説明

チオクト酸又はジヒドロリポ酸と分岐鎖シクロデキストリンとの包接化合物

【目的】チオクト酸又はジヒドロリポ酸を経口投与しても、血中に高い濃度で取り込ませることができる方法。
【構成】チオクト酸又はジヒドロリポ酸と分岐鎖シクロデキストリンとの包接化合物。該包接化合物を含んでなる健康食品

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
【0002】
本発明は、チオクト酸又はジヒドロリポ酸と分岐鎖シクロデキストリンとの包接化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
チオクト酸は細胞物質代謝の構成成分であり、多くの植物及び動物有機体中で見出され、ピルベート及び他のα−ケト酸の酸化による脱カルボキシルの際の補酵素の一つとして作用している。以前から、チオクト酸は、多様な疾患、特に肝臓疾患、キノコ中毒による肝臓障害、並びに物質代謝疾患を伴う末梢神経変化の糖尿病による末梢神経障害、及びアルコール性の末梢神経障害の改善に使用されている。また、その抗酸化性物質としてのアンチエイジング作用、並びに糖の代謝促進によるダイエット効果も注目されている。光学的に純粋な(R)−及び(S)−チオクト酸は、例えば欧州特許第261336号明細書(特許文献1)中の方法により得られる。ジヒドロリポ酸は、チオクト酸の還元された形であり、動物実験からヘビ毒を失活させることが知られている。
【0004】
チオクト酸又はジヒドロリポ酸の使用態様としては、例えば、特開平7−188304号明細書(特許文献2)において、チオクト酸又はジヒドロリポ酸とシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体との包接化合物として存在する顆粒剤、噛砕き錠剤、及び発泡錠剤が開示されており、シクロデキストリンとの包接化により、チオクト酸及びジヒドロリポ酸が患者に与える不快な感覚(例えば、不快な味)の低減と、生物学的有効性の向上がなされている。従って、チオクト酸又はジヒドロリポ酸をシクロデキストリンとの包接化合物形成により、体内で有効に活用することには一定の改善が達成されている。
【0005】
しかしながら、チオクト酸又はジヒドロリポ酸を、経口投与時に血中内により高い濃度で取り込ませることができる方法についての要請は未だ存在する。
【特許文献1】欧州特許第261336号明細書
【特許文献2】特開平7−188304号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、チオクト酸又はジヒドロリポ酸を経口投与で血中内により高い濃度で取り込ませることができるシクロデキストリン包接化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、チオクト酸又はジヒドロリポ酸を分岐鎖のあるシクロデキストリンとの包接化合物の形で経口投与することにより、チオクト酸と分岐鎖の無いシクロデキストリンとの包接化合物の場合に比べて、チオクト酸又はジヒドロリポ酸が非常に高い割合で血中に取り込まれることを見出した。
【0008】
経口投与時のチオクト酸又はジヒドロリポ酸の血中への取り込みを、分岐鎖シクロデキストリンとの包接化合物の使用により顕著に高めることができるという本発明の効果は、これまで全く予期することができなかった効果である。
【0009】
従って、本発明は、チオクト酸又はジヒドロリポ酸と分岐鎖シクロデキストリンとの包接化合物に関する。より特定的には、本発明は、健康補助食品として経口投与するためのチオクト酸又はジヒドロリポ酸と分岐鎖シクロデキストリンとの包接化合物に関する。
【0010】
チオクト酸は、別名α−リポ酸とも呼ばれ、化学名は1,2−ジチアシクロペンタン−3−吉草酸である。本発明に用いられるチオクト酸は、ラセミ体でも、純粋な(R)−もしくは(S)−チオクト酸でも、又は任意の組成の(R)−及び(S)−チオクト酸の混合物でもよい。
【0011】
ジヒドロリポ酸は、チオクト酸の還元された形であり、化学名は6,8−ジメルカプト−オクタン酸である。本発明に用いられるジヒドロリポ酸は、ラセミ体でも、純粋な(R)−もしくは(S)−ジヒドロリポ酸でも、又は任意の組成の(R)−及び(S)−ジヒドロリポ酸の混合物でもよい。
【0012】
分岐鎖シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン(シクロヘキサアミロース、6−グルコース単位から環状に構成されている)、β−シクロデキストリン(シクロへプタアミロース、7−グルコース単位から環状に構成されている)、又はγ−シクロデキストリン(シクロオクタアミロース、8−グルコース単位から環状に構成されている)の分岐糖鎖誘導体であり、これらの混合物も含まれる。特に好ましい分岐鎖シクロデキストリンは、β−シクロデキストリンの分岐糖鎖誘導体である。
