説明

チェックバルブ

【課題】チェックバルブに関し、1つのバルブで3系統以上の入力圧に対応することができるようにする。
【解決手段】複数のシリンダ室RS1,RS2,RS3と連通路RS0と複数の流体入口ポート21,22,23と流体出口ポート24と複数の連通孔31,32,33とを有するケーシング2と、作動流体圧を受ける受圧面11a,12a,13aを有する複数のピストン11,12,13と、シリンダ室RS1,RS2,RS3と連通路RS0とに充填された非圧縮性の充填流体とを備え、各連通孔31,32,33は閉鎖位置にあるときに閉鎖され且つ開放位置と中立位置にあるときに開放され、各ピストン11,12,13は充填流体を介在して相互に力を伝達可能であり、最大の作動流体圧を受けたピストン11(or12or13)が開放位置へ移動するとともに他のピストン12,13(or11,13or11,12)を閉鎖位置へ移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助制動装置が複数装備された車両のブレーキシステムの流体圧回路に好適に使用される、チェックバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、坂道発進補助装置やアンチスピンレギュレータ(ASR)や作業用補助制動装置(ロックブレーキ)や自動制動装置といった補助制動装置を多数装備する車両が増加している。
車両の制動装置は通常、圧縮エアや作動油等の作動流体の流体圧を利用して制動を実施するが、補助制動装置も装備されたブレーキシステムでは、ブレーキペダルの踏み込み量に応じて制動するメインの制動装置の流体圧と各補助制動装置の流体圧とのうちの最も高い流体圧を制動に利用するように、流体圧回路を構成する必要がある。
【0003】
上記のような補助制動装置を2つ装備した車両において、ブレーキシステムのエア回路を構成する場合、例えば図9に示すように、ダブルチェックバルブ101が2個使用されている。ダブルチェックバルブ101は公知のバルブであって、図10に示すように、2系統の入力圧(エア圧)のうちの圧力が高いほうの入力ポート101aを開き、圧力が高いほうの入力圧を出力ポート101bへ出力するようになっている。
【0004】
図9に示すようなエア回路の構成によって、ブレーキペダル102の踏み込み量に応じてメインの制動装置のブレーキバルブ103が作動するとともに、各補助制動装置の制御用バルブ104,105が作動する場合、各制動装置の中の最も高いエア圧でホイールブレーキを作動させることが可能になっている。なお、図9において、符号106はエアタンクを示し、符号107はブレーキチャンバ又はブレーキブースタを示している。
【0005】
また、例えば特許文献1には、アンチスピンレギュレータ(ASR)を装備した車両のブレーキシステムのエア回路において、ダブルチェックバルブを使用した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−2236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のように補助制動装置を複数装備する車両においては、ブレーキシステムのエア回路にダブルチェックバルブを複数個使用する必要があり、部品点数の増加や回路の煩雑化を招いている。
また、エア圧を利用したブレーキシステムに限らず、油圧を利用するブレーキシステムやブレーキシステム以外の流体圧回路においても、回路を簡素に構成することが望まれている。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みて案出されたもので、1つのバルブで3系統以上の入力圧に対応することができるようにした、チェックバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のチェックバルブは、複数のシリンダ室と、前記複数のシリンダ室の各一端部において前記複数のシリンダ室を連通する連通路と、前記複数のシリンダ室の各他端部に各シリンダ室の軸線方向と同一方向に延びるようにそれぞれ設けられ、前記複数のシリンダ室それぞれを外部に開口する複数の流体入口ポートと、前記複数のシリンダ室それぞれの側壁に設けられた複数の連通孔と、前記複数の連通孔それぞれと連通し外部に開口する流体出口ポートと、を有するケーシングと、前記複数のシリンダ室の各内部に移動可能にそれぞれ収容され、前記複数の流体入口ポートそれぞれに導入される作動流体の圧力を作動流体圧として受ける受圧