ダンパー装置および構造物
【課題】小型軽量化が可能でかつエネルギー吸収性能に優れたダンパー装置、およびダンパー装置を備えた構造物を提供すること。
【解決手段】充填コンクリート13および鋼管12によって矩形芯材14の座屈が防止され、さらに芯材突条部17と規制凹溝部13Aとの凹凸嵌合により矩形芯材14の長辺方向(Y軸方向)への変形が防止される。従って、矩形芯材14がX軸方向に軸変形して軸降伏後も座屈することなく変形性能が確保できるので、大きな履歴減衰の発揮によるエネルギー吸収性能に優れたダンパー装置10が実現できる。矩形芯材14の長辺方向における充填コンクリート13のかぶり厚さが小さくても、芯材突条部17および規制凹溝部13Aによって矩形芯材14の変形が防止できることから、充填コンクリート13および鋼管12を大きくする必要がなく、ダンパー装置10の小型化および軽量化を図ることができる。
【解決手段】充填コンクリート13および鋼管12によって矩形芯材14の座屈が防止され、さらに芯材突条部17と規制凹溝部13Aとの凹凸嵌合により矩形芯材14の長辺方向(Y軸方向)への変形が防止される。従って、矩形芯材14がX軸方向に軸変形して軸降伏後も座屈することなく変形性能が確保できるので、大きな履歴減衰の発揮によるエネルギー吸収性能に優れたダンパー装置10が実現できる。矩形芯材14の長辺方向における充填コンクリート13のかぶり厚さが小さくても、芯材突条部17および規制凹溝部13Aによって矩形芯材14の変形が防止できることから、充填コンクリート13および鋼管12を大きくする必要がなく、ダンパー装置10の小型化および軽量化を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパー装置および構造物に関し、詳しくは、建築分野や土木分野、機械分野等における構造物や工作物の振動(地震や風等に起因するものや交通振動、機械振動等)を抑制するために用いられるダンパー装置、およびダンパー装置を備えた構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物や工作物の振動を抑制することを目的とした各種のダンパー装置が広く利用されている。このようなダンパー装置の一例として、建築物における地震や風の振動エネルギーを吸収するために利用されるブレースタイプのダンパー装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のダンパー装置は、建築物において柱および梁で囲まれた矩形枠内に配置されるもので、長尺板状の鋼製中心軸力部材と、その周囲を囲んで設けられる座屈拘束用のコンクリートと、このコンクリートの外周に設けられる鋼管とを有して構成されている。そして、鋼製中心軸力部材の周面とコンクリートとの間には、付着防止皮膜が設けられており、鋼製中心軸力部材の軸変形がコンクリートで拘束されないようになっている。このようなブレースタイプのダンパー装置では、地震動を受けて建築物の各階に層間変形が生じた場合に、鋼製中心軸力部材が軸力を負担して軸降伏することで、つまり弾塑性の応力−変形関係(履歴ループ)に沿って挙動することで、履歴ループに応じたエネルギー吸収(履歴減衰)能力が発揮され、建築物における地震時や強風時の振動低減が実現可能になっている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−343116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1に記載された従来のダンパー装置では、鋼製中心軸力部材の周囲に座屈拘束用のコンクリートおよび鋼管が設けられることで、圧縮力を受けて軸変形した鋼製中心軸力部材の面外方向への座屈が防止でき、大きな変形領域においても安定した履歴減衰性能が確保できるようになっている。この際、鋼製中心軸力部材の断面積が大きい方が履歴減衰エネルギーも大きくなり、建築物における振動低減効果を向上させることができ、また、鋼製中心軸力部材の断面積や幅寸法に対してコンクリートが十分に大きな断面を有していれば、コンクリートによる座屈拘束機能が発揮できる。しかしながら、鋼製中心軸力部材の断面積を大きくすると、コンクリートの断面も大きくなり、ダンパー装置が大型化して重くなってしまうという不都合が生じる。
一方、鋼製中心軸力部材に対してコンクリートの断面を相対的に小さくすると、座屈拘束機能が十分に発揮できなくなってしまうという問題が生じる。すなわち、鋼製中心軸力部材の断面における板厚方向に関しては、コンクリートのかぶりが大きくかつ拘束面積も大きいので、座屈拘束力はさほど低下せず、コンクリートのかぶりや拘束面積が小さくなる板厚直角方向に関し、座屈拘束力の低下が顕著に現れることが本件出願人の鋭意研究によって判明した。
【0005】
本発明の目的は、小型軽量化が可能でかつエネルギー吸収性能に優れたダンパー装置、およびダンパー装置を備えた構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のダンパー装置は、構造物において互いに相対移動が生じうる一対の対象位置の間に取り付けられ、当該相対移動に伴って減衰力を発揮するダンパー装置であって、前記一対の対象位置同士を結ぶ第1軸に沿った長尺状に形成されるとともに、前記第1軸に直交する第2軸に沿って長い一対の長辺および当該第1軸および第2軸に直交する第3軸に沿って短い一対の短辺からなる矩形断面を有した矩形芯材と、前記第1軸に沿った前記矩形芯材の両端部に結合されて前記一対の対象位置に固定される一対の固定部と、前記矩形芯材の周囲を囲んで前記第1軸と交差する方向への当該矩形芯材の座屈を規制する座屈規制手段と、前記矩形芯材と前記座屈規制手段との付着を防止して前記第1軸に沿った当該矩形芯材の軸変形を許容する付着防止手段と、前記矩形芯材の一対の長辺のうちの少なくとも一方と前記変形規制手段との間に設けられて当該矩形芯材の長辺に沿った変形を防止する変形防止手段とを備え、前記対象位置間に相対移動が生じた際に、前記付着防止手段を介して前記座屈規制手段により座屈が規制され、かつ前記変形防止手段により長辺方向への変形が規制された状態で、前記矩形芯材が前記第1軸に沿った方向に軸変形し、この軸変形に応じた減衰力が発揮されることを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、座屈規制手段により矩形芯材の座屈変形を規制するとともに、付着防止手段を介することで矩形芯材の軸変形を拘束しないことで、矩形芯材が第1軸に沿った方向に軸変形して減衰力が発揮でき、エネルギー吸収性能の優れたダンパー装置が実現できる。特に、座屈規制手段による座屈拘束力が小さくなりやすい矩形芯材の長辺方向の変形を、変形防止手段によって防止したことで、座屈規制手段による座屈拘束力を過度に高めなくても矩形芯材の変形性能が確保でき、座屈規制手段を小型化してダンパー装置の軽量化を図ることができる。
ここで、従来のダンパー装置において、座屈規制手段を小型化すると矩形芯材の長辺方向に関する座屈拘束力が小さくなり、矩形芯材に圧縮力が作用した際に、図11に示すように、矩形芯材14がその断面長辺方向に変形することがある。特に、矩形芯材14の両端の固定部15に曲げモーメントMが作用する場合には、矩形芯材14が曲げ変形しやすく、このような曲げ変形が生じた状態で圧縮軸力を受けると矩形芯材14が容易に座屈し、軸力を負担することができずにエネルギー吸収性能が極端に低下してしまう。
これに対して、本願のダンパー装置では、矩形芯材の長辺方向への変形が防止されることで、負担軸力を保持しつつ大きな軸変形領域まで安定した履歴ループを描くことができ、エネルギー吸収性能を向上させることができる。
【0008】
この際、本発明のダンパー装置では、前記変形防止手段は、前記矩形芯材の長辺表面から突出するとともに前記第1軸に沿って延びる芯材突条部と、この芯材突条部を挿入可能に前記座屈規制手段に形成された規制凹溝部とで構成されるか、前記矩形芯材の長辺表面から凹むとともに前記第1軸に沿って延びる芯材凹溝部と、この芯材凹溝部に挿入可能に前記座屈規制手段に形成された規制突条部とで構成されるか、または前記矩形芯材の長辺表面から凹むとともに前記第1軸に沿って延びる芯材凹溝部と、この芯材凹溝部に対向して前記座屈規制手段に形成された規制凹溝部と、前記芯材凹溝部および規制凹溝部に挿入される介挿部材とで構成されていることが好ましい。
そして、前記芯材突条部を有して変形防止手段が構成される場合において、前記矩形芯材と前記芯材突条部とを合わせた断面積は、前記矩形芯材のみの断面積に対して1.7倍以下に設定され、前記芯材凹溝部を有して変形防止手段が構成される場合において、前記芯材凹溝部がない部分における前記矩形芯材の断面積は、前記矩形芯材から前記芯材凹溝部を減じた断面積に対して1.7倍以下に設定されていることが好ましい。
さらに、前記芯材突条部を有して変形防止手段が構成される場合において、前記芯材突条部の断面積は、前記矩形芯材の断面積に対して0.2倍以下に設定されていることがより好ましい。
【0009】
このような構成によれば、芯材突条部と規制凹溝部との嵌合、芯材凹溝部と規制突条部との嵌合、または芯材凹溝部および規制凹溝部と介挿部材との嵌合のいずれかの凹凸嵌合構造により、矩形芯材の長辺方向への変形を確実に防止することができる。そして、凹凸嵌合によって変形防止手段が構成されることで、比較的簡単かつ安価にダンパー装置を製造することができる。そして、矩形芯材に芯材突条部を加えた部分の断面積が矩形芯材自体の断面積に対して1.7倍以下(望ましくは、1.51倍以下)に設定されているので、矩形芯材に作用する軸力や軸変形に対する芯材突条部の影響を最小限に抑えることができ、軸降伏後の矩形芯材の変形性能を確保することができる。また、矩形芯材自体の断面積が矩形芯材から芯材凹溝部を減じた部分の断面積に対して1.7倍以下(望ましくは、1.51倍以下)に設定されているので、芯材凹溝部位置での負担軸力の低下を最小限に抑え、変形性能を確保することができる。