【0013】
分岐糖鎖は、単糖類から十糖類までの糖類からなる糖鎖であることが好ましく、単糖類から五糖類までの糖類からなる糖鎖がより好ましく、単糖類から三糖類までの糖類からなる糖鎖がさらに好ましく、そして、単糖類又は二糖類からなる糖鎖が最も好ましい。例えば、単糖類からなる糖鎖には、グルコース、マンノース、ガラクトース、又はN−アセチルグルコサミンのような単糖類から誘導された糖鎖が含まれ、二糖類からなる糖鎖にはマルトシル等が含まれる。三糖以上の糖からなる糖鎖とは、単糖類3分子以上がグリコシド結合によって脱水縮合して生ずる糖から誘導された糖鎖であり、例えば、マルトトリオシル等のマルトオリゴシルが挙げられる。分岐糖鎖の数は、α−シクロデキストリンの場合は1〜6、βシクロデキストリンの場合は1〜7、並びにγ−シクロデキストリンの場合は1〜8であり、いずれの場合も好ましくは1〜2である。
【0014】
よって、本発明の包接化合物に用いられる分岐鎖シクロデキストリンには、例えば、α、β、又はγ−グルコシルシクロデキストリン、ジグルコシルシクロデキストリン、マルトシルシクロデキストリン、ジマルトシルシクロデキストリン、又はマルトトリオシルシクロデキストリン、グルクロニルグルコシルシクロデキストリン等、並びに、これらの混合物が含まれる。
【0015】
チオクト酸又はジヒドロリポ酸からの包接化合物の製造は、多様な方法で行うことができ、例えば、最も簡単な方法は次の方法である。
【0016】
チオクト酸又はジヒドロリポ酸を4.7〜50倍、好ましくは6〜20倍、特に好ましくは7〜12倍の量(それぞれ水不含、重量比)の分岐鎖シクロデキストリンと一緒に、例えば10〜80℃、好ましくは18〜50℃、特に好ましくは20〜30℃の水に懸濁させ、チオクト酸又はジヒドロリポ酸が溶解するまで数分〜数時間撹拌する。得られた混合液を冷却し、濾別することにより包接化合物が得られる。
【0017】
良好な水溶性を有する分岐鎖シクロデキストリンを包接化合物の製造に使用する場合には、分岐鎖シクロデキストリンの水溶液にチオクト酸又はジヒドロリポ酸を溶解させることにより得られる混合液を、凍結乾燥又は噴霧乾燥することにより包接化合物を得ることもできる。
【0018】
別の製造方法としては、チオクト酸又はジヒドロリポ酸を、分岐鎖シクロデキストリンと、分岐鎖シクロデキストリンに対して同じ割合の水と一緒に10〜80℃、好ましくは18〜50℃、特に好ましくは20〜30℃で数分〜数時間混練し、得られた混合物を乾燥させる方法が挙げられる。
【0019】
チオクト酸又はジヒドロリポ酸の包接化合物を健康食品に応用する例としては、打錠品、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、ドリンク用剤、顆粒剤、散剤、錠剤、噛砕き錠剤、発泡錠剤、発泡顆粒剤、ペレット剤、及び溶液剤等、様々な形に応用することができ、これらは経口で服用することができる。
【0020】
これらの製剤の製造は、調剤学的技術において常用される公知の方法を本発明の包接化合物に適用することにより行われる。
【0021】
顆粒剤を製造する場合は、例えば、次の手順で行われる。
【0022】
乾燥させた本発明包接化合物を、結合剤及び湿潤剤と共に通常の手順により造粒し、矯味剤及び/又は甘味剤と混合し、薬袋中に望ましい用量で充填する。薬袋の内容物は、水やフルーツジュースに撹拌混合され、飲用される。このように、任意の用量について経口服用することができる。
【0023】
顆粒剤は、チオクト酸1重量部に対して、結合剤0.001〜20重量部、流動助剤0.001〜10重量部、並びに、場合により湿潤剤及び生理学的に懸念のない矯味剤、甘味剤及び/又は芳香剤を含有する。
【0024】
噛砕き錠剤を製造する場合は、接着防止剤0.01〜5重量部、及び場合により更に矯味剤(例えばフルクトース、キシリット、ソルビット、又はマンニット)と、前記の顆粒剤を混合し、錠剤へと圧縮成形する。
【0025】
発泡錠剤又は発泡顆粒剤を製造する場合は、まず、本発明包接化合物を、通常の方法(例えば、真空造粒器中)により炭酸塩又は酸成分と一緒に造粒する。次いで、得られた混合物に、矯味剤、不足する酸成分又は炭酸塩、並びに、常用される流動調節剤及び離型剤を添加し、そして、この混合物を錠剤へとプレス成形し、薬袋中に充填する。この錠剤又は顆粒剤は水中に懸濁され、飲用される。
【0026】
