリンをSigma 社より入手した。ヤギポリクロナール抗ダブルコルチン(C−18)抗体、ローダミン結合二次抗体及びホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体はSanta Cruz Biotechnology, Inc社製であった。
【0090】
9.4細胞の培養及び処理
細胞培養用の全試薬は、特に明記しない限りLife Science Technologies, Inc社から入手した。全細胞は37℃、5%COで保存した。COS−1細胞を、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、及び10%ウシ胎児血清を添加した、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Dulbecco's modified Eagles medium)で培養した。NG108−15及びN115細胞を、ピルビン酸ナトリウムを除き、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、ハイブリドーマ(HAT)混合物及び10%ウシ胎児血清を添加した、DMEMで培養した。一過性形質移入実験のために、細胞を、ポリ−L−リジンで被覆したプレート又はカバースリップ上で培養した。新生マウス由来の一次解離神経細胞を、Lグルタミン、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、及び10%ウシ胎児血清を添加した、F−12 Ham、Kaighnの改変培地(Sigma社製)で培養した。一次神経細胞を1日齢のマウスの海馬領域から単離し、それをトリプシン溶液中で37℃において25分インキュベートした。その後、細胞を培養培地で2回洗浄し、ポリ−L−リジンで被覆したカバースリップ上に播種した。24時間後、培養培地を交換し、7.5μMシトシン―β−D−アラビノシド(Sigma社製)を添加し、グリア細胞の量を減らした。一過性形質移入実験を、スーパーフェクト(Superfect(Qiagen社, Valencia, CA))を用いて、製造業者の指示に従って、実施した。一次神経細胞を単離4日後に形質移入した。
【0091】
9.5 siRNA実験
siRNA実験のために、マウスの神経芽細胞腫細胞系N1E−115(ATCC 番号CRL−2263)を使用した。合成RNAオリゴヌクレオチド5'-CAAGA AGACG GCUCA CUCC-3'及び5'-GGAGU GAGCC GUCUU CUUG-3'(siDCL−1をアニーリング)、5'- CAAGA AGACG GCUCA CUCCT T- 3'(配列番号5)及び5'-GGAGU GAGCC GUCUU CUUGT T-3'(配列番号6)(siDCL−2をアニーリング)並びに5'-GAAAG CCAAG AAGGU UCGAT T-3'(配列番号9)及び5'-TCGAA CCUUC UUGGC UUUCT T-3'(配列番号10)(siDCL−3をアニーリング)(3’のチミジンがデオキシヌクレオチドである)を、Eurogentec社より入手し、アニーリングバッファー(100mM KAc、30mM Hepes pH7.5、2mM MgAc)に溶解し、最終濃度を100μMにした。二本鎖siRNAの形成のために、等モル量のセンス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを混合し、94℃において1分間加熱し、続いて37℃で1時間インキュベートした。ウェル当たり、最終濃度100nMの二本鎖siRNAを使用した。遺伝子サイレンシングのために、60pmolの二本鎖siRNAを50μlのオプティメム(opti−MEM,Life Technologies社製)に溶解し、3μlのオリゴフェクタミン試薬(Invitrogen社製)を分注することによって混合し、12μlのオプティメムに溶解した。室温で20分間インキュベートした後で、32μlのオプティメムで容量を増し、全混合物(100μl)を細胞(500μl)に加えた。48時間後、遺伝子サイレンシングをウェスタンブロット分析及び免疫蛍光法により検査した。
【0092】
9.6免疫細胞化学
細胞を、上記のように培養し、一過性形質移入した。表示の時間に、カバースリップ上の細胞を、80%のアセトン水溶液を用いて室温において5分間で固定した。細胞をその後リン酸緩衝生理食塩水(PBS,phosphate-buffered saline)、0.05%トゥイーン20で2回すすぎ、ブロッキングバッファー:PBS、0.05%トゥイーン20、5%正常ヤギ血清(NGS,Normal Goat Serum, Sigma社製)で少なくとも1時間ブロッキングした。1次抗体を添加し、ブロッキングバッファー中で室温で1時間置き、0.05%トゥイーン20のPBSを用いて3回洗浄し、ブロッキングバッファー中でローダミン結合二次抗体と共に室温において30分間インキュベートした。もう1度洗浄した後で、核を0.2μg/ml Hoechst 33258を用いて、5分間染色し、4回洗浄し、分析した。画像を、Sonyの3CCDカラービデオカメラにつないだOlympus AX70蛍光顕微鏡を用いて、Analysis(登録商標)ソフトウェア(Soft Imaging System, Corp.社製)により動作させて得た。DCLタンパク質分布をマッピングするために、ED9、10及び11の胚CD1マウス胚をPBSで簡単に洗浄し、その後メタノール/アセトン/水(40:40:20)(MAW, Franco et al, 2001)で室温において4時間固定し、その後パラプラストプラス(Paraplast Plus)(Kendall, Tyco Healthcare社, Mansfield, MA 02048, USA)に埋め込む前に70%のエタノール中で2週間保存し、その後6μmの厚さの切片をスーパーフロストプラススライド(Superfrost Plus slide)(Menzel-Glaser社製)に取り付けた。TBSを以下の全てのステップにおいて洗浄バッファーとして使用した。キシレン及び等級の付いたエタノールできれいにした後、切片をブアンの固定液(Bouin's fixative)で、洗浄前に後固定し、0.1%の過酸化水素処理を15分間行うことによって内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックした。特異的結合を減らすために、1%のミルクパウダーPBS溶液(Campina社製、The Netherlands)を30分間用いた。一次DCL抗体を、0.25%ゼラチン/0.5%トリトンX−100のTBS溶液(Supermix)に1:50で、室温において1時間、その後4℃において一晩用いた。二次抗体(ビオチン化、抗ウサギ、Amersham Life Sciences社製、1:200)のインキュベーションを、Supermix中で室温において1時間30分行い、アビジン―ビオチン(ABC)Elite(Vector Laboratories社製, Burlingame)、ビオチン化チラミド(1:500)0.01%過酸化物液を用いて30分間増幅させその後さらに45分間ABCを用いてインキュベートした。最後に0.05M トリス HClバッファー(pH7.6)で2回洗浄し、0.05M トリス HClバッファーをジアミノベンジジン(DAB)(0.05M)の溶解にもさらに使用した。切片を、クレシルバイオレットを用いて対比染色し、エンテラン(Entellan)(Merck社製)にカバースリップをのせた。
【0093】
比較のために、DCXタンパク質の分布もまた、隣接する切片で、C−18ダブルコルチン特異性抗体(Santa Cruz Biotechnology社, South Cruz CA, USA)を1:75の希釈で使用してマッピングした。ミルクパウダー溶液中でのブロッキングステップを省略し、ビオチン化抗ヤギ抗体を二次抗体としたことを除いて、上記と同じプロトコルを使用した。
【0094】
9.7タンパク質の抽出及びウェスタンブロット
マウスの組織及び細胞を、コンプリート(Complete(商標))EDTAを含まないプロテアーゼ阻害剤混合物( Roche Molecular Biochemicals社製)を添加した溶解バッファー(20mMトリエタノールアミンpH7.5、140mM NaCl、0.05%デオキシコール酸塩、0.05%ドデシル硫酸ナトリウム、0.05%トリトンX100)を用いて可溶化し、16000gで30分間遠心分離機にかけた。上清を回収し、ピアス法(Pierce method)を使用してタンパク質濃度を測定した。等量のタンパク質をSDS-PAGEにより分離し、イモビロン(immobilon)−P PVDF膜(Millipore社製)に転写した。ブロットを、ブロッキングバッファー(トリス−緩衝生理食塩水、0.2%トゥイーン20(TBST)、5%ミルク)を用いて1時間ブロッキングし、一次抗体と共にブロッキングバッファー中で1時間インキュベートし、TBSTを用いて3回洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体と共に、ブロッキングバッファー中で30分間インキュベートし、TBSTを用いて3回洗浄した。抗体の結合をECL(Amersham Pharmacia Biotech社製)により検出した。
【0095】
9.8ホスファターゼ処理
DCLを形質移入した、及び形質移入しないN1E−115細胞を、コンプリート(Complete(商標))EDTAを含まないプロテアーゼ阻害剤混合物(Roche Molecular Biochemicals社製)を添加した溶解バッファー(50mMトリス−HCl pH 9.3、1mM MgCl2、0.1mM ZnCl2、1mMスペルミジン)を用いて可溶化し、16000gで30分間遠心分離機にかけた。上清を回収し、ピアス法(Pierce method)を使用してタンパク質濃度を測定した。各上清を50μgのタンパク質を含む3つの試料に分割した。第1の試料を未処理、第2の試料を、酵素を加えずに37℃において30分間インキュベートし、第3の試料を、10単位の仔牛小腸アルカリホスファターゼ(Calf Intestinal Alkaline Phophatase)(Promega Bioscience, Inc.社製)と共にインキュベートした。試料を上記のようにウェスタンブロットにより分析した。
【0096】
9.9チューブリン重合試験
cDNAをコードするDCLを、pcDNA3.1発現コンストラクト及びpET28への再連結体から、BamH1及びEcoR1を使用して切り離した。得られたDCLの発現コンストラクトを、BL21細胞に形質移入した。単一コロニーを500mlのLB中でOD0.7まで成長させ、その時点でIPTGを添加し、最終濃度を0.4mMにした。導入の3時間後、細菌を回収し、PBSを用いて洗浄し、ペレットにした。組み換えDCLタンパク質を、ペレットを再懸濁し、それをフレンチプレス(French press)に通すことによって単離し、その後製造業者の指示に従ってプロボンド(Probond)(Invitrogen社製)Ni2+親和性樹脂を使用して精製した。精製DCLを、Centricon 30濃縮装置を使用して、0.8mg/mlに濃縮した。チューブリン重合試験を、Gleesonら(Gleeson et al., 1999, 上記)に従って、Cytoskeleton社のチューブリン重合試験キット(カタログ番号BK006)を使用して実施した。手短に言うと、1mgのチューブリンを、製造業者の指示に従って1.1mlの氷冷重合バッファーに溶解し、このうち100μlを、10μlの様々な濃度のDCLタンパク質に、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて加えた。その後、340nmにおける吸収を、HTS2000(Biorad/Perkin Elmer社製)を使用して、30分間、30秒おきに測定した。
【図面の簡単な説明】
【0097】
[図1]DCLのゲノム構成及びDCXとのアラインメントの図である。
【図1a】(A):DCLK遺伝子のゲノム構成及びDCL cDNAのクローン化戦略。最近特定された、CARP及びDCLに共通の3’末端をコードするエクソン8(Vreugdenhil et al., 2001, 上記)を含む、DCL部のエクソン−イントロン構造のみを示す。エクソンは、長方形で表し、アラビア数字で示し、イントロンは実線である。DCL転写産物は、(DCL)のゲノム構造の下に示す。ORFは、長方形で、非翻訳配列は線で表す。DCLのクローン化に使用するプライマーの位置は矢印で示す。
