説明

チオールを含むNAALADアーゼ抑制物質

【課題】新規な化合物、前記化合物を含む医薬組成物および診断キット、並びに前記化合物を用いてNAALADアーゼ酵素活性の抑制、NAALADアーゼレベルが変化する疾患の検出、ニューロン活性の発揮、TGF−β活性の発揮、血管形成の抑制およびグルタミン酸異常、糖尿病性神経障害、痛み、強迫性障害、前立腺疾患、癌および緑内障の治療を提供する。
【解決手段】チオールを含むNAALADアーゼ抑制物質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/261754号(2001年1月17日出願)および米国仮特許出願第60/342772号(2001年12月28日出願)(前記両文献は参照により本明細書に含まれる)の権利を請求する。
本発明は、新規な化合物、前記化合物を含む医薬組成物および診断キット、並びにNAALADアーゼ酵素活性の抑制、NAALADアーゼレベルが変化する疾患の検出、ニューロン活性の発揮、TGF−β活性の発揮、血管形成の抑制のために、並びにグルタミン酸(glutamate)異常、糖尿病性神経障害、痛み、強迫性障害、前立腺疾患、癌および緑内症の治療のために前記化合物を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NAALADアーゼ(前立腺特異的膜抗原(“PSM”または“PSMA”)およびヒトグルタミン酸カルボキシペプチダーゼII(“GCPII”)としても知られている)は、神経ペプチド、N−アセチル−アスパルチル−グルタメート(“NAAG”)をN−アセチル−アスパルテート(“NAA”)およびグルタミン酸塩(エステル)に加水分解することを触媒する。アミノ酸配列の相同性を基準にして、NAALADアーゼは、M28群のペプチダーゼに分類された。
実験によって、NAALADアーゼ抑制物質は、虚血、脊髄損傷、脱ミエリン疾患、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(“ALS”)、アルコール依存症、ニコチン中毒、コカイン中毒、癌、糖尿病性腎症、痛みおよび精神分裂病の治療、並びに血管形成の抑制に有効であろうと示唆された。前記NAALADアーゼ抑制物質の広範囲の潜在的用途から考えれば、新規なNAALADアーゼ抑制物質および前記物質を含む医薬組成物に対する要望が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の開示
本発明は下記式Iの化合物または前記化合物の医薬的に許容できる同等物に関する:
【0004】
【化1】

【0005】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ別個に水素またはC1−C3アルキルであり;
1、A2、A3およびA4はそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、ハロ、ニトロ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシまたは−COOHであるか、またはA2、A3およびA4の任意の隣接する2つがベンゼン環と一緒に縮合5員もしくは6員炭素環式または複素環式芳香環を形成し、前記複素環式芳香環は1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含む。
【0006】
本発明はさらに下記式IIの化合物または前記化合物の医薬的に許容できる同等物に関する:
【0007】
【化2】

【0008】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ別個に水素またはC1−C3アルキルであり;さらに
1、A2、A3、A4およびA5はそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、C1−C3ペルハロアルキル、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、−SO29、−(C=O)NR910、−(C=O)NR9(CH2nCOOH、−NR9(C=O)R10、−(CH2nCOOHまたは−COOHであるか、またはA1、A2、A3、A4およびA5の任意の隣接する2つがベンゼン環と一緒に縮合5員もしくは6員炭素環式または複素環式芳香環を形成し、前記複素環式芳香環は1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含み;
9およびR10はそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキル、フェニルまたはベンジルであり;さらに
nは1−3であり;
ただし、A1、A3およびA5がそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、ハロ、ニトロ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシまたは−COOHである場合には、A2もA4も−COOHではないことを条件とし;さらに、A3、A4およびA5の任意の隣接する2つがベンゼン環と一緒に縮合5員もしくは6員炭素環式または複素環式芳香環を形成し、前記複素環式芳香環は1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含む場合は、A2は−COOHではないことを条件とする。
【0009】
本発明はさらに下記式IIIの化合物または前記化合物の医薬的に許容できる同等物に関する:
【0010】
【化3】

【0011】
式中、XおよびYはそれぞれ別個に−CR56−、−O−、−S−または−NR−であるが、ただしXおよびYの少なくとも1つが−CR56−であることを条件とし;
1、A2、A3、A4およびA5はそれぞれ別個に水素、C1−C9アルキル、C2−C9アルケニル、C2−C9アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環、C1−C9アルコキシ、C2−C9アルケニルオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、イソシアノ、−COOR7、−COR7、−NR78、−SR7、−SOR7、−SO27、−SO2(OR7)、−(C=O)NR78、−(C=O)NR7(CH2nCOOH、−NR7(C=O)R8、または−(CH2nCOOHであるか、またはA1、A2、A3、A4およびA5の任意の隣接する2つがベンゼン環と一緒に縮合環を形成し、前記縮合環は、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族、および炭素環式または複素環式であり、前記複素環式環は1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含み;
nは1−3であり;
R、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ別個に水素またはC1−C9アルキル、C2−C9アルケニル、C2−C9アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環であり;さらに
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環、アルコキシ、アルケニルオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、および縮合環はそれぞれ別個に非置換、または1つもしくは2つ以上の置換基で置換されてあり;
ただし、A1、A2およびA3が各々水素であり、さらにA4およびA5が各々−COOHである場合には、A4はA5に対してオルトであることを条件とし;さらに、Yが−CR56である場合は、A1、A2、A3、A4およびA5の少なくとも1つはそれぞれ別個にフェノキシ、ベンジルオキシ、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環であって、前記は1つまたは2つ以上の置換基で置換されてあることを条件とする。
【0012】
さらにまた、本発明は、NAALADアーゼ酵素活性を抑制し、グルタミン酸異常を治療し、ニューロンの活性を発揮させ、前立腺疾患を治療し、癌を治療し、血管形成を抑制し、またはTGF−βの活性を発揮させる方法に関し、前記方法は、前記の抑制、治療または発揮の必要がある哺乳類に上記で述べた式I、IIまたはIIIの化合物の有効量を投与することを含む。
本発明はさらに、以下の工程を含む、NAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を検出する方法に関する:
(i)身体の組織または体液サンプルを上記で述べた式I、IIまたはIIIの化合物と接触させ、ここで前記化合物は前記サンプルの一切のNAALADアーゼと結合し;さらに
(ii)前記サンプルと結合した一切のNAALADアーゼの量を測定し、ここで前記NAALADアーゼの量は前記疾患、障害または症状の診断に役立つ。
本発明はまた、以下の工程を含む、NAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を動物または哺乳類で検出する方法に関する:
(i)上記で述べた式I、IIまたはIIIの化合物を画像化試薬で標識し;
(ii)前記標識化合物の有効量を前記動物または哺乳類に投与し;
(iii)前記標識化合物を局在化させ、さらに前記動物または哺乳類に存在するNAALADアーゼと結合させ;さらに
(iv)前記標識化合物と結合したNAALADアーゼの量を測定し、ここで前記NAALADアーゼの量は前記疾患、障害または症状の診断に役立つ。
さらに、本発明は、マーカーで標識した、上記で述べた式I、IIまたはIIIの化合物を含む、NAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を検出する診断キットに関する。
最後に、本発明は以下を含む医薬組成物に関する:
(i)上記で述べた式I、IIまたはIIIの化合物の有効量;および
(ii)医薬的に許容できる担体。
【0013】
課題を解決するための手段
定義
“化合物A”は、2−[[2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル]ヒドロキシホスフィニル]メチル]ペンタン二酸を指す。
“化合物B”は、2−(3−スルファニルプロピル)ペンタン二酸を指す。
“化合物C”は、2−(ホスホノメチル)ペンタン二酸(PMPA)を指す。
“化合物D”は、2−(2−スルファニルエチル)ペンタン二酸を指す。
“化合物E”は、3−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)ベンゼンプロパン酸を指す。
“化合物F”は、3−カルボキシ−5−(1,1−ジメチルエチル)−アルファ−(3−メルカプトプロピル)ベンゼンプロパン酸を指す。
“アルキル”は、指定の数の炭素原子を含む分枝または非分枝炭化水素鎖を指す。例えば、C1−C9アルキルは、1から9個の炭素原子を含む直鎖または分枝炭化水素鎖であり、さらに、別に指示されないかぎり置換基、例えばメチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどの置換基(ただしこれらに限定されない)を含む。
【0014】
“アルケニル”は、指定の数の炭素原子を含む分枝または非分枝不飽和炭化水素鎖を指す。例えば、C2−C9アルケニルは、2から9個の炭素原子を含み、少なくとも1つの二重結合を有する直鎖または分枝炭化水素鎖で、さらに、別に指示されないかぎり置換基、例えばエテニル、プロペニル、iso−プロペニル、ブテニル、iso−ブテニル、tert−ブテニル、n−ペンテニル、n−ヘキセニルなど(ただしこれらに限定されない)を含む。
“アルコキシ”は−OR基を指し、ここでRは本明細書で定義したアルキルである。好ましくは、Rは、1から9個の炭素原子を含む分枝または非分枝飽和炭化水素鎖である。
“炭素環”は炭化水素の環式成分を指し、環式脂肪族、芳香族、縮合および/または架橋された1つまたは2つ以上の閉鎖環を有する。例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ベンジル、ナフテン、アントラセン、フェナントラセン、ビフェニルおよびピレンが含まれる。
【0015】
“アリール”は、1つまたは2つ以上の閉鎖環を有する芳香族炭化水素環式成分を指す。例えば、フェニル、ベンジル、ナフチル、アントラセニル、フェナントラセニル、ビフェニルおよびピレニルが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“複素環”は、環式脂肪族、芳香族、縮合および/または架橋された1つまたは2つ以上の閉鎖環を有し、前記の環の少なくとも1つに1つまたは2つ以上のヘテロ原子(例えば硫黄、窒素または酸素)をもつ環式成分を指す。例えば、ピロリジン、ピロール、チアゾール、チオフェン、ピペリジン、ピリジン、イソキサゾリジンおよびイソキサゾールが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“ヘテロアリール”は、1つまたは2つ以上の閉鎖環を有する芳香族環式成分を指し、前記環の少なくとも1つに1つまたは2つ以上のヘテロ原子(例えば硫黄、窒素または酸素)を含む。例えば、ピロール、チオフェン、ピリジンおよびイソキサゾールが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“誘導体”は、別の物質から直接的にまたは改変もしくは部分的置換によって生成された物質を指す。
【0016】
“有効量”とは、所望の作用をもたらすために、例えばNAALADアーゼ酵素活性および/または血管形成の抑制、ニューロン活性またはTGF−β活性の発揮、および/またはグルタミン酸異常、強迫性障害、前立腺疾患、癌または緑内障の治療のために必要な量を指す。
“電磁放射線”には、10-20から100メートルの波長を有する放射線が含まれるが、ただし前記に限定されない。例えばガンマ線(10-20から10-13m)、X線(10-11から10-9m)、紫外線(10nmから400nm)、可視光線(400nmから700nm)、赤外線(700nmから1.0mm)およびマイクロ波(1mmから30cm)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“ハロ”は、少なくとも1つのフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード成分を指す。
【0017】
“同配体”は、異なる分子式を有するが、類似また同一の物理的特性を示す成分、官能基、置換基、分子またはイオンを指す。例えば、テトラゾールは、カルボン酸と類似の特性を有するので、両者は異なる分子式を有するがカルボン酸の同配体である。典型的には、2つの同配体分子は類似または同一の容積および形状を有する。理想的には、同配体化合物は同形であり、同時結晶させることができる。同配体化合物が通常共有する他の物理的特性には、沸点、密度、粘度および熱伝導性である。しかしながら、外側の電子軌道のハイブリダイゼーションは異なるので以下のある種の特性は通常異なっている:二極性モーメント、極性、分極、サイズおよび形状。“同配体”という用語は“バイオ同配体”(bioisostere)を包含する。
“バイオ同配体”は物理的類似性の他にもいくつかの生物学的特性を共有する。典型的には、バイオバイオ同配体は同じ認識部位と相互作用するか、または広範囲に類似する生物学的作用を生じる。
“カルボン酸同配体”には、直接的誘導体、例えばヒドロキサム酸、アシル−シアナミドおよびアシルスルホンアミド;平面的酸性複素環、例えばテトラゾール、メルカプトアゾール、スルフィニルアゾール、スルホニルアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、ヒドロキシチアジアゾールおよびヒドロキシクロム;並びに非平面的な硫黄由来またはリン由来酸性官能基、例えばホスフィネート、ホスホネート、ホスホンアミド、スルホネート、スルホンアミド、およびアシルスルホンアミドが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0018】
“代謝物”は、代謝によってまたは代謝プロセスによって生成される物質を指す。
“NAAG”はN−アセチル−アスパルチル−グルタメートを指し、前記は、主要な抑制性神経伝達物質ガンマアミノ酪酸(“GABA”)に匹敵するレベルを有する脳の重要なペプチド成分である。NAAGはニューロン特異的であり、シナプス小胞に存在し、グルタミン酸作動性と考えられるいくつかの系でニューロンの刺激により放出される。NAAGは、中枢神経系の神経伝達物質としておよび/または神経調節物質として、または神経伝達物質のグルタメートの前駆体として機能するのであろうと示唆されている。さらに、NAAGは、II群の代謝向性(metabotropic)グルタメートレセプター、特にmGluR3レセプターでの作動物質である。NAALADアーゼを抑制することができる成分と結合したとき、代謝向性グルタメートレセプターリガンドは、強力で特異的なNAALADアーゼ抑制物質を提供するであろうと考えられている。
【0019】
“NAALADアーゼ”はN−アセチル化α−結合酸性ジペプチダーゼを指す。前記は、以下のようにNAAGをN−アセチルアスパルテート(“NAA”)とグルタメート(“GLU”)に代謝する膜結合メタロペプチダーゼである:
【0020】
【化4】

【0021】
NAALADアーゼはM28ペプチダーゼ群に分類され、PSMAまたはヒトGCPII(EC番号3.4.17.21)とも称される。NAALADアーゼは、補助触媒亜鉛/亜鉛メタロペプチダーゼであると考えられている。NAALADアーゼはNAAGに対し高い親和性を示し、Kmは540nMである。NAAGが生体活性を有するペプチドであるならば、NAALADアーゼはNAAGのシナプスでの作用を不活化するために機能するかもしれない。また別に、NAAGがグルタメートの前駆体として機能するならば、NAALADアーゼの主要な機能はシナプスでのグルタメートの利用可能性を調節することであるかもしれない。
【0022】
“医薬的に許容できる担体”は、医薬組成物での使用に適した、好ましくは毒性がない任意の担体、希釈剤、賦形剤、湿潤剤、緩衝剤、分散剤、滑沢剤、アジュバント、媒体、デリバリー系、乳化剤、崩壊剤、吸収剤、保存料、界面活性剤、着色剤、香料または甘味料を指す。
“医薬的に許容できる同等物”には、医薬的に許容できる塩、水和物、代謝物、プロドラッグおよび同配体が含まれるが、ただしこれらに限定されない。多くの医薬的に許容できる同等物は、本発明の化合物と同じまたは類似のin vitroおよびin vivo活性を有すると期待される。
【0023】
“医薬的に許容できる塩”は、所望の薬理活性を有し、さらに生物学的にも他の意味でも望ましくない活性をもたない本発明の化合物の塩を指す。前記塩は酸を用いて生成され、これらには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):酢酸塩、アジピン酸塩、アルギニン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンホスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタン−スルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩。塩基塩の例には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウムおよびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウムおよびマグネシウム塩)、有機塩基との塩(例えばジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミン)、およびアミノ酸(例えばアルギニンおよびリジン)との塩が含まれる。塩基性窒素含有基は以下に含まれる薬剤とともに四級化することができる:低級アルキルハロゲン化物、例えば塩化メチル、エチル、プロピルおよびブチル、前記の臭化物およびヨウ化物;硫酸ジアルキル、例えば硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミル;長鎖ハロゲン化物、例えば塩化デシル、ラウリル、ミリスチル、ステアリル、前記の臭化物およびヨウ化物;並びにアルアルキルハロゲン化物、例えば臭化ベンジルおよびフェニチル。
【0024】
“プロドラッグ”は、その薬理学的作用を示す前に、生体内変換(例えば代謝)を受ける本発明の化合物の誘導体を指す。前記プロドラッグは、化学的安定性、患者の是認およびコンプライアンス、生体利用性、作用の長期化、器官の選択性、製剤化(例えば水溶性の増加)の改善、および/または副作用(例えば毒性)の減少を目的に製剤化される。プロドラッグは、当技術分野で公知の方法(例えば以下に記載された方法:Burger's Medical Chemistry and Drug Chemistry, Fifth Ed., Vol. 1, pp.172-178, 949-982 (1995))を用い、本発明の化合物から容易に製造することができる。
“放射線感作物質”は、治療的に有効な量で動物に投与され、電磁放射線で治療することができる疾患の治療を促進するための低分子量化合物を指す。電磁放射線で治療することができる疾患には、新形成疾患、良性および悪性腫瘍、および癌性細胞が含まれるが、ただしこれらに限定されない。本明細書に記載されていない他の疾患の電磁放射線治療もまた本発明に包含される。
【0025】
酵素に関連して“抑制”とは、可逆的な酵素の抑制、例えば競合、無競合および非競合抑制を指す。競合、無競合および非競合抑制は、酵素の反応動態に対する抑制物質の影響によって区別することができる。競合抑制は、抑制物質が、活性部位での結合について通常の基質と競合する態様で可逆的に酵素と結合するときに生じる。抑制物質と酵素との間の親和性は、以下のように定義される抑制物質定数(Ki)で測定できる:
【0026】
【化5】