発泡顆粒剤又は発泡錠剤の場合は、生理学的に懸念のない常用される発泡混合物を含有する。含有される発泡混合物の量は、チオクト酸の重量に対して0.05〜30重量部である。この発泡混合物は、水性又はアルコール性媒質中において酸の存在により二酸化炭素を発生する物質(CO2供給物)と薬学的に許容できる有機酸とからなる。
【0027】
CO2供給物としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、又はカルシウムの、炭酸塩又は炭酸水素塩、又はこれらの塩の混合物が挙げられる。マグネシウム及びカルシウムの場合には、炭酸塩は中性であることが好ましい。
【0028】
有機酸としては、2〜8個の、好ましくは2〜6個のC原子を有する有機の飽和又は不飽和ジカルボン酸及びトリカルボン酸が挙げられる。この有機酸は、1、2、3、又は4個の、好ましくは1又は2個のヒドロキシ基を含有することもできる。有機酸の例には、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、及びアルギン酸、並びにこれらの酸の混合物が含まれる。
【0029】
発泡混合物のCO2供給物及び有機酸の含有濃度は、チオクト酸1重量部に対して、例えば、それぞれ0.02〜18重量部及び0.03〜12重量部である。
【0030】
発泡錠剤を製造する場合は、CO2供給物を造粒前に添加し、有機酸を、例えば滑剤、矯味剤、甘味剤、及び芳香剤、並びに、場合によっては充填剤、結合剤、及び崩壊剤と一緒に、顆粒乾燥後に混合することが好ましい。
【0031】
顆粒剤、噛砕き錠剤、又は発泡錠剤の製造には、例えば、調剤学的技術文献(例えば Standardwerk Sucker, Fuchs, Speiser, Pharmazeutische Technologie, Thieme Verlag, Stuttgart)に記載されているような通常の方法が適合される。乾燥以外の全ての製造工程は、例えば10〜80℃、好ましくは18〜50℃、特に好ましくは20〜30℃の温度で行われる。顆粒剤の乾燥工程は、例えば、30〜80℃、好ましくは40〜70℃で行われる。製造の際には、全ての調剤学的に慣用される結合剤、例えば、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ゼラチン、デンプン、ポリグリコール(平均分子量1000〜3500ダルトン)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ビニルピロリド−ビニルアセテート−コポリマー、アルギネート、サッカロース又はグルコース、多糖、天然ゴム、アラビアゴム、トラガカント、ペクチン、シクロデキストリン、及びグアーゴムを、顆粒量に対して1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%、特に好ましくは10〜15重量%の量で使用することができる。この場合は、異なる結合剤、例えば異なるセルロース誘導体同士を互いに同時に使用することもできる。結合剤は、乾燥粉末混合物の形で混入されるか、造粒溶液中に溶かされるか、又は分散されて導入される。乾燥されて混入される結合剤と、溶かされるか又は分散させられた結合剤との組合せも可能である。
【0032】
結合剤は、チオクト酸1重量部に対して0.01〜1重量部を使用するのが好ましい。
【0033】
必要な場合には、充填剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、流動助剤、潤滑剤、及び/又は接着防止剤が顆粒剤に添加される。
【0034】
充填剤としては、例えば、セルロース、セルロース誘導体、サッカロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、デンプン、化工デンプン、及び糖アルコール(例えばソルビトール又はマンニトール)を使用することができる。
【0035】
崩壊剤としては、例えば、デンプン、化工デンプン(例えばナトリウム−デンプングリコラート、スターチ1500)、セルロース、セルロース誘導体、アルギネート、架橋ポリビニルピロリドン、又は架橋カルボキシメチルセルロース(Ac−Di−Sol/FMC)を使用することができる。
【0036】
流動助剤としては、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、又はステアリン酸マグネシウムが適している。
【0037】
潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、D,L−レシチン、タルク、ステアリン酸、ポリグリコール(平均分子量3000〜35000)、脂肪アルコール、又はワックスが適している。