【0010】
また、本発明のダンパー装置では、前記変形防止手段は、前記第1軸に沿った前記矩形芯材の長手方向に連続して設けられるか、または前記矩形芯材の長手方向に沿って断続して設けられていることが好ましい。
さらに、本発明のダンパー装置では、前記矩形芯材の長手方向に沿って断続して設けられる前記変形防止手段は、少なくとも前記座屈規制手段の長手方向両端部までの位置を含んで設けられていることが好ましい。
さらに、本発明のダンパー装置では、前記変形防止手段は、前記座屈規制手段の長手方向両端部から当該座屈規制手段の長さ寸法の1/4だけ入った位置まで設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、座屈規制手段の端部から座屈規制手段の長さ寸法の1/4だけ入った位置、すなわち前述の図11のように、矩形芯材の両端の固定部に曲げモーメントMが作用した場合に矩形芯材の曲げ変形が大きくなる位置において、矩形芯材の変形を効率的に防止することができる。従って、構造物の対象位置に固定した設置状態における矩形芯材の座屈を確実に防止して、変形性能を確保することができる。
【0011】
さらに、本発明のダンパー装置では、前記変形防止手段は、前記矩形芯材の長辺における前記第2軸に沿った複数箇所に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、矩形芯材の長辺における複数箇所に分散して変形防止手段を設けることで、1箇所当たりの応力を低減させることができ、座屈規制手段をより一層小型化することができ、ダンパー装置の小型軽量化を促進させることができる。また、矩形芯材の長手方向における適宜な位置において、複数の変形防止手段を並列して設けることで、重点的に矩形芯材の変形防止が実現できる。
【0012】
また、本発明のダンパー装置では、前記矩形芯材は、普通鋼材よりも降伏点強度が低い鋼材から形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、矩形芯材に降伏点強度が低い鋼材、つまり低降伏点鋼(軟鋼、極軟鋼)を用いれば、小さな変形で軸降伏させるとともに、大変形領域まで安定した変形性能が確保でき、エネルギー吸収性能を一層高めることができる。
【0013】
また、本発明のダンパー装置では、前記座屈規制手段は、その内部に前記矩形芯材を収容可能な鋼管と、この鋼管内部に充填されたコンクリートまたはモルタルとを有して構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、鋼管と、この鋼管に充填するコンクリートやモルタルで座屈規制手段を構成することで、比較的容易かつ安価にダンパー装置を製造することができる。
【0014】
また、本発明のダンパー装置では、前記付着防止手段は、前記矩形芯材の表面と前記座屈規制手段との間に形成された空隙であるか、または前記矩形芯材の表面および座屈規制手段の一方に貼付けられて他方と摺接するシート体であることが好ましい。
ここで、前記空隙または前記シート体の厚さ寸法は、1mm以下に設定されていることが好ましい。
このような構成によれば、空隙やシート体によって矩形芯材と座屈規制手段との付着を確実に切るとともに、矩形芯材と座屈規制手段との距離が1mm以下(より好ましくは、0.5mm以下)に維持されることで、矩形芯材の座屈を確実に防止することができる。
さらに、前記付着防止手段がシート体である場合に、前記変形防止手段と前記座屈規制手段との間における前記シート体が省略されていることが好ましい。
このような構成によれば、変形防止手段と座屈規制手段との間にシート体が介在しないことで、矩形芯材の長辺方向に沿った変形防止手段の微少な移動をも座屈規制手段によって規制することができる。
【0015】
また、本発明のダンパー装置では、前記固定部は、前記矩形芯材の端部が前記長辺方向に拡大された第1固定板部と、この第1固定板部の両面に固定されて前記第3軸に沿って突出した第2固定板部とから断面十字形に形成され、前記第2固定板部における前記一対の対象位置と反対側の端部は、前記座屈規制手段の内部に所定長さ寸法だけ挿入され、前記変形防止手段は、前記矩形芯材の長辺表面から突出するとともに前記第1軸に沿って延びる芯材突条部と、この第1突条部を挿入可能に前記座屈規制手段に形成された規制凹溝部とで構成され、前記芯材突条部と、前記座屈規制手段の内部に挿入された第2固定板部の端部とは、所定距離だけ離隔して設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、矩形芯材から突出して形成された芯材突条部と固定部の第2固定板部とを離隔させる、つまり芯材突条部と第2固定板部とを連結しないことで、第2固定板部に作用する軸力が芯材突条部に直接伝達されることを防止し、第2固定板部と矩形芯材とで伝達される軸力に対する芯材突条部の影響を低減させることができる。
【0016】
一方、本発明の構造物は、前記いずれかのダンパー装置を備えたことを特徴とする。
このような構成によれば、前述と同様の作用効果を得ることができ、小型軽量化が可能でかつエネルギー吸収性能に優れたダンパー装置により、構造物の振動を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のような本発明によれば、矩形芯材の座屈を効果的に防止することができ、小型軽量化が可能でかつエネルギー吸収性能に優れたダンパー装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の構造物としての建物1における骨組みの概略構成を示す側面図である。図2および図3は、建物1に用いるダンパー装置10を示す側面図および断面図である。図4は、ダンパー装置10のダンパー装置本体11を示す側面図である。
図1において、建物1は、複数の柱2、柱2間に架設された各階の梁3、梁3や、梁3に支持された床、図示しない屋根や壁等を有して構成された建築物である。建物1の所定の階には、当該階における隣接する柱2の間および上下の梁3の間にブレースタイプのダンパー装置10が設置されている。具体的には、隣接する一方(図1の右側)の柱2の柱頭部分と上階の梁3との交差部、および他方(図1の左側)の柱2の柱脚部分と当該階の梁3との交差部に、それぞれ固定された上下のブラケット4間に渡ってダンパー装置10が取り付けられている。このようなダンパー装置10は、建物1において平面的に偏りがなく、かつ建物1の水平各方向に適宜な数だけ配置されていればよく、また建物1の高さ方向に関しては、負担せん断力が大きくなる下層階において上層階よりも設置個数が多いことが望ましい。そして、本実施形態では、上下のブラケット4がそれぞれ対象位置であり、地震等の水平力が建物1に作用した場合に、上下階が互いに左右にずれるような相対移動(層間変位)が生じ、この相対移動に対してダンパー装置10が減衰力を発揮するようになっている。
【0019】
図2〜図4に示すように、ダンパー装置10は、鋼材製で長尺状のダンパー装置本体11と、このダンパー装置本体11を囲んで設けられる円形の鋼管12と、この鋼管12の内部に充填される充填コンクリート13とを有して構成されている。これらの鋼管12および充填コンクリート13によって本発明の座屈規制手段が構成されている。
ダンパー装置本体11は、全体長尺状でかつ長方形の矩形断面を有した矩形芯材14と、この矩形芯材14の両端部に結合されてブラケット4に固定される一対の固定部15とを有して形成されている。矩形芯材14は、上下のブラケット4間を結ぶ第1軸としてのX軸に細長状で、かつX軸に直交する第2軸としてのY軸に沿って長い一対の長辺(幅寸法B)およびX軸およびY軸に直交する第3軸としてのZ軸に沿って短い一対の短辺(厚さ寸法t)からなる長方形板状断面を有している。このような矩形芯材14の周面には、シート体としての絶縁材16が貼り付けられている。この絶縁材16は、樹脂製の面状粘着テープなどから形成されており、その外表面は、摩擦係数が小さく(滑りやすく)なっており、充填コンクリート13と付着せず摺接可能に構成されている。すなわち、絶縁材16によって付着防止手段が構成されている。
【0020】
矩形芯材14の一対の長辺両面には、図3、図4に示すように、表面からY軸に沿って突出するとともにX軸に沿って延びる芯材突条部17が設けられている。そして、芯材突条部17と対向する充填コンクリート13には、芯材突条部17を挿入して凹凸嵌合する規制凹溝部13Aが形成されている。そして、芯材突条部17と規制凹溝部13Aとの間にも、前記シート体としての絶縁材16が設けられており、芯材突条部17は、規制凹溝部13Aに対してX軸方向に摺動可能で、Y軸方向には移動不能に構成されている。すなわち、これらの芯材突条部17と規制凹溝部13Aとによって矩形芯材14の長辺(Y軸方向)に沿った変形を防止する変形防止手段が構成されている。
【0021】
以上のような変形防止手段の形成手順としては、矩形芯材14と一体に芯材突条部17を形成するとともに、これらの表面を覆って絶縁材16を貼り付けておき、ダンパー装置本体11を鋼管12内部にセットしてから、充填コンクリート13を鋼管12内部に充填することで、芯材突条部17と絶縁材16を介して対向する規制凹溝部13Aが形成される。また、芯材突条部17のX軸方向両端部には、図示しないクッション材が設けられており、規制凹溝部13AのX軸方向両端部と芯材突条部17との間に適宜な間隔が形成され、互いに当接しないようになっている。