【0027】
式中、[E]は酵素濃度であり、[I]は抑制物質濃度であり、[EI]は酵素と抑制物質との反応によって形成された酵素抑制物質複合体の濃度である。別に特定しないかぎり、本明細書で用いられるように、Kiは本発明の化合物とNAALADアーゼとの間の親和性を指す。“IC50”は、標的酵素の50%抑制に必要な化合物の濃度または量を規定するために用いられる関連用語である。
“NAALADアーゼ抑制物質”は、NAALADアーゼの酵素活性を抑制する任意の化合物を指す。好ましくは、NAALADアーゼ抑制物質は、当技術分野で公知の任意の適切なアッセイを用いて測定したとき、100μM未満のKi、より好ましくは10μM未満、さらに好ましくは1μM未満のKiを示す。
“異性体”とは、同じ数および同じ種類の原子を有し、したがって同じ分子量を有するが、原子の構成または立体配置に関して異なる化合物を指す。
【0028】
“光学異性体”は鏡像体または偏左右異性体を指す。
“立体異性体”は、原子の空間的配置のみが異なる異性体である。
“偏左右異性体”は、互いの鏡像ではない立体異性体である。偏左右異性体は、2つまたは3つ以上の不整炭素原子を有する化合物で発生し、したがってそのような化合物は2nの光学異性体を有する(ここでnは不整炭素原子の数である)。
“鏡像体”は互いに重ね合わせることができない鏡像である一対の立体異性体である。
鏡像体は、化合物(例えばグリセルアルデヒド、乳酸、糖類、酒石酸、アミノ酸)中に存在する1つまたは2つ以上の不整炭素により生じる。
“鏡像体濃縮”とは、1つの鏡像体が支配的である混合物を指す。
“ラセミ混合物”とは、個々の鏡像体が等量含まれている混合物を意味する。
“非ラセミ混合物”は、等しくない量の鏡像体を含む混合物である。
【0029】
“血管形成”とは、新規な毛細血管が形成されるプロセスを指す。血管形成の“抑制”は、本発明の多くのパラメーターによって測定でき、例えば新生血管構造物の出現の遅延、新生血管構造物の発達の減速、新生血管構造物の出現低下、血管形成依存疾患による影響の重篤化の減速または低下、血管成長の停止、または先に形成された血管成長の退行によって評価することができる。強力で完全な抑制は本明細書では阻止と称される。血管形成または血管成長に関しては、“阻止”とは、以前に血管形成がなかった場合は血管形成または血管成長が実質的に存在しないことをいうか、または血管の成長が以前に生じていた場合は更なる血管形成または血管の成長が実質的に存在しないことをいう。
“血管形成依存疾患”には、慢性関節リウマチ、心脈管系疾患、眼の新生血管形成疾患、末梢血管疾患、皮膚潰瘍並びに癌性腫瘍の増殖、侵襲および転移が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0030】
“動物”とは、知覚および随意運動力を有し、さらにその存在のために酸素および有機的食物を必要とする生命をもつ生物体を指す。例えば、ヒト、ウマ、ブタ、ウシ、ネズミ、イヌ、またはネコの種に属するものが含まれるが、ただしこれらに限定されない。ヒトの場合、“動物”はまた患者を指す。
“哺乳類”とは温血脊椎動物を指す。
“不安”には、表面的には無意識の心的衝突から生じる、非現実的または空想による危険の予期に対する複数の精神生理学的反応から成る不快な感情が含まれるが、ただしこれらに限定されない。生理的な付随事象には心拍の増加、呼吸数の変化、発汗、振せん、脆弱、および疲労が含まれる。精神的な付随事象には、危険の切迫、無気力感、不安および緊張の感情が含まれる(Dorland's Illustrated Medical Dictionary, W.B. Saunders Co., 27th ed. (1988))。
“不安障害”には不安と回避行動が支配的となる精神的疾患が含まれるが、ただしこれに限定されない(Dorland's Illustrated Medical Dictionary, W.B. Saunders Co., 27th ed. (1988))。例えば、疼痛発作、広場恐怖症、恐慌生障害、急性ストレス障害、慢性ストレス障害、特定物恐怖症、単純恐怖症、社会的恐怖症、物質誘発不安症、器質性不安症、肥満強迫性障害、外傷後ストレス障害、全般性不安障害および不安症NOSが含まれるが、ただしこれらに限定されない。他の不安障害は以下の文献にその特徴が示されている:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (American Psychiatric Association 4th ed. 1994)。
【0031】
“注意欠如障害”または“ADD”は、不適切な発育を伴なう不注意および衝動性を特徴とする障害を指し、多動を伴なうものおよび伴なわないものがある。不注意は、開始した作業を完了できないことを意味し、容易に散乱し、注意が欠如しているようにみえ、持続的な注意を必要とする作業に集中することが困難であることを意味する。衝動性は、思考する前に行動することを意味し、代わる代わる作業することが困難で、作業を組織化することおよび1つの活動から別の活動に定常的に移ることが難しい。多動は、着席したままおよび静かに座っていることが困難で、過剰に走り回り上ったりすることを意味する。
“癌”には、ACTH生成腫瘍、急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、副腎皮質の癌、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、直腸癌、皮下T細胞リンパ腫、子宮内皮癌、喉頭癌、ユーイング肉腫、胆嚢癌、毛様細胞性白血病、頭部および頸部の癌、ホジキンリンパ種、カポジ肉腫、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞および/または非小細胞型)、悪性腹腔浸出、悪性肺浸出、メラノーマ、中皮腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、非ホジキン性リンパ腫、骨肉腫、卵巣癌、卵巣(生殖細胞)癌、膵臓癌、陰茎癌、前立腺癌、網膜芽腫、皮膚癌、軟組織肉腫、落屑細胞癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、栄養膜新形成、子宮の癌、膣癌、外陰部の癌、ウィルムス腫瘍が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0032】
“強迫性障害”とは、抵抗しがたい衝動的行動を特徴とする一切の障害を指す。強迫性障害の例には、物質依存症、摂食障害、病的賭博、注意欠如障害(“ADD”)およびツレット症候群が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“脱髄疾患”は、自然の状態では神経組織を取り巻いているミエリン鞘に対する損傷または除去を伴なう一切の疾患、例えば米国特許第5,859,046号および国際特許公開WO98/03178号(前記文献は参照により本明細書に含まれる)に規定されたようなものを指す。例えば、末梢脱髄疾患(例えばギヤン−バレー症候群、末梢神経障害、およびシャルコー−マリーツース病)および中枢脱髄疾患(例えば多発性硬化症)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“疾患”とは、その病因、病理および診断が明らかであれ、不明であれ、特徴的な一組の症状および徴候が出現する身体の任意の部分、器官または系(またはその組合せ)の正常な構造もしくは機能からの一切の逸脱または中断を指す(Dorland's Illustrated Medical Dictionary, W.B. Saunders Co., 27th ed. (1988))。
“障害”とは、機能の混乱または異常の一切、病的な身体的または精神的状態を指す(Dorland's Illustrated Medical Dictionary, W.B. Saunders Co., 27th ed. (1988))。
【0033】
“薬物依存”とは、薬物に対する精神的耽溺または身体的耐性を指す。耐性は、最初により少ない量によって達成された効果を生じるために用量を漸進的に増加させる必要があることを意味する。
“摂食障害”とは、強迫性過剰摂食、肥満または重篤な肥満を指す。肥満は、標準的な身長体重表を20%越える体重を意味する。重篤な肥満は100%を超える過剰体重を意味する。
“緑内障”には、慢性(特発性)開放隅角緑内障(例えば高眼圧性、正常眼圧性);瞳孔閉鎖緑内障(例えば急性閉塞隅角緑内障、亜急性閉塞隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、結合メカニズム性緑内障);発生性緑内障(例えば先天性(乳児性)、若年性、アンクセンフェルト−リーガー症候群、ペーターの奇形、無虹彩症);他の眼の異常に付随する緑内障(例えば角膜内皮、虹彩、毛様体、水晶体、網膜、脈絡膜、硝子体の異常に付随する緑内障);上強膜静脈圧の上昇に付随する緑内障(例えば眼内圧の上昇および緑内障を伴なう全身性疾患、コルチコステロイド誘発緑内障);炎症および外傷に付随する緑内障(例えば角膜炎、上強膜炎、強膜炎、ブドウ膜炎、眼の外傷および出血に付随する緑内障);眼内手術後の緑内障(例えば毛様体遮断(悪性)緑内障、無水晶体症および仮性水晶体症の緑内障、角膜手術に付随する緑内障、硝子体網膜手術に付随する緑内障)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0034】
“グルタミン酸異常”は、グルタメートが関与する一切の疾患、障害または症状を指し、グルタメートのレベル上昇を含む病的状態を含む。グルタミン酸異常の例には、強迫性障害、脊髄損傷、てんかん、卒中発作、虚血、脱髄疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS、ハンチントン病、精神分裂病、痛み、末梢神経障害(糖尿病性神経障害を含むがこれに限定されない)、外傷性脳損傷、ニューロン傷害、炎症性疾患、不安、不安障害、記憶障害および緑内障が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“虚血”は、動脈血の流入が遮断されることによる局在的な組織の乏血を指す。完全虚血は、心臓停止の結果のように、一定時間血流が停止したときに発生する。巣状虚血は、身体の一部、例えば脳がその正常な血液供給を受けられないときに発生する。前記は、例えば脳血管の血栓塞栓、外傷性脳損傷、浮腫または脳腫瘍に起因するであろう。たとえ一過性であっても、完全虚血および巣状虚血はともに広範なニューロンの損傷を生じる。神経組織の損傷は虚血の開始から何時間または何日もかかって損傷が生じるが、永久的な神経組織の損傷のあるものは、脳への血流停止後最初の数分で発生する可能性がある。前記のような損傷の大半は、グルタメートの毒性および組織の再灌流による二次的結果(例えば損傷内皮による血管活性生成物の放出および損傷組織による細胞毒性生成物(例えば遊離ラジカルおよびロイコトリエン)の放出)に起因する。
【0035】
“記憶障害”とは、精神的記録の減退、過去の経験、知識、発案、知覚、思考もしくは感動の保持または回収の減退を指す。記憶障害は、短期および長期の情報保持、空間的関係に関する能力、記憶の方法(リハーサルの方法)並びに言葉の検索と作成に影響を及ぼす。記憶障害の一般的な原因は、加齢、重篤な脳の外傷、脳の酸素欠乏または虚血、アルコール性−栄養性疾患、薬物中毒および神経変性疾患である。例えば、記憶障害は神経変性疾患(例えばアルツハイマー病およびアルツハイマー型の老人性痴呆)の共通の特性である。記憶障害はまた、他の種類の痴呆(例えば多発性梗塞痴呆、脳血管不全による老人性痴呆および、パーキンソン病に付随または付随しないアルツハイマー病のレーヴィー小体変種型)に付随する。クロイツフェルト−ヤコブ病は、記憶障害を伴なう稀な痴呆である。前記は、プリオンタンパク質によって惹起されるスポンジ様脳障害であり、他の患者から伝播されるか、または遺伝子の変異から生じる可能性がある。記憶の低下はまた脳損傷患者の共通の特性である。脳の損傷は、例えば古典的な卒中発作の後、または麻酔による事故、脳外傷、低血糖、一酸化炭素中毒、リチウム中毒、ビタミン(B1、チアミンおよびB12)欠乏、またはアルコールの過剰使用の結果として生じるであろう。コルサコフの健忘精神病は稀な異常で、重大な記憶喪失および作話を特徴とし、患者は自己の記憶の喪失を隠すために物語を創作する。前記は、しばしば過剰なアルコール摂取に付随する。
さらに、記憶障害は年齢に関係するであろう。情報、例えば名前、場所および言葉を思いだす能力は加齢とともに低下するようである。一過性の記憶喪失はまた、主要抑うつ性障害をもつ患者で電気ショック療法後に生じるであろう。
【0036】
“精神障害”は、抑圧症状または顕著な機能障害の存在を特徴とする臨床的に顕著な一切の行動または精神症候群である。精神障害は、個々人の何らかの精神的または気質的機能不全に起因すると考えられる(前記の概念は、本質的に個人と社会との衝突である障害(社会的逸脱)は含まない)。
“転移”とは、散布のために不連続部位に新規な増殖巣を形成する(すなわち転移を形成する)癌細胞の能力を指す(R.P. Hill, "Metastasis", The Basic Science of Oncology, Tannock et al., Eds., McGraw-Hill, New York, pp.178-195 (1992)、前記文献は参照により本明細書に含まれる)。「in situの腫瘍増殖から転移性疾患への移行は、原発部位の腫瘍細胞が局所組織に侵入しさらに組織障壁を通過する能力と定義される。(中略)転移プロセスを開始するために、癌性細胞は先ず初めに上皮基底膜を貫通し、続いて間隙性支質を侵入しなければならない。(中略)遠隔転移のために、血管内異物侵入は腫瘍細胞が内皮基底膜下に侵入することを必要とし、これはまた腫瘍細胞の血管外遊出時にもまた乗り越えなえればならないものである。(中略)悪性化はまた腫瘍誘発血管形成を伴ない、前記血管形成は原発腫瘍の拡大を可能にするだけでなく、新規に形成された血管には基底膜が欠如するために血管区画への容易なアクセスを可能にする。」(以下を参照されたい:Aznavoorian et al.,(1993) Cancer 71:1368-1383、前記文献は参照により本明細書に含まれる。)
【0037】
“神経傷害”は、神経組織の一切の損傷および前記損傷から生じる一切の不能または死を指す。神経傷害の原因は、代謝性、毒物、神経毒、医原性、熱または化学物質性であり、虚血、低酸素血症、脳血管の事故、外傷、外科手術、圧、物質集塊の影響、出血、放射線、血管攣縮、神経変性疾患、神経変性プロセス、感染、パーキンソン病、ALS、有髄化/脱髄化プロセス、てんかん、認識障害、グルタミン酸異常およびこれらの二次的影響が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“神経組織”は神経系を構成する種々の成分を指し、ニューロン、神経支持細胞、グリア、シュワン細胞、前記構造物内に含まれそれらを養う血管構造、中枢神経系、脳、脳幹、脊髄、中枢神経系と末梢神経系の接合部、末梢神経系および連携構造物が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“神経障害”は神経の一切の疾患または機能不全を指す。神経障害には、末梢神経障害、糖尿病性神経障害、自律神経障害および単神経障害が含まれるが、ただしこれらに限定されない。末梢神経障害は特発性であっても何らかの原因によって誘発されたものであってもよい。前記の原因には疾病(例えばアミロイドーシス、アルコール中毒、HIV、梅毒、ウイルス、自己免疫疾患、癌、ポルフィリン症、くも膜炎、ヘルペス後神経痛、ギヤン−バレー症候群、糖尿病(I型およびII型を含む))、化学物質(例えば毒素、鉛、ダプソン、ビタミン、パクリタキセル化学療法、HAART療法)、および個々の神経または神経叢に対する物理的損傷(例えば外傷、圧迫、狭窄)が含まれる。
【0038】
“神経保護性”とは、神経傷害を減少させ、停止させまたは軽減し、さらに神経傷害を被っている神経組織を保護し、復活または蘇生させる作用を指す。
“痛み”は、特定の神経末端の刺激により生じる不快、苦痛または苦悶の局在化された知覚を指す。痛みは、前記痛みをもつ者に対しその発生源の除去または回収を誘導するかぎり保護メカニズムとして機能する(Dorland's Illustrated Medical Dictionary, W.B. Saunders Co., 27th ed. (1988))。痛みの例には急性痛、慢性痛、癌性痛、火傷痛、切開痛、炎症痛、神経障害痛、および背部痛が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“神経障害痛”は神経損傷に付随する痛みの症状を指す。個々の症候にしたがって、前記痛みは脳または脊髄の変化によるか、または神経そのものの異常によるであろう。神経障害痛は特発性であっても何らかの原因によって誘発されたものであってもよい。前記の原因には疾病(例えばアミロイドーシス、アルコール中毒、HIV、梅毒、ウイルス、自己免疫疾患、癌、ポルフィリン症、くも膜炎、ヘルペス後神経痛、ギヤン−バレー症候群、糖尿病(I型およびII型を含む))、化学物質(例えば毒素、鉛、ダプソン、ビタミン、パクリタキセル化学療法、HAART療法)、および個々の神経または神経叢に対する物理的損傷(例えば外傷、圧迫、狭窄)が含まれる。
【0039】
“病的賭博”は、賭博に没頭することを特徴とする症状を指す。精神活性を有する物質の乱用と同様に、病的賭博の影響には、徐々により大金をかけようとする要求に関する耐性の発生、禁断症状、および家族および職業に対する重大な負の影響にもかかわらず持続的に賭博をすることが含まれる。
“前立腺疾患”は前立腺に影響を及ぼす一切の疾患を指す。前立腺疾患の例には、前立腺癌(例えば腺癌および前立腺の転移性癌);および前立腺上皮細胞の異常増殖を特徴とする症状(例えば良性前立腺過形成)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“精神分裂病”は、以下についての混乱を特徴とする精神的障害または精神的障害群を指す:思考の形態および内容(連合弛緩、妄想、幻覚)、気分(鈍化情動、平坦な情動、不相応な情動)、自意識および外部世界に対する関係(自我の境界の喪失、内閉的思考、自閉的引きこもり)、および行動(とっぴで、明らかに無目的、画一的な活動または全くの無活動)。精神分裂病の例には、急性分裂病、外来分裂病、境界性分裂病、緊張性分裂病、小児分裂病、解体型分裂病、破瓜型分裂病、潜伏分裂病、核分裂病(nuclear schizophreni)、妄想型精神分裂病、傍精神分裂病(paraphrenic schizophrenia)、前精神分裂病、過程分裂病、偽神経症性分裂病、偽精神障害性分裂病、反応分裂病、残遺分裂病、分裂感情性分裂病、および未分化精神分裂病が含まれるが、ただしこれらに限定されない(Dorland's Illustrated Medical Dictionary, W.B. Saunders Co., 27th ed. (1988))。
【0040】
“TGF−β”は形質転換増殖因子ベータを指す。TGF−βは多機能性増殖因子の原型として認識されている。前記は種々の細胞および組織の機能を調節する。前記機能には、細胞の増殖および分化、血管形成、創傷治癒、免疫機能、細胞外マトリックス生成、細胞の化学走性、アポトーシスおよび造血が含まれる。
“TGF−β異常”は、TGF−βが関与する一切の疾患、障害または症状を指し、TGF−βレベルの異常を特徴とする疾患、障害および症状が含まれる。
“TGF−βレベルの異常”は、公知の技術を用いて当業者のいずれかが測定したとき正常なTGF−βレベルから逸脱をしていることを測定できるものを指す。
“治療適合ウィンドー(therapeutic window of opportunity)”または“ウィンドー”は、卒中発作に関しては発作の開始から有効な治療の開始までの最大の遅れを指す。
“ツレット症候群”とは、強迫性汚言、多発性筋肉攣縮および反響言語を特徴とする常染色体性多発性チック障害を指す。チックは短く急速な不随意運動で単純性または複合性がある。チックは定型的および反復的であるが周期的ではない。単純性チック(例えば瞬き)は、しばしば神経質な癖として始まる。複合性チックはしばしば通常行動の断片のようにみえる。
【0041】
特定の疾患または障害と組み合わせて別に定義されないかぎり、“治療”とは以下をいう:
(i)ある疾患、障害および/または症状を発症する可能性があるが、未だ前記疾患、障害および/または症状であると診断されていない動物で、前記疾患、障害または症状を予防すること;
(ii)前記疾患、障害または症状を抑制すること、すなわちその進展を停止させること;および/または
(iii)前記疾患、障害または症状を緩和すること、すなわち、前記疾患、障害または症状を退行させること。
“ALSを治療する”とは以下を指す:
(i)ALSを発症する可能性があるが、未だALSであると診断されていない動物でALSを予防すること;
(ii)ALSを抑制すること、すなわちその進展を停止させること;
(iii)ALSを緩和すること、すなわち、ALSを退行させること;
(iv)ALSまたはALSの症候の開始を遅らせること;
(v)ALSまたはALSの症候の進行を遅らせること;
(vi)ALSを罹患している動物を延命させること;および/または
(vii)ALSの症状を緩和すること。
【0042】
“ハンチントン病を治療する”とは以下を指す:
(i)ハンチントン病を発症する可能性があるが、未だハンチントン病であると診断されていない動物でハンチントン病を予防すること;
(ii)ハンチントン病を抑制または遅らせること(例えばその進展を停止させること);
(iii)ハンチントン病を緩和すること、例えば前記を退行させること;
(iv)ハンチントン病罹患動物で運動の協調性を改善すること;
(v)ハンチントン病を罹患している動物を延命させること。
“物質依存を治療する”とは以下をいう:再発を防止する;渇望を減少させる;耐性を抑制する;禁断症状を予防、抑制および/または緩和する;感作を減弱させる;物質誘発神経毒性を防止、抑制し(すなわち前記毒性の発達を停止させる)、および/または緩和する(すなわち前記毒性を退行させる);および/または胎児性アルコール症候群を緩和する。
“渇望”とは、物質に対する強い欲求および/または物質を使用することについての強制的衝動および/または抗し難い衝動を指す。
【0043】
“依存”とは、臨床的に顕著な障害または抑うつをもたらす物質使用の異常適用パターンを指す。依存は典型的には耐性と禁断症状を特徴とする。依存が生じる可能性がある物質には、抑制薬(オピオイド、合成麻酔薬、バルビツレート、グルテチミド、メチプリロン、エトクロルビノール、メタカロン、アルコール);抗不安薬(ジアゼパン、クロルジアゼポキシド、アルプラゾラム、オキサゼパム、テマゼパム);興奮剤(アンフェタミン、メトアンフェタミン、コカイン);および幻覚剤(LSD、メスカリン、ペヨーテ、マリファナ)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
“再発”とは、自制期間後に物質使用に戻り、しばしば復元を伴なうことを指す。
“復元”とは、自制期間後に再び物質使用を再開した者が以前のレベルの使用および依存に戻ることを指す。
“感作”は、物質に対する反応が反復使用により高められた状態を指す。
【0044】
“耐性”は、同じ用量の継続使用による効果の低下および/または、より低用量で以前には達成された酔いまたは所望の効果を達成するために用量を増したいという要求を特徴とする、物質に対して獲得された反応を指す。生理的および精神的因子の両方が耐性の発達に寄与するであろう。生理的耐性に関しては、代謝的および/または機能的耐性が発達するであろう。物質の代謝速度の増加によって、前記物質はより迅速に身体から除去される。機能的耐性は、前記物質に対する中枢神経系の感受性の低下と定義される。
“禁断症状”とは、物質使用の停止または減少後、または薬理学的拮抗物質の投与後に生じる不適当な身体的変化を特徴とする症候を指す。
当業者には、上記で定義した疾患、障害および症状についてまた別の命名法、疾病分類学および分類体系があり、そのような体系は医科学の進歩とともに発展していくことは理解されよう。
文脈によって特に明瞭に指示されないかぎり、単数の用語の定義は、それらが本出願に用いられたとき、前記単数の用語の対応する複数の用語にも適用できると考えられ、同様に、複数の用語の定義は、それらが本出願に用いられたとき、前記複数の用語の対応する単数の用語にも適用できると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の化合物
本発明は下記式Iの化合物または前記化合物の医薬的に許容できる同等物に関する:
【0046】
【化6】