面をそれぞれ有する複数のピストンと、前記複数のピストンによって封鎖された前記複数のシリンダ室と前記連通路とに充填された非圧縮性の充填流体と、をそなえ、前記複数の連通孔はそれぞれ、前記複数のピストンのうちの対応するピストンが前記各シリンダ室の各他端部側に設定された閉鎖位置にあるときに閉鎖され、一方、前記各シリンダ室の各一端部側に設定された開放位置にあるときと前記閉鎖位置と前記開放位置との間の中立位置にあるときに開放され、前記複数のピストンは何れも前記充填流体を介在して相互に力を伝達可能であって、前記複数のピストンのうち前記受圧面に最大の作動流体圧を受けたピストンが前記開放位置へ移動するとともに、前記充填流体を介在して他の全てのピストンを前記閉鎖位置へ移動させ、また、何れのピストンも前記受圧面に作動流体圧を受けていないときには前記中立位置に位置していることを特徴としている。
【0010】
なお、前記各シリンダ室の各一端部側に設けられ、前記各ピストンの前記開放位置より先への移動を規制するストッパをそなえていることが好ましい。また、前記各シリンダ室の各他端部に設けられ、前記各ピストンが前記閉鎖位置に移動した際に前記各ピストンと密着して対応する前記流体入口ポートを閉塞するシール部材をそなえていることが好ましい。
【0011】
また、前記複数のピストンの各受圧面の面積は互いに等しく、さらに、前記複数のシリンダ室は、軸線方向が互いに平行に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のチェックバルブによれば、1つのバルブで3系統以上の入力圧に対応することができる。したがって、例えば従来2個のダブルチェックバルブを必要とした3系統の入力がある流体圧回路において、1つのチェックバルブのみで対応することができる。その結果、従来の流体圧回路よりも配管やコネクタ類を削減することができ、部品点数削減,回路の簡素化,省スペース化,コスト低減,流体圧制御時の応答性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るチェックバルブを示す模式的な縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るチェックバルブを示す模式図であり、図1のA−A矢視断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るチェックバルブを示す模式図であり、図1のB−B矢視断面図である。
【図4】(a),(b)ともに、本発明の一実施形態に係るチェックバルブの作動を説明するための模式的な縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るチェックバルブが介装されたブレーキシステムのエア回路を示す模式図である。
【図6】本発明の変形例に係るチェックバルブを示す模式的な横断面図である。
【図7】本発明の別の変形例に係るチェックバルブを示す模式的な横断面図であって、(a)は入力系統が3つの場合、(b)は入力系統が4つの場合、(c)は入力系統が5つの場合を示している。
【図8】本発明のさらに別の変形例に係るチェックバルブを示す模式図であって、(a)はその側面視図、(b)は(a)のC−C矢視断面図、(c)は(a)のD−D矢視断面図である。
【図9】従来技術に係るダブルチェックバルブが介装されたブレーキシステムのエア回路を示す模式図である。
【図10】従来技術に係るダブルチェックバルブを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により本発明のチェックバルブの実施の形態について説明する。
<構成>
図5に示すように、本実施形態のチェックバルブ1は、車両のブレーキシステムのエア回路(流体圧回路)に好適に使用されるものである。図5では、図9と同じ構成部材には同じ符号を付している。つまり、図5に示すエア回路は、3つのブレーキ系統があるエア回路であって、エアタンク106からのエアが作動流体として使用され、ブレーキペダル102の踏み込み量に応じて作動するメインの制動装置のブレーキバルブ103から出力されるエア圧と、第1の補助制動装置の制御用バルブ104から出力されるエア圧と、第2の補助制動装置の制御用バルブ105から出力されるエア圧とが、各エア配管を通してチェックバルブ1の入力ポート(後述の入力ポート21,22,23)に入力され、各エア圧(後述の入力圧P1,P2,P3)のうちの最大の圧力が出力ポート(後述の出力ポート24)から出力されて、ブレーキチャンバ(又はブレーキブースタ)107に作用するように構成されている。