【0022】
一方、固定部15は、矩形芯材14の端部が長辺方向(Y軸方向)に拡大された第1固定板部15Aと、この第1固定板部15Aの両面に固定されてZ軸に沿って突出した第2固定板部15Bとから断面十字形に形成され、これらの第1および第2の固定板部15A,15Bがそれぞれブラケット4に添え板(スプライスプレート)を介してボルト−ナット接合されている。また、第2固定板部15Bにおけるブラケット4と反対側の端部は、鋼管12および充填コンクリート13の内部に所定長さ寸法だけ挿入されている。すなわち、固定部15は、ブラケット4との固定強度を確保するために矩形芯材14よりも十分に大きな断面積を有するとともに、第2固定板部15Bは、鋼管12および充填コンクリート13から露出した位置における矩形芯材14の横補剛材として機能するようになっている。そして、図4に示すように、第2固定板部15Bの端部と芯材突条部17との間には、隙間17Aが形成され、第2固定板部15Bと芯材突条部17とが直接連結されないようになっている。
【0023】
以上のダンパー装置本体11では、矩形芯材14と固定部15とが同種、同強度の鋼材(例えば、強度が400N/mm2 程度の普通鋼材)から形成されていてもよく、また、矩形芯材14と固定部15とが異種、異強度の鋼材から形成されていてもよい。例えば、矩形芯材14は、普通鋼材と比較して強度および降伏点強度が半分程度の低降伏点鋼(極軟鋼)で形成され、一方、固定部15が、普通鋼材や、普通鋼材よりも強度が高い高強度鋼材(例えば、強度が490N/mm2 程度以上の高張力鋼)で形成されていてもよい。すなわち、矩形芯材14は、建物1に層間変位が生じた際に軸変形するとともに軸降伏することで減衰力を発揮するようになっており、このような軸変形(軸降伏)時の軸力をブラケット4を介して柱2や梁3に適正に伝達するためには、固定部15が弾性状態であることが望ましく、従って、矩形芯材14に比較して強度が高い鋼材で固定部15を形成することで、ダンパー装置10と建物1間における応力伝達機構が確保しやすくなる。
【0024】
以上のようなダンパー装置10では、ダンパー装置本体11が軸変形した際に、矩形芯材14に生じる軸力が充填コンクリート13や鋼管12に伝達されないため、地震等の水平力としての荷重を負担する機構としては、ダンパー装置本体11のみが有効となる。そして、充填コンクリート13および鋼管12によって矩形芯材14のX軸と交差する方向への変形が防止され、特に、矩形芯材14の長辺方向(Y軸方向)への変形が芯材突条部17と規制凹溝部13Aとの凹凸嵌合によって防止されることから、矩形芯材14に座屈が発生しない、あるいは発生しにくくなっている。従って、軸降伏した後の履歴ループが安定したものとなって、矩形芯材14によって大きな履歴エネルギーが吸収される。このようなダンパー装置10によるエネルギー吸収、すなわち減衰力が発揮されることで、建物1の水平応答(地震や風による揺れ)が低減できるようになっている。
【0025】
なお、ダンパー装置における変形防止手段としては、前述のような構造に限らず、以下の図5〜図8に示す構造であってもよい。
図5および図6は、それぞれ本実施形態の変形例に係るダンパー装置10のダンパー装置本体11A,11Bを示す側面図である。図7は、本実施形態の変形例に係るダンパー装置10を示す断面図であり、図8(A),(B)は、それぞれ本実施形態の他の変形例に係るダンパー装置10A,10Bを示す断面図である。
【0026】
図5において、ダンパー装置本体11Aは、前記ダンパー装置本体11と同様の矩形芯材14および固定部15を有して構成されている。このダンパー装置本体11Aでは、芯材突条部17が矩形芯材14の長手方向(X軸方向)に沿って断続して配置される点が前記ダンパー装置本体11と相違している。すなわち、芯材突条部17は、X軸方向に連続せずに複数(本変形例では、3つ)に分割して配置されている。そして、分割された複数の芯材突条部17のうち、一対の芯材突条部17は、座屈規制手段である鋼管12および充填コンクリート13の長手方向両端部から、その長さ寸法Lの1/4(L/4)だけ入った位置を含んで設けられている。この際、芯材突条部17は、鋼管12両端部からL/4だけ入った位置を含んで、少なくとも長手方向外側に位置することが望ましい。このような位置に芯材突条部17を配置することで、前述の図11で説明したように、矩形芯材14に曲げモーメントMが作用した際に変形しやすい位置(L/4位置)の曲げ変形をより有効に規制でき、ダンパー装置10のエネルギー吸収性能を向上可能になっている。
【0027】
図6において、ダンパー装置本体11Bは、前記ダンパー装置本体11と同様の矩形芯材14および固定部15を有して構成されている。このダンパー装置本体11Bでは、芯材突条部17が矩形芯材14の長手方向(X軸方向)に沿って連続し、かつ矩形芯材14の長辺(Y軸方向)に沿った複数本(本変形例では、2本)が配置される点が前記ダンパー装置本体11,11Aと相違している。すなわち、芯材突条部17は、矩形芯材14の片面当たり2本がX軸に沿って互いに平行に配置されている。そして、2本の芯材突条部17の端部は、第2固定板部15Bから離隔して設けられ、第2固定板部15Bと連結されていない。このように複数の芯材突条部17を配置することで、各芯材突条部17における応力を低減しつつ、矩形芯材14の長辺に沿った変形を有効に規制できるので、ダンパー装置10のエネルギー吸収性能を向上可能になっている。
【0028】
図7に示すダンパー装置10は、図3に示したダンパー装置10と比較して、変形防止手段である芯材突条部17と、座屈規制手段である充填コンクリート13との間において、前記シート体としての絶縁材16が省略されている点が相違している。すなわち、図7に示すダンパー装置10では、矩形芯材14と充填コンクリート13とは、それらの間に設けられた絶縁材16によって互いの付着が切られているものの、芯材突条部17と充填コンクリート13とは、互いに直接摺接するように構成されている。
【0029】
図8(A),(B)に示すダンパー装置10A,10Bでは、前記ダンパー装置10における芯材突条部17および規制凹溝部13Aと構成の相違した変形防止手段が設けられている。
図8(A)に示すダンパー装置10Aにおいて、矩形芯材14の一対の長辺両面には、表面から凹むとともにX軸に沿って延びる芯材凹溝部18が設けられ、芯材凹溝部18と対向する充填コンクリート13には、芯材凹溝部18に挿入されて凹凸嵌合する規制突条部13Bが形成されている。そして、芯材凹溝部18は、規制突条部13Bに対してX軸方向に摺動可能で、Y軸方向には移動不能に構成されている。すなわち、これらの芯材凹溝部18と規制突条部13Bとによって矩形芯材14の長辺(Y軸方向)に沿った変形を防止する変形防止手段が構成されている。
【0030】
図8(B)に示すダンパー装置10Aにおいて、矩形芯材14の一対の長辺両面には、表面から凹むとともにX軸に沿って延びる芯材凹溝部18が設けられ、芯材凹溝部18と対向する充填コンクリート13には、規制凹溝部13Aが形成され、これらの芯材凹溝部18および規制凹溝部13Aには、介挿部材19が挿入されて凹凸嵌合するように構成されている。そして、介挿部材19は、芯材凹溝部18および規制凹溝部13Aに対してX軸方向に摺動可能で、Y軸方向には移動不能に構成されている。すなわち、これらの芯材凹溝部18と規制凹溝部13Aと介挿部材19とによって矩形芯材14の長辺(Y軸方向)に沿った変形を防止する変形防止手段が構成されている。ここで、芯材凹溝部18の断面積(断面の欠損面積)は、前述の図8(A)における芯材凹溝部18と同様に設定されている。
【0031】
以上のダンパー装置10,10A,10Bにおいて、ダンパー装置本体11の矩形芯材14の断面積は、以下のように設定されている。
すなわち、図9に示すダンパー装置10のダンパー装置本体11のように、矩形芯材14の両面に芯材突条部17を突出させて設けた場合において、矩形芯材14と芯材突条部17とを合わせた断面積は、矩形芯材14のみの断面積に対して1.7倍以下に設定されている。つまり、矩形芯材14自体の断面積(B×t)で決まるダンパー装置本体11の最小断面積A0 に対し、芯材突条部17位置における矩形芯材14および芯材突条部17を合わせたダンパー装置本体11の最大断面積A1 が、1.7倍以下(望ましくは、1.51倍以下)になるように、芯材突条部17の大きさが設定されている。
また、図10に示すダンパー装置10A,10Bのダンパー装置本体11のように、矩形芯材14の両面に芯材凹溝部18を設けた場合において、芯材凹溝部18がない部分における矩形芯材14の断面積(B×t)は、この矩形芯材14の断面積から芯材凹溝部18を減じた断面積に対して1.7倍以下に設定されている。つまり、芯材凹溝部18位置におけるダンパー装置本体11の最小断面積A0 に対し、矩形芯材14自体の断面積(B×t)で決まるダンパー装置本体11の最大断面積A1 が、1.7倍以下(望ましくは、1.51倍以下)になるように、芯材凹溝部18の大きさが設定されている。
【0032】