【0038】
接着防止剤としては、例えば、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、又はD,L−レシチンが使用できる。
【0039】
顆粒剤、噛砕き錠剤、又は発泡錠剤は、例えば100mg〜最大3gのチオクト酸を含有する。チオクト酸は一般に10〜80重量%の割合で含有される。
【0040】
さらに、顆粒剤、噛砕き錠剤、又は発泡錠剤には、矯味剤、甘味剤、及び/又は芳香剤を混入することが望ましい。
【0041】
芳香剤としては、例えば粉末芳香物が挙げられ、例えば、パイナップル、リンゴ、アプリコット、キイチゴ、サクランボ、コーラ、オレンジ、パッションフルーツ、レモン、グレープフルーツ、バニラ、又はチョコレートの粉末芳香物が挙げられる。顆粒剤の場合は、チオクト酸1重量部に対して芳香剤0.05〜0.2重量部を含有すべきである。
【0042】
甘味剤としては、サッカリン及びそのナトリウム塩、シクロアミン酸及びそのナトリウム塩、アンモニウムグリシルリシネート、フルクトース、キシリット、ソルビット、マンニット、アスパルテーム、及びアセスルファム−Kを使用することができる。サッカリン−ナトリウム1部とナトリウムシクラメート10部(それぞれ重量部)との混合物が特に好ましい。顆粒剤の場合は、チオクト酸又はジヒドロリポ酸1重量部に対して、甘味剤0.003〜12重量部を含有すべきである。
【0043】
使用者に与える不快感(例えば、不快な味)の改善のためには、これらの顆粒剤を被覆してもよい。この場合、例えば、経口服用された後に胃液又は腸管中で初めて溶解するような被覆を使用することができる。被覆の製造のためには、例えば、ジメチルアミノアクリル酸及び中性のメタクリル酸エステルのコポリマーが使用される。これらは水及び唾液中では溶解しないが、酸性領域下で溶解する(例えば、EudragtR E;製造元:Roehm GmbH)。
【0044】
前記の被覆は、常用される可塑剤(例えばジブチルセバセート、クエン酸エステル及び酒石酸エステル、グリセリン及びグリセリンエステル、及び、フタル酸エステル及び類似の物質)を含有することができ、更には、水溶性物質(例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアセテートからのコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース)を含有することもできる。固形物(例えばタルク及び/又はステアリン酸マグネシウム)を被覆中に添加することもできる。
【0045】
この被覆は、有機溶媒による溶液又は水溶液の吹付けにより行うことができ、その際、最適な加工性を得るために、他の助剤(例えば界面活性物質又は顔料)を添加することもできる。
【0046】
この吹付けは、例えば糖衣被覆釜、穿孔釜、又は空気懸濁法(例えば平滑流動床装置 WLSD 5)で行われる。
【0047】
この被覆はコアセルベーション法により行うこともでき、その場合はいわゆるマイクロカプセルが形成される。
【0048】
顆粒上には、チオクト酸1重量部に対してラッカー乾燥物質0.0125〜2重量部を塗布すべきである。
【実施例】
【0049】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
【0050】
実施例1:チオクト酸−マルトシル−β−シクロデキストリンの調製
36gのマルトシル−β−シクロデキストリン(商品名:G2−β−CDTM、株式会社横浜国際バイオ研究所製)を60mLの蒸留水に溶解し、温度を25℃に保ちホモジナイザーで4000rpmで攪拌しながら、3.3gのチオクト酸を徐々に加えた。チオクト酸を加え終わってから、30分間攪拌を行った。0.45μmのメンブランフィルターで濾過し透明な液体が得られた。この液体を凍結乾燥することにより39gの粉末状の標題の包接化合物を得た。
【0051】
得られた包接化合物100mgを、飽和食塩水10mL及びジエチルエーテルを入れた分液ロートに加えて激しく振とうした。ジエチルエーテル層を全量取り出し、窒素を用いて乾固させた後にメタノール2mLを加えて溶解した。この溶液を0.45μmのメンブランフィルターで濾過し、高速液体クロマトグラフィー(システム:TOSOH、カラム:Wakosil-II 5C18 AR、カラム温度:35℃、流速:1.0mL/分、溶離液:0.04%酢酸・50%メタノール液、検出器:UV330nm)に供した。分析の結果、得られた包接化合物のチオクト酸含有量は、83mg/gであった。
【0052】
実施例2:チオクト酸−マルトシル−α−シクロデキストリンの調製