【図1b】(B):DCLタンパク質とDCXとのアラインメント。同一残基は、暗い灰色、保存された置換は明るい灰色である。2つのDCXドメイン及びSPに富むドメインを矢印で示す。
【図2】DCLがM.A.Pであり、微小管を安定化させる図である。
【0098】
パネルI
(A〜C)COS−1細胞におけるDCLの過剰発現。
(D〜F)コルヒチンを用いて処理したCOS−1細胞におけるDCLの過剰発現。
緑はDCLを表す。赤はα−チューブリンを表し、黄色はDCLとα−チューブリンとの共局在を示す。青はDNA(核)を表す。矢印は、コルヒチン処理に耐性のある微小管束に随伴するDCLを表す。A及びBにおいて、中心体の明らかな随伴にも留意されたし。スケールバーは、10μmである。
【0099】
パネルII
DCLによるインビトロの微小管の重合。異なる濃度の組み換えDCLタンパク質を、精製チューブリンと共にインキュベートし、DCL/チューブリン混合物の濁度を340nmで30分観察した。タクソールを陽性対照として、水を陰性対照として使用した。グラフは、結果が同様であった複数の実験(N=4)からの典型的な例を示す。
【図3】DCLの発現が発展的に制御される図である。
【0100】
(A):抗体を認識するDCXとDCLKとの交差反応性。抗DCX(上方パネル)又は抗DCLK(下方パネル)によりDCL(レーン4〜6)又は2つの異なるDCX変異体(レーン2及び3)を過剰発現するCOS−1細胞の溶解物のウェスタンブロット分析。
【0101】
(B):胚形成期におけるDCL及びDCXタンパク質の発現。日齢ED8〜ED18の胚脳画分及び成熟脳の免疫ブロットを、抗DCLK及び抗DCXを用いて染色した。CARP/DCL抗体のための陽性対象として、DCLを過剰発現するCOS−1細胞の抽出物を使用した。
【0102】
(C):様々な成熟脳領域におけるDCL及びDCXのウェスタンブロット分析。1:ED12の頭(陽性対照)、M:分子量マーカー、2:小脳、3:脳幹、4:視床下部、5:大脳皮質、6:海馬、7:嗅球。
【0103】
[図4]胚脳においてDCL発現が局在及び発生する図である。
【図4(I)】I:胚期(ED)8日目(パネルA)の脳の横断面のインサイツのハイブリッド形成及びED10及びED12における矢状断面(それぞれパネルB及びC)。ED8及びED10について、シグナルは低いが、ED12において大幅に増加した。略称:di-間脳(diencephalon)、lv−側脳室(lateral ventricle)、me−中脳(mesencephalon);mo−延髄(medulla oblongata)、mt−小脳(metencephalon)、mv−中脳胞(mesenchephalic vesicle)、nc−新皮質(neopallial cortex)、ne−神経上皮(neuroepithelium)、rh−菱脳(rhombencephalon)、te−終脳(telencephalon)、tv−終脳胞(telencephalic vesicle)、IV v−第4脳室(4th ventricle)。スケールバー:1mm;曝露時間:14日)。
【図4(II)】II:初期マウス神経上皮におけるDCLタンパク質の分布。
【0104】
A:ED11におけるDCLタンパク質の分布(矢状断面)。染色は増殖領域に限定され(左側及び右側がそれぞれ終脳及び間脳)、軟膜(pia)に近接する外層並びに内部脳室域に染色が見出される(矢頭:下の高度な拡大図をさらに参照されたし)、一方第一鰓弓の下顎の要素(M)などの非神経組織は、どのようなシグナルもない。IV:第4脳室、バーは150μmを表す。
【0105】
B+C:DCX(B)及びDCL(C)に関して免疫染色した、ED9における初期神経上皮からの隣接する横(冠状)断面。DCXの染色は観察されないが(Bにおける矢頭)、DCLは内部上衣(上の2つの矢印)と外部辺縁部(下の矢印)の両方においてすでに発現している。バーは25μmを表す。
【0106】
D:ED11における神経管の神経上皮の矢状断面であり、内腔の境(矢頭)で豊富な発現を示し、一方発達中の神経組織、単離分裂細胞は同様に免疫陽性である(矢印)。Lは神経管の神経内腔を示す。バーは70μmを表す。
【0107】
E:神経上皮におけるDCL免疫陽性有糸分裂細胞の詳細。正中開裂面に向かう染色体(矢頭)が明らかである。バーは3μmを表す。
【0108】
F:ED10における終脳の神経上皮の概観であり、脳室(上衣)層(左側の矢頭)及び辺縁/皮質板帯(右側の矢頭)上においてDCLの発現を示す。中間帯における分裂細胞の2つの免疫陽性ダブレット(矢印)を見ることができる。バーは、15μmを表す。
【0109】
G+H:皮質神経上皮の横断面であり、分化した、まだ部分的に重複した、DCX及びDCLの分布を例示している。DCXは、ED11まで発現せず(G)、主に皮質神経上皮の皮質板及び辺縁/皮質板領域(矢印)の最上部において発現する。対照的に、DCLはED9においてすでに発現し(H)、特に脳室(上衣)層において高レベルであり(左側の矢頭)、中間帯及び辺縁帯において低レベルである(右側の矢頭)。脳室層(Gにおける星印)がDCXのシグナルを欠いていることに留意されたし。バーは5μmを表す。
【0110】
I:ED9における脳室帯の上衣層の詳細であり、神経上皮から中間帯へ伸長した繊維におけるDCLの発現を示している(矢印)。バーは12μmを表す。
【0111】
J:上衣層の詳細であり、内腔に隣接する、終期(左)、後期(中間)の分裂神経上皮細胞において明らかな免疫活性を示し、一方前期半ばのDCL陽性細胞が、内腔(右)から離れて移動しながら垂直に分裂して出現するのを(矢頭)見ることができる。バーは8μmを表す。
【0112】
K:ED11における上衣層、前期及び終期の細胞(矢頭)、並びに中期/後期の芽球様細胞(矢印)におけるDCL免疫反応性。バーは、10μmを表す。
【0113】
L:上衣層における2個のDCL免疫陽性有糸分裂細胞であり、中心体様構造(下の矢印)においてもさらに激しい免疫反応性を示している。バーは1.5μmを表す。
【0114】