このようなダンパー装置本体11の最小断面積A0 と最大断面積A1 との断面積比は、以下の表1に基づき、最小断面積A0 部分が引張強度(Ts )に達する以前に、最大断面積A1 部分が降伏応力度(σy )に達して降伏するように設定されている。すなわち、矩形芯材14の鋼材として、SN400材やSS400材を用いた場合には、引張強度と降伏応力度との比(強度比Ts/σy)が1.70となることから、最小断面積A0 部分に対する最大断面積A1 部分の断面積比を1.7以下とする必要がある。ただし、矩形芯材14の鋼材として、SN490材やSM490材を用いた場合には、最小断面積A0 部分に対する最大断面積A1 部分の断面積比を1.51以下とする必要があり、さらに、SM520材を用いた場合には、断面積比を1.46以下、LYP225材を用いた場合には、断面積比を1.33)とする必要がある。従って、ダンパー装置10,10A,10Bの矩形芯材14として用いる鋼材に応じて、最小断面積A0 部分に対する最大断面積A1 部分の断面積比を所定値以下に設定することで、ダンパー装置本体11の変形性能が確保できるようになっている。
【0033】
【表1】
【0034】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、充填コンクリート13および鋼管12によって矩形芯材14のX軸方向以外の方向への変形が防止され、変形防止手段によって矩形芯材14の長辺方向(Y軸方向)への変形が防止される。従って、矩形芯材14がX軸方向に軸変形して軸降伏後も座屈することなく変形性能が確保できるので、大きな履歴減衰の発揮によるエネルギー吸収性能に優れたダンパー装置10,10A,10Bが実現できる。
【0035】
(2)そして、矩形芯材14の長辺方向における充填コンクリート13のかぶり厚さが小さくても、変形防止手段によって矩形芯材14の変形が防止できることから、充填コンクリート13および鋼管12を大きくする必要がなく、ダンパー装置10,10A,10Bの小型化および軽量化を図ることができる。
【0036】
(3)また、矩形芯材14の断面積(B×t)に対して芯材突条部17を合わせた断面積の比、または芯材凹溝部18を形成した部分の断面積に対して矩形芯材14の断面積(B×t)の比を、1.7倍(望ましくは、1.51倍)以下に設定したことで、矩形芯材14の軸変形や軸降伏に対する芯材突条部17や芯材凹溝部18の影響を低減させることができ、ダンパー装置本体11の変形性能が確保できる。
【0037】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、建物1の所定階の上下に渡りブラケット4を介してダンパー装置10,10A,10Bを設置したが、このような設置構造に限らず、例えば、複数階に渡って設置してもよい。また、ブレース形式で設置するものに限らず、対象位置間に生じる相対変位に対して矩形芯材14が軸変形可能であれば任意の取り付け構造が採用可能である。
【0038】
また、ダンパー装置10,10A,10Bを設置する構造物としては、建物1に限らず、土木構造物や工作物、機械基礎などであってもよく、ダンパー装置による振動抑制が期待できるものであれば、特に対象が限定されるものではない。
また、前記実施形態のダンパー装置10では、矩形芯材14と芯材突条部17とが一体形成されていたが、別体の芯材突条部17が矩形芯材14の長辺表面に溶接等によって固定されていてもよい。
【0039】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る構造物の概略構成を示す側面図である。
【図2】前記構造物に用いるダンパー装置を示す側面図である。
【図3】前記ダンパー装置を示す断面図である。
【図4】前記ダンパー装置のダンパー装置本体を示す側面図である。
【図5】前記ダンパー装置本体の変形例を示す側面図である。
【図6】前記ダンパー装置本体の変形例を示す側面図である。
【図7】前記ダンパー装置の変形例を示す断面図である。
【図8】前記ダンパー装置の他の変形例を示す断面図である。
【図9】前記実施形態のダンパー装置本体を示す断面図である。
【図10】前記変形例のダンパー装置本体を示す断面図である。
【図11】従来のダンパー装置の作用を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1…構造物としての建物、4…対象位置としてのブラケット、10,10A,10B…ダンパー装置、12…座屈規制手段としての鋼管、13…座屈規制手段としての充填コンクリート、13A…規制凹溝部、13B…規制突条部、14…矩形芯材、15…固定部、16…付着防止手段としての絶縁材(シート体)、17…芯材突条部、17A…隙間、18…芯材凹溝部、19…介挿部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパー装置および構造物に関し、詳しくは、建築分野や土木分野、機械分野等における構造物や工作物の振動(地震や風等に起因するものや交通振動、機械振動等)を抑制するために用いられるダンパー装置、およびダンパー装置を備えた構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物や工作物の振動を抑制することを目的とした各種のダンパー装置が広く利用されている。このようなダンパー装置の一例として、建築物における地震や風の振動エネルギーを吸収するために利用されるブレースタイプのダンパー装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のダンパー装置は、建築物において柱および梁で囲まれた矩形枠内に配置されるもので、長尺板状の鋼製中心軸力部材と、その周囲を囲んで設けられる座屈拘束用のコンクリートと、このコンクリートの外周に設けられる鋼管とを有して構成されている。そして、鋼製中心軸力部材の周面とコンクリートとの間には、付着防止皮膜が設けられており、鋼製中心軸力部材の軸変形がコンクリートで拘束されないようになっている。このようなブレースタイプのダンパー装置では、地震動を受けて建築物の各階に層間変形が生じた場合に、鋼製中心軸力部材が軸力を負担して軸降伏することで、つまり弾塑性の応力−変形関係(履歴ループ)に沿って挙動することで、履歴ループに応じたエネルギー吸収(履歴減衰)能力が発揮され、建築物における地震時や強風時の振動低減が実現可能になっている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−343116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記特許文献1に記載された従来のダンパー装置では、鋼製中心軸力部材の周囲に座屈拘束用のコンクリートおよび鋼管が設けられることで、圧縮力を受けて軸変形した鋼製中心軸力部材の面外方向への座屈が防止でき、大きな変形領域においても安定した履歴減衰性能が確保できるようになっている。この際、鋼製中心軸力部材の断面積が大きい方が履歴減衰エネルギーも大きくなり、建築物における振動低減効果を向上させることができ、また、鋼製中心軸力部材の断面積や幅寸法に対してコンクリートが十分に大きな断面を有していれば、コンクリートによる座屈拘束機能が発揮できる。しかしながら、鋼製中心軸力部材の断面積を大きくすると、コンクリートの断面も大きくなり、ダンパー装置が大型化して重くなってしまうという不都合が生じる。
一方、鋼製中心軸力部材に対してコンクリートの断面を相対的に小さくすると、座屈拘束機能が十分に発揮できなくなってしまうという問題が生じる。すなわち、鋼製中心軸力部材の断面における板厚方向に関しては、コンクリートのかぶりが大きくかつ拘束面積も大きいので、座屈拘束力はさほど低下せず、コンクリートのかぶりや拘束面積が小さくなる板厚直角方向に関し、座屈拘束力の低下が顕著に現れることが本件出願人の鋭意研究によって判明した。
【0005】
本発明の目的は、小型軽量化が可能でかつエネルギー吸収性能に優れたダンパー装置、およびダンパー装置を備えた構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のダンパー装置は、構造物において互いに相対移動が生じうる一対の対象位置の間に取り付けられ、当該相対移動に伴って減衰力を発揮するダンパー装置であって、前記一対の対象位置同士を結ぶ第1軸に沿った長尺状に形成されるとともに、前記第1軸に直交する第2軸に沿って長い一対の長辺および当該第1軸および第2軸に直交する第3軸に沿って短い一対の短辺からなる矩形断面を有した矩形芯材と、前記第1軸に沿った前記矩形芯材の両端部に結合されて前記一対の対象位置に固定される一対の固定部と、前記矩形芯材の周囲を囲んで前記第1軸と交差する方向への当該矩形芯材の座屈を規制する座屈規制手段と、前記矩形芯材と前記座屈規制手段との付着を防止して前記第1軸に沿った当該矩形芯材の軸変形を許容する付着防止手段と、前記矩形芯材の一対の長辺のうちの少なくとも一方と前記変形規制手段との間に設けられて当該矩形芯材の長辺に沿った変形を防止する変形防止手段とを備え、前記対象位置間に相対移動が生じた際に、前記付着防止手段を介して前記座屈規制手段により座屈が規制され、かつ前記変形防止手段により長辺方向への変形が規制された状態で、前記矩形芯材が前記第1軸に沿った方向に軸変形し、この軸変形に応じた減衰力が発揮されることを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、座屈規制手段により矩形芯材の座屈変形を規制するとともに、付着防止手段を介することで矩形芯材の軸変形を拘束しないことで、矩形芯材が第1軸に沿った方向に軸変形して減衰力が発揮でき、エネルギー吸収性能の優れたダンパー装置が実現できる。特に、座屈規制手段による座屈拘束力が小さくなりやすい矩形芯材の長辺方向の変形を、変形防止手段によって防止したことで、座屈規制手段による座屈拘束力を過度に高めなくても矩形芯材の変形性能が確保でき、座屈規制手段を小型化してダンパー装置の軽量化を図ることができる。