18gのマルトシル−α−シクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製)を30mLの蒸留水に溶解し、温度を25℃に保ちホモジナイザーで4000rpmで攪拌しながら、2.0gのチオクト酸を徐々に加えた。チオクト酸を加え終わってから、30分間攪拌を行った。実施例1と同様に操作し、19gの粉末状の標題の包接化合物を得た。実施例1と同様の操作で分析したところ、この包接化合物のチオクト酸含有量は95mg/gであった。
【0053】
実施例3:チオクト酸−グルクロニルグルコシル−β−シクロデキストリンの調製
36gのグルクロニルグルコシル−β−シクロデキストリン(株式会社横浜国際バイオ研究所製)を60mLの蒸留水に溶解し、温度を25℃に保ちホモジナイザーで4000rpmで攪拌しながら、3.5gのチオクト酸を徐々に加えた。チオクト酸を加え終わってから、30分間攪拌を行った。実施例1と同様に操作し、39gの粉末状の標題の包接化合物を得た。実施例1と同様の操作で分析したところ、この包接化合物のチオクト酸含有量は85mg/gであった。
【0054】
試験例1
被験物質:上記の実施例1により調製されたチオクト酸−マルトシル−β−シクロデキストリン(チオクト酸含有量8%;以下、チオクト酸包接化合物ともいう)。なお、シクロデキストリンに包接されていないチオクト酸(純度100%)を比較物質として用いた。
【0055】
被験動物:6週齢で購入して7日間予備飼育した雄性SD(SPF)ラット。これらラットは、予備飼育期間及び試験期間を通して、室温24±3℃、相対湿度55±15%の飼育室(照明時間7時〜19時、換気回数18回/時)で飼育した。ラットは3匹/ケージとし、固形飼料(MF、オリエンタル酵母工業株式会社製)と滅菌蒸留水をそれぞれ自由に与えた。ラットの個体識別は、ピクリン酸を被毛に塗布することにより行った。試験開始前日の18時間前より絶食を行った。
【0056】
試験方法:上記のラットをそれぞれ3匹ずつからなる11群に分けた。各々の群は、試験開始時の体重に基づいて、それら3匹の平均体重がほぼ同じになるように分けた。11群のうちの1群のラットについて、被験物質及び比較物質のいずれもを投与することなく、ネンブタール麻酔下で、ヘパリン加10ml注射筒を用いて心臓から採血をした(これをコントロール群とする)。得られた血液は採血後直ちに遠心し、ここで得られた血漿は−80℃で保存された。残りの10群のうちの5群のラットに対して、純水に溶解させた被験物質の溶液を、チオクト酸量含有量に換算して30mg/kg体重となるように経口投与した。また、その残りの5群のラットに対しては、純水に溶解させた比較物質を、30mg/kg体重となるように経口投与した。なお、ラットに対する投与容量はそれぞれ1.0ml/100g 体重となるように調節した。経口投与後0.5、1、2、3、及び4時間後に、各被験物質投与群及び各比較物質投与群のラットについて、コントロール群と同じ方法で採血した。HPLCで、血漿中のチオクト酸及び公知物質であるチオクト酸代謝物質:テトラノルリポ酸、ビスノルリポ酸、及び4,6−ビスメチルメルカプトヘキサン酸、の濃度を測定した(システム:DIONEX、カラム:Wakosil-II 5C18 AR、カラム温度:30℃、流速:0.6ml/分、溶離液:50mM KH2PO4:CH3CN=69:31(pH2.3)、検出器:ECD)。
【0057】
試験結果:試験結果を、以下の表及び図1〜2に示す。表及び図中の濃度の値は、各時間後の血漿中濃度から、コントロール群の濃度を引いた値である。
【0058】
チオクト酸濃度(μM;各群3匹のラットの平均値)
【0059】
【表1】

【0060】
テトラノルリポ酸濃度(μM;各群3匹のラットの平均値)
【0061】
【表2】

【0062】
ビスノルリポ酸濃度(μM;各群3匹のラットの平均値)
【0063】
【表3】

【0064】
4,6−ビスメチルメルカプトヘキサン酸濃度(μM;各群3匹のラットの平均値)
【0065】
【表4】

【0066】
上記の表及び図1〜2から明らかなように、チオクト酸包接化合物を経口投与した場合には、包接されていないチオクト酸の場合に比べて、血漿中に非常に高い濃度でチオクト酸とその代謝産物が検出された。このことは、チオクト酸を分岐鎖シクロデキストリンで包接することにより、経口投与時に血中への取り込みが飛躍的に向上することを示している。
【0067】
試験例2
