説明

チタニア粉末含有ポリアミドの製造方法

本発明は、二酸化チタン粉末含有ポリアミドを製造する方法であって、分散槽と、該分散槽内に配置されたディスク型のロータと、放射状の複数の開口部を有しておりかつ上記分散槽の分散域に上記ロータと共に配置されているステータと、上記ロータの両側に設けられた材料導入口(好ましくは、それぞれの材料導入口が、2つの材料流がロータのディスクの外周域で合流するように、軸方向のチャネル部を有する。)と、上記分散槽の分散域の外周部に設けられた材料排出口とを備えた装置を使用して、二酸化チタン粉末を上記材料導入口の一方から、水とカプロラクタムを含む出発混合物を上記材料導入口の他方から、それぞれ上記分散槽に供給し、使用された水、カプロラクタムおよび二酸化チタン粉末を含む生成混合物を上記材料排出口から得ることにより、水とカプロラクタムを含む出発混合物に二酸化チタン粉末を分散させる段階、および、得られた混合物を重合して二酸化チタン粉末含有ポリアミドを得る段階を含む方法、およびこの方法により得ることができるポリアミド、およびこのポリアミドをマスターバッチとして使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタニア(二酸化チタン)粉末含有ポリアミドの製造方法、該方法によって得ることができるポリアミド、該ポリアミドをポリマーを着色または艶消しするためのマスターバッチとして使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドを艶消しまたは着色するために二酸化チタンを使用する方法は、一般的に知られている。
【0003】
この用途のためには、二酸化チタンが極めて微細で均一な分散形態で存在しているのが一般的に好ましく、二酸化チタンで着色または艶消しすることによって得られたポリアミドは、特に二酸化チタン粉末のために、後続の加工、例えば紡織の過程における摩滅度が極めて低い。
【0004】
ポリアミドに二酸化チタン粉末を導入するためのさまざまな方法が公知である。
【0005】
例えば、“Fourne,Synthetische Fasern、Carl Hanser発行所(ミュンヘン−ウィーン)、1995年発行”の629〜630頁の6.8および6.8.1章には、ポリアミドの艶消しを行うために、重合されるべき実質的に二酸化チタンを含有しない主流に、重合の最初に二酸化チタンを添加する方法、またはマスターバッチ(すなわち二酸化チタン含有量の高いポリアミド)を添加する方法が開示されている。
【0006】
EP−A−70452号公報は、カプロラクタムに二酸化チタンを混練し、次いで水と混練し、得られたペーストを水でスラリー化し、粗い二酸化チタン粒子を沈降させ、沈降後に上澄みを静かに移す方法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】EP−A−70452号公報
【非特許文献1】Synthetische Fasern、Carl Hanser発行所(ミュンヘン−ウィーン)、1995年発行、629〜630頁、6.8および6.8.1章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
チタニア粉末含有ポリマーを製造するこれらの方法は、依然として満足できる方法ではなく、さらに改良されるべきである。
【0009】
従って、本発明の目的は、改良された特性を有するチタニア粉末含有ポリアミドが技術的に簡単にかつ経済的に得られる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、この目的は、二酸化チタン粉末含有ポリアミドを製造する方法であって、
分散槽と、該分散槽内に配置されたディスク型のロータと、放射状の複数の開口部を有しておりかつ上記分散槽の分散域に上記ロータと共に配置されているステータと、上記ロータの両側に設けられた材料導入口(好ましくは、それぞれの材料導入口が、2つの材料流がロータのディスクの外周域で合流するように、軸方向のチャネル部を有する。)と、上記分散槽の分散域の外周部に設けられた材料排出口とを備えた装置を使用して、二酸化チタン粉末を上記材料導入口の一方から、水とカプロラクタムを含む出発混合物を上記材料導入口の他方から、それぞれ上記分散槽に供給し、使用された水、カプロラクタムおよび二酸化チタン粉末を含む生成混合物を上記材料排出口から得ることにより、水とカプロラクタムを含む出発混合物に二酸化チタン粉末を分散させる段階、および、
得られた生成混合物を重合して二酸化チタン含有ポリアミドを製造する段階、
を含むことを特徴とする方法によって達成されることを発見した。
【0011】
本発明はさらに、この方法によって得ることができるポリアミド、および該ポリアミドをポリマーの艶消しまたは着色のためのマスターバッチとして使用する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法は、ポリアミドの製造に関する。