ここで、従来のダンパー装置において、座屈規制手段を小型化すると矩形芯材の長辺方向に関する座屈拘束力が小さくなり、矩形芯材に圧縮力が作用した際に、図11に示すように、矩形芯材14がその断面長辺方向に変形することがある。特に、矩形芯材14の両端の固定部15に曲げモーメントMが作用する場合には、矩形芯材14が曲げ変形しやすく、このような曲げ変形が生じた状態で圧縮軸力を受けると矩形芯材14が容易に座屈し、軸力を負担することができずにエネルギー吸収性能が極端に低下してしまう。
これに対して、本願のダンパー装置では、矩形芯材の長辺方向への変形が防止されることで、負担軸力を保持しつつ大きな軸変形領域まで安定した履歴ループを描くことができ、エネルギー吸収性能を向上させることができる。
【0008】
この際、本発明のダンパー装置では、前記変形防止手段は、前記矩形芯材の長辺表面から突出するとともに前記第1軸に沿って延びる芯材突条部と、この芯材突条部を挿入可能に前記座屈規制手段に形成された規制凹溝部とで構成されるか、前記矩形芯材の長辺表面から凹むとともに前記第1軸に沿って延びる芯材凹溝部と、この芯材凹溝部に挿入可能に前記座屈規制手段に形成された規制突条部とで構成されるか、または前記矩形芯材の長辺表面から凹むとともに前記第1軸に沿って延びる芯材凹溝部と、この芯材凹溝部に対向して前記座屈規制手段に形成された規制凹溝部と、前記芯材凹溝部および規制凹溝部に挿入される介挿部材とで構成されていることが好ましい。
そして、前記芯材突条部を有して変形防止手段が構成される場合において、前記矩形芯材と前記芯材突条部とを合わせた断面積は、前記矩形芯材のみの断面積に対して1.7倍以下に設定され、前記芯材凹溝部を有して変形防止手段が構成される場合において、前記芯材凹溝部がない部分における前記矩形芯材の断面積は、前記矩形芯材から前記芯材凹溝部を減じた断面積に対して1.7倍以下に設定されていることが好ましい。
さらに、前記芯材突条部を有して変形防止手段が構成される場合において、前記芯材突条部の断面積は、前記矩形芯材の断面積に対して0.2倍以下に設定されていることがより好ましい。
【0009】
このような構成によれば、芯材突条部と規制凹溝部との嵌合、芯材凹溝部と規制突条部との嵌合、または芯材凹溝部および規制凹溝部と介挿部材との嵌合のいずれかの凹凸嵌合構造により、矩形芯材の長辺方向への変形を確実に防止することができる。そして、凹凸嵌合によって変形防止手段が構成されることで、比較的簡単かつ安価にダンパー装置を製造することができる。そして、矩形芯材に芯材突条部を加えた部分の断面積が矩形芯材自体の断面積に対して1.7倍以下(望ましくは、1.51倍以下)に設定されているので、矩形芯材に作用する軸力や軸変形に対する芯材突条部の影響を最小限に抑えることができ、軸降伏後の矩形芯材の変形性能を確保することができる。また、矩形芯材自体の断面積が矩形芯材から芯材凹溝部を減じた部分の断面積に対して1.7倍以下(望ましくは、1.51倍以下)に設定されているので、芯材凹溝部位置での負担軸力の低下を最小限に抑え、変形性能を確保することができる。
【0010】
また、本発明のダンパー装置では、前記変形防止手段は、前記第1軸に沿った前記矩形芯材の長手方向に連続して設けられるか、または前記矩形芯材の長手方向に沿って断続して設けられていることが好ましい。
さらに、本発明のダンパー装置では、前記矩形芯材の長手方向に沿って断続して設けられる前記変形防止手段は、少なくとも前記座屈規制手段の長手方向両端部までの位置を含んで設けられていることが好ましい。
さらに、本発明のダンパー装置では、前記変形防止手段は、前記座屈規制手段の長手方向両端部から当該座屈規制手段の長さ寸法の1/4だけ入った位置まで設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、座屈規制手段の端部から座屈規制手段の長さ寸法の1/4だけ入った位置、すなわち前述の図11のように、矩形芯材の両端の固定部に曲げモーメントMが作用した場合に矩形芯材の曲げ変形が大きくなる位置において、矩形芯材の変形を効率的に防止することができる。従って、構造物の対象位置に固定した設置状態における矩形芯材の座屈を確実に防止して、変形性能を確保することができる。
【0011】
さらに、本発明のダンパー装置では、前記変形防止手段は、前記矩形芯材の長辺における前記第2軸に沿った複数箇所に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、矩形芯材の長辺における複数箇所に分散して変形防止手段を設けることで、1箇所当たりの応力を低減させることができ、座屈規制手段をより一層小型化することができ、ダンパー装置の小型軽量化を促進させることができる。また、矩形芯材の長手方向における適宜な位置において、複数の変形防止手段を並列して設けることで、重点的に矩形芯材の変形防止が実現できる。
【0012】
また、本発明のダンパー装置では、前記矩形芯材は、普通鋼材よりも降伏点強度が低い鋼材から形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、矩形芯材に降伏点強度が低い鋼材、つまり低降伏点鋼(軟鋼、極軟鋼)を用いれば、小さな変形で軸降伏させるとともに、大変形領域まで安定した変形性能が確保でき、エネルギー吸収性能を一層高めることができる。
【0013】
また、本発明のダンパー装置では、前記座屈規制手段は、その内部に前記矩形芯材を収容可能な鋼管と、この鋼管内部に充填されたコンクリートまたはモルタルとを有して構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、鋼管と、この鋼管に充填するコンクリートやモルタルで座屈規制手段を構成することで、比較的容易かつ安価にダンパー装置を製造することができる。
【0014】
また、本発明のダンパー装置では、前記付着防止手段は、前記矩形芯材の表面と前記座屈規制手段との間に形成された空隙であるか、または前記矩形芯材の表面および座屈規制手段の一方に貼付けられて他方と摺接するシート体であることが好ましい。
ここで、前記空隙または前記シート体の厚さ寸法は、1mm以下に設定されていることが好ましい。
このような構成によれば、空隙やシート体によって矩形芯材と座屈規制手段との付着を確実に切るとともに、矩形芯材と座屈規制手段との距離が1mm以下(より好ましくは、0.5mm以下)に維持されることで、矩形芯材の座屈を確実に防止することができる。
さらに、前記付着防止手段がシート体である場合に、前記変形防止手段と前記座屈規制手段との間における前記シート体が省略されていることが好ましい。
このような構成によれば、変形防止手段と座屈規制手段との間にシート体が介在しないことで、矩形芯材の長辺方向に沿った変形防止手段の微少な移動をも座屈規制手段によって規制することができる。
【0015】
また、本発明のダンパー装置では、前記固定部は、前記矩形芯材の端部が前記長辺方向に拡大された第1固定板部と、この第1固定板部の両面に固定されて前記第3軸に沿って突出した第2固定板部とから断面十字形に形成され、前記第2固定板部における前記一対の対象位置と反対側の端部は、前記座屈規制手段の内部に所定長さ寸法だけ挿入され、前記変形防止手段は、前記矩形芯材の長辺表面から突出するとともに前記第1軸に沿って延びる芯材突条部と、この第1突条部を挿入可能に前記座屈規制手段に形成された規制凹溝部とで構成され、前記芯材突条部と、前記座屈規制手段の内部に挿入された第2固定板部の端部とは、所定距離だけ離隔して設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、矩形芯材から突出して形成された芯材突条部と固定部の第2固定板部とを離隔させる、つまり芯材突条部と第2固定板部とを連結しないことで、第2固定板部に作用する軸力が芯材突条部に直接伝達されることを防止し、第2固定板部と矩形芯材とで伝達される軸力に対する芯材突条部の影響を低減させることができる。
【0016】
一方、本発明の構造物は、前記いずれかのダンパー装置を備えたことを特徴とする。
このような構成によれば、前述と同様の作用効果を得ることができ、小型軽量化が可能でかつエネルギー吸収性能に優れたダンパー装置により、構造物の振動を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のような本発明によれば、矩形芯材の座屈を効果的に防止することができ、小型軽量化が可能でかつエネルギー吸収性能に優れたダンパー装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の構造物としての建物1における骨組みの概略構成を示す側面図である。図2および図3は、建物1に用いるダンパー装置10を示す側面図および断面図である。図4は、ダンパー装置10のダンパー装置本体11を示す側面図である。
図1において、建物1は、複数の柱2、柱2間に架設された各階の梁3、梁3や、梁3に支持された床、図示しない屋根や壁等を有して構成された建築物である。建物1の所定の階には、当該階における隣接する柱2の間および上下の梁3の間にブレースタイプのダンパー装置10が設置されている。具体的には、隣接する一方(図1の右側)の柱2の柱頭部分と上階の梁3との交差部、および他方(図1の左側)の柱2の柱脚部分と当該階の梁3との交差部に、それぞれ固定された上下のブラケット4間に渡ってダンパー装置10が取り付けられている。このようなダンパー装置10は、建物1において平面的に偏りがなく、かつ建物1の水平各方向に適宜な数だけ配置されていればよく、また建物1の高さ方向に関しては、負担せん断力が大きくなる下層階において上層階よりも設置個数が多いことが望ましい。そして、本実施形態では、上下のブラケット4がそれぞれ対象位置であり、地震等の水平力が建物1に作用した場合に、上下階が互いに左右にずれるような相対移動(層間変位)が生じ、この相対移動に対してダンパー装置10が減衰力を発揮するようになっている。