【0047】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ別個に水素またはC1−C3アルキルであり;
1、A2、A3およびA4はそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、ハロ、ニトロ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシまたは−COOHであるか、またはA2、A3およびA4の任意の隣接する2つがベンゼン環と一緒に縮合5員もしくは6員炭素環式または複素環式芳香環を形成し、前記複素環式芳香環は1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含む。
ある実施態様では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ別個に水素またはメチルであり;さらにA1、A2、A3およびA4はそれぞれ別個に水素、C1−C4アルキル、C1−C2アルコキシ、ハロ、ニトロ、フェニル、フェノキシ、ベンジルオキシ、ニトロまたは−COOHである。
また別の実施態様では、A2、A3およびA4の任意の隣接する2つはベンゼン環と一緒に縮合5員もしくは6員炭素環式または複素環式芳香環を形成し、前記複素環式芳香環は1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含む。
【0048】
本発明はさらに下記式IIの化合物または前記化合物の医薬的に許容できる同等物に関する:
【0049】
【化7】

【0050】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ別個に水素またはC1−C3アルキルであり;さらに
1、A2、A3、A4およびA5はそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、C1−C3ペルハロアルキル、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、−SO29、−(C=O)NR910、−(C=O)NR9(CH2nCOOH、−NR9(C=O)R10、−(CH2nCOOHまたは−COOHであるか、またはA1、A2、A3、A4およびA5の任意の隣接する2つがベンゼン環と一緒に縮合5員もしくは6員炭素環式または複素環式芳香環を形成し、前記複素環式芳香環は1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含み;
9およびR10はそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキル、フェニルまたはベンジルであり;さらに
nは1−3であり;
ただし、A1、A3およびA5がそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、ハロ、ニトロ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシまたは−COOHである場合には、A2もA4も−COOHではないことを条件とし;さらに、A3、A4およびA5の任意の隣接する2つがベンゼン環と一緒に縮合5員もしくは6員炭素環式または複素環式芳香環を形成し、前記複素環式芳香環が1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含む場合は、A2は−COOHではないことを条件とする。
ある実施態様では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は各々水素であり;A1、A2、A3、A4およびA5はそれぞれ別個に水素、C1−C4アルキル、C1−C2アルコキシ、C1−C2ペルハロアルキル、フェニル、フェノキシ、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、−SO29、−(C=O)NR910、−(C=O)NR9(CH2nCOOH、−NR9(C=O)R10または−(CH2)COOHであり;さらにR9およびR10はそれぞれ別個に水素、メチルまたはベンジルである。
別の実施態様では、A1、A2、A3、A4およびA5の任意の隣接する2つはベンゼン環と一緒に縮合5員もしくは6員炭素環式または複素環式芳香環を形成し、前記複素環式芳香環は1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含む。
【0051】
本発明はさらに下記式IIIの化合物または前記化合物の医薬的に許容できる同等物に関する:
【0052】
【化8】

【0053】
式中、XおよびYはそれぞれ別個に−CR56−、−O−、−S−または−NR−であるが、ただしXおよびYの少なくとも1つが−CR56−であることを条件とし;
1、A2、A3、A4およびA5はそれぞれ別個に水素、C1−C9アルキル、C2−C9アルケニル、C2−C9アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環、C1−C9アルコキシ、C2−C9アルケニルオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、イソシアノ、−COOR7、−COR7、−NR78、−SR7、−SOR7、−SO27、−SO2(OR7)、−(C=O)NR78、−(C=O)NR7(CH2nCOOH、−NR7(C=O)R8、または−(CH2nCOOHであるか、またはA1、A2、A3、A4およびA5の任意の隣接する2つがベンゼン環と一緒に縮合環を形成し、前記縮合環は、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族、および炭素環式または複素環式であり、前記複素環式環は1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含み;
nは1−3であり;
R、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ別個に水素、C1−C9アルキル、C2−C9アルケニル、C2−C9アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環または複素環であり;さらに
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環、アルコキシ、アルケニルオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、および縮合環はそれぞれ別個に非置換、または1つもしくは2つ以上の置換基で置換されてあり;
ただし、A1、A2およびA3が各々水素であり、さらにA4およびA5が各々−COOHである場合には、A4はA5に対してオルトであることを条件とし;さらに、Yが−CR56である場合は、A1、A2、A3、A4およびA5の少なくとも1つはそれぞれ別個にフェノキシ、ベンジルオキシ、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環であって、前記は1つまたは2つ以上の置換基で置換されてあることを条件とする。
【0054】
ある実施態様で得は、Yは、−O−、−S−または−NR−であり;A1、A2、A3、A4およびA5はそれぞれ別個に水素、C1−C4アルキル、C1−C2アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、−COOH、−COR7、−NR7(C=O)R8、または−(CH2)COOHであり;さらにR7およびR8はそれぞれ別個に水素またはメチルである。
また別の実施態様では、Yは−CR56−であり;A1、A2、A3およびA4は各々水素であり;A5は、フェノキシ、ベンジルオキシ、アリール、ヘテロアリール、炭素環または複素環であり、ここで前記フェノキシおよびベンジルオキシは−COOHで置換されてあり、さらに前記アリール、ヘテロアリール、炭素環および複素環は、シアノおよび−COOHから成る群から選択される1つまたは2つ以上の置換基で置換される。
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環、アルコキシ、アルケニルオキシ、フェノキシおよび縮合環には、C1−C6アルキル、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、C1−C6アルコキシ、C2−C6アルケニルオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヒドロキシ、カルボキシ、ヒドロペルオキシ、カルバミド、カルバモイル、カルバミル、カルボニル、カルボゾイル、アミノ、ヒドロキシアミノ、ホルムアミド、ホルミル、グアニル、シアノ、シアノアミノ、イソシアノ、イソシアナト、ジアゾ、アジド、ヒドラジノ、トリアザノ、ニトリロ、ニトロ、ニトロソ、イソニトロソ、ニトロソアミノ、オキソ、C1−C6アルキルチオ、スルファミノ、スルファモイル、スルフェノ、スルフヒドリル、スルフィニル、スルフォ、スルフォニル、チオカルボキシ、チオシアノ、イソチオシアノ、チオホルムアミド、ハロ、ハロアルキル、クロロシル、クロリル、ペルクロリル、トリフルオロメチル、ヨードシル、ヨージル、ホスフィノホスフィニル、ホスホ、ホスホノ、アルシノ、セラニル、ジシラニル、シロキシ、シリル、シリレン並びに炭素環式および複素環式成分が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0055】
炭素環式および複素環式成分の例には、フェニル、ベンジル、ナフチル、インデニル、アズレニル、フルオレニル、アントラセニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピリジル、ピロリル、ピロリジニル、ピリジニル、ピリミジニル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、キノリジニル、フリル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、ベンゾキサゾリル、チアゾリル、イソキサゾリル、イソトリアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、トリチアニル、インドリジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、チエニル、テトラヒドロイソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニルおよびフェノキサジニルが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0056】
本発明の代表的な化合物は下記の表Iに示されている。
表I
【0057】
【表1−A】