【0015】
チェックバルブ1は、図1に示すように、ケーシング2と、第1〜第3のピストン11,12,13とをそなえている。
ケーシング2は、第1〜第3の3つのシリンダ室RS1,RS2,RS3と、第1〜第3の3つの入力ポート(流体入口ポート)21,22,23と、1つの出力ポート(流体出口ポート)24とを有している。
【0016】
各シリンダ室RS1,RS2,RS3は、何れも円筒状に形成されるとともに、その軸線方向が互いに平行に形成されている。また、各シリンダ室RS1,RS2,RS3は、その一端部において連通路RS0によって連通するように形成されている。さらに、図2及び図3に示すように、各シリンダ室RS1,RS2,RS3の側壁には、各シリンダ室RS1,RS2,RS3と出力ポート24とを連通する連通孔31,32,33が形成されている。
【0017】
各入力ポート21,22,23は、図1に示すように、各シリンダ室RS1,RS2,RS3の他端部にそれぞれ設けられ、各シリンダ室RS1,RS2,RS3を外部(ケーシング外部)に開口するようになっている。各入力ポート21,22,23は、各シリンダ室RS1,RS2,RS3の軸線方向と同一方向に延びるように直線状に形成されている。また、各入力ポート21,22,23の直径は、各シリンダ室RS1,RS2,RS3の直径よりも小さく設定されている。
【0018】
出力ポート24は、上述のように各連通孔31,32,33に連通し、入力ポート21,22,23の軸線方向と直交する方向に延びるように直線状に形成され、外部に開口するようになっている。
第1〜第3のピストン11,12,13はそれぞれ、シリンダ室RS1,RS2,RS3の内部を下限位置(閉鎖位置)と上限位置(開放位置)との間で移動可能に収容されている。また、各ピストン11,12,13は受圧面11a,12a,13aを有している。各受圧面11a,12a,13aは、各ピストン11,12,13の入力ポート21,22,23側の端面であり、入力ポート21,22,23に導入されるエア(作動流体)の圧力(作動流体圧,入力圧)P1,P2,P3を受けるようになっている。また、各受圧面11a,12a,13aの面積は互いに等しくなるように形成されている。
【0019】
各シリンダ室RS1,RS2,RS3の連通路RS0の手前の位置にはストッパ41が取り付けられており、各ピストン11,12,13はストッパ41によって上限位置より先の一端部側への移動を規制されている。換言すれば、ストッパ41はピストン11,12,13の上限位置を規定している。また、各シリンダ室RS1,RS2,RS3の他端部の入力ポート21,22,23との境界位置には環状のシール部材42が取り付けられている。各ピストン11,12,13は、各入力ポート21,22,23の直径が各シリンダ室RS1,RS2,RS3の直径よりも小さい構造とシール部材42とよって下限位置より先の他端部側への移動を規制されているとともに、各ピストン11,12,13が下限位置へ移動した際に各ピストン11,12,13の受圧面11a,12a,13aがシール部材42に密着して各入力ポート21,22,23を閉塞するようになっている。
【0020】
ピストン11,12,13によって封鎖されたシリンダ室RS1,RS2,RS3と連通路RS0とには、非圧縮性の流体(充填流体)が充填されている。充填流体としては、例えばブレーキフルードが利用される。ブレーキフルードは低粘度で圧力による体積変化が小さく、広い温度域で非圧縮性流体として使用することができるという利点がある。3つのピストン11,12,13は、この充填流体を介在して軸線方向の力を相互に伝達可能になっており、3つのピストン11,12,13のうち、受圧面11a,12a,13aに最大の入力圧P1(又はP2、又はP3)を受けたピストン11(又は12、又は13)が上限位置へ移動し、充填流体を介在して残りの全てのピストン12,13(又は、11,13、又は11,12)を下限位置へ移動させるようになっている。
【0021】
あるピストン11(又は12、又は13)が上限位置へ移動したときには、そのピストン11(又は12、又は13)が収容されているシリンダ室RS1(又はRS2、又はRS3)の連通孔31(又は32、又は33)が開放され、その最大の入力圧P1(又はP2、又はP3)を出力ポート24へ出力し、一方、他のピストン12,13(又は11,13、又は11,12)は、ピストン11(又は12、又は13)が充填流体に加える力によって充填流体に押されて下限位置へ移動し、他のピストン12,13(又は11,13、又は11,12)が収容されているシリンダ室RS2,RS3(又はRS1,RS3、又はRS1,RS2)の連通孔32,33(又は31,33、又は31,32)を閉鎖するようになっている。
