説明

ダンボール綴じ用紙針

【課題】水濡れにも強く、重量物にも耐えられる強度を有し、かつ、締結装置の小型・軽量化も可能なダンボール綴じ用紙針を提供する。
【解決手段】紙針10は、防水加工を施した紙材料によって構成されており、本体部12と、その両端において折り曲げられる一対の脚部14,16を有し、前記本体部12には、任意のロゴ26が形成されている。脚部外面14Aには、プラスチック製の面ファスナー20のループ22を設け、脚部内面16Bには、面ファスナー20のフック24を設ける。そして、紙針10を締結装置50にセットし、重ね合わせたダンボール42,44に切り込み穴46を設けて脚部14,16を貫通させ、ダンボール44の裏側で面ファスナー20を結合してダンボール42,44を締結する。このため、水濡れにも強く、重量物にも耐えられる強度を有し、かつ、締結装置50の小型化・軽量化も可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙針(紙製のステープル)に関し、更に具体的には、ダンボール綴じ用紙針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現行のダンボールは、内容物が重量物であることが多く、太い強靭な金属針を強い力で曲げる必要上、固定式かつ電動式の大型機を使用して締結しており、その締結装置の価格も数10万〜数100万円と高価格である。このような金属針を使用して製造したダンボール製品の使用後の始末解体には、折り曲げた強靭な金属針を外すために、例えば、下記特許文献1に示す「段ボール製品のステープル取り外し治具」のような道具を用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−225281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上のような道具を利用してもなお、使用済みのダンボール製品の始末解体に労力を要することには変わりがない。そこで、紙針(紙製ステープル)を利用してダンボールを締結することができれば、利用後の解体は容易になるため都合がよい。ところが、紙針は耐水性がなく、重量物を梱包するためのダンボール箱などを製造するには強度が不足しているという不都合があった。
【0005】
本発明は、以上のような点に着目したもので、水濡れにも強く、重量物にも耐えられる強度を有し、かつ、締結装置の小型・軽量化も可能なダンボール綴じ用紙針を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ダンボール綴じ用紙針であって、平面状の本体部と、該本体部の両端において略直角に折り曲げられる対向する一対の脚部を有し、前記本体部及び一対の脚部が防水性ないし耐水性を有するとともに、前記一対の脚部は、前記本体部に対して略平行に折り曲げられたときに、互いに一部が重なる長さに形成されており、前記一対の脚部の一方の脚部の外面であって、他方の脚部の内面と重なり合う部分に、プラスチック製の面ファスナーのループ側又はフック側のいずれか一方を設け、前記一対の脚部の他方の脚部の内面であって、前記一方の脚部の外面と重なり合う部分に、前記面ファスナーのループ側又はフック側の他方を設けた、ことを特徴とする。主要な形態の一つは、前記本体部に、文字,数字,記号,図形,絵,写真の表示,もしくは着色を行ったことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、防水加工を施した紙針を使用し、該紙針の一対の脚部の重ね合わせ部分を、プラスチック製の面ファスナーのループとフックの係合により締結することとしたので、水濡れにも強く、重量物にも耐えられる強度を有し、かつ、締結装置の小型化・軽量化も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1を示す図であり、(A)は紙針を示す外観斜視図,(B-1)は本実施例の紙針によるダンボールの締結の様子を示す主要断面図,(B-2)は面ファスナーの結合前の状態を示す拡大図,(C)は本実施例の紙針を利用するための締結装置の一例を示す図である。
【図2】前記実施例の作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
最初に、図1及び図2を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1(A)は、本実施例の紙針を示す外観斜視図,図1(B-1)は紙針によるダンボールの締結の様子を示す主要断面図,図1(B-2)は面ファスナーの結合前の状態を示す拡大図,図1(C)は本実施例の紙針を利用するための締結装置の一例を示す図である。図2は、本実施例の作用を示す図である。本発明の紙針(紙製ステープル)は、重量物などを内容物とするダンボール製品(ダンボール箱など)を製造するために、ダンボール同士を締結するものである。
【0011】