【0058】
【表1−B】

【0059】
【表1−C】

【0060】
【表1−D】

【0061】
【表1−E】

【0062】
【表1−F】

【0063】
【表1−G】

【0064】
【表1−H】

【0065】
【表1−I】

【0066】
【表1−J】

【0067】
【表1−K】

【0068】
【表1−L】

【0069】
【表1−M】

【0070】
【表1−N】

【0071】
【表1−O】

【0072】
【表1−P】

【0073】
【表1−Q】

【0074】
【表1−R】

【0075】
【表1−S】

【0076】
【表1−T】

【0077】
【表1−U】

【0078】
【表1−V】

【0079】
【表1−W】

【0080】
【表1−X】

【0081】
本発明の化合物は、1つまたは2つ以上の不整炭素中心を有し、したがって光学異性体のラセミまたは非ラセミ混合物と同様に、光学異性体の形態でも存在する。光学異性体は、当技術分野で公知の通常の方法にしたがって(例えば、光学的に活性な酸または塩基で処理して偏左右異性体塩を生成し、さらに結晶化し続いて光学的に活性な塩を前記偏左右異性体塩から遊離させる)、ラセミ混合物の分割によって得ることができる。有用な酸の例には、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸および樟脳スルホン酸が含まれる。
光学異性体を分離する別の方法は、鏡像体分離を最大にするために最適に選択されたキラルクロマトグラフィーカラムを用いることを必要とする。また別の利用可能な方法は偏左右異性体の共有結合分子、例えばエステル、アミド、アセタール、ケタールなどを合成することを必要とする。前記合成は、本発明の方法および医薬組成物で用いられる化合物を活性化された形態にある光学的に活性な酸、光学的に活性なジオール、または光学的に活性なイソシアネートと反応させることによって実施される。合成された偏左右異性体は、通常の手段、例えばクロマトグラフィー、蒸留、結晶化または昇華によって分離し、続いて鏡像体として純粋な化合物を送り出すために加水分解される。いくつかの事例では、患者に投与する前に加水分解して親の光学的に活性な薬剤を得ることは必要ではない。なぜならば前記化合物はプロドラッグとして機能することができるからである。本発明の光学的に活性な化合物は、光学的に活性な出発物質を用いることによって同様に得ることができる。
本発明の化合物は、ラセミおよび非ラセミ混合物と同様に光学異性体も包含することは理解されよう。
【0082】
本発明の方法
NAALADアーゼ酵素活性を抑制する方法
本発明はNAALADアーゼ酵素活性を動物または哺乳類で抑制する方法に関し、本方法は、前記動物または哺乳類に上記で定義した本発明の化合物の有効量を投与することを含む。
グルタミン酸異常を治療する方法
本発明はさらにグルタミン酸異常を動物または哺乳類で治療する方法に関し、本方法は、前記動物または哺乳類に上記で定義した本発明の化合物の有効量を投与することを含む。
治療できるグルタミン酸異常は、強迫性障害、卒中発作、虚血、脱髄疾患、パーキンソン病、ALS、ハンチントン病、精神分裂病、不安、不安障害、記憶障害および緑内障から成る群から選択することができる。
卒中患者は、虚血の開始から治療の開始の間に顕著な時間的遅延をしばしば経験する。
したがって、より長時間の治療適合ウィンドーをもつ神経保護物質が要求される。本発明の化合物は少なくとも1時間の治療適合ウィンドーを有すると期待される。したがって、グルタミン酸異常が卒中の場合は、本発明の化合物は、卒中の開始後60分、120分まで、またはそれ以上前記動物または哺乳類に投与することができる。
いずれの特定の作用メカニズムにも拘束されないが、本発明の好ましい化合物は、シナプス後グルタメートレセプターと作用することなく、グルタメートのシナプス前放出を遮断する物質であると考えられる。そのような化合物はシナプス後グルタメート拮抗物質に付随する作用に関連する毒性を回避できるであろう。
【0083】
ニューロン活性を発揮させる方法
本発明はさらに、ニューロン活性を動物または哺乳類で発揮させる方法に関し、本方法は、前記動物または哺乳類に上記で定義した本発明の化合物の有効量を投与することを含む。
本発明の方法によって発揮させられるニューロン活性は、損傷ニューロンの刺激、ニューロンの再生促進、神経変性の防止、または神経学的障害の治療であろう。
本発明の方法によって治療することができる神経学的障害の例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):三叉神経痛;舌咽神経痛;ベル麻痺;重症筋無力症;筋ジストロフィー;ALS;進行性筋萎縮;進行性延髄性遺伝性筋萎縮;脱出、断裂または逸脱椎間板症候群;頸部脊椎症;神経叢症候群(plexus disorder);胸郭出口症候群;末梢神経障害、例えば鉛、ダプソン、ダニ、ポルフィリン症によって惹起されるもの、またはギヤン−バレー症候群;糖尿病性神経障害;痛み;アルツハイマー病;およびパーキンソン病。
本発明の方法は特に、物理的損傷または病的状態によって惹起される末梢神経障害、痛み、外傷性脳損傷、脊髄の物理的損傷、脳損傷を伴なう卒中発作、脱髄疾患および神経変性に関連する神経学的障害から成る群から選択される神経学的障害の治療に有用である。
前記神経学的障害が痛みの場合、本発明の化合物は好ましくは有効量のモルヒネと一緒に投与される。
神経変性に関連する神経学的障害の例には、アルツハイマー病、パーキンソン病およびALSが含まれる。
【0084】
前立腺疾患を治療する方法
本発明の方法はさらに、前立腺疾患を動物または哺乳類で治療する方法に関し、本方法は、前記動物または哺乳類に上記で定義した本発明の化合物の有効量を投与することを含む。
癌を治療する方法
本発明の方法はさらに、癌を動物または哺乳類で治療する方法に関し、本方法は、前記動物または哺乳類に上記で定義した本発明の化合物の有効量を投与することを含む。
治療できる好ましい癌は、NAALADアーゼが存在する組織(脳、腎臓および精巣が含まれるが、これらに限定されない)の癌である。
血管形成を抑制する方法
本発明はさらに、血管形成を動物または哺乳類で抑制する方法に関し、本方法は、前記動物または哺乳類に上記で定義した本発明の化合物の有効量を投与することを含む。
血管形成は癌腫瘍の繁殖能力または転移に必要であり、また血管形成依存疾患と関連を有するであろう。したがって、本発明の方法はまた、慢性関節リウマチ、心脈管系疾患、眼の新生血管形成疾患、末梢血管障害、皮膚潰瘍および癌性腫瘍の増殖、侵襲または転移の治療に有用であろう。
【0085】
TGF−β活性を発揮させる方法
本発明はさらに、TGF−β活性を動物または哺乳類で発揮させる方法に関し、本方法は、前記動物または哺乳類に上記で定義した本発明の化合物の有効量を投与することを含む。
前記TGF−β活性の発揮には、TGF−βレベルの増加、低下または調節、およびTGF−β以上の治療が含まれる。治療できるTGF−β異常の例には以下が含まれる:神経変性疾患、細胞外マトリックス形成疾患、細胞増殖関連疾患、感染症、免疫関連疾患、上皮組織の瘢痕形成、膠原血管病、線維増殖性疾患、結合組織疾患、炎症、炎症性疾患、呼吸窮迫症候群、不妊症および糖尿病。
治療できる典型的な神経変性疾患には、虚血再灌流損傷、有髄化および神経変性により生じる神経組織の損傷が含まれる。
治療できる典型的な細胞増殖関連疾患には、腎臓細胞、造血細胞、リンパ球、上皮細胞および内皮細胞に影響を及ぼすものが含まれる。
【0086】
治療できる典型的な感染症には、マクロファージ病原体、特に以下から成る群から選択されるマクロファージ病原体によって惹起されるものである:細菌、酵母、真菌、ウイルス、原虫、クルーズトリパノソーマ、ヒストプラスマ=カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、鵞口瘡カンジダ、カンジダ=パラシローシス(Candida parapsilosis)、クリプトコッカス=ネオフォルマンス(Cryptocococcus neoformans)、サルモネラ、ニューモシスチス、トキソプラズマ、リステリア、マイコバクテリウム、リケッチアおよびリーシュマニア。マイコバクテイア属には、結核菌およびらい菌が含まれるが、ただしこれらに限定されない。トキソプラズマには、トキソプラズマ=ゴンディー(Toxoplasma gondii)が含まれるが、これに限定されない。リケッチアには、発疹チフスリケッチア、R.コロニー(coronii)およびツツガムシリケッチアが含まれるが、ただしこれらに限定されない。
治療できる他の感染症の例には、単発性もしくは多発性皮膚病巣、粘膜疾患、シャーガス病、後天的免疫不全症候群(AIDS)、トキソプラズマ症、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、住血吸虫症、クリプトスポリジウム症、トリ結核菌感染、カリニ肺炎および癩が含まれる。
【0087】
治療できる典型的な免疫関連疾患には、自己免疫疾患;免疫機能不全;および感染症(特にトリパノソーマ感染、ウイルス感染、ヒト免疫抑制ウイルス、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV−1)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスまたは肝炎)に付随する免疫抑制が含まれる。
治療できる典型的な膠原血管病には、進行性全身性硬化症(“PSS”)、多発性筋炎、皮膚硬化症、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、限局性強皮症、レーノー症候群、間質性肺線維症、皮膚硬化症および全身性紅斑性狼瘡が含まれる。
治療できる典型的な線維増殖性異常には、糖尿病性腎症、腎疾患、増殖性硝子体網膜症、肝硬変、胆管線維症、骨髄線維症が含まれる。特に好ましい腎疾患には、間質増殖性糸球体腎炎、半月増殖糸球体腎炎、腎間質線維症、シクロスポリン投与移植患者の腎線維症およびHIV関連腎症が含まれる。
治療できる典型的な結合組織疾患には皮膚硬化症、骨髄線維症並びに肝、眼内および肺線維症が含まれる。
【0088】
治療できる典型的な炎症性疾患は、PSS、多発性筋炎、皮膚硬化症、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、限局性強皮症、レーノー症候群、間質性肺線維症、皮膚硬化症、全身性紅斑性狼瘡、糖尿病性腎症、腎疾患、増殖性硝子体網膜症、肝硬変、胆管線維症、骨髄線維症、間質増殖性糸球体腎炎、半月増殖糸球体腎炎、糖尿病性腎症、腎間質線維症、シクロスポリン投与移植患者の腎線維症およびHIV関連腎症が含まれる。
特定の作用メカニズムに拘束されないが、本発明の好ましい化合物は、TGF−βの調節および/またはミエロペルオキシダーゼの抑制によって炎症性疾患を治療する。
本発明の化合物のTGF−β調節作用に関連する他の使用には以下が含まれる:
−組織、腺または器官の増殖、特に乳汁産生または体重増加を強化する増殖の刺激;
−細胞増殖、特に線維芽細胞、間葉性細胞または上皮細胞の増殖の刺激;
−細胞増殖、特に上皮細胞、内皮細胞、TおよびBリンパ球並びに胸腺細胞の増殖の抑制
−脂肪、骨格筋および造血表現型の発現の抑制、新形成の抑制、細胞死を誘発しないウイルス感染または他の病原体感染並びに自己免疫疾患の抑制;
−疾病に対する耐性および感受性の仲介;
−細胞性免疫反応の抑制;
−事故による損傷、外科手術、外傷による裂傷もしくは他の外傷から生じた創傷、または過剰結合組織形成が腹部癒着となる腹膜を巻き込む創傷によって損なわれた、好ましくは皮膚または他の上皮組織における瘢痕組織形成の抑制;
−ワクチン、特に例えばダストまたは枯草熱に対するアレルギーに対するワクチンの有効性の増強;および
−ポリープ形成の抑制。
【0089】
診断方法およびキット
本発明の化合物は、NAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害および症状(神経学的障害、グルタミン酸異常、糖尿病性神経障害、痛み、強迫性障害、前立腺疾患、癌、TGF−β異常および緑内障を含むが、ただしこれらに限定されない)を検出するin vitroおよびin vivoの検出方法に有用である。
したがって、本発明はまた、以下の工程を含むNAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を検出する方法に関する:
(i)体組織または体液サンプルを上記で定義した本発明の化合物と接触させ(ここで前記化合物は前記サンプル中の一切のNAALADアーゼと結合する);さらに、
(ii)前記サンプルと結合した一切のNAALADアーゼの量を測定する(ここで前記NAALADアーゼの量は前記疾患、障害または症状の診断に役立つ)。
体組織および体液の例には、前立腺組織、排出精液、精嚢液、前立腺液、尿、血液、唾液、涙、汗、リンパ液および痰が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0090】
前記化合物は当技術分野で公知の技術を用いてマーカーで標識することができる。有用なマーカーには、酵素マーカーおよび画像化試薬が含まれるが、ただしこれらに限定されない。画像化試薬の例には、放射能標識、例えば131I、111In、123I、99Tc、32P、125I、3Hおよび14C;蛍光標識、例えばフルオレセインおよびローダミン;並びに化学発光物質、例えばルシフェリンが含まれる。
NAALADアーゼの量は当分野で公知の以下を含む技術(ただしこれらに限定されない)を用いて測定することができる:アッセイ、例えば免疫測定アッセイ、比色アッセイ、比重測定アッセイ、スペクトログラフィーおよびクロマトグラフィーアッセイ;並びに画像化技術、例えば磁気共鳴分光法(“MRS”)、磁気共鳴画像化法(“MRI”)、単光子放射コンピューター支援断層撮影法(“SPECT”)および陽電子放射断層撮影法。
【0091】
本発明はさらに、NAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を検出する診断キットに関し、本キットは、マーカーで標識した上記で定義した本発明の化合物を含む。前記キットはさらに緩衝剤、バックグラウンドの干渉を減少させるための試薬、コントロール試薬および/または前期検査を実施するための装置を含むことができる。
本発明はさらに、以下の工程を含む、NAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を動物または哺乳類で検出する方法に関する:
(i)上記で定義した本発明の化合物を画像化試薬で標識し;
(ii)前記標識化合物の有効量を前記動物または哺乳類に投与し;
(iii)前記標識化合物を局在化させ、さらに前記動物または哺乳類に存在するNAALADアーゼと結合させ;さらに
(iv)前記標識化合物と結合したNAALADアーゼの量を測定する(ここで前記NAALADアーゼの量は前記疾患、障害または症状の診断に役立つ)。
NAALADアーゼの量は、上記で述べた公知の画像化技術を用いてin vivoで測定することができる。
【0092】
参照により本明細書に含まれる文献
NAALADアーゼ抑制物質とグルタメートとの関係、並びに種々の疾患、障害および症状の治療および検出におけるNAALADアーゼ抑制物質の有効性は、以下の文献で考察されている:米国特許出願第5,672,592号、同第5,795,877号、同第5,804,602号、同第5,824,662号、同第5,863,536号、同第5,977,090号、同第5,981,209号、同第6,011,021号、同第6,017,903号、同第6,025,344号、同第6,025,345号、同第6,046,180号、同第6,228,888号および同第6,265,609号;国際公開公報WO00/0168およびWO00/38785;並びに当技術分野で一般的に知られている参考文献。本発明者らは、参照により前述の文献を本明細書に、あたかも前述の特許、特許出願および刊行物を、特に以下の項目についてNAALADアーゼ抑制物質の有効性に関するそれらの考察、図面およびデータの完全な内容を本明細書で説明したかのように含むものである:血管形成の抑制、TGF−β活性の発揮、疾患の診断、並びに虚血、脊髄損傷、脱髄疾患、パーキンソン病、ALS、アルコール依存、ニコチン依存、コカイン中毒、前立腺疾患、癌、糖尿病性神経障害、痛み、精神分裂病、不安、不安障害および記憶障害の治療。本発明者らは、本発明の化合物が有効なNAALADアーゼ抑制物質であることを見出した。したがって、本発明の化合物は、参照により本明細書に含まれる前述の特許、特許出願および刊行物で開示されたNAALADアーゼ抑制物質と同じ使用を有すると期待される。
【0093】
本発明の医薬組成物
本発明はまた以下を含む医薬組成物に関する:
(i)本発明の化合物の有効量;および
(ii)医薬的に許容できる担体。
好ましくは、本発明の化合物は、動物または哺乳類でNAALADアーゼ酵素活性または血管形成を抑制するために有効な量、ニューロンの活性またはTGF−βの活性を発揮させるために有効な量、またはグルタミン酸異常、強迫性障害、前立腺疾患、癌または緑内障を治療するために有効な量で存在する。
【0094】
投与ルート
本発明の化合物および組成物は、局所的または全身的に当業者に公知の任意の手段により投与することができる。例えば、本発明の化合物または組成物は、経口的、非経口的に(吸入スプレーにより、局部に、直腸に、鼻に、頬側に、膣にまたは移植貯留装置により)、通常の無毒な医薬的に許容できる担体、アジュバントおよび賦形剤を含む単位投与剤形として投与することができる。本明細書で用いられる非経口的という用語には、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、硬膜下腔内、心室内、胸骨内、頭蓋内または骨内注射および輸液術が含まれる。正確な投与プロトコルは、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食事を含む種々の因子によって変動するであろう。具体的な投与方法の決定は当業者には容易であろう。
中枢神経系を標的とした場合に治療的に有効であるために、本発明の化合物および組成物は、末梢に投与されたとき血液脳関門を容易に通過しなければならない。血液脳関門を通過できない化合物は、心室内ルートまたは当技術分野で知られている他の方法によって効果的に投与することができる。例えば、米国特許第5,846,565号、同第5,651,986号、同第5,626,862号を参照されたい。
【0095】
投薬
本発明の化合物および組成物は、一回投与または間隔を空けて複数回投与または持続的輸液によって投与することができる。ポンプ装置、特に皮下ポンプ装置が持続的輸液のために好ましい。
活性成分化合物が約0.001から約10000mg/kgのオーダーの投与レベルが上記の症状の治療に有用で、好ましいレベルは約0.1から約1000mg/kg、より好ましいレベルは約1から約100mg/kgである。個々の患者に固有の投与レベルはいずれも、用いられる個々の化合物の活性および可能な毒性;患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別および食事;投与の時間、排出速度;併用薬剤;治療されるべき個々の疾患の重篤度;および投与形態を含む種々の因子にしたがって変動するであろう。動物モデル実験もまた役立つであろう。適切な投与量レベルを決定するために考慮しなければならない事柄は当技術分野で周知である。
投与行程
ドラッグデリバリーのタイミングおよび流れを調節するために当業者によく知られているいずれの投与行程も用いることが可能であり、さらに治療を達成するために必要に応じて反復することができる。そのような行程は、前処置および/またはさらに別の治療薬剤との同時投与を含むことができる。
【0096】
他の治療薬との同時投与
本発明の化合物および組成物は単独で用いてもよいが、また1つまたは2つ以上の別の薬剤と併用して同時に、別々にまたは連続して投与することができる。
前記の別の薬剤は当業者に公知の任意の治療薬で、以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):1つまたは2つ以上の本発明の化合物;ステロイド、例えばヒドロコーチゾン(例えばメチルプレドニソロン);抗炎症剤または抗免疫薬、例えばメトトレキセート、アザチオプリン、シクロホスファミド、またはシクロスポリンA;インターフェロン−β;抗体、例えば抗CD4抗体;二次虚血発作の危険性を減少させることができる薬剤、例えばチクロピジン;化学療法剤;免疫治療組成物;電磁放射線感作物質;およびモルヒネ。
本発明の化合物および組成物は、1つまたは2つ以上の治療薬剤と一緒に、単一の製剤として、または対応する活性成分の最適放出速度のためにデザインされた個々の製剤として別々に同時投与することができる。各製剤は、約0.01重量%から約99.99重量%、好ましくは約3.5重量%から約60重量%の本発明の化合物を、1つまたは2つ以上の医薬的に許容できる担体とともに含むことができる。
【0097】
化合物の製造
本発明の化合物は、有機化学の標準的な技術により、下記のスキームI、IIおよびIIIに示した一般的な合成経路を用いて製造できる。前駆体化合物は市販ルートで入手しても、当業者に公知の方法によって調製してもよい。
【0098】
【化9】