【0013】
本発明において、“ポリアミド”とは、主要成分としてポリマー鎖中にアミド基の繰り返しを含む合成長鎖ポリアミドのホモポリマー、コポリマー、ブレンド、およびグラフトを意味する。このようなポリアミドの例としては、ナイロン−6(ポリカプロラクタム)、ナイロン−6,6(ポリヘキサメチレンアジポアミド)、ナイロン−4,6(ポリテトラメチレンアジポアミド)、ナイロン−6,10(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ナイロン−7(ポリエナントラクタム)、ナイロン−11(ポリウンデカノラクタム)、ナイロン−12(ポリドデカノラクタム)が挙げられる。ナイロンの一般名で知られるポリアミドの他に、ポリアミドにはさらに、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド(NOMEX(登録商標)ファイバー、US−A−3287324)またはポリ−p−フェニレンテレフタルアミド(KEVLAR(登録商標)ファイバー、US−A−3671542)のようなアラミド(芳香族ポリアミド)が含まれる。
【0014】
ポリアミドは、原則として2つの方法で製造可能である。
【0015】
ジカルボン酸とジアミンからの重合、およびアミノ酸またはその誘導体、例えばアミノカルボニトリル、アミノカルボキシアミド、アミノカルボキシラートエステルまたはアミノカルボキシラート塩からの重合において、出発原料のモノマーまたはオリゴマー中のアミノおよびカルボキシル末端基が互いに反応してアミド基と水を形成する。次いで、水をポリマーから除去することができる。カルボキシアミドからの重合において、出発原料のモノマーまたはオリゴマー中のアミノおよびアミド末端基が互いに反応してアミド基およびアンモニアを形成する。次いで、アンモニアをポリマーから除去することができる。この重合反応は重縮合として一般に知られている。
【0016】
出発原料のモノマーまたはオリゴマーとしてのラクタムからの重合は、重付加として一般に知られている。
【0017】
このようなポリアミドは、例えばDE−A−1495198、DE−A−2558480、EP−A−129196、または“Polymerization Processes、Interscience(ニューヨーク)、1977年発行”の424〜467頁、特に444〜446頁に記載されているように、ラクタム、ω−アミノカルボン酸、ω−アミノカルボニトリル、ω−アミノカルボキシアミド、ω−アミノカルボキシラート塩、ω−アミノカルボキシラートエステル、ジアミンとジカルボン酸の当量混合物、ジカルボン酸/ジアミン塩、ジトリルおよびジアミンまたはこれらの混合物からなる群から選択されたモノマーから慣用の方法によって得ることができる。
【0018】
有用なモノマーには、C2−C20、好ましくはC2−C18アリール脂肪族または好ましくは脂肪族ラクタムのモノマーまたはオリゴマー、例えばエナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカノラクタム、またはカプロラクタム;
2−C20、好ましくはC3−C18アミノカルボン酸のモノマーまたはオリゴマー、例えば6−アミノカプロン酸、または11−アミノウンデカン酸、およびその2量体、3量体、4量体、5量体、または6量体、およびこれらの塩、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウム塩のようなアルカリ金属塩;
2−C20、好ましくはC3−C18アミノカルボニトリル、例えば6−アミノカプロニトリル、または11−アミノウンデカノニトリル;
2−C20アミノ酸アミドのモノマーまたはオリゴマー、例えば6−アミノカプロアミドまたは11−アミノウンデカノアミド、およびこれらの2量体、3量体、4量体、5量体、または6量体;
2−C20、好ましくはC3−C18アミノカルボン酸のエステル、好ましくはC1−C4アルキルエステル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチルまたはs−ブチルエステル、例えばメチル6−アミノカプロアートのような6−アミノカプロン酸エステル、またはメチル11−アミノウンデカノアートのような11−アミノウンデカン酸エステル;
2−C20、好ましくはC2−C12アルキルジアミンのモノマーまたはオリゴマー、例えばテトラメチレンジアミン、または好ましくはヘキサメチレンジアミンと、C2−C20、好ましくはC2−C14脂肪族ジカルボン酸またはそのモノニトリルまたはジニトリル、例えばセバシン酸、ドデカンジオン酸、アジピン酸、セバシン酸ジニトリル、デカン酸ジニトリルまたはアジポニトリル、およびこれらの2量体、3量体、4量体、5量体、または6量体;