【0022】
本実施形態では、耐久性を考慮してピストン11,12,13を金属製としており、ピストン11,12,13の側面には、シール性を確保するために例えばOリング等の環状のシール部材(図示略)が取り付けられている。また、ストッパ41とシール部材42とはゴム等の弾性部材で形成されている。
何れの入力ポート21,22,23にもエアが導入されておらず、何れのピストン11,12,13も受圧面11a,12a,13aに入力圧P1,P2,P3を受けていない中立時には、全てのピストン11,12,13は、下限位置と上限位置との間の中立位置に位置している。各連通孔31,32,33は、各ピストン11,12,13が中立位置にあるときに各連通孔31,32,33の一部又は全部が開放されるように、その位置が設定されている。また、各連通孔31,32,33の位置は、各ピストン11,12,13が上限位置にあるときには各連通孔31,32,33の全部が開放され、各ピストン11,12,13が下限位置にあるときには各連通孔31,32,33の全部が閉鎖されるように設定されている。ピストン11,12,13が中立位置にあるときに連通孔31,32,33が開放されるのは、各入力ポート21,22,23に均等な入力圧P1,P2,P3が作用したときのブレーキのかかりを保証するためである。
【0023】
<作用・効果>
本発明の一実施形態に係るチェックバルブは上述のように構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
各ピストン11,12,13は、受圧部11a,12a,13aに入力圧P1,P2,P3を受圧することにより、シリンダ室RS1,RS2,RS3内を軸線方向に移動する。
【0024】
全ての入力圧P1,P2,P3がゼロである(もしくは、均等な大きさで入力圧P1,P2,P3が入力される)中立時には、各ピストン11,12,13は中立位置にあり、各入力ポート21,22,23は連通孔31,32,33を介して出力ポート24に連通している。
そして、図4(a)に、中立時(2点鎖線で示す状態)から入力圧P1〜P3が「入力圧P1>入力圧P2,P3」の大きさで生じた場合のチェックバルブ1の作動を示す。
【0025】
入力圧P1によって、各ピストン11,12,13から充填流体に加わる力のうち第1のピストン11からの力が最大となるため、第1のピストン11が上限位置へ移動し、充填流体を介在して他のピストン12,13を付勢して下限位置へ移動させて、第1の入力ポート21のみが開き、第2及び第3の入力ポート22,23は閉じる。その結果、第1の入力ポート21から導入されるエアの入力圧P1が連通孔31を通って出力圧として出力ポート24へ出力されるとともに、他の2つの入力側系統へ入力圧P1が流出するのを防止することができる。
【0026】
続いて、この図4(a)の状態から「入力圧P2>入力圧P1,P3」の状態へ移行した場合の作動を図4(b)に示す。
入力圧P1,P2によって、第1のピストン11と第2のピストン12とから充填流体に加わる力の関係が逆転し、第2のピストン12からの力が最大となるため、第2の入力ポート22が開き、第1の入力ポート21は閉じる。なお、第3の入力ポート23は閉じたままである。その結果、入力圧P2が連通孔32を通って出力圧として出力ポート24へ出力されるとともに、他の2つの入力側系統へ入力圧P2が流出するのを防止することができる。
【0027】
このようなチェックバルブ1であれば、3つの入力圧P1,P2,P3のうちの最も高い入力圧を出力圧として出力することができ、1つのバルブで3系統の入力圧P1,P2,P3に対応することができる。したがって、従来2個のダブルチェックバルブを必要とした3系統の入力がある回路において、図5に示すように、1つのチェックバルブ1のみで対応することができる。そして、従来の流体圧回路よりも配管やコネクタ類を削減することができ、部品点数削減,回路の簡素化,省スペース化,コスト低減,流体圧制御時の応答性向上を図ることができる。
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【0028】