【0099】
【化10】

【0100】
【化11】

【実施例】
【0101】
以下の実施例は本発明の例証であり、本発明を制限しようとするものではない。特に指示しないかぎり、全てのパーセンテージは最終組成物の100重量%を基準にしている。
実施例1
5−カルボキシ−2−クロロ−α−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸(10)の製造(スキームI)
メチル3−ブロモメチル−4−クロロベンゾエート(II)
四塩化炭素(500mL)中のメチル4−クロロ−3−メチルベンゾエート(I)(19.9g,108mmol)およびN−ブロモスクシンイミド(NBS,20.2g,114mmol)に過酸化ベンゾイル(1.30g,5.4mmol)を添加し、前記混合物を90℃で一晩攪拌した。続いて前記混合物を冷却し、白色沈澱をろ過して除去した。
ろ液を濃縮し、得られた固体を酢酸エチルから再結晶化し、メチル3−ブロモメチル−4−クロロベンゾエート(II)(15.0g,57mmol、53%)を白色固体として得た:1HNMR(CDCl3)δ3.95(s,3H)、4.63(s,2H)、7.49(d,J=8.3Hz,1H)、7.94(dd,J=2.1,8.3Hz,1H)、8.15(d,J=2.1Hz,1H)。
【0102】
3−(2−クロロ−5−メトキシカルボニルベンジル)−テトラヒドロチオピラン−2−オン(IV)
THF(25mL)中のリチウムジイソプロピルアミド(2.0M溶液,3.3mL,6.6mmol)の溶液にテトラヒドロチオピラン−2−オン(III)(0.731g,6.3mmol)を−40℃で添加し、前記混合物を−40℃で45分攪拌した。続いて、THF(10mL)中のメチル3−ブロモメチル−4−クロロベンゾエート(II)(1.67g,6.3mmol)の溶液を前記混合物に−40℃で滴下しながら添加した。その後、前記混合物にヘキサメチルホスホルアミド(0.20g,1.4mmol)を−40℃で添加し、反応混合物を−40℃で4時間攪拌した。塩化アンモニウム飽和溶液(30mL)を前記反応混合物に添加し、さらに有機溶媒を減圧下で除去した。続いて前記混合物をエーテル(150mL)と水(150mL)の間で分配した。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮した。粗生成物をシリカゲル上でEtOAc/ヘキサンを用いてクロマトグラフィーを実施し、3−(2−クロロ−5−メトキシカルボニル)−テトラヒドロチオ−ピラン−2−オン(IV)(0.60g,2.0mmol,32%)を白色固体として得た:1HNMR(CDCl3)δ1.65−1.75(m,1H)、1.90−2.05(m,2H)、2.05−2.15(m,2H)、2.74(dd,J=9.4,13.9Hz,1H)、2.85−3.00(m,1H)、3.10−3.20(m,2H)、3.58(dd,J=4.7,13.9Hz,1H)、3.92(s,3H)、7.44(d,J=8.3Hz,1H)、7.85(dd,J=8.3,2.1Hz,1H),7.91(d,J=2.1Hz,1H)。
【0103】
5−カルボキシ−2−クロロ−α−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸(10)
THF(70mL)中の3−(2−クロロ−5−メトキシカルボニルベンジル)−テトラヒドロチオピラン−2−オン(IV)(9.26g,31.0mmol)の溶液を窒素で15分間パージした。脱気した水酸化ナトリウム水溶液(2.2M,70mL,154mmol)を前記溶液に添加し、混合物を窒素下で一晩室温で攪拌した。反応混合物をエーテルで洗浄し、3NのHClで0℃で酸性化し、エーテルで抽出した。前記抽出物をMgSO4上で乾燥させて濃縮し、5−カルボキシ−2−クロロ−α−(3−メルカプトプロピル)ベンゼンプロパン酸(10)(8.42g,27.8mmol,90%)を白色固体として得た:1HNMR(CD3OD)δ1.50−1.80(m,4H)、2.35−2.50(m,2H)、2.65−2.75(m,1H)、2.91(dd,J=6.2,13.8Hz,1H)、2.96(dd,J=8.8,13.8Hz,1H)、7.39(d,J=8.3Hz,1H)、7.76(dd,J=2.0,8.3Hz,1H)、7.86(d,J=2.0Hz,1H);13CNMR(CD3OD)δ 25.1,32.5,33.2,37.4,46.8,130.8,131.2,134.0,139.1,140.5,169.2,178.9。C1315ClO4Sについての分析計算値;C,51.57;H,4.99;S,10.59;Cl,11.71、測定値:C,51.59;H,4.94;S,10.43;Cl,11.80。
【0104】
実施例2
3−カルボキシ−5−(1,1−ジメチルエチル)−α−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸(49)の製造(スキームII)
メチル−5−tert−ブチル水素イソフタレート(VI)
メタノール(150mL)中の5−tert−ブチルイソフタレート(V)(23.0g,92mmol)の溶液に、水(10mL)に3.68g(92mmol)の水酸化ナトリウムの水溶液を25℃で添加し、前記混合物を25℃で3時間攪拌した。有機溶媒を減圧下で除去し、残留固体を硫酸水溶液(1.0M)に懸濁させた。前記懸濁液をろ過し、沈殿物を水で洗浄し、真空下で乾燥させ、ヘキサン/酢酸エチルから結晶化させて、5−tert−ブチル水素イソフタレート(VI)(16.3g,69.0mmol,75%)を白色固体として得た:1HNMR(CDCl3)δ1.45(s,9H)、3.9(s,3H)、8.5(s,1H)、8.7(s,1H)、8.8(s,1H);13CNMR(CDCl3)δ31.3(3C)、35.2、52.5、128.8、129.7、130.7、131.1、131.6、132.0、166.7、171.5。
【0105】
メチル3−tert−ブチル−5−ヒドロキシメチルベンゾエート(VII)
ボラン−硫化ジメチル複合物(7.23mL,76.2mmol)をTHF(100mL)中のメチル5−tert−ブチル水素イソフタレート(VI)(12.0g,50.8mmol)の溶液に室温で20分かけてゆっくりと添加した。前記混合物を室温で1.5時間攪拌し、続いてさらに1時間還流させた。続いて反応混合物を冷却し、未反応ボランをメタノール(10mL)で分解した。溶媒を減圧下で除去し,残留物を酢酸エチルに溶解させた。前記有機溶液を飽和NaHCO3溶液で洗浄し、さらにMgSO4上で乾燥させ,シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製して、メチル3−tert−ブチル−5−ヒドロキシメチルベンゾエート(VII)(10.0g,45.0mmol,90%)を白色固体として得た:1HNMR(CDCl3)δ1.45(s,9H)、3.9(s,3H)、4.7(s,2H)、7.6(s,1H)、7.8(s,1H)、8.0(s,1H);13CNMR(CDCl3)δ31.4(3C)、35.0、52.3、65.3、125.5、126.1、128.8、130.3、141.0、152.1、167.5。
【0106】
メチル3−ブロモメチル−5−tert−ブチルベンゾエート(VIII)
ジクロロメタン(50mL)中のメチル3−tert−ブチル−5−ヒドロキシメチルベンゾエート(VII)(9.50g,42.7mmol)および四臭化炭素(17.25g,52.0mmol)の溶液に、トリフェニルホスフィン(13.6g,52.0mmol)をゆっくり20分かけて添加し、さらに前記混合物を室温で25分攪拌した。前記反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を酢酸エチルに懸濁した。沈殿物をろ過して除去し、さらにろ液を濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、4:1)で精製し、前記生成物を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶化させて、メチル3−ブロモメチル−5−tert−ブチルベンゾエート(VIII)(12.0g,42.1mmol,99%)を白色固体として得た:1HNMR(CDCl3)δ1.45(s,9H)、3.7(s,3H)、4.4(s,2H)、7.6(s,1H)、7.8(s,1H)、8.0(s,1H);13CNMR(CDCl3)δ31.3(3C)、33.2、36.0、52.3、126.9、127.5、130.6、130.7、137.9、152.4、167.0。
【0107】
5−(3−tert−ブチル−5−メトキシカルボニル−ベンジル)−2,2−ジメチル−5−[3−[(トリフェニルメチル)チオ]プロピル]−[1,3]ジオキサン−4,6−ジオン(X)
アセトニトリル(90mL)中のメチル3−ブロモメチル−5−tert−ブチルベンゾエート(10.3g,36.1mmol)、2,2−ジメチル−5−[3−[(トリフェニルメチル)−チオ]プロピル]−[1,3]ジオキサン−4,6−ジオン(IX)(13.8g,30.0mmol)およびベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(6.38g,30mmol)を炭酸カリウム(4.35g,30mmol)に25℃で添加し、前記反応混合物を60℃で一晩攪拌した(化合物(IX)の合成は以前に国際公開WO00/01668で開示された)。溶媒を減圧下で除去し、酢酸エチルと10%のKHSO4水溶液との間で分配した。前記有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ濃縮した。粗生成物を酢酸エチル/ヘキサン混合物から再結晶化させて、5−(3−tert−ブチル−5−メトキシカルボニル−ベンジル)−2,2−ジメチル−5−[3−[(トリフェニルメチル)チオ]プロピル]−[1,3]ジオキサン−4,6−ジオン(X)(14.0g,79%)を白色固体として得た:1HNMR(CDCl3)δ0.7(s,3H)、1.3(s,9H)、1.2−1.3(m,2H)、1.5(s,3H)、2.0(m,2H)、2.2(m,2H)、3.3(s,2H)、3.8(s,3H)、7.27−7.4(m,16H)、7.6(s,1H)7.8(s,1H);13CNMR(CDCl3)δ24.8、29.1、31.2、31.4、34.9、40.3、43.7、52.3、57.3、66.8、105.8、126.0、126.8、128.0、128.5、129.6、130.5、132.3、135.3、144.8、152.4、167.1、168.5。
【0108】
2−(3−tert−ブチル−5−メトキシカルボニル−ベンジル)−2− [3−[(トリフェニルメチル)チオ]プロピル]−マロン酸(XI)
1,4−ジオキサン(15mL)中の5−(3−tert−ブチル−5−メトキシカルボニル−ベンジル)−2,2−ジメチル−5−[3−[(トリフェニルメチル)チオ]プロピル]−[1,3]ジオキサン−4,6−ジオン(X)(11g,16.5mmol)に、水(15mL)に4.63g(115.5mmol)の水酸化ナトリウムの水溶液を25℃で添加し、前記混合物を100℃で1時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、酢酸エチルと10%のKHSO4水溶液との間で分配した。前記有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ濃縮した。粗生成物を酢酸エチル/ヘキサン混合物から再結晶化させて、2−(3−tert−ブチル−5−メトキシカルボニル−ベンジル)−2− [3−[(トリフェニルメチル)チオ]プロピル]−マロン酸(XI)(9.0g,90%)を白色固体として得た:1HNMR(CD3OD)δ1.4(s,9H)、1.4(m,2H)、1.6(m,2H)、2.1(t,J=8.0Hz,2H)、3.2(s,2H)、7.1−7.4(m,16H)、7.7(s,1H)、7.9(s,1H);13CNMR(CD3OD)δ24.8,31.8(3C)、32.4,33.3,35.6,39.0,59.5,67.7,126.2,127.7,128.9,129.6,130.7,131.5,132.9,137.8,146.2,152.6,170.1,174.5。
【0109】
2−(3−tert−ブチル−5−メトキシカルボニル−ベンジル)−5− [(トリフェニルメチル)チオ]ペンタン酸(XII)
DMSO(10mL)中の2−(3−tert−ブチル−5−メトキシカルボニル−ベンジル)−2− [3−[(トリフェニルメチル)チオ]プロピル]−マロン酸(XI)(6.71g,11mmol)を130℃で1.5時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、さらに残留油に水を添加した。沈殿物をろ過して水で洗浄し、真空下で乾燥させて2−(3−tert−ブチル−5−メトキシカルボニル−ベンジル)−5− [(トリフェニルメチル)チオ]−ペンタン酸(XII)(5.86g,10.3mmol,94%)を白色固体として得た:1HNMR(CD3OD)δ1.3(s,9H)、1.3−1.5(m,4H)、2.1(m,2H)、2.4(m,1H)、2.8(m,1H)、7.1−7.4(m,16H)、7.7(s,1H)、7.9(s,1H);13CNMR(CD3OD)δ27.4,31.7(3C),32.3,32.7,35.6,39.2,48.4,67.7,125.7,127.7,128.6,128.9,130.8,131.6,132.0,140.8,146.3,152.7,170.3,178.8。
【0110】
3−カルボキシ−5−(1,1−ジメチルエチル)−α−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸(49)
ジクロロメタン(30mL)中の2−(3−tert−ブチル−5−メトキシカルボニル−ベンジル)−5− [(トリフェニルメチル)チオ]−ペンタン酸(XII)(5.5g,9.7mmol)の溶液に、トリイソプロピルシラン(2.4mL,11.6mmol)およびトリフルオロ酢酸(10mL)を添加し、前記混合物を室温で10分攪拌した。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン中の1%AcOH)で精製して、3−カルボキシ−5−(1,1−ジメチルエチル)−α−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸(49)(1.7g,5.3mmol,55%)を白色固体として得た:1HNMR(CD3OD)δ1.3(s,9H)、1.5−1.8(m,4H)、2.4(m,2H)、2.6−2.7(m,1H)、2.8−2.9(m,1H)、2.9−3.0(m,1H)、7.5(s,1H)、7.7(s,1H)、7.8(s,1H)、13CNMR(CD3OD)δ24.8,31.7(3C),31.9,32.9,35.6,39.5,48.6,125.7,128.5,131.6,132.0,140.9,152.8,170.3,179.0。
17244Sの分析計算値:C,62.93;H,7.46;S,9.88、測定値:C,63.02;H,7.36;S,9.82。
【0111】
実施例3
3−(1−カルボキシ−4−メルカプトブトキシ)−安息香酸(14)の製造(スキームIII)
メチル3−(4−アセチルチオ−1−メトキシカルボニル−ブトキシ)−ベンゾエート(XV)
DMF(80mL)中のメチル2,5−ジブロモペンタノエートXIII(22.00g、80.3mmol)およびメチル3−ヒドロキシベンゾエートXIV(10.18g,66.9mmol)の溶液に、K2CO3(12.94g,93.7mmol)を室温で添加した。前記混合物を窒素下で12時間室温で攪拌し、続いて70℃で1時間加熱した。チオ酢酸カリウム(22.93g,200.8mmol)を前記混合物に添加し、70℃で2時間加熱した。混合物を室温に冷却し、EtOAc(1000mL)で希釈した。
前記混合物を水(300mL、3回)およびブライン(300mL、2回)で洗浄した。
有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、ろ過して濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出:10%から20%EtOAc/ヘキサン)で精製し、メチル3−(4−アセチルチオ−1−メトキシカルボニル−ブトキシ)−ベンゾエート(XV)(8.40g,24.7mmol,37%)を黄色油として得た:Rf0.26(ヘキサン/EtOAc,4:1):1HNMR(CDCl3)δ1.73−1.88(m,2H)、2.01−2.08(m,2H)、2.32(s,3H)、2.93(t,J=7.2Hz,2H)、3.75(s,3H)、3.89(s,3H)、4.69(t,J=6.2Hz,1H)、7.07(dm,J=8.0Hz,1H)、7.33(t,J=7.9Hz,1H)、7.50(m,1H)、7.65(dm,J=7.7Hz,1H);13CNMR(CDCl3)δ25.3,28.3,30.5,31.4,52.1,52.2,75.8,115.4,120.0,122.8,129.5,131.4,157.5,166.4,171.3,195.4。
【0112】
3−(1−カルボキシ−4−メルカプトブトキシ)−安息香酸(14)
THF(60mL)中のメチル3−(4−アセチルチオ−1−メトキシカルボニル−ブトキシ)−ベンゾエート(XV)(8.00g,23.5mmol)の溶液に1時間窒素を通気し酸素を除去した。前記溶液に酸素を除去した3NのNaOH(47mL,141mmol)を添加し、前記混合物を窒素下で室温で24時間攪拌した。前記混合物を1NのHClで酸性化し、EtOAc(300mLで3回)で抽出した。有機抽出物を水(300mL)およびブライン(300mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ濃縮した。残留した油をエーテルに溶解させ、前記溶液を濃縮して、3−(1−カルボキシ−4−メルカプトブトキシ)−安息香酸(14)(4.40g,16.3mmol,69%)を白色固体として得た:1HNMR(CDCl3)δ1.40(t,J=7.9Hz,1H)、1.83−1.99(m,2H)、2.11−2.22(m,2H)、2.63(m,2H)、4.76(dd,J=7.3,5.0Hz,1H)、7.23(m,1H)、7.38(t,J=7.8Hz,1H)、7.49(m,1H)、7.72(d,J=7.7Hz,1H);13CNMR(CDCl3)δ24.1,29.6,31.2,75.5,114.8,122.1,123.9,129.9,130.5,157.6,171.8,177.1。
12145Sの分析計算値:C,53.32;H,5.22;S,11.86。測定値:C,53.04;H,5.38;S,11.58
【0113】
実施例4
(+)−3−カルボキシ−α−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸(53)および(−)−3−カルボキシ−α−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸(54)の製造
3−カルボキシ−α−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸のラセミ体溶液(2.70g,10.1mmol)を等容積の複数のサンプルに分割し、溶離液として二酸化炭素/メタノール(77/23,v/v)を用い流速25mL/分、25℃でそれらの各々をCHIRAPAKADカラム(250mm×21mm(内径))に通した。各サンプルの最初の溶出ピーク(290nmのUVで検出)を一緒にし、濃縮して(+)−3−カルボキシ−α−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸(53)(1.02g,38%)を無色の油として得た:[α]25D=+15.5(c=1.1,CH3CN)。(−)−3−カルボキシ−α−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸(54)(1.08g,40%)は、同様にして第二のピークから無色の油として得た:[α]25D=−13.4(c=1.1,CH3CN)。
【0114】
実施例5
NAALADアーゼ活性のin vitro抑制
本発明の種々の化合物をNAALADアーゼ活性のin vitro抑制について検査した。結果は下記の表IIに示されている。

表II:NAALADアーゼ活性のin vitro抑制
【0115】
【表2】


【0116】
NAALADアーゼ活性のin vitro抑制のアッセイプロトコル
以下のものをアッセイ管で混合する:10mMのCoCl2、100μL;200mMのトリス塩化物、250μL;100μLの組織;ベーカース(Bakers)水に10mMのNAALADアーゼ抑制物質、100μL;および全容積を950μLにするためのベーカース水。続いて各アッセイ管を37EC水浴中で10分インキュベートした。50μLの3−H−NAAGを続いて各アッセイ管に添加し、さらに15分37EC水浴中でインキュベートした。アッセイは0.1Mのリン酸ナトリウム(1.0mL)を添加して停止させた。
NAALADアーゼ酵素の作用によって遊離されるグルタメートは、陰イオン交換樹脂を用いてアッセイ溶液から分離した。樹脂を25ECに平衡化させ、その2.0mLを単ガラスビーズ1個を予めロードしたパスツールピペットに添加し、各カラムを2回蒸留水で洗浄した。カラムをシンチレーションバイアル上に置き、200μLのアッセイサンプルをカラムにロードした。水分を排出させた後、1Mのギ酸の1.0mLで2回洗浄してグルタメートを溶出させた。10mLのシンチレーションカクテルを添加した後、各サンプルをシンチレーションカウンターで2分間計測した。
【0117】
実施例6
虚血に対するin vitroアッセイ
本発明の化合物の虚血に対する影響をin vitroで調べるために、シアン化カリウムおよび2−デオキシグルコースによる虚血性傷害の間およびその後1時間、皮質細胞培養を本発明の種々の化合物で処理した。用いた実験方法の説明については以下の文献を参照されたい:Vornov et al., J. Neurochem. 65(4):1681-1691(1995)。結果は下記の表IIIに示されている。神経保護作用はEC50(虚血性傷害に続くグルタメート毒性の50%減少をもたらすために必要な化合物の濃度)として表されている。
表III
【0118】
【表3】