【0019】
図2〜図4に示すように、ダンパー装置10は、鋼材製で長尺状のダンパー装置本体11と、このダンパー装置本体11を囲んで設けられる円形の鋼管12と、この鋼管12の内部に充填される充填コンクリート13とを有して構成されている。これらの鋼管12および充填コンクリート13によって本発明の座屈規制手段が構成されている。
ダンパー装置本体11は、全体長尺状でかつ長方形の矩形断面を有した矩形芯材14と、この矩形芯材14の両端部に結合されてブラケット4に固定される一対の固定部15とを有して形成されている。矩形芯材14は、上下のブラケット4間を結ぶ第1軸としてのX軸に細長状で、かつX軸に直交する第2軸としてのY軸に沿って長い一対の長辺(幅寸法B)およびX軸およびY軸に直交する第3軸としてのZ軸に沿って短い一対の短辺(厚さ寸法t)からなる長方形板状断面を有している。このような矩形芯材14の周面には、シート体としての絶縁材16が貼り付けられている。この絶縁材16は、樹脂製の面状粘着テープなどから形成されており、その外表面は、摩擦係数が小さく(滑りやすく)なっており、充填コンクリート13と付着せず摺接可能に構成されている。すなわち、絶縁材16によって付着防止手段が構成されている。
【0020】
矩形芯材14の一対の長辺両面には、図3、図4に示すように、表面からY軸に沿って突出するとともにX軸に沿って延びる芯材突条部17が設けられている。そして、芯材突条部17と対向する充填コンクリート13には、芯材突条部17を挿入して凹凸嵌合する規制凹溝部13Aが形成されている。そして、芯材突条部17と規制凹溝部13Aとの間にも、前記シート体としての絶縁材16が設けられており、芯材突条部17は、規制凹溝部13Aに対してX軸方向に摺動可能で、Y軸方向には移動不能に構成されている。すなわち、これらの芯材突条部17と規制凹溝部13Aとによって矩形芯材14の長辺(Y軸方向)に沿った変形を防止する変形防止手段が構成されている。
【0021】
以上のような変形防止手段の形成手順としては、矩形芯材14と一体に芯材突条部17を形成するとともに、これらの表面を覆って絶縁材16を貼り付けておき、ダンパー装置本体11を鋼管12内部にセットしてから、充填コンクリート13を鋼管12内部に充填することで、芯材突条部17と絶縁材16を介して対向する規制凹溝部13Aが形成される。また、芯材突条部17のX軸方向両端部には、図示しないクッション材が設けられており、規制凹溝部13AのX軸方向両端部と芯材突条部17との間に適宜な間隔が形成され、互いに当接しないようになっている。
【0022】
一方、固定部15は、矩形芯材14の端部が長辺方向(Y軸方向)に拡大された第1固定板部15Aと、この第1固定板部15Aの両面に固定されてZ軸に沿って突出した第2固定板部15Bとから断面十字形に形成され、これらの第1および第2の固定板部15A,15Bがそれぞれブラケット4に添え板(スプライスプレート)を介してボルト−ナット接合されている。また、第2固定板部15Bにおけるブラケット4と反対側の端部は、鋼管12および充填コンクリート13の内部に所定長さ寸法だけ挿入されている。すなわち、固定部15は、ブラケット4との固定強度を確保するために矩形芯材14よりも十分に大きな断面積を有するとともに、第2固定板部15Bは、鋼管12および充填コンクリート13から露出した位置における矩形芯材14の横補剛材として機能するようになっている。そして、図4に示すように、第2固定板部15Bの端部と芯材突条部17との間には、隙間17Aが形成され、第2固定板部15Bと芯材突条部17とが直接連結されないようになっている。
【0023】
以上のダンパー装置本体11では、矩形芯材14と固定部15とが同種、同強度の鋼材(例えば、強度が400N/mm2 程度の普通鋼材)から形成されていてもよく、また、矩形芯材14と固定部15とが異種、異強度の鋼材から形成されていてもよい。例えば、矩形芯材14は、普通鋼材と比較して強度および降伏点強度が半分程度の低降伏点鋼(極軟鋼)で形成され、一方、固定部15が、普通鋼材や、普通鋼材よりも強度が高い高強度鋼材(例えば、強度が490N/mm2 程度以上の高張力鋼)で形成されていてもよい。すなわち、矩形芯材14は、建物1に層間変位が生じた際に軸変形するとともに軸降伏することで減衰力を発揮するようになっており、このような軸変形(軸降伏)時の軸力をブラケット4を介して柱2や梁3に適正に伝達するためには、固定部15が弾性状態であることが望ましく、従って、矩形芯材14に比較して強度が高い鋼材で固定部15を形成することで、ダンパー装置10と建物1間における応力伝達機構が確保しやすくなる。
【0024】
以上のようなダンパー装置10では、ダンパー装置本体11が軸変形した際に、矩形芯材14に生じる軸力が充填コンクリート13や鋼管12に伝達されないため、地震等の水平力としての荷重を負担する機構としては、ダンパー装置本体11のみが有効となる。そして、充填コンクリート13および鋼管12によって矩形芯材14のX軸と交差する方向への変形が防止され、特に、矩形芯材14の長辺方向(Y軸方向)への変形が芯材突条部17と規制凹溝部13Aとの凹凸嵌合によって防止されることから、矩形芯材14に座屈が発生しない、あるいは発生しにくくなっている。従って、軸降伏した後の履歴ループが安定したものとなって、矩形芯材14によって大きな履歴エネルギーが吸収される。このようなダンパー装置10によるエネルギー吸収、すなわち減衰力が発揮されることで、建物1の水平応答(地震や風による揺れ)が低減できるようになっている。
【0025】
なお、ダンパー装置における変形防止手段としては、前述のような構造に限らず、以下の図5〜図8に示す構造であってもよい。
図5および図6は、それぞれ本実施形態の変形例に係るダンパー装置10のダンパー装置本体11A,11Bを示す側面図である。図7は、本実施形態の変形例に係るダンパー装置10を示す断面図であり、図8(A),(B)は、それぞれ本実施形態の他の変形例に係るダンパー装置10A,10Bを示す断面図である。
【0026】
図5において、ダンパー装置本体11Aは、前記ダンパー装置本体11と同様の矩形芯材14および固定部15を有して構成されている。このダンパー装置本体11Aでは、芯材突条部17が矩形芯材14の長手方向(X軸方向)に沿って断続して配置される点が前記ダンパー装置本体11と相違している。すなわち、芯材突条部17は、X軸方向に連続せずに複数(本変形例では、3つ)に分割して配置されている。そして、分割された複数の芯材突条部17のうち、一対の芯材突条部17は、座屈規制手段である鋼管12および充填コンクリート13の長手方向両端部から、その長さ寸法Lの1/4(L/4)だけ入った位置を含んで設けられている。この際、芯材突条部17は、鋼管12両端部からL/4だけ入った位置を含んで、少なくとも長手方向外側に位置することが望ましい。このような位置に芯材突条部17を配置することで、前述の図11で説明したように、矩形芯材14に曲げモーメントMが作用した際に変形しやすい位置(L/4位置)の曲げ変形をより有効に規制でき、ダンパー装置10のエネルギー吸収性能を向上可能になっている。
【0027】
図6において、ダンパー装置本体11Bは、前記ダンパー装置本体11と同様の矩形芯材14および固定部15を有して構成されている。このダンパー装置本体11Bでは、芯材突条部17が矩形芯材14の長手方向(X軸方向)に沿って連続し、かつ矩形芯材14の長辺(Y軸方向)に沿った複数本(本変形例では、2本)が配置される点が前記ダンパー装置本体11,11Aと相違している。すなわち、芯材突条部17は、矩形芯材14の片面当たり2本がX軸に沿って互いに平行に配置されている。そして、2本の芯材突条部17の端部は、第2固定板部15Bから離隔して設けられ、第2固定板部15Bと連結されていない。このように複数の芯材突条部17を配置することで、各芯材突条部17における応力を低減しつつ、矩形芯材14の長辺に沿った変形を有効に規制できるので、ダンパー装置10のエネルギー吸収性能を向上可能になっている。
【0028】
図7に示すダンパー装置10は、図3に示したダンパー装置10と比較して、変形防止手段である芯材突条部17と、座屈規制手段である充填コンクリート13との間において、前記シート体としての絶縁材16が省略されている点が相違している。すなわち、図7に示すダンパー装置10では、矩形芯材14と充填コンクリート13とは、それらの間に設けられた絶縁材16によって互いの付着が切られているものの、芯材突条部17と充填コンクリート13とは、互いに直接摺接するように構成されている。
【0029】
図8(A),(B)に示すダンパー装置10A,10Bでは、前記ダンパー装置10における芯材突条部17および規制凹溝部13Aと構成の相違した変形防止手段が設けられている。
図8(A)に示すダンパー装置10Aにおいて、矩形芯材14の一対の長辺両面には、表面から凹むとともにX軸に沿って延びる芯材凹溝部18が設けられ、芯材凹溝部18と対向する充填コンクリート13には、芯材凹溝部18に挿入されて凹凸嵌合する規制突条部13Bが形成されている。そして、芯材凹溝部18は、規制突条部13Bに対してX軸方向に摺動可能で、Y軸方向には移動不能に構成されている。すなわち、これらの芯材凹溝部18と規制突条部13Bとによって矩形芯材14の長辺(Y軸方向)に沿った変形を防止する変形防止手段が構成されている。
【0030】