図1(A)に示すように、本実施例の紙針10は、略平面状の本体部12と、該本体部12の両端において略直角に折り曲げられる対向する一対の脚部14,16によって、全体が略コ字状に形成されている。前記本体部12及び脚部14,16は、防水加工を施した公知の各種の紙素材によって形成されている。前記脚部14,16は、前記本体部12に対して略平行に折り曲げられたときに(例えば、図1(B-1)の状態)に、互いに一部が重なり合う長さに形成されている。また、一方の脚部14の外面14Aには、前記他方の脚部16の内面16Bと重なり合う位置に、面ファスナー20のループ22が設けられており、他方の脚部16の内面16Bには、前記脚部外面14Aと重なり合う位置に、面ファスナー20のフック24が設けられている。前記面ファスナー20は、締結時に十分な強度を確保するために、プラスチック製のものが利用される。また、前記本体部12には、任意のロゴ26が印刷により形成されている。図示の例では、前記ロゴ26として、「○×県庁生産流通課」と表示されているが、これは一例であって、前記ロゴ26としては、生産者名、企業名、役所名、部署名(例えば、総務部、営業部、経理部、人事部等)、商品名などの文字,数字,記号,図形などの表示のほか、キャラクラー人形や動物等の絵や写真を入れて、PRなどに活用してもよい。着色も可能である。
【0012】
前記紙針10は、複数の針が連結した連結シート30を、ロール40から引き出し、所望の位置の連結部28で切断して、後述する締結装置50にセットされる。前記締結装置50を利用すると、図1(B-1)に示すように、重ね合わせたダンボール42,44に、2ヵ所の切り込み穴46が形成され、これら切り込み穴46を貫通した脚部14,16がダンボール44の裏側で重なり合う。そして、脚部14側のループ22と、脚部16側のフック24が係合するため、強力な締結状態が維持される。
【0013】
前記締結装置50の構成について、図1(C)を参照して説明する。なお、ここで説明する締結装置50は一例であり、本願出願人が考案した実用新案登録第3142752号に開示されたステープラの構造を改良したものを使用している。すなわち、締結装置50は、外枠52,マガジン60,付勢手段70,本体カバー80,下カバー部84,その上面86に形成された開口88,レバー90,押下げ部材92,カッタ96及び98,案内台100,押上げ部材110,押上げ機構120などにより構成されている。これら各部の作用は、前記実用新案登録第3142752号と基本的には同様であるので、詳述は省略するが、本発明では、紙針10の一対の脚部14及び16の折り曲げのタイミングをずらす必要上、前記案内台100の形状を改良している。具体的には、図2(A)〜(E)に示すように、案内台100の上面に、一方の頂部102A側の方が、他方の頂部102B側よりも高くなるような段差104を設けることにより、これら頂部102A及び102Bの内側のカーブによって案内される脚部14及び16の折り曲げのタイミングをずらしたものである。また、必要に応じて、連結された紙針10を切り離すためのカッタを設けるようにしてもよい。
【0014】
次に、図2(A)〜(E)も参照して、本実施例の作用を説明する。まず、締結装置50のレバー90を上方に開き、外枠52内のマガジン60に、略コ字状に折り曲げた紙針10の連結シート30をセットする。連結シート30は、付勢手段70によって前方に付勢されており、先端の一つの紙針10が、前記外枠52の底面の開口54上に位置している。前記紙針10は、カッタ96,98の間に挟まれるとともに、押下げ部材92の本体94の下側に位置し、かつ、前記カッタ96,98の下端の突起97,99の上方に位置している。なお、前記カッタ96,98の先端部分は、前記外枠52の底面の開口54を通過して下方に突き出している。そして、前記下カバー部84の上面86の上に、綴じるダンボール42及び44を挟むようにセットする。
【0015】
そして、前記レバー90を押下げると、前記押下げ部材92とカッタ96,98は一体となって下方に移動し、前記上面86にセットされたダンボール42,44に、カッタ96,98の切刃96A,98Aによって切り込み穴46が形成される。更にレバー90の押下げを続けると、前記カッタ96,98の下端側の突起97,99が通過することにより、前記切り込み穴46が押し広げられる。このため、前記脚部14及び16の前記ループ22及びフック24が、切り込み穴46を通過可能となる(図2(B))。
【0016】
更にレバー90を押下げると、カッタ96,98の突起97,99の下側斜面97A,99Aが、前記案内台100の外側斜面100A,100Bに接触し、前記カッタ96,98が互いに離れる方向にガイドされる。すると、まず、前記紙針10の脚部14の先端が、前記案内台100の内側曲面101Aに接触し、続いて、前記紙針10の他方の脚部16の先端が、前記案内台100の内側曲面101Bに接触し、これら脚部14,16の一部が重なり合うように、前記本体部12に対して略平行な方向に折り曲がるようにガイドされる(図2(C))。これと同時に、前記レバー90の下端面90Aが、押上げ機構120の伝達部材112のアーム112A,112Bに接触し、ピン114を支点として前記伝達部材112に接続したアーム116Aと116Bが回動するため、前記アーム116Aの先端が、前記案内台100の図示しない案内溝に沿って上昇し始める。すると、前記アーム116Aに接続された押上げ部材110の上面が、図2(D)に示すように、折り曲げられた脚部14,16を、ダンボール42,44に向けて押し上げる。
【0017】
引き続きレバー90を押下げると、図2(D)に示すように、前記押上げ部材110と前記押下げ部材92の本体94によって、前記脚部14,16及びループ22及びフック24が挟み込まれ、前記脚部14のループ22と、脚部16のフック24が係合し、ダンボール42,44が確実に綴じられる。締結が完了し、前記レバー90を押下げる力を解除すると、該レバー90は、図示しない押上げバネの作用により、所定の高さまで復帰する(図2(E))。その後、綴じられたダンボール42,44を、締結装置50から外し、他の締結対象を挟んで上記と同様の動作を行う。