被験物質:上記の実施例1により調製されたチオクト酸−マルトシル−β−シクロデキストリン(チオクト酸含有量10%;以下、被験物質2ともいう)、及び、上記の実施例1におけるマルトシル−β−シクロデキストリンの代わりに、株式会社横浜国際バイオ研究所から市販されているイソエリートTM(マルトシル−α−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン、及びマルトシル−γ−シクロデキストリンの混合物)を用いて、実施例1と同様の手順で調製された、チオクト酸−マルトシル−α−シクロデキストリン、チオクト酸−マルトシル−β−シクロデキストリン、及びチオクト酸−マルトシル−γ−シクロデキストリンの混合物(チオクト酸含有量20%;以下、被験物質3ともいう)。なお、分岐鎖のないα−シクロデキストリンに包接されているチオクト酸(チオクト酸含有量20%;以下、比較物質2ともいう)、分岐鎖のないβ−シクロデキストリンに包接されているチオクト酸(チオクト酸含有量20%;以下、比較物質3ともいう)、及び分岐鎖のないγ−シクロデキストリンに包接されているチオクト酸(チオクト酸含有量20%;以下、比較物質4ともいう)を比較物質として用いた。
【0068】
試験方法:秤量した種々の重量の被験物質2及び3、並びに比較物質2〜4の粉末に、純水を加えて、それぞれ100mLに調製した。これらを、25℃の温度下で、2000rpmで30分間ホモジナイズした。これらのそれぞれの上澄み液について、試験例1と同様の手順で、チオクト酸濃度を測定した。
【0069】
試験結果:図3から明らかなように、分岐鎖シクロデキストリンを用いた包接化合物は、分岐鎖のないシクロデキストリンを用いた場合に比べて、チオクト酸の水への溶解性を飛躍的に向上させた。このことは、チオクト酸が分岐鎖シクロデキストリンで包接されることにより水への溶解性が増し、経口投与時に血中へと取り込まれやすくなることを示している。
【0070】
実施例3:チオクト酸−マルトシル−β−シクロデキストリンを含有する健康食品(ソフトカプセル剤)の製造
上記の実施例1により調製された120mgのチオクト酸−マルトシル−β−シクロデキストリン包接化合物、150mgのココナードMTTM(花王株式会社製)、15mgのポエムS−100TM(理研ビタミン株式会社製)、及び15mgのビースワックスTM(三木化学工業株式会社製)を調合し、ゼラチンシートの皮膜の中に成形充填し、タンブラー乾燥(20℃〜30℃、湿度50%以下)を24〜60時間程度行って標題のソフトカプセル剤を製造した。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】試験例1の試験結果を示す。グラフ中のバーは、測定したラットによる最大値と最小値との幅を表す。グラフの横軸の0はコントロール群を示し、1〜4は経口投与後の時間を表す。グラフの縦軸は、各時間後の血漿中濃度から、コントロール群の濃度を引いた値(μM)を表す。
【図2】試験例1の試験結果を示す。グラフ中のバーは、測定したラットによる最大値と最小値との幅を表す。グラフの縦軸と横軸については、図1と同様である。
【図3】試験例2の試験結果を示す。グラフの横軸は純水100mlに対する被験物質又は比較物質の重量(g)を表し、グラフの縦軸はホモジナイズ後の上澄み液中のチオクト酸濃度(mg/ml、HPLCで測定)を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオクト酸又はジヒドロリポ酸と分枝鎖シクロデキストリンとの包接化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の包接化合物であって、該分岐鎖シクロデキストリンの分岐鎖が、単糖類から十糖類までの糖類から選択される包接化合物。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の包接化合物であって、該分岐鎖シクロデキストリンが、β−シクロデキストリンの分岐鎖誘導体である包接化合物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の包接化合物を含んでなる健康食品。
【請求項5】
カプセル剤、顆粒剤、又はドリンク用剤である請求項4に記載の健康食品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−177149(P2007−177149A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379264(P2005−379264)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(391043527)株式会社シールド・ラボ (3)
【出願人】(597112483)株式会社横浜国際バイオ研究所 (6)
【Fターム(参考)】