【0119】
実施例7
TGF−βに対するin vitro虚血モデルでのNAALADアーゼ抑制の影響
NAALADアーゼ抑制物質(化合物C)を虚血細胞培養に添加し、発作中のTGF−βレベルに対する前記抑制物質の影響を調べた。実験データ(図1および2で説明)は、化合物Cで処理された虚血細胞培養におけるTGF−β1の濃度増加(図1)およびTGF−β2の濃度増加(図2)を示している。これらの結果は、NAALADアーゼ抑制はグリア細胞から内因性TGF−βの放出(これは順次近傍のニューロンに神経保護を提供する)を促進することを示した。
続いてTGF−β中和抗体を前記虚血細胞培養に添加した。図3は、TGF−β中和抗体はin vitro虚血モデルでの化合物Cの神経保護作用を阻止することを示している。対照的に図4は、別の増殖因子抗体(FGF抗体)の添加は化合物Cの神経保護作用を阻止しないことを示している。これらの結果は、NAALADアーゼ抑制は、発作時のTGF−βレベルに特に影響を及ぼすことを示している。
【0120】
実施例8
TGF−βに対するin vivo虚血モデルでのNAALADアーゼ抑制の影響
化合物Cの神経保護作用に対するTGF−β中和抗体の影響をMCAO後のラットでも調べた。図6は、MCAOラットの化合物Cによる処置は、ミクロ透析でアッセイしたとき閉塞と再灌流の両期間中にTGF−βレベルを顕著に増加させることを示している。これらの結果は、NAALADアーゼ抑制は、内因性TGF−βを調節することによって(少なくとも部分的に)神経保護作用をもたらすことを示している。
さらにまた図5は、TGF−β中和抗体は化合物Cの神経保護作用をin vivoで顕著に減弱させることを示している。当業者には、NAALADアーゼ抑制物質によるTGF−βの調節は、発作だけでなく他の疾患、障害および症状においても密接な関わりをもつ可能性があることは理解されよう(前記疾患、障害および症状には神経学的疾患、精神的疾患、脱髄疾患、前立腺疾患、炎症、糖尿病および血管形成が含まれるが、ただしこれらに限定されない)。
【0121】
実施例9
神経障害痛に対するNAALADアーゼ抑制物質のSTZモデルでのin vivoアッセイ
雄のスプラーグ=ドーリーラット(200−225g)をストレプトゾトシン(燐酸緩衝食塩水で70mg/kg、“STZ”)の投与により糖尿病にした。糖尿病の動物を5つの群に分けた:化合物A投与(10mg/kgまたは1mg/kg)、化合物D投与(10mg/kgまたは1mg/kg)または賦形剤の群。別の群の動物(STZ非処理)は非糖尿病コントロールとして機能した。薬剤/賦形剤処理は糖尿病動物でSTZ投与後45日で開始した。STZ誘発糖尿病ラットは、血中グルコースレベルが320mg/dL以上に上昇したら直ちに(STZ後30日)熱源に対する感受性について検査した。続いてラットをハーグレーブズ(Hargreaves)の装置に順応させ、後足の上部表面に向けた赤外線熱源を用いて熱侵害受容をモニターし、前記足の移動に動物が要した時間を0.1秒まで記録した(詳細な実験方法については上掲書(Hargreaves et al.)を参照されたい)。熱線源の強度は、コントロール動物(STZ非処理)の平均潜伏時間がほぼ10秒となるように調節した。各動物は8回検査し、(非糖尿病コントロールの平均潜伏時間と糖尿病の平均潜伏時間との間の)平均差スコアを図7Aおよび7Bにグラフで表した。糖尿病ラットは、非糖尿病コントロールと較べて痛覚過敏(反応潜伏時間の短縮)を示し、痛覚過敏は賦形剤処理ラットではSTZ処理後30日で始まり徐々に悪化した。前記の痛覚過敏は、化合物DまたはA(10mg/kg/日、ip)で処置された糖尿病ラットでは完全に逆転した。したがって、これらの結果はNAALADアーゼ抑制は神経障害痛を減弱させることを示している。
【0122】
実施例10
神経障害痛に対するNAALADアーゼ抑制物質のCCIモデルでのin vivoアッセイ
坐骨神経結紮(前記神経の三分枝基部を1mm間隔でその周囲をゆるく縛った4本の結紮糸から成る)をラットで実施した。坐骨神経結紮後に、前記ラットは熱に対する痛覚過敏および異痛症を示した。このラットをハーグレーブズの装置に慣らした。赤外線熱源を各ラットの後ろ足の上部表面に向け、前記ラットがその足を引っ込めるために要する時間を記録した。手術側の足対無手術コントロール側の足の反応潜伏時間の間のスコアの差を求めた。
化合物49
坐骨神経結紮後、ラットを化合物49(10、1または0.1mg/kg)または賦形剤のどちらかで15日間処置した。熱痛覚反応は、0、1、5、8および15日目に測定した。賦形剤処置ラットおよび化合物49処置ラットのスコアの差は図13−15にグラフで示されている。これらの結果は、賦形剤処置ラットの持続的痛覚過敏と比較して、化合物49による処置によって施術足と非施術足との間のスコアの差は標準化されることを示した。非施術(シャム)側の足の引っ込めにラットが要した時間は図16に示した。処置に関係なく、ラットはシャム側でほぼ等しい引っ込め潜伏時間を示した。
【0123】
化合物5
坐骨神経結紮後、ラットを化合物5(50、30、10、3、1または0.3mg/kg)または賦形剤のどちらかで12(または15)日間処置した。熱痛覚反応は、0、1、5、8および12(および15)日目に測定した。賦形剤処置ラットおよび化合物5処置ラットのスコアの差は図17−22にグラフで示されている。これらの結果は、賦形剤処置ラットの持続的痛覚過敏と比較して、化合物5による処置は施術足と非施術足との間のスコアの差を標準化することを示した。非施術(シャム)側の足の引っ込めにラットが要した時間は図23に示した。処置に関係なく、ラットはシャム側でほぼ等しい引っ込め潜伏時間を示した。
化合物C
術後10日から、ラットに化合物C(501mg/kg/日、ip)または賦形剤のどちらかを投与した。賦形剤処置ラットの持続的痛覚過敏と比較して、化合物Cによる処置は、2つの足間のスコアの差を顕著に標準化した。正常(非施術)ラットはほぼ等しい引っ込め潜伏時間を両方の足で示した。この作用は薬剤処置の11日目から顕著で、実験の終了まで持続した(毎日投薬して21日間)。スコアの差は図8にグラフで示されている。これらの結果は、NAALADアーゼ抑制によってCCI付随痛覚過敏が弱まることを示している。
【0124】
実施例11
神経障害痛の進行に対するNAALADアーゼ抑制物質のBB/Wモデルでのin vivoアッセイ
化合物DおよびA
雄のBB/Wラット(BRI, Mass)は、偶発的に膵B細胞の細胞介在自己免疫破壊を惹起させ、インシュリン依存(I型)糖尿病の開始をもたらす(Guberski 1994)。これらのラットは性状が調べられ、神経的欠損、例えば線維の消失および変性(ヒト糖尿病患者の神経で認められるものに対応する変化(Yagihasi 1997))を伴なう神経障害を呈することが示された。このことは、前記の主要な障害の今後の治療を目的とする新規な化合物を実験的に試すために前記動物を有用なものにする。本実験では、化合物Dおよび化合物Aを糖尿病性神経障害の進行を変化させるそれらの能力について調べた。ラットには毎日化合物Dまたは化合物A(10mg/kg、ip)を糖尿病(高血糖)の開始からその後6ヶ月まで与えた。賦形剤を与えた別の非糖尿病ラット群も調べた。全ての動物を、体重、尿容積、血糖およびグリケートヘモグロビンについて継続的にモニターした。実験の最初の月に毎週、全動物をハーグレーブズの装置で熱侵害受容について検査した。最初の月以降は、前記検査は2週間に1回、続いて1ヶ月に1回実施した。前記検査は、赤外線熱源をラットの後足の上部表面に向け、その足の引っ込めに動物が要する時間を記録することから成る(実験方法の説明については上掲書(Hargreaves et al.)を参照されたい)。各動物は8回検査し、平均引っ込め潜伏時間を記録した。
【0125】
結果は図11にグラフで示されている。これらの結果は、糖尿病ラットは非糖尿病コントロールと比較して痛覚過敏(反応潜伏時間の短縮)を生じることを示している。薬剤処置糖尿病ラット(化合物Dおよび化合物Aの両方)は、賦形剤処置糖尿病ラットより長い引っ込め潜伏時間を示し、前記は処置の4週間後に始まり、6ヶ月の治療期間中持続した。
神経伝達速度もまた、治療から8週間までは2週間毎に、その後は6ヶ月の治療中毎月測定した(実験方法の説明については以下を参照されたい:De Koning et al., Peptides, 8(3):415-22(1987))。結果は図12にグラフで示されている。糖尿病の動物は、非糖尿病コントロールと比較して一般に神経伝達速度の低下を示した。しかしながら、NAALADアーゼ抑制物質(10mg/kgの投与量の化合物Dまたは化合物Aのいずれも)の注射を毎日受けた糖尿病の動物は、賦形剤処置を受けた糖尿病コントロールよりもはるかに重篤ではない神経伝達不全を示した。前記現象は処置8週間から明瞭で、6ヶ月の実験終了時点まで同程度で持続した。他方、賦形剤処置糖尿病動物は、賦形剤投与の開始後6から16週で神経伝達速度の悪化が進行し、6ヶ月間持続した。
【0126】
実施例12
糖尿病性神経障害に対するNAALADアーゼ抑制物質のSTZモデルでのin vivoアッセイ
運動神経および知覚神経の伝達速度もまた、処置後4、8および12週間でSTZ糖尿病動物で測定した(実験方法の説明については上掲書(De Koning et al.)を参照されたい)。簡単に記せば、麻酔ラットに、刺激針電極を坐骨神経および脛骨神経の近くに記録電極(前記は遠位部の脚の筋肉の皮下に配置した)とともに挿入した。結果は図9A、9B、10Aおよび10Bにグラフで示されている。賦形剤を投与された糖尿病動物は、非糖尿病動物と比較して運動神経および知覚神経の両方で神経伝達速度の顕著な低下を示した。10mg/kgの化合物Aで毎日、4、8および12週間処置された場合、いずれも運動神経および知覚神経の両方で神経伝達速度の改善(増加)傾向を示し、顕著な改善は運動神経伝達速度および知覚神経伝達速度についてそれぞれ12週後および8週後に観察された(図9Aおよび9B)。調べた化合物Aの低用量でも同様な効果が示された。化合物Dによる動物の処置ではいずれの用量でも運動神経および知覚神経の両方で神経伝達速度は、糖尿病コントロールの神経伝達速度を越えて増加し、10mg/kg処置群については処置後12週で(図10Aおよび10B)、1mg/kg投与量では処置後より早期に顕著に増加した。したがって、これらの結果は、NAALADアーゼ抑制は糖尿病性神経障害の進行を変化させることを示している。
【0127】
実施例13
糖尿病性神経障害の逆転に対するNAALADアーゼ抑制物質のSTZモデルでのin vivoアッセイ
STZモデルのための一般的方法−延期投与
ラット(200−225g)の尾静脈にSTZ(70mg/kg)を注射した。糖尿病(>350mg/dL)は、STZ投与後4週間で全てのラットで確認された。STZ投与後35から49日までラットは無処置のままで維持した。痛覚過敏および/または神経伝達速度低下を確認した後、化合物D(1、3または10mg/kg)、化合物E(10mg/kg)、または賦形剤を毎日投与(p.o.)した。別の実験では、処置の開始をSTZ投与後60から90日まで延期された。神経伝達速度または後足の熱刺激に対する引っ込め反応を、通常は2週間毎(熱反応に対して)および1ヶ月毎(神経伝達速度に対して)測定した。
【0128】
db/dbマウス実験のための一般的方法
偶発性糖尿病マウス(db/dbマウス)および同腹の非糖尿病マウスはジャクソンラブ(Jackson Labs)から入手した。マウスは7から8ヶ月齢まで(または4から5ヶ月の慢性糖尿病後)未処置のまま維持され、続いて化合物Fを1mg/kg(p.o.)で毎日投与した。神経伝達速度を処置の開始前および処置の8週間後に測定した。
神経伝達速度の測定
知覚神経および運動神経伝達速度は、De Koning & Gispenの方法(Peptides 8:415-422(1987))を用いて評価した。電気生理学的評価は投与後1時間以内に実施した。動物はイソフルランで麻酔し、刺激針電極は坐骨切痕の坐骨神経およびくるぶし近くの脛骨神経に近接して挿入した。記録電極は脚の筋肉上に配置した。刺激を与え反応を記録した。運動神経および知覚神経伝達速度を坐骨切痕とくるぶし部位との間の距離、およびM波とH反射との間の潜伏時間を測定することによって算出した。
【0129】
熱痛覚過敏
動物を装置に少なくとも5分順応させた。赤外線源をラットの後足の足底表面に配置した。熱源の強度は、正常ラットの潜伏時間が約10秒となるように調節した。ハーグレーブズらの方法(Pain 77-88, 1988)にしたがって、熱反応潜伏時間について動物を検査した。各動物は8回検査し(各後足を4回)、反応潜伏時間は0.1秒まで自動的に記録された。各足について最後の4つの測定値(合計8つの測定値)の平均を計算し、各ラットについて記録した。
図31は、STZ糖尿病のラットの神経障害痛異常に対するNAALADアーゼ抑制物質(化合物Dおよび化合物E)処置の影響を示す。全てのラットが、NAALADアーゼ抑制物質処置(STZ後5週間)の前には明瞭な痛覚過敏を示した。しかしながら、両NAALADアーゼ抑制物質処置群で、処置後2週間以内に神経障害性痛覚過敏は正常に向けて逆転した。この逆転は、長期にわたる糖尿病STZラットで通常認められる後続の痛覚低下期の間中持続し、NAALADアーゼ処置ラットでは痛覚低下期の程度の減少が示された。
図32は、NAALADアーゼ抑制物質処置前および処置後のSTZ糖尿病ラットおよび非糖尿病コントロールにおける運動神経伝達速度の測定を示す。投薬してから8週間以内に、化合物Dおよび化合物Eの両NAALADアーゼ抑制物質は、運動神経伝達速度を正常(非糖尿病値)に向けて逆転させた。この作用は12週間の処置期間中持続した。
図33は、同様な検査による知覚神経伝達速度低下を示している。NAALADアーゼ抑制物質処置は知覚神経伝達速度低下を同様に逆転させ、処置後わずかに2週間で顕著な逆転を示した。
【0130】
図34は別の実験における神経障害痛異常を示している。この場合、STZ処置の7週間後に、より低用量(1および3mg/kg)のNAALADアーゼ抑制物質(化合物D)による処置が開始された。両用量の化合物Dによる顕著な疼痛異常の減少が再び明瞭であった。
図35および36は、低用量の化合物Dで処置された慢性糖尿病STZラットの知覚神経および運動神経伝達速度をそれぞれ示している。知覚神経伝達速度は処置から4週間以内に正常に向けて顕著に改善されたが、一方、運動神経伝達速度はこれら低用量では投与後8週間でも改善されないままであった。
図37および38は、同様な慢性糖尿病STZモデルで外部CROから起動させた知覚神経および運動神経伝達速度測定を示す。この実験では、ラットはSTZ処置後60日まで未処置で維持された。両伝達速度の低下の部分的逆転が化合物Dの処置によって再び得られた。図39は、STZ後90日まで処置をさらに遅らせた同じ実験を示している。
図40は、6から7ヶ月齢の遺伝的糖尿病マウスモデルの神経伝達速度の測定を示す(約4ヶ月の慢性糖尿病後)。知覚NCVにおける顕著な障害がこの時期に明白であった。
図41は、より強力な別のNAALADアーゼ抑制物質による処置(1mg/kg/日で投与)から8週間後の前記マウスの神経伝達速度を示している。知覚神経伝達における顕著な改善が薬剤処置の後で明白であった。
【0131】
実施例14
NAALADアーゼ抑制物質のALS開始に対する影響
NAALADアーゼ抑制物質のALS開始に対する影響を、家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)の遺伝子導入マウスモデルを用いて調べた。前記については下記文献に詳細に記載され、また別に当技術分野でもよく知られている(M. Gurney, Annals of Neurology (1996) 39:147-157)。1ヶ月齢の遺伝子導入G1Hマウスの腹腔内に賦形剤(50mMのHEPES緩衝食塩水)またはNAALADアーゼ抑制物質(50mg/kgの化合物A)を毎日注射した。マウスの臨床症状を毎日モニターした。臨床症状の開始は各マウスを以下について調べて判定した:尾をもって空中でぶら下げたときに四肢が震える、脊髄反射の交差伸長(cross spread)、後肢麻痺、体重および輪回し活動。
下記の表IVに提示した結果は、疾患の開始はNAALADアーゼ抑制物質で処置されたマウスで遅くなることを示している。