例えば、上記実施形態では、各ピストン11,12,13の受圧面11a,12a,13aの面積が互いに等しくなるように形成されているが、互いに異なる面積に形成されても良い。ただし、各ピストン11,12,13のストローク量や連通孔31,32,33の位置の設定を容易にするために、受圧面11a,12a,13aの面積は互いに等しいことが好ましい。
【0029】
また、上記実施形態では、ストッパ41をケーシング2とは別体に備えて上限位置を規定し、ピストン11,12,13の移動を規制するようにしたが、例えば、上限位置におけるケーシング2の形状を変更し、ケーシング2の一部をシリンダ室RS1,RS2,RS3内側に突起させて突起部を設ける等して、ストッパ41の替わりとしても良い。
また、上記実施形態では、チェックバルブ1を3系統の入力圧が作用するトリプルチェックバルブとして説明したが、ケーシングのシリンダ室の数やピストンの数を増やして、ケーシング内の充填流体に4系統以上の入力圧が作用するマルチチェックバルブとしても良い。
【0030】
また、上記実施形態では、図3に示すようにシリンダ室が横断面視で1直線に並ぶとともにその軸線方向が互いに平行に形成されて、複数の入力圧が1方向から入力されるように構成されているが、このような構成に限定されない。
例えば、図6に第1の変形例のチェックバルブ50の横断面図を示して説明すると、複数のシリンダ室RS51のうち半分を1つの直線上に並べるとともに残りの半分を別のもう1つの直線上に並べ、また、その軸線方向が互いに平行になるように構成しても良い。この場合、偶数個(図6では4個であるがこれに限らない)のシリンダ室RS51を対称的に並べると構造がより簡素になるという利点がある。なお、図6において、符号52は出力ポートを示し、符号53は連通孔を示し、符号54はケーシングを示している。ただし、図3に示す実施形態のように、シリンダ室が横断面視で一直線に並ぶとともにその軸線方向が互いに平行に形成され、複数の入力圧が1方向から入力されるように構成されていれば、チェックバルブの構成をより簡素且つ小型にすることができるという利点がある。
【0031】
また、図7(a)〜(c)に第2の変形例のチェックバルブ60,70,80の横断面図を示して説明すると、複数のシリンダ室RS61,RS71,RS81の各中心軸点が1つの環上に並ぶように構成しても良い。この場合、例えば、前記環の中心部に出力ポート62,72,82の基部(出力ポート基部)62a,72a,82aを設ける。そして、各シリンダ室RS61,RS71,RS81の側壁に形成された連通孔63,73,83から出力ポート基部62a,72a,82aに向かって延びる通路(第1の出力ポート通路)62b,72b,82bを形成するとともに、出力ポート基部62a,72a,82aからケーシング64,74,84外部に向かって延びる通路(第2の出力ポート通路)62c,72c,82cを形成するようにすると良い。
【0032】
また、図8(a)〜(c)に第3の変形例のチェックバルブ90を示して説明すると、複数のシリンダ室RS91は軸線方向が互いに平行に形成されることに限定されず、複数の入力圧が4方向から入力されるように構成しても良い。この場合、出力ポート92が、各シリンダ室RS91に設けられた各連通孔93に連通し外部に開口するように、ケーシング94の背面側に設けられていれば好ましい。
【0033】
つまり、本発明のチェックバルブは少なくとも、ケーシングが、複数のシリンダ室と、複数のシリンダ室の各一端部において複数のシリンダ室を連通する連通路と、複数のシリンダ室の各他端部に各シリンダ室の軸線方向と同一方向に延びるようにそれぞれ設けられ、複数のシリンダ室それぞれを外部に開口する複数の入力ポートと、複数のシリンダ室それぞれの側壁に設けられた複数の連通孔と、複数の連通孔それぞれと連通し外部に開口する出力ポートとを有するように構成する。また、複数のシリンダ室の各内部に移動可能にそれぞれ収容され、複数の流体入口ポートそれぞれに導入されるエア(作動流体)の圧力を入力圧(作動流体圧)として受ける受圧面をそれぞれ有する複数のピストンと、複数のピストンによって封鎖された複数のシリンダ室と連通路とに充填された非圧縮性の充填流体とをそなえる。さらに、複数の連通孔がそれぞれ、複数のピストンのうちの対応するピストンが各シリンダ室の各他端部側に設定された閉鎖位置にあるときに閉鎖され、一方、各シリンダ室の各一端部側に設定された開放位置にあるときと閉鎖位置と開放位置との間の中立位置にあるときに開放され、複数のピストンは何れも充填流体を介在して相互に力を伝達可能であって、複数のピストンのうち受圧面に最大の作動流体圧を受けたピストンが開放位置へ移動するとともに、充填流体を介在して他の全てのピストンを閉鎖位置へ移動させ、また、何れのピストンも受圧面に作動流体圧を受けていないときには中立位置に位置するように構成すれば良い。