2−C20、好ましくはC2−C12アルキルジアミンのモノマーまたはオリゴマー、例えばテトラメチレンジアミン、または好ましくはヘキサメチレンジアミンと、C8−C20、好ましくはC8−C12芳香族ジカルボン酸またはその誘導体、例えば塩化物、例えばナフタレン−2,6−ジカルボン酸、好ましくはイソフタル酸またはテレフタル酸、およびこれらの2量体、3量体、4量体、5量体、または6量体;
2−C20、好ましくはC2−C12アルキルジアミンのモノマーまたはオリゴマー、例えばテトラメチレンジアミン、または好ましくはヘキサメチレンジアミンと、C9−C20、好ましくはC9−C18アリール脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体、例えば塩化物、例えばo−、m−、またはp−フェニレン二酢酸、およびこれらの2量体、3量体、4量体、5量体、または6量体;
6−C20、好ましくはC6−C10芳香族ジアミンのモノマーまたはオリゴマー、例えばm−またはp−フェニレンジアミンと、C2−C20、好ましくはC2−C14脂肪族ジカルボン酸またはそのモノニトリルまたはジニトリル、例えばセバシン酸、ドデカンジオン酸、アジピン酸、セバシン酸ジニトリル、デカン酸ジニトリルまたはアジポニトリル、およびこれらの2量体、3量体、4量体、5量体、または6量体;
6−C20、好ましくはC6−C10芳香族ジアミンのモノマーまたはオリゴマー、例えばm−またはp−フェニレンジアミンと、C8−C20、好ましくはC8−C12芳香族ジカルボン酸またはその誘導体、例えば塩化物、例えばナフタレン−2,6−ジカルボン酸、好ましくはイソフタル酸またはテレフタル酸、およびこれらの2量体、3量体、4量体、5量体、または6量体;
6−C20、好ましくはC6−C10芳香族ジアミンのモノマーまたはオリゴマー、例えばm−またはp−フェニレンジアミンと、C9−C20、好ましくはC9−C18アリール脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体、例えば塩化物、例えばo−、m−、またはp−フェニレン二酢酸、およびこれらの2量体、3量体、4量体、5量体、または6量体;
7−C20、好ましくはC8−C18アリール脂肪族ジアミンのモノマーまたはオリゴマー、例えばm−またはp−キシリレンジアミンと、C2−C20、好ましくはC2−C14脂肪族ジカルボン酸またはそのモノニトリルまたはジニトリル、例えばセバシン酸、ドデカンジオン酸、アジピン酸、セバシン酸ジニトリル、デカン酸ジニトリルまたはアジポニトリル、およびこれらの2量体、3量体、4量体、5量体、または6量体;
7−C20、好ましくはC8−C18アリール脂肪族ジアミンのモノマーまたはオリゴマー、例えばm−またはp−キシリレンジアミンと、C6−C20、好ましくはC6−C10芳香族ジカルボン酸またはその誘導体、例えば塩化物、例えばナフタレン−2,6−ジカルボン酸、好ましくはイソフタル酸またはテレフタル酸、およびこれらの2量体、3量体、4量体、5量体、または6量体;
7−C20、好ましくはC8−C18アリール脂肪族ジアミンのモノマーまたはオリゴマー、例えばm−またはp−キシリレンジアミンと、C9−C20、好ましくはC9−C18アリール脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体、例えば塩化物、例えばo−、m−、またはp−フェニレン二酢酸、およびこれらの2量体、3量体、4量体、5量体、または6量体;
および、このような出発原料のモノマーまたはオリゴマーのホモポリマー、コポリマー、混合物およびグラフトが含まれる。
【0019】
好ましい形態では、使用されるラクタムがカプロラクタムであり、使用されるジアミンがテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、またはこれらの混合物であり、使用されるジカルボン酸がアジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、テレフタル酸、イソフタル酸またはこれらの混合物である。特に好ましいのは、ラクタムがカプロラクタムであり、ジアミンがヘキサメチレンジアミンであり、ジカルボン酸がアジピン酸またはテレフタル酸またはこれらの混合物である。
【0020】
特に好ましいのは、重合によりポリアミドのナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−4,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12、ナイロン−7、ナイロン−11またはナイロン−12、またはアラミドのポリ−m−フェニレンイソプタルアミドまたはポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、特にナイロン−6またはナイロン−6,6を与える出発原料のモノマーまたはオリゴマーである。