【0018】
このように、実施例1によれば、防水加工を施した紙針10を使用し、該紙針10の一対の脚部14,16の重ね合わせ部分を、プラスチック製の面ファスナー20のループ22とフック24の係合により締結することとしたので、次のような効果がある。
a,防水加工を施した紙材料により形成したため、水濡れに強い。
b,プラスチック製の面ファスナー20を利用しているため、従来の金属針を利用した場合と比べて強度に遜色がなく、重量物にも耐えることができる。
c,紙針10は、強靭であるが、軽く取り扱い自在なので、締結装置50の軽量化・小型化により、ポータブル手動式が可能となる。また、従来の固定式の大掛かりな装置に比べて大幅なコスト低減が可能である。
d,紙針10を利用してダンボール42,44を締結するため、ダンボール製品の利用後に始末する時には、カッタや鋏を使用することで、容易に解体できる。
e,紙針10の本体部12にロゴ26を設けることとしたので、企業名や生産者表示,あるいは、任意のPRなどを表示することができる。
f,紙針10を利用しているため、廃棄時に環境に与える影響が少ない。
【0019】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。
(2)前記実施例では、一方の脚部14の外面14Aにループ22を設け、他方の脚部16の内面16Bにフック24を設けることとしたが、逆であってもよい。また、脚部外面16Aと脚部内面14Bが重なり合う構成としてもよい。
(3)前記実施例では、紙針10がロール状に巻かれた状態を示したが、これも一例であり、必要に応じてロール状にすればよい。
(4)前記締結装置50の構造は一例であり、前記一対の脚部14及び16が折り曲げられるタイミングをずらす機構を備えたものであればよい。
【0020】
(5)前記実施例では、ダンボール42,44の重ね合わせ部分の締結に本発明の紙針10を利用することとしたが、これも一例であり、ダンボールの突き合わせ部分の連結に使用してもよい。
(6)前記実施例で示したロゴ26も一例であり、必要に応じて設けるようにすればよく、また、表示する内容も任意に変更してよい。
(7)面ファスナー20としては、一度接着した後の引き剥がしが可能なものであってもよいし、引き剥がしが不可能なものであってもよい。
(8)本発明の紙針10を使用して製作されたダンボール製品は、公知の各種物品の梱包などの用途全般に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、防水加工を施した紙針を使用し、該紙針の一対の脚部の重ね合わせ部分を、プラスチック製の面ファスナーのループとフックの係合により締結することとしたので、水濡れにも強く、重量物にも耐えられる強度を有し、かつ、締結装置の小型化・軽量化も可能となるので、ダンボールの締結の用途に適用できる。特に、金属針を使用した場合と遜色ない強度を有することから、重量物の梱包のために使用されるダンボールの締結の用途に好適である。
【符号の説明】
【0022】
10:紙針(ステープル)
12:本体部
14,16:脚部
14A,16A:外面
14B,16B:内面
20:面ファスナー
22:ループ
24:フック
26:ロゴ
28:連結部
30:連結シート
40:ロール
42,44:ダンボール
46:切り込み穴
50:締結装置(ステープラ)
52:外枠
54:開口
60:マガジン
70:付勢手段
80:本体カバー
82:上カバー部
84:下カバー部
86:上面
88:開口
90:レバー
90A:下端面
92:押下げ部材
94:本体
96,98:カッタ
96A,98A:切刃
97,99:突起
97A,99A:下側斜面
100:案内台
100A,100B:外側斜面
101A,101B:内側曲面
102A,102B:頂部
104:段差
110:押上げ部材
112:伝達部材
112A,112B:アーム
114:ピン
116A,116B:アーム
120:押上げ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンボール綴じ用紙針であって、
平面状の本体部と、該本体部の両端において略直角に折り曲げられる対向する一対の脚部を有し、前記本体部及び一対の脚部が防水性ないし耐水性を有するとともに、
前記一対の脚部は、前記本体部に対して略平行に折り曲げられたときに、互いに一部が重なる長さに形成されており、
前記一対の脚部の一方の脚部の外面であって、他方の脚部の内面と重なり合う部分に、プラスチック製の面ファスナーのループ側又はフック側のいずれか一方を設け、
前記一対の脚部の他方の脚部の内面であって、前記一方の脚部の外面と重なり合う部分に、前記面ファスナーのループ側又はフック側の他方を設けた、
ことを特徴とするダンボール綴じ用ステープル。
【請求項2】
前記本体部に、文字,数字,記号,図形,絵,写真の表示,もしくは着色を行ったことを特徴とする請求項1記載のダンボール綴じ用ステープル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−77875(P2012−77875A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225152(P2010−225152)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(591130216)
【出願人】(510264615)
【Fターム(参考)】