表IV:臨床症状開始に対するNAALADアーゼ抑制物質の影響
【0132】
【表4】

【0133】
実施例15
ALS生存および臨床症状に対するNAALADアーゼ抑制物質の影響
ALS生存および臨床症状に対するNAALADアーゼ抑制物質の影響を、再びFALSの遺伝子導入マウスモデルを用いて調べた。1ヶ月齢の遺伝子導入G1Hマウスを賦形剤(50mMのHEPES緩衝食塩水)またはNAALADアーゼ抑制物質(30mg/kgの化合物B)で毎日経口投与によって処置した。マウスの臨床症状を1週間に2回モニターした。前記モニターされた症状には以下が含まれる:四肢の震え、歩行、後肢の引きずり、四肢の交差、立ち直り反射および死亡率。歩行および四肢の交差は0から3の範囲の任意基準にしたがって等級を付けた(0はほぼ正常、3はもっとも低い正常、例えば重度の歩行困難または四肢の交差)。立ち直り反射は、マウスを平らな表面に側臥させたとき、マウスがまっすぐに立ち直るために要した時間(秒)によって測定した。
図24−30に提示した結果は、NAALADアーゼ抑制物質で処置されたマウスでは延命が認められ、臨床症状は軽減されることを示している。
【0134】
実施例16
実験的ラット緑内障におけるNAALADアーゼ抑制物質の保護作用
実験プロトコル:全ての実験は関連機関(Association for Research in Vision and Ophthalmology Statement for the Use of Animals in Ophthalmic and Vision Research)の基準を満たした。ジョーンズホプキンス大学医学部動物管理員会によって承認された方法を用いて、82匹の雄のブラウンノルウェーラット(Rattus norvegicus)(各々約250グラム)を処置した。ラットを12時間照明/12時間消灯サイクルの飼育室に入れ自由に採餌させた。
実験的緑内障:文献(J. Morrison et al., IVOS (1998, 3月) 39:526-531)に記載された方法にしたがって、高張食塩水を強膜上静脈にマイクロ注射することによって眼圧の片側上昇(“IOP”)を起させた。IOP上昇の日から開始して、前記ラットの腹腔内に賦形剤(50mMのHEPES緩衝食塩水を23匹のラットに)またはNAALADアーゼ抑制物質(化合物A10mg/kgを11匹のラットに、化合物B10mg/kgを22匹のラットに)を毎日注射した。11匹の食塩水処置ラット、11匹の化合物A処置ラットおよび11匹の化合物処置ラットを最初のIOP上昇後8週間で殺し、残りのラットは12週間で殺した。
【0135】
視神経の離断:ペントバルビタール腹腔内麻酔下で26匹のラットで視神経の離断を実施した。結膜をはさみで切開し、眼球外筋肉上で牽引することによって視神経を露出させた。離断は、主要な眼の血管を傷つけないように特別な注意を払い極微はさみを用いて眼球後方5mmで実施した。離断後直ちに検眼鏡で網膜を調べ、網膜への動脈血供給が損なわれていないことを確認した。結膜を吸収性縫合糸で閉じ、眼に抗生物質軟膏を塗った。離断の日から毎日、ラットの腹腔内に賦形剤(50mMのHEPES緩衝食塩水を9匹のラットに)またはNAALADアーゼ抑制物質(化合物A10mg/kgを8匹のラットに、および化合物B10mg/kgを9匹のラットに)を注射した。5匹の食塩水処置ラット、3匹の化合物A処置ラットおよび4匹の化合物処置ラットを離断後2週間で殺し、残りのラットは4週間で殺した。
視神経の計測:ペントバルビタールの深麻酔下で、ラットを瀉血によって殺した。前記ラットの心臓から0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)中の2%パラホルムアルデヒド/2%グルタールアルデヒドを灌流させ、結合している視神経とともに眼球を摘出した。両実験(緑内障および離断)眼球およびコントロール眼球の視神経の横断切片を眼球の後方1.5mm(厚さ1mm)で取り出し、緩衝液中の2%四酸化オスミウムで後固定した。これらをエポキシ樹脂で処理し、1ミクロンの切片を作製し、トルイジンブルーで染色した。
シンシス(Synsys)デジタルカメラおよびメタモルフ(Metamorph)ソフトを用い画像分析システム(Universal Imaging Corp., Westchester, PA)で10倍の倍率で前記視神経の横断切片の外側境界の輪郭を描くことによって、前記視神経の横断面面積を測定した。3つの面積測定値を得て平均値を求めた。密度および線維の直径分布を測定するために、各神経の10個の異なる領域から100倍の位相差対物レンズを用いて画像を捕捉した。
前記画像を編集して非神経部分を排除し、ミエリン鞘の内側の各軸索のサイズ(その最少直径)および軸索/mm2の密度を各画像および神経について計算した。平均密度と総神経面積を掛けて各神経の線維の数を得た。緑内障または離断神経の総線維数を、各ラットのもう一方の正常な眼と比較し、消失パーセンテージを得た。10個の画像で数えた軸索の数は、正常なラットの神経に存在する80−90,000個の軸索の約20%のサンプルであった。軸索を数える実験者は前記神経について実施されているプロトコルについて知らされていない。
【0136】
結果
実験的緑内障:食塩水処置コントロールラットの平均線維パーセント差は,正常な眼と比較してそれらの緑内障の眼で顕著に低く、平均線維減少は、8週間の追跡群では14.44±5.75%(n=11匹のラット;表V)で、12週間の追跡群では8.15±7.84%(n=12匹のラット;表VI)であった。
対照的に、NAALADアーゼ抑制物質処置ラットでは8週間でも12週間でも顕著な線維の減少は認められなかった。各NAALADアーゼ抑制物質処置群の平均線維減少パーセントは、食塩水処置コントロール群の減少よりも統計的に少なかった(8週間では、化合物Aについてはp=0.05、化合物Bについてはp=0.02)
表V:実験的緑内障の結果
【0137】
【表5】

表VI:実験的緑内障の結果
【0138】
【表6】


IOP全体的差異=各ラットの緑内障の眼と正常な眼との間のIOP提示の差異(mmHg−−日)。
パーセント差=各ラットの緑内障の眼と正常な眼との間の線維数における平均パーセント差(陽性値は緑内障の眼で線維数が少ないことを示している)。
IOP全体的差異は有意ではない(p>0.05)
傷害後8週間の薬剤処置ラットと食塩水処置コントロールラットとの間のパーセント差の違いは有意である(p=0.05*、p=0.02**)。
【0139】
視神経離断:実験的離断データは、離断後2週間でNAALADアーゼ抑制物質で処置されたラットでは完全なRGCの死滅は進行を遅らされるか救済されることを示唆している。線維の絶対数または各ラットの離断を実施された眼と正常な眼との間のパーセント差で判定したとき(表VII)、離断後2週間で、両薬剤処置群は食塩水処置コントロール群よりも多くの残存RGC軸索を有していた。化合物Aおよび化合物Bで処置されたラットは、食塩水処置ラットのそれぞれ3倍および2倍の残存軸索を有していた。いずれの薬理学的処置でも無関係に、離断後最初の2ヶ月以内に全てまたはほぼ全てのRGCが死滅した。したがって、全ての群で離断後4週間までにRGCの軸索の80%以上が消失した。
離断後4週間では、薬剤処置ラットと食塩水処置ラットとの間で有意差はなかった。

表VII:視神経離断
【0140】
【表7】

表VIII:視神経離断
【0141】
【表8】

パーセント差=各ラットの緑内障の眼と正常な眼との間の線維数における平均パーセント差(陽性値は緑内障の眼で線維数が少ないことを示している)。
薬剤処置ラットと食塩水処置コントロールラットとの間のパーセント差の違いは統計的に有意ではない(p=0.05)。
【0142】
実施例17
ハンチントン病の遺伝子導入マウスモデルにおけるNAALADアーゼ抑制物質の神経保護作用
行動試験(回転棒)
N171−82Q株の遺伝子導入HDマウスおよび同腹の遺伝子非導入マウスを、10週齢からNAALADアーゼ抑制物質(化合物B、30mg/kg)または賦形剤で処置した。マウスを回転棒に置いた。前記マウスが回転棒から落下する時間を運動協調の測定として記録した。図42は、化合物Bで処置した遺伝子導入HDマウスは、賦形剤で処置された同様の遺伝子導入HDマウスよりも長い間回転棒に留まることを示している。化合物Bによる処置は、正常な非HDマウスの回転棒パフォーマンスに影響を与えなかった。
マウスが移動した全距離も全体的運動力の測定として記録した。図43は、賦形剤処置HDマウスは最低の平均運動スコアを示し、一方NAALADアーゼ抑制物質処置は全体的な運動力に明白な影響をもたないことを示している。
延命
遺伝子導入HDマウス(N171−82Q)の延命に対する化合物Bおよび賦形剤の影響を調べた。13匹のマウス(6匹の雄および7匹の雌)を化合物B処置群に割り当て、14匹のマウス(6匹の雄および8匹の雌)を賦形剤処置群に割り当てた。処置は全てのマウスが死ぬまで継続した。
図44は、処置群による時間に対する生存分布を示す。平均生存時間は化合物B処置群では184日、賦形剤処置群では158.5日である。化合物B処置群は賦形剤処置群よりも長い平均生存時間を有したが、前記差は統計的に有意ではない(p値=0.07)。
図45および図46は、処置群および性別による時間に対する生存分布を示す。結果を特に性別について分析したとき、化合物Bで処置した雌のマウスは、賦形剤で処置されたその対応する動物と比較して顕著に生存時間が延長された(p値=0.03)。賦形剤処置群内では、雄は雌よりも良好な生存時間を示すが、ただしこの傾向は化合物B処置群では観察されなかった。これらのデータは、性別が時間に対する生存分布に影響を与える可能性を示唆している。
【0143】
実施例18
患者は、NAALADアーゼレベルが変化するいずれかの疾患、障害または症状(上記で述べた一切の疾患、障害または症状を含む)を有している。そのような場合、前記患者に本発明の化合物の有効量を投与することができる。そのような処置の後、前記患者は、前記疾患、障害または症状による顕著な損傷を被ることはないか、前記患者を前記疾患、障害または症状による更なる損傷から防御することができるか、前記患者は前記疾患、障害または症状から回復することが期待される。
上記で特定した全ての刊行物、特許および特許出願は、本明細書でそれらを完全に説明したかのように参照により本明細書に含まれる。
これまで本発明を記載のように開示してきたが、同じものを本発明の範囲から外れることなく多くの態様で変更させることができることは当業者には明白であろう。そのような変更は以下の請求の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】虚血細胞培養のTGF−β1濃度に対する2−(ホスホノメチル)ペンタン二酸(“化合物C”)の影響を示す棒グラフである。
【図2】虚血細胞培養のTGF−β2濃度に対する化合物Cの影響を示す棒グラフである。
【図3】虚血細胞培養でTGF−β中和抗体によって化合物Cの神経保護作用が逆転することを示す棒グラフである。
【図4】虚血細胞培養でFGF中和抗体によって化合物Cの神経保護作用が逆転されないことを示す棒グラフである。
【図5】中大脳動脈閉塞(“MCAO”)に付したラットでTGF−β中和抗体によって化合物Cの神経保護作用が逆転することを示す棒グラフである。
【図6】MCAOに付したラットの閉塞および再灌流時のTGF−β1レベルに対する化合物Cの影響を示す棒グラフである。
【図7A】ストレプトゾトシン(“STZ”)投与後日数に対して作図した、賦形剤または2−[[2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル]ヒドロキシホスフィニル]メチル]ペンタン二酸(“化合物A”)処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの引っ込め潜伏時間差スコアを示すグラフである。
【図7B】STZ投与後日数に対して作図した、賦形剤または2−(2−スルファニルエチル)ペンタン二酸(“化合物D”)処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの引っ込め潜伏時間差スコアを示すグラフである。
【図8】術後日数に対して作図した、賦形剤または化合物処置正常(無手術)ラットおよび慢性狭窄損傷誘発ラットの引っ込め潜伏時間差スコアを示す棒グラフである。
【図9A】STZ投与後期間(週)に対して作図した、賦形剤または化合物A処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの運動神経伝達速度を示す棒グラフである。
【図9B】STZ投与後期間(週)に対して作図した、賦形剤または化合物A処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの知覚神経伝達速度を示す棒グラフである。
【図10A】STZ投与後期間(週)に対して作図した、賦形剤または化合物D処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの運動神経伝達速度を示す棒グラフである。
【図10B】STZ投与後期間(週)に対して作図した、賦形剤または化合物D処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの知覚神経伝達速度を示す棒グラフである。
【図11】処置期間(週)に対して作図した、賦形剤、化合物Dまたは化合物A処置非糖尿病ラットおよびBB/W糖尿病ラットの引っ込め潜伏時間を示すグラフである。
【図12】処置期間(週)に対して作図した、賦形剤、化合物Dまたは化合物A処置非糖尿病ラットおよびBB/W糖尿病ラットの神経伝達速度を示すグラフである。
【図13】術後日数に対して作図した、賦形剤または10mg/kgの3−カルボキシ−5−(1,1−ジメチルエチル)−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸(“化合物49”)処置慢性狭窄損傷誘発ラットの引っ込め潜伏時間差スコアを示す棒グラフである。
【図14】術後日数に対して作図した、賦形剤または1mg/kgの化合物49処置慢性狭窄損傷誘発ラットの引っ込め潜伏時間差スコアを示す棒グラフである。
【図15】術後日数に対して作図した、賦形剤または0.1mg/kgの化合物49処置慢性狭窄損傷誘発ラットの引っ込め潜伏時間差スコアを示す棒グラフである。
【図16】術後日数に対して作図した、賦形剤または10、1もしくは0.1mg/kgの化合物49処置慢性狭窄損傷誘発ラットの引っ込め潜伏時間を示す棒グラフである。
【図17】術後日数に対して作図した、賦形剤または50mg/kgの3−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸(“化合物5”)処置慢性狭窄損傷誘発ラットの引っ込め潜伏時間差スコアを示す棒グラフである。
【図18】術後日数に対して作図した、賦形剤または30mg/kgの化合物5処置慢性狭窄損傷誘発ラットの引っ込め潜伏時間差スコアを示す棒グラフである。
【図19】術後日数に対して作図した、賦形剤または10mg/kgの化合物5処置慢性狭窄損傷誘発ラットの引っ込め潜伏時間差スコアを示す棒グラフである。
【図20】術後日数に対して作図した、賦形剤または3mg/kgの化合物5処置慢性狭窄損傷誘発ラットの引っ込め潜伏時間差スコアを示す棒グラフである。
【図21】術後日数に対して作図した、賦形剤または1mg/kgの化合物5処置慢性狭窄損傷誘発ラットの引っ込め潜伏時間差スコアを示す棒グラフである。
【図22】術後日数に対して作図した、賦形剤または0.3mg/kgの化合物5処置慢性狭窄損傷誘発ラットの引っ込め潜伏時間差スコアを示す棒グラフである。
【図23】術後日数に対して作図した、賦形剤または10、30もしくは50mg/kgの化合物5処置慢性狭窄損傷誘発ラットの引っ込め潜伏時間を示す棒グラフである。
【図24】2−(3−スルファニルプロピル)ペンタン二酸(“化合物B”)または賦形剤処置後に四肢の振せんを示す210日齢の遺伝子導入マウスのパーセントを示す棒グラフである。
【図25】化合物Bまたは賦形剤処置後に0から3の範囲の任意スケールで測定した210日齢の遺伝子導入マウスの歩行を示す棒グラフである。
【図26】化合物Bまたは賦形剤処置後に0から3の範囲の任意スケールで測定した210日齢の遺伝子導入マウスの後肢引きずりを示す棒グラフである。
【図27】化合物Bまたは賦形剤処置後に0から3の範囲の任意スケールで測定した210日齢の遺伝子導入マウスの後肢交差を示す棒グラフである。
【図28】化合物Bまたは賦形剤処置後に210日齢の遺伝子導入マウスをわき腹を下に寝かせたときマウスが立ち直りに要した時間(秒)によって測定された遺伝子導入マウスの立ち直り反射を示す棒グラフである。
【図29】マウスの日齢に対して作図した、化合物Bまたは賦形剤処置遺伝子導入マウスの死亡パーセントを示すグラフである。
【図30】実験治療を施された日数に対して作図した、化合物Bまたは賦形剤処置遺伝子導入マウスの生存パーセントを示すカプラン−メイヤー生存グラフである。
【図31】治療期間(週)に対して作図した、賦形剤、化合物Dまたは3−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)ベンゼンプロパン酸(“化合物E”)処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの引っ込め潜伏時間差スコアを示すグラフである。
【図32】治療期間(週)に対して作図した、賦形剤、化合物Dまたは化合物E処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの運動神経伝達速度を示す棒グラフである。
【図33】治療期間(週)(治療はSTZ後5週間で開始)に対して作図した、賦形剤、化合物Dまたは化合物E処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの知覚神経伝達速度を示す棒グラフである。
【図34】治療期間(週)(治療はSTZ後7週間で開始)に対して作図した、賦形剤または低用量の化合物D(1および3mg/kg)処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの引っ込め潜伏時間差スコアを示す棒グラフである。
【図35】治療期間(週)(治療はSTZ後7週間で開始)に対して作図した、賦形剤または低用量の化合物D(1および3mg/kg)処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの運動神経伝達速度を示す棒グラフである。
【図36】治療期間(週)(治療はSTZ後7週間で開始)に対して作図した、賦形剤または低用量の化合物D(1および3mg/kg)処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの知覚神経伝達速度を示す棒グラフである。
【図37】治療後35日および60日(治療はSTZ後60日で開始)の、賦形剤または化合物D処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの知覚神経伝達速度を示す棒グラフである。
【図38】治療後35日の(治療はSTZ後60日で開始)、賦形剤または化合物D処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの運動神経伝達速度を示す棒グラフである。
【図39】STZ投与後日数(治療はSTZ後90日で開始)に対して作図した、賦形剤または化合物D処置非糖尿病ラットおよびSTZ−糖尿病ラットの知覚神経伝達速度を示すグラフである。
【図40】NAALADアーゼ抑制物質による処置の前の非糖尿病マウスおよびdb/db糖尿病マウスの運動および知覚神経伝達速度を示す棒グラフである。
【図41】3−カルボキシ−5−(1,1−ジメチルエチル)−アルファ−(3−メルカプトプロピル)ベンゼンプロパン酸(“化合物F”)による処置後の非糖尿病マウスおよびdb/db糖尿病マウスの運動および知覚神経伝達速度を示す棒グラフである。
【図42】化合物Bで処置された遺伝子導入HDマウスおよび非HD正常マウス、並びに賦形剤で処置された遺伝子導入HDマウスおよび非HD正常マウスの回転棒パフォーマンスの比較を示す棒グラフである。
【図43】化合物Bで処置された遺伝子導入HDマウスおよび非HD正常マウス、並びに賦形剤で処置された遺伝子導入HDマウスおよび非HD正常マウスの全移動距離の比較を示す棒グラフである。
【図44】化合物Bまたは賦形剤で処置した遺伝子導入Dマウスの生存時間を示すグラフである。
【図45】化合物Bまたは賦形剤で処置した雄の遺伝子導入HDマウスの生存時間を示すグラフである。
【図46】化合物Bまたは賦形剤で処置した雌の遺伝子導入HDマウスの生存時間を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iの化合物または前記化合物の医薬的に許容できる同等物:
【化1】