【0034】
このようにチェックバルブを構成すれば、複数の入力圧のうちの最も高い入力圧を出力圧として出力することができ、3系統以上の入力圧に適切に対応することができる。ただし、本発明のチェックバルブの構成は、シリンダ室やピストンや入力ポートや連通孔の数を2つにして2系統の入力圧に対応するものとしても構わない。
また、上記実施形態では、チェックバルブ1は車両のブレーキシステムのエア回路に使用され、チェックバルブ1にはエアが流通するものとして説明したが、エアの替わりに作動油が作動流体として流通するようにしても良い。また、チェックバルブ1は車両のブレーキシステムの回路に使用されると説明したが、車両のブレーキシステムの回路以外の流体圧回路に使用しても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 チェックバルブ
2 ケーシング
11,12,13 ピストン
11a,12a,13a 受圧面
21,22,23 入力ポート(流体入口ポート)
24 出力ポート(流体出口ポート)
31,32,33 連通孔
41 ストッパ
42 シール部材
S0 連通路
S1,RS2,RS3 シリンダ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリンダ室と、前記複数のシリンダ室の各一端部において前記複数のシリンダ室を連通する連通路と、前記複数のシリンダ室の各他端部に各シリンダ室の軸線方向と同一方向に延びるようにそれぞれ設けられ、前記複数のシリンダ室それぞれを外部に開口する複数の流体入口ポートと、前記複数のシリンダ室それぞれの側壁に設けられた複数の連通孔と、前記複数の連通孔それぞれと連通し外部に開口する流体出口ポートと、を有するケーシングと、
前記複数のシリンダ室の各内部に移動可能にそれぞれ収容され、前記複数の流体入口ポートそれぞれに導入される作動流体の圧力を作動流体圧として受ける受圧面をそれぞれ有する複数のピストンと、
前記複数のピストンによって封鎖された前記複数のシリンダ室と前記連通路とに充填された非圧縮性の充填流体と、をそなえ、
前記複数の連通孔はそれぞれ、前記複数のピストンのうちの対応するピストンが前記各シリンダ室の各他端部側に設定された閉鎖位置にあるときに閉鎖され、一方、前記各シリンダ室の各一端部側に設定された開放位置にあるときと前記閉鎖位置と前記開放位置との間の中立位置にあるときに開放され、
前記複数のピストンは何れも前記充填流体を介在して相互に力を伝達可能であって、前記複数のピストンのうち前記受圧面に最大の作動流体圧を受けたピストンが前記開放位置へ移動するとともに、前記充填流体を介在して他の全てのピストンを前記閉鎖位置へ移動させ、また、何れのピストンも前記受圧面に作動流体圧を受けていないときには前記中立位置に位置している
ことを特徴とする、チェックバルブ。
【請求項2】
前記各シリンダ室の各一端部側に設けられ、前記各ピストンの前記開放位置より先への移動を規制するストッパをそなえた
ことを特徴とする、請求項1記載のチェックバルブ。
【請求項3】
前記各シリンダ室の各他端部に設けられ、前記各ピストンが前記閉鎖位置に移動した際に前記各ピストンと密着して対応する前記流体入口ポートを閉塞するシール部材をそなえた
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のチェックバルブ。
【請求項4】
前記複数のピストンの各受圧面の面積は互いに等しい
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載のチェックバルブ。
【請求項5】
前記複数のシリンダ室は、軸線方向が互いに平行に形成されている
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載のチェックバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−122631(P2011−122631A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279780(P2009−279780)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】