図8(B)に示すダンパー装置10Aにおいて、矩形芯材14の一対の長辺両面には、表面から凹むとともにX軸に沿って延びる芯材凹溝部18が設けられ、芯材凹溝部18と対向する充填コンクリート13には、規制凹溝部13Aが形成され、これらの芯材凹溝部18および規制凹溝部13Aには、介挿部材19が挿入されて凹凸嵌合するように構成されている。そして、介挿部材19は、芯材凹溝部18および規制凹溝部13Aに対してX軸方向に摺動可能で、Y軸方向には移動不能に構成されている。すなわち、これらの芯材凹溝部18と規制凹溝部13Aと介挿部材19とによって矩形芯材14の長辺(Y軸方向)に沿った変形を防止する変形防止手段が構成されている。ここで、芯材凹溝部18の断面積(断面の欠損面積)は、前述の図8(A)における芯材凹溝部18と同様に設定されている。
【0031】
以上のダンパー装置10,10A,10Bにおいて、ダンパー装置本体11の矩形芯材14の断面積は、以下のように設定されている。
すなわち、図9に示すダンパー装置10のダンパー装置本体11のように、矩形芯材14の両面に芯材突条部17を突出させて設けた場合において、矩形芯材14と芯材突条部17とを合わせた断面積は、矩形芯材14のみの断面積に対して1.7倍以下に設定されている。つまり、矩形芯材14自体の断面積(B×t)で決まるダンパー装置本体11の最小断面積A0 に対し、芯材突条部17位置における矩形芯材14および芯材突条部17を合わせたダンパー装置本体11の最大断面積A1 が、1.7倍以下(望ましくは、1.51倍以下)になるように、芯材突条部17の大きさが設定されている。
また、図10に示すダンパー装置10A,10Bのダンパー装置本体11のように、矩形芯材14の両面に芯材凹溝部18を設けた場合において、芯材凹溝部18がない部分における矩形芯材14の断面積(B×t)は、この矩形芯材14の断面積から芯材凹溝部18を減じた断面積に対して1.7倍以下に設定されている。つまり、芯材凹溝部18位置におけるダンパー装置本体11の最小断面積A0 に対し、矩形芯材14自体の断面積(B×t)で決まるダンパー装置本体11の最大断面積A1 が、1.7倍以下(望ましくは、1.51倍以下)になるように、芯材凹溝部18の大きさが設定されている。
【0032】
このようなダンパー装置本体11の最小断面積A0 と最大断面積A1 との断面積比は、以下の表1に基づき、最小断面積A0 部分が引張強度(Ts )に達する以前に、最大断面積A1 部分が降伏応力度(σy )に達して降伏するように設定されている。すなわち、矩形芯材14の鋼材として、SN400材やSS400材を用いた場合には、引張強度と降伏応力度との比(強度比Ts/σy)が1.70となることから、最小断面積A0 部分に対する最大断面積A1 部分の断面積比を1.7以下とする必要がある。ただし、矩形芯材14の鋼材として、SN490材やSM490材を用いた場合には、最小断面積A0 部分に対する最大断面積A1 部分の断面積比を1.51以下とする必要があり、さらに、SM520材を用いた場合には、断面積比を1.46以下、LYP225材を用いた場合には、断面積比を1.33)とする必要がある。従って、ダンパー装置10,10A,10Bの矩形芯材14として用いる鋼材に応じて、最小断面積A0 部分に対する最大断面積A1 部分の断面積比を所定値以下に設定することで、ダンパー装置本体11の変形性能が確保できるようになっている。
【0033】
【表1】
【0034】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、充填コンクリート13および鋼管12によって矩形芯材14のX軸方向以外の方向への変形が防止され、変形防止手段によって矩形芯材14の長辺方向(Y軸方向)への変形が防止される。従って、矩形芯材14がX軸方向に軸変形して軸降伏後も座屈することなく変形性能が確保できるので、大きな履歴減衰の発揮によるエネルギー吸収性能に優れたダンパー装置10,10A,10Bが実現できる。
【0035】
(2)そして、矩形芯材14の長辺方向における充填コンクリート13のかぶり厚さが小さくても、変形防止手段によって矩形芯材14の変形が防止できることから、充填コンクリート13および鋼管12を大きくする必要がなく、ダンパー装置10,10A,10Bの小型化および軽量化を図ることができる。
【0036】
(3)また、矩形芯材14の断面積(B×t)に対して芯材突条部17を合わせた断面積の比、または芯材凹溝部18を形成した部分の断面積に対して矩形芯材14の断面積(B×t)の比を、1.7倍(望ましくは、1.51倍)以下に設定したことで、矩形芯材14の軸変形や軸降伏に対する芯材突条部17や芯材凹溝部18の影響を低減させることができ、ダンパー装置本体11の変形性能が確保できる。
【0037】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、建物1の所定階の上下に渡りブラケット4を介してダンパー装置10,10A,10Bを設置したが、このような設置構造に限らず、例えば、複数階に渡って設置してもよい。また、ブレース形式で設置するものに限らず、対象位置間に生じる相対変位に対して矩形芯材14が軸変形可能であれば任意の取り付け構造が採用可能である。
【0038】
また、ダンパー装置10,10A,10Bを設置する構造物としては、建物1に限らず、土木構造物や工作物、機械基礎などであってもよく、ダンパー装置による振動抑制が期待できるものであれば、特に対象が限定されるものではない。
また、前記実施形態のダンパー装置10では、矩形芯材14と芯材突条部17とが一体形成されていたが、別体の芯材突条部17が矩形芯材14の長辺表面に溶接等によって固定されていてもよい。
【0039】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る構造物の概略構成を示す側面図である。
【図2】前記構造物に用いるダンパー装置を示す側面図である。
【図3】前記ダンパー装置を示す断面図である。
【図4】前記ダンパー装置のダンパー装置本体を示す側面図である。
【図5】前記ダンパー装置本体の変形例を示す側面図である。
【図6】前記ダンパー装置本体の変形例を示す側面図である。
【図7】前記ダンパー装置の変形例を示す断面図である。
【図8】前記ダンパー装置の他の変形例を示す断面図である。
【図9】前記実施形態のダンパー装置本体を示す断面図である。
【図10】前記変形例のダンパー装置本体を示す断面図である。
【図11】従来のダンパー装置の作用を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1…構造物としての建物、4…対象位置としてのブラケット、10,10A,10B…ダンパー装置、12…座屈規制手段としての鋼管、13…座屈規制手段としての充填コンクリート、13A…規制凹溝部、13B…規制突条部、14…矩形芯材、15…固定部、16…付着防止手段としての絶縁材(シート体)、17…芯材突条部、17A…隙間、18…芯材凹溝部、19…介挿部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物において互いに相対移動が生じうる一対の対象位置の間に取り付けられ、当該相対移動に伴って減衰力を発揮するダンパー装置であって、
前記一対の対象位置同士を結ぶ第1軸に沿った長尺状に形成されるとともに、前記第1軸に直交する第2軸に沿って長い一対の長辺および当該第1軸および第2軸に直交する第3軸に沿って短い一対の短辺からなる矩形断面を有した矩形芯材と、
前記第1軸に沿った前記矩形芯材の両端部に結合されて前記一対の対象位置に固定される一対の固定部と、
前記矩形芯材の周囲を囲んで前記第1軸と交差する方向への当該矩形芯材の座屈を規制する座屈規制手段と、
前記矩形芯材と前記座屈規制手段との付着を防止して前記第1軸に沿った当該矩形芯材の軸変形を許容する付着防止手段と、
前記矩形芯材の一対の長辺のうちの少なくとも一方と前記変形規制手段との間に設けられて当該矩形芯材の長辺に沿った変形を防止する変形防止手段とを備え、
前記対象位置間に相対移動が生じた際に、前記付着防止手段を介して前記座屈規制手段により座屈が規制され、かつ前記変形防止手段により長辺方向への変形が規制された状態で、前記矩形芯材が前記第1軸に沿った方向に軸変形し、この軸変形に応じた減衰力が発揮されることを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダンパー装置において、
前記変形防止手段は、
前記矩形芯材の長辺表面から突出するとともに前記第1軸に沿って延びる芯材突条部と、この芯材突条部を挿入可能に前記座屈規制手段に形成された規制凹溝部とで構成されるか、
前記矩形芯材の長辺表面から凹むとともに前記第1軸に沿って延びる芯材凹溝部と、この芯材凹溝部に挿入可能に前記座屈規制手段に形成された規制突条部とで構成されるか、
または
前記矩形芯材の長辺表面から凹むとともに前記第1軸に沿って延びる芯材凹溝部と、この芯材凹溝部に対向して前記座屈規制手段に形成された規制凹溝部と、前記芯材凹溝部および規制凹溝部に挿入される介挿部材とで構成されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項3】
請求項2に記載のダンパー装置において、
前記芯材突条部を有して変形防止手段が構成される場合において、前記矩形芯材と前記芯材突条部とを合わせた断面積は、前記矩形芯材のみの断面積に対して1.7倍以下に設定され、