M+N:後期II/終期II(M)及び中期/後期Iにある、2個のDCL免疫陽性の分裂細胞の例であり、染色体がはっきり見ることができ(矢印)、同時にいくつかの微小管染色が観察される(矢頭)。バーは1μmを表す。
【0115】
[図5]神経芽細胞腫細胞におけるDCL発現の図である。
【図5】パネルI:A:DCLは、いくつかの神経芽細胞腫細胞系において内因性の発現をする。DCL陽性細胞系に関する、ウェスタンブロット分析によるスクリーニング。レーン1:COS−1細胞、レーン2:Hela細胞、レーン3:NG108−15細胞、レーン4:NS20Y細胞、レーン5:N1E−115細胞、レーン6:分子量マーカー、レーン7:SHSY5細胞。DCLが神経芽細胞腫細胞系において発現する(レーン3、4、5及び7)が、非神経起源由来の細胞系においては発現しない(レーン1及び2)ことに留意されたし。
【0116】
B:DCLはリンタンパク質である。抗DCLを用いて染色したNG108−15の溶解物。レーン1:未処理溶解物、レーン2:ホスファターゼなしで37℃においてインキュベートした溶解物、レーン3:ホスファターゼと共に37℃においてインキュベートした溶解物。レーン4〜6は1〜3と同様であるが、DCLは過剰発現である。レーン4〜6において内在性DCLが、過剰発現したDCLと一緒に共移動することに留意されたし。
【0117】
パネルII:
2連で実施した、siRNA処理を施したN1E−115細胞(1〜3)及び施さなかった細胞(4)において発現したDCLのウェスタンブロット分析。DCLを標的とする3種の異なるsiRNA分子:siDCL−1(レーン1)、siDCL−2(レーン2)及びsiDCL−3(レーン3)を使用した。siDCL−2及びsiDCL−3が効果的にノックダウンを引き起こす一方、siDCL−1は同様にはできかったことに留意されたし。対照として、同じ膜をα−チューブリンを用いて再染色した。
【0118】
パネルIII:
DCLのノックダウンにより、中間期に微小管細胞骨格の弛緩を引き起こす。抗DCLK(緑)染色は、斑紋型を含み、これらは未処理細胞(A〜C)において核の近くで最も顕著である(A)。このパターンは、siDCL−1(D)には影響されないが、抗DCLKはsiDCL−3によりノックダウンされた有効なDCLによっては、殆ど染色されない(G)。α−チューブリン染色(B、E及びH)により示されるように、細胞骨格は未処理細胞(B)及びsiDCL−1を用いて処理した細胞(E)において、良好な迷路構造を有するが、siDCL−3により非常に弛緩している。DCL及びα−チューブリン染色を統合した図により、未処理細胞(C)、siDCL−1を形質移入した細胞(F)及びsiDCL−3を形質移入した細胞(I)を示す。緑=DCL、赤=α−チューブリン、黄色=DCL及びα−チューブリンの共局在。スケールバーは10μmである。
【図5(IV)】パネルIV: DCLノックダウンは中心体の構造に影響を与えない。抗γチューブリン染色(B、E及びH)により示されるように、斑紋型抗DCLK染色(A、D、G)は、中心体の周りに非常に集中しており(A、D)、DCLの効果的ノックダウン(G)は、中心体の構造又は形態に明らかな変化を引き起こさない(I)。未処理細胞(C)、siDCL−1を形質移入した細胞(F)及びsiDCL−3を形質移入した細胞(I)の、DCL及びα−チューブリン染色を統合した図を示す。緑=DCL、赤=γ−チューブリン、黄色=DCL及びγ−チューブリンの共局在。スケールバーは10μmである。
【図6】DCLのノックアウトが紡錘体の変形を引き起こす図である。未処理細胞(A〜C)において、DCL(A)はα−チューブリン(B)と大いに共局在する。統合図(C)は、DCLが動原体に存在することを示す(矢印)。siDCL−1を形質移入する(D〜F)ことにより、DCLのノックダウンは引き起こされず(D)、α−チューブリン染色によって示されるように紡錘体の形態もまた変化しなかった(E)。siDCL−2による効果的なDCLのノックダウン(G〜I)又はsiDCL−3による効果的なDCLのノックダウン(J〜L)は、α−チューブリン染色により示されるように、DCLの消失(G、J)及び紡錘体の消失(H)及び変形(K)を引き起こす。緑=DCL、赤=α−チューブリン、黄色=DCL及びα−チューブリンの共局在。スケールバーは10μmである。
【図7】分裂COS−1細胞におけるDCLの過剰発現の図である。
【0119】
A〜C:DCLの過剰発現の免疫細胞化学的分析。α−チューブリンを用いて染色した正常な分裂COS−1細胞を対照(ref)として示す。DCLの過剰発現(緑、A)は、α−チューブリンを用いた共染色により示されるように紡錘体の伸長を引き起こす(B)。矢印で示すように、形質移入された細胞と形質移入しなかった細胞の紡錘体の長さの違いに留意されたし。DNAはDAPI(青)を用いて染色する(青)。
【0120】
D〜I:細胞分裂期のCOS−1細胞におけるDCLの過剰発現の共焦点顕微鏡検査。1つの表現型が、DCL(D)がα−チューブリンと大いに共局在する(E)野生型COS−1細胞に似ている(D〜F)。分裂N1E−115細胞におけるDCLの内因性局在と同様に、DCLは動原体にもまた局在化する。DCLの局在は緑で示し、これはα−チューブリン染色(赤)により示されるように紡錘体と重複する。観察された他の表現型は、紡錘体の伸長及び配向性の変化を引き起こす(G〜I)。緑=DCL(A、D、G)、赤=α−チューブリン(B、E、H)、黄色=DCL及びα−チューブリンの共局在(C、F、I)。スケールバーは10μmである。
【0121】
[配列表]
Dcl 及び DCL配列
[配列番号1]
ccacgcgtcc gcggagaacc gcatttcaat gaggaccagc tccagcgcat cagtgcacta
gcggtcgcag cttccagacg ctcgtgctcc gcagccccag ccgcgcccag cccggcgagg
acagctccag cagccggcca cagacaaccc agcctccacc cgcgaccggt tccataagca
agccagccat gtcgttcggc agagatatgg agttggagca ttttgatgag cgggacaagg
cgcagaggta cagcaggggg tcccgtgtga atggcctgcc cagccccaca cacagcgccc