【0021】
好ましい形態において、ポリアミドを1種以上の連鎖制御剤を使用して製造することができる。有用な連鎖制御剤には、ポリアミドの形成において反応する1個以上、例えば2個、3個または4個、ファイバー形態の系の場合は好ましくは2個のアミノ基、または、ポリアミドの形成において反応する1個以上、例えば2個、3個または4個、ファイバー形態の系の場合は好ましくは2個のカルボキシル基が含まれているのが好ましい。
【0022】
前者の場合には、ポリマー鎖を形成するために使用されるカルボン酸基または同等の基よりも多い数のポリマー鎖を形成するために使用されるアミノ基または同等の基を有するモノマーから製造されたポリアミドが得られる。
【0023】
後者の場合には、ポリマー鎖を形成するために使用されるアミノ基または同等の基よりも多い数のポリマー鎖を形成するために使用されるカルボン酸基または同等の基を有するモノマーから製造されたポリアミドが得られる。
【0024】
有用な連鎖制御剤には、モノカルボン酸、例えば酢酸、プロピオン酸のようなアルカンカルボン酸、安息香酸のようなベンゼンまたはナフタレンモノカルボン酸;ジカルボン酸、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸のようなC4−C10−アルカンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸のようなC5−C6−シクロアルカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸のようなベンゼンまたはナフタレンジカルボン酸;シクロへキシルアミンのようなC2−C20−、好ましくはC2−C12−アルキルアミン、アニリンのようなC6−C20−、好ましくはC6−C10−芳香族モノアミン、またはベンジルアミンのようなC7−C20−、好ましくはC8−C18−アリール脂肪族モノアミン;ジアミン、例えばヘキサメチレンジアミンのようなC4−C10−アルカンジアミンが好ましく含まれる。
【0025】
連鎖制御剤は、非置換であっても、例えば脂肪族基、好ましくはメチル、エチル、i−プロピル、n−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシルのようなC1−C8−アルキル基、OH、=O、C1−C8−アルコキシ、COOH、C2−C6−カルボアルコキシ、C1−C10−アシロキシ、またはC1−C8−アルキルアミノ、スルホン酸またはその塩、例えばアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、シアノ、またはフッ素、塩素、臭素のようなハロゲンで置換されていてもよい。置換連鎖制御剤の例としては、スルホイソフタル酸およびそのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、またはカリウム塩、スルホイソフタル酸エステル、例えばC1−C16−アルカノールとのエステル、またはスルホイソフタル酸のモノまたはジアミド、特にポリアミドを形成するのに適しており少なくとも1個のアミノ基を有するモノマー、例えばヘキサメチレンジアミンまたは6−アミノカプロン酸とのアミドが挙げられる。
【0026】
連鎖制御剤は、ポリアミドの酸アミド基1モルに対して0.01モル%以上、好ましくは0.05モル%以上、特に0.2モル%以上の量で好ましく使用することができる。
【0027】
連鎖制御剤は、ポリアミドの酸アミド基1モルに対して1.0モル%以下、好ましくは0.6モル%以下、特に0.5モル%以下の量で好ましく使用することができる。
【0028】
好ましくは、ポリアミドは化学結合によってポリマー鎖に結合している立体障害性のピペリジン誘導体を含んでいてもよい。ポリアミドはまた、このような立体障害性のピペリジン誘導体の混合物を含んでいてもよい。
【0029】
好ましい立体障害性のピペリジン誘導体は、以下の式で表される化合物である。
【0030】
【化1】

【0031】
式中、R1は、ポリアミドのポリマー鎖とアミドを形成可能な官能基を表し、好ましくは−(NH)R5(R5は、水素またはC1−C8−アルキルである。)、またはカルボキシル基、またはカルボキシル誘導体、または−(CH2x(NH)R5(xは1〜6であり、R5は水素またはC1−C8−アルキルである。)、または、−(CH2yCOOH(yは1〜6である。)、または−(CH2yCOOH酸誘導体(yは1〜6である。)を表し、特に−NH2であり、
2は、アルキル基、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチルのようなC1−C4−アルキルを表し、特にメチルであり、
3は、水素、C1−C4−アルキルまたはOR4(R4は、水素またはC1−C7−アルキルである。)を表し、特に水素である。