式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ別個に水素またはC1−C3アルキルであり;
1、A2、A3およびA4はそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、ハロ、ニトロ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシまたは−COOHであるか、またはA2、A3およびA4の任意の隣接する2つがベンゼン環と一緒に縮合5員もしくは6員炭素環式または複素環式芳香環を形成し、前記複素環式芳香環は1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含む。
【請求項2】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8がそれぞれ別個に水素またはメチルであり;
1、A2、A3およびA4がそれぞれ別個に水素、C1−C4アルキル、C1−C2アルコキシ、ハロ、ニトロ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシまたは−COOHである請求項1の化合物。
【請求項3】
2、A3およびA4の任意の隣接する2つがベンゼン環と一緒に縮合5員もしくは6員炭素環式または複素環式芳香環を形成し、前記複素環式芳香環が1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含む請求項1の化合物。
【請求項4】
前記化合物が下記から成る群から選択される請求項1の化合物:
3−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
5−(2−カルボキシ−5−メルカプトペンチル)−1,3−ベンゼンジカルボン酸;
5−カルボキシ−2−クロロ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
3−カルボキシ−4−フルオロ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
3−カルボキシ−2−クロロ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
3−カルボキシ−4−クロロ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
5−カルボキシ−2−フルオロ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
5−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−2−メトキシ−ベンゼンプロパン酸;
3−ブロモ−5−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
3−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−5−ニトロ−ベンゼンプロパン酸;
3−カルボキシ−5−(1,1−ジメチルエチル)−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
5−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−2−ニトロ−ベンゼンプロパン酸;
2−ブロモ−5−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
(+)−3−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
(−)−3−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
5−(2−カルボキシ−5−メルカプトペンチル)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボン酸;
2−(2−カルボキシ−5−メルカプトペンチル)−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボン酸;
6−(2−カルボキシ−5−メルカプトペンチル)−[1,1’−ビフェニル]−2−カルボン酸;
4−(2−カルボキシ−5−メルカプトペンチル)−[1,1’−ビフェニル]−2−カルボン酸;
3−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−5−メトキシ−ベンゼンプロパン酸;
3−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトブチル)−ベンゼンプロパン酸;
3−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−5(フェニルメトキシ)−ベンゼンプロパン酸;
3−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−5−フェノキシ−ベンゼンプロパン酸;
3−カルボキシ−5−(1,1−ジメチルエチル)−アルファ−(3−メルカプトブチル)−ベンゼンプロパン酸;および
医薬的に許容できる同等物。
【請求項5】
前記化合物が鏡像体または鏡像体濃縮混合物である請求項1の化合物。
【請求項6】
下記式IIの化合物または前記化合物の医薬的に許容できる同等物:
【化2】

式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ別個に水素またはC1−C3アルキルであり;さらに
1、A2、A3、A4およびA5はそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、C1−C3ペルハロアルキル、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシ、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、−SO29、−(C=O)NR910、−(C=O)NR9(CH2nCOOH、−NR9(C=O)R10、−(CH2nCOOHまたは−COOHであるか、またはA1、A2、A3、A4およびA5の任意の隣接する2つがベンゼン環と一緒に縮合5員もしくは6員炭素環式または複素環式芳香環を形成し、前記複素環式芳香環は1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含み;
9およびR10はそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキル、フェニルまたはベンジルであり;さらに
nは1−3であり;
ただし、A1、A3およびA5がそれぞれ別個に水素、C1−C6アルキル、C1−C6アルコキシ、ハロ、ニトロ、フェニル、フェノキシ、ベンジル、ベンジルオキシまたは−COOHである場合には、A2もA4も−COOHではないことを条件とし;さらに、A3、A4およびA5の任意の隣接する2つがベンゼン環と一緒に縮合5員もしくは6員炭素環式または複素環式芳香環を形成し、前記複素環式芳香環は1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含む場合は、A2は−COOHではないことを条件とする。
【請求項7】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8が各々水素であり;
1、A2、A3、A4およびA5はそれぞれ別個に水素、C1−C4アルキル、C1−C2アルコキシ、C1−C2ペルハロアルキル、フェニル、フェノキシ、ヒドロキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、−SO29、−(C=O)NR910、−(C=O)NR9(CH2nCOOH、−NR9(C=O)R10、または−(CH2)COOHであり;さらに
9およびR10はそれぞれ別個に水素、メチルまたはベンジルである請求項6の化合物。
【請求項8】
1、A2、A3、A4およびA5の任意の隣接する2つがベンゼン環と一緒に縮合5員もしくは6員炭素環式または複素環式芳香環を形成し、前記複素環式芳香環が1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含む請求項6の化合物。
【請求項9】
前記化合物が下記から成る群から選択される請求項6の化合物:
アルファ−(3−メルカプトプロピル)−3−(トリフルオロメチル)−ベンゼンプロパン酸;
アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
4−ヒドロキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
4−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
アルファ−(3−メルカプトプロピル)−4−(メチルスルフォニル)−ベンゼンプロパン酸;
2−シアノ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
2−(アミノカルボニル)−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
アルファ−(3−メルカプトプロピル)−2,5−ジメトキシ−ベンゼンプロパン酸;
アルファ−(3−メルカプトプロピル)−3−フェノキシ−ベンゼンプロパン酸;
アルファ−(3−メルカプトプロピル)−4−フェニル−ベンゼンプロパン酸;
4−(アセチルアミノ)−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
4−(カルボキシメチル)−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
4−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−1−ナフタレンプロパン酸;
2−カルボキシ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
4−カルボキシ−2,3,5,6−テトラフルオロ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
アルファ−(3−メルカプトプロピル)−2−ナフタレンプロパン酸;
2−クロロ−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
アルファ−(3−メルカプトプロピル)−3−[[(フェニルメチル)アミノ]−カルボニル]ベンゼンプロパン酸;
3−[[(カルボキシメチル)アミノ]カルボニル]−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
3−ブロモ−4−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
アルファ−(3−メルカプトプロピル)−3−フェニル−ベンゼンプロパン酸;
3−(1,1−ジメチルエチル)−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;および
医薬的に許容できる同等物。
【請求項10】
前記化合物が鏡像体または鏡像体濃縮混合物である請求項6の化合物。
【請求項11】
下記式IIIの化合物または前記化合物の医薬的に許容できる同等物:
【化3】

式中、XおよびYはそれぞれ別個に−CR56−、−O−、−S−または−NR−であるが、ただしXおよびYの少なくとも1つは−CR56−であることを条件とし;
1、A2、A3、A4およびA5はそれぞれ別個に水素、C1−C9アルキル、C2−C9アルケニル、C2−C9アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環、C1−C9アルコキシ、C2−C9アルケニルオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヒドロキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、イソシアノ、−COOR7、−COR7、−NR78、−SR7、−SOR7、−SO27、−SO2(OR7)、−(C=O)NR78、−(C=O)NR7(CH2nCOOH、−NR7(C=O)R8、または−(CH2nCOOHであるか、またはA1、A2、A3、A4およびA5の任意の隣接する2つがベンゼン環と一緒に縮合環を形成し、前記縮合環は、飽和または不飽和、芳香族または非芳香族、および炭素環式または複素環式であり、前記複素環式環は1つまたは2つの酸素、窒素および/または硫黄のヘテロ原子を含み;
nは1−3であり;
R、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ別個に水素、C1−C9アルキル、C2−C9アルケニル、C2−C9アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環又は複素環であり;さらに
前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環、アルコキシ、アルケニルオキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、および縮合環はそれぞれ別個に非置換、または1つもしくは2つ以上の置換基で置換されてあり;
ただし、A1、A2およびA3が各々水素であり、さらにA4およびA5が各々−COOHである場合には、A4はA5に対してオルトであることを条件とし;さらに、Yが−CR56である場合は、A1、A2、A3、A4およびA5の少なくとも1つはそれぞれ別個にフェノキシ、ベンジルオキシ、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環であって、前記は1つまたは2つ以上の置換基で置換されてあることを条件とする。
【請求項12】
Yが−O−、−S−または−NR−であり;
1、A2、A3、A4およびA5がそれぞれ別個に水素、C1−C4アルキル、C1−C2アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、−COOH、−COR7、−NR7(C=O)R8、または−(CH2)COOHであり;さらに
7およびR8がそれぞれ別個に水素またはメチルである請求項11の化合物。
【請求項13】
Yが−CR56−であり;
1、A2、A3およびA4が各々水素であり;さらに
5はフェノキシ、ベンジルオキシ、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環であって、前記フェノキシおよびベンジルオキシは−COOHで置換されてあり、さらに前記アリール、ヘテロアリール、炭素環および複素環は、シアノおよび−COOHから成る群から選択される1つまたは2つ以上の置換基で置換されてある請求項11の化合物。
【請求項14】
前記化合物が以下から成る群から選択される請求項11の化合物:
4−(2−シアノフェニル)−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
3−(1−カルボキシ−4−メルカプトブトキシ)−安息香酸;
5−メルカプト−2−フェノキシ−ペンタン酸;
2−(3,5−ジメトキシフェノキシ)−5−メルカプト−ペンタン酸;
2−(3−ヒドロキシフェノキシ)−5−メルカプト−ペンタン酸;
3−(1−カルボキシ−4−メルカプトブトキシ)−ベンゼン酢酸;
4−(1−カルボキシ−4−メルカプトブトキシ)−ベンゼン酢酸;
2−(3−アセチルフェノキシ)−5−メルカプト−ペンタン酸;
2−[3−(アセチルアミノ)フェノキシ]−5−メルカプト−ペンタン酸;
2−(4−アセチルフェノキシ)−5−メルカプト−ペンタン酸;
3−(1−カルボキシ−4−メルカプトブトキシ)−4−メトキシ−安息香酸;
2−(1−カルボキシ−4−メルカプトブトキシ)−安息香酸;
4−(1−カルボキシ−4−メルカプトブトキシ)−安息香酸;
3−(1−カルボキシ−4−メルカプトブトキシ)−4−クロロ−安息香酸;
3−(1−カルボキシ−4−メルカプトブトキシ)−4−フルオロ−安息香酸;
5−メルカプト−2−(フェニルチオ)−ペンタン酸;
3−[1−カルボキシ−4−メルカプトブチル]チオ]−安息香酸;
3’−(2−カルボキシ−5−メルカプトペンチル)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボン酸;
3’−(2−カルボキシ−5−メルカプトペンチル)−[1,1’−ビフェニル]−2−カルボン酸;
3−(2−カルボキシフェノキシ)−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
4−(2−カルボキシフェノキシ)−アルファ−(3−メルカプトプロピル)−ベンゼンプロパン酸;
4’−(2−カルボキシ−5−メルカプトプロピル)−(1,1’−ビフェニル)−2−カルボン酸;
3−(1−カルボキシ−4−メルカプトブトキシ)−5−(1,1−ジメチルエチル)−安息香酸;
3−[(1−カルボキシ−4−メルカプトブチル)チオ]−5−(1,1−ジメチルエチル)−安息香酸;
3−[(1−カルボキシ−4−メルカプトブチル)アミノ]−5−(1,1−ジメチルエチル)−安息香酸;および
医薬的に許容できる同等物。
【請求項15】
前記化合物が鏡像体または鏡像体濃縮混合物である請求項11に記載の化合物。
【請求項16】
NAALADアーゼ酵素活性を抑制し、グルタミン酸異常を治療し、ニューロンの活性を発揮させ、前立腺疾患を治療し、癌を治療し、血管形成を抑制し、またはTGF−βの活性を発揮させる方法であって、前記方法が、前記の抑制、治療または発揮の必要がある哺乳類に請求項1の化合物の有効量を投与することを含む前記の抑制し、治療し、または発揮させる方法。
【請求項17】
前記方法が、強迫性障害、卒中発作、脱髄疾患、精神分裂病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、不安、不安障害、記憶障害および緑内障から成る群から選択されるグルタミン酸異常を治療することを目的とする請求項16の方法。
【請求項18】
前記グルタミン酸異常が、アルコール依存症、ニコチン中毒またはコカイン中毒である強迫性障害である請求項17の方法。
【請求項19】
前記方法が、損傷ニューロンの刺激、ニューロン再生の促進、神経変性の阻止、および神経学的障害の治療から成る群から選択されるニューロンの活性を発揮させることを目的とする請求項16の方法。
【請求項20】
前記ニューロンの活性が、神経学的障害の治療であり、前記神経学的障害が、痛み、糖尿病性神経障害、物理的損傷または病的状態によってもたらされる末梢神経障害、外傷性脳損傷、脊髄の物理的損傷、脳損傷に付随する卒中発作、脱髄疾患または神経の変性に関連する神経学的障害である請求項19の方法。
【請求項21】
前記の痛みが糖尿病性神経障害による痛みである請求項20の方法。
【請求項22】
前記化合物が有効量のモルヒネと併用して投与される請求項21の方法。
【請求項23】
前記神経変性に関連する神経学的障害がパーキンソン病である請求項20の方法。
【請求項24】
前記神経変性に関連する神経学的障害が筋萎縮性側索硬化症である請求項20の方法。
【請求項25】
前記方法が、前立腺癌である前立腺疾患を治療することを目的とする請求項16の方法。
【請求項26】
前記方法が癌を治療することを目的とする請求項16の方法。
【請求項27】
前記癌が脳、腎臓または精巣の癌である請求項26の方法。
【請求項28】
前記方法が血管形成を抑制することを目的とする請求項16の方法。
【請求項29】
前記方法がTGF−βの活性を発揮させることを目的とする請求項16の方法。
【請求項30】
前記TGF−βの活性の発揮が、TGF−βレベルの増加、低下もしくは調節、またはTGF−β異常の治療である請求項29の方法。
【請求項31】
前記TGF−β活性の発揮がTGF−β異常の治療であり、前記TGF−β異常が、神経変性疾患、細胞外マトリックス形成異常、細胞増殖関連疾患、感染症、免疫関連疾患、上皮組織瘢痕形成、膠原血管病、線維増殖疾患、結合組織疾患、炎症、炎症性疾患、呼吸器疾患、呼吸窮迫症候群、不妊症または糖尿病である請求項30の方法。
【請求項32】
NAALADアーゼ酵素活性を抑制し、グルタミン酸異常を治療し、ニューロンの活性を発揮させ、前立腺疾患を治療し、癌を治療し、血管形成を抑制し、またはTGF−βの活性を発揮させる方法であって、前記方法が、前記の抑制、治療または発揮の必要がある哺乳類に請求項6の化合物の有効量を投与することを含む前記の抑制し、治療し、または発揮させる方法。
【請求項33】
NAALADアーゼ酵素活性を抑制し、グルタミン酸異常を治療し、ニューロンの活性を発揮させ、前立腺疾患を治療し、癌を治療し、血管形成を抑制し、またはTGF−βの活性を発揮させる方法であって、前記方法が、前記の抑制、治療または発揮の必要がある哺乳類に請求項11の化合物の有効量を投与することを含む前記の抑制し、治療し、または発揮させる方法。
【請求項34】
以下の工程を含む、NAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を検出する方法:
(i)体組織または体液サンプルを請求項1の化合物の有効量と接触させ、ここで前記化合物は前記サンプル中の一切のNAALADアーゼと結合し;さらに
(ii)前記サンプルと結合した一切のNAALADアーゼの量を測定し、ここで前記NAALADアーゼの量は前記疾患、障害または症状の診断に役立つ。
【請求項35】
以下の工程を含む、NAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を検出する方法:
(i)体組織または体液サンプルを請求項6の化合物の有効量と接触させ、ここで前記化合物は前記サンプル中の一切のNAALADアーゼと結合し;さらに
(ii)前記サンプルと結合した一切のNAALADアーゼの量を測定し、ここで前記NAALADアーゼの量は前記疾患、障害または症状の診断に役立つ。
【請求項36】
以下の工程を含む、NAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を検出する方法:
(i)体組織または体液サンプルを請求項11の化合物の有効量と接触させ、ここで前記化合物は前記サンプル中の一切のNAALADアーゼと結合し;さらに
(ii)前記サンプルと結合した一切のNAALADアーゼの量を測定し、ここで前記NAALADアーゼの量は前記疾患、障害または症状の診断に役立つ。
【請求項37】
以下の工程を含む、哺乳類でNAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を検出する方法:
(i)請求項1の化合物を有効量の画像化試薬で標識し;
(ii)前記標識化合物の有効量を前記哺乳類に投与し;
(iii)前記標識化合物を局在化させ、さらに前記哺乳類に存在するNAALADアーゼと結合させ;さらに
(iv)前記標識化合物と結合したNAALADアーゼの量を測定し、ここで前記NAALADアーゼの量は前記疾患、障害または症状の診断に役立つ。
【請求項38】
以下の工程を含む、哺乳類でNAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を検出する方法:
(i)請求項6の化合物を有効量の画像化試薬で標識し;
(ii)前記標識化合物の有効量を前記哺乳類に投与し;
(iii)前記標識化合物を局在化させ、さらに前記哺乳類に存在するNAALADアーゼと結合させ;さらに
(iv)前記標識化合物と結合したNAALADアーゼの量を測定し、ここで前記NAALADアーゼの量は前記疾患、障害または症状の診断に役立つ。
【請求項39】
以下の工程を含む、哺乳類でNAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を検出する方法:
(i)請求項11の化合物を有効量の画像化試薬で標識し;
(ii)前記標識化合物の有効量を前記哺乳類に投与し;
(iii)前記標識化合物を局在化させ、さらに前記哺乳類に存在するNAALADアーゼと結合させ;さらに
(iv)前記標識化合物と結合したNAALADアーゼの量を測定し、ここで前記NAALADアーゼの量は前記疾患、障害または症状の診断に役立つ。
【請求項40】
マーカーで標識された請求項1の化合物を含む、NAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を検出する診断キット。
【請求項41】
マーカーで標識された請求項6の化合物を含む、NAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を検出する診断キット。
【請求項42】
マーカーで標識された請求項11の化合物を含む、NAALADアーゼレベルが変化する疾患、障害または症状を検出する診断キット。
【請求項43】
以下を含む医薬組成物:
(i)請求項1の化合物の有効量;および
(ii)医薬的に許容できる担体。
【請求項44】
以下を含む医薬組成物:
(i)請求項6の化合物の有効量;および
(ii)医薬的に許容できる担体。
【請求項45】
以下を含む医薬組成物:
(i)請求項11の化合物の有効量;および
(ii)医薬的に許容できる担体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2009−51854(P2009−51854A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270033(P2008−270033)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【分割の表示】特願2002−557903(P2002−557903)の分割
【原出願日】平成14年1月17日(2002.1.17)
【出願人】(595136276)エムジーアイ ジーピー インコーポレイティッド (1)
【Fターム(参考)】