actgcagctt ctaccgcacc cgcaccctgc agacactcag ctccgagaag aaagccaaga
aggttcgatt ctacagaaat ggtgaccgct acttcaaagg aattgtgtat gccatctccc
cagaccgctt cagatctttc gaggccctgc tggctgattt gacccgaact ctctcggata
atgtgaattt gccccagggg gtgagaacca tctacaccat cgatggactc aagaagatct
ccagcctgga ccagctggtg gaaggtgaaa gctatgtctg cggctccatc gagcccttta
agaagctgga gtacaccaag aatgtgaacc ccaactggtc agtgaacgtc aagaccacct
cagcctcccg cgcagtgtct tctttggcca ctgccaaggg tgggccttcg gaggttcggg
agaataagga tttcattcga cccaagctgg tcaccatcat cagaagtggg gtgaagccac
ggaaggctgt cagaatcctg ctgaacaaga agacggctca ctccttcgag caggttctca
ctgacattac cgacgctatc aagctggact ccggtgtggt gaagcgcctg tacactctgg
atgggaagca ggtgatgtgc cttcaggact tttttggtga cgatgacatt tttattgcat
gtggaccaga gaagttccgt taccaggatg atttcttgct agatgaaagt gaatgtcgag
tggtgaaatc aacttcttac accaaaatag catcagcgtc ccgcagaggc acaaccaaga
gcccaggacc ttcccggaga agcaagtccc cagcctccac cagctcagtt aatggaaccc
ctggtagtca gctctctact ccacgctcgg gcaagtcacc aagtccatca cccaccagcc
caggaagcct gcggaagcag agggacctgt accgccccct ctcgtcggat gatttggact
caggagactc agtgtaagaa ttc