【0032】
この化合物では、立体障害により、通常ピペリジン環の第3アミノ基および特に第2アミノ基の反応が防止される。
【0033】
特に好ましい立体障害性ピペリジン誘導体は、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである。
【0034】
立体障害性ピペリジン誘導体は、ポリアミドの酸アミド基1モルに対して0.01モル%以上、好ましくは0.05モル%以上、特に0.1モル%以上の量で好ましく使用することができる。
【0035】
立体障害性ピペリジン誘導体は、ポリアミドの酸アミド基1モルに対して0.8モル%以下、好ましくは0.6モル%以下、特に0.4モル%以下の量で好ましく使用することができる。
【0036】
このようなポリマー鎖に化学結合により結合している立体障害性ピペリジン誘導体を含有するポリアミド、およびその製造方法は、例えばWO95/28443、WO97/05189、WO98/50610、WO99/46323、WO99/48949、EP−A−822275、EP−A−843696、およびドイツ出願番号10030515.6、10030512.1、および10058291.5に記載されている。
【0037】
本発明の方法は、二酸化チタン粉末含有ポリアミドの製造方法に関する。
【0038】
二酸化チタンは、アナターゼ、ルチルまたはブロッカイト、またはこれらの混合物など、いかなる結晶系のものでも使用することができる。アナターゼ、ルチル、またはこれらの混合物を使用するのが好ましく、特にアナターゼを使用するのが好ましい。尤も、合成アナターゼは、その製造に使用される方法に起因して、少量のルチル、例えば全質量に対して5質量%までのルチルを含むことができる。
【0039】
二酸化チタンのBET比表面積自体はあまり重要ではない。尤も、BET比表面積が増加するほど一般に二酸化チタンの白亜化作用のような反応性が増加し、BET比表面積が減少するほど一般に平均粒径が増加する。
【0040】
艶消し剤または着色剤として有用な二酸化チタンのためには、低い白亜化作用を有しているだけでなく小さな粒径を有しているのが望ましい。
【0041】
特別なポリアミドおよび特別な用途のための最適なBET表面積は、いくつかの簡単な予備試験により容易に決定することができる。
【0042】
二酸化チタンの白亜化作用を減少させるために、すなわち、周囲のポリアミドマトリックスの分解に対する光化学的活性を減少させるために、二酸化チタンは他の元素の化合物、例えば好ましくはマンガン、鉄、アンチモン、ケイ素またはアルミニウムの酸化物で被覆されていてもよい。
【0043】
このような二酸化チタン粉末およびその製造方法は一般に公知であり、好適な二酸化チタン粉末は市販されている。
【0044】
本発明では、水とカプロラクタムを含む出発混合物中に二酸化チタン粉末が分散される。
【0045】
好ましくは、水とカプロラクタムとを含む出発混合物は、水とカプロラクタムとを、質量比で50/50〜99/1、好ましくは80/20〜97/3、特に好ましくは93/7〜95/5の範囲で含む。
【0046】
出発混合物は分散助剤を含むのが好ましい。
【0047】
有用な分散助剤には、例えば“Houben−Weyl、Mothoden der Organischen Chemie、Vol.XIV/1、Makromolekulare Stoff、Georg−Thieme発行所(シュトゥットガルト)、1961年発行”の411〜420および192〜208頁に記載されている保護コロイドおよび/または乳化剤が含まれ、Na2HPO4(例えばリン酸水素二ナトリウム・12水和物;Chem.Werke(ビューデンハイム)製)および平均分子量が約4000の変性ポリアクリル酸のナトリウム塩(例えばSokalan PA 20 PN;BASF製)がより好ましい。
【0048】
分散助剤は、出発混合物に対して0.01〜5.0質量%、好ましくは0.1〜1.0質量%の量で好ましく使用することができる。
【0049】
出発混合物は、好ましい形態では、カプロラクタムと共に上述のポリアミド形成モノマー、連鎖制御剤、またはピペリジン誘導体、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0050】
別の好ましい形態では、出発混合物はポリアミド形成モノマーとしてカプロラクタムのみを含有する。特に好ましい形態では、出発混合物は上述のピペリジン誘導体を含まない。また特に好ましい形態では、出発混合物は上述の連鎖制御剤を含まない。
【0051】
本発明の方法は、二酸化チタン粉末および出発混合物を、質量比で1/99〜50/50、好ましくは10/90〜40/60、特に好ましくは15/85〜25/75の範囲で利用することができる。
【0052】