前記芯材凹溝部を有して変形防止手段が構成される場合において、前記芯材凹溝部がない部分における前記矩形芯材の断面積は、前記矩形芯材から前記芯材凹溝部を減じた断面積に対して1.7倍以下に設定されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のダンパー装置において、
前記変形防止手段は、前記第1軸に沿った前記矩形芯材の長手方向に連続して設けられるか、または前記矩形芯材の長手方向に沿って断続して設けられていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項5】
請求項4に記載のダンパー装置において、
前記矩形芯材の長手方向に沿って断続して設けられる前記変形防止手段は、少なくとも前記座屈規制手段の長手方向両端部までの位置を含んで設けられていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項6】
請求項5に記載のダンパー装置において、
前記変形防止手段は、前記座屈規制手段の長手方向両端部から当該座屈規制手段の長さ寸法の1/4だけ入った位置まで設けられていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のダンパー装置において、
前記変形防止手段は、前記矩形芯材の長辺における前記第2軸に沿った複数箇所に設けられていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のダンパー装置において、
前記矩形芯材は、普通鋼材よりも降伏点強度が低い鋼材から形成されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のダンパー装置において、
前記座屈規制手段は、その内部に前記矩形芯材を収容可能な鋼管と、この鋼管内部に充填されたコンクリートまたはモルタルとを有して構成されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載のダンパー装置において、
前記付着防止手段は、前記矩形芯材の表面と前記座屈規制手段との間に形成された空隙であるか、または前記矩形芯材の表面および座屈規制手段の一方に貼付けられて他方と摺接するシート体であることを特徴とするダンパー装置。
【請求項11】
請求項10に記載のダンパー装置において、
前記付着防止手段がシート体である場合に、前記変形防止手段と前記座屈規制手段との間における前記シート体が省略されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載のダンパー装置において、
前記固定部は、前記矩形芯材の端部が前記長辺方向に拡大された第1固定板部と、この第1固定板部の両面に固定されて前記第3軸に沿って突出した第2固定板部とから断面十字形に形成され、前記第2固定板部における前記一対の対象位置と反対側の端部は、前記座屈規制手段の内部に所定長さ寸法だけ挿入され、
前記変形防止手段は、前記矩形芯材の長辺表面から突出するとともに前記第1軸に沿って延びる芯材突条部と、この第1突条部を挿入可能に前記座屈規制手段に形成された規制凹溝部とで構成され、
前記芯材突条部と、前記座屈規制手段の内部に挿入された第2固定板部の端部とは、所定距離だけ離隔して設けられていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載のダンパー装置を備えた構造物。
【請求項1】
構造物において互いに相対移動が生じうる一対の対象位置の間に取り付けられ、当該相対移動に伴って減衰力を発揮するダンパー装置であって、
前記一対の対象位置同士を結ぶ第1軸に沿った長尺状に形成されるとともに、前記第1軸に直交する第2軸に沿って長い一対の長辺および当該第1軸および第2軸に直交する第3軸に沿って短い一対の短辺からなる矩形断面を有した矩形芯材と、
前記第1軸に沿った前記矩形芯材の両端部に結合されて前記一対の対象位置に固定される一対の固定部と、
前記矩形芯材の周囲を囲んで前記第1軸と交差する方向への当該矩形芯材の座屈を規制する座屈規制手段と、
前記矩形芯材と前記座屈規制手段との付着を防止して前記第1軸に沿った当該矩形芯材の軸変形を許容する付着防止手段と、
前記矩形芯材の一対の長辺のうちの少なくとも一方と前記変形規制手段との間に設けられて当該矩形芯材の長辺に沿った変形を防止する変形防止手段とを備え、
前記対象位置間に相対移動が生じた際に、前記付着防止手段を介して前記座屈規制手段により座屈が規制され、かつ前記変形防止手段により長辺方向への変形が規制された状態で、前記矩形芯材が前記第1軸に沿った方向に軸変形し、この軸変形に応じた減衰力が発揮されることを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダンパー装置において、
前記変形防止手段は、
前記矩形芯材の長辺表面から突出するとともに前記第1軸に沿って延びる芯材突条部と、この芯材突条部を挿入可能に前記座屈規制手段に形成された規制凹溝部とで構成されるか、
前記矩形芯材の長辺表面から凹むとともに前記第1軸に沿って延びる芯材凹溝部と、この芯材凹溝部に挿入可能に前記座屈規制手段に形成された規制突条部とで構成されるか、
または
前記矩形芯材の長辺表面から凹むとともに前記第1軸に沿って延びる芯材凹溝部と、この芯材凹溝部に対向して前記座屈規制手段に形成された規制凹溝部と、前記芯材凹溝部および規制凹溝部に挿入される介挿部材とで構成されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項3】
請求項2に記載のダンパー装置において、
前記芯材突条部を有して変形防止手段が構成される場合において、前記矩形芯材と前記芯材突条部とを合わせた断面積は、前記矩形芯材のみの断面積に対して1.7倍以下に設定され、
前記芯材凹溝部を有して変形防止手段が構成される場合において、前記芯材凹溝部がない部分における前記矩形芯材の断面積は、前記矩形芯材から前記芯材凹溝部を減じた断面積に対して1.7倍以下に設定されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のダンパー装置において、
前記変形防止手段は、前記第1軸に沿った前記矩形芯材の長手方向に連続して設けられるか、または前記矩形芯材の長手方向に沿って断続して設けられていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項5】
請求項4に記載のダンパー装置において、
前記矩形芯材の長手方向に沿って断続して設けられる前記変形防止手段は、少なくとも前記座屈規制手段の長手方向両端部までの位置を含んで設けられていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項6】
請求項5に記載のダンパー装置において、
前記変形防止手段は、前記座屈規制手段の長手方向両端部から当該座屈規制手段の長さ寸法の1/4だけ入った位置まで設けられていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のダンパー装置において、
前記変形防止手段は、前記矩形芯材の長辺における前記第2軸に沿った複数箇所に設けられていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のダンパー装置において、
前記矩形芯材は、普通鋼材よりも降伏点強度が低い鋼材から形成されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載のダンパー装置において、
前記座屈規制手段は、その内部に前記矩形芯材を収容可能な鋼管と、この鋼管内部に充填されたコンクリートまたはモルタルとを有して構成されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載のダンパー装置において、
前記付着防止手段は、前記矩形芯材の表面と前記座屈規制手段との間に形成された空隙であるか、または前記矩形芯材の表面および座屈規制手段の一方に貼付けられて他方と摺接するシート体であることを特徴とするダンパー装置。
【請求項11】
請求項10に記載のダンパー装置において、
前記付着防止手段がシート体である場合に、前記変形防止手段と前記座屈規制手段との間における前記シート体が省略されていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載のダンパー装置において、
前記固定部は、前記矩形芯材の端部が前記長辺方向に拡大された第1固定板部と、この第1固定板部の両面に固定されて前記第3軸に沿って突出した第2固定板部とから断面十字形に形成され、前記第2固定板部における前記一対の対象位置と反対側の端部は、前記座屈規制手段の内部に所定長さ寸法だけ挿入され、
前記変形防止手段は、前記矩形芯材の長辺表面から突出するとともに前記第1軸に沿って延びる芯材突条部と、この第1突条部を挿入可能に前記座屈規制手段に形成された規制凹溝部とで構成され、
前記芯材突条部と、前記座屈規制手段の内部に挿入された第2固定板部の端部とは、所定距離だけ離隔して設けられていることを特徴とするダンパー装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載のダンパー装置を備えた構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−25260(P2010−25260A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188806(P2008−188806)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]