[配列番号2]
gcacatccct gcactagtgg ccgcaaccga gacgccgcgc tccagcagct gctgccgccc
agcccggccc cgccgccgcc ccccagccct gcagccccgc agccccggcc gcgcccagcc
cggcgaggac agcaccagga ggcggccccc agcgcggcca caaagacccc cggcggcgtc
tctccgcgga ccggtcctac ttgaagtcca tcatgtcctt cggcagagac atggagctgg
agcacttcga cgagcgggat aaggcgcaga gatacagccg agggtcgcgg gtgaacggcc
tgccgagccc gacgcacagc gcccactgca gcttctaccg cacccgcacg ctgcagacgc
tcagctccga gaagaaggcc aagaaagttc gtttctatcg aaacggagat cgatacttca
aagggattgt gtatgccatc tccccagacc ggttccgatc ttttgaggcc ctgctggctg
atttgacccg aactctgtcg gataacgtga atttgcccca gggagtgaga acaatctaca
ccattgatgg gctcaagaag atttccagcc tggaccaact ggtggaagga gagagttatg
tatgtggctc catagagccc ttcaagaaac tggagtacac caagaatgtg aaccccaact
ggtcggtgaa cgtcaagacc acctcggctt ctcgggcagt gtcttcactg gccactgcca
aaggaagccc ttcagaggtg cgagagaata aggatttcat tcggcccaag ctggtcacca
tcatcagaag tggcgtgaag ccacggaaag ctgtcaggat tctgctgaac aagaaaacgg
ctcattcctt tgagcaggtc ctcaccgata tcaccgatgc catcaagctg gactcgggag
tggtgaaacg cctgtacacg ttggatggga aacaggtgat gtgccttcag gacttttttg
gtgatgatga catttttatt gcatgtggac cggagaagtt ccgttaccag gatgatttct
tgctagatga aagtgaatgt cgagtggtaa agtccacttc ttacaccaaa atagcttcat
catcccgcag gagcaccacc aagagcccag gaccgtccag gcgtagcaag tcccctgcct
ccaccagctc agttaatgga acccctggta gtcagctctc tactccgcgc tcaggcaagt
cgccaagccc atcacccacc agcccaggaa gcctgcggaa gcagagggac ctgtaccgcc
ccctctcttc ggatgacttg gattcagtag gagactcagt gtaaaagaaa