本発明では、分散槽と、該分散槽内に配置されたディスク型のロータと、放射状の複数の開口部を有しておりかつ上記分散槽の分散域に上記ロータと共に配置されているステータと、上記ロータの両側に設けられた材料導入口(好ましくは、それぞれの材料導入口が、2つの材料流がロータのディスクの外周域で合流するように、軸方向のチャネル部を有する。)と、上記分散槽の分散域の外周部に設けられた材料排出口とを備えた装置を使用して、二酸化チタン粉末を出発混合物中に分散する。
【0053】
この種の装置自体は公知である。好適な装置の好ましい形態は、WO92/21436に記載されており、特に好ましい形態はWO01/87474に記載されており、これらの文献の記載内容は参考として本明細書に組み入れられる。
【0054】
好適な装置は市販されており、例えばYstral GmbH Maschinenbau und Processtechnik社(ドイツ)製のTDSまたは好ましくはConti−TDS装置が挙げられる。
【0055】
本発明では、二酸化チタン粉末を上記材料導入口の一方から、水とカプロラクタムを含む出発混合物を上記材料導入口の他方から、それぞれ分散槽に供給し、使用された水、カプロラクタムおよび二酸化チタン粉末を含む生成混合物を、上記材料排出口から得る。
【0056】
このような特別の種類の装置の最適の操作条件および目的の特別な材料組成は、いくつかの簡単な予備試験によって容易に決定される。
【0057】
本発明では、得られた生成混合物を重合して二酸化チタン粉末含有ポリアミドを製造する。
【0058】
重合は、上述のポリアミドを製造するための方法のひとつによって好適に行うことができる。
【0059】
好適な形態では、生成混合物を重合に先立って例えば沈降槽中で貯蔵することができる。この場合に、生成混合物中に存在する比較的粗い二酸化チタン粉末を沈降させるために、1〜100時間の範囲、特に10〜50時間の範囲の遅延時間が好ましい。
【0060】
沈降の後に、重合のための混合物を例えばポンプにより表面から採取することができる。沈降物は、好ましくは分散段階に戻すことができる。さらに別の好ましい形態では、特に比較的粗い二酸化チタン粉末の沈降の後に、生成混合物の水含有量を例えば蒸発のような慣用的な方法で減少させることにより、重合を進めることができる。その上、好ましい形態では、重合の前にカプロラクタムのようなモノマーをさらに生成混合物に添加することにより、生成混合物のモノマー含有量を増加させることができる。水の除去およびさらなるモノマーの添加を組み合わせてもよく、その場合には、モノマーを添加する前、後、間、好ましくは前に水を除去することができる。
【0061】
好ましい形態では、二酸化チタン、ポリアミド形成成分、および水の量は、全質量に対して1〜50質量%、好ましくは5〜45質量%、特に好ましくは8〜40質量%の二酸化チタン含有量を有する二酸化チタン粉末含有ポリアミドが得られるように調整することができる。
【0062】
本発明の方法によって得ることができるポリアミドは、ポリマーの艶消しまたは着色のためのマスターバッチとして好ましく使用することができる。特に、重合の間にナイロン−6の場合のカプロラクタムのようなポリマー形成モノマーを含む主流に、溶融形態でマスターバッチを添加することが考えられる。同様に、マスターバッチを構成するポリマーとは異なるポリマーに、例えば共押出または溶融物としての混合によって、マスターバッチを添加するのも好ましい。
【0063】
原則として、本発明の二酸化チタン粉末含有ポリアミドは、ポリマーに二酸化チタン粉末含有ポリアミドを組み入れる方法としてそれ自体は公知の方法によって、ポリマーに組み入れることができる。
【0064】
本発明の方法は、ポリアミド中に存在する二酸化チタン粉末の平均粒径が、薄層部分に関して光学電子顕微鏡で測定した場合に1.2μm未満であり、従って先行技術において製造されたポリアミド中の粒径より小さいという点で、利点を有している。
【0065】
本発明の方法のさらなる利点は、以下の実施例により理解される。
【実施例】
【0066】
マスターバッチの製造
実施例1
水封ポンプ(Conti−TDS、Ystral GmbH Maschinenbau und Processtechnik(ドイツ)製)を、1000kg/hの二酸化チタン(Hombitan LOCR−SM、Sachtleben Chemie GmbH(デュースブルグ)製)および4100kg/hの93.8質量%の水と6.0質量%のカプロラクタムと0.2質量%の分散剤(Sokalan PA 20 PN、BASF AG製)を含む混合物を2時間で懸濁液に変換し、これを撹拌槽に移送し、環状導管によりこれを内部で循環させるために使用した。
【0067】
次いで、懸濁液を沈降槽に移送し、比較的粗い二酸化チタン粒子を48時間で沈降させた。
【0068】