[配列番号3]
Met Ser Phe Gly Arg Asp Met Glu Leu Glu His Phe Asp Glu Arg Asp
1 5 10 15


Lys Ala Gln Arg Tyr Ser Arg Gly Ser Arg Val Asn Gly Leu Pro Ser
20 25 30


Pro Thr His Ser AlaHis Cys Ser Phe Tyr Arg Thr Arg Thr Leu Gln
35 40 45


Thr Leu Ser Ser Glu Lys Lys Ala Lys Lys Val Arg Phe Tyr Arg Asn
50 55 60


Gly Asp Arg Tyr Phe Lys Gly Ile Val Tyr Ala Ile Ser Pro Asp Arg
65 70 75 80


Phe Arg Ser Phe Glu Ala Leu Leu Ala Asp Leu Thr Arg Thr Leu Ser
85 90 95


Asp Asn Val Asn Leu Pro Gln Gly Val Arg Thr Ile Tyr Thr Ile Asp
100 105 110


Gly Leu Lys Lys Ile Ser Ser Leu Asp Gln Leu Val Glu Gly Glu Ser
115 120 125


Tyr Val Cys Gly Ser Ile Glu Pro Phe Lys Lys Leu Glu Tyr Thr Lys
130 135 140


Asn Val Asn Pro Asn Trp Ser Val Asn Val Lys Thr Thr Ser Ala Ser
145 150 155 160


Arg Ala Val Ser Ser Leu Ala Thr AlaLys Gly Gly Pro Ser Glu Val
165 170 175


Arg Glu Asn Lys Asp Phe Ile Arg Pro LysLeu Val Thr Ile Ile Arg
180 185 190


Ser Gly Val Lys Pro Arg Lys Ala Val Arg Ile Leu Leu Asn Lys Lys
195 200 205


Thr Ala His Ser Phe Glu Gln Val Leu Thr Asp Ile Thr Asp Ala Ile
210 215 220


Lys Leu Asp Ser Gly Val Val Lys Arg Leu Tyr Thr Leu Asp Gly Lys
225 230 235 240


Gln Val Met Cys Leu Gln Asp Phe Phe Gly Asp Asp Asp Ile Phe Ile
245 250 255


Ala Cys Gly Pro Glu Lys Phe Arg Tyr Gln Asp Asp Phe Leu Leu Asp
260 265 270


Glu Ser Glu Cys Arg Val Val Lys Ser Thr Ser Tyr Thr Lys Ile Ala
275 280 285


Ser Ala Ser Arg Arg Gly Thr Thr Lys Ser Pro Gly Pro Ser Arg Arg
290 295 300


Ser Lys Ser Pro AlaSer Thr Ser Ser Val Asn Gly Thr Pro Gly Ser
305 310 315 320


Gln Leu Ser Thr Pro Arg Ser Gly Lys Ser Pro Ser Pro Ser Pro Thr
325 330 335


Ser Pro Gly Ser Leu Arg Lys Gln Arg Asp Leu Tyr Arg Pro Leu Ser
340 345 350


Ser Asp Asp Leu Asp Ser Gly Asp Ser Val
355 360


[配列番号4]
Met Ser Phe Gly Arg Asp Met Glu Leu Glu His Phe Asp Glu Arg Asp
1 5 10 15