次いで、3.5m3の懸濁液を沈降槽の表面から貯蔵槽へとポンプで採取した。貯蔵槽からの5m3を5時間で3200Lの液体カプロラクタムに125℃の温度および0.5barの圧力下で添加し、一方懸濁液とともに導入された水を蒸発させた。その結果、溶融物の温度が152℃に上昇した。
【0069】
その後、懸濁液を第2のDiphylで加熱した槽に移送し、槽内を水を蒸発させることにより6barに固定して257℃に加熱した。次いで、圧力を35分間で6barから0.03barに降下した。
【0070】
窒素雰囲気にした後、溶融物を水中ペレット製造機に供給し、得られたペレットを乾燥した。
【0071】
実施例2
二酸化チタン含有懸濁液を5m3の代わりに2m3使用し、カプロラクタムを3200Lの代わりに2300L使用した他は、実施例1を繰り返した。
【0072】
比較例
二酸化チタン含有ポリアミドをEP−A−070452の実施例により製造した。
【0073】
マスターバッチの加工
a)濾過
実施例1、実施例2、および比較例において得られた二酸化チタン含有ポリアミドをカプロラクタムと混合し、EP−A−070452に従って重合し、二酸化チタン含有量が全質量に対して1.6質量%であるポリアミドを得た。以後、実施例1および2のマスターバッチにより得られたポリアミドをポリアミド1、2と表し、比較例のマスターバッチを使用して得られたポリアミドを比較ポリアミドと表す。
【0074】
混合物をそれぞれ、平均孔径が10μmの不織フィルターを通して、262℃で、溶融状態で、3.7g/分の通過量で、12時間で6回濾過した。
【0075】
フィルターの上流側における最初の圧力と最後の圧力の差から得られる平均圧力上昇を通過量で割った値は、ポリアミド1、2のそれぞれの場合は約7bar/kgであった。一方、比較ポリアミドの場合は10bar/kgであった。
【0076】
b)摩滅
ポリアミド1、2および比較ポリアミドをそれぞれ、44デシテックスの12フィラメント撚り糸を紡織するために使用した。
【0077】
50kmの撚り糸を、銅板上で2回牽引した(湾曲;90°:牽引力;2cN:速度;150m/分)。
【0078】
ポリアミド1、2から製造された撚り糸は、撚り糸100kmあたり3.8mgの平均摩滅を示した。一方、比較ポリアミドから製造した撚り糸は、100kmあたり4.2mgの摩滅を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタン粉末含有ポリアミドを製造する方法であって、
分散槽と、
該分散槽内に配置されたディスク型のロータと、
放射状の複数の開口部を有しておりかつ上記分散槽の分散域に上記ロータと共に配置されているステータと、
上記ロータの両側に設けられた材料導入口(好ましくは、それぞれの材料導入口が、2つの材料流がロータのディスクの外周域で合流するように、軸方向のチャネル部を有する。)と、
上記分散槽の分散域の外周部に設けられた材料排出口と、
を備えた装置を使用して、二酸化チタン粉末を上記材料導入口の一方から、水とカプロラクタムを含む出発混合物を上記材料導入口の他方から、それぞれ上記分散槽に供給し、使用された水、カプロラクタムおよび二酸化チタン粉末を含む生成混合物を上記材料排出口から得ることにより、水とカプロラクタムを含む出発混合物に二酸化チタン粉末を分散させる段階、および、
得られた生成混合物を重合して二酸化チタン粉末含有ポリアミドを得る段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
上記出発混合物がさらに分散助剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重合の前または重合の間に水を生成混合物から除去することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
重合の前または重合の間にカプロラクタムを生成混合物に添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により得ることができる二酸化チタン粉末含有ポリアミド。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により得ることができる二酸化チタン粉末含有ポリアミドを、ポリマーの艶消しまたは着色のためのマスターバッチとして使用する方法。

【公表番号】特表2006−503945(P2006−503945A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545890(P2004−545890)
【出願日】平成15年10月18日(2003.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011574
【国際公開番号】WO2004/037908
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【Fターム(参考)】