Lys Ala Gln Arg Tyr Ser Arg Gly Ser Arg Val Asn Gly Leu Pro Ser
20 25 30


Pro Thr His Ser AlaHis Cys Ser Phe Tyr Arg Thr Arg Thr Leu Gln
35 40 45


Thr Leu Ser Ser Glu Lys Lys Ala Lys Lys Val Arg Phe Tyr Arg Asn
50 55 60


Gly Asp Arg Tyr Phe Lys Gly Ile Val Tyr Ala Ile Ser Pro Asp Arg
65 70 75 80


Phe Arg Ser Phe Glu Ala Leu Leu Ala Asp Leu Thr Arg Thr Leu Ser
85 90 95


Asp Asn Val Asn Leu Pro Gln Gly Val Arg Thr Ile Tyr Thr Ile Asp
100 105 110


Gly Leu Lys Lys Ile Ser Ser Leu Asp Gln Leu Val Glu Gly Glu Ser
115 120 125


Tyr Val Cys Gly Ser Ile Glu Pro Phe Lys Lys Leu Glu Tyr Thr Lys
130 135 140


Asn Val Asn Pro Asn Trp Ser Val Asn Val Lys Thr Thr Ser Ala Ser
145 150 155 160


Arg Ala Val Ser Ser Leu Ala Thr AlaLys Gly Ser Pro Ser Glu Val
165 170 175


Arg Glu Asn Lys Asp Phe Ile Arg Pro LysLeu Val Thr Ile Ile Arg
180 185 190


Ser Gly Val Lys Pro Arg Lys Ala Val Arg Ile Leu Leu Asn Lys Lys
195 200 205


Thr Ala His Ser Phe Glu Gln Val Leu Thr Asp Ile Thr Asp Ala Ile
210 215 220


Lys Leu Asp Ser Gly Val Val Lys Arg Leu Tyr Thr Leu Asp Gly Lys
225 230 235 240


Gln Val Met Cys Leu Gln Asp Phe Phe Gly Asp Asp Asp Ile Phe Ile
245 250 255


Ala Cys Gly Pro Glu Lys Phe Arg Tyr Gln Asp Asp Phe Leu Leu Asp
260 265 270


Glu Ser Glu Cys Arg Val Val Lys Ser Thr Ser Tyr Thr Lys Ile Ala
275 280 285


Ser Ser Ser Arg Arg Ser Thr Thr Lys Ser Pro Gly Pro Ser Arg Arg
290 295 300


Ser Lys Ser Pro AlaSer Thr Ser Ser Val Asn Gly Thr Pro Gly Ser
305 310 315 320


Gln Leu Ser Thr Pro Arg Ser Gly Lys Ser Pro Ser Pro Ser Pro Thr
325 330 335


Ser Pro Gly Ser Leu Arg Lys Gln Arg Asp Leu Tyr Arg Pro Leu Ser
340 345 350


Ser Asp Asp Leu Asp Ser Val Gly Asp Ser Val
355 360

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌治療用組成物の調製のための、配列番号1若しくは2又は配列番号1若しくは2の変異体の核酸断片の使用であって、前記核酸断片は、配列番号3又は4のDCL−タンパク質の量を有意に減少させることができる使用。
【請求項2】
癌が神経外肺葉起源である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
神経芽細胞腫、髄芽細胞腫、グリア芽腫、希突起膠腫、希突起星細胞腫、星状細胞腫、神経線維腫、上衣腫、MPNST(悪性末梢神経鞘腫)、神経節細胞腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、網膜芽腫、小細胞肺癌、副腎髄質褐色細胞腫、未分化PNET(末梢性神経外肺葉性腫瘍)、ユーイング肉腫及び黒色腫の治療のための、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
核酸断片が、アンチセンスRNAオリゴヌクレオチド、アンチセンスDNAオリゴヌクレオチド及び/又は二本鎖低分子干渉RNAから選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
配列番号1若しくは2又は配列番号1若しくは2の変異体のセンス及び/又はアンチセンス核酸断片であって、前記核酸断片が、神経外肺葉起源の癌細胞に導入した場合に、配列番号3又は4のDCLタンパク質の量を有意に減少させることができることを特徴とするセンス及び/又はアンチセンス核酸断片。
【請求項6】
1種又は複数の請求項4に記載の核酸断片と、生理学的に許容される担体とを含む組成物。
【請求項7】
1種又は複数の標的化合物をさらに含み、前記標的化合物がインビボ又はインビトロで神経外肺葉起源の癌細胞を標的にすることができる、請求項1〜6いずれかに記載の組成物。
【請求項8】
標的化合物が、免疫リポソーム又はモノクロナール抗体である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
神経外肺葉起源の癌の治療に適している、請求項6〜8に記載の組成物。
【請求項10】
配列番号3のマウスダブルコルチン様タンパク質及び配列番号4のヒトダブルコルチン様タンパク質。
【請求項11】
a)対象の血清試料又は生検試料を、配列番号2のRNA又はDNAの有無、及び/又は配列番号4のDCLタンパク質の有無に関して分析するステップと、b)試料中に存在する配列番号2及び/又は配列番号4の量を定量化してもよいステップとを含む、神経外肺葉起源の癌を診断する方法。
【請求項12】
試料中の配列番号2及び/又は配列番号4の存在を検出できる、プライマー、プローブ及び/又は抗体、必要な追加の検出試薬、並びに使用説明書を含む、診断キット。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4(I)】
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【図4(II)】
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【図5】
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【図5(IV)】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−524426(P2009−524426A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552254(P2008−552254)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050025
【国際公開番号】WO2007/086738
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(506307304)プロセンサ ビー.ブイ. (2)
【Fターム(参考)】